(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号処理システムは、求められた前記少なくとも一つのGMRセンサの前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の有無を判定する検出結果判定ユニットを更に備える、請求項4に記載の信号処理システム。
前記信号処理システムは更に、求められた前記少なくとも一つのGMRセンサの前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の濃度を決定する検出結果判定ユニットを備える、請求項4に記載の信号処理システム。
前記搬送波信号印加ユニットが前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路と比べて低いインピーダンス出力となるように、前記搬送波信号印加ユニットと前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路との間にバッファが接続される、請求項1に記載の信号処理システム。
前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める工程は、前記少なくとも一つのGMRセンサの磁気抵抗変化を求める工程を更に含む、請求項19に記載の信号処理方法。
前記少なくとも一つのGMRセンサの求められた前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の有無を判定する工程を更に備える、請求項23に記載の信号処理方法。
前記少なくとも一つのGMRセンサの求められた前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の濃度を決定する工程を更に備える、請求項23に記載の信号処理方法。
前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電流源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電流を印加することを含み、
前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、前記搬送波電流源とグランドとの間に基準抵抗器を直列に接続する工程を含み、
前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に一つのGMRセンサを直列に接続する工程、または、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に互いに並列接続された複数のGMRセンサを直列に接続する工程を含み、
前記GMRセンサは前記対象の被検物質用に機能化されており、ナノ磁性粒子が前記機能化されたGMRセンサのセンサ表面に結合されている、請求項19に記載の信号処理方法。
前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、
前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路を構成する工程を含み、
前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、
前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、ナノ磁性粒子が前記機能化されたGMRセンサのセンサ表面に結合されており、
前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、
前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、ナノ磁性粒子が前記機能化されたGMRセンサのセンサ表面に結合されており、
前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、
前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサはグランドに接続され、前記第2分圧器の前記基準素子は前記搬送波電圧源に接続され、
前記基準素子は、検出すべき前記被検物質に対して機能化されていないGMRセンサ、または、基準抵抗器のうちの1または複数である、請求項19に記載の信号処理方法。
前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、
前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、二つの基準抵抗器で構成される基準抵抗分圧器を備えるアンダーソンループ回路を構成する工程を含み、
前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、一つのGMRセンサ分圧器、または、互いに並列接続された複数のGMRセンサ分圧器を備えるアンダーソンループ回路を構成する工程を含み、
前記GMRセンサ分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、ナノ磁性粒子が前記機能化されたGMRセンサのセンサ表面に結合されており、
前記基準素子は、検出すべき前記被検物質に対して機能化されていないGMRセンサ、または、基準抵抗器のうちの1または複数である、請求項19に記載の信号処理方法。
前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路を構成することは、少なくとも一つのマルチプレクサを構成することを含む、請求項19に記載の信号処理方法。
前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路を構成することは、自由に構成可能な複数のスイッチからなるバンクを構成することを含む、請求項19に記載の信号処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、磁気抵抗センサ技術を使用した被検物質の検出において得られる測定信号を処理するためのシステムおよび方法に関する。説明のために、幾つかの実施形態に係る、装置、システムおよび特徴は、GMRセンサを利用した場合について説明される。
【0044】
図1〜4および以下の説明から明らかなように、本開示における信号処理技術は、金属、バイオマーカ等の被検物質がサンプル中に存在することを検出するのに使用されるサンプル処理システム(または本開示全体において、「システム」とも称する)に関する。一実施形態において、
図3のシステム300として示されるこのシステムは、(1)検査サンプル中のバイオマーカを検出するためのサンプル調製マイクロ流体チャネルおよび少なくとも1つの検知デバイス(またはセンサ)を有するサンプル処理システムまたは「カートリッジアセンブリ」、(2)データ処理・表示装置、または、カートリッジアセンブリの検知デバイスの検出データを処理するプロセッサもしくはコントローラを含む「カートリッジ読み取り機」および検出イベント表示用ディスプレイ、を備える。これら2つの構成要素によりシステムが構成されている。一実施形態では、これらの構成要素は変更可能な特徴を含んでもよく、例えば、1つ以上の試薬カートリッジ、廃棄物用カートリッジおよび空気圧流量コントローラのような流量制御系統を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0045】
一般に、被検物質、バイオマーカ等の検出をアセンブリによって行い、カートリッジ読み取り機を介して出力するために、カートリッジアセンブリでサンプルを準備するプロセスは次のように行われる。患者から採取した未加工のサンプルをカードに装填し、必要に応じてフィルタ膜でろ過した後、カード外部の空気力学によって生成された負圧によりサンプルをろ過して、分離した検査サンプル(血漿など)を得る。この分離された検査サンプルは、チャネル構造によってカード上で定量化される。サンプルはセンサ/検知デバイス上に流される前に、混合材料源(例えば、ブリスターパック、保管室、カートリッジ、ウェルなど)から供給された混合材料(例えば、試薬(乾燥試薬または含水試薬)、緩衝液および/または洗浄緩衝液、ビーズおよび/またはビーズ溶液等)との相互作用によりカード上で調製される。サンプル調製チャネルは、複数の患者サンプルを使用可能とすべく任意の数のチャネルをカード内に垂直方向に積み重ねるように設計してもよい。同様な構成をマイクロ流体装置の検出にも適用でき、複数のマイクロ流体装置を垂直方向に積み重ねてもよい。カートリッジアセンブリの一部であるサンプル調製カードは、ろ過、加熱、冷却、混合、希釈、試薬の添加、クロマトグラフィー分離およびこれらの組み合わせから選択される機能を提供する1つまたは複数の構造と、サンプルをサンプル調製カード中で移動させる手段とを備える。これらの機能に関する詳細は、以下で説明する。
【0046】
図1は、一実施形態に係るシステム300(
図3参照)で使用されるカートリッジ読み取り機100の一例を示している。カートリッジ読み取り機100は、例えば、ハンドヘルドモバイル機器として使用できる程度に小型および/またはコンパクトになるように構成され得る。カートリッジ読み取り機100は、ディスプレイ120を有する本体またはハウジング110と、カートリッジアセンブリを受容するためのカートリッジ受け部130とを備える。ハウジング110は、読み取り機100がオペレータ操作者の手に保持された時により快適になるように、人間工学に基づいた設計を有してもよい。しかしながら、ハウジング110の形状および設計は特に限定されることを意図していない。
【0047】
カートリッジ読み取り機100は、例えば、カートリッジアセンブリ200を当該読み取り機および/またはサンプルを入力および/または接続するようにユーザに促すのに使用されるインターフェース140およびディスプレイ120を備えてもよい一実施形態によれば、システム300は、開示されるカートリッジアセンブリ200と組み合わせて、センサ(磁気抵抗)技術を利用して、検査サンプル中の複数の検出バイオマーカ、例えば、5つの心臓バイオマーカ等、に関する処理、検出、分析および結果のレポートの生成を行い、1つのプロセスの一部として更にバイオマーカの結果を表示してもよい。
【0048】
ディスプレイ120は、例えば、操作者またはユーザに情報を表示する。ディスプレイ120は、ハウジング110上に一体化して設けられる(例えば、ハプティックまたは触覚フィードバック付き)ディスプレイ画面またはタッチ画面、例えば、LCD画面もしくはLED画面または他のフラットパネルディスプレイの形態で提供されてもよい。そして(必要に応じて)操作者がコマンドや設定を読み取り機100に入力するのに使用可能なエンドユーザーインターフェース(UI)140として機能するように設計された入力面を提供する。ディスプレイ120の大きさは様々であってもよい。より具体的には、一実施形態では、ディスプレイ120は、エンドユーザーインターフェースの一部としてシステム300のコマンドおよび/または設定を入力するためのキー、ボタン、メニューおよび/またはキーボード機能を備えたコントロールパネルを表示するように構成されてもよい。一実施形態では、制御パネルは、機能キー、開始ボタンおよび停止ボタン、戻るボタンまたは入力ボタン、および、設定ボタンを含む。これに加えておよび/またはこれに代えて、
図1には示されていないが、カートリッジ読み取り機100は、一実施形態において、これらに限定されないが、ボタンおよびキーボードを含む任意の数の物理入力デバイスを含み得る。別の実施形態では、カートリッジ読み取り機100は、別のデバイスを介して入力を受信してもよく、例えば、直接接続もしくは有線接続(例えば、プラグアンドコードを使用してコンピュータ(PCまたはCPU)またはプロセッサに接続)または無線接続を介して受信してもよい。更に別の実施形態では、ディスプレイ120とは、一体化された画面を意味する、外部表示システム、または、その両方を意味するものであってもよい。表示制御ユニット120を介して、(例えば、
図3を参照して説明するカートリッジリーダ310からの)検査結果を、一体化されている表示部または外部ディスプレイに表示することができる。更に別の実施形態では、ユーザーインターフェース140は、ディスプレイ120とは別個に設けられてもよい。例えば、ディスプレイ120にタッチスクリーンUIが使用されない場合、他の入力装置(例えば、リモコン、キーボード、マウス、ボタン、ジョイスティック等)がユーザーインターフェース140として利用されて、カートリッジ読み取り機100および/またはシステム300に関連付けられてもよい。したがって、カートリッジ読み取り機100への入力に使用される装置および/または方法は、特に限定されない。一実施形態では、カートリッジ読み取り機100および/またはシステム300の全ての機能は、ディスプレイ120および/または入力デバイスを介して管理されてもよく、機能としては以下を含むがこれらに限定されない:処理方法の開始(例えば、開始ボタンを介して)、分析および/もしくはカートリッジアセンブリ200の設定の選択および/もしくは変更、空気圧に関する選択および/もしくは設定、入力を促すプロンプトの確認、検査サンプルの処理方法のステップの表示、ならびに/または、(例えば、ディスプレイ120および/もしくはユーザーインターフェース140を介して)(GMR)センサおよび制御ユニット/カートリッジリーダにより計算された検査結果および値の表示。ディスプレイ120は、サンプル中の被検物質の検出に関する情報を視覚的に表示してもよい。ディスプレイ120は、制御ユニット/カートリッジリーダにより生成された検査結果を表示するように構成されてもよい。一実施形態では、カートリッジリーダ/コントローラによって決定/処理された検査結果に関するリアルタイムフィードバックが(検出対象の被検物質またはバイオマーカの結果として決定される測定値を検知デバイスから受信することにより)、ディスプレイ120に表示される。
【0049】
必要に応じて、音声出力を提供するべく、カートリッジ読み取り機100の一部としてスピーカ(図示せず)を設けてもよい。これらに限定されないが、音声やアラームを含む任意の複数の音を出力してもよい。カートリッジ読み取り機100は、これに加えてまたは代えて、任意の数のコネクタ、例えば、LANコネクタおよびUSBコネクタならびに/またはそれに関連付られた他の入力/出力デバイスを備えてもよい。取外し可能なストレージもしくはドライブまたは別のシステムを含む入力デバイスおよび/または出力デバイスをカートリッジ読み取り機100に接続するために、これらLANコネクタおよび/またはUSBコネクタを使用してもよい。
【0050】
一実施形態では、カートリッジ受け部130は、カートリッジアセンブリ(例えば、
図2のカートリッジアセンブリ200)が挿入され得るハウジング110内の(
図1に示されるような)開口部であってもよい。別の実施形態では、カートリッジ受け部130は、その中にカートリッジアセンブリを受容するように構成されたトレイを含んでもよい。そのようなトレイは、ハウジング110に対して、例えば、ハウジングに設けられた開口部から出し入れするように構成され、それによってカートリッジアセンブリ200を受容し、カートリッジアセンブリをハウジング110へと収容するまたは取り出すようにしてもよい。一実施形態では、トレイは、ハウジング110に対して解放可能に係合するように構成されたバネ式トレイであってもよい。カートリッジ読み取り機100に関連する更なる詳細は、
図3を参照して後述する。
【0051】
前述のように、カートリッジアセンブリ200は、カートリッジ読み取り機100に挿入されるように設計され、そこでサンプル(例えば、血液、尿)が調製、処理、分析されるようになっている。
図2A〜
図2Cは、本明細書の実施形態に係るカートリッジアセンブリ200の例示的な実施形態を示す。開示されるカートリッジアセンブリ200に関連するいくつかの一般的な特徴は、これらの図を参照して説明される。しかし、後でより詳細に説明するように、複数の異なるタイプのカートリッジカード、すなわちカートリッジアセンブリを、カートリッジ読み取り機100で使用して、システム300の一部として提供することも可能である。いくつかの実施形態では、サンプリング処理システムまたはカートリッジアセンブリ200は、別個の複数の検査を実施するための使い捨てアセンブリの形態を取り得る。すなわち、本明細書の説明により更に理解されるように、検査されるサンプルおよび/または被検物質の種類に応じて、異なるカートリッジカード構成および/またはカートリッジアセンブリを使用してもよい。
図2Aは、本明細書の実施形態に係るカートリッジアセンブリ200の上面斜視図である。カートリッジアセンブリ200は、サンプル処理カード210、検知基板および通信基板202を含む(
図2Bも参照)。一般に、サンプル処理カード210は、(例えば、以下で説明する注入ポート等のサンプルポートを介して)サンプルを受け取り、サンプル処理カード210がカートリッジ読み取り機100に挿入されるとサンプルが処理され、サンプルが流れて調製されたサンプルが作成される。カード210はまた、検査サンプルを調製するのに使用されたサンプルおよび/または液体から出た廃棄物を、内部廃棄物チャンバ(
図2Aには示されていないが、以下で更に説明される)に保管してもよい。メモリチップ275には、例えば、カートリッジの用途、センサの較正および必要なサンプル処理に関する情報を読み書きすることができ、それらを保存するのに使用される。一実施形態では、メモリチップ275は、カートリッジアセンブリ200のカード210に選択的に圧力を加えるための工程および設定を含む空気圧系統プロトコルを記憶する。この場合、磁気抵抗センサまたは磁気センサ(GMRセンサチップ280など)に送るサンプルの調製方法を実装することになる。メモリチップは分析毎の自動化レシピを含むことから、各カートリッジアセンブリ200が読み取り機100に挿入される都度、誤ったカートリッジが挿入されるのを防止するのに当該メモリチップを使用してもよい。メモリチップ275は、各カード210および/またはカートリッジアセンブリ200の製造に対するトレーサビリティ情報も含む。検知基板および通信基板202は、カートリッジ読み取り機100との通信を確立および維持し、調製されたサンプルの特徴の受け取り、処理および検出を行うように構成されてもよい。基板202は、調製されたサンプルにおいて被検物質が検出されるように、カートリッジ読み取り機100内のコントローラとの通信を確立する。サンプル処理カード210ならびに検知基板および通信基板202(例えば、
図2Bを参照)を、互いに取り付けるまたは一緒に組み合せることにより、カートリッジアセンブリ200を形成する。一実施形態では、カード210と基板202とを互いに接着するために、接着剤(例えば、
図2Dを参照)を必要に応じて使用してもよい。一実施形態では、基板202は、サンプル処理カード210に貼り付けられた積層体であってもよい。一実施形態では、基板202は、サンプル処理カード210に積層される可撓性回路として設計されてもよい。別の実施形態では、サンプル処理カード210はセラミック材料から製造され、回路、センサ(センサチップ280)および流体チャネルがそこに形成されてもよい。これに代えて、カード210および基板202は、機械的に位置合わせされて互いに接続されてもよい。一実施形態では、
図2Aに示されるように、基板202の一部が、カード210の縁部または端部から延在してもよい。
図2Bに示されるような別の実施形態では、基板202は、カード210と同様な外縁または小さい外縁を有するように配置されてもよいおよび/またはそのようなサイズに形成されてもよい。
【0052】
図2Cは、一実施形態に係るカートリッジアセンブリ200の特徴を概略的に示している。図示されるように、いくつかの特徴はサンプル処理カード210に提供され、他の特徴は基板202に関連付けられてもよい。一般に、(カードの本体内)検査サンプル(例えば、血液、尿)を受け取るために、カートリッジアセンブリ200は、カード210の上部に設けられてもよいサンプル注入ポート215を有する。必要に応じてカード210の一部として、フィルタ220(本明細書ではろ過膜とも称される)、ベントポート225、バルブアレイ230(またはバルブアレイ領域230)、および、空気圧制御ポート235を設けてもよい。カード210のこれらの要素を流体接続するために、連通チャネル233がカード210内に提供される。空気圧制御ポート235は、カートリッジアセンブリ200の空気圧インターフェースの一部であり、カードの連通チャネル233に加圧流体(空気)を選択的に供給してチャネルおよび/またはバルブアレイ230内の流体(空気、液体、検査サンプル等)の流れを誘導する。必要に応じて、カード210は、バルブアレイ230内の複数のバルブを制御するべく、指定された連通チャネル233に接続され、別個に形成された複数のバルブ制御ポート535を備えてもよい。カード210はまた、連通チャネル233を介して流体接続される1つ以上の計量チャンバ240、ガス透過性膜245および混合チャネル250を備えてもよい。計量チャンバは、連通チャネル233を介してその中に(直接またはろ過された)少なくとも検査サンプルを受け取るように設計されている。一般に、サンプルは、ポート215を介してカートリッジアセンブリ200に注入され、フィルタ(例えば、フィルタ220)によるろ過、計量チャンバ240での計量、混合チャネル250での混合、(必要に応じて)加熱および/または冷却が行われ、連通チャネル233、空気圧制御ポート235およびバルブアレイ230を介して流量の誘導および変更が行われる。例えば、流体の流れは、空気圧系統(例えば、
図3に示すカートリッジ読み取り機100の空気圧系統330)と接続された、内部マイクロ流体チャネル(本開示においては、連通チャネル233とも称される)およびバルブ、ならびに、例えば空気圧制御ポート235または同様の接続部を有するカード210上の空気圧インターフェースを使用して制御されてもよい。一実施形態では、必要に応じて行われるカード210内の検査サンプルおよび/または混合材料/流体の加熱は、サーミスタを備えたPCB/基板202の上面に設けられたワイヤトレースの形態であり得るヒータ259によって行われてもよい。必要に応じて行われるカード210内の検査サンプルおよび/または混合材料/混合流体の冷却は、一実施形態では、カートリッジアセンブリ200(例えば、基板202上)に一体化されたTECモジュールを介して、または別の実施形態では、カートリッジ読み取り機100の内部に一体化されたモジュールを介して行われてもよい。例えば、読み取り機100に冷却モジュールが設けられている場合には、冷却が必要な時に、カートリッジアセンブリ200に冷却モジュールを押し付けるように構成してもよい。処理はまた、カード210上の任意の試薬領域260(および/またはブリスターパック)および/またはカートリッジ読み取り機100のハウジング110内の試薬カートリッジを使用して、試薬を導入する工程を必要に応じて含んでもよい。分析されるサンプルおよびカートリッジアセンブリ200のプロセスにおいて必要となる場合に、試薬を放出または混合するようにできる。更に、処理中に連通チャネル233を介して試薬、溶離剤、洗浄緩衝剤、磁性ナノ粒子、ビーズ溶液またはその他の緩衝液等の材料をサンプルに導入するために、カード210に必要に応じてブリスターパック265を設けてもよい。サンプルおよび試薬からの廃棄物を貯蔵するために、1つまたは複数の内部廃棄物チャンバ(本明細書では廃棄物貯蔵用の廃棄物タンクとも称される)270も、カード210に必要に応じて設けてもよい。以下に説明するように、出力ポート255(センサ供給ポートまたはセンサへの入力ポートとも称される)が設けられ、検査サンプル中の被検物質を検出するべく、調製されたサンプルをカード210からGMRセンサチップ280へと出力する。検査サンプルおよび1つ以上の混合材料をセンサに送達するべく、出力ポート255が計量チャンバに流体接続されてもよい。したがって、センサは、少なくとも1つの出力ポート255を介して、検査サンプルおよび1つまたは複数の混合材料を受け取るように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、GMRセンサチップ280から廃棄物チャンバ270に流体またはサンプルを出力するために、廃棄物送達ポートまたはセンサからの出力ポートとも称される、入力ポート257が設けられる。廃棄物チャンバ270は、連通チャネル233を介してカード210の他の要素(例えば、計量チャンバ240、入力ポート257またはこれらの両方)に流体的に接続されてもよい。
【0053】
カートリッジアセンブリ200は、メモリチップ275上にデータを記憶する、読み取るおよび/または書き込む能力を有し、メモリチップ275はカード210または基板202に関連付けられ得る。前述のように、メモリチップ275を使用して、カートリッジの用途、センサ較正および(サンプル処理カード内での)必要なサンプル処理に関連する情報を保存し、調製および処理済サンプルに基づく更なる情報を受信してもよい。メモリチップ275は、サンプル処理カード210上または基板200上に位置してもよい。
【0054】
前述のように、本明細書の実施形態によれば、磁気抵抗センサを利用して、本明細書で開示するシステムを使用した検査サンプル内の被検物質(バイオマーカなど)を見極めることができる。以下の説明および図面では、特定のタイプの磁気抵抗センサ、すなわち巨大磁気抵抗(GMR)センサが使用されているが、本開示はGMRセンサプラットフォームに限定されないことを理解されたい。いくつかの実施形態によれば、センサは、例えば、異方性磁気抵抗(AMR)センサおよび/または磁気トンネル接合(MTJ)センサであり得る。いくつかの実施形態では、他のタイプの磁気抵抗センサ技術を使用してもよい。説明のみを目的として、以下の記載および図では、磁気抵抗センサとしてGMRセンサを使用した場合を説明している。
【0055】
カートリッジアセンブリ200の基板202は、これらに関連付けられる巨大磁気抵抗(GMR)センサチップ280および電気接点パッド290(または電気接点部)を有し得るPCB(プリント回路基板)等の電子インターフェースおよび/または回路インターフェースであってもよい、または、これらを備えてもよい。その他の構成要素も基板202上に提供され得る。一実施形態では、GMRセンサチップ280は少なくとも基板202に取り付けられる。GMRセンサチップ280は、例えば、基板202上に配置されて接着剤を使用して取り付けられてもよい。一実施形態では、GMRセンサ280とPCB基板202との間の接着には、液体接着剤またはテープ接着剤を使用することができる。このような設計では、例えば、底部でPCBへの接合を行い、上部で処理カードの接合を行う必要がある場合もある。GMRセンサチップ280を基板202に取り付ける他の方法として、これに限定されないが、GMRセンサをPCBに摩擦嵌めし、GMRセンサチップ280の上部を直接サンプル処理カード210に接続してもよい(例えば、特に、基板202がサンプル処理カード210の(背面に)積層されるフレキシブル回路の形態で提供される場合)。GMRセンサチップ280は、サンプル処理カード210の出力ポート255から、調製されたサンプルを受け取るように設計されてもよい。この場合、基板上のGMRセンサチップ280の配置は、カード210上の出力ポート255の位置に基づいて変更または修正され得る(したがって、
図2Bに示す例に限定することを意図していない)。一実施形態では、GMRセンサチップ280は、基板202の第1の側(例えば、
図2Bに示されるようにカード210の下側に面する上側)に配置されて、例えば、カード210の下側に出力するように構成された出力ポートから調製済サンプルを受け取ってもよい。電気接点パッド290は反対側の基板の第2の側に配置される(例えば、カートリッジ読み取り機100に挿入されるように完全に組み立てられた時に、電気接点パッド290がカートリッジアセンブリ200の底面側に露出するように基板202の底側または下側に配置される)。GMRセンサチップ280は、PCB/基板202上の電子接続を介してその下側に設けられた電気接点パッド290に電気的に接続されるGMRセンサチップ280自身の接点パッド(例えば、金属ストリップまたはピン)を備えてもよい。この場合、カートリッジアセンブリ200がカートリッジ読み取り機100に挿入されると、電気接点パッド290が電子インターフェースとして機能して電気接続を確立し、カートリッジ読み取り機100内の電子機器(例えば、カートリッジリーダ310)と電気接続する。したがって、センサチップ280内のセンサは、電気接点パッド290およびGMRセンサチップ280の接点パッドを介してカートリッジ読み取り機100内の電子機器に接続される。
【0056】
図2Dは、カード210と基板202との嵌合インターフェースまたは接続インターフェースの例示的な断面図である。より具体的には、
図2Dは、一実施形態に係るカード210上の出力ポート255と基板202のGMRセンサチップ280との間のインターフェースを示している。例えば、本明細書に開示された実施形態のいずれかに係るカード210の下に隣接して配置されたPCB基板202が示されている。基板202は、カード210の底面に取り付けられてもよい。ここではマイクロ流体チャネル433(これはカード210内の多数の連通チャネルの1つ)と称されるチャネル機能を、カード210の少なくとも1つの層に有し、カード210内で処理される検査サンプルをGMRセンサ280へと向かわせる出力ポート255へと導くように設計されている。必要に応じて、カード210の層の間に接着剤を塗布してもよく、例えば、試薬ポート434Bを有するカードの層とチャネル433の層との間に接着剤434Aを塗布してもよい。基板202は、カード210のチャネル433および出力ポート255に隣接して配置されたGMRセンサチップ280を備える。
【0057】
(
図3を参照して以下で説明する磁場発生器360とは異なる磁場発生器365からの)磁場を利用して、センサの近くに位置するナノ磁性粒子を励起することができる。
【0058】
図3に示すように、カートリッジ読み取り機100とカートリッジアセンブリ200がどのように協働してサンプル中の被検物質を検出するシステム300を提供しているかを更に説明すべく、カートリッジ読み取り機100の更なる特徴が概略的に示されている。図示のように、カートリッジアセンブリ200は、カートリッジ読み取り機100のハウジング110に挿入されてもよい。一般に、カートリッジ読み取り機100のハウジング110は、本明細書全体を通して「コントローラ」および/または「カートリッジリーダ」310とも呼ばれるプロセッサまたは制御ユニット310、電源320、空気圧系統330、通信ユニット340、(必要に応じて)診断ユニット350、磁場発生器360およびメモリ370(またはデータストレージ)、ならびに、ユーザーインターフェース140および/またはディスプレイ120を更に備えるまたは含み得る。必要に応じて、例えば、挿入されたカートリッジアセンブリ上の試薬ソースを開封するため、または、(例えば、試薬がアセンブリの特定の試薬領域に提供されていない場合)カートリッジアセンブリに試薬を導入するための試薬オープナー(
図3には示されていない)を、カートリッジ読み取り機100の一部として設けてもよい。カートリッジアセンブリ200がカートリッジ読み取り機100のハウジング110に挿入され、電気系統および空気圧系統が接続されると、カートリッジアセンブリ200がカートリッジメモリチップ275を読み取る(例えば、カートリッジ読み取り機100内のカートリッジリーダ310/制御ユニットまたはPCBアセンブリによって読み取られる)。そして、カートリッジアセンブリ200のカード210に選択的に圧力を加えるためのステップと設定を含む空気圧系統プロトコルを決定し、センサ(例えば、GMRセンサチップ280)へ送達されるサンプルの調製方法を実行する。このようにアセンブリ200に配置されたサンプルに対して、前処理、処理および分析が行われる。制御ユニットまたはカートリッジリーダ310は、サンプル中の被検物質を検出するプロセスの自動化に必要な入力および出力を制御してもよい。カートリッジリーダ310は、特に、カートリッジアセンブリ200および空気圧系統330に関連する巨大磁気抵抗(GMR)センサチップ280および/またはメモリチップ275を制御するように構成されたリアルタイムコントローラであってもよく、ユーザーインターフェースからの制御も加わり、例えば、磁場発生器360の駆動、および、カートリッジアセンブリ200に関連するセンサチップおよび/またはメモリへの/からの信号の送受信を制御する。一実施形態では、カートリッジリーダ310は、追加のチップ、メモリ、デバイスを含み得るPCB(プリント回路基板)の形態で提供される。カートリッジリーダ310は、例えば、内部メモリユニット、システムオペレーションイニシャライザ、信号準備ユニット、信号処理ユニットおよび/またはデータストレージ(いずれも図示せず)と通信および/または制御するように構成されてもよい。カートリッジリーダ310は、通信ユニット340に対して信号を送受信するように構成されてもよく、それにより、(例えば、クラウドサーバとの)ネットワーク接続性およびテレメトリが確立されて、例えば、不揮発性レシピが実装されてもよい。通信ユニット340は概して、カートリッジ読み取り機100が無線または有線技術を使用してデータを送受信可能にする。内蔵電池の形態の電源320を介してまたはそれに接続された外部電源を介して(例えば、コードおよびプラグを介して)電力を受け取るコネクタの形態で、カートリッジ読み取り機100に電力を供給することができる。電源320は、カートリッジ読み取り機100の起動時および/またはカートリッジアセンブリ200が読み取り機100に嵌合される時に、カートリッジ読み取り機100の部品に電力を供給する。例えば、電源320は、カートリッジリーダ310の制御ユニットおよびPCBアセンブリ560、磁場発生器360、ディスプレイ120および/またはユーザーインターフェース140ならびに空気圧系統330(例えば、任意のモータ、バルブおよび/またはそれに関連するポンプを含む)に電力を供給してもよい。本明細書の一実施形態によれば、電源320は、少なくとも1つの内蔵電池パック320であってもよい。空気圧系統330は、サンプル処理カード210の内部およびサンプル処理カード210に沿って流体を移動および誘導することにより(例えば、空気圧接続部235を介して、チャネルにより、エラストマー製バルブへと導くべく接続することにより)カートリッジアセンブリ200に入れられたサンプル(例えば、血液、尿)を処理および調製するのに使用される。空気圧系統330は、例えば、流体と接触するプランジャおよび/またはピストンを使用可能な、流体を移動させるためのシステムおよび/またはデバイスであり得る。磁場発生器360は、カートリッジ読み取り機100の回路基板もしくはカートリッジアセンブリ200に設けられる1つ以上のチップ(例えば、センサチップ280)と何らかの方法で一体化されるまたは読み取り機100に取り付けられる、外部磁気コイルまたは他の磁場発生装置であり得る。磁場発生器360は、信号を読み取ると同時に、GMRセンサチップ280の近くの磁性ナノ粒子を励磁するのに使用される。幾つかの実施形態では、コイルまたはその他の磁場発生器であり得る第2の磁場発生器365は、カートリッジ読み取り機100の一部としてハウジング110内に設けられてもよい。例えば、一実施形態では、第2の磁場発生器365は磁場発生器360とは別個の異なる発生器であってもよい。この第2の磁場発生器365は、サンプルの調製および処理中に、アセンブリ200のサンプル処理カード210の一部(例えば、上部、下部、側面)に不均一な磁場を印加できるように当該磁場を生成するように構成され得る。例えば、緩衝液および/または磁気ビーズ等の混合材料を混合材料ソースから移動させる時、および、カード内の検査サンプルを移動させる時にこのような磁場が印加される。一実施形態では、第2の磁場発生器365は、カートリッジ読み取り機の反対側の端部または側面(例えば、読み取り機100のハウジング110の上部に位置する)に、すなわちGMR検知に使用される磁場発生器360から離れて設けられる。一実施形態では、第2の磁場発生器365は、磁場発生器360に対してカートリッジ読み取り機の反対側の端部に設けられる(例えば、第2の磁場発生器は読み取り機100のハウジング110の上部に配置され、磁場発生器360は読み取り機100の下端(例えば、カートリッジ受け部130の近く)に設けられる)。一実施形態では、バイオマーカを感知するための磁場全体は、GMRセンサチップ280の近くの磁性ナノ粒子からの外乱に加えて、(外部またはセンサチップと一体化した)磁場発生器360から印加される磁場を含む。試薬オープナは、GMRセンサチップ280のサンプル処理および読み取り中に試薬を導入するために必要に応じて使用される(例えば、試薬がカードの特定の試薬領域に含まれていない場合)。前述のように、ユーザーインターフェース/ディスプレイ120により、オペレータは情報を入力し、プロセスを制御し、システムフィードバックを提供し、検査結果を(タッチスクリーン等の出力表示画面を介して)表示できる。
【0059】
図4は、本明細書で開示されるシステム300を使用して、サンプル中の被検物質の検出を実行するための方法400の一般的な工程を示す。ステップ410において、システムが初期化される。例えば、システムの初期化には、システム300(カートリッジ読み取り機100を含む)の電源投入、システムの設定情報の決定、計算結果の読み取り、機能(例えば、磁場発生器と搬送波信号)がオンラインであり準備完了しているかどうかの判定等が含まれる。ステップ415において、全検査サンプルがカートリッジアセンブリ200に添加または装填される(例えば、
図2Cに示すように、サンプルが注入ポート215から注入される)。ステップ410およびステップ415の順序を変更してもよい。すなわち、アセンブリ200への全検査サンプルの追加は、システムが初期化される前または後に行われてもよい。ステップ420において、カートリッジアセンブリ200がカートリッジ読み取り機100に挿入される。必要に応じて、方法400の一部として、ユーザーインターフェース/ディスプレイ120を介してカートリッジ読み取り機100および/またはシステム300にユーザ指示を入力してもよい。次に、ステップ425において、制御ユニット310を介してサンプルの処理が開始される。処理の開始は、例えば、ユーザーインターフェース/ディスプレイ120および/または読み取り機100に接続されたシステムを介して、オペレータまたはユーザによる入力を受信することを含み得る。別の実施形態では、カートリッジアセンブリ200をカートリッジ読み取り機100に挿入し、読み取り機内のカートリッジアセンブリ200の存在を検出することにより(例えば、アセンブリ200上の電気接点パッド290と制御ユニット310との電気接続、および、メモリチップ275からの命令の自動読み出しにより)、処理を自動的に開始することができる。調整済サンプルを生成するために、(例えば、メモリチップ275から取得した)空気圧制御命令を使用してステップ425においてサンプルの処理が行われる。上記で説明したように(および、以下で更に説明されるように)、サンプルの処理は、サンプルのタイプおよび/または読み取り機100に挿入されたカートリッジアセンブリ200のタイプに依存し得る。場合によっては、処理は、サンプルを調製する前に、混合、緩衝液または試薬の導入などを含む多くのステップを有する場合がある。サンプルが調製されると、調製済サンプルが、GMRセンサチップ280に供給される(例えば、空気圧系統330および制御ユニット310を介して、空気圧制御によりカード210のチャネルを通って出力ポート255に送達される)。ステップ440において、調製済サンプル中の被検物質がGMRセンサチップ280で検出される。次に、ステップ445において、GMRセンサチップ280からの信号が、例えば、カートリッジリーダ310(制御ユニット;例えば、1つ以上のプロセッサを含む)を介して受信され、処理される。信号処理により、例えば、ディスプレイ120/ユーザーインターフェースを介して検査結果をステップ450において表示することができる。ステップ455において、検査結果が保存される。例えば、検査結果は、クラウドサーバーおよび/またはカートリッジアセンブリ200に搭載されたメモリチップ275に保存されてもよい。幾つかの実施形態では、流体またはサンプルは、GMRセンサチップ280から入力ポート257を通って廃棄チャンバ270へと送達されてもよい。その後、全ての検査が実行され検知デバイス/GMRセンサチップ280によって数値が読み取られた後は、カートリッジアセンブリ200はカートリッジ読み取り機100から取り出されてもよい。一実施形態において、カートリッジアセンブリの取り出しは自動的に実行されてもよく、例えば、カートリッジ読み取り機100のハウジング110内の機構がハウジング110からアセンブリ200を押し出す、またはオペレータにより(ボタンもしくは力を使用して)手動で実行されてもよい。
【0060】
一実施形態では、本明細書に記載のシステム300は、同日出願の国際特許出願No.PCT/US2019/____、「SYSTEM AND METHOD FOR GMR−BASED DETECTION OF BIOMARKERS(GMRによるバイオマーカの検出のためのシステムおよび方法」(代理人整理番号026462−0504846)に開示されているような空気圧制御系統を使用してもよく、上記の出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
一実施形態では、本明細書に記載のシステム300は、同日出願の国際特許出願No.PCT/US2019/____、「SYSTEM AND METHOD FOR SAMPLE PREPARATION IN GMR−BASED DETECTION OF BIOMARKERS(GMRによるバイオマーカの検出におけるサンプル調整のためのシステムおよび方法」(代理人整理番号026462−0504847)に開示されているようなカートリッジアセンブリを(例えば、サンプル調整およびセンサへの送達に)使用してもよく、上記の出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
一実施形態では、本明細書に記載のシステム300は、国際特許出願No.PCT/US2019/____、「SYSTEM AND METHOD FOR SENSING ANALYTES IN GMR−BASED DETECTION OF BIOMARKERS(GMRによるバイオマーカの検出における被検物質の検出システムおよび方法」(代理人整理番号026462−0504848)に開示されているように被検物質を感知してもよい。例えば、一実施形態では、検知デバイスまたはGMRセンサチップ280は、上記の代理人整理番号026462−0504848の出願に開示されるように、1つまたは複数のマイクロ流体チャネル、および、当該1つまたは複数のマイクロ流体チャネル内に配置される複数のセンサパッドを含み得る。一実施形態では、このようなチャネルは、当該チャネル内に配置された複数のGMRセンサを必要に応じて含んでもよい。複数のGMRセンサを、一の被検物質を検出するように全て同一に構成してもよく、この場合、冗長性により検出を強化することができる。これに代えて、複数のGMRセンサを数多くの被検物質を検出するように全て異なる構成にすることもでき、また、冗長性を持たせつつ複数の異なる構成のセンサの組み合わせにすることもできる。チャネルの構成は制限されない。チャネル内の複数のGMRセンサが集合的に、GMRセンサチップ280からの出力(検査結果)を提供するように設計してもよい。
【0063】
図1および
図2A〜
図2Dは、サンプル中の被検物質を検出するための本明細書に開示されるシステム300の一部であるカートリッジリーダ読み取り機100およびカートリッジアセンブリ200の代表的な特徴を示した概略図である。図は説明のみを目的としており、これに限定することを意図したものではない。
【0064】
図5Aには、いくつかの実施形態に係る例示的なチャネル500が示されている。チャネル500は構造的に蛇行しているように示されているが、幾何学的に必ずしもこれに限定されない。チャネル500は、チャネル本体520内に配置された複数のGMRセンサ510を備える。複数のGMRセンサ510を、一の被検物質を検出するように全て同一に構成して510もよく、この場合、冗長性により検出を強化することができる。これに代えて、複数のGMRセンサ510を数多くの被検物質を検出するように全て異なる構成にすることもでき、また、冗長性を持たせつつ複数の異なる構成のセンサの組み合わせにすることもできる。チャネル500は更に、任意のサンプル、試薬、ビーズ懸濁液等がチャネル本体520にへと入るチャネル入口530を有する。チャネル入口530における正圧下またはチャネル出口540における真空下により、チャネル本体520を通る流れが調整される。
【0065】
図5Bには、ベース550内に配置された複数のチャネル500が示されている。チャネル500はそれぞれ、各GMRセンサ510を囲む拡張領域であるチャネル拡張部560を特徴としている(
図5A;図面を明確にするために
図5Bには示されていない)。理論に限定されるものではないが、チャネル拡張部560は、GMRセンサ上を材料が通過する際により良く混合されるための手段を提供すると仮定している。ベース550の周囲には、チャネル拡張部560に配置されたGMRセンサと残りの回路との間の導電部として機能する一対の接点パッド570が配置されている。GMRセンサ510は、配線(図示せず)を介して接点パッド570に電子的に結合されている。
【0066】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、本開示の実施形態に係るカートリッジアセンブリ200に取り付けることができるGMRセンサチップ280の構造を概略的に示している。
図6Aに示すように、GMRセンサチップ280は、チップのほぼ中央に配置された少なくとも1つのチャネル610、620および630と、チャネル内に配置された複数のGMRセンサ680と、GMRセンサチップの2つの対向端に配置された電気接点パッド640A、640Bと、電気接点パッド840A、840Bに接続された金属ワイヤ650、660、670A、670B、670C、690A、690B、690Cとを備える。
【0067】
チャネル610、620および630はそれぞれ、より多くのセンサを内部に詰め込めるように蛇行形状を有してもよい。複数のチャネル拡張部685をチャネルに沿って配置して、複数のGMRセンサを収容することができる。検査される流体は、チャネル入口615A、625A、635Aおよびチャネル出口615B、625B、635Bを介してそれぞれチャネル610、620、630に流入および流出する。
図6Aには、GMRセンサ680が8×6個のセンサアレイ状に配置され、3つのチャネル610、620、630それぞれに16個ずつのセンサが配置されてるように示されている。しかしながら、検出対象物の特定の要件を満たすべく、他の組み合わせを使用可能である。
【0068】
電気接点パッド640A、640Bは、複数の電気接点ピンを備える。金属ワイヤ650、660、670A、670B、670Cは、GMRセンサを対応する電気接点ピン645A、645B、675に接続する。電気接点パッド640A、640Bは、カートリッジアセンブリ200に設けられた電気接点パッド290に接続されている。カートリッジアセンブリ200がカートリッジリーダ310に挿入されると、GMRセンサチップ280とカートリッジリーダ310との間に電気接続が形成され、GMRセンサからカートリッジリーダ310へ測定信号の送信が可能になる。
【0069】
図6Bは、GMRセンサの詳細を示している。例えば、GMRセンサはそれぞれ、並列に接続された5つのGMRストリップで構成されてもよい。一端において、GMRセンサはそれぞれ2本のメイン金属ワイヤ(ワイヤ650または660)のうちの一方によって、2つのコモンピンのうちの一方(ピン645Aまたは645B)に接続される。GMRセンサの他端は、別個の金属ワイヤ670A、670B、670Cによって、電気接点パッド640Aまたは640B上の別個のピン675に接続される。
【0070】
図6Aには、チャネルの1つにそれぞれ対応するチャネル入口および/またはチャネル出口の近くに配置された流体検出金属ワイヤ690A、690B、690Cも示されている。流体検出機能は、それぞれの流体検出金属ワイヤに配置されたスイッチ695A、695B、695Cによって実行される。
図6Cは、スイッチ695Aの構造を詳細に示している。導電性流体(例えば、プラズマ)がその上を流れたと認識されると、スイッチ695Aは一方の側のワイヤ696Aを他方の側のワイヤ696Bに結合し、流体検出信号を生成する。
【0071】
図6A〜
図6Cに示されるGMRセンサチップの構造および配線は本質的に例示に過ぎず、他の構造および配線が同じまたは同様の機能を達成するために実装可能であることは当業者には明らかであろう。
図7には、チャネル拡張部730におけるチャネル700の断面が示されている。チャネル拡張部730内にはGMRセンサ710が配置され、その上に1つまたは複数の生体分子725が固定化されている。生体分子725のGMRセンサ710への固定化は、従来の表面化学を利用して行われる(
図8に更に詳細に示されている)。生体分子725は、実施されている特定の分析の性質に応じて、ペプチドまたはタンパク質、DNA、RNA、オリゴ糖、ホルモン、抗体、糖タンパク質等であり得る。GMRセンサ710はそれぞれワイヤ795により、チャネル700の外側に位置する接点パッド770に接続されている。ある実施形態では、ワイヤ795は、センサ底部でGMRセンサ710に接続される。
【0072】
図8Aには、GMRセンサ810の位置においてチャネル拡張部が設けられていないチャネル本体830を有するチャネル800のより詳細な断面が示されている。生体分子825は、生体表面845へ付着することによりセンサに対して固定化される。そのような生体表面固定化化学は、当技術分野で知られている。例えば、Cha他、「Immobilization of oriented protein molecules on poly(ethylene glycol)−coated Si(111) (ポリエチレングリコール被覆Si(111)上の配向タンパク質分子の固定化」プロテオミクス4:1965−1976、(2004);Zellander他、 「Characterization of Pore Structure in Biologically Functional Poly(2−hydroxyethyl methacrylate)−Poly(ethylene glycol) Diacrylate (PHEMA−PEGDA) 生物学的に機能するポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)−ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PHEMA−PEGDA)の細孔構造の特性評価」、PLOS ONE 9(5):e96709、(2014)を参照されたい。幾つかの実施形態では、生体表面845は、PHEMAで架橋されたPEGポリマーを含む。幾つかの実施形態では、架橋基は以下の式(I)によって表される。
PA−LG−PA (I)
式中、PAは光もしくは金属で活性化または活性化された基であり、LGは連結基である。幾つかの実施形態では、PAは同じであり、他の実施形態では、それぞれのPAは異なる。幾つかの実施形態では、PAは光活性化または金属活性化されて、C−Hおよび/またはO−H挿入が可能なナイトレン(nitrene)中間体を形成する。例えば、「Photogenerated reactive intermediates and their properties(光生成反応性中間体とその特性)」、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology (生化学および分子生物学の実験室技術)第2章、Elsevier Press、12:8−24(1983)に記載されている。幾つかの実施形態において、PAは、C−Hおよび/またはO−H挿入が可能なカルベン(carbene)またはカルベノイド中間体を形成するように活性化された金属である。例えば、ドイル他、「Catalytic Carbene Insertion into C−H Bonds(C−H結合への触媒的カルベン挿入)」Chem.Rev.2:704−724(2010)を参照のこと。
【0073】
幾つかの実施形態において、PAはそれぞれアジド(azide)(−N
3)部分であり、光活性化によりC−Hおよび/またはO−H挿入可能なナイトレン中間体が生成され、それによりPEGポリマーおよびPHEMAポリマーの架橋を媒介する。幾つかの実施形態において、PAはそれぞれジアゾ(diazo)(−N
2)であり、金属触媒分解反応によりC−Hおよび/またはO−H挿入可能なカルベンまたはカルベノイド中間体が形成され、それによりPEGポリマーおよびPHEMAポリマーの架橋を媒介する。アジドおよびジアゾの調製は両方とも当技術分野で周知であり、アジドの場合、脱離基を有する適切な有機部分を用いたアジドアニオン、N
3-のS
N2置換反応により容易に調製される。
【0074】
式(I)のLGは、各PA部分の存在をサポートする任意の有機フラグメントであってもよい。直鎖または分岐鎖の単純なC
2−C
20炭化水素鎖であってもよい。そのような炭化水素は、任意の程度のフッ素置換を伴ってもよいフッ素化変異体を含み得る。幾つかの実施形態では、LGは芳香族炭化水素を含み得る。例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ビナフチル、または、芳香族構造とC
2−C
20炭化水素鎖との組み合わせを含むがこれらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、LGは、アルキル、アリールまたはアラルキル構造であり得る。幾つか実施形態において、アルキル連結基は、酸素(O)またはアミン(NR)で置換された1つ以上の炭素を鎖内に有してもよく、ここでRは、HまたはC
1−C
6アルキルである。
【0075】
前述の実施形態によれば、架橋PEG−PHEMA構造は、式(II)で表すことができる。
PEG−A−LG−A−PHEMA (II)
PEGがポリエチレングリコール部分である場合、Aはそれぞれアジドまたはジアゾの触媒反応からの付着原子であり、すなわちCH
2またはNHであり、LGは上記の連結基である。
【0076】
図8Aにおいて、磁気ビーズ結合体815は、生体分子825または目的の分析物、例えば、抗体−分析物−磁気ビーズ結合抗体のサンドイッチ複合体のようなものと相互作用する。生体表面845の下には、絶縁層855が設けられている。絶縁層855は、GMRセンサ810と直接接触してもよく、例えば、金属酸化物層を含んでもよい。生体表面層845は、絶縁層845と直接接触している。ベース865は、その上に設けられる各構成要素、GMRセンサ810、絶縁層855および生体表面層845の足場として機能する。幾つかの実施形態では、ベース865はシリコンウェハから作られる。
【0077】
図8Bは、GMRセンサの基本構造と原理を模式的に示している。典型的なGMRセンサは、2つの磁性層880Aおよび880Bの間に非磁性導電性中間層890が挟まれた金属多層構造を有する。非磁性導電性中間層890は、多くの場合、銅薄膜である。磁性層880Aおよび880Bは、強磁性合金材料から形成されてもよい。
【0078】
金属多層構造の電気抵抗は、磁性層880Aおよび880Bの相対的な磁化方向に応じて変化する。平行磁化(
図8Bの右半分に示す)の部分は抵抗が低くなり、反平行磁化(
図8Bの左半分に示す)の部分は抵抗が高くなる。磁化の方向は、外部から印加される磁場によって制御可能である。このように、金属多層構造の電気抵抗の変化は外部磁場の関数となる。
【0079】
GMRセンサは、異方性磁気抵抗(AMR)センサまたはホール(Hall)センサの感度を上回る感度を有する。この特性により、ナノメートルスケールで磁性材料からの漂遊磁場を検出することができる。例えば、センサ表面に結合した磁性ナノ粒子からの浮遊磁場は、磁性層の磁化を変化させ、GMRセンサの抵抗を変化させる。したがって、単位面積あたりのGMRセンサに結合される磁性ナノ粒子数の変化は、GMRセンサの抵抗値の変化に反映され得る。
【0080】
図9Aおよび
図10Aには、GMRセンサが本明細書に記載されている様々な分析用途に従って動作する2つの例示的な基本モードが示されている。
図9Aに例示される第1のモードでは、分析の開始時に、磁気ビーズ915が生体表面965を介してGMRセンサ(
図8A、810を参照)の近くに装填される。分析中、対象の被検物質が存在すると、磁気ビーズ915が生体表面965から移動する(したがって、GMRセンサから移動する)。磁気ビーズがセンサ表面の近くから取り除かれることから、このモードはいわゆる除去(subtractive)モードである。
図10Aには、第2のメインモード、すなわち、付加(additive)モードでの動作が示されている。このモードの分析では、対象の被検物質が存在する場合、GMRセンサ(
図8A、810を参照)の近くに磁気ビーズ1015が付加される。除去型または付加型のいずれかのモードは、センサ表面に近いビーズ(915、1015)の数の変化に依存しており、それによってGMRセンサシステムの抵抗が変化する。この抵抗の変化が測定され、対象の被検物質の濃度を定量的に決定することができる。
【0081】
図8Aには、例示的な除去型プロセスを通じたセンサ構造を示すセンサ構造図が示されている。プロセスの開始時に、システムは状態900aにあり、この状態において、関連付けられた磁気ビーズ915を備える複数の分子(典型的には生体分子)925が、GMRセンサの生体表面965上に配置されている。生体表面965の上側の体積部分は、乾燥し始めるまたは溶媒が存在してもよい。乾燥している場合、検出プロセスは、例えば、緩衝液による溶媒プライミング工程を含んでもよい。被検物質が導入された後、システムは、被検物質の濃度に比例した量の磁気ビーズ915が分子925から除去された状態900bとなる。状態900aおよび状態900bの変化は測定可能な抵抗の変化を提供し、それにより対象の被検物質の定量化が可能となる。幾つかの実施形態では、分子925から被検物質により直接ビーズを取り除く単純な機構としてもよい。他の実施形態において、被検物質は分子925と化学的に反応してビーズ915が付着した分子の一部を切断し、それにより、ビーズ915を分子925の切断された部分共に放出するようにしてもよい。
【0082】
一実施形態では、生体表面965はポリマーを含む。分子925が生体表面965へ共有結合するのを促進するように特定のポリマーを選択してもよい。他の実施形態において、分子925は、静電相互作用を介して生体表面965に結合されてもよい。例えば、生体分子を共有結合で固定するための従来の結合させる化学的構造を使用するべく、ポリマーコーティングを選択または修飾してもよい。結合させる化学的構造には、有機官能基ハンドルを含む任意の化学部分が挙げられ、特にこれらに限定されないが、アミン、アルコール、カルボン酸およびチオール基が挙げられる。共有結合させる化学的構造として、エステル、アミド、チオエステルおよびイミンの形成が含まれるが、これらに限定されない(これらは結合後、還元、すなわち還元的アミノ化される)。生体表面965は、これに限定されないが、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および双性イオン界面活性剤を含む界面活性剤等の表面改質剤を含んでもよい。
【0083】
幾つかの実施形態では、磁気ビーズ915は、球状ナノ粒子を含むナノ粒子であってもよい。そのようなナノ粒子は、約2〜50ナノメートル(nm)、約5〜20nmまたは約5〜10nmの範囲の有効径を有してもよい。幾つかの実施形態において、分子925への共有結合を促進するために磁気ビーズ915はコーティングされてもよい。他の実施形態では、磁気ビーズ915をコーティングして、分子925との静電的結合を促進してもよい。磁気ビーズ915には、マルチプレックス検出スキームを容易にするために、異なる複数のタグ付けおよび/またはコーティングされてもよい。そのような実施形態では、異なるタグ付けおよび/またはコーティングは、異なる複数のGMRセンサ上または複数の異なる分子空間的に組織化されてアドレス可能な信号を生成する1つのセンサ上に配置された異なる複数の分子と相互作用するように異なる複数のビーズが構成される。
【0084】
図9Bは、
図9Aのセンサ構造スキームに関連するプロセスフロー901を示している。このプロセスは、ステップ920においてサンプルをカートリッジアセンブリに注入することから開始される。次いで、ステップ930において、濾過、希釈および/または化学修飾等の必要な工程を通じた処理をサンプルに施す。これらの前処理工程の順序は、サンプルの性質および検出対象の被検物質に依存する。システム内における移動は空気圧で制御してもよい。ステップ940は、処理済みサンプルを、対象物指定の流量でGMRセンサに送達することを含む。流量は、GMRセンサ表面の化学反応速度を反映するように選択してもよい。ステップ950において、GMRセンサ表面における磁気ビーズの濃度の変化が反映されたGMRセンサからの読み取り値が取得される。これらの測定値により、ステップ960において抵抗の変化を検出する。最後に、ステップ970において、抵抗の変化に基づいて検出結果を計算する。
【0085】
図10Aには、例示的な付加型プロセスを通じたセンサ構造を示すセンサ構造図が示されている。プロセスの開始時に、システムは状態1000aにあり、この状態において、複数の分子(典型的には生体分子)1025が、GMRセンサの生体表面1065上に配置されている。第2の状態1000bでは、複数の分子1025が選択されて対象の被検物質1090と結合する。検出対象の被検物質1095は、磁気ビーズ1015を結合するように構成されている。幾つかの実施形態では、検出対象の被検物質1095は、生体表面1065を通過する前にビーズに結合される。例えば、これは検査されるサンプルの前処理中に発生する場合がある。(他の実施形態では、
図17Aを参照して以下で説明するように、検出対象の被検物質1095が最初に生体表面を通過し、次に被検物質が生体表面1065に結合した後、検出対象の被検物質1095を磁気ビーズ1015で修飾してもよい)。幾つかの実施形態では、所与の検出対象の被検物質1095は、磁性粒子1015と結合する前に化学修飾を必要としてもよい。幾つかの実施形態では、磁気ビーズ1015は、検出対象の被検物質1095と相互作用するように修飾されてもよい。磁気ビーズ1015が存在しない状態1000aから磁気ビーズ1015が生体表面1065に結合されている状態1000bまでの測定抵抗値の変化により、被検物質の量を測ることができる。
【0086】
図10Bは、
図10Aのセンサ構造スキームに関連するプロセスフロー1001を示している。このプロセスは、ステップ1020においてサンプルをカートリッジアセンブリに注入することから開始される。次いで、ステップ1030において、濾過、希釈および/または化学修飾等の必要な工程を通じた処理をサンプルに施す。これらの前処理工程の順序は、サンプルの性質および検出対象の被検物質に依存する。システム内における移動は空気圧で制御してもよい。ステップ1040は、処理されたサンプルを反応チャンバに送ることを含む。次いでステップ1050は、ビーズを反応チャンバに導入し、検出対象の被検物質を修飾することを含む。上述のように、このような修飾は反応チャンバ内ではなく、センサ表面上で直接実行されてもよい。ステップ1060において、修飾されたサンプルは、目標流量でGMRセンサへと送られる。流量は、GMRセンサ表面の化学反応速度を反映するように選択してもよい。ステップ1070において、GMRセンサ表面における磁気ビーズの濃度の変化が反映されたGMRセンサからの読み取り値が取得される。これらの測定値により、ステップ1080において抵抗の変化を検出する。最後に、ステップ1090において、抵抗の変化に基づいて検出結果を計算する。
【0087】
図11Aには、被検物質1195(状態1100b)の検出のためにサンドイッチ抗体を使用する例示的な付加プロセスにおけるセンサ構造状態1100a〜dを示したセンサ構造図が示されている。プロセスの開始時に、システムは状態1100aにあり、この状態において、複数の抗体1125が、GMRセンサの生体表面1165上に配置されている。次に、状態1100bにおいて、被検物質1195は生体表面1165上を通過し、被検物質1195が抗体1125へ結合する。次いで、状態1100cにおいて、共有結合したビオチン部分(B)が設けられた二次抗体1135に結合することにより、被検物質1195が修飾される。次いで、ストレプトアビジン(S)で修飾された磁気ビーズ1115が添加されて、ビオチン−ストレプトアビジンの強力な結合が可能となり、状態1100dとなる。いくつかの実施形態において、ストレプトアビジンは、磁気ビーズ1115上のコーティングとして提供される。
【0088】
図11Bは、
図11Aのセンサ構造スキームに関連するプロセスフロー1101を示している。このプロセスは、ステップ1110においてサンプルをカートリッジアセンブリに注入することから開始される。次いで、ステップ1120において、濾過、希釈等の必要な工程を通じた処理をサンプルに施す。これらの前処理工程の順序は、サンプルの性質および検出対象の被検物質に依存する。システム内における移動は空気圧で制御してもよい。ステップ1130において、処理されたサンプルが指定流量でGMRセンサに送られる。そのような流速は、GMRセンサ表面における生体表面に結合した抗体と被検物質との間の化学動力学を反映するように選択されてもよい。次に、ステップ1140において、ビオチン化抗体(Ab)をGMRセンサに導入する。これにより、2つの抗体間に挟まれた被検物質の「サンドイッチ」構造が作成される。ステップ1150において、ストレプトアビジンで被覆されたビーズがGMRセンサに導入され、ビオチン結合抗体と相互作用する。ステップ1160において、GMRセンサ表面における磁気ビーズの濃度の変化が反映されたGMRセンサからの読み取り値が取得される。これらの測定値により、ステップ1170において抵抗の変化を検出する。最後に、ステップ1180において、抵抗の変化に基づいて検出結果を計算する。
【0089】
図11Aおよび
図11Bのスキームは、心臓バイオマーカで実施され、概念実証の結果が
図12A〜
図17Cに示されている。
図12Aは、心臓バイオマーカDダイマーを検出するように設計された検査における時間(秒)に対するGMR信号(ppm)のプロットを示している。このデータを生成するのに、0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS緩衝液中の1mg/mLのD−ダイマー抗体2nLを使用して、D−ダイマー捕捉抗体を印刷して生体表面を用意した。また、潜在的な交差反応性を検査するために、0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS緩衝液中に1mg/mLトロポニンI抗体の溶液2nLを使用して、2つの複合捕捉抗体を印刷することにより、生体表面をトロポニンI捕捉抗体で官能化した。更に、他の2つの対照群を生体表面に印刷した。1つ目は、0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS緩衝液中の0.5%BSA溶液2nLを印刷することにより調製された陰性対照群であり、2つ目は、マウスIgGとビオチンとの複合体1mg/mLを含有する0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS緩衝液2nLを印刷することにより調製された陽性対照群である。印刷されたセンサは心臓検査カートリッジに組み込まれ、
図11Aおよび
図11Bを参照して前述した「サンドイッチ」構造アッセイを使用するように構成されている。
【0090】
サンプル検査中に、120マイクロリットルの血漿または全血をカートリッジのサンプルウェルに装填した。サンプルがサンプルウェルからフローチャネルに引き込まれる際に薄膜フィルタによって血球が除去される。40マイクロリットルの血漿(または全血の血漿成分)を計量チャネルに流し、抗体/ビオチン結合体、ブロッカーおよびマウスIgGを含有するチャネル内の沈殿粉末をサンプル溶液中に溶解する。センサ領域上を流れる間に、センサ表面に固定された被検物質、抗体/ビオチン複合体および抗体は、抗体−被検物質−ビオチン化抗体のサンドイッチ構造を形成する。流量は検査の種類に応じて調整される。トロポニンIの場合、サンプルは1マイクロリットル/分の流量で20分間センサへと流される。Dダイマーの場合、サンプルは4マイクロリットル/分の流量で5分間流される。サンプルの流れに続いて、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズが導入される。磁気ビーズは、センサ表面上のビオチン化抗体が結合している場所に結合する。GMRセンサは、結合した磁気ビーズを測定する。これは、サンプルに含まれる被検物質の濃度に比例する。ビーズ溶液は、4〜10マイクロリットル/分の流量でセンサへと5分間流される。ビーズが結合し始めてから300秒以内に、信号のピーク値を読み取った。
【0091】
図12Aのプロットに示されているように、BSAだけを印刷した陰性対照はD−ダイマーに結合しなかったため、想定された通り、信号はベースライン近くに留まった。ビオチン化マウスを用いた陽性対照は、想定された通り、有効なビーズ結合を示した。666.6ng/mLのヒトDダイマーの実際のサンプルのプロットには、実際のサンプルでDダイマーが正常に検出されたことを示す約750ppmのピーク検出信号が表われている。2つの結合トロポニンI捕捉抗体との交差反応性は実質的に見られなかった(明確にするため、これらのラインは陰性対照のラインに非常に近いため、表示していない)。
【0092】
図12Bは、可変濃度、固定濃度のDダイマーでサンプルを実行した場合のDダイマーの検量線(ppmでのGMR信号対Dダイマー濃度)を示している。検量線により、分析対象の被検物質としてDダイマーを含有する未知のサンプルの濃度を計算できる。
図12Cに示す同様のプロットは、心臓バイオマーカ、トロポニンIについてのプロットであり、これらの結果を合わせて、被験者の血液または血漿サンプル中のD−ダイマー及びトロポニンIの検出の実行可能性が確立される。
【0093】
図13には、本開示の一実施形態に係るカートリッジリーダ310の機能ブロックが概略的に示されている。
図13に示すように、カートリッジリーダ310は、サンプル調製制御部と信号処理部に大別することができる。メモリ読み込みユニット1310およびサンプル調製制御ユニット1320により、サンプル調製制御部が構成されている。メモリ読み込みユニット1310は、カートリッジアセンブリ200がカートリッジリーダ310に挿入されたことを示す信号を受信すると、カートリッジアセンブリ200上のメモリチップ275に格納された情報を読み取る。サンプル調製制御ユニット1320は、メモリチップ275から読み出された情報に基づいて空気圧制御信号を生成し、それを空気圧系統330に送信する。いくつかの実施形態では、カートリッジアセンブリ200のカートリッジリーダ310への挿入が認識されると、カートリッジアセンブリ200によって指示信号が生成され、挿入イベントを通知するべく当該信号がメモリ読み込みユニット1310に送られる。これに代えて、他の実施形態では、このような指示信号は、カートリッジリーダ310の他の構成要素によって作成され、メモリ読み込みユニット1310に送信されてもよい。
【0094】
カートリッジリーダ310の信号処理機能は、主に信号プロセッサ1330によって実行される。信号プロセッサ1330は、電気素子を制御し信号を準備および収集し、検出結果を処理、表示、保存および/または外部システムに中継する。例えば、信号プロセッサ1330は、磁場発生器360を制御する制御信号を生成するように動作し、その結果、カートリッジアセンブリ200内のGMRセンサにおいて磁界が励起される。カートリッジアセンブリ200のGMRセンサおよびカートリッジアセンブリ200内に配置された少なくとも1つの基準抵抗器および/または信号プロセッサ1330から測定信号を受信した後、信号プロセッサ1330は測定信号を処理して被検物質の検出検査結果を取得する。表示制御ユニットユニット120を介して、検査結果が一体化されたディスプレイまたは外部ディスプレイに表示される。更に、信号プロセッサ1330は、ユーザからの命令を受信するためにユーザーインターフェース140に接続される。いくつかの実施形態では、信号プロセッサ1330は、通信ユニット340および/または診断ユニット350に接続されて、検査結果単独または他の外部の利用可能なデータと組み合わせた評価および診断を可能にする。
【0095】
図14は、本開示の一実施形態に係るカートリッジリーダ310のプロセスのフローチャートである。
図14に示されるように、ステップ1410において、カートリッジリーダ310は、システム設定プロファイルおよび/またはユーザがユーザーインターフェース140を介して入力した命令に基づいて動作モードを初期化することにより、動作を開始する。次に、ステップ1420において、カートリッジアセンブリ200がカートリッジリーダ310に挿入されたことを示す信号を待つ。この信号は、挿入の認識時に、カートリッジアセンブリ200またはカートリッジリーダ310のいずれかによって生成されてもよい。この信号を受信すると、ステップ1430において、カートリッジリーダ310はカートリッジアセンブリ200上のメモリチップ275を読み出す。次に、ステップ1440において、カートリッジリーダ310は読み出された情報に基づいて制御信号を生成し、検査されるサンプルの調製に使用される空気圧制御のために、この制御信号を空気圧系統330に送信する。ステップ1450において、カートリッジリーダ310はGMRセンサおよび少なくとも1つの基準抵抗器において測定信号を準備し、当該信号を受信する。次に、ステップ1460において、カートリッジリーダ310は受信した測定信号を処理して検査結果を生成する。最後に、ステップ1470において、カートリッジリーダ310は、生成された検査結果を表示制御ユニット120に送信し、ユーザに対して表示する。
【0096】
図15は、本開示の一実施形態に係る信号プロセッサ1330の機能ブロックを概略的に示す。
図15に示されるように、信号プロセッサ1330は、システムオペレーションイニシャライザ1510、設定プロファイル1520、信号処理制御ユニット1530、信号準備ユニット1540、信号処理ユニット1550および必要に応じて設けられるデータストレージ1560を含む。システムオペレーションイニシャライザ1510は、設定プロファイル1520から読み取られたシステム設定情報および/またはユーザーインターフェース140を介して受信した命令に基づいて、システム動作環境をセットアップして信号プロセッサ1330の機能を初期化する、特に、信号処理制御ユニット1530の機能を初期化する。信号処理制御ユニット1530は、信号準備ユニット1540および信号処理ユニット1550を制御するための制御信号を生成するように動作する。また、信号処理制御ユニット1530は、表示制御ユニット120を介してディスプレイ上の求解結果および検出結果の表示を制御し、信号処理制御ユニット1550と通信ユニット340および/または診断ユニット350との間のデータ通信を制御するように動作する。信号準備ユニット1540は、信号処理制御ユニット1530の制御下で、測定回路を準備し、GMRセンサに印加されるAC磁場を励起し、測定回路に印加される搬送波信号を作成し、増幅およびアナログデジタル変換後の測定信号を信号処理ユニット1550に供給する。信号処理ユニット1550は、検出結果を解析的に求めることにより受信した測定信号を処理し、検出結果を信号処理制御ユニット1530に送信する。更に、いくつかの実施形態では、結果のデータは、必要に応じて設けられるデータストレージ1560に保存されてもよい。
【0097】
図16は、本開示の一実施形態に係る信号プロセッサ1330の処理のフローチャートである。
図16に示すように、最初に、ステップ1610において、設定プロファイルからシステム設定情報を読み取りおよび/またはユーザーインターフェース140を介してユーザの指示を受信して、システム動作環境を初期化する。次に、ステップ1620において、信号準備ユニット1540および信号処理ユニット1550の動作を管理するために、信号処理制御ユニット1530によって一連の制御信号が生成される。ステップ1630において、GMRセンサおよび少なくとも1つの基準抵抗器からの測定信号を準備するべく、信号処理制御ユニット1530からの制御信号に基づいて信号準備ユニット1540により測定回路が構成される。次に、ステップ1640において、準備された測定信号が信号処理ユニット1550によって処理され、被検物質検出の検査結果の値が求められる。最後に、ステップ1650において、生成された検査結果が信号処理ユニット1550から表示制御ユニット120に送信されて、ユーザに表示される。
【0098】
図17は、本開示の一実施形態に係る信号処理制御ユニット1530の機能ブロックを概略的に示している。
図17に示すように、信号処理制御ユニット1530は、マルチプレクサ制御信号生成部1710、マルチプレクサ制御信号出力部1720、D/Aコンバータ制御信号生成部1730、D/Aコンバータ制御信号出力部1740、および求解およびI/O制御部1750を備える。システム構成に関する情報および/またはユーザインターフェース140を介して入力された情報に基づいて、マルチプレクサ制御信号生成部1710は、信号準備ユニット1540内の一つまたは複数のマルチプレクサに対する制御信号を生成し、マルチプレクサ制御信号出力部1720を介して対応するマルチプレクサに送信する。D/Aコンバータ制御信号生成部1730およびD/Aコンバータ制御信号出力部1740は、信号準備ユニット1540内の1つ以上のD/Aコンバータに対する制御信号の生成および送信を行う。求解およびI/O制御部1750は、信号処理ユニット1550による測定信号の処理を管理し、処理結果を受信し、それらを表示制御ユニット120に送信する。必要に応じて、求解およびI/O制御ユニット1750は、通信ユニット340および診断ユニット350のインターフェースとしても機能する。
【0099】
図18は、本開示の一実施形態に係る信号処理制御ユニット1530の処理のフローチャートである。プロセスはステップ1810から開始され、設定プロファイルから読み取られた情報および/またはユーザインターフェース140から受信されたユーザ命令に基づいて、マルチプレクサ制御信号生成部1710によりマルチプレクサ制御信号が生成される。ステップ1820において、生成された制御信号が信号準備ユニット1540内の少なくとも1つのマルチプレクサに送信されて、測定回路構造が構成される。ステップ1830において、設定情報および/またはユーザ指示に基づいて、D/Aコンバータ制御信号生成部1730によってD/Aコンバータ制御信号が生成され、ステップ1840において信号準備ユニット1540内の少なくとも1つのD/Aコンバータへと送信される。次に、ステップ1850において、設定情報および/またはユーザ指示に基づいて、求解およびI/O制御部1750が、信号処理ユニット1550が行う測定信号の信号処理を制御する。信号処理が完了した後、ステップ1860において、求解およびI/O制御部1750は、信号処理ユニット1550から検査結果を受け取る。次に、ステップ1870において、求解およびI/O制御部1750は、受信した検査結果をディスプレイ制御ユニット120に送信して一体化されているディスプレイまたは外部ディスプレイに表示させる。ステップ1810〜1820および1830〜1840の順序は変更可能である。すなわち、マルチプレクサの制御は、D/Aコンバータの制御の前でも後でもよい、または、同時に実行可能である。
【0100】
図19には、本開示の一実施形態に係る信号準備ユニット1540の機能ブロックが概略的に示されている。
図19に示すように、信号準備ユニット1540は、搬送波信号生成部、磁界励起部、回路構成部、信号ピックアップ部、クロック同期部を備えている。説明を簡単にするために、
図19には磁場発生器360およびカートリッジアセンブリ200内のGMRセンサも示されているが、これらは信号準備ユニット1540の構成要素ではない。
【0101】
D/Aコンバータ1910、搬送波信号生成器1920および搬送波信号バッファ1930は、搬送波信号生成部を構成している。D/Aコンバータ1910は、信号処理制御ユニット1530のD/Aコンバータ制御信号出力部1740から制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて搬送波信号生成パラメータを生成する。搬送波信号生成器1920は、D/Aコンバータ1910からの搬送波信号生成パラメータに基づいて、測定回路で使用されるAC搬送波信号を生成する。搬送波信号バッファ1930は、搬送波信号発生器1920と測定回路との間に接続されて、搬送波信号発生器1920が測定回路の高いインピーダンスと比較して相対的に低いインピーダンス出力となるようにしている。必要に応じて、測定回路に入力される搬送波信号入力にフィルタを配置して、存在する可能性のある高調波を除去してもよい。
【0102】
図19では測定回路に印加される搬送波信号としてAC電圧信号が示されているが、測定回路の構造に応じて、搬送波信号はAC電流信号、DC電圧信号またはDC電流信号であり得る。
【0103】
D/Aコンバータ1910および磁場駆動装置1940は、磁場励起部を構成する。D/Aコンバータ1910は、信号処理制御ユニット1530のD/Aコンバータ制御信号出力部1740から受信した制御信号に基づいて、磁場発生パラメータを生成する。磁場駆動装置1940は、磁場発生パラメータに基づいて磁場発生器360を駆動し、AC磁場をGMRセンサに印加する。
図19の搬送波信号生成部および磁場励起部は一つのD/Aコンバータを共有しているが、それぞれが各々のD/Aコンバータを使用して搬送波信号制御パラメータおよび磁場励起制御パラメータを生成してもよい。
【0104】
回路構成部は、少なくとも1つのマルチプレクサ1950および少なくとも1つの基準抵抗器1955を含む。カートリッジアセンブリ200がカートリッジリーダ310に挿入されると、カートリッジアセンブリ200に設けられた電気接点パッド290を介して、カートリッジアセンブリ200のGMRセンサチップ280の電気接点パッド640A、640Bと、カートリッジリーダ310の信号準備ユニット1540とが電気的に接続される。信号処理制御ユニット1530から受信したマルチプレクサ制御信号に基づいて、少なくとも1つのマルチプレクサ1950は1つ以上のGMRセンサまたは1つ以上の基準抵抗器をルーティングして、適切な測定回路が構成される。
【0105】
いくつかの実施形態では、コストを考慮して、マルチプレクサ1950および基準抵抗器1955をカートリッジリーダ310に配置する。これに代えて、他の実施形態では、これらをカートリッジアセンブリ200に配置して、マルチプレクサとGMRセンサ間の配線径路長の短縮、カートリッジアセンブリ200からカートリッジリーダ310等への接続箇所の削減を図ってもよい。または、マルチプレクサおよび基準抵抗器を、カートリッジリーダ310およびカートリッジアセンブリ200の両方に配置してもよい。
【0106】
測定信号バッファ1960、差動増幅器1970およびA/Dコンバータは、信号ピックアップ部(「差動電圧プローブ」または「電圧プローブ」とも呼ばれる)を構成する。測定信号バッファ1960は、マルチプレクサ1950と差動増幅器1970との間に接続されて、差動増幅器1970の入力点において測定回路が相対的に高いインピーダンスを示すようにする。差動増幅器1970は、測定回路からの電圧観測値の時系列を把握し、増幅した測定信号をA/Dコンバータ1980に送信する。A/Dコンバータ1980は、アナログデジタル変換した測定信号を信号処理ユニット1550に送信する。必要に応じて、フィルタを差動増幅器1970および/またはA/Dコンバータ1980において使用して、高調波を除去してもよい。
【0107】
好ましくは、幾つかの実施形態では、クロック同期装置1990を使用して、搬送波信号生成部、磁場励起部および信号ピックアップ部間の同期を行ってもよい。より具体的には、D/Aコンバータ1910による搬送波信号生成パラメータおよび磁場生成パラメータの生成は、A/Dコンバータ1980と同じソース、すなわちクロック同期装置1990により、同期がとられてもよい。
【0108】
図20は、本開示の一実施形態1540に係る信号準備ユニットの処理のフローチャートである。
図20に示すように、プロセスはステップ2010で開始し、信号処理制御ユニット1530からマルチプレクサ制御信号を受信する。次に、ステップ2015において、信号準備ユニット1540のマルチプレクサ1950は、受信したマルチプレクサ制御信号に基づいて特定のGMRセンサおよび/または基準抵抗器をルーティングして測定回路を構成する。ステップ2220において、信号準備ユニット1540は、信号処理制御ユニット1530からD/Aコンバータ制御信号を受信する。ステップ2025において、信号準備ユニット1540のD/Aコンバータ1910は、D/Aコンバータ制御信号に基づいて搬送波信号生成パラメータを生成する。次に、ステップ2230において、生成された搬送波信号生成パラメータに基づいて搬送波信号が生成され、バッファリングされた後、ステップ2015において構成された測定回路に印加される。ステップ2035において、信号準備ユニット1540のD/Aコンバータ1910は、D/Aコンバータ制御信号に基づいて磁場生成パラメータを生成する。次に、ステップ2040において、磁場駆動装置1940により磁場生成パラメータに基づいて磁場が励起され、磁場生成器360を介してGMRセンサに印加される。ステップ2045において、構成された測定回路で収集された測定信号がバッファリングされた後、信号準備ユニット1540の差動増幅器1970によって増幅される。ステップ2050において、増幅された測定信号が信号準備ユニット1540内のA/Dコンバータ1980によってデジタル信号に変換される。最後にステップ2055において、変換されたデジタル信号が更なる処理のために信号処理ユニット1730に送信される。ステップ2025〜2030および2035〜2040の順序は変更可能である。すなわち、磁場励起の生成は、搬送波信号の生成の前でも後でもよい、または、同時に実行してもよい。
【0109】
図21は、本開示の一実施形態に係る信号処理ユニット1550の機能ブロックを概略的に示している。
図21に示されるように、信号処理ユニット1550は、基準信号発生器2110、乗算器2120、積分器2130、積分タイミング制御装置2140および閉形式求解ユニット2150を備える。
【0110】
基準信号発生器2110は、信号処理制御ユニット1530の求解およびI/O制御部1750から制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて、対象の全ての周波数において同相正弦波基準信号および直交位相(90度回転)正弦波基準信号を生成し、生成した基準信号を乗算器2120に送信する。乗算器2120は、信号準備ユニット1540のA/Dコンバータ1980から測定信号を受信し、測定信号に基準信号発生器2110からの基準信号を乗算して、測定信号それぞれの対象の周波数における同相積および直交位相積を生成する。同相積と直交位相積は、積分器2130に送信される。積分器2130は、積分タイミング制御装置2140の制御下でこれらの積を累積し、累積値を閉形式求解ユニット2150に送信する。閉形式求解ユニット2150は、受信された累積値から、印加された搬送波信号の周波数、振幅もしくは位相または搬送波信号を供給する回路の振幅もしくは位相反応の影響を受けない位相正確なGMRセンサ抵抗値および磁気抵抗値を求める。
【0111】
図22は、本開示の一実施形態1550に係る信号処理ユニットの処理のフローチャートである。
図22に示すように、プロセスはステップ2210で開始し、信号処理制御ユニット1530の求解およびI/O制御部1750から制御信号を受信する。ステップ2215において、対象の全ての周波数における同相正弦波基準信号および直交位相正弦波基準信号(in−phase and quadrature sinusoid reference signals)が、制御信号に基づいて信号処理ユニット1550において生成される。次に、ステップ2220において、基準抵抗器測定信号を信号準備ユニット1540から受信する。ステップ2225において、基準抵抗測定信号に、ステップ2215で生成された同相正弦波基準信号および直交位相正弦波基準信号を乗算し、対象の周波数全てにおける同相積および直交位相積(in−phase and quadrature products)を生成する。ステップ2230において、ステップ2225で得られた同相積および直交積を、積分タイミング制御の下に累積する。ステップ2235〜2250において、GMRセンサの受信測定信号に対して同様の処理が実行される。ステップ2250において、基準抵抗器測定信号およびGMRセンサ測定信号両方の同相積および直交位相積から、閉形式で検査結果を求める。最後に、ステップ2255において、求めた検査結果を、信号処理制御ユニット1530の求解およびI/O制御部1750へと送信する。
【0112】
ステップ2220〜2230および2235〜2245の順序は変更可能である。すなわち、基準抵抗測定信号の累積は、GMRセンサ測定信号の累積の前でも後に行ってもよい。
【0113】
図8Bを参照して上述したように、GMRセンサの電気抵抗は磁場の影響下で変化する。GMRセンサはリアルタイムで監視でき、分析の間に超常磁性ナノ粒子はGMRセンサに結合する。磁場の局所的な変化はセンサ抵抗の変化として読み取ることができ、適切に構成された測定回路における電圧の変化として観察される。
【0114】
ただし、例えば、ホイートストンブリッジ回路やアンダーソンループ回路等の従来の差動測定回路を使用した場合、電圧プローブの電圧に基づいて、増加する磁気抵抗と減少する磁気抵抗とを直接識別することはできない。使用可能な測定回路トポロジで得られた電圧測定値の一例を
図23にプロットした。プロットから分かるように、位相感度がないため、センサインピーダンス(Zs)と基準インピーダンス(Zr)との間の正しい関係を導き出すのは困難である。電圧増加から分かることは、測定回路内の構成要素が互いに対して変化しているということだけである。その結果、AC測定でこのような従来の回路を使用する場合、この問題に対処するのに、最適とは言えない方法を取る必要がある。
【0115】
この最適とは言えない方法の一つとして、電圧プローブにおける電圧信号が決してゼロ交差しないように、測定回路をバランスがとれた状態からバイアスする方法がある。しかしながらこの方法は、測定回路の信号対雑音比に悪影響を及ぼす。更に、バイアスがあっても、推論または他の間接的な知見を用いて、増加する磁気抵抗なのかまたは減少する磁気抵抗なのかを推定する必要がある。
【0116】
バランスの取れた測定回路を採用して良好な信号対雑音比レベルを達成すると、テレメトリに大きなアーチファクトが現れる:磁気抵抗はゼロにまで減少した後、増加するように見える(
図23に示すようなV字形状は常に正であるように見える)が、実際には、減少のみまたは増加のみしている可能性もある。
【0117】
本開示では、正確な測定値を導出するために、GMRに基づく検出のコンテキストに位相感度を導入する。本明細書で開示される信号処理技術は、従来技術の問題を解決し、完全にバランスのとれたGMR測定回路(例えば、バランスの取れたホイートストンブリッジ)で測定を可能にする能力を有する。更に、この方法は、利用可能な任意の回路トポロジに適用可能な程度に十分一般的であり、GMRセンサにおける位相抵抗測定および磁気抵抗の計算を達成する。ここに開示される方法の一般性により、エンドユーザに同一の出力信号を送り続ける一方で、異なる回路トポロジの直接比較を可能にするという、更なる競争上の利点を提供できる。
【0118】
図24Aは、この技術を実施するための簡単な回路トポロジを示している。
図24Bおよび
図24Cは、他の利用可能な回路トポロジを示している。アンダーソンループとAC電流源に基づく回路トポロジが
図24Bに例示され、ホイートストンブリッジとAC電圧源に基づく回路トポロジが
図24Cに示されている。回路トポロジは、搬送波源2410または2415、第1制御回路Ckt1 2420、第2制御回路Ckt2 2430、電圧プローブ2440、少なくとも1つのGMRセンサ2450、少なくとも1つの高精度基準抵抗器2460、および、磁場生成器2470を含む。
【0119】
図24Aに示されるように、搬送波源2410は、周波数ω
1のAC搬送波信号を印加するためのバッファ電流源を提供する(異なる測定回路構成の場合、搬送波源2415はバッファ電圧源を提供するように動作してもよい)。
図24Aにおいて、第1の制御回路Ckt1 2420は、搬送波源2410からのAC搬送波信号をGMRセンサ2450に印加するべく、GMRセンサ2450と既知の特性を有する同様に配置された高精度基準抵抗器2460との間の切り替えを可能にする。Ckt1内に検出径路を構築し基準径路を複製することにより、本方法はバランスのとれた寄生素子(parasitic element)を実現する。このような構造では、寄生素子は等価な位置に現れる。したがって、電圧プローブにおける差動電圧は、差動電圧プローブにおけるコモンモード除去に起因して生じる、測定されるGMRセンサと基準抵抗との差から主に発生している。他の実施形態では、これに加えてまたは代えて、寄生素子の効果を打ち消すべく、測定信号から分解するために、寄生要素を明示的にモデル化する。
【0120】
第2の制御回路Ckt2 2430および磁場発生器2470は、周波数ω
2の正弦磁場をGMRセンサ2450に印加するのに使用される。印加された磁場はGMRセンサの抵抗を変調するが、高精度の基準抵抗2460には影響しない。
【0121】
差動電圧プローブ2440は、GMRセンサ2450または高精度基準抵抗器2460のインピーダンスを検出するべく接続されている。電圧プローブ2440は、十分に高いインピーダンスを有するように設計されており、したがって、GMRセンサおよび基準抵抗器の測定値が乱されることはない。
【0122】
印加された正弦波磁場がGMRセンサの抵抗を変調するため、周波数ω
2のこの正弦波磁場を印加し、周波数ω
1の搬送波信号を印加すると、GMRセンサ2450に関連する電圧の振幅が変調され、側波帯電圧が上昇する。側波帯電圧の最初のセットは、周波数ω
1−ω
2およびω
1+ω
2で発生する。
【0123】
これらの側波帯電圧は、正弦波磁場の印加によって高精度基準抵抗器2460に誘導されない。したがって、観測のために高精度基準抵抗器2460を測定回路へと切り替える場合には、基準抵抗器2460の両端にこれらの側波帯電圧を手動で誘起する必要がある。これは、搬送波の振幅に等しい振幅を持つ側波帯信号を搬送波に混合することで実行可能である。言い換えると、側波帯信号は、バッファされた電圧源または電流源のバッファの上流において搬送波信号に加えることによって誘起できる。より具体的には、側波帯信号は、搬送波と同じ振幅で搬送波信号に加えられる。
【0124】
図24Aに示すトポロジの場合の測定プロセスは次の通りである。搬送信号と正弦波磁場の両方が印加されている間に、第1の制御回路Ckt1 2420を介して、GMRセンサ2450が測定回路へと切り替えられる。電圧プローブ2440を使用して、ノイズ要件に基づいて選択された期間t
1の間、電圧の時系列を記録する。
【0125】
同様に、高精度基準抵抗器2460が測定回路へと切り替えられる。今度は、周波数ω
1の搬送波信号と、搬送波に等しい振幅を持つ周波数ω
1−ω
2および周波数ω
1+ω
2の混合信号とが印加される。電圧プローブ2440を再び使用して、ノイズ要件に基づいて選択される期間t
2の間、電圧の時系列を記録する。
【0126】
次に、各時系列のサンプルに対して、周波数ω
1、ω
1−ω
2およびω
1+ω
2の同相正弦波時系列からのサンプルと、周波数ω
1、ω
1−ω
2およびω
1+ω
2の90度オフセットの直交位相正弦波からのサンプルとを乗算する。GMRセンサ2450および高精度基準抵抗2460について、各周波数における同相積および直交位相積を積分器で累積することにより、GMRセンサ2450および高精度基準抵抗器2460の観測中に、周波数ω
1、ω
1−ω
2およびω
1+ω
2におけるそれぞれのプローブ電圧に比例する6つの複素数が生成される。
【0127】
次に、GMRセンサの累積値をt
1で除算し、基準抵抗器の累積値をt
2で除算する。同相の累積値を実数成分とし、直交位相の累積値を虚数成分として指定することにより、GMRセンサ2450に関する複素電圧比例項v
sが構成され、v
s(ω
1)、v
s(ω
1−ω
2)およびv
s(ω
1+ω
2)を得る。同様に、高精度基準抵抗2460に関連する複素電圧比例項v
tx、すなわち、v
tx(ω
1)、v
tx(ω
1−ω
2)およびv
tx(ω
1+ω
2)が取得される。次に、6つの複素数項v
s(ω
1)、v
s(ω
1−ω
2)、v
s(ω
1+ω
2)、v
tx(ω
1)、v
tx(ω
1−ω
2)およびv
tx(ω
1+ω
2)から、GMRセンサのゼロ磁場抵抗(R0)を解析的に解き、サイドトーンにおけるテイラー級数展開からdRを導く。dR/R0から磁気抵抗比MRを得る。これは、GMRセンサの正弦波磁場の抵抗変化を、ゼロ磁場が印加されたセンサ抵抗値で除算した値である。
【0128】
上記では、期間t
1と期間t
2の両方がノイズ要件を満たすように選択される。ω
1、ω
2、ω
1−ω
2およびω
1−ω
2における信号に対する2ラジアンを法としない蓄積時間の割合が、総蓄積時間と比較して小さくなるようにt
1を選択することにより、有限のt
1から生じるシステムの時間変動によるノイズを最小化できる。ランダムノイズは、t
1を大きくすることにより低減できる。t
1と同様に、期間t
2が選択される。
【0129】
開示される技術では、バランスのとれた状態から離脱するようにバイアスをかける必要なしに、最適なゲイン調整および改善された信号対雑音比レベルを可能とする。また、抵抗成分と反応成分とを分解でき、更に寄生要素を測定して除去できる。そして、特別な処理を行わずに、大きな位相オフセットとして現れるコンバータグループの遅延等、対処が困難なアーチファクトを打ち消すことができる。更に、検査中のGMRセンサの上流および下流の伝達関数を打ち消すと、構成要素の許容誤差に対してハードウェアの独立性が高いため、明白な研究開発の利点が得られる。Ckt1およびCkt2以外の要素によって測定が乱されることはないため、次の3つの明確な利点がある。(1)設計者は、出力テレメトリを変更することなく、Ckt1およびCkt2の外側の回路要素を自由に変更できる。(2)Ckt1およびCkt2の外側の要素に対して厳しい許容誤差を要求しなくても、高精度の測定値を取得できる。(3)高精度測定では、Ckt1以外の要素の明示的なモデリングは不要である。
【0130】
当業者は、
図24A〜
図24Cは、適用可能な回路トポロジの限られた例にすぎないことは理解できる。GMRベースの被検物質検出システムは、これらの回路トポロジおよびその他の利用可能な回路トポロジのいずれかを中心に構成することができる。R0、dRおよびMRテレメトリの出力は、これらの回路のいずれかで直接比較してもよい。これらの回路の性能は、システム仕様の観点から評価できる。システム開発中に評価を行うことにより、回路トポロジの変更につながる場合がある。電圧の代わりに磁気抵抗の観点から信号を出力することにより、エンドユーザのワークフローを中断することなく回路トポロジを変更できる。
【0131】
このようなシステムの性能および構造を詳細に例示するために、GMRに基づくの被検物質の検出システムの例を以下に示す。このシステムの例は、
図24Cに示される再構成可能なオンチップ・ホイートストンブリッジトポロジにおける振幅変調された磁気抵抗信号の位相敏感AC測定について説明する。
図24Cに示すホイートストンブリッジは、GMRセンサチップ280内のGMRセンサ対と、カートリッジアセンブリ200もしくはカートリッジリーダ310またはその両方に配置された基準抵抗器対RTX1a〜RTX2bとを備える。黒色で示されているGMRセンサGMR1a、GMR2bは分析のために機能し、GMRセンサは白色で示されているGMR1b、GMR2aはブロックされている。
【0132】
前述のように、GMRセンサ自体は、全磁場のサイズと方向に依存する抵抗を持つ電気抵抗素子である。全磁場には、磁場発生器(GMRセンサチップの外側に設けられるまたはGMRセンサチップと一体に設けられる)から印加される磁場と、センサ近傍の磁性ナノ粒子からの外乱とが含まれる。
【0133】
したがって、システムの基本原理は、機能化された磁性ナノ粒子の適用前、適用中、適用後のGMRセンサ素子の抵抗と磁気抵抗を監視することである。分析の構成要素は、センサ表面に結合した磁性ナノ粒子の数の増加または減少を引き起こす可能性がある。この増加または減少は、基準素子と比較して観察することができる。基準素子は、陰性対照群または基準抵抗器を備えた基準センサであってもよい。この基準素子のグループは、動作しているセンサの変化を観察するためのベースラインとして機能してもよい。
【0134】
例示のシステムは、電気的減算を利用して、陰性対照(または基準抵抗器)を備えた基準センサと比較して、動作しているGMRセンサの抵抗および磁気抵抗の変化を観察する。正弦波電圧を印加することにより機能化された磁性ナノ粒子を適用すると同時に、この正弦波電圧または正弦波電流が存在する場合の基準素子と比較したセンサの振る舞いを観察した後に、動作しているGMRセンサの抵抗および磁気抵抗の変化を観察する。この例では、印加される信号は電圧であるため、センサおよび基準素子を流れる電流を直接差し引くことができる。動作しているGMRセンサと基準素子とを分圧器に配置し、中間点の電圧を減算することにより、正弦波電圧が印加された状態での電気的減算を行うことができる。他の例では、印加される正弦波が電流の場合、動作しているGMRセンサと基準素子との間の電圧降下を差し引くことにより、電気的減算を実行できる。
【0135】
動作しているセンサと基準素子との減算を観測する各回の間には、システムは、信号プロセッサ1330内のコードが知る値を持つ高精度基準抵抗器における信号減算を観測する。信号プロセッサ1330は、各センサの算術除算、基準素子の前(または後)に位置する基準抵抗器による当該基準素子の観測値および基準抵抗器の観測値を使用して、正弦波電圧または電流信号を供給するセンサ上流の全ての回路の伝達関数を打ち消す、および、センサ下流の信号を観測するのに使用されている全ての回路の伝達関数を打ち消す。これにより、位相敏感測定が可能になり、伝達関数が打ち消された回路の変動にも影響されない。この変動に対する耐性は、1つのユニットにおける時間経過の場合、一のユニットに対する他のユニットに対する場合、および、一のシステム設計を次のユニット設計へと更新する場合において有効である。
【0136】
印加される磁界を供給する回路の振幅応答は、ユニット毎の較正による信号プロセッサ1330の除算ベースの伝達関数の打消しとは別に扱われて、印加される磁界の強度が意図した通りになることを確かにする。印加される磁界がDCではなく正弦波の場合、印加される正弦波電流搬送波または正弦波電圧搬送波の振幅変調が作成される。この振幅変調があると、磁気抵抗は上側側波帯と下側側波帯に現れる。印加される磁界を供給する回路の位相応答は側波帯に現れる。下側側波帯は印加電界の位相の負の分だけ回転し、上側側波帯は印加電界の位相の正の分だけ回転する。印加磁界からのこの回転は、側波帯の位相をその平均まで回転させることにより、信号プロセッサシステム1330のコードによって打ち消される。したがって、磁界を印加する回路の伝達関数は完全にされ、印加された磁界がACであっても、位相敏感であり位相が正確な磁気抵抗測定が可能になる。重要なのは、位相敏感で位相正確な測定により、磁気抵抗が減少するシナリオと増加するシナリオを区別できるということである。位相敏感な測定でなければ、これを識別することは困難である。
【0137】
高精度基準抵抗器2460は、カートリッジリーダ310またはカートリッジアセンブリ200のいずれかに配置することができる。どちらの場所であっても、論理的な機能と接続は同じであるが、物理的な配置とコストパフォーマンスとのトレードオフがある。カートリッジアセンブリ200のGMRセンサに近接して高精度基準抵抗器2460を配置することにより、一般的なアーチファクトを更に打ち消して理論的に性能を改善することができる。またこれにより、カートリッジ毎に、GMRセンサに合わせて基準抵抗器をマッチングさせることもできる。しかしながら、カートリッジアセンブリ200のコストを抑えたい場合であり、カートリッジアセンブリ200が信号準備ユニット1540と比較して大量生産品である場合、カートリッジリーダ310に高精度の基準抵抗器2460を配置することにはコスト上の利点がある。
【0138】
同様に、マルチプレクサは、カートリッジアセンブリ200、カートリッジリーダ310またはその両方に配置することができる。システムをコストおよびパフォーマンスを最適化するようにマルチプレクサの配置を選択する必要があるが、設計はカートリッジアセンブリ200とカートリッジリーダ310との間の管理可能な接続数によって制限されると同時に、システム内のアドレス可能なセンサの望ましい数をサポートする必要がある。マルチプレクサがカートリッジアセンブリ200とカートリッジリーダ310との両方に配置され、複数のGMRセンサに対応するため一緒に使用される設計では、多くの信号がカートリッジアセンブリ200からカートリッジリーダ上のマルチプレクサに送信される。カートリッジアセンブリ上のマルチプレクサの2番目の層により、バンクを切り替えることができる。これにより、アドレス可能なセンサの数を増やすことができる。
【0139】
GMRセンサおよび基準抵抗器の観測は、アナログ−デジタルコンバータ1910を使用して離散時間でセンサを流れる電流または電圧を測定することにより行われる。印加される正弦波電圧または正弦波電流を生成し印加される磁場を生成するD/Aコンバータ1910は、A/Dコンバータ1980と同じソースを使用してクロック同期される。信号プロセッサ1330はコードにロックイン増幅器を実装して、対象の全ての周波数において、A/Dコンバータ1980で観測された信号と、内部で生成された同相正弦波および直交位相(90度回転)正弦波との相関を測定する。A/Dコンバータ1980からの信号は、内部の同相正弦波および直交位相正弦波で乗算されて、対象の周波数それぞれにおける各サンプルの同相積および直交位相積が生成される。これらの積は、各観測期間中に蓄積される。
【0140】
無限の観測期間を持つ時不変系では、所与の回路およびセンサ条件に対して、同相積および直交積の累積値の比率が固定される。信号プロセッサ1330は、対象の全ての信号が各観測の開始時と終了時に同じ位相角になるように、磁場発生器の周波数と観測期間を自動的に選択する。これにより、システムは非常に短い観測期間であっても、時不変系の動作を模倣できる。また、信号プロセッサ1330は、一の観測から次の観測まで一貫した全ての磁場発生器位相角を用いてセンサ観測を開始する。これにより、印加される正弦波電流または正弦波電圧を生成する回路と印加される磁界を生成する回路との間の位相応答および群遅延の違いによって生じる可能性のある変動を取り除くことができる。
【0141】
GMRセンサによる測定は次のように実行される。信号プロセッサ1330は、カートリッジアセンブリ200もしくはカートリッジリーダ310またはその両方に配置されたマルチプレクサ1950に対して適切なコマンドを送信することにより、基準抵抗器構造を観察するための回路を構成する。D/Aコンバータ1910は、印加される正弦波電圧または正弦波電流および印加される磁界を生成するために使用される。マルチプレクサの切り替えから安定するまで、最小限の待機時間が観測される。この最小限の待機時間の後、信号プロセッサ1330は、A/Dコンバータ1980で観測された基準抵抗器信号から導出された同相積および直交積の累積を開始する。全ての内部(および外部)正弦波発生器2110について、整数であるサイクル数が経過した後、積分器2130をフリーズさせて数値を取得する。経過したサイクルの数は、観測頻度によって異なるが、整数でなければならない。積分器2130の値を最初に取得した後、信号プロセッサ1330がマルチプレクサ1950に命令してGMRセンサの観察のための回路を構成する間、デジタルアナログ生成器1910からの信号生成が継続される。マルチプレクサの切り替えから安定するまで、最小限の待機時間が観測される。この最小待機時間の後、信号プロセッサ1330は、全ての信号生成器が所定の位相角に到達するのを待つ。所定の位相角に到達した後、信号プロセッサ1330は、A/Dコンバータ1980で観測されたセンサ信号から導出される同相積および直交位相積の累積を開始する。全ての内部(および外部)正弦波発生器2110について、整数であるサイクル数が経過した後、積分器2130を再びフリーズさせて数値を取得する。信号プロセッサ1330は、取得されたセンサ累積値を取得した基準抵抗器の累積値で除算し、この商と基準抵抗値の事前知識とを用いて、位相正確なセンサ抵抗値および磁気抵抗値を計算する。これらセンサ抵抗値および磁気抵抗値は、印加された正弦波電流もしくは正弦波電圧の周波数、振幅もしくは位相、または、正弦波電流もしくは正弦波電圧を供給する回路の振幅もしくは位相応答の影響を受けない。センサの抵抗値および磁気抵抗値はまた、印加される磁場の周波数や位相角の影響を受けず、印加される磁場を供給する回路の位相応答の影響も受けない。したがって、これらの要素のいずれかを自由に変更して、抵抗や磁気抵抗のテレメトリを乱すことなく、例えば、最適な信号対雑音比を実現できる。
【0142】
上述したように、GMRセンサは、全磁場に比例して変化する抵抗としてモデル化される。この抵抗値は、
R=Rn(1+kH)で表される。
ここで、Rnはゼロ磁場が印加されたGMRセンサの公称抵抗、Hは全磁場、kは抵抗変化を全磁場に関連付けるGMRセンサの特性、Rは磁場によって誘導される抵抗の変化も含んだ全抵抗値である。
【0143】
無次元量である磁気抵抗(MR)は、GMRセンサの抵抗の変化の尺度として定義される。これは、磁場が存在する場合の全抵抗を、磁場がゼロの公称抵抗で割ったものとして表される。したがって、
MR=Rn(1+kH)/Rn=1+kH、となる。
【0144】
分析用に機能化されたGMRセンサでは、磁性ナノ粒子がセンサ表面に結合するため、全磁場が変化し、その結果、磁気抵抗が変化する。MRのこの変化、デルタ(MR)が、最終的に観測されるものである。これは、機能化されたセンサに近接した磁性ナノ粒子の濃度に直接関係する量であり、したがって、その存在を推測し、その濃度を測定するのに利用できる。
【0145】
図24Cに示すように、フルブリッジトポロジ用に分圧センサのペアが設けられている。各ペアは、分析用に機能化された1つのセンサと1つのブロックされたセンサとで構成されている。これらの分圧器のいずれかに電圧を印加し、機能化されたおよびブロックされたセンサの動作がその他の点では同一であると仮定すると、これら分圧器の中間点において、磁性ナノ粒子が機能化されたセンサに付着することによって生じるデルタ(MR)のみによって変化する電圧を観察できる。センサの動作の他の側面が時間軸においては不安定になる可能性があるが、同一のセンサを分圧器のペアに配置することによって、これらの時間的変化(例えば、熱変化)によって生じるアーチファクトを打ち消すメカニズムが提供される。
【0146】
図24Cから分かるように、分圧器センサのペアは、2つの配置のうちのいずれかを有している。機能化されたセンサ(
図24Cの黒いGMR1a、GMR2b)は、電圧源またはグランドに接続されてもよい。ブロックされたセンサ(
図24Cの白いGMR1b、GMR2a)は隣接して配置されている。トポロジには少なくとも1つのマルチプレクサが示されているが、実際には、複数のノードを同時にルーティングできるように、自由に構成可能な複数のスイッチのバンクを使用してもよい。ドレイン(たとえば、ドレインAおよびB)を備えた自由に構成可能なマルチチャネルスイッチを使用することにより、分圧器の中間点を計装アンプの反転入力または非反転入力に接続することができる。
【0147】
例えば、一の回路配置における1つ以上の分圧器をドレインAに接続し、他の回路配置における1つ以上の分圧器をドレインBに接続することにより、有意なデルタ(MR)測定を実行できる。これに代えて、同様な配置の分圧器の中点をドレインAまたはドレインBの一方に接続し、高精度の基準抵抗分圧器ペア(
図24Cでは基準抵抗はRTX1a、RTX1b、RTX2a、RTX2bに指定されている)の中間点を他方のドレインに接続してもよい。これに代えて、3番目の配置としては、2つの高精度基準抵抗分圧器ペアの中間点をそれぞれ各ドレインに接続してもよい。この3番目の配置は、ブリッジの外側の回路の特性を測定する手段を提供できる。
【0148】
一例として、
図24Cに示すトポロジの測定は次のように行われる。磁性ナノ粒子の導入前に、センサ分圧器の中間点が一のドレインと接続され高精度抵抗器分圧器の中間点が他方のドレインと接続されたブリッジ構成において、全てのセンサ分圧器は個別に測定される。センサ分圧器それぞれについて、抵抗バランスおよび磁気抵抗バランスを個別に確認できる。規格外となった分圧器については、ブリッジが静的に構成されている設計ではブリッジ全体の検査が必要なのに対して、本構成では個々の分圧器を調べることができる。
【0149】
分析測定自体については、幾つかの実施形態では、任意の数の分圧器ペアの中間点をドレインに同時に接続することができるが、これは、分圧器ペアの機能化センサが同じターゲットに対して機能化され、同様の配置の分圧器の中間点が同じドレインに接続され他の配置の分圧器の中間点が他のドレインに接続される限りにおいてである。他の実施形態では、差動電圧プローブを0ボルトからバイアスする必要がないため、配置1(または2)における1以上の分圧器センサペアの中間点を電圧プローブの一の入力に接続し、配置1(または2)における1以上の分圧器センサペアの中間点を電圧プローブの他の入力に接続してもよい。利点は二つあり、一つ目は多くの分圧器を接続することで有効なセンサ面積を増やすことができるということ、2つ目は機能化されたセンサが機能化されていないセンサに対して変化するまで、差動プローブに現れる電圧が0に見えることである。言い換えれば、電圧はこの差によってのみ発生する。つまり、最適なゲイン調整とSNRの改善を意味する。
【0150】
このようにノイズと変動係数を減らすことができることから、多くの分圧器を同時に接続することは有用である。同時に接続された複数の分圧器については、それらのセンサが単一ユニットとして機能することから自由層の体積を結合することができ、磁気抵抗センサのノイズが自由層の体積の平方根を超えて減少する。より大きな検知面積で磁性ナノ粒子のランダム分布をより良く測定できることから、変動係数が減少する(そして、磁気抵抗センサは、自由層に対するナノ粒子の位置に基づいてナノ粒子を異なる方法で検出することが知られている)。
【0151】
一例では、ドレインBに接続されているのと同じ数の分圧器のペアがドレインAに接続されていることを確かにするために、更なる改良が行われる。同数の分圧器を接続すると、計装アンプの反転入力と非反転入力にバランスの取れたインピーダンスが与えられ、計装アンプのコモンモード除去比が最大になる。ただし、この例で説明する手順とアルゴリズムは、異なるペア数の分圧器が2つのドレインに接続されているような他の例でも同様に有効である。
【0152】
センサの磁気抵抗を観察するために、構成されたブリッジにAC電圧が接続されると同時にAC磁場が印加される。AC磁場を印加すると、磁気抵抗効果によりセンサの抵抗が変調される。分析用に機能化されたセンサへの磁性ナノ粒子の付着により、センサ分圧器はデルタ(MR)に予測可能な関連した形でアンバランスになる。これにより、振幅変調された電圧が、デルタ(MR)に関連する上側側波帯側波帯および下側側波帯成分と共に計装アンプに現れる。
【0153】
A/Dコンバータ1980は、計装アンプ1970の出力に接続されている。A/Dコンバータ1980の出力は、信号処理ユニット1550によって収集される。信号処理ユニット1550の内部では、ブリッジに印加される搬送波電圧の周波数および搬送波の振幅変調から生じる側波帯電圧の周波数で、同相正弦波および直交位相(90度回転)正弦波が生成される。内部同相信号および内部直交位相信号とA/Dコンバータ1980で観測される信号との相関は、3つの周波数全てにおいて整数のサイクル数が経過するまでの時間にわたって、内部生成信号とA/Dコンバータ1980の出力で観測されるサンプルとの積の累積平均を評価することにより測定される。各周波数での同相および直交位相相関は各周波数で観測される複素電圧に対応し、ブリッジの外側の回路およびロジックの伝達関数との乗算により正規化される。
【0154】
センサブリッジの観測の各回の直前または直後に、高精度基準抵抗器ブリッジの観測が実行される。基準抵抗器ブリッジにゼロ以外の電圧を生成するには、1つまたは複数の基準抵抗器1955を他の抵抗器と一致させないようにする必要がある。ここで示した算術演算では、一の抵抗器の値が他の抵抗器の値と一致せず、これら3つの他の抵抗器が同じ値を有してもよい。
【0155】
基準抵抗器ブリッジは磁場の影響を受けないため、振幅変調された側波帯電圧は当該ブリッジに現れない。代わりに、搬送波周波数および2つの側波帯周波数において電圧が生成されて足し合わされたものが、基準抵抗器ブリッジに直接一緒に印加される。センサブリッジの観測と同様に、上記の3つの周波数における複素電圧が、内部で生成された同相正弦波と直交位相正弦波の乗算によって測定される。ここで3つの周波数全てにおいて整数値であるサイクル数が経過した期間にわたって、平均相関も累積される。対象の3つの周波数において基準抵抗器ブリッジで観測される複素電圧は、センサ電圧に現れるのと同じ伝達関数で乗算することにより正規化される。
【0156】
センサブリッジで観測された3つの電圧と基準抵抗器ブリッジで同じ周波数で観測された3つの電圧との計6つの電圧から、デルタ(MR)を求めるために、磁気抵抗のモデルR=Rn(1+kH)は1次テイラー近似に分解される。近似した時、定数項は搬送波周波数で観測されたセンサブリッジ電圧の関係を表し、Hに比例する2番目の項は、2つの側波帯で観測されたセンサブリッジ電圧とRn、kおよびHの全てとの関係を表している。
【0157】
基準抵抗器ブリッジで観察される電圧によって除算することにより、以下のように、下側側波帯と上側側波帯に現れるデルタ(MR)成分の位相敏感解を直接導くことができる。
デルタ(MR、下側)=(4*(RTX’−RTX)*(RTX+RTX’)*v
s(
下側)*v
tx(搬送波)*v
tx(搬送波))/((RTX’−RTX)*(RTX’−R
TX)*v
s(搬送波)*v
s(搬送波)*v
tx(下側)−4*(RTX+RTX’)*
(RTX+RTX’)*v
tx(下側)*v
tx(搬送波)*v
tx(搬送波))
デルタ(MR、上側)=(4*(RTX’−RTX)*(RTX+RTX’)*v
s(
上側)*v
tx(搬送波)*v
tx(搬送波))/((RTX’−RTX)*(RTX’−R
TX)*v
s(搬送波)*v
s(搬送波)*v
tx(上側)−4*(RTX+RTX’)*
(RTX+RTX’)*v
tx(上側)*v
tx(搬送波)*v
tx(搬送波))
上記の方程式における、変数は次のように定義される。
・デルタ(MR、下側):複素数。下側側波帯電圧から観測されるデルタMRの成分
・デルタ(MR、上側):複素数。上側側波帯電圧から観測されたデルタMRの成分
・RTX:基準抵抗器ブリッジの一致している3つの抵抗器の値
・RTX’:基準抵抗器ブリッジの一致していない4番目の抵抗器の値
・v
s(搬送波):センサブリッジで観測される搬送波周波数における複素電圧
・v
s(下側):センサブリッジで観測される下側側波帯周波数における複素電圧
・v
s(上側):センサブリッジで観測される上側波帯周波数の複素電圧
・v
tx(搬送波):基準抵抗ブリッジで観測される搬送波周波数の複素電圧
・v
tx(下側):基準抵抗器ブリッジで観測される下側側波帯周波数の複素電圧
・v
tx(上側):基準抵抗器ブリッジで観測される上側側波帯周波数での複素電圧
【0158】
基準抵抗器の分圧により、センサブリッジ外部の回路の伝達関数は大幅に打ち消される。デルタ(MR)の位相敏感で位相正確な測定値を取得するためのステップの残りの一つは、印加されているAC磁場の位相角をキャンセルすることである。これにより、デルタ(MR、下側)とデルタ(MR、上側)の両方が一つは負の方向に、もう一方は正の方向に回転される。MRは抵抗に単純に依存することが知られており、様々な周波数で現れるデルタ(MR)の成分は全て同じであり、全て厳密に実数である。したがって、印加されている磁場の位相オフセットによるデルタ(MR)の回転は、デルタ(MR、下側)の見かけの位相角とデルタ(MR、上側)の見かけの位相角との平均を計算することによって消すことができる。これは、正のデルタ(MR)で約0度、負のデルタ(MR)で約180度になる。つまり、デルタ(MR)は実数軸に表示される。ブリッジの両側に寄生要素をバランスよく配置することにより、デルタ(MR)の見かけ上の実数軸からの偏差を最小限に抑えることができる。このようなバランスの取れた配置(例えば、ブリッジの両側の構成に単一のマルチチャネルスイッチを使用すること)により、実数軸からのデルタ(MR)の見かけの偏差を、多くの場合、システムのノイズフロアまで小さくすることができる。
【0159】
デルタ(MR)の大きさは、単純にデルタ(MR、下側)とデルタ(MR、上側)の大きさの合計として計算できる。次に、計算されたデルタ(MR)の実数成分を使用して、磁気抵抗の位相敏感で位相正確な(つまり、実数の)概念が、一つの無次元量で実現できる。この無次元量は、負または正であり、擾乱なしでゼロを自由に横切る可能性がある。このデルタ(MR)は、センサ自体の非MR変動と同様に、外部回路において生じる可能性のある変動の大きな集合体の影響を受けない。
【0160】
従来技術によるGMR検出システムでは、位相を計算することなく、GMRに依存する電圧の大きさが直接使用されている。これはある程度機能するなるが、上記の本開示の設計に比べて欠点がある。対照的に、本開示には以下の利点がある。
−伝達関数の打消しがある回路の常時の実行時較正を行える。
−温度等に対する回路の経時変化に対する耐性がある。
ユニットに特に更なる労力をかけることなく、回路に関連するシステム操作の面における非常に優れたユニット間一貫性を有する。
−出力テレメトリを乱すことなく性能改善のために設計を自由に最適化することができ、研究開発を合理化できる。
−位相感度を有すること。これは、磁気抵抗が減少している場合と磁気抵抗が増加している場合とを常に識別可能であることを意味する。
【0161】
本明細書の実施形態によれば、検査試料中の標的被検物質のGMRに基づく検出に使用される信号処理システムを提供する。システムは、少なくとも一つのGMRセンサをルーティングすることによりGMRセンサ測定回路を構成し、少なくとも一つの基準抵抗器をルーティングすることにより基準抵抗器測定回路を構成する測定回路構成ユニットと、前記少なくとも一つのGMRセンサに、周波数ω
2のAC磁場を印加する磁場励起ユニットと、周波数ω
1の搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路に印加し、周波数ω
1の搬送波信号、周波数ω
1+ω
2の搬送波信号および周波数ω
1−ω
2の搬送波信号を前記基準抵抗器測定回路に印加する搬送波信号印加ユニットと、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に接続され、前記基準抵抗器測定回路から基準抵抗器測定信号を収集し、前記GMRセンサ測定回路からGMRセンサ測定信号を収集する測定信号ピックアップユニットと、前記測定信号ピックアップユニットに接続され、前記基準抵抗器測定回路からの前記基準抵抗測定信号および前記GMRセンサ測定回路からの前記GMRセンサ測定信号の両方に基づいて、前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める位相敏感解導出ユニットと、を備える。
【0162】
幾つかの実施形態において、前記位相敏感解導出ユニットは、対象の全ての周波数において同相正弦波基準信号および直交位相正弦波基準信号を生成する基準信号発生器と、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号に前記同相正弦波基準信号および前記直交位相正弦波基準信号を乗算して、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける同相積および直交位相積を生成する乗算器と、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積を累積する積分器と、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積の前記累積値から前記GMRセンサの前記抵抗変化を求めるように構成された閉形式求解器と、を備える。幾つかの実施形態において、前記対象の周波数は、ω
1、ω
1+ω
2およびω
1−ω
2である。
【0163】
幾つかの実施形態において、前記位相敏感解導出ユニットは更に、前記少なくとも一つのGMRセンサの磁気抵抗変化を求めるように構成されている。幾つかの実施形態において、前記信号処理システムは、求められた前記少なくとも一つのGMRセンサの前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の有無を判定する検出結果判定ユニットを備える。幾つかの実施形態において、前記信号処理システムは更に、求められた前記少なくとも一つのGMRセンサの前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の濃度を決定する検出結果判定ユニットを備える。
【0164】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電流を印加する搬送波電流源であり、前記基準抵抗器測定回路は、前記搬送波電流源とグランドとの間に直列に接続される基準抵抗器により構成され、前記GMRセンサ測定回路は、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に直列に接続される一つのGMRセンサ、または、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に直列に接続される互いに並列接続された複数のGMRセンサにより構成され、前記GMRセンサは前記対象の被検物質用に機能化されている、
【0165】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加する搬送波電圧源であり、前記GMRセンサ測定回路は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路であり、前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサはグランドに接続され、前記第2分圧器の前記基準素子は前記搬送波電圧源に接続される。
【0166】
ある実施形態において、前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加する搬送波電圧源であり、前記GMRセンサ測定回路は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路であり、前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第2分圧器の前記基準素子はグランドに接続される。
【0167】
幾つかの実施形態において、前記基準抵抗器測定回路は、四つの基準抵抗器で構成されるホイートストンフルブリッジ回路であり、前記四つの基準抵抗器のうちの三つの抵抗器は抵抗値が一致しており、残りの一つの基準抵抗器の抵抗値は一致しない。
【0168】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電流を印加する搬送波電流源であり、前記基準抵抗器測定回路は、二つの基準抵抗器で構成される基準抵抗分圧器を備えるアンダーソンループ回路であり、前記GMRセンサ測定回路は、一つのGMRセンサ分圧器、または、互いに並列接続された複数のGMRセンサ分圧器により構成されるアンダーソンループ回路であり、前記GMRセンサ分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成される。
【0169】
幾つかの実施形態において、前記基準素子は、検出すべき前記被検物質に対して機能化されていないGMRセンサである。
【0170】
幾つかの実施形態において、前記基準素子は基準抵抗器である。
【0171】
幾つかの実施形態において、前記測定回路構成ユニットは、少なくとも一つのマルチプレクサを備える。
【0172】
幾つかの実施形態において、前記測定回路構成ユニットは、自由に構成可能な複数のスイッチからなるバンクを備える。
【0173】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号印加ユニットが前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路と比べて低いインピーダンス出力となるように、前記搬送波信号印加ユニットと前記測定回路との間にバッファが接続される。
【0174】
幾つかの実施形態において、前記測定信号ピックアップユニットは、差動増幅器およびA/Dコンバータを備え、前記差動増幅器は、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に接続されて、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路からの前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号を差動増幅するように構成され、前記A/Dコンバータは前記差動増幅器に接続され、増幅された前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0175】
幾つかの実施形態において、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路が前記差動増幅器に比べて高いインピーダンス出力となるように、バッファが前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路と前記差動増幅器との間に接続される。
【0176】
ある実施形態によれば、検査されるサンプル中の対象の被検物質のGMRに基づく検出に使用される信号処理方法が提供される。方法は、GMRセンサ測定信号を取得する工程を備える。当該GMRセンサ測定信号取得する工程は、少なくとも一つのGMRセンサをルーティングしてGMRセンサ測定回路を構成する工程と、周波数ω
1の搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路に印加する工程と、周波数ω
2のAC磁場を前記少なくとも一つのGMRセンサに印加する工程と、前記GMRセンサ測定回路から前記GMRセンサ測定信号を収集する工程とを備える。前記信号処理方法は更に、基準抵抗器測定信号を取得する工程を備える。当該基準抵抗器測定信号を取得する工程は、前記少なくとも一つの基準抵抗器をルーティングして基準抵抗器測定回路を構成する工程と、周波数ω
1の搬送波信号、周波数ω
1+ω
2の搬送波信号および周波数ω
1−ω
2の搬送波信号を、前記基準抵抗器測定回路に印加する工程と、前記基準抵抗器測定回路から前記基準抵抗器測定信号を収集する工程とを備える。前記信号処理方法は更に、前記基準抵抗器測定回路からの前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定回路からの前記GMRセンサ測定信号の両方に基づいて、前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める工程を備える。
【0177】
幾つかの実施形態において、前記方法において、前記基準抵抗器測定信号を取得する工程は、前記GMRセンサ測定信号を取得する工程より前に実行される。
【0178】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める工程は、対象の周波数全てにおける同相正弦波基準信号および直交位相正弦波基準信号を生成する工程と、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号に前記同相正弦波基準信号および前記直交位相正弦波基準信号を乗算して、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける同相積および直交位相積を生成する工程と、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積を累積する工程と、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積の前記累積値から前記GMRセンサの前記抵抗変化を求める工程と、を含む。幾つかの実施形態において、前記対象の周波数は、ω
1、ω
1+ω
2およびω
1−ω
2である。
【0179】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める工程は、前記少なくとも一つのGMRセンサの磁気抵抗変化を求める工程を更に含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、前記少なくとも一つのGMRセンサの求められた前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の有無を判定する工程を更に備える。
【0180】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記少なくとも一つのGMRセンサの求められた前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の濃度を決定する工程を更に備える。
【0181】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電流源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電流を印加することを含み、前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、前記搬送波電流源とグランドとの間に基準抵抗器を直列に接続する工程を含み、前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に一つのGMRセンサを直列に接続する工程、または、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に互いに並列接続された複数のGMRセンサを直列に接続する工程を含む。前記GMRセンサは前記対象の被検物質用に機能化されている。
【0182】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路を構成する工程を含み、前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサはグランドに接続され、前記第2分圧器の前記基準素子は前記搬送波電圧源に接続される。
【0183】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路を構成する工程を含み、前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第2分圧器の前記基準素子はグランドに接続される。
【0184】
幾つかの実施形態において、前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、四つの基準抵抗器で構成されるホイートストンフルブリッジ回路を構成する工程を含み、前記四つの基準抵抗器のうちの三つの抵抗器は抵抗値が一致しており、残りの一つの基準抵抗器の抵抗値は一致しない。
【0185】
幾つかの実施形態において、前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、二つの基準抵抗器で構成される基準抵抗分圧器を備えるアンダーソンループ回路を構成する工程を含み、前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、一つのGMRセンサ分圧器または互いに並列接続された複数のGMRセンサ分圧器により構成されるアンダーソンループ回路を構成する工程を含み、前記GMRセンサ分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成される。
【0186】
幾つかの実施形態において、前記方法における前記基準素子は、検出すべき前記被検物質に対して機能化されていないGMRセンサである。
【0187】
幾つかの実施形態において、前記方法における前記基準素子は、基準抵抗器である。
【0188】
幾つかの実施形態において、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、少なくとも一つのマルチプレクサを構成する工程を含む。
【0189】
幾つかの実施形態において、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、自由に構成可能な複数のスイッチのバンクを構成する工程を含む。
【0190】
幾つかの実施形態において、前記測定回路GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路において測定信号を収集する工程は、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路において前記測定信号を差動増幅する工程と、増幅された前記測定信号をアナログ信号からデジタル信号へと変換する工程と、を含む。
【0191】
上記の例示的な実施形態において本開示の原理が明確にされたが、本開示の実施に使用される構造、配置、比率、要素、材料および構成要素に対して様々な変形を加えることが可能であることは当業者であれば理解できる。
【0192】
従って、そのような変形例であっても本開示の特徴は完全におよび有効に達成されるだろう。上記の好ましい具体的な実施形態は、本開示の機能的および構造的な原理を例示することを目的として説明および図示したものであり、そのような原理の範囲内において変更され得る。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる全ての変形例について包含する。
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
検査されるサンプル中の対象の被検物質のGMRに基づく検出に使用される信号処理システムであって、
少なくとも一つのGMRセンサをルーティングすることによりGMRセンサ測定回路を構成し、少なくとも一つの基準抵抗器をルーティングすることにより基準抵抗器測定回路を構成する測定回路構成ユニットと、
前記少なくとも一つのGMRセンサに、周波数ω2のAC磁場を印加する磁場励起ユニットと、
周波数ω1の搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路に印加し、周波数ω1の搬送波信号、周波数ω1+ω2の搬送波信号および周波数ω1−ω2の搬送波信号を前記基準抵抗器測定回路に印加する搬送波信号印加ユニットと、
前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に接続され、前記基準抵抗器測定回路から基準抵抗器測定信号を収集し、前記GMRセンサ測定回路からGMRセンサ測定信号を収集する測定信号ピックアップユニットと、
前記測定信号ピックアップユニットに接続され、前記基準抵抗器測定回路からの前記基準抵抗測定信号および前記GMRセンサ測定回路からの前記GMRセンサ測定信号の両方に基づいて、前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める位相敏感解導出ユニットと、を備える信号処理システム。
(項目2)
前記位相敏感解導出ユニットは、
対象の全ての周波数において同相正弦波基準信号および直交位相正弦波基準信号を生成する基準信号発生器と、
前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号に前記同相正弦波基準信号および前記直交位相正弦波基準信号を乗算して、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける同相積および直交位相積を生成する乗算器と、
前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積を累積する積分器と、
前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積の累積値から前記GMRセンサの前記抵抗変化を求める閉形式求解器と、を備える、項目1に記載の信号処理システム。
(項目3)
前記対象の周波数は、ω1、ω1+ω2およびω1−ω2である、項目2に記載の信号処理システム。
(項目4)
前記位相敏感解導出ユニットは更に、前記少なくとも一つのGMRセンサの磁気抵抗変化を求める、項目1に記載の信号処理システム。
(項目5)
前記信号処理システムは、求められた前記少なくとも一つのGMRセンサの前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の有無を判定する検出結果判定ユニットを更に備える、項目4に記載の信号処理システム。
(項目6)
前記信号処理システムは更に、求められた前記少なくとも一つのGMRセンサの前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の濃度を決定する検出結果判定ユニットを備える、項目4に記載の信号処理システム。
(項目7)
前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電流を印加する搬送波電流源であり、
前記基準抵抗器測定回路は、前記搬送波電流源とグランドとの間に直列に接続される基準抵抗器により構成され、
前記GMRセンサ測定回路は、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に直列に接続される一つのGMRセンサ、または、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に直列に接続される互いに並列接続された複数のGMRセンサにより構成され、
前記GMRセンサは前記対象の被検物質用に機能化されている、項目1に記載の信号処理システム。
(項目8)
前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加する搬送波電圧源であり、
前記GMRセンサ測定回路は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路であり、
前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、
前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、
前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、
前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサはグランドに接続され、前記第2分圧器の前記基準素子は前記搬送波電圧源に接続される、項目1に記載の信号処理システム。
(項目9)
前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加する搬送波電圧源であり、
前記GMRセンサ測定回路は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路であり、
前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、
前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、
前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、
前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第2分圧器の前記基準素子はグランドに接続される、項目1に記載の信号処理システム。
(項目10)
前記基準抵抗器測定回路は、四つの基準抵抗器で構成されるホイートストンフルブリッジ回路であり、
前記四つの基準抵抗器のうちの三つの基準抵抗器は抵抗値が一致しており、
残りの一つの基準抵抗器の抵抗値は一致しない、項目8または9に記載の信号処理システム。
(項目11)
前記搬送波信号印加ユニットは、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電流を印加する搬送波電流源であり、
前記基準抵抗器測定回路は、二つの基準抵抗器で構成される基準抵抗分圧器を備えるアンダーソンループ回路であり、
前記GMRセンサ測定回路は、一つのGMRセンサ分圧器、または、互いに並列接続された複数のGMRセンサ分圧器を備えるアンダーソンループ回路であり、
前記GMRセンサ分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成される、項目1に記載の信号処理システム。
(項目12)
前記基準素子は、検出すべき前記被検物質に対して機能化されていないGMRセンサである、項目8、9または11に記載の信号処理システム。
(項目13)
前記基準素子は基準抵抗器である、項目8、9または11に記載の信号処理システム。
(項目14)
前記測定回路構成ユニットは、少なくとも一つのマルチプレクサを備える、項目1に記載の信号処理システム。
(項目15)
前記測定回路構成ユニットは、自由に構成可能な複数のスイッチからなるバンクを備える、項目1に記載の信号処理システム。
(項目16)
前記搬送波信号印加ユニットが前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路と比べて低いインピーダンス出力となるように、前記搬送波信号印加ユニットと前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路との間にバッファが接続される、項目1に記載の信号処理システム。
(項目17)
前記測定信号ピックアップユニットは、差動増幅器およびA/Dコンバータを備え、
前記差動増幅器は、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に接続されて、前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路からの前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号を差動増幅するように構成され、
前記A/Dコンバータは前記差動増幅器に接続され、増幅された前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する、項目1に記載の信号処理システム。
(項目18)
前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路が前記差動増幅器に比べて高いインピーダンス出力となるように、バッファが前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路と前記差動増幅器との間に接続される、項目1に記載の信号処理システム。
(項目19)
検査されるサンプル中の対象の被検物質のGMRに基づく検出に使用される信号処理方法であって、
GMRセンサ測定信号を取得する工程と、
基準抵抗器測定信号を取得する工程と、
基準抵抗器測定回路からの基準抵抗器測定信号およびGMRセンサ測定回路からのGMRセンサ測定信号の両方に基づいて、少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める工程と、を備え、
前記GMRセンサ測定信号を取得する工程は、
前記少なくとも一つのGMRセンサをルーティングして前記GMRセンサ測定回路を構成する工程と、
周波数ω1の搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路に印加する工程と、
周波数ω2のAC磁場を前記少なくとも一つのGMRセンサに印加する工程と、
前記GMRセンサ測定回路から前記GMRセンサ測定信号を収集する工程と、を含み、
前記基準抵抗器測定信号を取得する工程は、
少なくとも一つの基準抵抗器をルーティングして前記基準抵抗器測定回路を構成する工程と、
周波数ω1の搬送波信号、周波数ω1+ω2の搬送波信号および周波数ω1−ω2の搬送波信号を前記基準抵抗器測定回路に印加する工程と、
前記基準抵抗器測定回路から前記基準抵抗器測定信号を収集する工程と、を含む信号処理方法。
(項目20)
前記基準抵抗器測定信号を取得する工程は、前記GMRセンサ測定信号を取得する工程より前に実行される、項目19に記載の信号処理方法。
(項目21)
前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める工程は、
対象の周波数全てにおける同相正弦波基準信号および直交位相正弦波基準信号を生成する工程と、
前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号に前記同相正弦波基準信号および前記直交位相正弦波基準信号を乗算して、前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける同相積および直交位相積を生成する工程と、
前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積を累積する工程と、
前記基準抵抗器測定信号および前記GMRセンサ測定信号のそれぞれについて、対象の周波数全てにおける前記同相積および前記直交位相積の前記累積値から前記GMRセンサの前記抵抗変化を求める工程と、を含む、項目19に記載の信号処理方法。
(項目22)
前記対象の周波数は、ω1、ω1+ω2およびω1−ω2である、項目21に記載の信号処理方法。
(項目23)
前記少なくとも一つのGMRセンサの抵抗変化を解析的に求める工程は、前記少なくとも一つのGMRセンサの磁気抵抗変化を求める工程を更に含む、項目19に記載の信号処理方法。
(項目24)
前記少なくとも一つのGMRセンサの求められた前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の有無を判定する工程を更に備える、項目23に記載の信号処理方法。
(項目25)
前記少なくとも一つのGMRセンサの求められた前記磁気抵抗変化から、検査されている前記サンプル中の前記対象の被検物質の濃度を決定する工程を更に備える、項目23に記載の信号処理方法。
(項目26)
前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電流源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電流を印加することを含み、
前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、前記搬送波電流源とグランドとの間に基準抵抗器を直列に接続する工程を含み、
前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に一つのGMRセンサを直列に接続する工程、または、前記搬送波電流源と前記グランドとの間に互いに並列接続された複数のGMRセンサを直列に接続する工程を含み、
前記GMRセンサは前記対象の被検物質用に機能化されている、項目19に記載の信号処理方法。
(項目27)
前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、
前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路を構成する工程を含み、
前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、
前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、
前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、
前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサはグランドに接続され、前記第2分圧器の前記基準素子は前記搬送波電圧源に接続される、項目19に記載の信号処理方法。
(項目28)
前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、
前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、第1ブリッジアームと第2ブリッジアームとで構成されるホイートストンフルブリッジ回路を構成する工程を含み、
前記第1ブリッジアームは、一つの第1分圧器または互いに並列接続された複数の第1分圧器を備え、
前記第1分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第2ブリッジアームは、一つの第2分圧器または互いに並列接続された複数の第2分圧器を備え、
前記第2分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成され、
前記第1分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第1分圧器の前記基準素子はグランドに接続され、
前記第2分圧器の前記機能化されたGMRセンサは前記搬送波電圧源に接続され、前記第2分圧器の前記基準素子はグランドに接続される、項目19に記載の信号処理方法。
(項目29)
前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、四つの基準抵抗器で構成されるホイートストンフルブリッジ回路を構成する工程を含み、
前記四つの基準抵抗器のうちの三つの抵抗器は抵抗値が一致しており、
残りの一つの基準抵抗器の抵抗値は一致しない、項目27または28に記載の信号処理方法。
(項目30)
前記搬送波信号を前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に印加することは、搬送波電圧源を使用して前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路に搬送波電圧を印加することを含み、
前記基準抵抗器測定回路を構成する工程は、二つの基準抵抗器で構成される基準抵抗分圧器を備えるアンダーソンループ回路を構成する工程を含み、
前記GMRセンサ測定回路を構成する工程は、一つのGMRセンサ分圧器、または、互いに並列接続された複数のGMRセンサ分圧器を備えるアンダーソンループ回路を構成する工程を含み、
前記GMRセンサ分圧器は、前記対象の被検物質用に機能化されたGMRセンサおよび基準素子により構成される、項目19に記載の信号処理方法。
(項目31)
前記基準素子は、検出すべき前記被検物質に対して機能化されていないGMRセンサである、項目27、28または30に記載の信号処理方法。
(項目32)
前記基準素子は基準抵抗器である、項目27、28または30に記載の信号処理方法。
(項目33)
前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路を構成することは、少なくとも一つのマルチプレクサを構成することを含む、項目19に記載の信号処理方法。
(項目34)
前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路を構成することは、自由に構成可能な複数のスイッチからなるバンクを構成することを含む、項目19に記載の信号処理方法。
(項目35)
前記測定回路GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路において前記GMRセンサ測定信号および前記基準抵抗器測定信号を収集する工程は、
前記GMRセンサ測定回路および前記基準抵抗器測定回路において前記GMRセンサ測定信号および前記基準抵抗器測定信号を差動増幅する工程と、
増幅された前記GMRセンサ測定信号および前記基準抵抗器測定信号をアナログ信号からデジタル信号へと変換する工程と、を含む項目19に記載の信号処理方法。