【実施例】
【0059】
実施例1
UV光照射前にPBS中のベンゾフェノンアミン(Bz)およびNHS−PEG(750Da)を異なるポリマー表面に加える1工程で表面コーティングを行った(図表1:図で“Bz+NHS−PEG”と示す)。
【0060】
【0061】
活性NHSエステル基を介した結合の意義を、(図で“Bz+PEG”と示されている)Bzおよび末端NHSエステルが無い同一の大きさのPEGを使用して別の一式の実験で調査した。また、BzおよびNHS−PEGをアミド結合を通じて第1に共有結合させてBz−PEGを形成する2工程(又は2段階)方法を調査した。Bz−PEG生成物をHPLCで純化し、次いでUV光照射前に異なるポリマー表面に加えた(“Bz−PEG”と示す)。2つの方法による表面コーティングは、有機溶媒を通常使用することに代えて水性緩衝液で行うという利点を有し、光活性化ベンゾフェノンと反応することができる。更に、実際の光活性化コーティングは単一工程で行われる。“Bz”と示す結果は溶解したベンゾフェノンのみの反応を示している。全ての化合物を10mMの濃度でPBSに溶解させた。“ブランク”は純PBSで処理した。ポリスチレン表面を一式の異なる手順を用いてUV照射で光活性し又は光活性することなく処理した。反応後十分にサンプルを洗浄し、物理吸着した試薬を取り除いた。乾燥したサンプルのXPS分析結果では、(
図1B)のUV光無しの場合と比べて(
図1A)のBz+NHS−PEGサンプルでの酸素(14.7原子%)および窒素(3.4原子%)の濃度が大きく増加していることを示していた。PEG無しのBzによる光活性化コーティングは酸素(3.4原子%)および窒素(1.0原子%)の量がかなり低くなっていた。この事はNHS−PEGが光活性化されたBzを含む処理で表面に結合されたことを示唆している。Bz+PEGサンプル(7.6原子%)およびBz−PEGサンプル(7.3原子%)は酸素濃度を増加させることを示し、PEGがわずかながらこれらのサンプルに付いたことを示していた。UV照射無しの全ての操作は大変低い酸素および窒素表面濃度となり、光活性がポリスチレン表面を修飾するために必要であることを示していた。
【0062】
実施例2
反応度におけるBzおよびNHS−PEGの影響を、30分間のUV照射で0〜50mMで2つの濃度を変えることで調査した(
図2参照)。14原子%の最大酸素濃度を10mMBzおよび2MmNHS−PEGで処理したサンプルで測定した。
【0063】
実施例3
UV照射時間の影響をBz+NHS−PEG反応において調査した(
図3)。酸素および窒素表面濃度は最大60分の照射時間と共に増加し(18.9原子%の酸素および4.8原子%の窒素)、その照射時間は調査した最も長い時間であった。
【0064】
実施例4
薬品の吸着
低結合のBz+NHS−PEGコーティングの有効性を、幅広い疎水性を有する100nM溶液での被覆されたおよび被覆されていないポリスチレンの拡張された培養により調べた。ガラス表面をポリスチレンと呼ぶことに含めた。培養液の上澄みを異なる時間で採取し、内部標準の追加後エレクトロスプレーイオン化質量分光法(ESI−MS)により薬品濃度を決定した。
【0065】
最初に追加した薬品濃度に対する上澄み中の薬品濃度の比で回収率を算出した。Bz+NHS−PEG(各化合物は10mM)により修飾されたポリスチレン表面は、殆どの疎水性薬品(cLogPがそれぞれ8.95、6.5および5.7であるアミオダロン、テルフェナジンおよびアステミゾール)において修飾されていないポリスチレンよりもかなり高い回収率を示した(
図4)。疎水性の高い薬品であるドフェチリドおよびソタロール(cLogPがそれぞれ1.99および0.23である)は全ての表面で高い回収率を示した。
【0066】
最も高い疎水性薬品であるアミオダロンはガラス表面でさえ高い吸着性を示した。しかしながら、
図4では、実際の薬品測定を行う前に最大3日間採取した上澄みの保存のためにガラスバイアルを使用した。そのため、測定結果は、保存用のガラスバイアルへの後の吸着によりテスト表面に吸着した量をおそらく多く見積もっている。別の一連の実験は、異なる表面コーティング方法の低結合の質のため好感度の測定としてアミオダロンを使用し、サンプリング後1時間以内に薬品濃度を測定することでガラスバイアルでの吸着の問題を最小にした(
図5)。ガラスは予想通り最小の薬品吸着を示した。しかしながら、Bz+NHS−PEGで被覆されたポリスチレンは1時間後に76%の高い回収率、5時間後に50%の回収率、および1週間後に13%の回収率を示し、後者はガラスに相当する。それに比べて、初期のアミオダロンの3%未満が被覆されていないポリスチレンに5時間後に溶解したままであった。
【0067】
濃度が10nM〜250nMの疎水性の低いアステミゾールを用いた3日間のBz+NHS−PEGで被覆したポリスチレンの培養は、最小濃度でさえ20%を超える回収率を示し、薬品濃度が高くなるにつれて回収率も増えた(
図6)。対して、被覆していないポリスチレンはテストした全ての薬品濃度でゼロに近い回収率を示した。
【0068】
実施例5
ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー、液晶ポリマーおよびポリイミドを含む微量分析システムに関連する幅広いポリマーでのタンパク質吸着を減じるBz+NHS−PEGコーティングの有効性をテストした。修飾および未修飾のポリマー表面を4時間PBS中で0〜1mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)と共に培養した。十分に洗浄した後、培養した表面をXPSで分析した(
図7)。
【0069】
BSAを用いた培養前後の窒素表面濃度の違いをポリイミドが分子構造に窒素を含んでいるという暫定特許を用いて吸着したタンパク質の量の測定値であるとした。BSA吸着後窒素の大きな増加(最大7原子%)を、被覆していないサンプルおよび全てのテストしたポリマー材のためBz被覆したサンプルで観察した。対して、Bz+NHS−PEG又はBz−PEGを使用して修飾したポリマー表面はわずかに窒素濃度が増えたことを示し(<0.6原子%)、これらのPEGで被覆したサンプル上でのBSA吸着量が低いことを示した。Bz+PEGで処理されたポリマー表面は、BSAで培養後全てのポリマー材上の表面窒素濃度が高くなっていることから明らかなように、Bz+NHS−PEGで修飾した材料よりも劣った小さなタンパク質結合特性を示した。
【0070】
実施例6
Bz+NHS−PEGで被覆した又は被覆していないポリスチレン表面上の幅広い分子量にわたる異なる種類のタンパク質の吸着を分析した(
図8A)。表面のコーティングは小さいサイズのタンパク質および中間サイズのタンパク質(それぞれインスリンおよびBSAに対応)の吸着を強力に制限した。大きなサイズのタンパク質(IgG)に関しては、0.1mg/mL以下の濃度で同じ効果を観察し、最も高いテストしたIgG濃度である1mg/mLでは少しその効果を示した。
【0071】
実施例7
DNAは多くの異なる材料表面に吸着することが示されている。1mg/mL以下の濃度のサケの精巣からのDNAを用いて培養した後のDNA吸着を減じるためのBz+NHS−PEGコーティングの能力をポリスチレン表面上でテストした。吸着は、
図8Bおよび
図8Cにそれぞれ示すように、ヌクレオチドからの窒素の表面濃度の増加およびDNA骨格からのリンの増加を生じさせる。リンのシグナルはDNAの吸着量のより一貫したマーカーになることが分かっている。2つの高い濃度(1mg/mLおよび0.1mg/mL)では、ポリスチレン表面に1原子%を上回るリンをもたらし多くの吸着があった一方、0.01mg/mLのDNAを用いた培養では0.3原子%のリンをもたらした(
図8C)。対して、Bz+NHS−PEGにより被覆されたポリスチレン上で培養されたDNA溶液は検出限界近傍の大変低いリン濃度(0.1原子%未満)をもたらした。つまり、DNAの吸着は表面修飾後強力に減じられる。
【0072】
実施例8
最終のPEGコーティングの密度および厚さを
図3に示すようにUVリアクターでの照射時間を制御することで制御することができる。異なる照射時間で形成したサンプルを4時間PBS中の0.1mg/mLのIgGを用いて培養し、タンパク質の吸着量をXPSを用いて分析して、窒素および硫黄の表面濃度を調べた(
図9)。タンパク質の吸着は5分以下のUV照射により形成したサンプルで高く、一方10分を超える照射時間では照射時間の増加と共にタンパク質の吸着が減じられた。0.08原子%の最小窒素濃度および0.07原子%の最小硫黄濃度はそれぞれ最長照射時間である60分で観察された。この事は、UV照射時間およびおそらくUV線量がPEGコーティング量を制御し、それによって表面の低結合の質を制御するための重要なパラメーターであることを示している。
【0073】
実施例9
デキストラン、PVPおよびPEOXAをポリマー表面に対するタンパク質の吸着を減じるためのPEGに代えて使用することができる。ポリスチレン基板を、デキストラン、PVP又はPEOXAのいずれかを有するBzの溶液を用いて30分間UV照射により表面修飾した。得られた表面をXPSで分析し、制御したサンプルにわたって酸素および窒素の両方の表面濃度が増えていることを示していた(
図10A)。続いて4時間0.1mg/mLのBSAを用いた培養では、制御したサンプルに比べて全ての修飾基板上でタンパク質の吸着が減じられていることを示していた(
図10B)。
【0074】
実施例10
ポリスチレン基板を、アミン反応官能部分、カルボン酸スクシンイミジルエステルを有するPEG(NHS−PEG)、又はアミンの少ない反応官能部分、修飾されていないカルボン酸を有する同等のPEG(HOOC−PEG)のいずれかで表面修飾した。修飾基板の分析結果は、より高密度表面コーティングを示すHOOC−PEG修飾面(8.3原子%)上の酸素濃度よりもNHS−PEG修飾面(10.5原子%)上の酸素濃度が高いことを示した。続いて4時間0.1mg/mLのBSAを用いた培養結果は、HOOC−PEG被覆基板の吸着(3.05原子%の窒素;0.13原子%の硫黄)よりもNHS−PEG被覆基板上のタンパク質の吸着(0.95原子%の窒素;0.01原子%の硫黄)がかなり低いことを示していた。この結果は、光反応性化合物の官能部分と共有反応可能なポリマー化合物における官能部分はタンパク質吸着の低いコーティングを生じさせることを示している。
【0075】
実施例11
取り付けられる異なる反応基を有するベンゾフェノンは異なる表面反応性を有する。下記のタイプのベンゾフェノンを水性緩衝液中のポリスチレン表面にNHS−PEGを取り付けるための能力のため評価を行った:4−ベンゾイルベンジルアミン塩酸塩(BZ)、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(4xOH−Bz)、4−ヒドロキシベンゾフェノン(1xOH−Bz)、2−アミノベンゾフェノン−2’−カルボン酸(1xNH
2−1xCOOH−Bz)、3,4−ジアミノベンゾフェノン(2xNH
2−Bz)、2−ベンゾイル安息香酸(;2-benzoylbenzoic acid)(1xCOOH−Bz)、2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸(1xCOOH−CH
2−Bz)。
図11は、60分のUV処理後のポリスチレン上のNHS−PEG(7.5mg/ml)と共に異なる種類のベンゾフェノン(2.5mg/ml)の処理後、結合したベンゾフェノンおよびNHS−PEGから生じる酸素および窒素の量を示している。酸素および窒素の量は、サンプルに相当量のPEGと結びついていない他のタイプのベンゾフェノンと比べて、Bz+NHS−PEGおよび1xCOOH−CH
2−Bz+NHS−PEGを有したサンプルにおいて著しく多かった。これらの結果は、ベンゾフェノンアミン(Bz)は、水性溶媒中で他の変異型のベンゾフェノンと比べてポリマー表面にPEGを取り付けることが好ましいことを示していた。
【0076】
実施例12
ベンゾフェノン(Bz)はポリマー表面に異なるポリマーを取り付けるために使用することができる。
図12は、水性媒体中でBzと共に30分UV照射した後のポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAAM)およびデキストランのXPS分析結果を示している。低分子量(5kDa)又は高分子量(15kDa)のPAAを用いた結合反応では、UV曝露後において酸素および窒素の量が増大したが、UV曝露無しでは酸素および窒素を検出できなかった。この事はPAAの光化学の取り付けが有効であることを示していた。PVPおよびPAAMを用いた結合反応は高い効率性ではないがUV照射が共有表面結合に左右していることに従い、UV照射後にポリマー表面に中間量の酸素および窒素を示し、UV照射無しでは少量の酸素および窒素を示した。
【0077】
実施例13
ポリプロピレンから成る化合物マイクロタイタープレートを水中でNHS−PEG(7.5mg/ml)およびBz(2.5mg/ml)を用いてPEGで被覆し、UV光に晒した。薬品のアステミゾールをPEG被覆したプレート、被覆していないプレート、およびガラス被覆したプレートに異なる濃度で加え、1時間保存した。続けて保存した薬液を自動化パッチクランプシステムを用いて調査した。hERGイオンチャネルでの薬品の影響をイオン電流を測定し、算出したIC50値の結果により分析した。被覆していないプレートに保管した薬液は、PEG被覆したプレート又はガラス被覆したプレートに保管した薬液と比べてIC50値が高いという結果になり、PEG被覆したプレートから得られるIC50値は参照のガラス被覆したプレートで得られる値と殆ど同じであった。高く算出されたIC50値、すなわち溶液中の低い有効薬品濃度は、被覆されていないポリプロピレンプレートの表面に相当に薬品化合物が吸着したことによるものである。この結果は、そのような望ましくない薬品吸着をプレートの事前のPEGコーティングにより強力に減じることができることを示していた。
【0078】
文献リスト
・ジャーナル薬理および毒物学的方法52号(2005年)123〜135頁のグオLらによる“電位のQT延長のための薬品の前臨床評価での自動電気生理学”
・ジャーナル膜科学(2010年)のシェンCらによる“薬品吸着および肝細胞の自己組織化に耐えるためのポリエチレングリコールによるポリスルホン膜の化学修飾”)
・ジャーナル生物医学および生命科学893〜894(2012年)134〜143頁のクロマトグラフィB分析技術のシルベスターSらによる“人の尿サンプルのAZD9164の非特異的な吸着問題の克服:生物学的分析および代謝産物分析の同定手法の考察”
・J.ビオムド.マーター.レス1992年26号779〜790頁のバーグストロームKらによるPEGで被覆されたポリスチレン表面上におけるフィブリノゲン吸着の低減
・ジャーナル膜科学115号(1996年)31〜47頁のウルブリヒトMらの“親水性および低タンパク質の吸着限外ろか膜形成のための光誘起グラフト重合表面修飾”
・サーフ.インターフェースアナル2008年40号386〜390頁のイグアーブOらの“BSA吸着を抑制するためポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)フィルム上へのポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGA)のグラフト重合”
・ジャーナル生物医学材料調査1999年44巻第3号298〜307頁のデファイフK.Mらによる“タンパク質吸着、細胞粘着およびシリコーンゴムに対する異物反応での光化学固定化ポリマーコーティングの効果”
・WO90/00887