(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982068
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ベンゼンおよび/またはトルエンのメチル化によるパラキシレン製造用の触媒に選択性付与するプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 2/86 20060101AFI20211206BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20211206BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20211206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
C07C2/86
C07C15/08
B01J29/70 Z
!C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-518465(P2019-518465)
(86)(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公表番号】特表2019-531305(P2019-531305A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(86)【国際出願番号】US2017051198
(87)【国際公開番号】WO2018067282
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】62/437,493
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/405,036
(32)【優先日】2016年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599134676
【氏名又は名称】エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】チェン、タン−ジェン
【審査官】
佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−529978(JP,A)
【文献】
特表2010−513020(JP,A)
【文献】
特表平10−502908(JP,A)
【文献】
Zhu, ZR ET AL,Catalytic performance of MCM-22 zeolite for alkylation of toluene with methanol,Catalysis Today,2004年,Vol. 93-95,P. 321-325
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラキシレンを製造するプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:
(a)ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる芳香族炭化水素供給原料を、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいるアルキル化剤と、5未満の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでいるアルキル化触媒の存在下で、および500℃未満の温度および700kPa−a〜7000kPa−aの範囲の圧力を含むアルキル化条件下で、少なくとも1つのアルキル化反応ゾーン中で接触させて、キシレンを含んでいるアルキル化芳香族製品を製造する工程であって、
少なくとも1:4の前記アルキル化剤とベンゼンおよび/またはトルエンとのモル比が、目標パラキシレン選択率が達成されるまで使用される工程;および
(b)前記アルキル化芳香族製品からパラキシレンを回収する工程
を含むとともに、前記アルキル化触媒がMWW骨格構造の少なくとも1種のモレキュラーシーブを含んでおり、前記アルキル化条件が250℃〜450℃の温度を含む、プロセス。
【請求項2】
前記目標パラキシレン選択率が、キシレンの全量に基いて少なくとも35重量%のパラキシレンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルキル化剤とベンゼンおよび/またはトルエンとのモル比が1:4〜1:2である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記芳香族炭化水素供給原料が、少なくとも90重量%のトルエンを含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルキル化剤がメタノールを含んでいる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルキル化芳香族製品が、少なくとも70重量%のキシレンを含んでいる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記アルキル化触媒が、MCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、MCM−36、MCM−49、MCM−56、EMM−10、EMM−12、EMM−13、UZM−8、UZM−8HS、UZM−37、MIT−1およびこれらの混合物から成る群から選ばれた少なくとも1種のモレキュラーシーブを含んでいる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記アルキル化触媒がMCM−49を含んでいる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルキル化条件が、250℃〜400℃の温度を含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルキル化条件が、2,000kPa-a〜7,000kPa-aの圧力を含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月6日に出願された米国特許仮出願第62/405,036号および2016年12月21日に出願された米国特許仮出願第62/437,493号の優先権を主張し、その両方の開示内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
技術分野
【0002】
本開示発明は、ベンゼンおよび/またはトルエンをメチル化してキシレン、特にパラキシレンを製造する触媒に選択性付与するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
キシレンは化学工業における価値の高い前駆物質である。3種のキシレン異性体のうち、パラキシレンは最も重要なものである。というのは、それがテレフタル酸を製造するための出発原料であるからであり、テレフタル酸はそれ自体、合成ポリエステル繊維、フィルムおよび樹脂の生産における価値の高い中間物である。現在、パラキシレンの需要は5〜7%の年率で増加している。
【0004】
パラキシレンを製造するための既知の1つのルートは、ベンゼンおよび/またはトルエンのメチル化による。たとえば米国特許第6,504,072号は、パラキシレンを選択的に製造するプロセスを開示し、このプロセスは120℃の温度および60トール(8kPa)の2,2−ジメチルブタン圧力で測定されたときに約0.1〜15秒
−1の2,2−ジメチルブタンについての拡散パラメーターを有する多孔性結晶性材料を含んでいる触媒の存在下にアルキル化条件下でトルエンをメタノールと反応させる工程を含む。多孔性結晶性材料は好ましくは中細孔径ゼオライト、特にZSM−5であり、これは少なくとも950℃の温度で厳しくスチーミングされたものである。アルキル化条件としては、約500〜700℃の温度、約1気圧〜1000psig(100〜7000kPa)の圧力、約0.5〜約1000の重量時空間速度および少なくとも約0.2のトルエンとメタノールとのモル比が挙げられる。
【0005】
さらに、米国特許第6,642,426号は、メタノールを含んでいるアルキル化剤で芳香族炭化水素反応物、特にトルエンをアルキル化してアルキル化芳香族製品を製造するプロセスを開示しており、このプロセスは、リアクター装置中に第一の場所で芳香族炭化水素反応物を導入し、このリアクター装置は500〜700℃の温度および約300〜600kg/m
3の運転床密度を含む流動床反応ゾーンを含んでいてアルキル化芳香族生成物を製造する工程;当該アルキル化反応物の複数の流れを当該流動床反応ゾーン中に芳香族炭化水素反応物の流れの方向に離間された位置で直接に導入する工程であって、当該流れの少なくとも1つが第1の位置から下流の第2の位置で導入される工程;および芳香族反応物とアルキル化剤との反応によって生成されたアルキレート芳香族製品をリアクター装置から回収する工程を含む。好ましい触媒は、高温スチーミング処理によって選択性付与されたZSM−5である。
【0006】
上で議論された米国特許に例示されているように、メタノールを用いたベンゼンおよび/またはトルエンのアルキル化の現行プロセスは、中細孔径のゼオライト、特にZSM−5の存在下に高温で、すなわち500〜700℃で行われる。これは、多くの問題、特にサイクル当たりの触媒寿命が比較的短く、したがって触媒の頻繁な再生が必要となる結果をもたらす。加えて、既存のプロセスは、典型的にはかなりの量のメタノールがエチレンおよび他の軽質オレフィンに転化される結果をもたらし、これはキシレンなどの望ましい製品の収率を低下させ、回収コストを増加させる。
【0007】
それ故に、メタノール(またはジメチルエーテル)によるベンゼンおよび/またはトルエンのアルキル化のための改善されたプロセスの必要が存在し、そのプロセスは触媒のパラキシレン選択率を増加させ平衡量よりも多い量のパラキシレンを製造する。
【発明の概要】
【0008】
トルエンおよび/またはベンゼンが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを用いるアルキル化反応によって比較的穏やかな条件下で、すなわち500℃未満の温度で5以下の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでいるアルキル化触媒の存在下にキシレンに転化されてもよい。より低い温度のアルキル化反応は、従来の高温プロセスよりも少ない軽質ガス副生成物を生成し、かつより長い触媒サイクル寿命を達成する。メタノール利用率(すなわち、メタノールのキシレンへの転化率)もまた従来の高温プロセスと比較して改善される。
【0009】
製品混合物中のパラキシレンの濃度を増加させ、平衡濃度よりも高い濃度のパラキシレンを得るために、アルキル化触媒は選択性付与されてもよい。1つの実施形態では、アルキル化触媒は、目標とするパラキシレン選択率に達するまで少なくとも1:4のアルキル化剤と芳香族とのモル比を使用することによって選択性付与される。目標パラキシレン選択率が達成されれば、アルキル化剤と芳香族とのモル比は維持されまたは減少されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に記載されたトルエンをメタノールでアルキル化するプロセスにおける運転時間に対するパラキシレンの選択率を示すグラフである。
【0011】
【
図2】実施例に記載されたトルエンをメタノールでアルキル化するプロセスにおける運転時間に対するトルエンおよびメタノールの転化率を示すグラフである。
【0012】
【
図3】実施例に記載されたトルエンをメタノールでアルキル化するプロセスにおける運転時間に対するキシレンの選択率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示された実施形態はキシレン、特にパラキシレンを製造するアルキル化プロセスを提供し、このプロセスは比較的温和な条件下で実施されて、従来の高温プロセスよりも少ない軽質ガス副生成物およびより長い触媒サイクル寿命でキシレンを製造することができる。メタノール利用率(すなわち、メタノールのキシレンへの転化率)もまた改善される。少なくともいくつかの実施形態では、ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる芳香族炭化水素供給原料は、アルキル化条件下でアルキル化触媒の存在下に少なくとも1つのアルキル化反応ゾーンにおいてメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいるアルキル化剤と接触させられる。アルキル化触媒は5未満、たとえば4未満、たとえば3未満、またはいくつかの実施形態では2未満の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでおり、またアルキル化条件は500℃未満の温度を含む。
【0014】
本プロセスは、ベンゼンおよび/またはトルエンを、本質的に100%のメタノール転化率および実質的に軽質ガスを副生しないでキシレンに転化するのに有効である。高いメタノール利用率は、従来技術のトルエンおよび/またはベンゼンのメチル化プロセスのメタノール利用率に照らして驚くべきことであり、かつ、より少ないコーク生成の実質的な利点をもたらし、これは触媒寿命を増加させる。さらに、従来技術プロセスでは、メタノールの副反応を最小限にするためにリアクター中にメタノールとともにスチームを同時供給することが好まれているが、スチームは触媒寿命に悪い影響を与える。本発明のプロセスではメタノールのほぼ100%が芳香族環と反応して芳香族を製造するので、スチームを同時供給する必要がなく、これはこのプロセスのエネルギー需要を減少させ、かつ触媒寿命を増加させる。
【0015】
本明細書に記載された実施形態でのメタノールからキシレンへの選択率は典型的にはおよそ80%であり、主な副生成物はベンゼンおよびC
9+芳香族である。ベンゼンはアルキル化流出物から分離されてアルキル化反応ゾーンにリサイクルされることができ、他方、C
9+芳香族はガソリンプール中へのブレンド用に分離されるか、または補足のベンゼンおよび/またはトルエンとともにトランスアルキル化されて追加のキシレンが作られることができる。既存のプロセスと比較してアルキル化触媒の寿命は改善される。というのは、より低い反応温度ではメタノールの分解ははるかにより少ないからである。その上、より大きい細孔のモレキュラーシーブの使用は、拡散制限を最小限にし、アルキル化が商業的に実現可能なWHSVで実施されることを可能にする。さらに、トルエン供給原料(少なくとも90%のトルエンを有するもの)が使用されると、既存プロセスと比較して、より多くのアルキル化剤が、他の分子、たとえばアルキル化剤または反応の副生成物とではなく、トルエンと反応してキシレンが製造される。
【0016】
キシレン製品中のパラキシレンの量は、アルキル化触媒に選択性付与することによって少なくとも35重量%まで増加させることができる。1つの実施形態では、アルキル化触媒は、供給原料中で少なくとも1:4のアルキル化剤と芳香族とのモル比を使用することによってその場で(in−situ)選択性付与される。所望のパラキシレンの選択率が達成された後、供給原料中のアルキル化剤と芳香族との比は、反応の残りのために維持されるかまたは減少されてもよい。触媒が選択性付与された後にアルキル化剤と芳香族との比が減少される場合には、その触媒のパラキシレン選択率が所定の閾値未満に減少するようであれば、その後にその触媒に再度選択性付与するためにアルキル化剤と芳香族との比が上げられてもよい。
【0017】
本明細書で使用される用語「C
n」炭化水素は、nが正の整数、たとえば1、2、3、4、5等であり、1分子あたりn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。用語「C
n+」炭化水素は、nが正の整数、たとえば1、2、3、4、5等であり、1分子あたり少なくともn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。用語「C
n−」炭化水素は、nが正の整数、たとえば1、2、3、4、5等であり、本明細書で使用されるとき1分子あたりn個以下の炭素原子を有する炭化水素を意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「アルキル化すること」および「メチル化すること」または「アルキル化」および「メチル化」は互換的に使用されてもよい。
【0019】
拘束指数とは、その内部構造によって様々なサイズの分子を制御するモレキュラーシーブが提供する範囲の便利な尺度である。拘束指数が測定される方法は米国特許第4,016,218号に十分に記載されており、その方法の詳細について同特許は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0020】
本発明のプロセスで使用するのに適した5以下の拘束指数を有する適当なモレキュラーシーブの例としては、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y(USY)、超疎水性Y(UHP−Y)、脱アルミニウムY(Deal Y)、モルデナイト、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−12、ZSM−14、ZSM−18、ZSM−20およびこれらの混合物が挙げられる。ゼオライトZSM−3は米国特許第3,415,736号に記載されている。ゼオライトZSM−4は米国特許第4,021,947号に記載されている。ゼオライトZSM−12は、米国特許第3,832,449号に記載されている。ゼオライトZSM−14は米国特許第3,923,636号に記載されている。ゼオライトZSM−18は米国特許第3,950,496号に記載されている。ゼオライトZSM−20は米国特許第3,972,983に記載されている。ゼオライトベータは米国特許第3,308,069号および再発行特許第28,341号に記載されている。低ナトリウム超安定Yモレキュラーシーブ(USY)は米国特許第3,293,192号および第3,449,070号に記載されている。超疎水性Y(UHP−Y)は米国特許第4,401,556号に記載されている。脱アルミニウムYゼオライト(Deal Y)は米国特許第3,442,795号に認められる方法によって調製されてもよい。ゼオライトYおよびモルデナイトは天然材料であるが、合成型、たとえばTEA−モルデナイト(すなわち、テトラエチルアルミニウム指向剤を含んでいる反応混合物から調製された合成モルデナイト)でも入手可能である。TEA−モルデナイトは米国特許第3,766,093号および第3,894,104号に記載されている。
【0021】
本発明のプロセスで使用するのに適した5以下の拘束指数を有する1つの好ましい種類のモレキュラーシーブは、MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料である。本明細書で使用される用語「MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料」としては、以下のうちの1種以上が挙げられる:
●通常の一次結晶構成ブロック単位格子からつくられたモレキュラーシーブであって、その単位格子がMWW骨格構造トポロジーを有するもの(単位格子は原子の空間配置であり、3次元空間に嵌め込まれるとその結晶構造を記述する。このような結晶構造は「ゼオライト骨格構造型のアトラス」、第5版、2001年刊で検討されており、その全内容は参照によって取り込まれる)。
●通常の二次構成ブロックからつくられたモレキュラーシーブであって、この二次構成ブロックはそのようなMWW骨格構造トポロジー単位格子の2次元嵌め込みであり、1個の単位格子の厚さ、好ましくは1個のc軸単位格子の厚さの単層を形成するもの。
●通常の二次構成ブロックからつくられたモレキュラーシーブであって、この二次構成ブロックは1個以上の単位格子の厚さの層であり、1個より多い単位格子の厚さの層はMWW骨格構造トポロジー単位格子の少なくとも2つの単層を積み重ね、詰め込みまたは結合することによってつくられる。そのような二次構成ブロックの積み重ねは、規則的な様式、不規則な様式、ランダムの様式またはこれらの任意の組み合わせであってもよいもの。および
●任意の規則的なまたはランダムの、2次元または3次元のMWW骨格構造トポロジーを有する単位格子の組み合わせによってつくられたモレキュラーシーブ。
【0022】
MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料としては、12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07オングストロームにd間隔の最大値を含んでいるX線回折パターンを有するモレキュラーシーブが挙げられる。この材料を特性付けるために使用されるX線回折データは、入射放射線として銅のK−アルファ二重線を使用する標準技術ならびにシンチレーション計数器および収集装置として付帯されたコンピューターを備えた回折計によって得られる。
【0023】
MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料の例としては、MCM−22(米国特許第4,954,325号に記載されている。)、PSH−3(米国特許第4,439,409号に記載されている。)、SSZ−25(米国特許第4,826,667号に記載されている。)、ERB−1(欧州特許第0293032号に記載されている。)、ITQ−1(米国特許第6,077,498号に記載されている。)およびITQ−2(国際特許出願公開第WO97/17290号に記載されている。)、MCM−36(米国特許第5,250,277号に記載されている。)、MCM−49(米国特許第5,236,575号に記載されている。)、MCM−56(米国特許5,362,697に記載されている。)、UZM−8(米国特許第6,756,030号に記載されている。)、UZM−8HS(米国特許第7,713,513号に記載されている。)、UZM−37(米国特許第7,982,084号に記載されている。)、EMM−10(米国特許第7,842,277号に記載されている。)、EMM−12(米国特許第8,704,025号に記載されている。)、EMM−13(米国特許第8,704,023号に記載されている。)、MIT−1(Chemical Science、2015年、第6巻、6320〜6324頁でLuoらによって記載されている。)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ、MCM−49が一般に好ましい。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるMWW骨格構造型の結晶性細孔性材料は、他の結晶性材料、たとえばフェリエライトまたは石英で汚染されていることがある。これらの汚染物質は≦10重量%、通常≦5重量%の量で存在してもよい。
【0025】
さらにまたは代わりに、本発明に有用なモレキュラーシーブはケイ素とアルミニウムとの比によって特性付けられてもよい。特定の実施形態では、本発明に適したモレキュラーシーブとしては100未満の、好ましくは約15〜50のSi/Al比を有するものが挙げられる。
【0026】
モレキュラーシーブ触媒は、平衡量よりも高い量のパラキシレンを製造するために選択性付与されてもよく、その量は製品混合物中のキシレンの全量に基いて約23重量%超のパラキシレンである。1つの実施形態では、キシレン留分中のパラキシレンの濃度は少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%である。触媒の選択性付与は、少なくとも1:4、または1:3、または1:2のアルキル化剤と芳香族との比を有する供給原料を使用することによって目標のパラキシレン選択率に達するまでその場で(in−situ)実施されてもよい。本明細書で使用される「目標パラキシレン選択率」とは、キシレン留分中少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%のパラキシレンを意味する。目標パラキシレン選択率が達成されたならば、アルキル化剤と芳香族との比は減少されてもよい。もっとも、いくつかの実施形態では、アルキル化剤と芳香族との比は目標パラキシレン選択率が達成された後でさえも維持される。触媒が十分に選択性付与されてアルキル化剤と芳香族との比が減少され、パラキシレンの選択率が目標のパラキシレンの選択率未満に減少する場合には、供給原料中のアルキル化剤と芳香族との比は、触媒を再選択性付与するために再び増加されてもよい。
【0027】
触媒は、追加的にまたは代わりに、芳香族化リアクターへの導入の前にあるいはリアクター中でその場で(in−situ)、その触媒を選択性付与剤、たとえばケイ素、スチーム、コークまたはこれらの組み合わせと接触させることによって選択性付与されてもよい。1つの実施形態では、触媒は、その触媒を少なくとも1種の有機ケイ素と液体担体中で接触させ、続いて酸素含有雰囲気中で、たとえば350〜550℃の温度の空気中で焼成することによってシリカ選択性付与される。適当なシリカ−選択性付与手順は、米国特許第5,476,823号に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、触媒は、その触媒をスチームと接触させることによって選択性付与される。ゼオライトのスチーミングは、少なくとも約950℃、好ましくは約950〜約1075℃、最も好ましくは約1000〜約1050℃の温度で約10分間〜約10時間、好ましくは30分間〜5時間で達成される。選択性付与手順は、複数回繰り返されてもよいものであり、モレキュラーシーブの拡散特性を変更し、キシレン収率を増加させてもよい。
【0028】
シリカまたはスチーム選択性付与に加えてまたはそれらの代わりに、触媒はコーク選択性付与に付されてもよい。この任意的なコーク選択性付与は典型的には、触媒を、当該化合物の分解温度を超えるがモレキュラーシーブの結晶性に悪影響を及ぼす温度以下の高められた温度で熱分解性有機化合物と接触させることを含んでいる。コーク選択性付与技術に関するさらなる詳細は米国特許第4,117,026号に示されており、この内容は参照によって本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、シリカ選択性付与およびコーク選択性付与の組み合わせが使用されてもよい。
【0029】
選択性付与の前に、モレキュラーシーブを、少なくとも1種の酸化物変性剤、たとえば周期表の2〜4族および13〜16族の元素から選ばれた少なくとも1種の酸化物と組み合わせることが望ましいこともある。最も好ましくは、当該少なくとも1種の酸化物変性剤は、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、ランタン、最も好ましくはリン、の酸化物から選ばれる。いくつかの場合には、モレキュラーシーブは1種を超える酸化物変性剤と組み合わせられてもよく、たとえばリンとカルシウムおよび/またはマグネシウムとの組み合わせと組み合わせられてもよい。というのは、このようにすれば目標の拡散性の数値を達成するために必要なスチーミングの過酷度を低減させることが可能かもしれないからである。いくつかの実施形態では、触媒中に存在する酸化物変性剤の元素基準で測定された合計量は、最終触媒の重量に基いて約0.05〜約20重量%であってもよく、好ましくは約0.1〜約10重量%である。変性剤がリンを含んでいる場合には、触媒中への変性剤の取り込みは米国特許第4,356,338号、第5,110,776号、第5,231,064号および第5,348,643号に記載された方法によって好都合に達成され、これらの全開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0030】
上記のモレキュラーシーブは、何らのバインダーまたはマトリクスなしに本明細書で用いられるアルキル化触媒として使用されてもよい。あるいは、モレキュラーシーブは、アルキル化反応で用いられる温度その他の条件に耐性がある別の材料で複合化されてもよい。そのような材料としては、活性および不活性の材料ならびに合成のまたは天然のゼオライトとともに無機材料、たとえばクレーおよび/または酸化物、例としてアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアまたはこれらの混合物および他の酸化物が挙げられる。後者は、天然物あるいはゼラチン状沈殿物またはゲルの形態のもの、たとえばシリカと金属酸化物との混合物であってもよい。クレーもまた、酸化物型のバインダーとともに組み入れられて、触媒の機械的特性を修正しまたはその製造を助けてもよい。モレキュラーシーブと一緒にある材料を、すなわちそれと組み合わせられまたはその合成の際に存在するものであって、それ自体が触媒的に活性であるものを使用することは、触媒の転化率および/または選択率を変更することがある。不活性な材料は希釈剤としての役割を適当に果たして、反応速度を調節するための他の手段を用いることなく製品が経済的にかつ秩序立って得られるように転化量を調節することができる。これらの材料は天然のクレー、たとえばベントナイトおよびカオリンに組み入れられてもよく、商業運転条件下の触媒の破砕強度を改善しかつ触媒のためのバインダーまたはマトリクスとして機能する。モレキュラーシーブと無機酸化物マトリクスとの相対割合は広い範囲で様々であり、モレキュラーシーブ含有量は約1〜約90重量%であり、より普通には、特に、複合物がビーズの形態で調製されるときは複合物の約2〜約80重量%の範囲である。
【0031】
本プロセスへの供給原料は、ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる芳香族炭化水素供給原料ならびにメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいるアルキル化剤を含んでいる。任意の製油所芳香族供給原料がベンゼンおよび/またはトルエンの源として使用されることができる。もっとも、いくつかの実施形態では、少なくとも90重量%のトルエンを含んでいる芳香族炭化水素供給原料を使用することが望ましいことがある。さらに、いくつかの実施形態では、芳香族炭化水素供給原料を前処理して触媒毒、たとえば窒素化合物および硫黄化合物を除去することが望ましいことがある。別の実施形態では、供給原料は非芳香族化合物、たとえば非芳香族化合物が抽出されていない製油所芳香族供給原料をさらに含んでいてもよい。
【0032】
本発明のアルキル化プロセスは比較的低い温度で、すなわち500℃未満、たとえば475℃未満、または450℃未満、または425℃未満、または400℃未満で実施される。商業的に実現可能な反応速度を提供するために、このプロセスは少なくとも250℃、たとえば少なくとも275℃、たとえば少なくとも300℃の温度で実施されてもよい。範囲に関しては、このプロセスは、250〜500℃未満、たとえば275〜475℃、たとえば300〜450℃の範囲の温度で実施されてもよい。運転圧力は温度に応じて様々であろうが、一般には少なくとも700kPa、たとえば少なくとも700 kPa−a、たとえば少なくとも1000kPa−a、たとえば少なくとも1500kPa−a、または少なくとも2000kPa−a、約7000kPa−aまで、たとえば約6000kPa−aまで、約5000kPa−aまでである。範囲に関しては、運転圧力は700kPa−a〜7000kPa−a、たとえば1000kPa−a〜6000kPa−a、たとえば2000kPa−a〜5000kPa−aの範囲でもよい。芳香族化合物およびアルキル化剤供給原料の合計に基いた適当なWHSV値は、50〜0.5時
−1の範囲、たとえば10〜1時
−1の範囲にある。いくつかの実施形態では、芳香族供給原料の少なくとも一部、メタノールアルキル化剤および/またはアルキル化流出物は、液相でアルキル化反応ゾーンの中に存在してもよい。
【0033】
アルキル化反応は、任意の公知のリアクター装置、たとえば固定床リアクター、移動床リアクター、流動床リアクターおよび反応蒸留装置で実施されることができるが、これらに限定されない。さらに、リアクターは、同じまたは異なる反応容器中にある単一の反応ゾーンまたは複数の反応ゾーンを含んでいてもよい。さらに、メタノール/ジメチルエーテルアルキル化剤の注入は、リアクターの単一の点でまたはリアクターに沿って間隔を空けて置かれた複数の点で達成されることができる。
【0034】
アルキル化反応の生成物はキシレン、ベンゼンおよび/またはトルエン(残留するものおよび本プロセスで同時に製造されたものの両方)、C
9+芳香族炭化水素、同時に生成された水、およびいくつかの場合には未反応メタノールを含んでいる。しかし、一般に全てのメタノールが芳香族炭化水素供給原料と反応させられて、アルキル化製品が概して残留メタノールを含んでいないように、本プロセスを運転することが好ましい。アルキル化製品はまた、一般に、メタノールのエチレンその他のオレフィンへの分解によって生成される軽質ガスを一般に含んでいない。いくつかの実施形態では、アルキル化製品の有機成分は少なくとも80重量%のキシレンを含んでいてもよく、またパラキシレンがそのキシレン留分の少なくとも35重量%を占めていてもよい。
【0035】
水を分離した後、アルキル化製品は、分離部門、たとえば1基以上の蒸留塔に供給されて、キシレンが回収され、またC
9+芳香族炭化水素副生成物からベンゼンおよびトルエンが分離されてもよい。得られたベンゼンおよびトルエンはアルキル化反応ゾーンにリサイクルされてもよく、C
9+芳香族化合物はガソリンプール中にブレンドするために回収され、または補足のベンゼンおよび/またはトルエンとともにトランスアルキル化されて追加のキシレンが作られることができる。含酸素化合物副生成物が、当分野で知られた任意の手段、たとえば、米国特許第9,012,711号、第9,434,661号および第9,205,401号に記載された吸着法;米国特許第9,294,962号に記載された苛性洗浄法;第8,252,967号、第8,507,744号および第8,981,171号に記載された晶析法;および米国特許出願公開第2016/0115094号および第2016/0115103号に記載されたケトンへの転化法によってアルキル化製品から除去されてもよい。
【0036】
アルキル化製品および任意の下流のC
9+トランスアルキル化プロセスから回収されたキシレンは、パラキシレン製造ループに送られてもよい。このパラキシレン製造ループはパラキシレン分離部門を含んでおり、そこでパラキシレンが通常通りに吸着法もしくは晶析法または両方の組み合わせによって分離され、回収される。パラキシレンが吸着法によって分離される場合、使用される吸着剤は好ましくはゼオライトを含んでいる。吸着カラムは好ましくは擬似移動床カラム(SMB)であり、また脱着剤、たとえばパラジエチルベンゼン、パラジフルオロベンゼン、ジエチルベンゼンもしくはトルエンまたはこれらの混合物が使用されて、選択的に吸着されたパラキシレンが回収される。本発明のプロセスで使用されるのに適した商業用のSMB装置は、PAREX(商標)またはELUXYL(商標)である。
【0037】
本発明が、これから以下の非限定的実施例および添付された図面を参照して、より具体的に説明される。
【実施例1】
【0038】
実験が、350℃の温度、600psig(4238kPa−a)の圧力および全供給原料基準で3.5時
−1のWHSVでトルエンのメタノールによるアルキル化におけるパラキシレン選択率を検討するために実施された。選択性付与手順の間に使用された供給原料は、メタノールとトルエンとの1:2のモル比の混合物から成っていた。検討に使用された触媒は、配合物にされたMCM−49押出物(ゼオライト80%/アルミナバインダー20%)である。この反応は下降流固定床リアクター中で実施された。液体生成物が収集され、Agilent社製6890型GCによって分析された。ガス分収率が差分として計算された。結果が
図1〜3に要約される。
【0039】
図1は、9日間の試験にわたってのパラキシレンに向けての選択性付与を示す。最初の4日の間、パラキシレン選択率は約25重量%であったが、供給原料のメタノールとトルエンとの比をより高くした9日間の運転時間後には、パラキシレン選択率は約43重量%に増加した。パラキシレン選択率は、メタノールとトルエンとの比の増加とともに、少なくとも40重量%に達するまでは増加し続けるであろうと期待される。
【0040】
図2から分かるように、メタノールの転化率は本質的に100%である。実験の間中、生成物中にメタノールは検出されなかった。トルエンの転化率は9日間の試験にわたって安定している。平均トルエン転化率は45%である。
【0041】
実験で観察された全キシレン選択率が
図3にまとめられ、
図3から9日間の試験にわたっての平均キシレン選択率は77重量%またはそれに近いことが分かる。製品の残余は主としてC
9+芳香族化合物であり、またいくらかのC
10+芳香族化合物およびベンゼンがある。
【0042】
本明細書に引用された全ての特許、試験手順書その他の文書は、優先権書類を含めて、参照によって完全に組み込まれるが、そのような開示物が本明細書の記載と矛盾するものでなくかつそのような組み込みが許される全ての法的管轄地域を対象とすることを限度とする。
【0043】
本明細書に開示された例示的な形態が具体的に記載されてきたが、様々な他の変形が当業者には明らかであり本開示発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって容易に作ることができることは理解されるだろう。したがって、本願に添付された特許請求の範囲が本明細書に記載された実施例および説明に限定されることは意図されておらず、本特許請求の範囲は、本明細書に存在する特許性のある斬新性の全ての特徴を、この開示発明が関わる技術分野の当業者によってその等価物として扱われるであろう全ての特徴を含めて、包含するものと解釈されなければならない。
【0044】
数値的な下限および数値的な上限が本明細書に挙げられている場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が考慮に入れられている。