特許第6982083号(P6982083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982083
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】走行制御装置、および車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20211206BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20211206BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20211206BHJP
【FI】
   G08G1/16 A
   B60W30/095
   B60W30/09
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-537533(P2019-537533)
(86)(22)【出願日】2017年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2017030575
(87)【国際公開番号】WO2019038918
(87)【国際公開日】20190228
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔平
【審査官】 菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/024318(WO,A1)
【文献】 特表2005−524135(JP,A)
【文献】 特開2011−108016(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0229410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60W 30/00−60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の他車両を回避するように自車両の走行を制御する走行制御装置であって、
前記自車両と前記他車両との相対速度を算出する算出手段と、
前記他車両の動作状態が、道路の側方で停止している停止状態か、車線上から道路の側方に寄せて停止しようとしている停止準備状態かを判定する判定手段と、
前記他車両を回避するように前記自車両を車幅方向にオフセットさせて前記他車両の側方を通過させる回避処理において、前記算出手段で算出された前記相対速度に応じて、前記自車両と前記他車両とを前記車幅方向に離間させる離間距離を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記判定手段により前記動作状態が前記停止状態であると判定された場合より、前記判定手段により前記動作状態が前記停止準備状態であると判定された場合の方が、前記相対速度に対する前記離間距離が小さくなるように、前記判定手段で判定された前記他車両の動作状態に更に応じて前記離間距離を制御する、ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記動作状態が、前記停止状態か、および前記停止準備状態かに加えて、道路の側方から車線上に発進しようとしている発進準備状態かを更に判定し、
前記制御手段は、前記判定手段により前記動作状態が前記発進準備状態であると判定された場合、前記回避処理を中止する、ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定手段により前記動作状態が前記停止状態、前記停止準備状態および前記発進準備状態のいずれでもないと判定した場合、前記他車両が車線上を走行していると判断して、前記他車両に追従するように前記自車両を走行させる、ことを特徴とする請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記他車両の絶対速度、前記他車両の方向指示器の点灯、前記他車両のブレーキランプの点灯、および前記他車両の姿勢のうち少なくとも1つに基づいて、前記他車両の動作状態を判定する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記自車両が走行している走行路の種類を取得する取得手段を更に備え、
前記制御手段は、前記取得手段で取得された前記走行路の種類に応じて前記離間距離を変更する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の走行制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載された走行制御装置を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転では、前方の他車両を回避するように該他車両の側方を走行させることがある。特許文献1には、前方の他車両(前方車両)を回避するように自車両を走行させるための回避軌跡を、車両と他車両との相対速度に応じて、車両の進行方向に拡大させて車両を走行させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−080046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前方の他車両を回避する際、自車両と該他車両との相対速度が同じである複数の状況下であっても、該他車両の動作状態(例えば絶対速度など)が互いに異なると、それに応じて他車両の周辺状況が異なりうる。そのため、自動運転では、自車両とその前方の他車両との相対速度だけでなく、該他車両の動作状態にも応じて適切な回避動作を行うことが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、車両の自動運転において、前方の他車両の状態に適した回避動作を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
前方の他車両を回避するように自車両の走行を制御する走行制御装置であって、
前記自車両と前記他車両との相対速度を算出する算出手段と、
前記他車両の動作状態が、道路の側方で停止している停止状態か、車線上から道路の側方に寄せて停止しようとしている停止準備状態かを判定する判定手段と、
前記他車両を回避するように前記自車両を車幅方向にオフセットさせて前記他車両の側方を通過させる回避処理において、前記算出手段で算出された前記相対速度に応じて、前記自車両と前記他車両とを前記車幅方向に離間させる離間距離を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記判定手段により前記動作状態が前記停止状態であると判定された場合より、前記判定手段により前記動作状態が前記停止準備状態であると判定された場合の方が、前記相対速度に対する前記離間距離が小さくなるように、前記判定手段で判定された前記他車両の動作状態に更に応じて前記離間距離を制御する、ことを特徴とする走行制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の自動運転において、前方の他車両の状態に適した回避動作を行うことができる。
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置のブロック図。
図2】本実施形態に係る回避処理の例を示すフローチャート。
図3】本実施形態に係る回避処理の例を示すフローチャート。
図4】車載カメラで得られた画像(停止状態の他車両)を示す図。
図5】車載カメラで得られた画像(停止準備状態の他車両)を示す図。
図6】相対速度と離間距離との関係を示す図。
図7】停止状態の他車両に対する回避処理を説明するための図。
図8】停止準備状態の他車両に対する回避処理を説明するための図。
図9】発進準備状態の他車両に対する回避処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置のブロック図である。図1に示す車両制御装置は、車両1の自動運転を制御する装置であり、図1において、車両1はその概略が平面図と側面図とで示されている。車両1は、一例として、セダンタイプの四輪の乗用車である。
【0011】
図1の制御装置は、制御ユニット2を含む。制御ユニット2は、車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU20〜29を含む。各ECUは、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスには、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUは、プロセッサ、記憶デバイスおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。
【0012】
以下、各ECU20〜29が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、あるいは統合したりすることが可能である。
【0013】
ECU20は、車両1の自動運転に関わる制御を実行する。自動運転においては、車両1の操舵および加減速の少なくともいずれか一方を自動制御する。後述する制御例では、操舵と加減速との双方を自動制御する。
【0014】
ECU21は、電動パワーステアリング装置3を制御する。電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31に対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。また、電動パワーステアリング装置3は、操舵操作をアシストしたり、あるいは前輪を自動操舵したりするための駆動力を発揮するモータや、操舵角を検知するセンサ等を含む。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU21は、ECU20からの支持に対応して電動パワーステアリング装置3を自動制御し、車両1の進行方向を制御する。
【0015】
ECU22および23は、車両1の周囲状況を検知する検知ユニット41〜43の制御および検知結果の情報処理を行う。検知ユニット41は、車両1の前方を撮影するカメラであり(以下、カメラ41と表記する場合がある)、本実施形態の場合、車両1のルーフ前部に2つ設けられている。カメラ41が撮影した画像の解析により、物標の輪郭抽出や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0016】
検知ユニット42は、ライダ(Light Detection and Ranging(例えばレーザレーダ))であり(以下、ライダ42と表記することがある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測定したりする。本実施形態の場合、ライダ42は5つ設けられており、車両1の前部の各隅部に1つずつ、後部中央に1つ、後部各側方に1つずつ設けられている。検知ユニット43は、ミリ波レーダであり(以下、レーダ43と表記することがある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測定したりする。本実施形態の場合、レーダ43は5つ設けられており、車両1の前部中央に1つ、前部各隅部に1つずつ、後部各隅部に一つずつ設けられている。
【0017】
ECU22は、一方のカメラ41と、各ライダ42の制御および検知結果の情報処理を行う。ECU23は、他方のカメラ41と、各レーダ43の制御および検知結果の情報処理を行う。車両1の周囲状況を検知する装置を二組備えたことで、検知結果の信頼性を向上でき、また、カメラ、ライダ、レーダといった種類の異なる検知ユニットを備えたことで、車両の周辺環境の解析を多面的に行うことができる。また、ECU22およびECU23はそれぞれ、ライダ42およびレーダ43により測定された車両1の周囲の物標との距離に基づいて車両1と当該物標との相対速度を検知(算出)したり、車両1の絶対速度情報に更に基づいて車両1の周囲の物標の絶対速度を検知(算出)したりすることもできる。
【0018】
ECU24は、ジャイロセンサ5、GPSセンサ24b、通信装置24cの制御および検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ5は車両1の回転運動を検知する。ジャイロセンサ5の検知結果や、車輪速等により車両1の進路を判定することができる。GPSセンサ24bは、車両1の現在位置を検知する。通信装置24cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。ECU24は、記憶デバイスに構築された地図情報のデータベース24aにアクセス可能であり、ECU24は現在地から目的地へのルート探索等を行う。また、ECU24は、車車間通信用の通信装置24dを備える。通信装置24dは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。
【0019】
ECU25は、パワープラント6を制御する。パワープラント6は、車両1の駆動輪を回転させる駆動力を出力する機構であり、例えば、エンジンと変速機とを含む。ECU25は、例えば、アクセルペダル7Aに設けた操作検知センサ7aにより検知した運転者の運転操作(アクセル操作あるいは加速操作)に対応してエンジンの出力を制御したり、車速センサ7cが検知した車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替えたりする。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU25は、ECU20からの指示に対応してパワープラント6を自動制御し、車両1の加減速を制御する。
【0020】
ECU26は、方向指示器8(ウィンカ)を含む灯火器(ヘッドライト、テールライト等)を制御する。図1の例の場合、方向指示器8は、車両1の前部、ドアミラーおよび後部に設けられている。
【0021】
ECU27は、車内の状況を検知する検知ユニット9の制御および検知結果の情報処理を行う。検知ユニット9としては、車内を撮影するカメラ9aと、車内の乗員からの情報の入力を受け付ける入力装置9bとが設けられる。カメラ9aは、本実施形態の場合、車両1のルーフ前部に1つ設けられており、車内の乗員の状態を撮影する。入力装置9bは、車内の乗員が操作可能な位置に配置され、車両1に対する指示を行うスイッチ群である。
【0022】
ECU28は、出力装置10の制御を行う。出力装置10は、運転者に対する情報の出力と、運転者からの情報の入力の受け付けを行う。音声出力装置10aは、運転者に対して音声により情報を報知する。表示装置10bは、運転者に対して画像の表示により情報を報知する。表示装置10bは、例えば運転席表面に配置され、インストルメントパネル等を構成する。なお、ここでは、音声と表示を例示したが、振動や光により情報を報知してもよい。また、音声、表示、振動または光のうちの複数を組み合わせて情報を報知してもよい。更に、報知すべき情報のレベル(例えば緊急度)に応じて、組み合わせを異ならせたり、報知態様を異ならせたりしもよい。
【0023】
ECU29は、ブレーキ装置11やパーキングブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ装置11は、例えばディスクブレーキ装置であり、車両1の各車輪に設けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両1を減速あるいは停止させる。ECU29は、例えば、ブレーキペダル7Bに設けた操作検知センサ7bにより検知した運転者の運転操作(ブレーキ操作)に対応してブレーキ装置11の作動を制御する。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU29は、ECU20からの指示に対応してブレーキ装置11を自動制御し、車両1の減速および停止を制御する。ブレーキ装置11やパーキングブレーキは、車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。また、パワープラント6の変速機がパーキングロック機構を備える場合、これを車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。
【0024】
このように構成された車両1の自動運転では、前方の他車両(前方車両)を検知した場合、該他車両を回避するように、車両1を車幅方向にオフセットさせて該他車両の側方を通過させることがある(以下では、回避処理と表記することがある)。このように前方の他車両の回避処理を行う際、車両1と他車両との相対速度が同じである複数の状況下であっても、該他車両の動作状態(例えば絶対速度など)が互いに異なると、それに応じて他車両の周辺状況が異なりうる。そのため、車両1の自動運転では、自車両とその前方の他車両との相対速度だけでなく、該他車両の動作状態にも応じて適切な回避処理を行うことが好ましい。例えば、路肩に停止している他車両に対しては、該他車両の先に歩行者がいたり、他車両のドアが開いたりする可能性があるため、その可能性を考慮した回避動作を行うことが好ましい。一方、路肩に停止しようとして低速走行している他車両に対しては、歩行者がいたりドアが開いたりする可能性が低いため、迅速な回避行動を行うことが好ましい。
【0025】
そこで、本実施形態のECU20は、前方の他車両の回避処理を行う際に車両1と該他車両とを離間させるべき離間距離を、検知ユニット(カメラ41、ライダ42、レーダ43)により検知(算出)された車両1と他車両との相対速度、および他車両の動作状態に応じて変更する。これにより、例えば、路肩に停止している他車両に対してはより安全な回避動作を行い、路肩に停止しようとして低速走行している他車両に対してはより迅速な回避処理を行うことができる。即ち、前方の他車両の動作状態に応じて、適切な回避動作を行うことが可能となる。
【0026】
以下に、本実施形態のECU20が実行する回避処理の制御について、図2〜3を参照しながら説明する。図2〜3は、本実施形態に係る回避処理の例を示すフローチャートである。ここで、以下の説明では、回避処理として、前方の他車両OV(四輪の乗用車)を追い越す例を示すが、隣接車線を走行中の他車両を追い抜く場合にも本実施形態を適用することができる。
【0027】
まず、図2に示すフローチャートについて説明する。 S10では、ECU20は、検知ユニット(カメラ41、ライダ42、レーダ43)による検知結果に基づいて、前方に他車両OVを検知したか否かを判定する。例えば、ECU20は、カメラ41で得られた画像から、公知の画像解析手法を用いて前方の他車両OVを検知したり、ライダ42およびレーダ43によって前方の他車両OVを検知したりする。前方に他車両OVを検知したと判定した場合にはS11に進み、前方に他車両OVを検知していないと判定した場合にはS10を繰り返す。
【0028】
S11では、ECU20は、S10で検知した前方の他車両OVの動作状態が停止状態であるか否かを判定する。例えば、ECU20は、カメラ41で得られた画像や、ライダ42およびレーダ43の解析結果に基づいて、自車両1と前方の他車両OVとの相対速度(速度差)を求める。そして、求めた相対速度と自車両1の絶対速度(速度メータの値)とに基づいて他車両OVの絶対速度を動作状態として検出(検知)し、その検出結果から他車両OVの動作状態が停止状態か否かを判定することができる。ここで、本実施形態の場合、停止状態とは、道路の側方(例えば路肩)に車両を寄せて停止している状態のことである。停止状態としては、完全に停止している状態(絶対速度が0km/h)に加えて、クリープ走行状態など極低速で走行している状態(例えば、絶対速度が5km/h以下)を含んでもよい。
【0029】
また、ECU20は、カメラ41で得られた画像から、公知の画像解析手法を用いて、前方の他車両OVの方向指示器の点滅、ブレーキランプの点灯、および他車両OVの姿勢や位置のうち少なくとも1つを解析し、その解析結果に基づいて他車両OVの動作状態を検知してもよい。具体的には、ECU20は、図4に示すように、カメラ41で得られた他車両OVの画像41aにおいて、他車両OVにおける左右の方向指示器DIが点滅しており(ハザードランプ点滅状態)、他車両OVの一部が路肩上に位置していると検知した場合に、他車両OVの動作状態が停止状態であると判定してもよい。さらに、ECU20は、カメラ41で得られた他車両OVの画像41aから、他車両OVのサイドミラーSMの開閉状態を検知し、他車両OVのサイドミラーSMが閉じられている状態であると検知した場合に、他車両OVの動作状態が停止状態であると判定してもよい。
【0030】
S11において、前方の他車両OVが停止状態であると判定した場合にはS12に進み、前方の他車両OVが停止状態でないと判定した場合には図3のフローチャートに進む。図3のフローチャートについては後述する。
【0031】
S12では、ECU20は、S10で検知した前方の他車両OVの動作状態が発進準備状態であるか否かを判定する。発進準備状態とは、図9に示すように、道路の側方(例えば路肩)に停止しているが、車線上に戻ろうとしている状態のことである。例えば、ECU20は、カメラ41で得られた画像から、公知の画像解析手法を用いて、他車両OVにおける左右の方向指示器のうち車線側(左側通行であれば右側)の方向指示器のみが点滅しており、他車両OVの前方が車線の方向に向いていると検知した場合に、他車両OVの動作状態が発進準備状態であると判定することができる。他車両OVが発進準備状態ではない(即ち、他車両OVが停止状態である)と判定した場合にはS13に進む。
【0032】
S13では、ECU20は、停止状態である前方の他車両OVを追い越す際(回避処理の際)に自車両1と他車両OVとを離間させるべき離間距離を、S11で求めた相対速度に基づいて決定する。例えば、ECU20は、図6に示すように、停止状態である他車両を追い越す際の相対速度と離間距離との関係を示す第1情報Aに基づいて、S11で求めた相対速度Vから離間距離Lを求める。図6に示す第1情報Aは、停止状態である前方の他車両の先から歩行者が飛び出してきたり、該他車両のドアが開いたりした場合であっても、それに対応可能となる相対速度と離間距離との関係を示す情報として生成される。本実施形態の場合、第1情報Aは、式やテーブルなどの形式で事前に生成されてECU20に記憶されうる。
【0033】
S14では、ECU20は、図7に示すように、S13で決定された離間距離Lに基づいて、停止状態である他車両OVを追い越すときの追越経路Rを、他車両OVから離間距離Lだけ離間するように生成する。そして、S15では、S14で決定した追越経路Rに従って、他車両OVの側方を通過して該他車両OVを追い越す。
【0034】
一方、S12において、他車両OVが発進準備状態であると判定した場合にはS16に進む。S16では、ECU20は、図9に示すように、車両1を減速または停止させて前方の他車両OVの追い越しを中止し、前方の他車両OVが車線に戻るまで待つ。そして、S16では、ECU20は、車線に戻った他車両OVに追従するように車両1を走行させる(他車両OVに追走する)。
【0035】
次に、図3に示すフローチャートについて説明する。
【0036】
S20では、ECU20は、S10で検知した前方の他車両OVの動作状態が停止準備状態であるか否かを判定する。停止準備状態とは、図5および図8に示すように、走行しているが、車線上から道路の側方(例えば路肩)に車両を寄せて停止しようとしている状態のことである。例えば、ECU20は、カメラ41で得られた画像41bから、公知の画像解析手法を用いて、他車両OVにおける左右の方向指示器のうち路肩側(左側通行であれば左側)の方向指示器のみが点滅しており、他車両OVの前方が路肩の方向に向いていると検知した場合に、他車両OVの動作状態が停止準備状態であると判定することができる。他車両OVが停止準備状態であると判定した場合にはS21に進む。ここで、本実施形態では、S20において、前方の他車両OVが停止準備状態であるか否かを判定したが、該他車両OVが停止しようとしているかに関わらず、前方の他車両OVが道路の側方に車両を寄せようとしている動作状態か否かだけを判定してもよい。つまり、この場合では、前方の他車両OVが道路の側方に車両を寄せた後に停止するか否かを、判断要素に含まなくてもよい。
【0037】
S21では、ECU20は、停止準備状態である前方の他車両OVを追い越す際(回避処理の際)に自車両1と他車両OVとを離間させるべき離間距離を、S11で求めた相対速度に基づいて決定する。例えば、ECU20は、図6に示すように、停止準備状態である他車両を追い越す際の相対速度と離間距離との関係を示す第2情報Bに基づいて、S11で求めた相対速度から離間距離Lを求める。停止準備状態の他車両OVは、低速ながらも走行している状態であるため、他車両の先から歩行者が飛び出してきたり、該他車両のドアが開いたりする可能性が極めて低い。そのため、他車両OVが停止準備状態である場合の離間距離Lは、該他車両を迅速に追い越すことができるように、停止状態の他車両を追い越す際の離間距離Lよりも小さい値に決定(設定)される。図6に示す第2情報Bは、車両1のオフセット量が安全を確保可能な範囲内において可能な限り小さくなる相対速度と離間距離との関係を示す情報として生成される。本実施形態の場合、第2情報Bは、式やテーブルなどの形式で事前に生成されてECU20に記憶されうる。
【0038】
S22では、ECU20は、図8に示すように、S21で決定された離間距離Lに基づいて、停止準備状態である他車両OVを追い越すときの追越経路Rを、他車両OVから離間距離Lだけ離間するように生成する。そして、S23では、S22で決定した追越経路Rに従って、他車両OVの側方を通過して該他車両OVを追い越す。
【0039】
一方、S20において、他車両OVが停止準備状態ではないと判定した場合にはS24に進む。S24では、ECU20は、S10で検知された前方の他車両OVの動作状態が停止状態、停止準備状態および発進準備状態のいずれでもなく、車線上を通常走行していると判断して、前方の他車両に追従するように車両を走行させる(他車両OVに追走する)。
【0040】
このように、本実施形態では、前方の他車両OVを追い越す際、検知ユニット41〜43での検知結果から該他車両OVの動作状態を検知し、その検知結果に応じて、自車両1と他車両OVとの離間距離を変更する。これにより、前方の他車両の動作状態に応じて、適切な回避動作を行うことが可能となる。
【0041】
ここで、本実施形態では、前方の他車両OVが停止状態である場合と、停止準備状態である場合とのぞれぞれについて、相対速度と離間距離との関係を示す情報(第1情報A、第2情報B)を有する例を説明したが、それに限られるものではない。例えば、ECU20は、第1情報Aのみを有しておき、他車両OVが停止準備状態である場合には、第1情報Aに基づいて求められた離間距離Lを補正値Cで補正することによって離間距離Lを求めてもよい(図6参照)。補正値Cは、事前に設定されていてもよいし、道路状況に応じて適宜設定されてもよい。第2情報Bのみを有しておく場合も同様である。
【0042】
また、ECU20は、相対速度に応じて基準離間距離を求め、停止状態および停止準備状態のそれぞれについて節制された補正値で基準離間距離を補正することによって離間距離LおよびLをそれぞれ求めてもよい。なお、本実施形態の場合、S13またはS21で決定された離間距離は、車両1の車幅方向(進行方向と垂直な方向)だけでなく、車両1の進行方向についても適用されてもよい。
【0043】
また、ECU20は、車両1が走行しうる走行路の種類(例えば、高速道、一般道、駐車場、車線幅)ごとに第1情報Aおよび第2情報Bを有しておき、実際に車両1が走行している走行路の種類に応じて選択された第1情報Aまたは第2情報Bに基づいて離間距離を求めてもよい。具体的には、ECU20は、GPSセンサ24bで検知された車両1の現在位置と、通信装置24cを介して得られてデータベース24aに記憶された地図情報とから、車両1が現在走行している走行路の種類(例えば、高速道、一般道、駐車場、車線幅)を判定する。そして、ECU20は、記憶された複数の中から、判定した走行路の種類に応じて第1情報Aまたは第2情報Bを選択し、選択した情報を用いて、図2および図3に示すフローチャートに示す回避処理を行う。これにより、ECU20は、車両1が現在走行している走行路の種類に応じて離間距離を変更することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、検知ユニット(カメラ41、ライダ42、レーダ43)によって前方の他車両OVの動作状態を検知したが、それに限られず、例えば、ECU20は、該他車両OVの動作状態を、通信装置24dを介した他車両OVとの車車間通信によって検知してもよい。
【0045】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の走行制御装置は、
前方の他車両を回避するように自車両(例えば1)の走行を制御する走行制御装置であって、
前記自車両と前記他車両との相対速度を算出する算出手段(例えば22、23、41〜43)と、
前記他車両の動作状態を検知する状態検知手段(例えば41)と、
前記他車両を回避して前記他車両の側方を通過させる回避処理を制御する制御手段(例えば20)と、
を備え、
前記制御手段は、前記回避処理の際に前記自車両と前記他車両とを離間させるべき離間距離を、前記速度検知手段で検知された前記相対速度と、前記状態検知手段で検知された前記他車両の動作状態とに応じて変更する。
【0046】
この実施形態によれば、前方の他車両の動作状態に応じて、適切な回避動作を行うことが可能となる。
【0047】
2.上記実施形態では、
前記状態検知手段は、前記他車両の絶対速度を前記他車両の動作状態として検知し、
前記制御手段は、前記状態検知手段で検知された前記他車両の絶対速度に応じて前記離間距離を変更する。
【0048】
この実施形態によれば、前方の他車両が停止状態であるか否かを判断して、適切な回避動作を行うことが可能となる。
【0049】
3.上記実施形態では、
前記制御手段は、前記状態検知手段により、前記他車両が道路の側方に寄せようとしている動作状態であると検知された場合、前記他車両が道路の側方で停止している動作状態であると検知された場合に比べて前記離間距離を小さくする。
【0050】
この実施形態によれば、道路の側方に停止している動作状態の他車両に対してはより安全な回避動作を行い、道路の側方に寄せようとしている動作状態の他車両に対してはより迅速な回避行動を行うことが可能となる。
【0051】
4.上記実施形態では、
前記制御手段は、前記状態検知手段により、前記他車両が道路の側方から車線上に発進しようとしている動作状態であると検知された場合、前記回避処理を中止する。
【0052】
この実施形態によれば、車線上に発進しようとしている動作状態の他車両を先行車として認識し、より安全な自動運転を行うことができる。
【0053】
5.上記実施形態では、
前記状態検知手段は、前記他車両の方向指示器の点灯、前記他車両のブレーキランプの点灯、および前記他車両の姿勢のうち少なくとも1つに基づいて前記他車両の動作状態を検知する。
【0054】
この実施形態によれば、前方の他車両の動作状態を的確に把握することが可能となる。
【0055】
6.上記実施形態では、
前記自車両が走行している走行路の種類を取得する取得手段(例えば、24、24a〜24c)を更に備え、
前記制御手段は、前記取得手段で取得された前記走行路の種類に応じて前記離間距離を変更する。
【0056】
この実施形態によれば、現在走行している走行路に応じて、前方の他車両に対する適切な回避動作を行うことが可能となる。
【0057】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0058】
1:車両、2:制御ユニット、20:ECU、41:カメラ、42:ライダ、43:レーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9