特許第6982071号(P6982071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロックツールの特許一覧

特許6982071繊維プリフォームの圧密化(固化)およびオーバーモールドのための方法および装置
<>
  • 特許6982071-繊維プリフォームの圧密化(固化)およびオーバーモールドのための方法および装置 図000002
  • 特許6982071-繊維プリフォームの圧密化(固化)およびオーバーモールドのための方法および装置 図000003
  • 特許6982071-繊維プリフォームの圧密化(固化)およびオーバーモールドのための方法および装置 図000004
  • 特許6982071-繊維プリフォームの圧密化(固化)およびオーバーモールドのための方法および装置 図000005
  • 特許6982071-繊維プリフォームの圧密化(固化)およびオーバーモールドのための方法および装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982071
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】繊維プリフォームの圧密化(固化)およびオーバーモールドのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20211206BHJP
   B29C 45/42 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/42
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-521044(P2019-521044)
(86)(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公表番号】特表2019-532845(P2019-532845A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2017076650
(87)【国際公開番号】WO2018073324
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年9月9日
(31)【優先権主張番号】1670612
(32)【優先日】2016年10月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506304026
【氏名又は名称】ロックツール
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】ファージェンブルム ホセ
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/063979(WO,A1)
【文献】 特表2008−546570(JP,A)
【文献】 特表2015−525157(JP,A)
【文献】 特開平10−309720(JP,A)
【文献】 特開2012−205802(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0276075(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0045684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 45/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合部品を熱成形し、前記複合部品の一方の面に外形を射出オーバーモールドするための装置の実装(実施)を備えたオーバーモールドを含む成形複合部品の製造方法において、
前記装置は、一対の成形ダイとそれらの間のパンチとからなり、閉鎖されたキャビティを画定するモールドにおいて、前記成形ダイは、以下の構成を含む移送装置を備え:
a. 成形ダイに対して/から、ブランクを搭載/取外するための搭載/取外ステーション;
b. モールドを閉鎖してパンチと成形ダイとの間に射出(注入)する射出およびモールド閉鎖ステーション;
成形ダイは、その成形表面を加熱するためのインダクタのネットワークと、流体の循環によって前記成形表面を冷却するための冷却ネットワークと、を備えるとともに、搭載/取外ステーションは、成形ダイの成形表面に面する誘導加熱スクリーンからなる放射素子(放射要素)を配置するための装置を備え
成形ダイのインダクタのネットワークと、放射素子(放射要素)の加熱を行う部材と、には、同じ単一のジェネレータによって高周波電流が供給されるとともに、放射素子(放射要素)を加熱する誘導加熱回路、または、成形ダイのインダクタのネットワークを備える回路は、コンデンサユニットまたは平滑コイルを備えるものであって、
前記製造方法が、以下の工程からなり:
i.搭載/取外ステーションにおいて、成形ダイの1つに複合ブランクを配置する;
ii.ブランクの熱成形に適した温度T1まで、前記ダイおよびそれと接触しているブランクを予熱する;
iii.ダイを射出(注入)ステーションに移送する、
iv.ブランクの熱成形を行うために、温度T1を維持しながら前記ダイ上のモールドを閉じる;
v.ブランクの圧密化(固化)および射出(注入)に適した温度T2にダイを冷却する;
vi オーバーモールドされた部分(部品)を射出(注入)する;
vii 成形キャビティを取り外し(離型)温度まで冷却する;
viii モールドを開く;
ix ダイを搭載/取外ステーションに移送する;
x 部品を取り外し、工程i)から繰り返す
工程i)およびx)は、工程iv)〜vi)が第2のダイ上で行われるのと同時に第1のダイ上で行われ、工程ii)は、工程vii)〜viii)が第2のダイ上で行われるのと同時に第1のダイ上で行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
工程ii)が、放射素子(放射要素)を用いてブランクおよび成形ダイを加熱することを含むことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項3】
成形ダイのインダクタのネットワークに交互に電力を供給するためのスイッチと、単一の高周波発生器を使用して放射素子の加熱を実行するためのスイッチとを備えた請求項1に係る装置の実装(実施)を備えたオーバーモールドを含む成形複合部品の製造方法において、
前記スイッチが、工程ii)の間における放射パネルを加熱する手段と、工程iv)からvi)の間おける第2の成形ダイのインダクタのネットワークと、に向けた高周波電流の供給を指示することを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項4】
それぞれパンチと対を成す2つの成形ダイを備え、それら各々は、インダクタのネットワークと、それらの成形表面を加熱および冷却するための冷却回路とを備えており、これらのダイは、一方のダイが射出(注入)ステーションにあるときに、他方のダイが搭載/取外ステーションにあるように、移送装置に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の装置の実装(実施)を備えたオーバーモールドを含む成形複合部品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維プリフォーム(textile preform)を圧密化(固化:consolidating)し、圧密化(固化)した部品(component)上にオーバーモールド(overmoulding)を形成するための方法および装置に関する。本発明は、より詳細には、一般的なシェル(外殻)の形状において、長繊維または連続繊維によって強化された複合材料からなる部品の製造に適しており、該部品は、特にリブ、溝、固定溝、または位置決めまたは組み立て要素を含むオーバーモールドされたテクニカルなフェース(技術的面)を有するものであるが、これらの列挙は限定または網羅するものではない。
【0002】
そのような部品は、例えばテレビスクリーンのような電子機器の覆い(カバー)として用いられるが、本発明は、自動車や航空分野、または旅行用鞄のような他の分野にも等しく適用可能である。長繊維または連続繊維(long-fibre or continuous-fibre)の繊維プリフォームの使用は、短繊維で強化された射出ポリマーを使用する従来技術の解決法と比較して、部品の重量を減らす一方で、同時にその機械的強度を高めることを可能にする。
【背景技術】
【0003】
この目的のために、従来技術によれば、連続繊維を積層した予備的に(予め)圧密化(固化)した熱可塑性複合材料からなるブランク(blank)は、形成されるプライの層間滑り(interlaminar slippage)を可能にするのに十分な高い温度に予熱される。前記ブランクは成形用のダイ(金型)の上に置かれ、モールド(金型)が閉鎖された状態で、このダイ(金型)の形状に熱成形される。前記成形されたブランクの再圧密化(固化)の後またはそれと同時に、テクニカルフェース(技術的面)は、同じモールド(金型)で射出(注入)オーバーモールドされ、次いで冷却後に部品が取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1894442号明細書
【特許文献2】欧州特許第2861399号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この製造サイクルは、ブランクとモールド(金型)の両方の、数回にわたる加熱と冷却のサイクルからなる。したがって、熱成形を行うために、ブランクは、温度をそのポリマーマトリックス(ポリマー金型)の溶融点に近いかまたはそれよりさらに高い温度に上げられ、それにより、形成されるダイ(金型)の成形の間にプライの層間滑りが可能になり、そして、モールド(金型)は一般に、前記ポリマーマトリックス(ポリマー金型)の圧密化(固化)温度またはガラス転移温度に近いかまたはそれよりわずかに高い温度に予熱される。成形されたブランクの圧密化(固化)および、それに次ぐ射出(注入)は、ブランクの圧密化(固化)に適した温度であるが射出(注入)およびモールド(金型)の細部全体の充填を可能にするのに十分高い温度にモールド(金型)を冷却することを必要とし、次に、モールド(金型)を開く前に、その部品は、その取り外し(離型)に適した温度に冷却される必要がある。次に、このモールド(金型)は、サイクルを繰り返すために再加熱されなければならない。加熱−冷却サイクルの期間は、部品の製造時間を制約する。例えば、流体循環またはモールド(金型)の電気抵抗による、モールド(金型)の間接的な加熱手段を実施する場合、それらは、本発明による部品に求められる製造速度と比較して長くなる。従来技術によれば、ブランクの加熱は、赤外線を放射する放射パネルを用いてモールド(金型)の外側で行われ、前記ブランクは、一旦非圧密化(非固化)されて熱成形される準備が整うと、その凝集性を失い、取り扱いが困難なことになる。
【0006】
特に欧州特許第1894442号明細書に記載されているように、誘導加熱技術は、熱成形または射出用のモールド(金型)を急速に加熱および冷却することを可能にし、そして、実際に加熱されるモールド(金型)の体積を制限することにより、モールド(金型)の成形表面(moulding surfaces)上の温度およびこの温度の均一性の両方を精密に制御することを可能にする。この技術的解決法は、モールド(金型)、特に射出または熱成形用のモールド(金型)の温度を制御することを可能にするが、それはブランクを予熱することを可能にしない。
【0007】
欧州特許第2861399号明細書は、前記成形表面に面して配置された、高温に上昇させた放射素子(放射要素)を使用して、モールド(金型)の表面を加熱するための別の技術的解決策を開示している。この技術的解決策それ自体では、放射素子(放射要素)が表面から離れ、モールド(金型)が閉じられると、成形キャビティ内の温度を制御することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オーバーモールドを含む熱成形複合部品を高い生産速度(生産率)で製造することによる従来技術の欠点を克服することを目的とし、この目的のために複合部品を熱成形し、前記複合部品の一方の面に外形を射出オーバーモールドするための装置に関するものであり、一対の成形ダイ(金型)とそれらの間のパンチ(punch)とからなり、閉鎖されたキャビティを画定するモールド(金型)において、前記成形ダイ(金型)は、以下の構成を含む移送装置(transfer device)を備える:
a. 成形ダイ(金型)に対して/から、ブランクを搭載/取外(loading/unloading)するための搭載/取外ステーション;
b. モールド(金型)を閉鎖してパンチと成形ダイ(金型)との間に射出(注入)する射出およびモールド(金型)閉鎖ステーション;
成形ダイ(金型)は、その成形表面を加熱するためのインダクタのネットワークと、流体の循環によって前記成形表面を冷却するための冷却ネットワークと、を備えるとともに、搭載/取外ステーションは成形ダイの成形表面に面する放射素子(放射要素)を配置するための装置を備えている。
【0009】
したがって、この装置は、射出(注入)を行うためにモールド(金型)が閉鎖される前にブランクを成形ダイ上で直接予熱することを可能にする。ブランクは成形ダイ上の所定の位置に置かれると一旦予熱されるため、それが搭載されている間は、特にロボットにより操作(処理)することも容易である。
【0010】
本発明は、有利には、以下に示される実施例および代替例に従い実施され、それらは、個々に、または任意の技術的に実現可能な組み合わせで考慮される。
【0011】
有利には、放射素子(放射要素)は誘導加熱スクリーン(induction heated screen)である。したがって、例えばグラファイトスクリーンなどのスクリーンは、急速に高温に上げられ、ブランクおよび成形ダイの急速加熱を可能にする。
【0012】
有利には、成形ダイのインダクタのネットワークと、放射素子(放射要素)の加熱を行う部材とに、同じ単一のジェネレータによって高周波電流が供給され、それによって設置電力および設置コストが削減される。
【0013】
特定の一実施例によれば、装置は、成形ダイのインダクタのネットワークに交互に電力を供給するためのスイッチと、単一の高周波発生器を使用して放射素子の加熱を実行するためのスイッチとを備えている。このスイッチは、単一の発電機によって高周波電流が供給されている移送装置のステーションを容易かつ自動的に変更することを可能にする。
【0014】
1つの特に有利な実施例によれば、本発明の主題を形成する装置は、それぞれパンチと対を成す2つの成形ダイ(金型)を備え、それら各々は、インダクタのネットワークと、それらの成形表面を加熱および冷却するための冷却回路とを備えており、これらのダイ(金型)は、一方のダイ(金型)が射出(注入)ステーションにあるときに、他方のダイ(金型)が搭載/取外ステーションにあるように、移送装置に取り付けられている。
【0015】
有利には、放射素子(放射要素)を加熱する誘導加熱回路、または、成形ダイ(金型)のインダクタのネットワークを備える回路は、コンデンサユニットまたは平滑コイル(smoothing coil)を備える。これらの手段は、例えこれらの回路が異なる電気的特性を有していたとしても、どの回路が給電されていても、各回路をインピーダンス整合し、高周波発生器の起動および最適動作を確実にすることを可能にする。
【0016】
本発明はまた、本発明に係る装置の実装(実施)を備えたオーバーモールドを含む成形複合部品の製造方法に関し、以下の工程からなる:
i.搭載/取外ステーションにおいて、冷えた成形ダイ(金型)の1つに複合ブランク(composite blank)を配置する;
ii.ブランクの熱成形に適した温度T1まで、前記ダイ(金型)およびそれと接触しているブランクを予熱する;
iii.ダイ(金型)を射出(注入)ステーションに移送する、
iv.ブランクの熱成形を行うために、温度T1を維持しながら前記ダイ(金型)上のモールド(金型)を閉じる;
v.ブランクの圧密化(固化)および射出(注入)に適した温度T2にダイ(金型)を冷却する;
vi オーバーモールドされた部分(部品)を射出(注入)する;
vii 成形キャビティを取り外し(離型)温度まで冷却する;
viii モールド(金型)を開く;
ix ダイ(金型)を搭載/取外ステーションに移送する;
x 部品を取り外し、工程i)から繰り返す
工程i)およびx)は、工程iv)〜vi)が第2のダイ(金型)上で行われるのと同時に第1のダイ(金型)上で行われ、工程ii)は、工程vii)〜viii)が第2のダイ(金型)上で行われるのと同時に第1のダイ(金型)上で行われる。したがって、タスクは並行して実行され、生産率が向上する。
【0017】
ダイ(金型)の1つが搭載/取外ステーションに到着すると、その温度はせいぜい取り外し(離型)温度に冷却されるものとする。これにより、手動操作であろうとロボットを用いたものであろうと、ブランクそれ自体を周囲温度に近い温度で操作し、それを前記ダイ(金型)上に置くことが容易となる。
【0018】
有利には、工程ii)は、放射素子(放射要素)を用いてブランクおよび成形ダイ(金型)を加熱することを含む。
【0019】
スイッチを備える本発明による装置を実装する一実施例によれば、前記スイッチは、工程ii)の間における放射素子(放射要素)を加熱する手段、および工程iv)からvi)の間おける第2の成形ダイ(金型)のインダクタのネットワーク、に向けた高周波電流の供給を指示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、以下の図1から図5を参照した、本発明の好ましい実施形態に従って以下に開示されるが、それらは何ら限定するものではない。
【0021】
図1図1は、本発明の主題を構成する装置の一実施例の斜視図である。
【0022】
図2図2は、カバーなしの状態でのスイッチの一実施例を示す部分斜視図である。
【0023】
図3図3は、本発明の主題を構成する装置の射出(注入)ステーションにおける成形ダイ(金型)のインダクタのネットワークと、高周波発生器との電気的接続のための、制御接続部(controlled connection)の一実施例のカバーなしの状態での部分斜視図を示す。
【0024】
図4図4は、2つの成形ダイ(金型)を備える本発明の主題を構成する装置の一実施例の断面概略図を示す。
【0025】
図5】そして、図5は、本発明の主題を構成する方法の一実施例に従った、本発明の主題を構成する装置の典型的な実施例のタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1において、ただ1つの成形ダイ(金型)を備える実施態様による本発明の主題を構成する一実施例の装置では、前記装置は、少なくとも4分の1回転(90°)にわたって旋回(回転)する回転円形移送装置(rotary circular transfer device)(100)を備えている。ダイ(金型)(110)は前記移送装置(100)に取り付けられており、この図では射出(注入)ステーションに位置し、前記ダイ(金型)と対をなすパンチ(120)に対面しており、その垂直方向の移動は作動シリンダ(121)によってもたらされる。前記パンチ(120)の垂直方向の動きは、パンチ(120)とダイ(110)によって形成されるモールド(金型)の開閉を可能にし、その成形表面は、モールド(金型)が閉じられたときに部品を入れて閉鎖されるキャビティを区画する。円形移送テーブル(circular transfer table)が4分の1回転すると、前記ダイ(金型)(110)は、放射スクリーン(radiating screen)とこの放射スクリーンの加熱を可能にする手段とを備える予熱装置(130)の下の搭載/取外ステーションに位置される。限定する例示ではないが、放射スクリーンはグラファイトパネルからなる。装置は、電力線(150)によって高周波電流発生器(図示せず)に接続されている。一例として、前記発生機(generator)は、意図する用途に応じて、約10〜数百kWの電力に対して10kHz〜200kHzの周波数の電流を発生する。成形ダイ(金型)(110)が射出(注入)ステーションにあるとき、または搭載/取外ステーションの予熱装置(130)にあるとき、スイッチ(160)は、この単一の発生器(150)を使用して成形ダイ(金型)(110)に高周波電流を供給することを可能にする。この実施例によれば、射出(注入)ステーションは、さらに、前記ダイ(金型)のインダクタのネットワークに電力を供給するために、成形ダイ(金型)(110)と連結する手段と協働する制御接続部(170)を備える。
【0027】
図2において、一実施例によれば、スイッチは、一方が高周波発生器に接続され、他方が、例えば銅製からなる2つの導体ユニット(conductor unit)からなるスライダ(260)に接続され、高周波電流入力部(high-frequency electrical current input)(150)を形成する。実施例では、スライダ(260)は、2対の受信接点(261、263)間をステッピング電気モータ(265)によって制御される並進運動で移動することができ、前記一対のうちの一方(263)は、放射パネル誘導加熱回路(radiating panel induction heating circuit)に接続され、他方(261)は、成形ダイ(金型)のインダクタのネットワークを備える誘導回路に接続される。前記受信接点(261、263)はそれぞれ、例えば銅製の、2つの導電性ユニットからなる。電子制御ボックス(290)は、ステッピングモータ(265)を制御して、放射パネルと成形ダイ(金型)のインダクタのネットワークとの間で、高周波の供給を切り替える。成形ダイ(金型)の放射パネルの誘導電気回路の各々は、必要ならば、欧州特許2742773/米国特許2014−0183178明細書に記載されているような、いずれかの誘導回路に電力を供給するときに高周波発生器が起動して最適に動作可能とする、コンデンサユニットおよび平滑コイル(いずれも図示せず)を装備する。
【0028】
図3における一実施例によれば、制御接続部は、移送装置の射出(注入)ステーションに対して固定されている部分(371)と、成形ダイ(金型)に接続されている部分(372)と、からなる。固定部分(371)は、外面上で絶縁され、成形ダイ(金型)に接続された部分(372)上の一対の雄型接点(male contacts)(312)と接続可能な一対の雌型接点(female contacts)(311)を備える。この実施例によれば、接続は前記雌型接点(311)を動かすことによって行われ、この動きは複動式(二段作動式)の空気圧作動シリンダ(375)によって実現される。圧縮空気循環手段(Compressed-air-circulation means)(320)は、接点(311)の冷却を可能にする。
【0029】
図4における一実施例によれば、本発明の主題を構成する装置は、移送テーブル(100)上に配置された2つの成形ダイ(金型)(411、412)からなる。前記移送テーブル(100)は、第1のダイ(金型)(411)および第2のダイ(金型)(412)が、部分的に回転(90°または180°)を実行することによって搭載/取外ステーションと射出(注入)ステーションとの間で交互に動かすことを可能にしている。すなわち、この実施例によれば、本発明の主題を構成する装置は、振幅サイクルに従って2つの部品に対して実行される動作を並行して実行させることによって、2つの部品の製造を可能にする。各成形ダイ(金型)(411、412)は、前記ダイ(金型)内に形成されたキャビティ内に延伸するインダクタ(413)のネットワークと、流体を循環させるための冷却ダクト(導管)(414)とを備える。成形ダイ(金型)の実施例およびその代替例は、特に欧州特許第1894442号明細書に記載されている。射出(注入)ステーションに配置されたパンチ(120)は、成形ダイ(金型)の1つと接触する際に閉鎖されたキャビティを区画し、この閉鎖されたキャビティはダイ(金型)の形成表面とパンチの成形表面の間に形成される。パンチの成形表面は、オーバーモールドによって製造された部品上に形成される浮き彫り(reliefs)に対応する形状(422)を有する。この目的のために、前記パンチは、パンチの成形表面と成形ダイ(金型)の成形表面との間に形成される閉鎖されたキャビティ内にプラスチックを射出(注入)する手段(421)を備える。一実施例によれば、パンチは、流体を循環させるための冷却ダクト(導管)(423)も備える。搭載/取外ステーションは、放射素子(放射要素)加熱装置(130)を備える。この加熱装置は、例えば、コイル(回転部:spire)(432)の内部に配置されたグラファイトパネル(431)を装備し、このコイル(回転部:spire)は、スイッチ(160)を介して高周波発生器(490)に接続されている。前記コイル(回転部:spire)(432)が高周波電流によって電力を受けると、グラファイトパネル(431)は誘導によって加熱され、例えば1000℃まで、急速に加熱される。グラファイトの高い放射率係数は、その加熱に使用されるエネルギーの大部分が放射(放熱)によって伝達され得ることを意味する。誘導加熱は放射パネルの急速な加熱を可能にし、それにより前記パネルを常に高温に保つ必要性を回避し、結果として酸化によるその劣化を制限する。放射素子(放射要素)加熱装置(130)によって生成された熱放射(435)は、部品を製造するために使用される層状複合ブランク(stratified composite blank)(450)が、搭載/取外ステーションにおけるダイ(金型)(412)上の定位置にある間に、その熱成形に適した温度まで上昇させることを可能にするが、ブランクの配置前または配置中に前記ダイ(金型)(412)の成形表面を予熱することも可能にする。実施態様の変形例によれば、前記ブランク(450)は、オペレータまたはロボットによって、ダイ(金型)(412)上に冷却されて置かれる。
【0030】
典型的な実施例によれば、ブランクは、完全に圧密化(固化)された、または部分的に圧密化(固化)された熱可塑性マトリックスの中の繊維プライ層状物であり、この実施例の場合、熱成形操作はスタンピングに対応するか、またはブランクは非プライ層からなる。そしてこの実施例の場合、熱成形操作は形状の圧密化(固化)に近く、熱可塑性ポリマーのプリプレグプライ(prepreg plies)は、たとえ積層が圧密化(固化)されていなくても比較的硬くなる。
【0031】
ブランクの熱成形に適合した加熱温度T1は、ブランクを構成する複合材料のマトリックスを構成するポリマーの軟化を観察するのに十分な高温であり、強化材の性質に応じて、繊維状襞の層間滑りを許容するのに十分である。 ブランクの性質およびマトリックスを構成するポリマーの性質に応じて、この温度はガラス転移温度とポリマー溶融温度の中間にある。温度は、特にブランクの性質に応じたテストによって決定される。
【0032】
有利には、ダイ(金型)の成形表面は、例えば、黒色クロムメッキ、または炭化ケイ素(SiC)をベースとするメッキのコーティングからなり、これは、赤外線の吸収およびその放射による加熱を改善することを可能にする。パイロメータ(高温計)(図示せず)は、ブランクまたはダイ(金型)の成形表面の温度を、これらが放射によって加熱されている間に、測定することを可能にする。変形例によれば、成形表面は、ブランクを配置する前に放射パネル(431)によって適合された温度に予熱される。スイッチ(160)は、高周波発生器(490)によって発生された電源電流が、制御接続部(170)を介して射出(注入)ステーションに配置されている成形ダイ(金型)(411)のインダクタ(413)のネットワークに向けられるようにすることを可能にする。
【0033】
図5における本発明の主題を構成する方法の典型的な一実施例によれば、いくつかの製造工程(510〜512)は搭載/取外ステーションで行われ、他の製造工程(520〜524)は射出(注入)ステーションで行われる。従って、工程は、生産速度を上げるために並行して行われる。搭載/取外ステーションから開始し、離型工程(510)において、予め熱成形されてオーバーモールドされた部品が成形ダイ(金型)から離別され、そしてダイ(金型)が洗浄される。搭載工程(511)の間に、複合ブランクがダイ(金型)上に配置される。予熱工程(512)の間に、ブランクおよび成形ダイ(金型)は、放射によって、熱成形温度まで上昇される。この工程(512)の間、放射手段加熱装置(radiating-means heating device)に高周波電流が供給される。移送テーブルの回転(513)によって、ダイ(金型)および予熱されたブランクは射出(注入)ステーションに移送される。同時に、他方のダイ(金型)内で熱成形され、またはオーバーモールドされた部品は、搭載/取外ステーションに運ばれる。モールド閉鎖工程(520)の間に、ブランクは熱成形される。成形ダイ(金型)のインダクタのネットワークは、移送工程の終了時に高周波発生器に接続される。温度維持工程(521)の間、このように形成されたブランクのプライ(plies)の均一な充満(注入:impregnation)を確実にするために、前記ダイ(金型)は熱成形温度に保たれる。この間、放射手段は、もはや発生器により電力供給されていない。この工程は、層状化の折り目の間の界面を通るポリマーの分子鎖の発達(development)、および意図された用途での許容可能なレベルへの気孔率の減少であり、それに続く層状化の統合を目的とする。冷却工程(522)の間に、熱成形されたブランクは、そのポリマーマトリックスのガラス転移温度(glass transition temperature)より低いがオーバーモールドを可能にするのに十分に高い温度まで冷却される。射出(注入)工程(523)の間、オーバーモールドが行われる。このステップの間、成形ダイ(金型)のインダクタのネットワークはもはや電力供給されず、これにより放射加熱手段に電力供給することが可能となる。冷却工程(524)の間、成形ダイ(金型)およびパンチから形成されたモールド(金型)は、流体の循環によって冷却され、次いで移動テーブルがさらなる回転(513)を行う前にモールド(金型)が開かれ、その成形ダイ(金型)の上の完成部品を、搭載/取外ステーションに運ぶ。したがって、一つの高周波発生器のみが使用されていても、製造作業は両方の部品に対して並行して行われる。
【0034】
ダイ(金型)および放射手段の両方に誘導加熱を使用することにより、離型温度と熱成形温度との間の広い温度範囲にわたり、急速な加熱/冷却サイクルが可能になり、その結果、移送の2つのステーション(ブランクとピース)で、遅滞なく、これらのステーションで実行される作業に適合した温度で工具を使用することが可能となる。
【0035】
本発明の装置および方法は、繊維の性質、複合マトリックスの性質、およびオーバーモールド用の射出ポリマーの性質の両方に関して、多種多様な熱可塑性複合材料に適している。ブランクの予熱、温度維持、射出および離型温度は、使用される材料に応じて、既存のデータから、またはテストから決定される。異なるステップの間のこれらの温度の達成、および対応する手段の構成、特にダイ内のインダクタの数、設置された誘導電力および冷却チャネル内の流体流量に関しては、例えば加熱および冷却サイクルの数値シミュレーションによって得られる。
【0036】
上記の説明および実施例は、本発明が意図された目的を達成すること、すなわち2つの熱成形およびオーバーモールドされる部品の製造のタスクを並行して実行すること、生産速度をほぼ2倍にすること、一方で同時に一つの高周波電流発生器を使用し、装備される電力を限定することが可能になることを示している。

図1
図2
図3
図4
図5