【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この製造サイクルは、ブランクとモールド(金型)の両方の、数回にわたる加熱と冷却のサイクルからなる。したがって、熱成形を行うために、ブランクは、温度をそのポリマーマトリックス(ポリマー金型)の溶融点に近いかまたはそれよりさらに高い温度に上げられ、それにより、形成されるダイ(金型)の成形の間にプライの層間滑りが可能になり、そして、モールド(金型)は一般に、前記ポリマーマトリックス(ポリマー金型)の圧密化(固化)温度またはガラス転移温度に近いかまたはそれよりわずかに高い温度に予熱される。成形されたブランクの圧密化(固化)および、それに次ぐ射出(注入)は、ブランクの圧密化(固化)に適した温度であるが射出(注入)およびモールド(金型)の細部全体の充填を可能にするのに十分高い温度にモールド(金型)を冷却することを必要とし、次に、モールド(金型)を開く前に、その部品は、その取り外し(離型)に適した温度に冷却される必要がある。次に、このモールド(金型)は、サイクルを繰り返すために再加熱されなければならない。加熱−冷却サイクルの期間は、部品の製造時間を制約する。例えば、流体循環またはモールド(金型)の電気抵抗による、モールド(金型)の間接的な加熱手段を実施する場合、それらは、本発明による部品に求められる製造速度と比較して長くなる。従来技術によれば、ブランクの加熱は、赤外線を放射する放射パネルを用いてモールド(金型)の外側で行われ、前記ブランクは、一旦非圧密化(非固化)されて熱成形される準備が整うと、その凝集性を失い、取り扱いが困難なことになる。
【0006】
特に欧州特許第1894442号明細書に記載されているように、誘導加熱技術は、熱成形または射出用のモールド(金型)を急速に加熱および冷却することを可能にし、そして、実際に加熱されるモールド(金型)の体積を制限することにより、モールド(金型)の成形表面(moulding surfaces)上の温度およびこの温度の均一性の両方を精密に制御することを可能にする。この技術的解決法は、モールド(金型)、特に射出または熱成形用のモールド(金型)の温度を制御することを可能にするが、それはブランクを予熱することを可能にしない。
【0007】
欧州特許第2861399号明細書は、前記成形表面に面して配置された、高温に上昇させた放射素子(放射要素)を使用して、モールド(金型)の表面を加熱するための別の技術的解決策を開示している。この技術的解決策それ自体では、放射素子(放射要素)が表面から離れ、モールド(金型)が閉じられると、成形キャビティ内の温度を制御することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オーバーモールドを含む熱成形複合部品を高い生産速度(生産率)で製造することによる従来技術の欠点を克服することを目的とし、この目的のために複合部品を熱成形し、前記複合部品の一方の面に外形を射出オーバーモールドするための装置に関するものであり、一対の成形ダイ(金型)とそれらの間のパンチ(punch)とからなり、閉鎖されたキャビティを画定するモールド(金型)において、前記成形ダイ(金型)は、以下の構成を含む移送装置(transfer device)を備える:
a. 成形ダイ(金型)に対して/から、ブランクを搭載/取外(loading/unloading)するための搭載/取外ステーション;
b. モールド(金型)を閉鎖してパンチと成形ダイ(金型)との間に射出(注入)する射出およびモールド(金型)閉鎖ステーション;
成形ダイ(金型)は、その成形表面を加熱するためのインダクタのネットワークと、流体の循環によって前記成形表面を冷却するための冷却ネットワークと、を備えるとともに、搭載/取外ステーションは成形ダイの成形表面に面する放射素子(放射要素)を配置するための装置を備えている。
【0009】
したがって、この装置は、射出(注入)を行うためにモールド(金型)が閉鎖される前にブランクを成形ダイ上で直接予熱することを可能にする。ブランクは成形ダイ上の所定の位置に置かれると一旦予熱されるため、それが搭載されている間は、特にロボットにより操作(処理)することも容易である。
【0010】
本発明は、有利には、以下に示される実施例および代替例に従い実施され、それらは、個々に、または任意の技術的に実現可能な組み合わせで考慮される。
【0011】
有利には、放射素子(放射要素)は誘導加熱スクリーン(induction heated screen)である。したがって、例えばグラファイトスクリーンなどのスクリーンは、急速に高温に上げられ、ブランクおよび成形ダイの急速加熱を可能にする。
【0012】
有利には、成形ダイのインダクタのネットワークと、放射素子(放射要素)の加熱を行う部材とに、同じ単一のジェネレータによって高周波電流が供給され、それによって設置電力および設置コストが削減される。
【0013】
特定の一実施例によれば、装置は、成形ダイのインダクタのネットワークに交互に電力を供給するためのスイッチと、単一の高周波発生器を使用して放射素子の加熱を実行するためのスイッチとを備えている。このスイッチは、単一の発電機によって高周波電流が供給されている移送装置のステーションを容易かつ自動的に変更することを可能にする。
【0014】
1つの特に有利な実施例によれば、本発明の主題を形成する装置は、それぞれパンチと対を成す2つの成形ダイ(金型)を備え、それら各々は、インダクタのネットワークと、それらの成形表面を加熱および冷却するための冷却回路とを備えており、これらのダイ(金型)は、一方のダイ(金型)が射出(注入)ステーションにあるときに、他方のダイ(金型)が搭載/取外ステーションにあるように、移送装置に取り付けられている。
【0015】
有利には、放射素子(放射要素)を加熱する誘導加熱回路、または、成形ダイ(金型)のインダクタのネットワークを備える回路は、コンデンサユニットまたは平滑コイル(smoothing coil)を備える。これらの手段は、例えこれらの回路が異なる電気的特性を有していたとしても、どの回路が給電されていても、各回路をインピーダンス整合し、高周波発生器の起動および最適動作を確実にすることを可能にする。
【0016】
本発明はまた、本発明に係る装置の実装(実施)を備えたオーバーモールドを含む成形複合部品の製造方法に関し、以下の工程からなる:
i.搭載/取外ステーションにおいて、冷えた成形ダイ(金型)の1つに複合ブランク(composite blank)を配置する;
ii.ブランクの熱成形に適した温度T1まで、前記ダイ(金型)およびそれと接触しているブランクを予熱する;
iii.ダイ(金型)を射出(注入)ステーションに移送する、
iv.ブランクの熱成形を行うために、温度T1を維持しながら前記ダイ(金型)上のモールド(金型)を閉じる;
v.ブランクの圧密化(固化)および射出(注入)に適した温度T2にダイ(金型)を冷却する;
vi オーバーモールドされた部分(部品)を射出(注入)する;
vii 成形キャビティを取り外し(離型)温度まで冷却する;
viii モールド(金型)を開く;
ix ダイ(金型)を搭載/取外ステーションに移送する;
x 部品を取り外し、工程i)から繰り返す
工程i)およびx)は、工程iv)〜vi)が第2のダイ(金型)上で行われるのと同時に第1のダイ(金型)上で行われ、工程ii)は、工程vii)〜viii)が第2のダイ(金型)上で行われるのと同時に第1のダイ(金型)上で行われる。したがって、タスクは並行して実行され、生産率が向上する。
【0017】
ダイ(金型)の1つが搭載/取外ステーションに到着すると、その温度はせいぜい取り外し(離型)温度に冷却されるものとする。これにより、手動操作であろうとロボットを用いたものであろうと、ブランクそれ自体を周囲温度に近い温度で操作し、それを前記ダイ(金型)上に置くことが容易となる。
【0018】
有利には、工程ii)は、放射素子(放射要素)を用いてブランクおよび成形ダイ(金型)を加熱することを含む。
【0019】
スイッチを備える本発明による装置を実装する一実施例によれば、前記スイッチは、工程ii)の間における放射素子(放射要素)を加熱する手段、および工程iv)からvi)の間おける第2の成形ダイ(金型)のインダクタのネットワーク、に向けた高周波電流の供給を指示する。