(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の固体粒子の搬送方法及び搬送システムを、その好ましい実施形態に基づき説明する。
【0012】
本発明における搬送対象である固体粒子は、少なくとも一種のガス成分を解離する解離平衡反応を生じ得る固体物質からなる。
【0013】
解離とは、錯体、分子又は塩などが分離又は分裂し、より小さい分子や、イオン若しくはラジカルを生じる一般的な過程である。また平衡反応とは、可逆反応において、反応が進行するにつれて正方向の反応速度と逆方向の反応速度とが等しくなり、原料及び生成物の組成比が見かけ上変化しなくなる反応である。
【0014】
少なくとも一種のガス成分を解離する解離平衡反応を生じ得るとは、固体粒子を気流搬送する際の温度及び圧力下、自然状態において理論上気相中の解離平衡反応が生じる可能性があればよい。自然状態においてとは、固体粒子を解離させるために人為的にプラズマ等のエネルギーの付加を行わないことを意味する。
【0015】
固体物質は、少なくとも一種のガス成分と少なくとも一種の固体成分とに解離する解離平衡反応を生じ得ることが、本搬送方法による搬送の安定性を得やすい点から好ましい。この場合、固体物質をA、固体成分をB、ガス成分をC、固体物質のモル数をx、固体成分のモル数をy、ガス成分のモル数をzとすると、解離平衡反応式は下記の通りとなる。
【0017】
固体粒子が上記式の解離平衡反応を生じ得る場合において、気密な容器中における固体物質Aのモル濃度を[A](mol/L)、固体成分Bのモル濃度を[B](mol/L)、ガス成分Cのモル濃度を[C](mol/L)としたときの該解離平衡反応の解離定数Kは下記式にて示される。
【0019】
固体粒子の解離により生じうるガス成分は常温(25℃)常圧(1気圧)にてガス成分であればよく、固体粒子及びその解離により生じうる固体成分は常温(25℃)常圧(1気圧)にて固体であればよい。より好ましくは、前記のガス成分は、固体粒子の搬送雰囲気つまりガス成分を含む気体流の後述する好ましい温度及び圧力下において気体であり、また、固体粒子及びその解離により生じうる固体成分は、気体流の後述する好ましい温度及び圧力下において固体である。
【0020】
本搬送方法は、固体粒子が解離平衡反応により解離しうるガス成分を、固体粒子を搬送する気体流に含有させることを特徴の一つとしている。例えば、固体粒子がLiPF
6からなる場合は、LiPF
6が下記式による解離平衡反応を生じさせることに基づき気体流はPF
5を含む。PF
5は常温(25℃)常圧(1気圧)で気体であり、LiFは常温常圧で固体である。
【0022】
搬送雰囲気が特定のガス成分を含むことにより、解離平衡反応の平衡は、当該ガス成分の量を低下させるように移動する。つまり正反応(解離反応)の反応速度が低下し、逆反応(会合反応)の反応速度が大きくなる。従って、本搬送システム10及びこれを用いた搬送方法により、固体粒子の解離反応を抑制しながら固体粒子を搬送することができる。
【0023】
気体流に含ませるガス成分としては、市販のものを使用してもよく、公知の方法で製造してもよい。気体流は、前記のガス成分のみからなるものであってもよいが、コスト低減や気体流の取り扱い容易性の観点から当該ガス成分に加えて、別のガスを含有していても良い。別のガスとしては、固体粒子の解離平衡反応に関与しないガスを用いることが、ガス成分の使用による固体粒子の解離防止という効果を発揮しやすい点で好ましい。固体粒子の解離平衡反応に関与しないガスとしては、固体粒子、固体成分及びガス成分のいずれとも化学反応しないガスが挙げられる。固体粒子の解離平衡反応に関与しないガスの具体例としては、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスや、露点を調整した乾燥空気等が挙げられる。
【0024】
気体流が前記のガス成分と不活性ガスとの混合ガスである場合、気体流中の前記のガス成分と不活性ガスとの割合(体積比率)は前者/後者が1/10000以上であることが、固体粒子の解離防止という効果を得やすい点で好ましい。気体流中の前記のガス成分と不活性ガスとの割合(体積比率)は前者/後者が1/25以下であることがコスト低減や気体流の取り扱い容易性の観点から好ましい。これらの理由から、気体流中の前記のガス成分と不活性ガスとの割合(体積比率)は1/6000以上1/25以下がより好ましい。しかしながら、前記ガス成分が100体積%であっても構わない。また、気体流中、前記のガス成分及び不活性ガス以外の気体の割合は1体積%以下であることが好ましく、0.1体積%以下であることがより好ましい。
【0025】
固体粒子の搬送雰囲気、つまり気体流の温度は、外気温以上であることが、温度調整せずに固体粒子を搬送しやすいため好ましく、60℃以下であることが、固体粒子の解離をより一層抑制しやすいため好ましい。この観点から、気体流の温度は外気温以上60℃以下であることがより好ましく、外気温以上40℃以下であることが特に好ましい。外気温としては例えば5℃以上が挙げられるが、これに限られない。
【0026】
固体粒子を構成する固体物質が、後述するようにLiPF
6又はLiBF
4である場合、気体流中の水分量は極力少ないことが、水とこれらの固体物質との反応を防止する点で好ましい。例えば、気体流中の水分量は体積基準で1000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。
【0027】
固体粒子は浮遊流、流動化流又はプラグ流の何れの状態で前記気体流により搬送されてもよい。
浮遊流は、搬送管内の風速が速く、粒子が飛翔しながら移動するような流れであり、いわゆる低濃度搬送形態に属する。浮遊流には、風速が比較的遅く粒子が搬送管底部に集中するような浮遊管底流と、風速が速く粒子が搬送管内において分散状態で搬送されるような浮遊分散流がある。
【0028】
流動化流とは、粒体が搬送管の底部で砂丘のように集団流の形で摺動しながら移動するような流れであり、高濃度搬送形態の1つである。粗粉の場合、流動化流の形成原理はプラグ流とほぼ同様である。但し、プラグ流のように粒子集団が搬送管断面を塞ぐような部分が無いか或いは非常に少ないとされる。微粉の場合は、フラシング現象による流動化の原理を利用した搬送形態であり、特に空気を含みやすく、フラシング性の強い微粉の搬送に適しているとされる。
【0029】
プラグ流とは、粉粒体が飛翔することなく、プラグのような集団を形成しながら移動するような流れであり、高濃度搬送形態の1つである。このような形態で搬送するシステムでは、空気消費量が少なく、搬送効率が良い上、搬送物の破砕や配管摩耗などが少ないとされている。
【0030】
気流搬送装置には、低圧吸引式、低圧圧送式、高圧圧送式、プラグ搬送式、及びエアスライドがあり、何れを採用することもできる。一般に、浮遊流による搬送は、低圧吸引式、低圧圧送式により行われ、流動化流による搬送は高圧圧送式により行われ、プラグ流による搬送はプラグ搬送式又はエアスライドにより行われる。
【0031】
固体粒子の気流搬送の距離は、例えば2m以上100m以下、特に5m以上50m以下であることが、搬送経路選択の柔軟性が高いという気流搬送のメリットが得やすいほか、搬送容易性等の点から好ましい。また、気流搬送のメリットが得やすい点、及び搬送容易性の点から気流搬送の到着点は、気流搬送の起点よりも高いことが好ましく、より好ましくは、0.5m以上50m以下高い位置であることが好ましい。更に、搬送管の直径(内径)としては、一般に、2.5cm以上13.5cm以下が挙げられる。
【0032】
固体粒子の平均粒子径は1mm以下であることが固体粒子を前述した浮遊流、流動化流又はプラグ流、特に流動化流又はプラグ流の状態の前記気体流により搬送しやすい点から好ましい。また前記の平均粒子径は、0.01mm以上であることが、粒子の凝集を防止しやすい観点や輸送配管への付着防止の観点から好ましい。これらの観点より固体粒子の平均粒子径は0.01mm以上1.0mm以下であることがより好ましく、0.05mm以上0.4mm以下であることが特に好ましく、0.1mm以上0.4mm以下であることが最も好ましい。固体粒子の平均粒子径は以下の方法にて測定される。ここでいう平均粒子径は、気体搬送中に限らず、明らかに粒径を変化させる処理(粉砕等)を経ていないのであれば、搬送前及び搬送後のいずれの固体粒子を測定対象としてもよい。
<平均粒子径の測定方法>
粒度分布を測定後、平均粒子径を算出する。
粒度分布の測定方法は篩、レーザー回折等、一般的な手法を用いることが出来る。本明細書中、平均粒子径の算出に必要な粒度分布の測定方法は、篩による方法とする。レーザー回折等の他の方法で測定した平均粒子径が上記範囲に含まれない場合であっても、篩による方法で平均粒子径が上記範囲内であれば該当することとする。篩法による平均粒子径は重量分布から算出した加重平均径である。具体的には、平均粒子径の測定は、JISZ8815の「ふるい分け試験方法通則」に準拠し、乾式法にて温度15〜30℃、露点-20℃以下の不活性ガス雰囲気条件下で、4段以上の篩を用いて行う。
【0033】
気体流の圧力は、浮遊流、流動化流又はプラグ流の何れにより固体粒子を搬送するかによって大きく異なるが、一般に搬送効率の向上や粒子間の摩擦熱の発生を防止して解離をより一層抑制するために、吸引の場合には、−50kPaG以上大気圧以下、圧送の場合には、大気圧以上400kPaG以下であることが好ましい。
【0034】
固体粒子は、搬送管内において前記気体流により搬送されることが好ましい。また搬送管内表面に付着した該固体粒子又は該固体粒子の解離により生じた固体成分を、該気体流により除去することが更に好ましい。気体流により搬送管内表面に付着した固体成分又は固体粒子を除去する具体例については後述する。
【0035】
固体粒子は閉じた搬送経路内で搬送されることが好ましい。ここでいう“閉じた”とは、固体粒子の外部への飛散を防止できる程度の密閉度をいう。より好ましくは、固体粒子は、気密性を有する搬送経路内で搬送されることが、外部からの水分等の浸入を防止して、固体粒子の変質を抑制できる点や、気体流中のガス成分の外部への流出を防止できる点から好ましい。
また本発明では搬送経路において気体流を循環させることが、搬送に用いるガス成分の利用効率を高めて、搬送コストを低減できる点から好ましく、特に気密性を有する搬送経路において気体流を循環させることが好ましい。
【0036】
固体物質は、フッ素含有無機塩であることが好ましく、特にPF
6−又はBF
4−をアニオンとする塩であることが好ましい。PF
6−又はBF
4−をアニオンとする塩は、常温(25℃)で気体のフッ素化合物であるPF
5又はBF
3を解離する解離平衡反応を容易に生じうる。中でもPF
6−又はBF
4−のアルカリ金属塩は、入手容易性の点や電池等の各種分野で広く使用され有用性が高い点で好ましい。とりわけLiPF
6又はLiBF
4は、リチウム電池の電解質として需要が高く、これを気流搬送することにより電解質及びそれを用いたリチウム電池の製造コストを低減できるという産業上の効果が得られる点で好ましい。
なお、LiPF
6は常温常圧下、及び、上述した好ましい気体流の温度・圧力下で、前記に挙げた式による解離平衡反応を生じうる。
またLiBF
4は常温常圧下、及び、上述した好ましい気体流の温度・圧力下で、下記式による解離平衡反応を生じうる。BF
3は常温常圧で気体である。
【0037】
ガス成分を解離しうる固体物質に対して、解離を抑制して気流搬送できる効果の利益を高める点から、搬送対象である固体粒子中、少なくとも一種のガス成分を解離する解離平衡反応を生じ得る固体物質の割合は、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。この含有率は例えばLiPF
6又はLiBF
4であればイオンクロマトグラフにより測定できる。
【0039】
以下では、本搬送方法及び搬送システムを、固体粒子の搬送システム10に係る
図1に基づき更に詳述する。
図1に示す搬送システム10は、搬送物である固体粒子が仕込まれ且つ該固体粒子を搬送経路24に供給する渡し手段21と、渡し手段21と接続し、該渡し手段21から供給された固体粒子を搬送可能な搬送経路24と、搬送経路24と接続し固体粒子を搬送経路24から受け取る受け手段20と、渡し手段21に固体粒子を供給する固体粒子供給経路23と、を有している。
【0040】
渡し手段21及び受け手段20としては例えばホッパーを使用できる。搬送経路24としては、気流搬送に一般に使用される形状の搬送管を使用できる。また、渡し手段21、受け手段20及び搬送経路24並びにシステム10を構成する各種のガス管の構成材料としては、固体粒子や気体流の構成成分に対して安定であり、気流搬送の圧力に対して耐久性のある材料を任意に使用できる。そのような材料の具体例としては、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、PVdF等)、金属配管(鉄、ステンレス、アロイ鋼等)が挙げられる。
【0041】
更に搬送システム10は、搬送経路24とは別に、受け手段20と渡し手段21とを接続するガス帰還経路26と、ガス帰還経路26に接続して、特定のガス成分を含む気体をガス帰還経路26に導入する気体供給経路25と、ガス帰還経路26の途中に設けられて圧送力又は吸引力により、搬送経路24中に浮遊流、流動化流又はプラグ流を生じさせるブロワ22とを有している。本システムにおいてブロワが循環手段の例である。
【0042】
搬送システム10においては、まず渡し手段21に固体粒子供給経路23を通じて固体粒子が供給される。また、気体供給経路25から前記特定のガス成分を含む気体がガス帰還経路26に供給される。前記の気体はブロワ22により気体流として渡し手段21に送り込まれ、更に搬送経路24に固体粒子ごと移送される。更に搬送経路24においてブロワ22による圧送力又は吸引力により気体流が固体粒子を搬送し、受け手段20に到達させる。受け手段20に到達した固体粒子は、そのまま貯蔵されるか、又は次の工程に送られる。一方、受け手段20において気体流は固体粒子から離れ、ガス帰還経路26を通じてブロワ22に戻り、ブロワ22により再度渡し手段21及び搬送経路24に送り込まれて、固体粒子の搬送に使用される。ガス帰還経路26における受け手段20とブロワ22との間には、気体流と固体粒子とを確実に分離するため、不図示のフィルターなどを設けても良い。また、受け手段20に搬送された固体粒子を別箇所に移送する不図示の移送手段を設けてもよい。
【0043】
以上の構成の本搬送システム10及びこれを用いた搬送方法では、固体粒子を搬送する気体流に、固体粒子の解離により生じるガス成分を含ませることにより、固体粒子の解離を抑制しながら固体粒子を搬送することができる。
【0044】
また搬送システム10によれば、受け手段20と渡し手段21とを搬送経路24とガス帰還経路26の2つの経路で接続し、ガス帰還経路26と搬送経路24とがガスの循環経路を構成している。この構成により特定のガス成分を含む気体流を循環させながら、搬送経路24において固体粒子を搬送できる。
【0045】
ガス帰還経路26及び搬送経路24並びに受け手段20及び渡し手段21は、いずれも外部空間に対して閉じて形成されている。上述した通り、好ましくはこれらの手段及び経路は、外部空間に対して気密に保たれた気密な内部空間を形成し、この気密な内部空間内において、特定のガス成分を含む気体流を循環させている。
【0046】
更に、
図1に示すように、システム10は、ガス帰還経路26と搬送経路24とが、渡し手段21を迂回するための迂回経路27によって接続されていることが好ましい。迂回経路27は、ガス帰還経路26及び搬送経路24それぞれにおける渡し手段21近傍に接続している。ガス帰還経路26における迂回経路27の接続部よりも渡し手段21側の部分(以下「第1分岐部」ともいう)26a、及び、搬送経路24における迂回経路27の接続部よりも渡し手段21側の部分(以下「第2分岐部」ともいう)24aには、それぞれ、バルブ26b及び24bが設けられている。また、迂回経路27にもバルブ27bが設けられている。これらのバルブにより、第1分岐部26a、第2分岐部24a及び迂回経路27がそれぞれ独立に開閉可能となっている。また、迂回経路27を有する場合、ブロワ22として圧送ブロワを用いることが好ましい。
【0047】
以上の構成により、例えば、搬送経路24に、固体粒子又は該固体粒子の解離により生じた固体成分による詰まりが生じていない場合には、迂回経路27におけるバルブ27bを閉じ、前記のバルブ26b及びバルブ24bを開としておく。これにより、ブロワ22からの気体流は、迂回経路27を通らずにもっぱら渡し手段21を通じて搬送経路24に供給され、固体粒子の搬送に使用される。
【0048】
一方、搬送経路24に、固体粒子又は該固体粒子の解離により生じた固体成分による詰まりが生じた場合には、迂回経路27におけるバルブ27bを開き、前記の第1分岐部26a及び第2分岐部24aそれぞれにおけるバルブ26b及び24bを閉じる。これにより、ブロワ22からの気体流は、渡し手段21を通らずに迂回経路27を通じて搬送経路24に供給される。迂回経路27を通じた気体流は、固体粒子による抵抗を受けない分、高い圧力を有している。このため、搬送経路24に付着した固体粒子又は固体成分をパージでき、搬送経路24の詰まりを除去することができる。詰まりを除去した後は、再度、迂回経路27のバルブ27bを閉じ、第1分岐部26a及び第2分岐部24aのバルブ26b及び24bを開けば、固体粒子の搬送を再開できる。
【0049】
搬送経路24の詰まりの検知及び迂回経路27及び第1分岐部26a及び第2分岐部24aにおけるバルブの開閉は公知の手段にて行うことができる。例えば特許文献2に記載のような詰まり検出手段を用いることができ、この検出手段による検出結果に基づき、不図示の制御手段にて、前述した各バルブを開閉することができる。
【0050】
以上の通り、本実施形態のシステム10を説明したが、本発明はこのシステム10に限定されない。例えば、ブロワ22に替えて、或いはそれに加えて、真空ポンプ等を用い、その吸引力により固体粒子を搬送してもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、係る実施例に制限されない。以下の実施例において、特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0052】
〔実施例1〕
図1に示す搬送システム10を用いた。外気温10℃の環境にて行った。
渡し手段21としてステンレス製のホッパーを用いた。受け手段20として、渡し手段21から20m高く且つ地面と平行な方向において10m離間した位置に配置されたステンレス製のホッパーを用いた。渡し手段21及び受け手段20を接続する搬送経路24として直径(内径)5cm、長さ30mのステンレス製の管を用いた。
固体粒子供給経路23から、渡し手段21に平均粒子径0.22mmのLiPF
6粉末を100kg仕込んだ。迂回経路27におけるバルブ27bを閉じ、第1分岐部26a及び第2分岐部24aにおけるバルブ26b及び24bを開いた。N
2ガス:99.98体積%及びPF
5ガス:0.02体積%からなる気体流(体積基準で水分量は20ppm)を気体供給経路25からガス帰還経路26に導入し、ブロワ22より、温度10℃、ブロワ22の吸引圧力−20kPaGにて渡し手段21に導入して搬送経路24及びガス帰還経路26を循環させた。生じた気体流により搬送経路24内においてLiPF
6粉末を高圧圧送し、流動化流として、受け手段20まで到達させた。
【0053】
〔比較例1〕
気体流の組成を、N
2ガス:100体積%とした以外は実施例1と同様にしてLiPF
6粉末を気流搬送した。
【0054】
〔実施例2〕
渡し手段21に仕込むLiPF
6粉末100kgを、平均粒子径0.13mmのLiBF
4粉末100kgに変更した。また、気体流の組成を、N
2ガス:90体積%、BF
3ガス:10体積%に変更した。それらの点以外は、実施例1と同様にしてLiBF
4粉末を気流搬送した。
【0055】
〔比較例2〕
気体流の組成を、N
2ガス:100体積%とした以外は実施例2と同様にしてLiBF
4粉末を気流搬送した。
【0056】
各実施例及び比較例にて受け手段20に到達した固体粒子(LiPF
6粉末又はLiBF
4粉末)を、下記評価に供した。
〔評価〕
溶媒として、1,2−ジメトキシエタン 1.5Lをビーカーに入れて液温を25℃に設定した。固体粒子100gを、ビーカーに入れて3分間攪拌し溶解させた。得られた溶液をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)タイプメンブレンフィルター(孔径0.1μm)でろ過処理に施すことにより、不溶解分をろ別させた後、乾燥器にてメンブレンフィルターと共に乾燥させた。各実施例及び比較例の不溶解分の質量を下記表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、同じLiPF
6粉末を搬送する場合であっても、LiPF
6の解離ガスであるPF
5を含む気体流を用いた実施例1では、PF
5を含まない気体流を用いた比較例1に比べて搬送後の不溶解分が少なかった。LiPF
6粉末の代わりにLiBF
4粉末を搬送した実施例2及び比較例2でも同様であった。
LiPF
6粉末及びLiBF
4粉末は評価で使用した溶媒に容易に溶解するものである。一方、これらの粉末の解離により生じるフッ化リチウムLiFは、当該溶媒に不溶である。従って、不溶解分の析出は搬送中の解離による変質を示す。
以上より、本発明の搬送方法により、ガス成分を解離する解離平衡反応を生じ得る固体物質からなる固体粒子の解離を効果的に抑制しながら固体粒子を搬送できることが判る。