(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
往復移動を繰り返すことに伴って被縫製物に対し刺入又は離脱する針と、前記被縫製物を間にして前記針に対向するとともにポストベッド内に収容されたルーパーとで、前記被縫製物に縫い目を形成する縫製装置において、
複数個のアクチュエータと、
個々の前記アクチュエータに着脱可能に設けられ、前記被縫製物の所定部位に対して着座又は離間する複数個の着座体と、
複数個の前記着座体を一括して拘束可能である一方、複数個の前記着座体に対する拘束を一括して解除可能な拘束治具と、
を備え、
前記拘束治具が、前記アクチュエータに設けられた複数個の前記着座体を一括して拘束することにより、前記アクチュエータが前記被縫製物から離間する方向に動作することに伴って複数個の前記着座体が前記アクチュエータから離脱可能となり、
前記拘束治具が、複数個の前記着座体に対する拘束を一括して解除したとき、前記アクチュエータが前記被縫製物に対して着座又は離間する方向に動作することに伴って前記着座体が変位可能となる縫製装置。
請求項2又は3記載の縫製装置において、前記拘束治具は、複数個の前記着座体の所定部位に重なるように延在し、前記第2着脱機構の拘束を受けて前記支持体に位置決め固定される台座と、
前記台座上を該台座の延在方向に沿って摺動可能な摺動部材と、
を有し、
前記着座体に第1係合部が設けられる一方、前記摺動部材に、拘束する前記着座体の前記第1係合部の合計個数に応じた第2係合部が設けられ、
前記摺動部材が前記台座上を摺動することに伴い、前記第1係合部と前記第2係合部が互いに係合するか、又は前記第1係合部と前記第2係合部の係合が解除される縫製装置。
請求項5記載の縫製装置において、前記切欠が、前記突起が進入又は離脱可能な寸法で貫通した貫通孔部を含み、前記突起が前記貫通孔部に位置するときに前記内壁部が前記溝から離脱して前記着座体に対する拘束を解除する縫製装置。
請求項1〜8のいずれか1項に記載の縫製装置において、前記アクチュエータ又は前記着座体の一方に凸部が設けられるとともに、前記着座体又は前記アクチュエータの残余の一方に、前記凸部が進入又は離脱する凹部が設けられた縫製装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る縫製装置につき、該縫製装置において行われる着座体の交換方法との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下における「前」は、
図1に示す保持機構30が配設される側を表し、一方、「後」は縫製用ロボット152が配設される側を表す。また、「幅方向」は、「前後方向」に直交する水平方向である。そして、作業者が縫製用ロボット152側(後方)から保持機構30側(前方)を視認するときの左手側、右手側のそれぞれを「左」、「右」と定義する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る縫製装置10の概略全体斜視図である。この縫製装置10は、被縫製物であるインストルメントパネル20に対して縫製を行うためのものである。
図6を参照してインストルメントパネル20につき概略説明すると、このインストルメントパネル20は、基材22に表皮材24が積層された中空の積層物として構成される。基材22及び表皮材24の各素材の好適な例としては、オレフィン系エラストマー等の高分子が挙げられる。
【0015】
インストルメントパネル20に対しては、表皮材24の外面の縫製ラインLに沿って、ステッチ模様である縫い目26が形成される。この際、インストルメントパネル20は基材22の内面側から着座体54によって支持されるが、これについては後述する。
【0016】
図1に戻り、縫製装置10は、インストルメントパネル20を保持する保持機構30と、縫い目26を形成するための縫製機構32とを備える。先ず、この中の保持機構30につき説明する。
【0017】
保持機構30は、基台34と、基台34に位置決め固定された保持盤36とを有する。
図2に示すように、基台34と保持盤36は互いに分離することが可能である。すなわち、基台34には2個の第1パレットクランプ38が設けられる一方、保持盤36には、第1パレットクランプ38に対応する位置のそれぞれに第1埋込ブロック40が設けられる。第1パレットクランプ38が第1埋込ブロック40内に進入すると、圧縮エアや作動油等の圧力流体の作用下に第1埋込ブロック40がロックされる。これに伴い、第1パレットクランプ38が第1埋込ブロック40から離脱することが困難となる。以上の構成及び動作は公知であることから、その詳細な説明を省略する。
【0018】
基台34の後部には、アクチュエータとしての昇降用シリンダ42が複数個(例えば、10個)、幅方向に沿って並列するように設けられる。昇降用シリンダ42は、上昇又は下降する進退部材としての昇降ロッド44を含んで構成される。昇降ロッド44は、鉛直方向に沿って昇降動作する。
【0019】
昇降ロッド44の先端には、
図3に示す載置ブロック46がそれぞれ設けられる。すなわち、載置ブロック46は、昇降ロッド44の昇降動作と一体的に昇降するように変位する。個々の載置ブロック46には、2個の第2パレットクランプ48が貫通孔50を挟んで前後方向に沿って並列するように設置される。また、貫通孔50の近傍には、2本の位置決めピン52(凸部)が立設される。載置ブロック46には、後述するように着座体54が載置される。
【0020】
一方の保持盤36は、基台34の上面に載置されることで該基台34に支持される基部60と、該基部60に立設された支持柱部62とを有する。基部60は略U字形状をなす平板であり、上記したように2個の第1埋込ブロック40が設けられる。支持柱部62は着座体54とともにインストルメントパネル20を保持するためのものであり、例えば、基部60の幅方向左右の端部、中央部、左右の各端部と中央部との間の5箇所に設けられる。
【0021】
保持機構30は、さらに、昇降ロッド44、又は
図5に示す拘束治具64に拘束される着座体54を有する。一層具体的には、着座体54は、本体部66(
図3参照)と、該本体部66に設けられた複数個の吸着パッド70とを有する。インストルメントパネル20は、本体部66が基材22の内面に当接(着座)することで、その形状が保たれるように保持される。また、吸着パッド70は、図示しない吸気ポンプに接続されている。前記吸気ポンプが付勢されると、吸着パッド70が基材22の内面に吸着する。これにより、インストルメントパネル20が着座体54に位置決め固定される。
【0022】
本体部66の下面には、第2パレットクランプ48に対応する位置に第2埋込ブロック72が設けられる。上記と同様に、圧縮エアや作動油等の圧力流体の作用下に第2埋込ブロック72がロックされることで、第2埋込ブロック72から第2パレットクランプ48が離脱することが困難となる。また、本体部66の下面には、位置決めピン52に対応する位置に、凹部としての位置決め穴74が形成される。位置決めピン52が位置決め穴74に進入することで、着座体54が位置ズレを起こすことが防止される。
【0023】
着座体54は、
図4に示すように、本体部66から後方を指向して突出した突端部76をさらに含む。突端部76の後部には、前後方向に沿って並列するように前側ピン80、後側ピン82(いずれも突起)が立設される。これら前側ピン80、後側ピン82の側周壁の、前方、後方を臨む箇所には、第1係合部としての係合溝84(溝)がそれぞれ形成されている。2個の係合溝84同士の位相差は、略180°である。
【0024】
着座体54を交換するときには、
図2に示す第1アーム部材90、第2アーム部材92(いずれも支持体)と、
図5に示す拘束治具64とが用いられる。この中の第1アーム部材90及び第2アーム部材92は、第1着脱機構としての第1ロータリロックを介して基部60に着脱可能に設けられる。すなわち、基部60には、第1ロータリロックを構成する図示しない雌型ジョイントが設けられる。また、第1アーム部材90及び第2アーム部材92の下端(一端)には、第1ロータリロックを構成してコックハンドル94を有する雄型ジョイント96が設けられる。作業者が雄型ジョイント96の下面に設けられたジョイント部を雌型ジョイントに差し込んだ後、前記コックハンドル94を把持して回転させることにより、第1ロータリロックがロック状態となる。すなわち、第1アーム部材90及び第2アーム部材92が基部60に対して連結される。ロックないし連結を解除するには、連結時と逆方向にコックハンドル94を回転させればよい。
【0025】
図4に示すように、第1アーム部材90及び第2アーム部材92の上端(他端)には、第2着脱機構としての第2ロータリロックを構成する雌型ジョイント98が設けられる。その一方で、拘束治具64には、第2ロータリロックを構成してコックハンドル100を有する雄型ジョイント102が設けられる(
図5参照)。作業者が雄型ジョイント102の下面に設けられたジョイント部を雌型ジョイント98に差し込んだ後、コックハンドル100を把持して回転させることにより、第2ロータリロックがロック状態となる。すなわち、拘束治具64が第1アーム部材90及び第2アーム部材92に対して連結される。このとき、拘束治具64は、第1アーム部材90及び第2アーム部材92を介して基部60に支持される。ロックないし連結を解除するには、連結時と逆方向にコックハンドル100を回転させればよい。
【0026】
拘束治具64は、
図5に示す台座110と摺動板112(摺動部材)を有する長尺体であり、その延在方向が基台34の幅方向に一致する姿勢とされる。この中の台座110は、底壁部114と、該底壁部114から略垂直に立ち上がった前壁部116、後壁部118とを有する。さらに、前壁部116及び後壁部118には抜止部120が設けられる。台座110は、底壁部114、前壁部116、後壁部118及び抜止部120によって摺動溝122が形成されることで、浅底の箱形状をなす。摺動溝122の左端及び右端は、双方とも開放端である。
【0027】
底壁部114には、厚み方向(鉛直方向)に沿って貫通する前側挿通孔124、後側挿通孔126(いずれも挿通孔)がそれぞれ形成される。これら前側挿通孔124、後側挿通孔126には、前側ピン80、後側ピン82がそれぞれ挿通される。前側挿通孔124、後側挿通孔126の個数は、拘束治具64で拘束する着座体54の個数に応じて設定される。本実施の形態では、1個の拘束治具64で10個の着座体54中の5個を保持するので、前側挿通孔124、後側挿通孔126の個数はそれぞれ5個である。底壁部114には、さらに、図示しないピン穴が形成されるとともに、ピン穴とは別の箇所にストッパピン128が立設される。
【0028】
また、前壁部116及び後壁部118には、抜止部120が合計で4個設けられる。抜止部120により、摺動板112の摺動溝122からの抜け止めがなされる。
【0029】
さらに、後壁部118には、その延在方向に直交し且つ後方に指向するように2個のフランジ部130が突出形成される。コックハンドル100を有する雄型ジョイント102は、フランジ部130に設けられる。また、台座110には、作業者が把持するアーチ型ハンドル132が前後方向に沿って延在するように取り付けられる。
【0030】
摺動板112は、摺動溝122内に摺動可能に収容される。この摺動板112には、前側挿通孔124、後側挿通孔126の個数に対応する個数の前側スリット134、後側スリット136(いずれも切欠)が形成される。これら前側スリット134、後側スリット136は、貫通孔部としての円形部138と、該円形部138に連なる絞り部140とを有する。これら円形部138及び絞り部140はいずれも、摺動板112の厚み方向に沿って貫通している。
【0031】
円形部138の内径は、前側ピン80、後側ピン82の直径よりも大径に設定される。一方、絞り部140は、台座110及び摺動板112の延在方向、すなわち、基台34の幅方向に沿って延在する。そして、絞り部140の、延在方向に直交する前後方向の長さは、円形部138の内径に比して小さく設定される。すなわち、前側スリット134、後側スリット136は、円形部138から絞り部140に移行することで絞られる。換言すれば、円形部138の開口寸法は、絞り部140の前後方向長さに比して大ある。なお、絞り部140の前後方向の長さは、前側ピン80、後側ピン82の直径に比して小さい。このため、絞り部140の前側内壁部、後側内壁部は、後述するように第2係合部として機能する。
【0032】
摺動板112には、ストッパピン128が挿通されるピン挿通スリット142がさらに形成される。ピン挿通スリット142は、摺動板112の前後方向の略中間に形成されるとともに、基台34の幅方向に沿って延在する。また、ピン挿通スリット142の近傍には、六角柱形状の柱状ハンドル144(把持部)が立設される。柱状ハンドル144には、鉛直方向に沿って延在するピン差込孔146が形成される。ピン差込孔146とピン穴は、前側ピン80及び後側ピン82が絞り部140の左端に位置したときに重なる。このとき、ピン差込孔146に連結ピン148(
図10参照)が差し込まれ、且つ該連結ピン148の先端がピン穴に進入する。
【0033】
後述するように、第1アーム部材90、第2アーム部材92及び拘束治具64は着座体54を交換するときに設けられ、縫製を行うときには取り外される。
【0034】
図1に示すように、縫製機構32は、側面視で横臥したU字形状をなすケーシング150を備える。このケーシング150に、縫製用ロボット152の先端アーム154が連結される。また、ケーシング150には縫製用モータ156が設けられる。
【0035】
図6に示すように、ケーシング150には、ポストベッド160が設けられる。このポストベッド160内には、縫製用モータ156に回転駆動されるルーパー162が収容される。ルーパー162は、ケーシング150の内部でタイミングベルトやギヤトレイン等を介して縫製用モータ156に連結されているが、この構成は公知であるので、図示や説明は省略する。
【0036】
詳細な図示は省略するが、ルーパー162はフック状の掛止爪を有する。この掛止爪には、ミシン針164(針)の針穴に通された糸166が掛止される。ここで、ポストベッド160の上端面は開口しており、従って、ミシン針164はポストベッド160の内部に進入し、又は退出することが可能である。
【0037】
ケーシング150には、往復移動する往復柄168が設けられる。この往復柄168には、針ホルダ170を介してミシン針164が設けられる。ミシン針164は、縫製用モータ156の回転軸が回転することに伴って、往復柄168とともに一体的に往復移動する。この構成も公知であることから、詳細な図示及び説明は省略する。なお、ミシン針164は、ポストベッド160内のルーパー162に対向する。
【0038】
以上の構成において、保持機構30、縫製機構32及び縫製用ロボット152は、制御手段である制御部172に電気的に接続されている。縫製用ロボット152は、制御部172の制御作用下に、縫製機構32を、縫製方向である縫製ラインLに沿って一定速度で移動させる。また、この際、ケーシング150の姿勢をインストルメントパネル20の縫製位置の形状に合わせて変化させる。これにより、縫製機構32の姿勢が、ミシン針164がインストルメントパネル20の縫製位置(縫製ラインL)に対して略垂直となるように調整される。制御部172は、さらに、縫製用モータ156の付勢又は滅勢を行う。
【0039】
本実施の形態に係る縫製装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、着座体54の交換方法との関係で説明する。
【0040】
インストルメントパネル20に対する縫製を行う際には、はじめに、
図1及び
図6に示すように、保持盤36の支持柱部62でインストルメントパネル20を支持する。また、昇降ロッド44のそれぞれを適切な高さ位置とし、インストルメントパネル20の基材22の内面に着座体54の本体部66を着座させる。以上により、インストルメントパネル20が保持盤36、すなわち、保持機構30に保持される。
【0041】
次に、前記吸気ポンプを付勢する。これに伴って吸着パッド70を介して吸気がなされることにより、吸着パッド70が基材22の内面に吸着する。すなわち、インストルメントパネル20が着座体54に位置決め固定される。
【0042】
次に、制御部172の制御作用下に縫製用ロボット152が適宜動作し、その先端アーム154がインストルメントパネル20に接近する。その結果、
図6に示すように、インストルメントパネル20がポストベッド160(ルーパー162)とミシン針164に挟まれる位置となる。この時点で、ルーパー162とミシン針164がインストルメントパネル20を介して対向する。
【0043】
図6に示すように、ポストベッド160及びミシン針164が縫製を行う箇所に到達した際、昇降用シリンダ42は、制御部172の制御作用下に昇降ロッド44を下降させ、着座体54をインストルメントパネル20から離間させる。この離間に伴って着座体54とインストルメントパネル20との間に生じたクリアランスに、ポストベッド160が進入する。このように、縫製装置10は、縫製機構32の位置に応じて着座体54を順次退避させることで、ポストベッド160をインストルメントパネル20の内面に配置して縫製を行うように構成されている。なお、退避する着座体54の吸着パッド70からの吸気は、退避に先んじて停止される。
【0044】
インストルメントパネル20を構成する基材22は厚肉であり、且つ比較的高い剛性を示す。このため、インストルメントパネル20の一部から着座体54を離間させた場合であっても、当該箇所においてインストルメントパネル20が撓む等の変形が生じることが回避される。
【0045】
次に、制御部172は縫製用モータ156を付勢する。これにより往復柄168が上下に往復移動する。勿論、針ホルダ170に保持されたミシン針164も往復柄168と一体的に上下に往復移動する。その一方で、ルーパー162が回転する。ルーパー162は、ミシン針164が1往復する間に1回転する。
【0046】
ミシン針164は、最高点(上死点)から下方に向かう往路を進行する最中、表皮材24の外面側から刺入される。そして、最低点(下死点)に到達したときには、その先端が基材22の下端面から突出するとともに、ポストベッド160の中空内部に進入する。これに伴い、糸166がインストルメントパネル20を貫通する。このとき、ルーパー162の掛止爪が上死点に到達しているので、インストルメントパネル20を貫通した糸166が該掛止爪に引っ掛かる。
【0047】
この状態で、ミシン針164が、下死点から上死点に向かう復路を進行し始める。ミシン針164が上昇し且つルーパー162が回転することに伴って、糸166がポストベッド160の内部に引っ張られる。引っ張られた糸166は、基材22の内面側でループ部を形成する。
【0048】
制御部172は、ミシン針164が往復移動する間、縫製用ロボット152のアームを適宜動作させたり、姿勢を変化させたりする。これにより、
図6に示すように、ミシン針164及びポストベッド160が縫製ラインLに沿って順次移動する。これにより、ステッチ模様である縫い目26が形成される。なお、ポストベッド160の内部に進入する針は、前回の往復移動時に形成された前記ループ部に通される。
【0049】
任意の車種のインストルメントパネル20に対して縫製を行った後に別の車種のインストルメントパネルに対して縫製を行うとき、着座体54の形状や大きさ等がインストルメントパネルに対応しないことが想定される。このような場合には、着座体54を交換する。
【0050】
作業者は、先ず、全ての昇降ロッド44を最高点まで上昇させる。これにより、全ての載置ブロック46の高さ位置が揃う。載置ブロック46及び着座体54は、基台34の幅方向に沿って並列する。
【0051】
作業者は、次に、保持盤36を構成する基部60に対して第1アーム部材90、第2アーム部材92(
図2参照)を取り付ける。このために、基部60に設けられた前記雌型ジョイントに、第1アーム部材90、第2アーム部材92に設けられた雄型ジョイント96のジョイント部を差し込む。その後、コックハンドル94を約90°回転させ、雌型ジョイントと雄型ジョイント96をロック状態とする。これにより、第1アーム部材90、第2アーム部材92の下端が第1ロータリロックを介して基部60に連結される。
【0052】
作業者は、次に、保持機構30の後部側に移動し、
図5に示す拘束治具64を第1アーム部材90、第2アーム部材92の上端に位置決めする。具体的には、作業者は、アーチ型ハンドル132を把持して、第1アーム部材90、第2アーム部材92の上端に設けられた雌型ジョイント98と、拘束治具64に設けられた雄型ジョイント102との位置合わせを行う。その後、
図7に示すように、雌型ジョイント98に対し、雄型ジョイント102のジョイント部を差し込む。
【0053】
この時点では、台座110に形成された前側挿通孔124、後側挿通孔126に対し、摺動板112に形成された前側スリット134、後側スリット136の各円形部138がそれぞれ重なる。着座体54の突端部76に設けられた前側ピン80、後側ピン82は、前側挿通孔124、後側挿通孔126からそれぞれ進入し、その直上の円形部138から露呈する。すなわち、前側ピン80は前側挿通孔124を介して前側スリット134の円形部138に通され、同様に、後側ピン82は後側挿通孔126を介して後側スリット136の円形部138に通される。
【0054】
作業者は、次に、柱状ハンドル144を把持し、摺動板112を右方に移動させる力を付与する。これにより、摺動板112が右方に向かって摺動溝122内を摺動する。このように、柱状ハンドル144を設けたことにより、摺動板112を摺動させることが容易となる。そして、この摺動により、
図8に示すように、前側ピン80、後側ピン82が相対的に前側スリット134、後側スリット136の各絞り部140に移動する。
【0055】
ここで、絞り部140の前後方向の長さは、上記したように前側ピン80、後側ピン82の直径に比して小さい。また、前側ピン80、後側ピン82には、2個の係合溝84がそれぞれ形成されている。従って、
図9に示すように、絞り部140の前側内壁部、後側内壁部が係合溝84に進入する。すなわち、前側ピン80又は後側ピン82の1個につき、摺動板112の2箇所が係合する。結局、図示の例の場合、1個の着座体54と摺動板112の間で4個の係合箇所が形成される。なお、全ての着座体54(全ての前側ピン80及び後側ピン82)と摺動板112の間で形成される係合箇所の合計数は、20個である。以上の係合により、全ての着座体54が拘束治具64に拘束される。
【0056】
摺動板112は、ストッパピン128がピン挿通スリット142の左方内壁部に当接することで停止する。この時点で、柱状ハンドル144に形成されたピン差込孔146と、台座110に形成されたピン穴との位置が合う。なお、前側ピン80又は後側ピン82は、絞り部140の左方内壁部に当接してもよいし、離間していてもよい。
【0057】
作業者は、次に、ピン差込孔146から連結ピン148を差し込む。該連結ピン148の先端がピン穴に進入することで、摺動板112が台座110に位置決め固定される。その後(又は前)に、作業者は、さらに、コックハンドル100を約90°回転させ、雌型ジョイント98と雄型ジョイント102をロック状態とする。これにより、拘束治具64が第2ロータリロックを介して第1アーム部材90、第2アーム部材92の上端に強固に拘束(連結)される。
【0058】
作業者は、次に、第2パレットクランプ48の作動を停止する。これにより、第2埋込ブロック72に対する第2パレットクランプ48のロックが解除される。この解除に伴い、着座体54が、載置ブロック46を介しての昇降ロッド44の拘束から解放される。この状態で全ての昇降用シリンダ42が同期して付勢され、
図10に示すように全ての昇降ロッド44が一斉に下降する。上記したように、着座体54が拘束治具64に拘束され、且つ昇降ロッド44の拘束から解放されているので、着座体54が昇降ロッド44と一体的に下降することが回避される。すなわち、着座体54が昇降ロッド44ないし載置ブロック46から離脱する。
【0059】
作業者は、次に、第1パレットクランプ38の作動を停止する。これにより第1埋込ブロック40に対する第1パレットクランプ38のロックが解除され、その結果、保持盤36が基台34の拘束から解放される。この状態で、保持盤36が、第1アーム部材90、第2アーム部材92、及び拘束治具64と一体的に、搬送用ロボット等の搬送機構で搬出される(
図2参照)。すなわち、保持盤36が基台34から離脱する。拘束治具64には着座体54が拘束されているので、着座体54も拘束治具64に同伴されて基台34から離脱する。
【0060】
次に、上記とは逆の順序で、別の着座体54が載置ブロック46に取り付けられる。具体的には、
図2と同様に、第1アーム部材90及び第2アーム部材92が取り付けられた別の保持盤36が、別の着座体54を拘束した拘束治具64と一体的に、前記搬送機構によって搬入される。この際には、
図10と同様に全ての昇降ロッド44は下降している。また、摺動板112は、前側ピン80、後側ピン82が絞り部140に位置し、且つストッパピン128がピン挿通スリット142の左方内壁部に当接する位置とされている。さらに、連結ピン148がピン穴に進入するとともに、第1ロータリロック及び第2ロータリロックがいずれもロック状態である。
【0061】
保持盤36の基部60が基台34に載置された後、作業者は、第1パレットクランプ38を作動させる。これにより、第1埋込ブロック40が第1パレットクランプ38に対してロックされ、保持盤36の基台34からの抜け止めがなされる。
【0062】
この状態で、作業者は、全ての昇降ロッド44を最高点まで上昇させる。これと一体的に載置ブロック46が上昇するので、第2パレットクランプ48が、着座体54の本体部66に設けられた第2埋込ブロック72に進入する。その結果、
図8と同様の状態となる。第2パレットクランプ48が作動され、第2埋込ブロック72が第2パレットクランプ48に対してロックされることで、載置ブロック46からの着座体54の抜け止めがなされる。すなわち、着座体54が載置ブロック46を介して昇降ロッド44に拘束される。
【0063】
第2パレットクランプ48が第2埋込ブロック72に進入すると同時に、位置決めピン52が位置決め穴74に進入する(
図3参照)。これにより、着座体54の載置ブロック46に対する位置ズレが防止される。
【0064】
作業者は、次に、ピン穴及びピン差込孔146から連結ピン148を取り外す。これにより摺動板112が連結ピン148の拘束から解放され、台座110に対して摺動可能となる。その後(又は前)に、作業者は、さらに、コックハンドル100を約90°回転させ、雌型ジョイント98と雄型ジョイント102をロック解除状態とする。これにより、拘束治具64が、第2ロータリロックを介しての第1アーム部材90、第2アーム部材92の拘束から解放される。
【0065】
作業者は、次に、柱状ハンドル144を把持し、摺動板112を左方に移動させる力を付与する。これにより、摺動板112が左方に向かって摺動溝122内を摺動する。これに伴い、
図7と同様に、前側ピン80、後側ピン82が相対的に前側スリット134、後側スリット136の各円形部138に移動する。摺動板112は、ストッパピン128がピン挿通スリット142の右方内壁部に当接することで停止する。この時点で、前側スリット134、後側スリット136の各円形部138の直下に前側挿通孔124、後側挿通孔126がそれぞれ位置する。
【0066】
前側ピン80、後側ピン82が上記のように移動することにより、絞り部140の前側内壁部、後側内壁部が、前側ピン80、後側ピン82の各係合溝84から離脱する。すなわち、係合溝84と、絞り部140の前側内壁部、後側内壁部との係合が解かれる。しかも、円形部138が前側ピン80、後側ピン82に比して大径であるため、円形部138の内壁部が前側ピン80、後側ピン82に当接することはない。以上のような理由から、着座体54が拘束治具64の拘束から解放される。換言すれば、拘束治具64は、着座体54から離脱可能な状態となっている。
【0067】
その後、作業者は、アーチ型ハンドル132を把持して拘束治具64を持ち上げる。これにより、前側ピン80、後側ピン82が円形部138及び前側挿通孔124、後側挿通孔126から離脱して
図5と同様に拘束治具64が第1アーム部材90、第2アーム部材92から取り外された状態となる。上記したように、着座体54が拘束治具64の拘束から解放され、且つ昇降ロッド44に拘束されているので、着座体54が拘束治具64と一体的に取り外されることが回避される。すなわち、着座体54は、昇降ロッド44ないし載置ブロック46に拘束(保持)された状態を保つ。
【0068】
作業者は、次に、第1アーム部材90、第2アーム部材92を保持盤36から取り外す。具体的には、コックハンドル94を約90°回転させ、雌型ジョイントと雄型ジョイント96をロック解除状態とする。その後、作業者が第1アーム部材90、第2アーム部材92を把持して持ち上げることにより、雌型ジョイントから雄型ジョイント96のジョイント部が離脱する。
【0069】
勿論、残余の着座体54も上記に準じて別の着座体54に交換される。その後は上記と同様に、別の着座体54を用いての別のインストルメントパネル20に対する縫製が行われる。
【0070】
以上のように、本実施の形態によれば、1個の拘束治具64に対し、複数個の着座体54を一括して拘束することが可能である。このため、複数個の着座体54を同時に昇降ロッド44(ないし昇降用シリンダ42)から離脱させることができる。また、拘束治具64による複数個の着座体54への拘束が一括して解除されるので、該複数個の着座体54を昇降ロッド44(ないし昇降用シリンダ42)に同時に取り付けることができる。すなわち、拘束治具64から昇降ロッド44に、又はその逆方向に、複数個の着座体54を一括して受け渡すことが可能である。
【0071】
このように、本実施の形態では、複数個の着座体54を一括して交換することができる。従って、個々の着座体54を個別に交換する作業を行う必要がない。このために交換作業が簡素化されるとともに、作業者の負担が低減する。しかも、着座体54を短時間で交換することができるので、縫製作業の中断時間が短くなる。従って、縫製効率が低下することを回避することができる。
【0072】
また、上記から諒解されるように、本実施の形態では、基台34を汎用部とするとともに、保持盤36(及び着座体54)を、車種に応じた専用部としている。そして、専用部を基台34から取り外して交換することで、車種の変更に対応するようにしている。このため、基台34を複数個用意する必要は特にない。この分、設備投資の低減を図ることができる。
【0073】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、着座体54は本体部66に吸気孔が形成されたものであってもよい。
【0075】
また、摺動溝122の底面と摺動板112との間に、摺動板112の摺動を容易とするための潤滑板を挿入するようにしてもよい。
【0076】
さらに、被縫製物がインストルメントパネル20に限定されるものでないことは勿論である。