特許第6982057号(P6982057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982057腫瘍細胞を検出および/または特徴づけするための方法、および関連装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982057
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】腫瘍細胞を検出および/または特徴づけするための方法、および関連装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20211206BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20211206BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20211206BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20211206BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G01N33/574 D
   G01N33/543 501A
   G01N37/00 101
   C12Q1/06
   C12M1/34 D
【請求項の数】12
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2019-505289(P2019-505289)
(86)(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公表番号】特表2019-514027(P2019-514027A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017059209
(87)【国際公開番号】WO2017178662
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2020年3月9日
(31)【優先権主張番号】1653383
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518357955
【氏名又は名称】シュ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】CHU MONTPELLIER
(73)【特許権者】
【識別番号】518364366
【氏名又は名称】エコール シュペリュール ドゥ フィシック エ ドゥ シミー アンダストリエル ドゥ ラ ビル ドゥ パリ
(73)【特許権者】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(73)【特許権者】
【識別番号】515121759
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ モンペリエ
(73)【特許権者】
【識別番号】518364388
【氏名又は名称】アクスル,ザット デュ ラングドック ルシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】カトリーヌ ミシェル マリルー アリックス−パナビエール
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー デイビッド グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル クレマン リー−ミン ドアノー
(72)【発明者】
【氏名】クレマン ニザック
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ チー−タン ゲ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−マリー ピエール ボドリー
(72)【発明者】
【氏名】エロディ ミシェル クリスティーヌ ブリヤン−リツレ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス エイアー
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ビベット
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/041983(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/092726(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/011808(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/009365(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/045012(WO,A2)
【文献】 特表2008−518884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形癌を患っている患者の生体液から単離される生きた腫瘍細胞(90)を検出および/または特徴づけするための方法であって、以下の:
− キャリア流体(8)に含有された複数の液滴(6)の供給であって、前記液滴(6)のうちの少なくとも1個が、主軸(X)に沿った長尺物を規定する粒子(12)の少なくとも1個の凝集体(10)を含み、少なくともいくつかの液滴(6)が、前記凝集体に固定させることができる腫瘍細胞のプロテオームの少なくとも1個の標的要素を産生することができる細胞(90)を含有し;
− 前記凝集体(10)上への腫瘍細胞のプロテオームの標的要素(37)の固定の少なくとも1個の物理的パラメータ特徴の計測;および
− 前記少なくとも1個の物理的パラメータの計測からの腫瘍細胞(90)の検出および/または特徴づけ、
含み、
ここで前記生きた腫瘍細胞(90)が、循環腫瘍細胞(CTC)および播種性腫瘍細胞(DTC)から成る群から選択される、方法。
【請求項2】
前記方法が、固形癌を患っている患者の生体液から単離される単一の生きた腫瘍細胞(90)を検出および/または特徴づけするための方法であって、以下の:
− キャリア流体(8)に含有された複数の液滴(6)の供給であって、前記液滴(6)のうちの少なくとも1個が、主軸(X)に沿った長尺物を規定する粒子(12)の少なくとも1個の凝集体(10)を含み、少なくともいくつかの液滴(6)が、単一細胞(90)を含み;
− 前記単一細胞(90)が前記凝集体(10)に固定されることができる腫瘍細胞のプロテオームの少なくとも1個の標的要素(37)を産生することができる条件および十分な時間にわたる単一細胞含有(90)液滴(6)のインキュベーション;
− 少なくとも1個の物理的パラメータの計測であって、それぞれの物理的パラメータは、前記凝集体(10)上の腫瘍細胞のプロテオームからの別個の標的要素(37)の固定に特徴的であり;および
− 前記少なくとも1個の物理的パラメータの計測からの単一腫瘍細胞(90)の検出および/または特徴づけ、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計測ステップが、前記液滴(6)内の複数の点に局所的な少なくとも1個の物理的パラメータの計測を含み、ここで、前記計測ステップが、前記液滴(6)内で計測された値の積分の決定を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生きた腫瘍細胞(90)が、乳癌、前立腺癌、結腸癌、直腸癌、甲状腺癌、肺癌、皮膚癌、肝臓癌、精巣癌、および卵巣癌からなる群から選択される固形癌を患っている患者から単離される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記凝集体に固定させることができる腫瘍細胞の前記プロテオームの前記標的要素は、サイトケラチン、組織マーカーおよび間葉系マーカー、PSAタンパク質(前立腺特異抗原)、マンマグロビン、ヒトカリクレイン3(hK3)、ヒト腺性カリクレイン(hK2)、チログロブリン、癌抗原タンパク質CA19−9、CA15−3、CA 125、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、カテプシンD、α−フェトプロテイン、S100タンパク質、FGF−2、EGF、HER2、EGFR(上皮細胞成長因子受容体)、MUC 1およびサイトケラチン19からなる群で選択される腫瘍細胞の特異マーカーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記計測ステップが、前記液滴の循環を伴わずに、マイクロ流体チャンバー内で実施される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下の:
− 前記液滴を循環(22)の中に入れるためのセットおよび複数の分類領域(94、96)、ならびに分類領域(94、96)に向けて前記液滴または一部の前記液滴を選択的に誘導するための手段(98)を含むデバイスを提供し;
− 前記液滴(6)または一部の前記液滴の分類の決定であって、前記決定は、前記複数の分類領域(94、96)のうちの1個を選択的に選び出すことであり;
− 前記決定ステップ中で選択された前記液滴(6)の前記分類領域への前記液滴(6)、前記液滴の一部のそれぞれの輸送、
を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1個の液滴が、少なくとも2個の別個のシグナリング実体(34)を含み、ここで、前記2個のシグナリング実体(34)のそれぞれが、前記凝集体(10)上で別個の標的要素(37)と複合体を形成することができ、ここで、前記方法が、再配置されたシグナリング実体(34)のそれぞれの濃度を示すシグナルを計測することを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくともいくつかの液滴(6)が、前記腫瘍細胞プロテオームの1若しくは複数の要素を分泌、切断または放出することができる腫瘍細胞を含み、ここで、前記腫瘍細胞プロテオームの各要素が別個の標的要素(37)であり、ここで、前記シグナルの計測が前記再配置されたシグナリング実体(34)のそれぞれの濃度を示し、それにより、前記腫瘍細胞プロテオームの(単数もしくは複数の)要素の定量化を可能にする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
固形癌を患っている患者の生体液から単離される生きた腫瘍細胞(90)を検出および/または特徴づけするための装置であって、以下の:
− キャリア流体(8)に含有された複数の液滴(6)を供給するためのセットであって、ここで、前記少なくとも1個の液滴(6)が、主軸(X)に従って長尺物を規定する粒子(12)の少なくとも1個の凝集体(10)を含み、ここで、少なくともいくつかの液滴(6)が、前記凝集体(10)に固定されることができる標的要素(37)を産生することができる腫瘍細胞(90)を含有前記生きた腫瘍細胞(90)が、循環腫瘍細胞(CTC)および播種性腫瘍細胞(DTC)から成る群から選択される、
を含み、
前記装置が、前記凝集体(10)上への標的要素(37)の固定に特徴的な物理的パラメータの計測のためのセットを含むことを特徴とする、装置。
【請求項11】
固形癌を患っている患者の生体液から単離される生きた腫瘍細胞(90)を検出および/または特徴づけするための液滴であって、主軸(X)に沿った長尺物を規定する粒子(12)の凝集体(10)を形成することができる複数の粒子、および腫瘍細胞(90)、そして、記凝集体(10)上に固定されることを目的とした腫瘍細胞(90)のプロテオームの少なくとも1個の標的要素(37)を含み、前記生きた腫瘍細胞(90)が、循環腫瘍細胞(CTC)および播種性腫瘍細胞(DTC)から成る群から選択される、液滴。
【請求項12】
固形癌を患っている患者の生体液から単離される生きた腫瘍細胞を検出および/または特徴づけするための液滴(6)を調製するための方法であって、以下の:
− 液滴(6)を形成することを目的とした流体塊(86)において、主軸(X)に沿った長尺物を規定する凝集体(10)を形成することができる粒子(12)、および複数の細胞(90)の分散であって、ここで、少なくともいくつかの細胞(90)が、腫瘍細胞のプロテオームの標的要素(37)を産生することができる腫瘍細胞であり、前記生きた腫瘍細胞が、循環腫瘍細胞(CTC)および播種性腫瘍細胞(DTC)から成る群から選択され、次いで、
− 各液滴が複数の粒子(12)を含み、一方で少なくともいくつかの前記液滴(6)が、加えて、細胞(90)を含むような、液滴(32)の形態での流体塊(86)の分散
含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学における生物学的診断法の分野に関する。それは、腫瘍細胞の1若しくは複数のセクレトーム要素、特に1若しくは複数のペプチドまたはタンパク質、特に、1若しくは複数の腫瘍マーカーを検出することによって腫瘍細胞を検出および/または特徴づけする方法および装置に関する。また、本発明は、腫瘍細胞の液滴の検出および/または特徴づけ、ならびにそれらの調製方法にも関する。
【0002】
2014年9月に発行された刊行物Nature Reviews Cancer, volume 14, p.623-6131中の論文「Challenges in circulating tumor cell research」には、循環腫瘍細胞を検出するための様々な技術が記載されている。
【0003】
頭字語EPISPOT(上皮免疫スポット)によって一般的に示される循環腫瘍細胞を検出するための方法は、従来技術、特にEP1 506 407によって知られている。この技術は、固形癌を患っている患者の生体サンプル中の循環腫瘍細胞の検出を、これらの細胞によって放出された腫瘍マーカーを検出することによって可能にする。それは、1ウェルあたり2.105個の細胞の割合にて、固体培養面(着目の腫瘍マーカーに特異的な抗体がこの固体培養面に固定されている)、特に96ウェルプレート上への細胞の堆積、それに続く、これらの細胞を培養、その後の、前記細胞の洗浄、そして、特異的標識抗体による着目の腫瘍マーカーの検出を伴う。
【0004】
しかしながら、斯かる方法によって得られる分解能は限定されている。実際には、検出されたタンパク質は同じウェル内の別の細胞に由来する。どの細胞が何を分泌したかを知ることは難しい。そのシグナルは、細胞の不均一性に関する情報を提供していない。加えて、それらの遺伝子型を分析するために細胞を回収することは困難である。
【0005】
本発明は、より正確で、かつ、信頼性が高い検出方法を提供することを目指す。
WO2009/011808A1は、液滴の中にタンパク質を固定する活性を測定するための方法を記載している。
【0006】
Nature Protocols内で2013年4月4日にMazutisらによってオンライン発表された「Single-cell analysis and sorting using droplet-based microfluidics」は、この原理を例示している。
【0007】
マウスハイブリドーマは、抗マウス抗体でコートされたビーズを含む液滴内にカプセル化される。ハイブリドーマは抗体を分泌する。フルオロフォアとカップリングされた二次抗体により、分泌抗体の存在を明らかにすることが可能になる。二次抗体の分布は、分泌抗体が存在しない場合、液滴中で均質であるが、抗体が存在する場合、ビーズ上に再配置される。そのため、この方法は、特定の細胞の活性を測定する際に非常に選択性が高い。
【0008】
その一方、斯かる方法には様々な欠点がある。細胞とビーズを区画化するための方法は無作為である。液滴内のビーズの数は、ポアソン分布則によって推定されることがある。同様に、液滴内の細胞の数も、独立のポアソン分布則によって推定されることがある。ビーズと液滴の初期濃度は、液滴1個あたり平均して1個の細胞と1個のビーズを有するように調整される。そのため、一部の液滴のみが、実施される分析の目的となる。
【0009】
そのうえ、相当なサイズを有する、液滴1個あたり単一のビーズの存在は、本方法の実施にとって好ましくない。実際には、二次抗体はビーズの表面全体に分布する。そのため、当該方法のダイナミックレンジは、ビーズ1個あたりの利用可能な外側表面によって制限される。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、既存の方法よりも信頼性が高く、かつ、高感度な分析方法を提供することであり、従って、細胞、腫瘍、特に、単一の腫瘍細胞または腫瘍細胞の凝集体を検出するおよび/または特徴づけするために、単一のまたは凝集体の形態のいずれかの、生細胞のセクレトームの分析を可能にする。
【0011】
この目的のために、本発明の対象は、腫瘍細胞を検出および/または特徴づけするための方法であって、以下:
− キャリア流体に含有された複数の液滴を供給し、ここで、前記液滴のうち少なくとも1個が、主軸に沿った長尺物を規定する粒子の少なくとも1個の凝集体を含み、ここで、少なくともいくつかの液滴が、前記凝集体に固定されることができる腫瘍細胞の少なくとも1個の標的セクレトーム要素を産生することができる細胞を含み;
− 前記凝集体上への腫瘍細胞の標的セクレトーム要素の固定に特有の少なくとも1個の物理的パラメータを計測し;そして
− 前記少なくとも1個の物理的パラメータの計測から腫瘍細胞を検出および/または特徴づけすること、
を含む。
【0012】
より具体的には、本発明による腫瘍細胞を検出および/または特徴づけする方法は、以下:
− キャリア流体に含有された複数の液滴を提供し、ここで、前記液滴が、主軸に沿った長尺物を規定する粒子の凝集体を形成することができる複数の粒子を含み、ここで、少なくともいくつかの液滴が細胞を含有し;
− 細胞を含む液滴において、前記細胞が、前記凝集体に固定されることができる腫瘍細胞の少なくとも1個の標的セクレトーム要素を産生することができるような条件下、および十分な時間にわたり、複数の液滴をインキュベートし;
− 主軸に沿った長尺物を規定する粒子の少なくとも1個の凝集体の、各液滴における形成;
− 少なくとも1個の物理的パラメータを計測し、ここで、それぞれの物理的パラメータが、前記凝集体上の腫瘍細胞のセクレトームと異なって標的要素の固定に特有であり;そして
− 少なくとも1個の物理的パラメータの計測から腫瘍細胞を検出および/または特徴づけすること、
を含む。
【0013】
細胞とは、単一の細胞または細胞の凝集体、特に、腫瘍細胞の凝集体であることが疑われる凝集体である。
【0014】
腫瘍細胞の凝集体とは、オリゴクローナル起源のものであるので、いくつかの原発性腫瘍細胞の接着またはグループ化によってもたらされる。腫瘍細胞の凝集体は、典型的には2〜15個の腫瘍細胞を含み得る。それらは、実質的に腫瘍細胞から成るが、また、限られた数の、白血球、血小板などの他のタイプの細胞を含み得る。
【0015】
そのため、本発明による方法は、以下のステップ:
− キャリア流体に含有された複数の液滴を提供し、ここで、少なくとも1個の液滴が、主軸に沿った長尺物を規定する粒子の少なくとも1個の凝集体を含み、ここで、少なくともいくつかの液滴が単一細胞を含有し;
− 前記単一細胞が、前記凝集体に固定されることができる腫瘍細胞の少なくとも1個の標的セクレトーム要素を産生することができるような条件下、および十分な時間にわたり、単一細胞を含有する液滴をインキュベートし;
− 少なくとも1個の物理的パラメータを計測し、ここで、それぞれの物理的パラメータが、前記凝集体上の腫瘍細胞のセクレトームと異なって標的要素の固定に特有であり;そして
− 少なくとも1個の物理的パラメータの計測から単一の腫瘍細胞を検出および/または特徴づけすること、
を含む、特に単一の腫瘍細胞を検出および/または特徴づけするための方法に関する。
【0016】
「単一細胞液滴」とは、液滴が単一細胞を含むことを意味する。
「単一腫瘍細胞含有液滴」とは、液滴が腫瘍細胞である単一細胞を含むことを意味する。
【0017】
本発明との関連において、腫瘍細胞は、ハイブリドーマなどの、腫瘍細胞と別の細胞との人工的な融合によって作製された細胞でない。
【0018】
特に、その方法は、そのセクレトームが特定の標的要素を含む単一細胞を含んでいる液滴の存在を決定するか、または液滴を選択することさえ意図しており、ここで、この標的要素は、腫瘍細胞のセクレトームの分子、特に、腫瘍マーカーである。
【0019】
細胞のセクレトームは、培養細胞の条件培地中に存在する要素(例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、もしくは核酸などの有機または無機分子、あるいは小胞)のセットである。
「セクレトーム」という用語は、特定の意味で、培養細胞の条件培地(conditioned medium)中に存在するプロテオーム(すなわち、細胞によって発現されたタンパク質およびペプチドのすべて)の一部を指す。
【0020】
これらの分子、特に、タンパク質またはペプチドは:
− (小胞体やゴルジ体が関与するいわゆる「古典的な」経路、あるいは、例えば、膜輸送体タンパク質による能動輸送、または再循環エンドソームもしくは空胞のエキソサイトーシスによる分泌などのいわゆる「非古典的」経路によって)分泌される。これは、例えば、タンパク質、前立腺特異抗原(PSA)、マンマグロビン、ヒトカリクレイン3(hK3)、「ヒト腺性カリクレイン」(hK2)、チログロブリン、CA19−9タンパク質、CA15−3、CA125(「CA」は「癌抗原」の略語である)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、カテプシンD、α−フェトプロテイン、S100タンパク質、またはFGF−2もしくはEGFの場合である。
− 細胞外ドメインが酵素的に切断される膜タンパク質の場合には、それらの細胞外ドメインで切断され、そして、(タンパク質を除いた)細胞外培地中に放出される。例えば、HER2、EGFR(上皮細胞成長因子受容体)またはMUC1マーカーが切断タンパク質である;または
− 細胞によって放出される。放出された分子は、例えばタンパク質、クレアチンキナーゼ19(サイトケラチン19)など、分泌経路の異なる経路により、例えば、出芽により、細胞によって分泌された非膜タンパク質である。
【0021】
また、エクソソームは、腫瘍細胞のセクレトームの一部でもある。これらは、小さいサイトゾルを囲む脂質二重膜から成る小胞である。エクソソームのサイトゾルは、タンパク質、二本鎖DNAを含み得るが、しかし、RNA(特にmRNA、miRNA)を含んでいてもよい。エクソソームは、腫瘍細胞が受容細胞の活性を調節するために発癌性タンパク質および/または核酸を輸送することを可能にし、その結果、腫瘍原性、腫瘍増殖、転移方法、および薬剤抵抗性において役割を果たしている。
【0022】
本発明による方法は、個別にまたは技術的に実現可能なあらゆる組み合わせに従って採用される以下の特徴の1もしくは複数を含んでもよい:
i)粒子が磁性粒子であり、有利には常磁性粒子であり、好ましくは超常磁性粒子である;
ii)液滴を提供するステップが:
− 液滴を形成するための流体塊(mass of fluid)中での粒子の分散、次いで、
− 液滴の形態の流体塊の分散;
− 主軸に沿った長尺物を規定する、粒子の少なくとも1個の凝集体の各液滴中での形成、ここで、前記粒子の凝集体は、分散後に各液滴中で形成される;
を含む;
【0023】
iii)標的要素が、腫瘍細胞のセクレトームの要素である;
iv)標的要素が、腫瘍細胞のセクレトームのペプチドまたはタンパク質である;
v)標的要素が、核酸(DNAまたはRNA)、特に腫瘍細胞のmiRNAである;
vi)標的要素が、腫瘍細胞のエクソソームである;
【0024】
vii)少なくともいくつかの液滴が、標的要素を産生することができる産生実体(productive entity)を含み、ここで、前記産生実体が、単一の腫瘍細胞または腫瘍細胞の凝集体、特に、単一の循環腫瘍細胞(CTC)、播種性腫瘍細胞(DTC)、またはCTCもしくはDTCの凝集体である;
viii)方法が、測定ステップの前に、検出軸に沿って凝集体の主軸を配向させるステップを含む;
ix)方法が、各測定について異なる検出軸に従って凝集体の主軸を配向させるステップを伴った、複数の計測ステップを含む;
【0025】
x)方法が:
− 液滴循環のセットと検出領域を含むデバイスを提供する;
− 検出領域に向けた液滴の輸送、ここで、液滴内の計測が検出領域内で実施されること、
を含む;
【0026】
xi)方法が:
− 液滴循環のセットと複数の分類領域を含むデバイス、および液滴または一部の液滴を分類領域に向けて選択的に誘導する手段を提供し;
− 液滴または一部の液滴を分類するための決定、ここで、前記決定は、複数の分類領域の中から分類領域を選択的に選び出すことから成り;
− 決定ステップで選ばれた液滴の分類領域への液滴または一部の液滴の輸送、
を含む;
【0027】
xii)少なくとも1個の液滴が、少なくとも1個の標的要素、前記標的要素を補足することができる少なくとも1個の捕捉要素、および捕捉要素法によって捕捉される可能性がある標的要素と複合体を形成することができる少なくとも1個のシグナリング実体(signaling entity)を含み、ここで、前記方法は、凝集体上での少なくとも1個のシグナリング実体の再配置または濃度を示すシグナルを計測することを含む;
【0028】
xiii)少なくとも1個の液滴が、少なくとも1個の標的要素、前記標的要素と複合体を形成することができる少なくとも1個の第1のシグナリング実体、および前記標的要素と複合体を形成することができる少なくとも1個の異なる第2のシグナリング実体を含み、ここで、前記方法は、凝集体上のそれぞれの再配置されたシグナリング実体の濃度を示すシグナルを計測することを含む;
【0029】
xiv)少なくとも1個の液滴が、少なくとも1個の標的要素、前記標的要素と複合体を形成することができる少なくとも1個のシグナリング実体、および前記標的要素と複合体を形成することができる少なくとも1個の定量化実体を含み、ここで、前記方法が:
− 凝集体上に再配置されたシグナリング実体の濃度を表すシグナルを計測し;
− 凝集体上に再配置された定量化実体の濃度を表すシグナルを計測し;
− 再配置された量子化実体(quantization entity)のシグナルに対する再配置されたシグナリング実体のシグナルの比から、標的要素とシグナリング実体との解離定数を決定すること、
を含む;
【0030】
xv)少なくとも1個の液滴が、少なくとも2個の別個のシグナリング実体を含み、ここで、前記2個のシグナリング実体のそれぞれが、凝集体上で別個の標的要素との複合体を形成することができ、ここで、前記方法は、再配置されたシグナリング実体のそれぞれの濃度を表すシグナルを計測することを含む;
【0031】
xvi)少なくともいくつかの液滴が産生実体を含み、ここで、前記産生実体が、腫瘍細胞のセクレトームの要素を産生することができる細胞であり、ここで、前記腫瘍細胞のセクレトームの各部材が個別の標的要素である一方で、再配置されたシグナリング実体のそれぞれの濃度を示すシグナルの計測が、セクレトームの(単数もしくは複数の)要素の定量化を可能にする;
【0032】
xvii)物理的パラメータの計測が、放射能、比色定量または蛍光測定である;
xviii)液滴のうちの少なくとも1個が、標的要素を分泌できる細胞を含み、方法が、前記細胞によって標的要素が液滴中に分泌される間のインキュベーションステップを含む;
【0033】
xix)方法が、液滴のうちの少なくとも1個において凝集体から離れて位置する第1の点で局所的に物理的パラメータを計測し、そして、同じ液滴内の凝集体の近傍に位置する第2の点で局所的に、同じ物理的パラメータを計測するステップを含む;
【0034】
xx)最大粒子サイズが、液滴直径の50%未満である;
xxi)液滴が、少なくとも1個のシグナリング実体を含有し、物理的パラメータの計測が、液滴内での、または凝集体に対するシグナリング実体の位置に依存する;
【0035】
xxii)プロデューサー実体(producer entity)が、要素、特に、腫瘍細胞のセクレトームのタンパク質およびペプチドから成る群から選択される複数の標的要素を産生する;
【0036】
xxiii)方法が、産生実体(producing entity)の少なくとも1個の特徴を決定するステップを含む;
xxiv)分類を決定するステップが、計測ステップ後に存在する;
xxv)液滴が超常磁性粒子を含有し、ここで、前記液滴または一部の液滴が、磁場、電場、誘電泳動、電気合体(electrocoalescence)、または表面弾性波から選択される誘導手段によって分類領域に向けて誘導される;
【0037】
xxvi)一部の液滴が、磁力によって抽出され、ここで、前記抽出部分が、副液滴(auxiliary droplet)を形成し、かつ、凝集体を含有する;
【0038】
xxvii)粒子が、標的要素を固定されるように構成された捕捉要素を用いて機能化され、一方で、各液滴が、標的要素を固定することができるシグナリング実体を含む;
【0039】
xxviii)シグナリング実体が、蛍光、放射性である、または着色されている;
xxix)物理的パラメータの計測が、クロモメトリー(chromometry)、蛍光または放射能の計測である;
【0040】
xxx)物理的パラメータの計測が、液滴内の蛍光、クロモメトリーまたは放射能シグナルの位置を含む;
【0041】
xxxi)物理的パラメータの計測が、液滴内の凝集体に関する蛍光、クロモメトリーまたは放射能のシグナルの位置を含む;
xxxii)物理的パラメータの計測が、好ましくは凝集体のレベルにて、液滴内の蛍光、クロモメトリーまたは放射能のシグナルの強度を計測することを含む;
【0042】
xxxiii)物理的パラメータの計測が、好ましくは凝集体のレベルにて、液滴内の蛍光、クロモメトリーまたは放射能のシグナルの位置および/または強度の経時的な変動を含む;
【0043】
xxxiv)各液滴が、少なくとも2個の別個のシグナリング実体を含み、ここで、前記2個のシグナリング実体のそれぞれが、凝集体上で別個の標的要素と複合体を形成することができ、ここで、各シグナリング実体が、個別の蛍光チャンネルの蛍光である;
【0044】
xxxv)細胞が腫瘍細胞、特に単一の腫瘍細胞または腫瘍細胞の凝集体である;
xxxvi)細胞、特に単一細胞または細胞の凝集体が、生体液に由来し、かつ、循環腫瘍細胞および播種性腫瘍細胞から成る群から選択される;
【0045】
xxxvii)測定ステップが、液滴内に位置した複数の点で局所的な少なくとも1個の物理的パラメータの計測を含み、ここで、前記測定ステップが、液滴内の測定値の積分の決定を含むことが好ましい;
【0046】
xxxviii)測定ステップが、液滴の循環を伴わずに、マイクロ流体チャンバー内で実施される;
【0047】
xxxix)方法が:
− 液滴の循環のセット、複数の分類領域、および分類領域に向けて液滴または一部の液滴を選択的に誘導するための手段を含むデバイスの提供;
− 液滴または一部の液滴に対する分類決定、ここで、前記決定は、複数の分類領域の中から選択的に分類領域を選び出すことを伴う;
− 決定ステップ中に選択された液滴の分類領域に向けた液滴、または一部の液滴それぞれの輸送;
− 任意選択により、さらに、分類領域への輸送によって選別された液滴を採集し、次いで、選別され採集された液滴を溶解し、さらにまた、前記液滴を溶解し、選別され溶解された液滴内に含有された生きた腫瘍細胞を採集すること、
を含み;
【0048】
xl)少なくとも1個の液滴が少なくとも2個の別個のシグナリング実体を含み、ここで、前記2個のシグナリング実体のそれぞれが、凝集体上で別個の標的要素と複合体を形成することができ、ここで、前記方法が、再配置されたシグナリング実体のそれぞれの濃度を示すシグナルを計測することを含む;
【0049】
xli)少なくともいくつかの液滴が、腫瘍細胞セクレトームの1若しくは複数の要素を分泌、切断、または放出することができる単一の細胞または細胞の凝集体を含み、ここで、腫瘍細胞セクレトームの各要素は、個別の標的要素であり、ここで、再配置されたシグナリング実体のそれぞれの濃度を示すシグナルの測定が、腫瘍細胞セクレトームの(単数もしくは複数の)要素の定量化を可能にする。
【0050】
本発明はまた、単一の腫瘍細胞または腫瘍細胞の凝集体の形態のいずれかで、腫瘍細胞を検出および/または特徴づけするための装置であって、以下の:
− キャリア流体中に含有された複数の液滴を供給するセット、ここで、前記液滴のうちの少なくとも1個が、主軸に沿った長尺物を規定する粒子の少なくとも1個の凝集体を含み、ここで、少なくともいくつかの液滴は、前記凝集体に固定されるように構成された標的要素を産生することができる単一の腫瘍細胞または細胞を凝集体の形態で含有する、
を含む装置であって、
【0051】
前記装置が、凝集体上への標的要素の固定に特有の物理的パラメータの計測のセットを含むことを特徴とし、ここで、任意選択で、以下の:
− 液滴の循環のセット、
− 液滴の分類決定セット、
− 分類決定に従った液滴ソーティングセット、
をさらに含む装置にも関する。
【0052】
本発明の対象はまた、主軸に沿った長尺物を規定する粒子の凝集体を形成することができる複数の粒子、および単一または腫瘍細胞の凝集体の形態での腫瘍細胞、そして、任意選択で、腫瘍細胞セクレトームの少なくとも1個の標的要素(腫瘍細胞の凝集体の形態に特有であって、前記凝集体に固定されることができる)を含む、単一または腫瘍細胞の凝集体の形態のいずれかの、腫瘍細胞の検出および/または特徴づけのための液滴でもある。
【0053】
本発明の対象はまた、以下の:
− 液滴を形成することを目的とした流体塊中に、主軸に沿った長尺物を規定する凝集体を形成するのに好適な粒子、および複数の細胞を分散させ、ここで、前記細胞の少なくともいくつかが、腫瘍細胞のセクレトームの標的要素を産生することができる腫瘍細胞であり、次いで、
− 各液滴が複数の粒子を含み、加えて、少なくともいくつかの液滴が、単一細胞または細胞の凝集体の形態を含むような、液滴の形態での流体塊の分散、そして、
− 任意選択で、主軸に沿った長尺物を規定する、粒子の少なくとも1個の凝集体を各液滴中で形成すること、ここで、前記粒子の凝集体は、分散後に各液滴中で形成される、を含む、単一または腫瘍細胞の凝集体の形態のいずれかの、腫瘍細胞の検出および/または特徴づけのための液滴の調製方法でもある。
【0054】
特に「単一細胞」モードによる、本発明は、例示のためだけに示された以下の説明を読み、添付図面を参照することで、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明による第1の分析装置の主要な要素の略図を示す。
図2】第1の装置を用いた方法ステップ(method step)の略図を示す。
図3】第1の装置を用いた方法ステップの略図を示す。
図4】本発明による異なる方法ステップ中の本発明による第2の装置の一部の写真を示す。
図5】本発明による異なる方法ステップ中の本発明による第2の装置の一部の写真を示す。
図6】本発明による異なる方法ステップ中の本発明による第2の装置の一部の写真を示す。
図7】本発明による異なる方法ステップ中の本発明による第2の装置の一部の写真を示す。
図8】本発明による第3の装置の略図を示す。
図9】液滴の離隔および読み取りのセットを示す。
図10】液滴の離隔および読み取りのセットを示す。
図11】液滴を生成するためのデバイスを示す。
図12】液滴を生成するためのデバイスを示す。
図13】一方法を実装するステップ中の液滴の略図を示す。
図14】方法の適用に関する実施例を示す。
図15】方法の適用に関する実施例を示す。
図16】方法の適用に関する実施例を示す。
図17】方法の適用に関する実施例を示す。
図18】方法の適用に関する実施例を示す。
図19】方法の適用に関する実施例を示す。
図20】方法の適用に関する実施例を示す。
図21】方法の適用に関する実施例を示す。
図22】方法の適用に関する実施例を示す。
図23】方法の適用に関する実施例を示す。
図24】方法の適用に関する実施例を示す。
図25】方法の適用に関する実施例を示す。
図26】方法の適用に関する実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
第1の装置
本発明による、液滴の内容物を分析し、かつ、単一または腫瘍細胞の凝集体の形態のいずれかで、腫瘍細胞を検出および/または特徴づけするため第1の装置1が図1に示されている。
【0057】
装置1は、キャリア流体8に含有される複数の液滴6の供給セット4を含み、液滴6の少なくとも一部は、主軸Xに従って長尺物を規定する、粒子12の少なくとも1個の凝集体10含む。
【0058】
長尺物は、細長い形状を有する物体である。細長い形状は、主軸に対して垂直方向のその長さよりも長い主軸に沿った長さを有する。よって、球は細長くない。例えば、楕円形の物体、円錐、棒または非球形の卵形は細長い形状を有する。
【0059】
装置1は、液滴中の物理的パラメータの計測セット14をさらに含む。
【0060】
計測セット14は、例えば、液滴のうち少なくとも1個における凝集体10から離れて位置する第1の点16における局所的な、物理的パラメータの計測、および同じ液滴内の凝集体10の近傍にある第2の点18における局所的な、同じ物理的パラメータの計測を実施することができる。
【0061】
装置1はまた、循環セット22、循環導管24および検出領域26を含むデバイス20を備える。
【0062】
循環セット22は、導管24内のキャリア液8において各液滴6を連続的な液滴の列として循環させることができる。
【0063】
供給セット4は、充填セット28および凝集セット30を備える。供給セット4は、離隔セット31をさらに備える。
【0064】
充填アッセンブリ28は、粒子12の分散体を含む複数の初期液滴32を供給することができ、初期液滴32の少なくとも1個は、腫瘍細胞90のセクレトームの少なくとも1個の標的要素37をさらに含む。
【0065】
離隔セット31は、液滴の列の2個の連続する液滴6を離間すること、すなわち、2個の連続する液滴の間の距離を大きくすることができる。例えば、離隔セット31は、キャリア流体入口8を備える。離隔セットの例は図9および図10に示される。
【0066】
キャリア流体8は、液滴の列の2個の連続する液滴6を分離して、それら液滴の接触を防ぐことができる。あるいは、液滴6の分離は、機械デバイスによって実施されてもよい。
【0067】
液滴6およびキャリア流体8の内相を形成する流体は、実質的に非混和性である。例えば、液滴6は水性内相を含み、キャリア流体8は有機相または油相である。
【0068】
キャリア流体8は有利にはフッ素化オイルである。
【0069】
キャリア流体8または液滴の内相を形成する流体は、例えば米国特許第2010/0105112号に記載されているような、接触した2個の液滴6の融合を防ぐことができる界面活性剤、またはさらにRainDance Technologies製の界面活性剤EAを有利には含む。
【0070】
「実質的に非混和性である」とは、一般に、25℃および周囲圧力にて計測された、キャリア流体8中で液滴を形成する流体の溶解度が、1%未満であることを意味する。
【0071】
液滴6のサイズは、例えば1μm〜1000μmの間に含まれる。液滴6の容積は、有利には0.1ピコリットル〜1マイクロリットルである。
【0072】
供給された液滴6は実質的に単分散する。これは、液滴6の多分散度が5%未満であることを意味する。
【0073】
図示された例では、液滴6は球形である。あるいは、液滴6は、導管24の循環軸Yに沿って細長い形状であってもよい。あるいは、液滴6は、循環軸Yに垂直な軸に沿って平らにされた円盤(puck)の形状であってもよい。
【0074】
液滴の組成
各初期液滴32は、ベース流体(base fluid)、ベース流体中の固体粒子12の分散体、および複数のシグナリング実体34を含む。さらに、少なくとも1個の初期液滴32は、細胞90、好ましくは単一の腫瘍細胞または腫瘍細胞の凝集体、および任意選択で、腫瘍細胞セクレトームの少なくとも1個の標的要素37を含む。
【0075】
先に示されているとおり、液滴6の容積は、有利には0.1ピコリットル〜1マイクロリットルである。細胞の容積は、約1ピコリットルである。単一細胞または腫瘍細胞の凝集体をカプセル化するために、単一細胞に関して、20〜150ピコリットル、例えば、20〜50ピコリットル、または30〜40ピコリットルの液滴容積であり、あるいは、特に細胞の凝集体に関しては、30〜40ピコリットルであってもよいが、有利には60〜150ピコリットル、または80〜120ピコリットルの液滴容積から選択される。
【0076】
単一細胞と凝集体の分析は、同時または連続して行われてもよい。同時分析に関して、細胞凝集体をカプセル化することができる液滴容積(例えば、60〜150ピコリットル、典型的には約100pl)を使用することが有利である。連続分析に関して、単一細胞と細胞凝集体を分離し、それに続いて、一方で、単一細胞の、そして、もう一方で、細胞凝集体の個別のカプセル化のために、(Sajeesh and Sen, Microfluidics and Nanofluidics 2014, 17, 1-52に記載された技術を用いた)統合分離システムが使用されてもよい。あるいは、単一細胞および細胞凝集体は、小容積(例えば、20〜50ピコリットル)の液滴中にカプセル化されてもよく、前記細胞凝集体はソートされ、それに続いて、前記細胞凝集体を含む液滴に対して容積が増加される。単一細胞と細胞凝集体の分離はまた、本発明の実施前に行われてもよく、次に、単一細胞と細胞凝集体は、連続して、かつ、個別に分析される。
【0077】
液滴は、初めは、ベース流体、典型的には、DMEMまたはRPMIなどのように哺乳動物細胞の(特に、ヒト細胞の)培養に合わせた培地中に細胞を含み、ここで、前記ベース流体は、その時、細胞のセクレトームの要素を欠いている。セクレトーム要素は、単一細胞からの分泌、切断または放出によって、ベース流体中に時間と共に蓄積する。
【0078】
ベース流体は、特に単一細胞が腫瘍細胞であるかまたは細胞凝集体が腫瘍細胞を含むかもしくはそれらから成るとき、液滴内の単一細胞または細胞凝集体が、凝集体に結合されることができる腫瘍細胞のセクレトームの少なくとも1個の標的要素を産生することができるように設計される。
【0079】
例えば、液滴中にカプセル化された、単一または細胞凝集体の形態の各腫瘍細胞90は、標的要素37を産生することができる。特に、腫瘍細胞90は、タンパク質またはペプチドなどのセクレトーム要素、特に腫瘍を指し示すタンパク質またはペプチドを分泌、切断、または放出する。単一または細胞凝集体の形態の腫瘍細胞は、特に循環腫瘍細胞または播種性腫瘍細胞である。
【0080】
粒子12は、細長い形状の凝集体10を形成するためのものである。例えば、粒子12は、磁場を印加すると磁気モーメントを獲得する超常磁性粒子である。超常磁性は、強磁性またはフェリ磁性材料が小粒子またはナノ粒子の形態にあるとき、それらの材料に現れる挙動である。十分に小さいサイズの粒子では、温度の影響下で磁化の向きが自発的に反転することがある。本明細書における「磁性粒子」という用語は、超常磁性粒子を指す。
【0081】
磁性粒子12は、例えば、Dynal(Life Technologies)、AdemtechまたはMiltenyiによって供給される粒子の中から選択される。
【0082】
粒子12は例えばナノメートル単位である。したがって、粒子12の最大寸法は1μm未満であり、例えば、50〜1,000nmの間に含まれる。粒子12は有利には実質的に単分散する。例えば、粒子12の最大寸法間の変動は厳密に10%未満である。液滴6中の粒子12のサイズおよび数は、所望の数の凝集体を形成するように選択される。粒子12の最大寸法サイズは、液滴6の直径の50%未満である。
【0083】
粒子12の濃度によって、コロイド安定性が得られる。
【0084】
液滴6中の粒子12の濃度は、粒子12が液滴6の容積の0.1〜5%の間、例えば1.7%となるものである。
【0085】
一例において、33ピコリットルの各液滴6は、平均して、300nmの直径を有する500個の粒子12を含有する。
【0086】
粒子12は最初に、初期液滴32中で均質な分散体を形成する。これらは、初期液滴32の容積中に実質的に均一に分布している。したがって、粒子12の濃度は、初期液滴32の全体にわたって均質になる。
【0087】
粒子12は、表面材料からなる生体分子の結合を可能にする表面を有利には有する。例えば、粒子12は、COOHまたはNH2官能基を有するポリマーで覆われる。
【0088】
有利には、この表面材料はまた、液滴中での粒子12の自発的な凝集を制限できる。
【0089】
さらに、前記表面材料は、例えば、凝集体における1個のビーズの材料とその隣接ビーズの材料との間の非特異的結合により、凝集体10の安定性を有利には促進できる。
【0090】
粒子12は有利には機能化される。このことは、粒子12の表面材料が機能性要素を含むことを特に意味する。
【0091】
図示された例では、機能性要素として、捕捉要素36を含む。捕捉要素36は、例えば、標的要素37を捕捉することができる。捕捉要素36は、標的要素37を介してシグナリング実体34に間接的に結合することができる。
【0092】
単一または凝集体の形態での腫瘍細胞によって分泌または放出される、あるいは単一または凝集体の形態で腫瘍細胞から切断される標的要素37は、粒子12捕捉要素36の両方によって、およびシグナリング実体34によって認識される。
【0093】
標的要素37がセクレトームタンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物またはエクソソームであるとき、捕捉要素36が、標的要素37に向けられたか、または特異的なポリクローナル抗体または(複数のコピーの)モノクローナル抗体によって有利には構成される。
【0094】
標的要素37がセクレトームの標的核酸、例えばmiRNAなどであるとき、捕捉要素36が、前記標的核酸の配列に相補的である配列を含むまたはそれらから成る標的核酸、好ましくは核酸にハイブリダイズする(複数のコピーの)核酸によって有利には構成される。捕捉核酸は、典型的には、例えば10〜200、10〜100、10〜50、または10〜30ヌクレオチドから成るDNA配列である。
【0095】
標的要素37がエクソソームであるとき、捕捉要素36は、膜に存在するタンパク質に向けられた抗体によって、Kuhnら(Integr Biol, 2012, 4, 1550-1555)に記載の、固体表面、例えば粒子上に固定された脂質またはステロールによって、有利には構成される。
【0096】
標的要素の性質に依存する、同じ様式で、シグナリング実体34は、(i)標的要素37に向けられたかまたは特異的なポリクローナル抗体または(複数のコピーの)モノクローナル抗体、ここで、前記モノクローナルまたはポリクローナル抗体が検出できるように標識される、または(ii)標的核酸の配列に相補的な配列を含むかまたはそれらから成る標的核酸、好ましくは核酸にハイブリダイズするシグナリング核酸(多重コピー)によって有利には構成され、ここで、前記シグナリング核酸は検出できるように標識される。
【0097】
マーカーは、典型的には、抗体または核酸に直接的または間接的にカップリングされた放射性要素、発色団化合物、フルオロフォア、または酵素であり得る。
【0098】
液滴6中のこれらの標的要素37の存在が、後で記載されるような、凝集体10へのシグナリング実体34の再配置を可能にする。
【0099】
その一方、単一細胞が腫瘍細胞でないとき、細胞凝集体が腫瘍細胞を含まないとき、または単一細胞または細胞凝集体が腫瘍細胞セクレトームの標的要素37を産生しないか、または十分な量でないとき、シグナリング実体34は凝集体10上に再配置されない。
【0100】
よって、凝集体へのシグナリング実体34の再配置は、単一または凝集体の形態での細胞が、標的要素37を分泌、切断または放出することを検出し、そして、それにより:
− 前記標的要素が腫瘍細胞または腫瘍細胞型の特異的マーカーであれば、前記細胞が腫瘍細胞であるという特徴づけ、および/または
− 前記標的要素37が細胞のセクレトームの一部であるという特徴づけ、
を可能にする。
【0101】
いくつかの別個の標的要素37が探索されるとき、別個のシグナリング実体と別個の捕捉要素が結合する。それらの再配置は、例えば、別個の蛍光チャンネルにより、別個のシグナリング実体と別個の捕捉要素によって独立に検出される。
【0102】
別個の標的要素と結合する別個のシグナリング実体34の各再配置は、前記細胞が結合した標的要素37を分泌、切断または放出するのを検出することを可能にする。
【0103】
凝集セット30は、主軸Xに沿った粒子12の凝集体を生成することができる。
【0104】
凝集セット30は、例えば、導管24の両側に位置する2個の磁石38を含む。磁場の向きは循環軸Yに対して平行ではなく、有利には循環軸Yに対して垂直である。凝集アッセンブリ30は、各液滴6内に細長い凝集体を形成することを可能にする。
【0105】
一実施形態において、磁石38は永久磁石である。
【0106】
あるいは、凝集セット30は非永久磁石を備える。
【0107】
あるいは、凝集セット30は、特定の液滴においてのみ細長い凝集体10を生成するために、活性モードから非活性モードに切り替えることができる。
【0108】
例えば、粒子12の各凝集体10は、主軸Xに沿って配向された柱(column)を含む。柱の高さは、液滴6の直径の50%〜100%の間に有利には含まれる。柱の幅は、例えば柱の高さの60%未満である。
【0109】
さらに、凝集セット30は、例えば、凝集体を優先軸(preferential axis)に沿って配向させることができる。図示された例では、凝集体12の軸Xは、循環導管24内の液滴6の循環軸Yに対して垂直になっている。
【0110】
計測セット14は、例えば、循環軸Yに対して垂直のまたは傾斜した軸X’に沿って延びる線に沿って、蛍光強度を光学的に計測することができるレーザー線を含む。
【0111】
計測セット14は、検出領域26において液滴内の計測を実施することができる。
【0112】
レーザー線の軸X’は、検出領域26内の凝集体Xの軸に対して有利には平行である。
【0113】
キャリア流体8の流量が一定である場合、レーザー線によって得られるシグナルの経時的計測値(measurement overtime)は、レーザー線の前を通過する液滴6の空間走査に対応する。これにより、連続的に複数の計測点、特に、凝集体10から離れて位置する少なくとも1個の第1の計測点16、および凝集体10の近傍において凝集体10のより近くに位置する第2の計測点18を得ることが可能になる。
【0114】
実際には、計測セット14に面した漸進的通過の間に、液滴6の長手方向寸法にわたって、複数の連続的計測点が取られる。
【0115】
図1図3に示される例では、シグナリング実体34は蛍光性である。
【0116】
循環導管24は、供給セット4から計測セット14への循環方向において循環軸Yに沿った液滴6、32の循環を可能にするためのものである。
【0117】
循環導管24は1mm以下の内径を有利には有する。
【0118】
循環導管24は、循環軸Yに沿って細長くなっている。循環導管24は、円形または楕円形のような丸い輪郭を有する交差断面、あるいは長方形の輪郭などの多角形の導管による交差断面を有する。
【0119】
循環導管24は、例えば、計測セット14による光学パラメータの計測を可能にする半透明材料で規定される。あるいは、循環導管24は、検出領域26内に少なくとも1つの透明計測窓を規定する。
【0120】
循環導管24の壁は、キャリア流体8に対して不浸透性である。
【0121】
例えば、循環導管24は、有利には1mm未満の内部寸法を有する毛管内に規定される。あるいは、循環導管24は、マイクロ流体チップ内に規定される。
【0122】
液滴循環セット22は、導管24内で液滴6、32を循環方向に1個ずつ移動させるためのものである。
【0123】
循環セット22は、例えば、キャリア流体8に制御流量を適用することが可能なシリンジポンプを備える。あるいは、循環セット22は、圧力制御器を備えてもよい。
【0124】
第1の装置を用いた分析方法
今度は、第1の装置1に適用される本発明による第1の分析方法について説明する。
【0125】
前述した装置1が供給される。前述のような初期液滴32は、キャリア流体8中に調製される。
【0126】
好ましくは、粒子12は各初期液滴32中で均質に分散される。初期液滴32に対する個々の粒子12の小さなサイズを考慮すると、各初期液滴32は、例えば10個を超える多数の個々の粒子12を含有する。粒子12を1個も含まない初期液滴32を得る確率は、非常に低いか、または0である。
【0127】
いくつかの液滴6は、標的要素37を分泌、放出または切断する単一の腫瘍細胞90を含む。
【0128】
好ましくは、シグナリング実体34は、各初期液滴32内に均質に分散する。
【0129】
初期液滴32内には、特定の親和性を有する要素間に結合が形成される。
【0130】
一例において、各標的要素37は、シグナリング実体34および捕捉要素36に結合される。シグナリング実体34は、このようにして粒子12上に再配置される。
【0131】
以下において、「再配置した」実体とは、凝集体10に結合する実体に関する。
【0132】
初期液滴32は、循環セット22によって導管24内でキャリア流体8と一緒に循環する。
【0133】
少なくとも1個の初期液滴32は、凝集セット30に導かれる。主軸Xに沿った長尺物を規定する、粒子12の凝集体10は、凝集セット30によって初期液滴32内で形成される。
【0134】
好ましくは、粒子12が磁性粒子である場合、粒子12は凝集セット30の各磁石38の前を通過する間に主軸Xに沿って整列する。
【0135】
長尺物を含む液滴6は、検出領域26へと運ばれる。物理的パラメータは、計測セット14によって、液滴6のうち少なくとも1個における少なくとも1個の第1の点16にて局所的に計測される。
【0136】
特定の用途では、物理的パラメータは、計測セット14によって、液滴6のうち少なくとも1個における少なくとも1個の第1の点16において局所的に計測され、同じ物理的パラメータが、計測セット14によって、同じ液滴6における凝集体10近傍の少なくとも1個の第2の点18において局所的に計測される。
【0137】
計測
図2は、例として、異なる液滴6について得られた異なる計測値を示している。グラフは、レーザー線によって経時的に計測された蛍光強度を示している。
【0138】
蛍光強度は、シグナリング実体34の波長特性の範囲内で計測されている。この例では、蛍光強度は、粒子12の波長特性の範囲内でさらに計測されており、粒子12は蛍光性である。したがって、凝集体10をより容易に位置づけることができる。
【0139】
レーザー線上で計測されたシグナリング実体34の蛍光に対応する蛍光強度40は、図2において、異なる液滴6ごとに点線で示されている。
【0140】
粒子12の蛍光に対応する蛍光強度41は、図2において、異なる液滴6ごとに実線で示されている。
【0141】
計測ステップは、液滴内に位置する複数の点において局所的に物理的パラメータを決定することを含む。計測ステップは、複数の点における計測値の累積、例えば液滴6内での計測値の積分の決定をさらに有利には含む。
【0142】
図示された第1の液滴42は、異なるシグナリング実体34が粒子12上に再配置していない液滴6である。シグナリング実体34の分布は、液滴6内で均質になっている。蛍光強度シグナルは、プラトー44として計測される。
【0143】
図示された第2の液滴48は、シグナリング実体34の一部が粒子12上に再配置した液滴6である。実際には、これらのシグナリング実体34は、捕捉要素36によって捕捉された標的要素37に結合している。この場合、凝集体10の近傍での蛍光強度は、液滴6の残り部分よりも顕著である。プラトー52に加えてピーク50を有する蛍光強度シグナルが計測されている。
【0144】
凝集体10から遊離しているシグナリング実体34が少ないため、第2の液滴48のプラトー52の高さは、第1の液滴42のプラトー44の高さよりも低くなっている。
【0145】
図示された第3の液滴56は、シグナリング実体34の大部分が凝集体上に再配置した液滴である。蛍光強度シグナルは、ピーク58およびプラトー59を有する。より多くのシグナリング実体34が粒子12によって捕捉され、したがって、凝集体10の近傍に位置しているため、計測されたピーク58の高さは、第2の液滴48において計測されたピーク50の高さよりも高くなっている。
【0146】
図3は、再配置したシグナリング実体34の濃度を推定するために使用されるパラメータの選択を示している。
【0147】
時間tに対するシグナルSを示す図3には、より高いシグナルピークを有する(左側および右側の)1つの凝集体または2つの凝集体(中央)を含有する、3個の液滴が示されている。有用なパラメータは、シグナルの極大値(Maxで示される)または所定の閾値を基準とするシグナルの積分値(Int)であってもよい。
【0148】
第1の方法は、各液滴6におけるシグナルの極大値(Max)、すなわち凝集体上に再配置したシグナルピークの高さによって、この濃度を推定することからなる。
【0149】
より精密な第2の方法は、例えば図3に示すように、各液滴6について、ユーザーによって設定された閾値を超えたシグナルの積分値(Int)を計算することからなる。この方法は、シグナルの分散を制限する上でより興味深いことがある。
【0150】
これらのシグナル処理方法はともに、リアルタイムで実施することができる。
【0151】
他の方法、例えばこれらのアプローチの組み合わせは、例えば再配置したシグナリング実体34および再配置していないシグナリング実体34両方の計測に適用することができる。
【0152】
本発明は、液滴6中の標的要素37の濃度の計測をさらに可能にする。
【0153】
これを行うための単純なケースは、以下の条件:
− 捕捉要素36が、標的要素の少なくとも90%超、有利には全体を凝集体上に捕捉するのに十分な量存在し、標的要素37に対する十分な親和性を有し;
− シグナリング実体34の濃度が標的要素37の濃度よりも大きく、シグナリング実体34と標的要素37との間の解離定数Kdが標的要素37の濃度よりも小さく、有利には10倍超である、という条件に当てはまる場合である。これは、典型的には、サブナノモルのKdを有するモノクローナル抗体のような最適な用量の試薬が使用されるケース、および1ナノモル濃度超の標的要素37の濃度を検出することが意図されるケースである。
【0154】
「ナノモル濃度」は、1ナノモル/Lを意味すると理解される。
【0155】
これらの特定の条件下において、各標的要素37の存在により、捕捉要素36−標的要素37−シグナリング実体34複合体の形成がもたらされる。したがって、標的要素37の濃度は、凝集体10に再配置したシグナリング実体34のシグナルに比例する。その他の条件は、定量化の達成を可能にし、捕捉要素36、または標的要素37に対するシグナリング実体34の濃度および親和性を変更することにより当業者には明らかであろう。
【0156】
適用:腫瘍細胞の検出
標的要素が腫瘍細胞のセクレトームの特異的マーカーである場合、その検出は、カプセル化された単一のまたは凝集した腫瘍細胞を検出するために十分であり得る。
【0157】
標的要素が腫瘍細胞のセクレトームの特有のマーカーであるが、腫瘍細胞に対して特異的でない場合、腫瘍細胞のセクレトームの特有のマーカーを構成する1若しくは複数の他の標的要素と組み合わせたその検出は、単一のカプセル化細胞が腫瘍細胞であることを検出することを可能にし得る。
【0158】
計測ステップに従って、液滴、単一細胞としてまたは細胞の凝集体でカプセル化された細胞の腫瘍性質に関する情報を得る。
【0159】
この情報は、どの液滴が他の計測または用途のために下流で回収される必要があるか知ることを可能にする。
【0160】
これにより、その方法は、種々雑多な細胞を含む生体サンプルから単離された腫瘍細胞を検出することを可能にする。非腫瘍細胞または標的要素を産生しない腫瘍細胞は、それらの液滴が標的要素を含んでいないため、シグナリング実体が再配置されないので、同定される。従って、この方法は、生体サンプルからの細胞集団中の腫瘍細胞を検出するか、さらにはカウントすることを可能にする。
【0161】
適用:腫瘍細胞の特徴づけ
カプセル化単一細胞が腫瘍細胞だけである場合、標的要素の計測は、単一の腫瘍細胞による標的要素の産生に関連する情報、例えば、濃度、を得ることを可能にし得る。
【0162】
カプセル化細胞の凝集体が1若しくは複数の腫瘍細胞を含有する場合、標的要素の計測は、細胞の凝集体による標的要素の産生に関連する情報、例えば、濃度、を得ることを可能にし得る。
【0163】
計測ステップに従って、情報は、液滴中にカプセル化された各腫瘍細胞の1若しくは複数の特徴、または液滴中にカプセル化された1若しくは複数の腫瘍細胞を含む各凝集体に関して得られる。
【0164】
この情報は、腫瘍細胞の不均一または特性に関する情報を得ることを可能にする。
【0165】
適用:腫瘍細胞の検出と特徴づけ
計測中、情報は、例えば、標的要素を検出し、そして、その濃度を計測することによって、細胞の腫瘍性質、および腫瘍細胞の特徴の両方に対して得ることができる。
【0166】
加えて、複数の標的要素を検出することによって、多量の情報を同時に得ることができる。例えば、特定の標的要素は腫瘍マーカーであり、そして、セクレトームの他の要素、例えばタンパク質またはペプチドなどは、特異的な腫瘍マーカーではない。
【0167】
計測ステップに従って、液滴中にカプセル化された各腫瘍細胞の特徴に関する情報が得られる。
この情報は、腫瘍細胞の不均一と様々な機構に関する情報を得ることを可能にする。
【0168】
第2の装置
図4図7は、本発明による第2の装置60の一部分を示す。
【0169】
この第2の装置60は、デバイス20がチャンバー62を備える点で第1の装置1と異なる。チャンバー62は、複数の循環路64および複数の分離パッド66を含む。
【0170】
その他のチャンバーもありうる。一代替例において、チャンバーは、文献PCT/FR2009/051396に記載される分離パッドを含まない。
【0171】
チャンバー62は、凝集ステップまたは配向ステップ中、および計測ステップ中に、キャリア流体8中の複数の液滴6を貯蔵するためのものである。
【0172】
第2の装置60の計測セットは、チャンバー62内に存在する複数の液滴6の物理的パラメータを同時に計測できる点で、第1の装置1の計測セット14と異なる。
【0173】
図4は、キャリア流体8中の初期液滴32を含有するチャンバー62を示す。磁性粒子12の分散体を目視できる。図5は、液滴中で凝集体10が形成された後の同じチャンバー62を示す。複数の細長い凝集体が各液滴6内に形成されている。図6は、同じデバイス60内の、細長い凝集体10を有する複数の液滴6を示す。液滴6の性質および量は、液滴1個当たり単一の細長い凝集体10のみが存在するように調整されている。液滴6当たり単一の凝集体10が存在することにより計測が容易になる。図7は、同じ検出軸Dに沿って凝集体を配向させるステップの後の同じチャンバー62を示す。
【0174】
第2の装置を用いた分析方法
この第2の装置60からの本発明による分析方法は、例えば、液滴6が検出器の前を循環することによってではなく、チャンバー62全体を同時に計測することによって、計測が複数の液滴6に対して同時に行われるという点で、前述の方法と異なる。
【0175】
この方法の一つの利点は、液滴が静止しているので、経時的に同じ液滴の物理的パラメータの計測を反復することが可能であり、これにより、セクレトームの要素の分泌動態を決定することができる点である。
【0176】
この方法はまた、計測ステップの前に、検出軸Dに沿って凝集体10の主軸Xを配向させるステップを含むという点でも異なる。
【0177】
有利には、可変方位(variable orientation)の磁場を印加することにより、検出軸を増加することができる。このアプローチは、液滴中の他の非磁性物体からの凝集体10の識別、または渦流シグナルの低減が可能であるという利点を有する。例えば、バックグラウンド蛍光ノイズを低減することができる。例えば、異なる軸に沿った検出は、凝集体10上でのシグナリング実体34の再配置を、液滴6内の別の物体、例えば細胞上でのシグナリング実体34の再配置から区別することを可能にする。
【0178】
この概念の実現は、第1の方位D1において凝集体10の主軸Xを整列させるために磁場B1を印加し、次いで、D1に対して垂直な第2の方位D2に沿って凝集体10の主軸Xを整列させるために、B1に対して垂直な磁場B2を印加することからなる。
【0179】
第3の装置
本発明による第3の装置70を図8に示す。この第3の装置70は、分類セット72をさらに備える点で第1の装置1と異なる。
【0180】
さらに、第3の装置70は、充填セット28が、内相入口領域74並びにキャリア流体入口領域76および連結領域78を含むという点で、第1の装置1と異なる。充填セット28は、インキュベーション領域79をさらに含む。
【0181】
内相入口領域74は、第1の入口導管80、第2の入口導管82、および合流導管84を備える。
【0182】
第1の入口導管80は、液滴の内相の一部分を形成することを意図とした第1の流体塊86を導入することを意図するものである。この例では、第1の内部流体塊は、粒子12および複数のシグナリング実体34を含んでいる。
【0183】
第2の入口導管82は、液滴内相の一部分を形成するための第2の流体塊88の入口を意図するものである。この例では、第2の内部流体塊は、標的要素37を産生する腫瘍細胞90を含むことができる細胞懸濁液を含む。
【0184】
第2の流体塊中の細胞90の濃度は、有利には液滴の相当な部分が1個の細胞90のみを含有する、例えば液滴の10%超が1個の細胞90を含有することになる。
【0185】
合流導管84は、内相を形成するための流体塊86、88両方の配給を可能にする。
【0186】
キャリア流体入口領域76は、キャリア流体8の入口を意図するものである。図示された例では、キャリア流体8は、2つの入口導管92を通って流入する。
【0187】
連結領域78は、キャリア流体入口領域76と内相入口領域74とを連結する。特に、連結領域は、合流導管84をキャリア流体入口導管92に連結する。
【0188】
連結領域78は、初期液滴32を形成することができる。本明細書に図示された連結領域78は、流体力学的集束連結部(hydrodynamic focusing junction)である。流体力学的集束連結部の例は、図11および図12に示される。あるいは、初期液滴32は、T形連結部において形成される。
【0189】
流体塊86と流体塊88との混合物を含む初期液滴32が形成される。初期液滴32は、粒子12およびシグナリング実体34の分散体を含む。
【0190】
少なくとも特定の初期液滴32は、単一または細胞凝集体の形態での、細胞90をさらに含む。
【0191】
インキュベーション領域79は、連結領域78の下流に位置する。インキュベーション領域は、単一または細胞凝集体の形態での、細胞90による標的要素37の分泌を可能にするためのものである。
【0192】
有利には、チップは、インキュベーション領域79内の酸素を供給するかまたは交換する手段を含む。
【0193】
あるいは、インキュベーションは、デバイス20の外部で実施される。
【0194】
第3の装置70はまた、デバイス20が、複数の分類領域94、96、および液滴または一部の液滴を分類領域94、96に向けて選択的に誘導するための手段98をさらに含むという点でも異なる。
【0195】
分類領域94、96は、検出領域26の下流に位置する。導管24は、2つの出口導管102、104を有する分岐100を備える。第1の分類領域94は、第1の液滴群106を受け取るための第1の出口導管102を備える。第2の分類領域96は、第2の液滴群108を受け取るための第2の出口導管104を備える。あるいは、デバイス20は、選別基準の数に応じて、より多くの分類領域94、96を備える。
【0196】
選択的に液滴を誘導するための手段98は、例えば、磁力によって1個の液滴6を分類領域94、96へと誘導することができる。
【0197】
あるいは、液滴6は電極によって誘導される。
【0198】
例えば、液滴は、誘電泳動によって、電流を有する電気合体(electrocoalescence with a current)によって、または弾性表面波(SAW)によって、分類領域へと誘導される。
【0199】
第3の装置を用いた分析方法
次に、本発明による第3の装置70による分析方法について説明する。
【0200】
前述の装置70が供給される。磁性粒子12およびシグナリング実体34の懸濁液が調製され、第1の入口導管80に注入される。
【0201】
細胞懸濁液を含み得る細胞90の懸濁液が調製され、第2の入口導管82に注入される。
【0202】
キャリア流体8が供給され、キャリア流体入口導管92に注入される。
【0203】
流体86、88は、循環セット22によって動き始める。初期液滴32は、連結領域78において形成される。
【0204】
方法は、単一または細胞凝集体の形態での細胞90が、分析されるべき腫瘍の細胞セクレトームの標的要素37、例えば、腫瘍細胞セクレトームのタンパク質またはペプチドを分泌、切断または放出できる、インキュベーションステップをさらに含む。これにより、インキュベーションは、特にそれが単一細胞の形態であるとき、細胞90にとって、腫瘍細胞のセクレトームの少なくとも1個の標的要素37を産生することができる条件下、かつ、十分な時間にわたって実施される。
【0205】
典型的には、インキュベーションステップは、特に患者の生体液から新たに回収した細胞の分析のために、5分間〜32時間、例えば、約1〜24時間、または2〜9時間続く。あるいは、インキュベーションステップは、特に解凍した細胞の分析のために、32〜72時間、例えば、約32〜48時間、例えば、約36時間続いてもよい。
【0206】
一般的に、インキュベーションは、5%のCO2を用いて、37±1℃にて実施される。そのインキュベーションは、バッファーまたは適当な培地の存在下で典型的には実施される。
【0207】
本発明による方法の一つの利点は、本発明による方法の感度のため、特許出願EP1 506 407に記載のEPISPOT分析法と比較して、インキュベーションステップの継続期間が短縮され得る点である。同等なインキュベーション時間を用いた、少ない容積の液滴中のセクレトーム要素の蓄積のため、検出されるべきセクレトーム要素の濃度は、EPISPOT法と比較して、本発明による方法ではより高くなる。そのため、本発明による方法の実施は、より速く、かつ、より高感度である。
【0208】
液滴6は、有利には、3日間以上液滴中で細胞90を生かしておくための培地を含む。それは、典型的には、血清の有無にかかわらず、哺乳動物細胞、特にヒト細胞、のための培地である。
【0209】
インキュベーションステップは、デバイス20のインキュベーション領域79において実施される。
【0210】
あるいは、これらのステップは、デバイス20の外部で実施される。
【0211】
凝集体10の形成ステップおよび計測ステップは、第1の装置1による分析方法と同様である。
【0212】
この方法は、計測ステップの後に分析ステップが続くという点で異なっている。分析ステップは、所定の基準に従って液滴6が群106、108のいずれに属するかを決定し、計測ステップの後に液滴6ごとに分類決定を行うことを可能にする。
【0213】
分類決定に従い、液滴6は、誘導手段98により分類領域94、96のいずれかに誘導される。
【0214】
図8に示される例では、強い蛍光強度シグナルの大部分が凝集体10の近傍に局在化した液滴106が、第1の分類領域94に誘導される。第1の群106の液滴は、例えば図2における第3の液滴56に対応する。
【0215】
これらの液滴106は、例えば、その中でセクレトームが標的要素37を含む、唯一であるかまたは腫瘍細胞の凝集体の形態で腫瘍細胞90を含有する。液滴106は、任意選択で回収され、それらの内容物、特にそこに含まれる(単数もしくは複数の)腫瘍細胞が、他の技術によって分析され得るか、あるいは、単一または腫瘍細胞の凝集体の形態での腫瘍細胞90が再び培養される。
【0216】
異なるシグナル、特に液滴108における実質的に均質なシグナルが計測された液滴108は、別の分類領域96へと誘導される。第2の群の液滴108は、例えば、細胞90を含有しない液滴、および十分な量または質で腫瘍細胞セクレトームの標的要素37を産生しない単一細胞90を含有する液滴を含む。
【0217】
生きた腫瘍細胞90がそれらのセクレトームによって同定され、そして、選別されると、もしかすると、例えば、トランスクリプトーム(遺伝子発現のためのメッセンジャーRNA、およびマイクロRNA)、ゲノム、エピゲノム、またはプロテオームの分析などのその後の多数の分析が、液滴の溶解、および液滴内の生きた腫瘍細胞90の再カプセル化後に実施されてもよい(Alix-Panabieres C, Pantel K. Clinical Applications of Circulating Tumor Cells and Circulating Tumor DNA as Liquid Biopsy. Cancer Discov 2016)。
【0218】
トランスクリプトーム分析、特にmRNA、腫瘍細胞(特にCTC)の分析は、薬物感受性および抵抗性に対する非常に重要な情報を明らかにし得る。例えば、転移性および去勢抵抗性前立腺癌における、ARV7 mRNAの発現では、そのリガンドに対する結合ドメインを持っていないが、活性CTCを持続する切断型アンドロゲン受容体が、抗アンドロゲン治療法(エンザルタミドおよび/またはアビラテロンを使用する治療法を含む)の失敗を予測させた。しかしながら、CTCがこのARV7 mRNAを発現する患者は、タキサン感応性を維持し、そして、CTCにおけるこのARV7スプライス変異体の検出は、これらの患者における適当な治療の選択のためのマーカーになり得る。
【0219】
マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子発現の主要調節因子であるので、潜在的診断マーカーおよび抗癌治療法のための標的になった。インサイチュハイブリダイゼーション技術のおかげで、単一細胞のスケールでの大型miRNA(例えば、miR−10b)を分析することが可能である。
【0220】
ゲノム分析に関して、遺伝子内の突然変異は、治療標的または標的療法の有効性に影響する標的の下流のシグナル伝達タンパク質をコードする。例えば、EGFR突然変異は、肺癌の抗EGFR治療法に影響し、そして、KRAS突然変異−下流EGFRタンパク質−は、結腸癌の抗EGFR治療法の有効性を妨げる。最近、結腸直腸癌を患っている患者から入手した何百ものCTCの分析は、KRAS突然変異に関する強い患者内および患者間不均一を示した。変異KRAS遺伝子を担持するCTCは、抗EGFR治療法を逃れるので、それらの早期検出が患者の治療選択を導くのに重要になり得る。
【0221】
液滴中で分析された細胞は、エマルションから脱カプセル化されてもよい。エマルションを脱カプセル化するための適切な方法は、5% v/vの1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクタノール(Sigma-Aldrich)の添加と、それに続く1時間のインキュベーションを含む。相が、遠心分離(例えば、300gにて5分間)によって分離され、細胞が2つの相、水相とフッ化相の界面にて回収される。
【0222】
細胞の採集を容易にするために、方法は、2つの相の間の遠心分離前に、水相の密度とフッ化相の密度の間の密度(例えば、1.10g/ml)の、第3の層の導入を含んでもよい。一般的に、第3の層は、細胞との接触に好適な浸透圧の水溶液である。好適な溶液は、例えば、5mMのTrisHCl、3mMのKCL、0.3mMのCaNa2EDTA、pH7.5から成る溶液100ml中に27.6gのNycodenz(Progen)を溶解することによって調製される。次いで、細胞は、水相とフッ化相の界面に位置する第3の層中で採集され、これにより、細胞と共にフッ化相を取り出すことを回避する。
【0223】
本発明の利点
液滴のサイズに比べて小さいサイズの粒子12の分散体を使用することにより、液滴6中の粒子12の均質分布が確保され、したがって各液滴6中に相当なサイズの凝集体10が形成されることがほぼ確実になる。
【0224】
全体として、この方法は、単一細胞または細胞凝集体を含む液滴中の腫瘍細胞セクレトームの要素、例えば、腫瘍細胞セクレトームのタンパク質またはペプチドなどをアッセイする/定量化することを可能にする。
【0225】
細長い凝集体10の形成は、単一のビーズをカプセル化するMazutisら(Nat prot 2013)に記載の試験と比較して、より良好なシグナル対ノイズ比およびより大きなダイナミックレンジを得ることを可能にする。実際に、シグナリング実体34により生成されるシグナルは、表面積が等しい球体の幅よりも小さい幅に集中する。したがって、図2に示されるピークの高さは、再配置した同数のシグナリング実体34では、単一のビーズの場合よりも高くなる。
【0226】
この方法は、多くの生物学的分析方法で使用することができる。本発明による方法は、複数のタイプのセクレトーム要素、特にセクレトームのタンパク質またはペプチドに適用され得る。
【0227】
特に、本願発明は、単一または腫瘍細胞の凝集体の形態のいずれかで、腫瘍細胞の表現型のタイピング、セクレトーム分析、および分子分析をすることによって、リアルタイムで、癌の液状生検検体を非常に完全な形で分析することを可能にする。
【0228】
本発明による装置は、1つの技術要素として、より複雑なデバイス、特に高速大量処理スクリーニングデバイス、lab on a chip、実験室用計器、ロボットまたはその他のデバイス内の「ポイントオブケア」デバイスに組み込むことができる。
【0229】
さらに、本発明による方法は、診断、薬物の発見、標的の発見、薬物の鑑定を可能にする複雑な手順に組み込むことができる。
【0230】
さらに、本発明によるマイクロ流体システムおよび本発明による方法は、他の種類のマイクロ流体部品に組み合わせるか含めてもよく、最先端技術において公知となっている他のマイクロ流体機能と組み合わせるか含めてもよい。
【0231】
本発明は、各種光学的方法、特に光学検出方法と組み合わせたとき、さらに特に有用になりうる。
【0232】
本方法は、例えば、セクレトーム中の標的要素37の存在、分泌、放出または切断された標的要素37の濃度、を決定し、その結果、液滴6中で標的要素37を産生する腫瘍細胞の特徴を確立する際に適用できる。
【0233】
この方法は、興味深い特徴を有する、特に単一の腫瘍細胞または腫瘍細胞の凝集体を含有している、液滴のさらなる選別、捕捉および抽出を可能にする。
【0234】
一例において、この方法はサンドイッチの形成を含み、標的要素37は、一方では粒子12の捕捉要素36に結合し、他方ではシグナリング実体34に結合し、シグナリング実体34は蛍光性である。
【0235】
一例において、捕捉要素36は、ポリクローナルまたはモノクローナルの抗体である。一例において、シグナリング実体34は、ポリクローナルまたはモノクローナルの抗体である。一例において、標的要素37は、ペプチドまたはセクレトームタンパク質である。
【0236】
一例において、捕捉要素36は、核酸、特にDNAプローブまたはアプタマーである。一例において、シグナリング実体34は、核酸、特にDNAプローブである。一例において、標的要素37は、セクレトームの核酸、特に二本鎖DNA、mRNAまたはmiRNAである。
【0237】
一例において、捕捉要素36は、膜に存在するまたは膜に結合されたタンパク質に向けられた、脂質またはステロールに向けられた、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、またはナノボディ、あるいは、アプタマーである。一例において、シグナリング実体34は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。一例において、標的要素37はエクソソームである。別の例において、捕捉要素36−標的要素37またはトリプレット捕捉要素36−標的要素37−シグナリング実体34のいくつかの組は、別個の性質のいくつかの標的要素37の存在を検出するために、同時に分析されてもよい。
【0238】
例えば、図13における液滴に示されているように、液滴は、性質の異なる複数の標的要素37a、37b、およびそれぞれ標的要素37a、37bのいずれかと複合体を形成することができる複数のシグナリング実体34a、34bを含む。凝集体10の特定の粒子12は、第1の標的要素37aの捕捉に適合した捕捉素子36aを含み、他の粒子は、第2の標的要素37bの捕捉に適合した別の捕捉要素36bを含む。
【0239】
いくつかの用途において、粒子12の凝集は可逆的である。
【0240】
一部の場合において、標的要素37の存在は、凝集を不可逆にし、凝集セット30における形成時に凝集体10を固化させる。したがって、凝集体10は、標的要素37を含有する液滴6中にのみ、安定的に先在する。標的要素37を含有しない液滴では、凝集体10が読み取り領域26に入っていない限り、粒子12凝集の可逆性により、凝集体10は溶解する。選択された磁化および流体工学の条件において、凝集体10は、この前凝集体が存在する場合にのみ、自身を形成し配向させることが可能になる。前凝集体は、シグナリング実体34を介するよりも別の方法により、閾値要素37を含有する液滴に、図2に従うピークの取得を限定する。
【0241】
本発明によって、特に、生体液から単離した腫瘍細胞の検出および/または特徴づけにおける適用を見出した。各細胞は、腫瘍細胞セクレトームの多数の要素、特に、特定の数のタンパク質またはペプチド、特に、腫瘍細胞を同定するための1若しくは複数の腫瘍マーカーをインビトロにおいて放出、分泌または切断し得る。本発明はまた、単一または細胞の凝集体の形態の、細胞のセクレトームを試験または特徴づけすることを可能にし、そしてそれが、特に本発明による腫瘍細胞を検出する方法によって、それらの特徴を前もってまたは同時に、腫瘍細胞と同定されたであろう。
【0242】
腫瘍細胞は、例えば、血液から単離された、略語「CTC」によって以下に示される、生きた循環腫瘍細胞、または骨髄から単離された、頭文字「DTC」によって以下に示される、生きた播種性腫瘍細胞、またはその他の生体液、例えば、尿または脳脊髄液(CSF)由来の生きた腫瘍細胞である。
【0243】
遠隔転移をもたらすことができる侵襲性の転移性癌細胞は、本発明が適用される細胞の中に入っている。特に、血流中の凝集性CTCは、単離されたCTCよりはるかに高い転移可能性を有する可能性がある。
【0244】
本発明には、生きたCTCの分析を可能にし、これにより、これらの細胞の機能性を試験する利点があるが、それに対して、従来技術の技術は、分析前にCTCの分離および固定を伴う。
【0245】
腫瘍細胞とは、固形癌または液性癌(白血病、リンパ腫)の癌細胞であってもよい。
例えば、腫瘍細胞は、固形癌、例えば、乳房、前立腺、結腸、直腸、甲状腺、皮膚、肝臓、睾丸、卵巣などの癌を患っている患者の生体液から単離され得る。
【0246】
腫瘍細胞は、特にヒト細胞または、例えば、齧歯動物(例えば、ラットまたはマウス)、霊長目動物(例えば、サル)、イヌ科の動物(例えば、イヌ)またはネコ科の動物(例えば、ネコ)などの動物細胞である。
【0247】
有利には、細胞は、それらのカプセル化の前に標識される。実際には、細胞は、細胞または細胞凝集体のレベルで(単数もしくは複数の)標識化抗体によって発せられたシグナルを検出することによってカプセル化細胞またはカプセル化細胞の凝集体の腫瘍性質を同定するために、例えば1若しくは複数の膜腫瘍マーカーに向けられた1若しくは複数の(例えば、蛍光色素を用いた)標識化抗体であらかじめ標識されてもよい。この検出は、静的な様式などで循環液滴に対して実施されてもよい。
【0248】
例として、(単数もしくは複数の)標的要素は、例えばCK19などのサイトケラチンであってもよい。
【0249】
あるいは、(単数もしくは複数の)標的要素は、例えば、(乳房のための)マンマグロビン、前立腺特異抗原(PSA)または(前立腺のための)ヒトカリクレイン3(hK3)などの組織マーカーであってもよい。
【0250】
あるいは、(単数もしくは複数の)標的要素は、例えば、「ヒト腺性カリクレイン」(hK2)、Her2−neu、チログロブリン、CA19−9、CA15−3、ACE(アンジオテンシン変換酵素)、CA−125、カテプシンD、α−フェトプロテイン、S100タンパク質、繊維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)、上皮細胞増殖因子(EGF)などの間葉系マーカーであってもよい。
【0251】
一例において、単一の腫瘍細胞90は、前立腺腫瘍細胞であり、そして、少なくとも1個の標的要素37は、PSA(前立腺特異抗原)である。このマーカーは、前立腺癌に特異的である。粒子10にグラフトされた捕捉要素36は、抗PSA一次抗体である。シグナリング要素34は、特に、例えばAlexa555などの蛍光色素を用いて標識される抗PSA二次抗体である。このマーカーは、前立腺癌に非常に特異的である;独特のその存在は、細胞を、前立腺癌由来の腫瘍細胞と特徴づけることを可能にする。
【0252】
別の例では、数種類のマーカーが、腫瘍細胞を特徴づけるように、組み合わせで検出される。例えば、一部のマーカーは、あるタイプの癌に特異的でないが、2個の別個のマーカーの同時存在は、癌のタイプを同定することを可能にする。癌のタイプを同定するのに好適なマーカー組み合わせの選択は、当業者の能力の範疇にある。
【0253】
よって、VEGFマーカーは、多くの腫瘍細胞のセクレトームに存在している。しかしながら、他のマーカーを伴ったその存在は、癌を特徴づけることを可能にする。同様に、FGF2マーカーのみの存在は、それ自体は、癌を特徴づけするために不十分である。
【0254】
図13に示される実施例において、これにより、いくつかのタイプの分泌標的要素の存在を分析することが可能である。それぞれのサンドイッチ型免疫学的アッセイでは、単一の腫瘍細胞90によって分泌された別個の標的要素37a、37bを検出する。
【0255】
そのため、それぞれの蛍光シグナルの計測は、細胞の性質または表現型に関する情報を有することを可能にする。好ましくは、シグナリング実体36は蛍光色素を含む。別個の蛍光色素は、好ましくは別個の標的要素のそれぞれの特異的結合パートナー、および特に別個の腫瘍マーカーに関連している。
【0256】
よって、その特に有利な実施形態において、本発明による方法は、EPISPOT多様性蛍光性タイプの方法によるCTCまたはDTCの検出を可能にし、そしてそれは、別個の組の抗体と別個の蛍光色素を使用する。蛍光色素の例としては、緑色のAlexa488、赤色のAlexa555、青色のAlexa350などが挙げられる。
【0257】
単一の腫瘍細胞について分析され得る標的要素37の数は、捕捉要素およびシグナリング実体と機能化粒子の組を選択することによって、実験の上流で選択される。例えば、9個超の別個の蛍光チャンネルに関して測定をおこなうことが可能である。これは、例えば、9種類を超える単一の腫瘍細胞のセクレトーム要素の同時測定が実施されることを可能にする。
【0258】
腫瘍細胞の獲得
本発明の有利な特徴によると、検出方法は、生体サンプル中に存在するCTCまたはDTCを濃縮する予備的なステップを含む。
【0259】
生体サンプルの細胞の濃縮は、細胞表面上に発現されるマーカーの発現、細胞のサイズ、密度または電荷に基づいてもよい。例えば、CTCは、白血球除去または濾過によって血液から単離され得る。
【0260】
生体サンプルの細胞の濃縮は、例えば、上皮細胞の膜特異的タンパク質、例えば、上皮細胞接着分子(EpCAM)の発現に基づく、細胞の陽性ソーティングか、またはCD45、CD4、CD8、CD19、CD56によって例示されるような、望ましくない造血細胞の表面上の特異的マーカーの発現に基づく陰性細胞のソーティングのいずれかから成り得る。
【0261】
細胞は、大細胞を保持し、より小さいサイズの造血細胞が通過する膜濾過器の使用によってそれらのサイズに従って選別されてもよい。細胞は、特定のグラジエントによる遠心分離によってそれらの密度に従って選別されてもよい。
【0262】
細胞は、誘電泳動の使用によりCTC/DTCが造血細胞のものと異なる荷電を有しているので、それらの電荷に従って誘電泳動によって選別されてもよい。
【0263】
当業者に知られている生存細胞を得るためのその他の濃縮方法が、本発明の目的に好適である。そのため、それは、CTC/DTCの機能性を維持するために、CTC/DTCの固定または透過化を実装しない方法である(Alix-Panabieres and Pantel, Expert Rev Mol Diagn 2015; 15(11): 1411-7)。
【0264】
濃縮ステップ後に得られた細胞はまた、液滴中の腫瘍であると同定され得る。一実施形態によると、濃縮された細胞は、1若しくは複数の腫瘍細胞表面マーカーに向けられた(特に蛍光による)標識抗体で標識される。次いで、腫瘍細胞は、それらの膜で、特に蛍光によって、標識されるようになる。一例として、細胞は、(1)いずれかの上皮細胞を同定するために細胞表面のEpCAMおよび/またはE−カドヘリンの発現を検出するための、抗EpCAM蛍光抗体および/または抗E−カドヘリン蛍光抗体、および/または(2)前立腺の腫瘍細胞を同定するための蛍光抗PSMA抗体(前立腺特異的膜抗原)、および/または(3)上皮−間葉移行(EMT)を経験した間葉系細胞を同定するための抗蛍光性抗N−カドヘリン、および/または(4)EMT中に過少発現されず、かつ、上皮および間葉系腫瘍細胞の検出を可能にする新しいマーカー、プラスチン3を標的化する抗プラスチン3抗体、によって標識され得る。このステップは、サンプルの細胞のカプセル化に先行し、そして、CTCまたはDTCの表現型を決定することを可能にする。
【0265】
本発明は、理論上、液滴の数が制限されないので、実施の際に、例えば、最大100,000個、さらには最大1,000,000個の液滴にさえ到達し得るので、特に有利である。これにより、細胞を含まない液滴または非濃縮細胞を有することが可能である。カプセル化細胞が腫瘍性でない場合、シグナルが異なるので、その液滴は処分される。これにより、システムは、精製を精緻なものにすることを可能にする。そのため、それは、CTCが豊富でない生体サンプルからの実施に好適である。
これは、血中の希少な腫瘍細胞、例えばCTCなどを検出するのに特に有利である。
【実施例】
【0266】
この方法の適用例を以下に説明する。
【0267】
以下の実施例の手順は、
− 粒子12、シグナリング実体34および標的要素、または液滴中で標的要素を生成できるか、それを放出できるか、もしくはそれを切断できる細胞を含有する、複数の水溶液の調製、
− 液滴生成チップの入口での前記水溶液の注入、
− 試験の全試薬を含む液滴の生成、
− 液滴を含有する溶液のインキュベーション、
− 本発明による装置(実施例1および2はそれぞれ第1の装置1または第2の装置60に相当する)への液滴の注入、
− 試験の結果の計測、
− 任意選択で計測値に応じた液滴の選別、
を含む。
【0268】
実施例1:液滴生成およびタイプ1液滴計測用デバイス
区画化とも称される、液滴の生成は、試薬溶液およびオンチップサンプル溶液をを混合した後に行う。
【0269】
試薬およびサンプルの変質を避けるために、区画化まで溶液を氷中に保存する。
【0270】
区画化を開始する直前に、ミネラルオイル(Sigma Aldrich、#330760)を満たした1mLのHamilton製シリンジに接続したタンクへと、試薬溶液を吸引する。
【0271】
スクリーニング対象サンプルを、区画化の直前に希釈標準溶液と混合し、次に、あらかじめフッ素化オイル(3M、NOVEC HFE-7500)を満たしたガラスバイアルに移し、そのバイアルを氷上で4℃に維持する。
【0272】
有利にはPTFE製の内径0.3mmキャピラリー(Fischerから販売、#11919445)により、バイアルおよび試薬溶液のタンクを液滴形成用デバイスに接続することを可能にする。
【0273】
これらの溶液の両方を、液滴形成用チップに注入し、両溶液のそれぞれの等容積を含む液滴の生成を可能にする。
【0274】
液滴の容積は、フッ素化オイルの流量に基づいてユーザーが選択する。有利には、液滴の容積は33ピコリットルである。フッ素化オイルはキャリア流体8となる。キャリア流体8は液滴を含むエマルションの連続相を形成する。
【0275】
試験試薬の溶液とスクリーニング対象試験サンプルの溶液とを、同じ流速で、有利には各溶液について200マイクロリットル/時間で、チップに注入する。流速は、標準シリンジポンプシステム、例えばCetoni製neMESYSポンプによって、または圧力制御ポンプ、例えばFluigentによって市販されているシステムによって、向上する。
【0276】
液滴は、図11および図12に示される流体力学的集束連結部において生成される。ここで、外相は、2質量%/容積の界面活性剤(例えば、2つのペルフルオロポリエーテル(PFPE)尾部(分子量約6,000g/mol)および1つのPEG頭部(約600g/mol)を含むトリブロックコポリマーを添加した、フッ素化オイル(3M、NOVEC HFE-7500)である。
【0277】
図11および図12は、他の試薬と混合された磁性ビーズを含有する流れと、右側に位置する流体力学的集束連結部における液滴形成前のサンプルを含有する流れとを混合することを可能にする流れ集束デバイスを表している。図11において、磁性粒子の直径は500nmであり、図12において、磁性粒子の直径は200nmである。
【0278】
第2のステップは収集ステップである。有利にはリング形磁石(Amazing magnets製H250H-DM)により発生させた磁場の下で4℃に維持したバイアルにより、液滴の収集を可能にする。短いキャピラリーにより、バイアルをチップに接続することを可能にする。理想的には、出力キャピラリーは20cm未満であり、有利には10cmである。
【0279】
有利には37℃にて20〜90分間、磁場下で、液滴がインキュベートされるように設定するが、時間およびインキュベーション温度は、実施される分析、並びに産生実体90の種類および調査される標的要素37の種類に依存する。
【0280】
インキュベーションの後に、エマルションを含有するバイアルを移し、常に磁場下で4℃に維持する。
【0281】
第1タイプのデバイスは、図1に記載された本発明によるデバイスである。
【0282】
液滴を含有するバイアルは再注入のためにチップに接続され、バイアルは、一方ではチップに接続され、他方では、圧力システム、加圧ポンプまたはシリンジおよびそのポンプに接続されて、循環セット22を形成する。
【0283】
離隔セット31は、チップに接続された2つのオイル入口を含む。これらの入口は、図9に示すように、エマルションの液滴を離隔することを可能にするオイル、有利にはフッ素化オイルを注入するためのものである。
【0284】
離隔オイルの流速は、有利にはそれぞれ300マイクロリットル/時間に設定し、循環セットの流速は、有利には50マイクロリットル/時間に設定し、流速および液滴の再注入周波数を調整して250〜1,000Hzの間に含まれる周波数が得られるようにする。
【0285】
一対の永久磁石38、有利にはK&J Magneticsによって供給される#BC 14-N52を、主チャネル24周囲のチップの両側に配置した。これらの磁石38は、液滴再注入の際にビーズ凝集体を発生させ配向させるためのものである。
【0286】
液滴の分析および選別のために、設備、例えばレーザーまたは光電子増倍管を制御するためのソフトウェアを作製した。選別システムは、実時間でシグナルの分析を実施するためにFPGAカードを必要とする。
【0287】
離隔セット通過後、滴下1個ごとに計測を行い、図10に示された読み取り領域の後で、これらの液滴を選別して所望の出口に向けることができる。
【0288】
選別および回収が所望される場合、選別液滴および非選別エマルションを氷上に収集し、標準的手順により液滴の内容物を回収する。
【0289】
実施例2:タイプ2の液滴の計測用デバイス(第2のデバイス60)
第2タイプの計測デバイスは、二次元平面内で生成された液滴を貯蔵するためのチャンバーである。この例には、斯かるチャンバーを作製するための2つの可能な選択肢がある。
【0290】
第1の選択肢は、PDMSにおける従来の微細製造によって作製されたチャンバーであり、図4図7に示されるような、チャンバーの崩壊を避けるために規則的に配置されたピラー(pillars)を有利には含む。
【0291】
第2の選択肢は、発明PCT/FR2009/051396によるガラスチャンバーである。有利には、このアプローチは、液滴を動かすことなく長期間(1時間超)にわたって液滴のインキュベーションを行うことを可能性にする。したがって、液滴形成後、斯かるチャンバー内に液滴を直接収集してもよい。
【0292】
一例において、計測デバイスは、例えば、ガラスチャンバー内の二次元読み出しデバイスである。磁場は、貯蔵チャンバーのいずれかの側に配置した、好ましくはK&J Magnetics, # BY042Kによって供給される1組の永久磁石38によって作り出される。これらの磁石38は、チャンバー内に貯蔵された液滴内のビーズ凝集体を発生させ配向させるためのものである。
【0293】
磁性ビーズラインに再配置されたシグナリング実体34の蛍光シグナルは、落射蛍光顕微鏡法で計測される。
【0294】
実施例3:タイプ1計測デバイスにおける腫瘍マーカーの定量化
この実施例の目的は、腫瘍マーカーの定量化を実証することである。
この実施例では、標的要素37は、腫瘍マーカー、より特に、スクリーニングされる溶液にすでに含まれている血管上皮成長因子(VEGF)血管新生マーカーであり、この実施例は細胞を実装しない。
【0295】
この実施例では、液滴は測定すると33ピコリットルである。
【0296】
液滴の調製は:
− 粒子12、シグナリング実体34を含有する「試薬溶液」、および以下の実施例の標的要素を含有する「スクリーニング対象サンプル溶液」と称される、2種類の水溶液の調製、
− 液滴を生成するためにチップ入口に両方の水溶液を注入すること、
− 両方の溶液のそれぞれの等容積を含む液滴を生成すること、
− タイプ1デバイス内で液滴を計測すること、
を含む。
【0297】
前記試薬溶液は:
− 粒子12、コロイド状磁性粒子であって、ここでは、例えばストレプトアビジンを結合させた粒子(例えば、Ademtechのストレプトアビジンプラス粒子)などであり、そしてそれは、捕捉要素36、例えばビオチンと結合させたVEGF特異的抗体(例えば、抗体Ref 500-P10GBt、Peprotech)で機能化される。他の固定方法が可能であり、例えば、カルボキシルと1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)粒子の使用などが当業者に知られている;
− シグナリング実体34、ここでは、蛍光分子で機能化された、VEGFに対する抗体、例えばAlexafluor647のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHSエステル)もしくは同様のもので機能化されたベバシズマブ(Montpellier University Hospitalによって供給)などである。フルオロフォアまたは機能化方法の他の組み合わせも可能である;および
− 液滴6の検出のための色素、例えば、スルホローダミンB、
を含む。
【0298】
これらの試薬を「希釈標準溶液」と称される溶液で希釈する。希釈標準溶液は:
− RPMI1640(Eurobio, Ref CM1RPM00-01)、
− L−グルタミン 200mM/100×(Eurobio, Ref CSTGLU00):最終的に1%、
− インスリン−トランスフェリン−セレニウム(ITS)100×(GIBCO, Ref 51300-044):最終的に1%、
− 非働化ウシ胎仔血清10%(Eurobio, Ref CVFSVF00-01)、EGF、ヒト(上皮細胞成長因子)−Miltenyi(Ref 130093564):最終的に20ng/mL、
− bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)−Miltneyi(Ref 130097750):最終的に10ng/mL、
− 抗生物質(10,000IU/500mLのペニシリンG+1mg/500mLのゲンタマイシン)、
− 25mMのHEPESバッファーpH7.4にて、
− 0.1% v/vのPluronic F−68(Life Technologiesから供給)、
を含む。
【0299】
磁気コロイド粒子12は使用前に処理する。粒子12は、貯蔵溶液中のChemicellから供給される粒子(ScreenMAG)またはAdemtechから供給される粒子(Bio-Adembeads)である。有利には、ストレプトアビジン(または同様のもの)は、供給業者(Ademtechストレプトアビジンプラスビーズなど)によって粒子上にすでに固定されている。貯蔵溶液を取り除くために、これらを磁性媒体上に保持し、次いで、それらを10w/w%、有利には粒子の初期容積の10倍にて、過剰量のPluronic F−127(Sigma Aldrich)中に懸濁させ、そして、超音波浴中で4℃にて15分間インキュベートする。
【0300】
この処理の後、磁性コロイド状粒子12をPBSで2回洗浄し、希釈標準溶液中に懸濁させる。この溶液中に、捕捉分子のビオチン化バージョンを1時間かけて(室温)過剰に加える。
【0301】
有利には、粒子12を2回洗浄し、希釈標準溶液中に懸濁させる。
蛍光試薬は、試薬の凝集体の痕跡を取り除くために、使用前に、少なくとも12,000g、4℃にて5分間遠心分離する。
【0302】
スクリーニング対象サンプル溶液は:
− 捕捉要素36によって捕捉することができる標的要素37、ここでは、VEGF;および
− 希釈標準溶液、
を含む。
【0303】
スクリーニング対象サンプル溶液は、希釈標準溶液で希釈した様々な濃度の標的要素37(VEGF)(例えば、Genscriptから供給される)を含む(上記を参照)。
スクリーニング対象サンプル溶液中の標的要素37(VEGF)の濃度は、0nM、5nM、20nMまたは50nMである。
【0304】
試薬溶液は、以下の試薬:
− 捕捉要素36で機能化された磁性粒子0.16% w/v、ここでは、先に記載したVEGF特異的抗体、
− 50nMの適切なシグナリング実体34、ここでは、蛍光分子を結合した別の特異的VEGF抗体、
− 1μMのスルホローダミンB(液滴のマーキング用)、
を含む。
【0305】
この溶液は、希釈標準溶液によって完成する(上記を参照)。
【0306】
これは、それぞれ0nM、2.5nM、10nMまたは25nMの標的要素37(VEGF)を伴った4種類の別個のエマルションを得ることを可能にする。
【0307】
次いで、シグナリング実体34、例えばAlexafluor488または647などのフルオロフォアの蛍光を計測するタイプ1デバイスによって、液滴を分析する。
【0308】
実施例4:タイプ1計測デバイスにおける同時の2種類の腫瘍マーカーの定量化
この実施例の目的は、同時に2種類のシグナリング実体(2種類の腫瘍マーカー)の定量化を実証することである。この実施例は、2種類の別個の標的要素37を同時測定することが異なるが、すべての点で実施例3に類似している。2種類の標的実体は、腫瘍マーカー、VEGFとCK19[サイトケラチン19]である。
【0309】
試薬溶液は:
− 粒子12、ここでは、コロイド状磁性粒子であり、適当な方法、例えばビオチン−ストレプトアビジン対などによって固定される、2種類の捕捉要素36、ここでは、特異的VEGF抗体(Ref500-P10GBt、Peprotech)および特異的CK19抗体(Progen、KS19.2)で機能化される、
− 第1のシグナリング実体34、ここでは、好適なフルオロフォア、例えばAlexaFluor647とベバシズマブの結合体などで蛍光的にマーキングされた特異的VEGF抗体である、
− 第2のシグナリング実体34、ここでは、フルオロフォアAlexaFluor488によって蛍光的にマーキングされた(Progen、KS19.1)などの特異的CK19抗体である、
− 液滴6の検出を可能にする色素、例えばスルホローダミンBなど、
を含む。
【0310】
これらの試薬を、実施例2で使用したものと同一の希釈標準溶液と称される溶液で希釈する。
【0311】
スクリーニング対象サンプル溶液は、以下の:
− 第1の捕捉要素36によって捕捉されることができる、第1の標的要素37、ここでは、VEGF、
− 第2の補足要素36によって捕捉されることが意図される、第2の標的要素37、ここでは、CK19、
− 希釈標準溶液、
を含む。
【0312】
スクリーニング対象サンプル溶液は、例えばGenscriptによって提供される、さまざまな濃度の第1の標的要素37(VEGF)を含有する一方で、例えばMyBioSourceによって提供される、第2の標的要素37(CK19)を希釈標準溶液(上記を参照)で希釈する。
【0313】
スクリーニング対象サンプル溶液中の第1の標的要素37(VEGF)の濃度は、以下のとおりである:0nm、2.5nm、10nmまたは25nm。スクリーニング対象サンプル溶液中の第2の標的要素37(CK19)の濃度は、0nM、2.5nM、10nMまたは25nMである。2種類の標的要素の合計16種類の濃度の組み合わせを調製する。
【0314】
液滴を、2種類のシグナリング実体34上のフルオロフォア、例えばAlexaFluor488と647などの蛍光を同時に計測するタイプ1デバイスによって分析する。
【0315】
実施例5:タイプ1計測デバイスによる単一細胞スケールにおける分泌腫瘍マーカーの定量化
【0316】
この実施例の目的は、単一細胞レベルで分泌された腫瘍マーカーを検出し、定量化する可能性を実証することである。この実施例は、標的要素37(VEGF)がインキュベーションフェーズの間に液滴内の産生実体90(細胞)によって分泌されることを除いて、あらゆる点で実施例3に類似している。細胞は、結腸癌CTC株(LCCRH研究室において得られたCTC−MMC−41.4)、またはCTC濃縮大腸癌患者の細胞集団のいずれかである。第2の場合では、CTCは、白血球除去を介してRosetteSepプロトコール(StemCell Technology手順)を用いて濃縮する。
【0317】
RosetteSep技術を使用するCTCの濃縮プロトコールは、以下のとおりである:
− EDTAチューブから50mLのファルコンに血液(15mL)を移し;
− 全血1mLあたり20μlのRosette StemCell(Human Circulating Epithelial Tumor Cell Enrichment - Ref15167)を加え;
− Macミックスにより少なくとも20分間混合し、そして、ゆっくり転倒し;
− 供給業者によって推薦される血液量に応じて、ファルコン内に適当な容積のFicoll(Lymphocyte Separation Medium)を入れ;
− 1/2 PBS 1×/2% SVFで血液を希釈し;
− 溶液[血液+ロゼット+PBS]をFicollの表面にそっと堆積させ、そして、ブレーキなしで1200gにて20分間遠心分離機にかけ;
− 細胞のリング(循環腫瘍細胞が存在するところ)を伴ったFicollの上部をすべて回収し;
− PBS/SVF2% qs50mlで2回洗浄する。
【0318】
得られた細胞ペレットは、循環腫瘍細胞を含有しているので、本発明による単一細胞EPISPOTに使用する準備ができている。
【0319】
スクリーニング対象サンプル溶液は、実施例3に記載した希釈標準溶液中に懸濁された細胞を含有する。有利には、液滴1個あたりの細胞の濃度は、液滴1個あたり細胞0.3個である。液滴33ピコリットルを含むエマルションは、今回の場合、1ミリリットルあたり30.106個超の液滴を含む。液滴1個あたり0.3個の細胞を有するためには、スクリーニング対象サンプル溶液中で1ミリリットルあたり約18.106個の細胞の濃度(液滴に対して2回の濃縮)が必要となる。両方の水溶液は50/50の比で1個の液滴中に混合されるので、スクリーニング対象サンプル溶液中の細胞濃度は終濃度の2倍になることに留意しなければならない。
【0320】
実施例6:タイプ1計測デバイスにおける単一細胞のスケールで同時に分泌された2種類の腫瘍マーカーの定量化
【0321】
この実施例の目的は、単一細胞レベルで分泌された2種類の腫瘍マーカーを同時に検出し、定量化する可能性を実証することである。この実施例は、2種類の別個の標的要素37を同時測定する点が異なるが、すべての点で実施例5に類似している。2種類の標的要素は、腫瘍マーカーVEGFとCK19であり、そしてそれらを実施例4のように計測される。
【0322】
実施例7:分泌腫瘍マーカーに従った細胞のソーティング
【0323】
この実験の目的は、分泌腫瘍マーカーに従った細胞のスクリーニングを実証することである。この実施例は、シグナリング実体34上のフルオロフォアの蛍光に相当する大きい蛍光シグナルを伴った液滴が、Baretら(Lab Chip 2009, 9, 1850-1858)に記載の「誘電泳動活性化蛍光」(FADS)によってソートされることを除いて、すべての点で実施例5に類似している。ソートされ、採集された液滴は壊され、細胞がMazutisら(Nat Prot 2013, 8, 870-891)に記載のとおり回収される。
【0324】
実施例8:2種類の分泌腫瘍マーカーに従った細胞のソーティング
【0325】
この実験の目的は、2種類の分泌腫瘍マーカーに従った細胞のスクリーニングを実証することである。この実施例は、2種類の別個の標的要素37が同時計測されることは異なっているが、あらゆる点で実施例7に類似している。2個の標的要素37は、腫瘍マーカーVEGFとCK19であり、そしてそれらを実施例4のように計測する。第1のシグナリング実体34上のフルオロフォア、例えばAlexafluor488など、および第2のシグナリング実体34のAlexafluor647の蛍光に相当する大きい蛍光シグナルを伴った液滴が、Baretら(Lab Chip 2009, 9, 1850-1858)に記載の「誘電泳動活性化蛍光」(FADS)によってソートされる。ソートされ、採集された液滴は壊され、細胞がMazutisら(Nat Prot 2013)に記載のとおり回収される。
【0326】
実施例9:タイプ2計測デバイス(第2の装置60)における腫瘍マーカーの定量化
【0327】
この実施例の目的は、タイプ2デバイス、すなわち、液滴が単層の二次元で分布するチャンバーにおける腫瘍マーカーの定量化を実証することである。この実施例は、液滴を40ピコリットルと計測し、かつ、タイプ2計測デバイスで分析する点で異なるが、すべての点で実施例3に類似している。2枚のガラススライド間に高さ38μmのチャンバーを作製する。入口および出口を上部ガラススライド上に作製し、それぞれ接続キャピラリーに接続するための標準コネクタを設ける。
【0328】
実施例10:タイプ2計測デバイス(第2の装置60)における同時の2種類の腫瘍マーカーの定量化
【0329】
この実施例の目的は、タイプ2デバイスにおける同時の2種類のシグナリング実体(2種類の腫瘍マーカー)の定量化を実証することである。この実施例は、実施例9のように、液滴を40ピコリットルと計測し、タイプ2計測デバイスで分析することを除いて、すべての点で実施例4に類似している。
【0330】
実施例11:タイプ2メーター(第2の装置60)における単一細胞のスケールでの分泌腫瘍マーカーの動態学的および定量的計測
【0331】
この実施例の目的は、タイプ2デバイスにおける単一細胞のスケールでの分泌腫瘍マーカーの動態学的および定量的計測を実証することである。この実施例は、実施例9のように、液滴を40ピコリットルと計測し、タイプ2計測デバイスで分析することを除いて、すべての点で実施例5に類似している。磁性ビーズライン上に再配置されたシグナリング実体34の蛍光シグナルの、単一細胞のスケールでの、放出を計測することによって、標的要素37(VEGF腫瘍マーカー)の分泌速度を決定し得る。
【0332】
実施例12:タイプ2計測デバイス(第2の装置60)における単一細胞のスケールでの同時に分泌された2種類の腫瘍マーカーの動態学的および定量的計測
【0333】
この実施例の目的は、タイプ2デバイスにおける単一細胞のスケールでの2種類の分泌腫瘍マーカーの同時の動態学的および定量的計測を実証することである。この実施例は、2種類の標的要素37が同時計測される点で異なるが、実施例9のように、液滴を40ピコリットルと計測し、タイプ2計測デバイスで分析することを除いて、あらゆる点で実施例6に類似している。2種類の標的実体は、腫瘍マーカーVEGFとCK19であり、そしてそれらを実施例10のように検出する。
【0334】
磁性ビーズのライン上に再配置された2種類のシグナリング実体34の蛍光シグナルの放出を、単一細胞のレベルで計測することによって、2種類の標的要素37(VEGFとCK19腫瘍マーカー)の分泌速度を決定し得る。
【0335】
実施事例
図14は、タイプ1デバイスでの腫瘍マーカーの定量化を例示する。グラフは、緑色蛍光を計測するためのチャンネルについて得られたピーク強度値を示す。液滴は、ビオチン化抗PSA抗体でコートされたビーズを含む。そのビーズは、アラインされて列を形成する。25nMのPSAでは、二次抗PSA抗体の蛍光が磁性ビーズ列に再配置され、そしてそれが、強度ピーク値を高める(n=200,000)。エラーバーは標準偏差を示す。同じ計測を、液滴中で37℃にて1時間インキュベートしたLnCAP細胞を含有する液滴についておこなった。LnCAPは、ヒト前立腺癌から得られた上皮細胞株に由来する細胞である。
【0336】
図15は、タイプ1デバイスにおける液滴のソーティングを示す。このグラフは、タイプ1デバイスにおけるPSA分泌細胞の計測の可能性を示す。3個の別個の液滴集団は、それらの異なる液滴コードにより識別され得る(マーカー、スルホローダミンBの蛍光に該当し、横軸に沿って表される)。左から右に、我々は、ソートされる細胞、すなわち、陽性対照および陰性対照、のエマルションについて観察する。縦座標軸上に示される蛍光チャンネルで、ビーズの列上の抗PSAの再配置が説明される。黒色の長方形の中に含まれた液滴は、PSAの分泌および細胞の含有に関して陽性の液滴である。
【0337】
図16は、タイプ1デバイスの液滴のソーティングを示す。このグラフは、細胞を含有する液滴エマルションからのEpCAM陽性液滴ソーティングのための選択ウィンドウを示す。充填は約5%である。これは、選択ウィンドウ内のEpCAM陽性と細胞充填との良好な相関関係を示す。縦座標軸は、液滴内で計測された極大値(すなわち、細胞に相当するピーク)を表す。X軸は、ピーク下のシグナルの積分を表す。
【0338】
図17〜20は、タイプ1デバイスにおける2種類の基準に基づくソーティングを例示する。図17は、EpCAM陽性細胞のソーティングに関する「ゲート5」選択ウィンドウを示す。図18は、PSA分泌細胞に関する「ゲート6」選択ウィンドウを示す。選択されるためには、2個の基準が満たされなければならない。すなわち、選択された液滴は、「ゲート5」および「ゲート6」ウィンドウ内に計測値がある液滴に相当する。
【0339】
図19および20の画像は、2個の基準:PSAの分泌(図19)およびEpCAMの発現(図20)、に従って首尾よくソートされた液滴を表す。空の液滴(陰性対照)はまた、ディスプレイチャンバー内の着目の液滴の輸送を容易にするためにもソートされた。0.2%の着目の液滴を用いたエマルションから開始し、着目の液滴の20%濃縮が得られた。液滴の輸送のために保存された陰性対照液滴をカウントすることによって、有効な液滴輸送は約99%にて得られる。
【0340】
図21〜23は、タイプ2デバイスでの腫瘍マーカーの定量化を説明する。図21(明視野における)および22(蛍光チャンネルにおける)は、LNCAP細胞によるPSAの分泌を示す。これらの細胞は、液滴内で一時間インキュベートされ、そして、PSAの分泌が、円柱状の粒子凝集体上の蛍光の再配置をもたらす。
【0341】
図23は、液滴テーブルから得られたPSAの定量化のために検量線を例示する。その検量線は、無洗浄の免疫学的アッセイ実験に関して通常観察される形状を有する。タンパク質がビーズに結合する急増相(最大60nM)の後に、ビーズの飽和による蛍光再配置の減少および遊離PSA濃度の増加がある。データを平均および該平均の誤差タイプ(SEM)として示す。
【0342】
この検量線は、2種類のそれぞれの抗体を用いて、異なる濃度のPSAタンパク質の可溶性型から作成した。試薬、ビーズ、および検出試薬の濃度を、PSA容量が約70nMになるように調整する。前記システムは、70nMを下回る最低濃度に対して非常に高感度である。(空の液滴において予想される最も強いシグナルに相当する)ホワイトリミットが1.047であると決定した。この値を、0nMの濃度にて得られた平均値の1.031と比較する必要がある。検出限界、すなわち、区別できる最も小さいバックグラウンドの量は2.5nMのPSAであり、たった60,000個の分子に相当する。細胞を1時間インキュベートすることによって、毎秒16個超の分子を分泌するすべての細胞が検出され得る。インキュベーション時間を2時間に延長することによって、この制限は、毎秒8個の分子を分泌する細胞などに低下され得る。他の分子に関して文献で報告されている分泌速度は、細胞型や分泌される画分によって毎秒10〜10,000個の分子の間で変動し得る。これは、得られた桁が条件を満たしていることを示す。
【0343】
加えて、検量線は、高濃度にてシグナル増大を示す。例えば、約500nMのPSAにて、シグナルは、バックグラウンドノイズと顕著に区別され得る。これは、非常に高い分泌レベルを有する細胞さえ検出され得るので、実験的開発にとって有利である。
【0344】
図24および25は、タイプ2デバイスでの腫瘍マーカーの定量化を説明する。図24(明視野における)および25(蛍光チャンネルにおける)は、SK−BR−3細胞によるタンパク質CK19の分泌を表す。SK−BR−3は、ヒト乳癌の腫瘍由来の細胞株である。
【0345】
CK19は、通常、細胞膜の中に組み込まれたタンパク質である。しかしながら、それが、取り外されて、細長い凝集体に再配置され得る。
【0346】
ヒト前立腺癌(LnCAP)由来の上皮細胞株を、PSAの細胞分泌を観察する実験のために使用する。
【0347】
タンパク質分泌が、生理的温度付近でしか観察されず、例えば25℃などのより低温では観察できないので、我々は温度が重要因子であることがわかった。より低温では、シグナルは細胞に再配置され、粒子には再配置されず、PSAが膜に結合されたか、または似たような現象が起こったことを示した。
【0348】
LnCAP株の細胞を、これらの細胞のPSA分泌のパーセンテージを決定するためにさらに使用した。文献と以前の経験を考慮し、我々は、すべての細胞がPSAを継続的に産生するわけではないことを知っている。この実験の裏にある考えは、LnCAP集団の中のPSAを分泌する細胞のパーセンテージをまとめることである。この実験を37℃にて実施し、そして、分泌シグナルを0、30、および60分の時点で計測する。
【0349】
以下の表は、モデルとしてLnCAP細胞を使用したPSA分泌実験の条件および結果を表す。
【0350】
【表1】
【0351】
0分の時点で、蛍光再配置は、細長い凝集体のレベルでは見られない。しかしながら、検出試薬がいくつかの細胞の膜上に再配置されたのに気付いた。この現象は、恐らく培養条件と室温での遠心分離に関連しているであろう。我々は、30分または60分の時点での計測に関しても同じ観察をおこなったが、膜上に再配置された検出試薬を有する細胞数は着実に減少したが、その一方で、マーカーを分泌する細胞のパーセンテージは増大した。
【0352】
従って、我々は、個別にカプセル化されたLnCAP細胞の分泌パターンを分析し得る。
【0353】
図26は、タイプ2デバイスでの分泌マーカーの動態学の計測を例示する。図26は、1時間にわたり液滴中でカプセル化され、次いで、10分間隔で計測された個々のLnCAP細胞に関するPSA分泌パターンを示す。
【0354】
ここで、個々の細胞の分泌速度は変動するが、同様の配分が他の細胞株でも見られたことを示す。我々はまた、分泌が通常の放出よりむしろ突然の動態学に従うことを示す。
【0355】
いくつかの細胞が800個超のPSA分子を分泌しているが、その一方で、細胞の大部分がほんのわずかなPSA分子(1細胞あたり約10個の分子)しか分泌していないか、または全く分泌していない(これらの細胞は示されていない)ことが観察された。
【0356】
血中の循環腫瘍細胞(CTC)の検出をシミュレートするために、LnCAP細胞をJurkat細胞と混合した。Jurkat細胞は、ヒトリンパ球Tの不死化株に由来する。両細胞株を、10%のFBSを加えたRPMI培地で培養し、そして、液滴中にカプセル化した。これらの実験は、少量の細胞を検出することが実際に可能であることを示している。我々は、Jurkat細胞中のさまざまな濃度のLnCAPに関して実験をおこなった。蛍光標識を有している細胞のサイズが、検出に使用された。以下の表は、実験の結果を示している。
【0357】
【表2】
【0358】
予備研究は、LnCAPの検出下限が0.0001であり得ることを示している。
この実験は、液滴中のPSAを検出するように構成され、そして、LnCAP細胞が検出可能なレベルでPSAを分泌すること示している。該実験は、他の細胞と人為的に混合した細胞における検出感度を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-20】
図21
図22
図23
図24
図25
図26