(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料槽と測定室とを仕切るフィルムを備えた蛍光X線測定装置において、フィルムにおいて長時間にわたってX線照射を受けた部分は劣化し易い。また、液体試料が腐食性を有する場合、フィルムにおいて液体試料に接している部分は劣化し易い。従来の蛍光X線測定装置では、液体試料が試料槽に収容された状態で、フィルムを交換することはできない。なお、フィルムの交換作業の全部を手作業で行うならば、作業者の負担が大きくなる。
【0007】
本発明の目的は、蛍光X線測定装置において、液体試料を試料槽に入れた状態でフィルムを交換できるようにすることにある。あるいは、本発明の目的は、蛍光X線測定装置において、フィルムの交換に際しての作業者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蛍光X線測定装置は、液体試料を収容する試料槽と、前記試料槽に隣接して設けられ、X線発生器及び蛍光X線検出器を有する測定部と、前記試料槽及び前記測定部の並び方向に交差するスライド方向において、前記試料槽と前記測定部との間の仕切り位置から使用済みフィルム部分を取り出し、且つ、前記仕切り位置へ未使用フィルム部分を送り込むためのフィルム機構と、を含む。
【0009】
上記構成によれば、フィルム機構により又はフィルム機構を利用して、仕切り位置から使用済みフィルム部分が取り出され、また、仕切り位置へ未使用フィルム部分が送り込まれる。スライドという簡便な動作又は作業で、フィルム部分の取り出し及び送り込みを行える。スライド方向が試料槽及び測定部の並び方向に交差する方向であるので、フィルム部分の交換時において、試料槽及び測定部の構成や配置を維持し得る。すなわち、試料槽に液体試料を入れたまま、フィルム部分の交換を行える。交差する方向は望ましくは直交する方向である。
【0010】
実施形態においては、前記フィルム機構により、前記使用済みフィルム部分の取り出しと前記未使用フィルム部分の送り込みとが同時に実施される。この構成によれば、フィルム部分の交換を短時間で行える。使用済みフィルム部分の取り出し過程と未使用フィルム部分の送り込み過程とを同時進行で行えるように、複数のフィルム部分の空間的な関係を定めるのが望ましい。
【0011】
実施形態においては、前記スライド方向における上流側から下流側へ複数のフィルム部分が搬送され、前記各フィルム部分が前記未使用フィルム部分及び前記使用済みフィルム部分になる。この構成によれば、フィルム部分の交換を簡便に行える。複数のフィルム部分の搬送が自動的に行われてもよいし、その搬送が手作業により行われてもよい。
【0012】
実施形態において、前記フィルム機構は、前記スライド方向における上流側から下流側へ長尺フィルムを段階的に搬送する機構であり、前記長尺フィルムの段階的な搬送により、前記長尺フィルムに前記複数のフィルム部分が生じる。この構成によれば、複数のフィルム部分の搬送が容易となる。また、複数のフィルム部分の取扱い性を高めることができる。
【0013】
実施形態において、前記長尺フィルムが前記試料槽の底又は天井を構成する。必要に応じて、試料槽からの液体試料の漏れ出しを防止するためのシール部材が利用される。実施形態に係る蛍光分析装置は、前記試料槽の周囲に設けられ、前記試料槽から漏れ出た液体試料を捕獲する捕獲構造を含む。実施形態に係る蛍光分析装置は、前記試料槽の液面レベルを調整する調整機構を含む。機械的又は物理的に液面レベルが調整されてもよいし、電気的に液面レベルが調整されてもよい。
【0014】
実施形態において、前記フィルム機構は、順番に使用される複数のカセットを含み、記各カセットは、フィルム部分とそれを保持するフレームとを有し、前記各カセットにおける前記フィルム部分が前記未使用フィルム部分及び前記使用済みフィルム部分になる。この構成によれば、個々のフィルム部分の取り扱い及び交換が容易となる。
【0015】
実施形態において、前記各カセットのフレームは一方側構造及び他方側構造を有し、前記複数のカセットには連続して使用される第1カセット及び第2カセットが含まれ、前記第1カセットの一方側構造と前記第2カセットの他方側構造とが係合する。この構成によれば、カセットの突き出しを確実かつ容易に行える。
【0016】
実施形態において、前記スライド方向は前記X線発生器と前記蛍光X線検出器の並び方向に沿った方向である。この構成によれば、装置を小型化し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蛍光X線測定装置において、液体試料を試料槽に入れた状態でフィルムを交換できる。あるいは、本発明によれば、蛍光X線測定装置において、フィルムの交換に際しての作業者の負担を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には、実施形態に係る蛍光X線測定装置の第1構成例が示されている。この蛍光X線測定装置は、液体試料に含まれる物質から出る蛍光X線のスペクトルを測定する装置である。そのスペクトルの分析により物質の同定や定量を行える。なお、各図において、第1水平方向がx方向であり、第2水平方向がy方向であり、垂直方向がz方向である。
【0021】
図1において、蛍光X線測定装置は、測定セクション10及び演算制御セクション12を有している。測定セクション10は、隣接関係にある下部14及び上部16を有する。下部14は測定部として機能する。上部16は、貯留構造38及びフィルム機構40を有する。下部14はハウジング15を有する。ハウジング15の天井壁15Aが、下部14と上部16との間の隔壁として機能する。天井壁15Aには、X線を通過させる開口15Bが設けられている。貯留構造38は試料を貯留する試料槽48を有する。試料槽48の内部に、分析対象となる液体試料18が収容される。
【0022】
ハウジング15内には、X線照射部20及び蛍光X線検出部22が配置されている。X線照射部20は、第1の斜め方向から液体試料18に対してX線ビーム28を照射するものである。X線照射部20は、X線発生器24、一次フィルタ25及びコリメータ26を有する。X線発生器24で生じたX線の内で、特定のエネルギー成分が一次フィルタ25により低減される。一次フィルタ25を通過したX線の形状がコリメータ26によって調整される。これにより、円錐形状のX線ビーム28が形成される。複数の一次フィルタを設け、それらの中から実際に使用する一次フィルタが選択されてもよい。コリメータ26に対して互いに異なるサイズを有する複数の開口を形成し、それらの中から実際に使用する開口が選択されてもよい。X線ビーム28は、開口15B及び後述するフィルム42を通過し、液体試料18の表層に達する。これにより、その表層に含まれる物質から蛍光X線が生じる。
【0023】
蛍光X線検出部22は、液体試料18から第2の斜め方向に出る蛍光X線を検出するものである。蛍光X線検出部22は、コリメータ32及びX線検出器30を有する。コリメータ32には開口が形成されており、その開口によってX線検出器30に到達する蛍光X線の形状が規定される。つまり、コリメータ32により蛍光X線ビーム34が形成される。蛍光X線検出部22に二次フィルタを加えてもよい。蛍光X線ビーム34も円錐形状を有する。
【0024】
第1の斜め方向及び第2の斜め方向は、xz面に属する。例えば、z方向に対して第1の斜め方向は−45度傾斜しており、z方向に対して第2の斜め方向は+45度傾斜している。X線照射部20及び蛍光X線検出部22の並び方向、つまりX線発生器24及びX線検出器30の並び方向は、x方向である。開口15Bを介してフィルム42を観察するためのカメラ36を設けてもよい。
【0025】
上部16は、上記のように、貯留構造38及びフィルム機構40を有する。貯留構造38は、試料槽48及び複数の押し付け器50を有する。試料槽48は、筒状の本体48Aとその下部に連なる鍔状のフランジ48Bとを有する。試料槽48の内部に液体試料18が収容されている。複数の押し付け器50は、それぞれ、支柱、固定端部及びスプリングを有する。固定端部とフランジ48Bとの間にスプリングが配置されている。スプリングによって、試料槽48に対して下方向きの弾性力が与えられている。すなわち、フィルム42側へ試料槽48が押し付けられている。試料槽48は、液体試料18を導入する開口54、及び、液体試料18を排出する開口56を有する。
【0026】
フィルム42とフランジ48Bとの間には、弾性材料からなるシール部材としてのOリング58が設けられている。Oリング58の直径は、開口15Bの直径よりも大きく、また本体48Aの内径よりも大きい。Oリング58によって液体試料18の流出が阻止されている。Oリング58には、複数のスプリングにより生成された押し付け力が及んでいる。必要に応じて、複数のOリングを多重的に配置してもよい。貯留構造38を包み込むカバー60を設けてもよい。
【0027】
フィルム機構40は、長尺部材としてのフィルム42を搬送する機構であり、送りローラー44及び巻き取りローラー46を有する。最初の段階において、送りローラー44にはフィルム42が巻き付けられている。そこから送り出されたフィルム42が巻き取りローラーに巻き付けられる。フィルム42は、例えば、樹脂材料により構成され、その厚みは例えば数μmである。フィルム42においてX線の減弱があまり生じないように、その材料及び厚さを定めるのが望ましい。また、フィルム42として薬品に対して強く化学的に安定なものを利用するのが望ましい。
【0028】
図1において、フィルム42は、右側から左側へ搬送される。2つのローラー44,46間において、フィルム42は天井壁15Aの上面に接しつつその上面に沿ってスライド運動する。フィルム42に弛みが生じないように、フィルム42に対してテンションを加える機構を設けるのが望ましい。試料槽48と測定部の間、具体的には、試料槽48と開口15Bとの間、が仕切り位置であり、そこにおいて、フィルム42の一部分が仕切り機能又は隔離機能を発揮する。
【0029】
次に、演算制御セクション12について説明する。演算制御セクション12は、例えば、情報処理装置により構成される。情報処理装置は、プログラムを実行するプロセッサを有する。プロセッサは、以下に説明するスペクトル生成部62、搬送制御部64及び主制御部66として機能する。
【0030】
スペクトル生成部62は、X線検出信号に基づいて蛍光X線スペクトルを生成するものである。蛍光X線スペクトルの解析により、具体的には、それに含まれる特性X線ピークのエネルギーから、試料に含まれる物質が特定される。また、特性X線ピークのレベル又は面積から、その物質の量が特定される。スペクトル解析の結果は、図示されていない表示器に表示される。
【0031】
搬送制御部64は、フィルム搬送を制御するものである。実施形態においては、フィルム42が一定時間間隔で間欠的に搬送されている。フィルム42において実際に機能するのは複数のフィルム部分42aである。試料槽48と測定部との間が仕切り位置であり、そこにフィルム部分がセットされる。換言すれば、測定中において、液体試料18に接している部分又はX線が照射されている部分がフィルム部分42aである。個々のフィルム部分42aは、測定前において未使用フィルム部分であり、測定後において使用済みフィルム部分である。
【0032】
主制御部66は、X線発生器24及びX線検出器30の動作を制御しており、また、搬送制御部64の制御を通じてフィルム搬送を制御している。この他、ポンプ68の制御を通じて液体試料の輸送を制御している。実施形態においては、2つの測定モードがある。すなわち、液体試料の静的な貯留状態で液体試料を流さずに測定するモードと、液体試料をゆっくり流しながら測定を行うモードとがある。
【0033】
図2には、フィルム機構40の上面が示されている。フィルム機構40は、既に説明したように、送りローラー44及び巻き取りローラー46を有する。試料槽48は、4つの押し付け器によって保持されている。
図2においては、個々の押し付け器が有する支柱の断面76が現れている。符号70はOリングが配置される位置を示している。測定時には、その内側の領域であるフィルム部分42aに液体試料が接する。液体試料の性質によっては、液体試料の継続的な接触により、フィルム部分42aが劣化する。フィルム部分42aを交換するための機構がフィルム機構40である。符号72は、試料槽の本体の内面を示している。楕円の領域74は、X線が照射される領域である。その領域74は、X線の照射により劣化が生じ得る部分でもある。
【0034】
図示の構成例において、一定時間にわたる測定ごとに、フィルム部分42aが切り替えられる。フィルム部分42bは1つ前の測定で使用されたフィルム部分である。それは使用済みフィルム部分である。図示されてはいないが、フィルム部分42aの手前側に、次に使用されるフィルム部分を観念でき、それは未使用フィルム部分である。フィルム42上において、個々のフィルム部分の両側に余白としてのマージンd1が設定されている。隣接する部分領域の間にも余白としてのマージンd2が設定されている。符号80はフィルム42の送り方向を示している。
【0035】
図3には、動作例が示されている。(A)は第1動作モードを示している。第1動作モードでは、試料槽への液体試料の供給及び試料槽からの液体試料の排出を連続的に行いながら、試料槽内の液体試料が連続的に測定される。(B)は第2動作モードを示している。第2動作モードでは、試料槽に液体試料を貯留し、その状態を維持したまま(液体試料を流さずに)、試料槽内の液体試料が測定される。符号200は貯留期間を示しており、その貯留期間内において測定が実施される。符号202は液体試料を交換する期間を示している。その期間内においては、測定は実施されない。もっとも、X線照射及びX線検出を連続的に行いながら不要なデータを破棄又は除外することにより、事実上、測定を行わない期間202が定められてもよい。
【0036】
(C)はフィルム搬送動作を示している。符号204はフィルムを動かさない停止期間を示している。搬送期間206はフィルム部分を交換する期間である。搬送期間206においては、測定は行われない。第2動作モードの実行時においては、液体試料を交換する期間202と搬送期間206が全体的に又は部分的に重複するように、それらの期間が定められる。換言すれば、液体試料の交換タイミングとフィルムの搬送タイミングとの間に同時性が確保されるように、タイミング調整されている。これにより測定の無駄を最小限にできる。なお、
図3においては、期間202の方が搬送期間206よりも大きいが、期間202の方が搬送期間206よりも小さくてもよい。
【0037】
上記実施形態によれば、液体試料に接するフィルム部分あるいはX線が照射されるフィルム部分を簡便かつ迅速に定期的に交換できる。長尺のフィルムを利用しているので、メンテナンスの労力を低減できる。フィルム部分が試料槽の底を形成しており、測定対象面の安定化又は平坦化という利点も得られる。
【0038】
図4には、実施形態に係る蛍光X線測定装置の第2構成例が示されている。
図4には、蛍光X線測定装置の測定セクション82が示され、それは上部84及び下部86を有する。演算制御セクションについてはその図示が省略されている。
【0039】
上部84は測定部として機能する。下部86は貯留構造98及びフィルム機構96を有する。上部84と下部86との間に隔壁88が設けられている。隔壁88は、X線を通過させる開口88Aを有する。上部84は、X線照射部90及び蛍光X線検出部92を有する。X線照射部90は、
図1に示したX線照射部と同様の構成を有する。蛍光X線検出部92も、
図1に示した蛍光X線検出部と同様の構成を有する。
【0040】
貯留構造98は、試料槽102及び捕獲構造104を有する。試料槽102の内部に液体試料94が収容されている。捕獲構造104は、円筒形を有する試料槽102を取り囲む形態を有し、それは、試料槽102からあふれ出た液体試料を捕獲する環状の溝104Bを有する。捕獲構造104は鍔状のフランジ104Aを有し、そのフランジ104Aに対しては複数の押し付け器106により生成された付勢力が及んでいる。
【0041】
試料槽102には配管105が接続されている。配管105を通じて液体試料が試料槽102の中に導入される。試料槽102に隣接して補助槽108が設けられている。試料槽102と補助槽108は配管110によって接続されている。配管110を通じて、試料槽102の内部と補助槽108の内部が連通している。試料槽102の液面レベルと補助槽108の液面レベルは同じとなる。昇降機構116は、補助槽108の上下方向の位置を制御して補助槽108内の液面レベルを変化させるものである。昇降機構116は駆動源としてモータ118を有し、その動作が主制御部によって制御されている。
【0042】
昇降機構116によらずに、試料槽102内の液面レベルが制御されてもよい。例えば、試料槽102内の液量がポンプ及び電磁弁等の制御により調整されてもよい。補助槽108には配管112が接続されている。配管112上には電磁弁が設けられているが、その図示が省略されている。配管112を介して補助槽108から排出された液体試料がドレイン114により捕集される。
【0043】
フィルム機構96は、
図1及び
図2に示したフィルム機構と同様の構成を有する。具体的には、フィルム機構96は、送りローラー101A及び巻き取りローラー101Bを有する。それらの間においてフィルム100が隔壁88の下面に沿って水平に引き出されている。フィルム100の搬送方向すなわちスライド方向はx方向である。x方向は、第1構成例と同様、測定部と試料槽102の並び方向(z方向)に交差する方向であり、より詳しくは、直交する方向である。
【0044】
試料槽102内の液体試料94はフィルム100に接している。フィルム100において液体試料94に接している部分100aが交換対象となる部分つまりフィルム部分である。フィルム部分100aは円形を有する。フィルム部分100aは、測定前において未使用フィルム部分であり、測定後において使用済みフィルム部分となる。フィルム100においては、スライド方向に沿って複数のフィルム部分を観念し得る。
【0045】
第2構成例において、フィルム部分100aは、試料槽102の天井を構成し、それは試料槽102の上面を画定し又は仕切っている。液体試料94の表面はフィルム100により平坦化され及び安定化されている。また液体試料94への異物混入がフィルム部分100aにより防止されている。第2構成例においても、シールが必要な箇所に、シール部材を設けるのが望ましい。第2構成例において、液体試料94の上面レベルが常に一定にされているので、上面レベルの変動による測定誤差の発生を防止又は軽減できる。この第2構成例においても、上記の第1動作モード及び第2動作モードが選択的に適用される。
【0046】
図5には、第3構成例が示されている。第3構成例では、以下に詳述するように、複数のカセット124が利用される。なお、
図4に示した構成と同様の構成には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0047】
フィルム機構120は、水平のスリット122とそこに順次差し込まれる複数のカセット124により構成される。スリット122は、隔壁88と試料槽102の間において水平方向に広がる通路又は溝である。具体的には、スリット122は、x方向に貫通しており、y方向及びz方向に閉じている。
図5においては、スリット122内に1つのカセット124が差し込まれている。カセット124は、それ全体として概ね平板状の形態を有する。カセット124は、フィルム126及びそれに取り付けられたフレーム128を有する。フィルム126は、柔軟性を有する樹脂部材により構成され、フレーム128は例えば硬質の樹脂材料により構成される。交換される部分という観点から見て、フィルム126をフィルム部分と称することも可能である。
【0048】
フレーム128は、ホルダ130、ホルダ130の一方側に設けられた第1プレート132、及び、ホルダ130の他方側に設けられた第2プレート134により構成される。第1プレート132及び第2プレート134は互いに同じ厚みを有し、それはホルダ130の厚みの1/2である。第1プレート132は、ホルダ130に対して、下側に偏倚した位置に設けられている。第2プレート134は、ホルダ130に対して、上側に偏倚して設けられている。
【0049】
ホルダ130、第1プレート132及び第2プレート134を一体化させてもよい。すなわち、フレーム128を単一部材として構成してもよい。
図5において、右側から左側へ向かう方向をスライド方向と定義し、その上流側を手前側、その下流側を奥側と称した場合、第1プレート132は手前側構造体として機能し、第2プレート134は奥側構造体として機能する。もっとも、カセット交換の方向を切り換え得てもよい。
【0050】
図示の構成例において、右側から左側へのスライド運動を前提とし、番号nを1,2,3,・・・とした場合、カセット交換時に、n+1番目の未使用カセットにおける第2プレートがn−1番目の使用済みカセットにおける第1プレートに係合する。その係合状態では、未使用カセットにおける第1プレートの端面が使用済みカセットにおけるホルダに当接し、且つ、使用済みカセットにおける第1プレートの端面が未使用カセットにおけるホルダに当接する。また、その係合状態では、重なり合った第1プレート及び第2プレートのそれ全体の厚みがホルダの厚みと同じとなる。
【0051】
試料槽102の上面にはOリング136が設けられ、隔壁88の下面にはOリング138が設けられ、フランジ104Aの上面にはOリング140が設けられている。それらのOリング136,138,140はそれぞれシール部材として機能し、液体試料の液漏れを防止又は軽減している。具体的には、Oリング136は、試料槽102の上面とカセット124の下面(ホルダ130の下面及び第1プレート132の下面)との間においてシール機能を発揮している。Oリング138は、隔壁88の下面とカセット124の上面(ホルダ130の上面及び第2プレート134の上面)との間において、シール機能又は弾性機能を発揮している。Oリング140は、フランジ104Aの上面とカセット124の下面(ホルダ130の下面及び第1プレート132の下面)との間においてシール機能を発揮している。図示したシール構造以外のシール構造を採用してもよい。
【0052】
ホルダ130の中央部には円形の開口が形成され、そこに円形のフィルム126が配置されている。図示の構成例では、フィルム126の下面レベルとホルダ130の下面レベルが揃っている。フィルム126の下面が液体試料94の上面を画定しており、その上面に密着している。そのような密着が生じるように、液体試料94の容積が調整され、あるいは、その液面レベルが調整されている。
【0053】
フィルム126を介して液体試料94の表層へX線が照射され、表層内の物質において生じた傾向X線が検出される。フィルムが劣化した場合、カセット交換の方法により、フィルムが交換される。すなわち、使用済みフィルムが未使用フィルムに交換される。その場合において、試料槽102から液体試料を抜いてそれを空にする必要はない。試料槽102を固定したまま、フィルムの交換を行える。フィルムが硬質のフレームにより保持されているので、フィルムの取扱いが容易である。
【0054】
図6には、カセット124を斜め下側から見た様子が示されている。カセット124は、上記のように、フィルム126及びフレーム128で構成され、フレーム128は、ホルダ130、第1プレート132及び第2プレート134で構成される。ホルダ130と第1プレート132との間に段差が構成され、その段差に接するのが第1プレート132の上面142である。ホルダ130と第2プレート134との間にも段差が構成され、その段差に接するのが第2プレート134の下面144である。
【0055】
図7には、カセット交換時の動作が示されている。試料槽102と隔壁88の間のスリット122には第1のカセット124−1が設置されている。符号150で示すように、第2のカセット124−2の第2プレート134−2が第1のカセット124−1の第1プレート132−1の上側に差し込まれ、2つのカセット124−1,124−2の係合状態が生じる。その係合状態において、第2のカセット124−2を押し込むことにより、符号152で示すように、スリット122から第1のカセット124−1が追い出され、その代わりに、スリット122内に第2のカセット124−2が挿入される。
【0056】
第3構成例においては、フィルムの周囲に硬質のフレームが設けられているので、フィルムを交換する際の作業性を高められる。カセットの搬送が自動化されてもよい。カセットの搬送が手作業により行われてもよい。一方側からのスライドによるカセット交換と、他方側からのスライドによるカセット交換とが併用されてもよい。貯留構造の全体又は一部を昇降運動させ、カセットの交換前にスリットの高さを大きくし、カセットの交換後にスリットの高さを小さくしてもよい。