(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982073
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/514 20060101AFI20211206BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
H01R13/514
H01R13/639 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-523447(P2019-523447)
(86)(22)【出願日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2018020060
(87)【国際公開番号】WO2018225527
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2021年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-111318(P2017-111318)
(32)【優先日】2017年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 勇三
(72)【発明者】
【氏名】下斗米 大地
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−106670(JP,A)
【文献】
特開2016−122563(JP,A)
【文献】
特許第3120730(JP,B2)
【文献】
国際公開第2017/204017(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハウジング及び前記第1のハウジングに設けられた複数の第1の端子を含む一つの第1のコネクタに、第2のハウジング及び前記第2のハウジングに設けられた第2の端子を含む複数の第2のコネクタを、互いに隣接して横方向に整列した状態で前後方向に抜き差し可能に接続するコネクタ構造であって、
前記第2のハウジングの前記横方向に直交する縦方向を向く両側面の少なくとも一方に設けられ、弾性変形によって前記縦方向に変位可能な変位部材と、
前記変位部材に設けられたロック用係合部と、
前記第2のハウジングが、前記第1のハウジングに受容された時に、前記ロック用係合部が係合すべく前記第1のハウジングに設けられたロック用被係合部と、
前記変位部材の前記横方向を向く一方の側面に形成されて前記ロック用係合部に連繋して前記縦方向に変位する前後移動規制突部と、
前記変位部材の前記横方向を向く他方の側面に形成されて前記ロック用係合部に連繋して前記縦方向に変位し、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジングとの前記前後方向の位置が揃うべく整合した時に、当該前記横方向に隣り合う前記第2のハウジングの前記前後移動規制突部の前記前後方向の変位を規制するストッパ部とを有し、
前記前後移動規制突部及び前記ストッパ部は、前記ロック用係合部と前記ロック用被係合部との係合が解除されるべく前記変位部材が前記縦方向に変位された時に、前記縦方向に互いに非整合になって前記前後方向の変位を規制することを解除するように構成されているコネクタ構造。
【請求項2】
前記ロック用係合部は、前記第1のハウジングに対する前記第2のハウジングの差込み過程での前記第1のハウジングとの当接によって前記変位部材を弾性変形によって前記縦方向に変位させ、前記第1のハウジングに対する前記第2のハウジングの差込みが完了した時に、復元して前記ロック用被係合部に係合する請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
前記変位部材は樹脂製の前記第2のハウジングに前記縦方向を向く側面に対して間隙をおいて設けられた片部によって構成され、当該片部と前記第2のハウジングとが一つの一体成形品である請求項1又は請求項2に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
前記片部は、前記第2のハウジングの前記前後方向に延在し、前後の端部が前記第2のハウジングに結合された両持ち梁構造である請求項3に記載のコネクタ構造。
【請求項5】
前記片部は、前記縦方向の押圧によって前記ロック用係合部と前記ロック用被係合部との係合を解除すべく前記縦方向に前記片部を変位させるロック解除操作部を有する請求項3又は請求項4に記載のコネクタ構造。
【請求項6】
前記第2のハウジングは、前記横方向を向く両側面に、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジングの前記縦方向の移動を規制すべく、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジングに形成されたもの同士で互いに係合する縦移動規制部を有する請求項1から請求項5の何れか一項に記載のコネクタ構造。
【請求項7】
前記縦移動規制部は、前記第2のハウジングの前記前後方向に線状に延在し、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジングの前記前後方向の移動を摺動可能にガイドするガイドレールを兼ねている請求項6に記載のコネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ構造に関し、更に詳細には、多極コネクタのための機器側コネクタ及びプラグ側コネクタを含むコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的な接続を行うためのコネクタ構造として、プリント配線基板等に取り付けられる一つの機器側ハウジング及び当該機器側ハウジングに設けられた複数の機器側端子を有する一つの機器側コネクタと、プラグ側ハウジング及び当該プラグ側ハウジングに設けられたプラグ側端子を有し、機器側コネクタに接続可能で、互いに連結・分離可能な複数のプラグ側コネクタとを含むコネクタ構造が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
このようなコネクタ構造では、プラグ側コネクタが機器側コネクタに接続されていない状態(機器側コネクタから取り外された状態)では、隣り合うプラグ側コネクタ(プラグ側ハウジング)同士の機器側コネクタに対する抜き差し方向の移動が拘束されていないため、プラグ側コネクタが隣り合うもの同士で機器側コネクタに対する抜き差し方向に互いにずれ動く虞がある。このため、プラグ側コネクタの取扱性が悪く、コネクタ接続の作業性が悪い。
【0004】
このことを回避するために、複数のプラグ側コネクタ同士を、サイドリテーナを用いて抜き差し方向に互いにずれ動かないように互いに連結することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−322487号公報
【特許文献2】特開2014−78370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、サイドリテーナが用いられると、プラグ側コネクタが機器側コネクタに接続された状態において、一つのプラグ側コネクタのみを機器側コネクタから抜き出すことができず、サイドリテーナによって連結された複数のプラグ側コネクタ単位でしかプラグ側コネクタを機器側コネクタから抜き出すことができない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数のプラグ側コネクタが機器側コネクタから取り外された状態において、隣り合うプラグ側コネクタ同士が機器側コネクタに対する抜き差し方向にずれ動くことがなく、複数のプラグ側コネクタが機器側コネクタに接続された状態において、一つのプラグ側コネクタのみを機器側コネクタから抜き出すことができるように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施形態によるコネクタ構造は、第1のハウジング(12)及び前記第1の第1のハウジング(12)に設けられた複数の第1の端子(16)を含む一つの第1のコネクタ(10)に、第2のハウジング(32)及び前記第2のハウジング(32)に設けられた第2の端子(36)を含む複数の第2のコネクタ(30)を、互いに隣接して横方向に整列した状態で前後方向に抜き差し可能に接続するコネクタ構造であって、前記第2のハウジング(32)の前記横方向に直交する縦方向を向く両側面の少なくとも一方に設けられ、弾性変形によって前記縦方向に変位可能な変位部材(48)と、前記変位部材(48)に設けられたロック用係合部(50)と、前記第2のハウジング(32)が、前記第1のハウジング(12)に受容された時に、前記ロック用係合部(50)が係合すべく前記第1のハウジング(12)に設けられたロック用被係合部(18)と、前記変位部材(48)の前記横方向を向く一方の側面に形成されて前記ロック用係合部(50)に連繋して前記縦方向に変位する前後移動規制突部(54)と、前記変位部材(48)の前記横方向を向く他方の側面に形成されて前記ロック用係合部(50)に連繋して前記縦方向に変位し、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジング(32)との前記前後方向の位置が揃うべく整合した時に、当該前記横方向に隣り合う前記第2のハウジング(32)の前記前後移動規制突部(54)の前記前後方向の変位を規制するストッパ部(56、58)とを有し、前記前後移動規制突部(54)及び前記ストッパ部(56、58)は、前記ロック用係合部(50)と前記ロック用被係合部(18)との係合が解除されるべく前記変位部材(48)が前記縦方向に変位された時に、前記前後方向の変位を規制することを解除するように構成されている。
【0009】
この構成によれば、複数の第2のコネクタ(30)が第1のコネクタ(10)から取り外された状態において、横方向に隣り合う第2のハウジング(32)同士が前後方向にずれ動くことがサイドリテーナを必要とすることなく阻止され、複数の第2のコネクタ(30)が第1のコネクタ(10)のコネクタ挿入室(14)から抜き出された状態においては、前後方向の位置合わせされた複数の第2のコネクタ(30)の取り扱いが容易になり、コネクタ接続の作業性が改善される。
【0010】
そして、複数の第2のコネクタ(30)が第1のコネクタ(10)に差し込まれた状態においては、一つの第2のコネクタ(30)のロック用係合部(50)がロック用被係合部(18)との係合から離脱されたアンロック状態になると、当該一つの第2のコネクタ(30)が前記横方向の両側に隣り合う第2のコネクタ(30)に対して前記前後方向に変位することが可能になり、この一つの第2のコネクタ(30)だけを第1のコネクタ(10)から取り外すことができる。
【0011】
上記コネクタ構造において、好ましくは、前記ロック用係合部(50)は、前記第1のハウジング(12)に対する前記第2のハウジング(32)の差込み過程での前記第1のハウジング(12)との当接によって前記変位部材(48)を弾性変形によって前記縦方向に変位させ、前記第1のハウジング(12)に対する前記第2のハウジング(32)の差込みが完了した時に、復元して前記ロック用被係合部(18)に係合する。
【0012】
この構成によれば、第2のハウジング(32)の差込みが完了した時のロック用係合部(50)とロック用被係合部(18)との係合が必然的に確実に行われる。
【0013】
上記コネクタ構造において、好ましくは、前記変位部材(48)は樹脂製の前記第2のハウジング(32)に前記縦方向を向く側面に対して間隙をおいて設けられた片部(48)によって構成され、当該片部(48)と前記第2のハウジング(32)とが一つの一体成形品である。
【0014】
この構成によれば、変位部材(48)をなす片部(48)と第2のハウジング(32)とが一体形成品であることにより、変位部材として別部品を必要とすることも、変位部材の組付けを行う必要もなく、簡素で安価なものになる。
【0015】
上記コネクタ構造において、好ましくは、前記片部(48)は、前記第2のハウジング(32)の前記前後方向に延在し、前後の端部(48A、48B)が前記第2のハウジング(32)に結合された両持ち梁構造である。
【0016】
この構成によれば、片部(48)に遊端がないから、製造過程や組立過程において、自由な状態にある複数の第2のコネクタ(30)の片部(48)が絡み合う不具合な状態に陥ることがない。
【0017】
上記コネクタ構造において、好ましくは、前記片部(48)は、前記縦方向の押圧によって前記ロック用係合部(50)と前記ロック用被係合部(18)との係合を解除すべく前記縦方向に前記片部(48)を変位させるロック解除操作部(52)を有する。
【0018】
この構成によれば、ロック解除操作部(52)の操作によってロック解除が確実且つ容易に行われ得る。
【0019】
上記コネクタ構造において、好ましくは、前記第2のハウジング(32)は、前記横方向を向く両側面に、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジング(32)の前記縦方向の移動を規制すべく、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジング(32)に形成されたもの同士で互いに係合する縦移動規制部(40、42、44、46)を有する。
【0020】
この構成によれば、前記横方向に隣り合う第2のハウジング(32)が差込み過程等で縦方向にずれ動くことがない。
【0021】
上記コネクタ構造において、好ましくは、前記縦移動規制部(40、42、44、46)は、前記第2のハウジング(32)の前記前後方向に線状に延在し、前記横方向に隣り合う前記第2のハウジング(32)の前記前後方向の移動を摺動可能にガイドするガイドレールを兼ねている。
【0022】
この構成によれば、第1のコネクタ(10)に対する第2のコネクタ(30)の抜き差しの作業性が改善される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるコネクタ構造によれば、複数の第2のコネクタが第1のコネクタから取り外された状態において、隣り合う第2のハウジング同士が第1のコネクタに対する抜き差し方向にずれ動くことがなく、複数の第2のコネクタが第1のコネクタに接続された状態においては、一つの第2のコネクタのみを第1のコネクタから抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明によるコネクタ構造の一つの実施形態を示す斜視図
【
図2】本実施形態によるコネクタ構造のプラグ側コネクタの斜視図
【
図3】本実施形態によるコネクタ構造のプラグ側コネクタの平面図
【
図4】本実施形態によるコネクタ構造のロック機構部分の差込み過程の状態を示す断面図
【
図5】本実施形態によるコネクタ構造の前後移動規制部分の差込み過程の状態を示す断面図
【
図6】本実施形態によるコネクタ構造のロック機構部分の差込み完了時の状態を示す断面図
【
図7】本実施形態によるコネクタ構造の前後移動規制部分の差込み完了時の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明によるコネクタ構造の一つの実施形態を、
図1〜
図7を参照して説明する。本実施形態では、横方向(配列方向)は
図1〜
図3で見て左右方向、前後方向(抜き差し方向)は
図1〜
図7で見て上下方向、縦方向は前記横方向及び前記前後方向の双方に直交する方向であり、当該縦方向は
図4〜
図7で見て左右方向とする。
【0026】
コネクタ構造1は、
図1及び
図4〜
図7に示されているように、第1のコネクタをなす一つの機器側コネクタ10と、第2のコネクタをなす複数のプラグ側コネクタ30とを含む。
【0027】
機器側コネクタ10は、表面実装型等の電気コネクタ(ヘッダ)であり、樹脂成形品による機器側ハウジング12を含む。機器側ハウジング12は、4個の側壁12A、12B、12C、12D及び底壁12Eを有して
図1で見て上方開放の直方体形状をしており、空間内に仕切り(隔壁)がない直方体状空間による一つのコネクタ挿入室14を画定している。コネクタ挿入室14には複数のプラグ側コネクタ30が互いに隣接して横方向に一列に整列した状態で前後方向に抜き差し可能に差し込まれる。
【0028】
機器側コネクタ10は、
図4及び
図5に示されているように、複数の雄型端子(機器側端子)16を有する。雄型端子16は、縦方向に2列に、横方向に等間隔をおいて整列され、各々、底壁12Eから前後方向に延在してコネクタ挿入室14に突出した突出部16Aを有する。ここで、
図4に符号(GND)を付記された雄型端子16はアース端子である。アース端子(GND)の突出部16Aの突出長は他の雄型端子16の突出部16Aの突出長より長い。このことにより、雄型端子16と後述の雌型端子36との導通接続は、最初にアース端子(GND)において行われ、アース除電によってコネクタ接続時の機器側の安全性が図られる。
【0029】
複数のプラグ側コネクタ30は、
図1に示されているように、互いに隣接して横方向に整列した状態で、機器側コネクタ10のコネクタ挿入室14に対して前後方向に抜き差し可能に差し込まれる。
【0030】
各プラグ側コネクタ30は、
図1〜
図7に示されているように、樹脂成形品によるプラグ側ハウジング32を含む。プラグ側ハウジング32は、横方向を向いて互いに平行な側面32A及び32Bと、縦方向を向いて互いに平行な側面32C及び32Dとを含む略長方体形状をしている。各プラグ側ハウジング32の側面32A及び32Bは、複数のプラグ側コネクタ30が横方向に整列した状態において、各々、片側或いは両側に横方向に隣り合う他のプラグ側ハウジング32の横側面32B及び32Aに対向する。
【0031】
各プラグ側コネクタ30は、
図1、
図2、
図4及び
図6に示されているように、プラグ側ハウジング32に、縦方向に間隔をおいて形成されて各々前後方向に延在する端子室34を有する。各プラグ側コネクタ30には、
図4及び
図6に示されているように、各端子室34に配置される金属製の雌型端子(プラグ端子)36が取り付けられる。各雌型端子36には絶縁被覆電線(コード)38が導通接続されている。各雌型端子36は、プラグ側コネクタ30が機器側コネクタ10のコネクタ挿入室14に差し込まれることにより、対応する雄型端子16に導通接続される。
【0032】
各プラグ側ハウジング32は
図1〜
図3に示されているように、横方向を向く一方の横側面(
図2で見て右側の面)の前記縦方向に離れた2箇所に、各々前後方向に線状に互いに平行に延在する両側壁による凹溝部40及び片側壁による鉤形部42を有する。各プラグ側ハウジング32は、横方向を向く他方の横側面(
図2で見て左側の面)の縦方向に離れた2箇所に、各々前後方向に線状に延在する突条44及び46を有する。
【0033】
凹溝部40及び鉤形部42と突条44及び46とは、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32に形成されているもの同士で前後方向に互いに摺動可能に係合し、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32の縦方向の位置が揃うように、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32同士の縦方向の移動を規制し、縦移動規制部をなす。
【0034】
凹溝部40及び鉤形部42と突条44及び46とは横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32の前後方向の移動を摺動可能にガイドするガイドレールを兼ねる。これにより、コネクタ挿入室14に対してプラグ側コネクタ30を抜き差しする作業性が改善される。
【0035】
尚、凹溝部40及び鉤形部42と突条44及び46は、プラグ側コネクタ30の誤配列を防止するため、横方向に隣り合う一対のプラグ側ハウジング32毎に縦方向に異なった位置に設けられているか、或いは形状が異なっていればよい。また、図示の実施形態では、凹溝部40及び突条44はプラグ側ハウジング32の前後方向の全域に亘って設けられているのに対して、鉤形部42及び突条46はプラグ側ハウジング32の前後方向の1/2の領域にしか設けられていないが、鉤形部42及び突条46はプラグ側ハウジング32もプラグ側ハウジング32の前後方向の全域に亘って設けられていてもよい。
【0036】
各プラグ側ハウジング32の縦方向を向く一方の側面32Cには変位部材をなす片部48がプラグ側ハウジング32と一体形成されている。つまり、プラグ側ハウジング32と片部48とは一つの一体成形品である。片部48は、側面32Cに対して間隙49をおいて前後方向に延在し、各々プラグ側ハウジング32に結合された前後の端部48A及び48Bを含んで両持ち梁構造をしている。片部48は、
図4及び
図5に示されているように、弓状に撓むように弾性変形することにより、端部48Aと端部48Bとの間に縦方向に変位可能な中間部分48Cを含む。
【0037】
中間部分48Cにはロック用突起(ロック用係合部)50が一体成形されている。ロック用突起50は、プラグ側ハウジング32の側面32Cの反対側に突出し、機器側ハウジング12に対するプラグ側ハウジング32の差し込み方向(前後方向)の前側の面が傾斜面50Aになっており、後側の面が垂直起立面50Bになっている。
【0038】
機器側ハウジング12の側壁12Aの内側面(コネクタ挿入室14を画定する面)にはロック用突起50が係脱可能に係合するロック用凹部(ロック用被係合部)18が形成されている。
【0039】
ロック用突起50は、
図4に示されているように、プラグ側ハウジング32が機器側ハウジング12に受容される過程(プラグ側コネクタ30の差込み過程)で、機器側ハウジング12の側壁12Aに傾斜面50Aをもって当接することにより、片部48を側壁12Aの側に弾性変形させながらコネクタ挿入室14内に進入し、
図6に示されているように、プラグ側ハウジング32が機器側ハウジング12に受容されたとき(プラグ側コネクタ30の差込み完了時)にロック用凹部18に弾発的に係合する。この係合時には、ロック用突起50の垂直起立面50Bが対向するロック用凹部18の垂直面18Aに当接することにより、プラグ側コネクタ30は機器側コネクタ10から抜け出すこと(前後方向の移動)を阻止されたロック状態になる。
【0040】
ロック用突起50とロック用凹部18との係合は、機器側ハウジング12に対するプラグ側ハウジング32の差込みが完了した時に、片部48が復元して弾発的に行われるから、プラグ側ハウジングの差込みが完了した時のロック用突起50とロック用凹部18との係合が人為的な操作を要することなく必然的に確実に行われる。
【0041】
片部48は端部48Bの近傍にロック解除操作部52を有する。より詳細には、片部48の端部48Bの近傍にはプラグ側ハウジング32の側面32Cの反対側に突出したロック解除操作部52が一体成形されている。
図6に示されているロック状態で、ロック解除操作部52が側面32Cに近付く縦方向に押圧されることにより、片部48が側壁12Aの側に弾性変形し、ロック用突起50がロック用凹部18から抜け出す。これにより、ロック用突起50とロック用凹部18との係合が解除されたアンロック状態になる。アンロック状態では、プラグ側コネクタ30の前後方向の移動によってプラグ側ハウジング32を機器側ハウジング12から抜き出すことが可能になる。
【0042】
これによりアンロック、つまりロック解除は、ロック解除操作部52が押されるだけで、確実且つ簡便に行われる。
【0043】
片部48の中間部分48Cが横方向を向く一方の側面48Dには、
図2、
図5及び
図7に示されているように、前後移動規制突部54が一体成形されている。前後移動規制突部54は、側面48Dから横方向に延出し、片部48の上述の弾性変形によってロック用突起50に連繋して縦方向に変位する。
【0044】
片部48の中間部分48Cが横方向を向く他方の側面48Eには、
図2、
図5及び
図7に示されているように、前後一対のストッパ突部56、58が一体成形されている。ストッパ突部56、58は、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32の前後移動規制突部54が縦方向から進入可能な前後方向の間隔をおいて側面48Dから横方向に延出し、片部48の上述の弾性変形によってロック用突起50に連繋して縦方向に変位する。
【0045】
ストッパ突部56、58は、
図7に示されているように、プラグ側ハウジング32が横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32との前後方向の位置が揃うべく整合した時に、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32の前後移動規制突部54の前後方向の変位を規制すべく前後移動規制突部54に前後に整合する位置に形成され、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32同士の前後方向の変位を規制する。つまり、前後移動規制突部54は、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32同士の前後方向の位置が揃うべく整合した時に、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32のストッパ突部56と58との間に係合し、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32同士の前後方向の変位を規制する。
【0046】
この横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32同士の前後移動規制突部54とストッパ突部56及び58との係合は、これらプラグ側ハウジング32、つまりプラグ側コネクタ30が機器側コネクタ10のコネクタ挿入室14から抜き出された時(取り外し状態時)に、サイドリテーナを必要とすることなく、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32同士が前後方向にずれ動くことを阻止し、複数のプラグ側ハウジング32が機器側コネクタ10のコネクタ挿入室14から抜き出された状態において、前後方向の位置合わせされた複数のプラグ側ハウジング32の取り扱いが容易になり、コネクタ接続の作業性が改善される。
【0047】
前後移動規制突部54は、
図5に示されているように、アンロック操作によって片部48が側壁12Aの側に弾性変形した状態になることにより、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32のストッパ突部56、58との係合から離脱する。同様に、ストッパ突部56、58は、
図5に示されているように、アンロック操作によって片部48が側壁12Aの側に弾性変形した状態になることにより、横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32の前後移動規制突部54との係合から離脱する。この両方の離脱によって一つのプラグ側ハウジング32は横方向の両側に横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32に対して前後方向の変位することが可能になる。
【0048】
これにより、複数のプラグ側コネクタ30が横方向に互いに隣接して機器側コネクタ10のコネクタ挿入室14に差し込まれた状態において、一つのプラグ側コネクタ30のロック解除操作部52が押され、ロック用突起50がロック用凹部18との係合から離脱されたアンロック状態になると、当該一つのプラグ側コネクタ30が横方向の両側に隣り合うプラグ側コネクタ30に対して前後方向に変位することが可能になり、この一つのプラグ側コネクタ30だけを機器側コネクタ10から取り外すことができる。
【0049】
変位部材をなす片部48がプラグ側ハウジング32と一体形成されている片部48であることにより、変位部材として別部品を必要とすることも、変位部材の組付けを行う必要もなく、簡素で安価なものになる。また、例えば、片部48は一方の端部48Aのみがプラグ側ハウジング32に結合された片持ち梁構造であってもよいが、本実施形態では、両持ち梁構造であることにより、遊端がないから、製造過程や組立過程において、自由な状態にある複数のプラグ側コネクタ30の片部48が絡み合う不具合な状態に陥ることがない。
【0050】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0051】
例えば、ロック用凹部18とロック用突起50とによるロック機構は、必要に応じてプラグ側ハウジング32の縦方方向の両側に設けられていてもよい。凹溝部40や突条44等はあり継ぎ嵌合する形状をしていてもよく、この場合には凹溝部40と突条44との係合によって横方向に隣り合うプラグ側ハウジング32同士の横方方向の移動も阻止される。一つの機器側コネクタ10に対するプラグ側コネクタの接続数は、
図1に示されている5個に限られることはなく、他の複数であってもよい。本発明によるコネクタ構造は、機器側コネクタ10とプラグ側コネクタ30との組み合わせに限られることはなく、コード付きのジャックとプラグと組み合わせ等であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 :機器側コネクタ(第1のコネクタ)
12 :機器側ハウジング(第1のハウジング)
12A :側壁
12B :側壁
12C :側壁
12D :側壁
12E :底壁
14 :コネクタ挿入室
16 :雄型端子(第1の端子)
16A :突出部
18 :ロック用凹部(ロック用被係合部)
18A :垂直面
30 :プラグ側コネクタ(第2のコネクタ)
32 :プラグ側ハウジング(第2のハウジング)
32A :側面
32B :側面
32C :側面
32D :側面
34 :端子室
36 :雌型端子(第2の端子)
38 :絶縁被覆電線
40 :凹溝部(縦移動規制部)
42 :鉤形部(縦移動規制部)
44 :突条(縦移動規制部)
46 :突条(縦移動規制部)
48 :片部(変位部材)
49 :間隙
48A :端部
48B :端部
48C :中間部分
48D :側面
48E :側面
50 :ロック用突起(ロック用係合部)
50A :傾斜面
50B :垂直起立面
52 :ロック解除操作部
54 :前後移動規制突部
56 :ストッパ突部(ストッパ部)
58 :ストッパ突部(ストッパ部)