特許第6982119号(P6982119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6982119連続回転式のモーターの角位置のエラーを判断し補正する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982119
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】連続回転式のモーターの角位置のエラーを判断し補正する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/10 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   G04C3/10 Z
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-42662(P2020-42662)
(22)【出願日】2020年3月12日
(65)【公開番号】特開2020-173248(P2020-173248A)
(43)【公開日】2020年10月22日
【審査請求日】2020年3月12日
(31)【優先権主張番号】19168876.1
(32)【優先日】2019年4月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・フーヴァー
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−023783(JP,A)
【文献】 特開2011−097679(JP,A)
【文献】 特開2009−261107(JP,A)
【文献】 特開2000−245190(JP,A)
【文献】 特開平11−064545(JP,A)
【文献】 特開2013−188134(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/024963(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00−99/00
H02P 6/06,6/182,21/18,
G01D 5/00−5/252,5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(42)を備え一又は複数の相(11、12、13)を利用する連続回転式のモーターの角位置の測定におけるエラーを判断する方法(1)であって、
逆起電力の1つの値がゼロである事象(14)をそれぞれ検出するステップ(3)と、
検出された各事象に対応する時間を記憶するステップ(4)と、
前記モーターの同じ回転の間に検出された2つの事象(14)の間の複数の時間間隔を測定するステップ(5)と、
測定された時間間隔を基準時間間隔と比較してそれらの測定された時間間隔が対応する基準時間間隔を推定するステップ(6)と、及び
測定された時間間隔が期待基準時間間隔に対応しないときに角位置測定のエラーを判断するステップ(7)と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記連続回転式のモーターは、計時器用モーターである
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記測定された時間間隔と前記期待基準時間間隔の間の進み又は遅れの事象(14)の数をカウントすることによって、前記角位置測定のエラーを判断する(7)
ことを特徴とする請求項1又は2記載の方法(1)。
【請求項4】
前記時間間隔の測定において、連続して検出された2つの事象(14)の間の時間間隔を測定する
ことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の方法(1)。
【請求項5】
前記モーターの複数の回転にわたって同じ時間間隔にわたって測定して平均値を得る
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記時間間隔の測定において、前記モーターの1回転の間に検出されるすべての事象(14)の間の時間間隔を測定して時間間隔の系列を得る(5)
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法(1)。
【請求項7】
前記測定のエラーを判断するために、前記時間間隔の系列を前記モーターの基準1回転の基準時間間隔の系列と比較する(6)
ことを特徴とする請求項に記載の方法(1)。
【請求項8】
前記基準時間間隔の系列と比較した前記時間間隔の系列の進み又は遅れの事象(14)の数をカウントすることによって、前記測定のエラーを判断する(7)
ことを特徴とする請求項記載の方法(1)。
【請求項9】
前記モーターは一定速度で回転し、
当該方法は、
逆起電力の値がゼロである事象(14)をそれぞれ検出するステップと、
検出された各事象(14)に対応する時間を記憶するステップ(23)と、
前記モーターの1回転の間の連続する検出された事象(14)の間の時間間隔を測定するステップ(24)と、及び
測定された時間間隔を、前記モーターの基準回転に対する基準時間間隔として記憶するステップ(25)と
を備える前記基準時間間隔を定める一連の予備ステップを備える
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法(1)。
【請求項10】
前記一連の予備ステップは、前記モーターの複数の回転にわたって前記事象(14)を検出して前記基準回転の各基準時間間隔に対する平均値を判断するステップ(22)を備える
ことを特徴とする請求項記載の方法(1)。
【請求項11】
前記基準時間間隔を更新するように前記一連の予備ステップ(22、23、24、25)を規則的に繰り返す
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
回転子(42)を備え一又は複数の相(11、12、13)を利用する連続回転式のモーターの角位置の測定を補正する方法(30)であって、
逆起電力の値がゼロであるときの事象(14)をそれぞれ検出するステップ(31)と、
検出された事象(14)の数をカウントして前記モーターの角位置を推定するステップ(32)と、
請求項9〜11のいずれか一項に記載の前記基準時間間隔を定める前記一連の予備的ステップを実行するステップ(33)と、
異常を検出するステップ(34)と、
請求項1〜のいずれか一項に記載のエラーを判断する方法を実行することによって、前記モーターの角位置の測定におけるエラーを判断するステップ(35)と、及び
前記モーターの角位置の測定を補正するステップ(37)と
を備えることを特徴とする方法(30)。
【請求項13】
前記連続回転式のモーターは、計時器用モーターである
ことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
異常を検出する(34)とすぐに前記モーターを停止し、そして、角位置測定のエラーを判断する(35)前に前記モーターを再始動させる
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の方法(30)。
【請求項15】
事象がさらに検出されないとき又は検出された事象が期待された順序に対応する相に由来しないときに、異常を検出する(34)
ことを特徴とする請求項12又は13又は14に記載の方法(30)。
【請求項16】
回転子(42)を備え一又は複数の相(11、12、13)を利用する連続回転式のモーターのエラーを判断し角位置測定を補正す〜るシステム(40)であって、
前記モーターの相の逆起電力を監視し、逆起電力の値がゼロであるときに各相を検出するように構成している監視ユニット(41)と、及び
検出された各事象に対応する時間を記憶し、前記モーターの同じ回転の間に検出された2つの事象の間の時間間隔を複数測定し、基準時間間隔を定める一連の予備ステップを実行し、測定された時間間隔を前記モーターの基準回転における基準時間間隔と比較して、それらの測定された時間間隔がどの基準時間間隔に対応するかを推定し、そして、測定された時間間隔が期待基準時間間隔に対応しない場合に角位置測定のエラーを判断するように構成している処理ユニット(43)と
を備えることを特徴とするシステム(40)。
【請求項17】
前記連続回転式のモーターは、計時器用モーターである
ことを特徴とする請求項16記載のシステム(40)。
【請求項18】
前記角位置の測定を補正する補正ユニットを備え、この補正ユニットは、検出された事象(14)の数をカウントし、前記モーターの角位置を推定して、これによって、異常を検出し、前記モーターの前記角位置の測定を補正するように構成している
ことを特徴とする請求項16又は17記載のシステム(40)。
【請求項19】
一又は複数の相(11、12、13)を利用する連続回転式のモーターと、及び請求項16又は17又は18に記載のモーターのエラーを判断し角位置測定を補正するシステム(40)とを備える計時器であって、
前記モーターは、針を用いる表示デバイスを駆動する機械式ムーブメント機械的エネルギーを供給することができる回転子(42)を備える
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーター、特に、計時器用モーター、の角位置の測定におけるエラーを判断する方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターの角位置の測定を補正する方法に関する。
【0003】
本発明は、さらに、本方法を実装するための、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターの角位置の測定のエラーを判断し補正するシステムに関する。
【0004】
本発明は、さらに、このような一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターの角位置のエラーを判断し測定を補正するシステムを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0005】
電気モーターの分野、特に、計時器用の電気モーターの分野において、モーターは、コイルを備える固定子と、磁石を備える回転子とを備える。電源によってコイル内に電流が供給され、磁石に作用することによって回転子を回転させる磁界を発生させる。例えば、このようなモーターは、表盤上の時間を示す針、例えば、携行型時計の針、を駆動する機構を動かすように、計時器において用いられる。一般的には、針、特に、断続的な運動をする秒針、の運動を制御するために、「ステッピングモーター」と呼ばれる順次的に回転するモーターが用いられる。
【0006】
しかし、連続回転式のモーター、すなわち、停止せずに回転するモーター、を用いることも考えられる。このようなモーターは、好ましくは、一定の速度で、連続的に動き、これによって、例えば、秒針が断続的な運動をせずに表盤の上を動く。
【0007】
特に、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターが存在する。この相の数は、磁石とコイルの数及び固定子と回転子に対する幾何学的構成によって定められる。各相に対して、電源は、モーターを動かすために対応する相を含む電流を発生させる。コイルの誘導は、各相に相関する逆起電力を発生させる。
【0008】
各事象におけるモーターの角位置を推定するために逆起電力を測定することが知られている。特に、モーターの回転速度は、各相の逆起電力の符号変化を検出して速度を積分して角位置を推定することによって測定される。モーターの角位置を判断するために、モーターの回転毎に所定数の事象を検出するという知識に基づいて、検出された事象の数をカウントする。したがって、360°ごとの大きい回転数の後にも、正確な累積角位置を推定することができる。しかし、モーターが誤動作を起こして、モーターの速度が遅くなったり一時的に停止したり、一時的に逆方向に回転したりすると、電圧が低くなりすぎて、逆起電力の値を検出してモーターの角位置を推定することができなくなる。このような誤動作は、例えば、腕時計の場合、突然の手首又は腕の動きの後に発生することがある。モーターが回転を再開しても、カウントは正確ではなく、その結果、正しい角位置を推定することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターの角位置の測定におけるエラーを判断する方法であって、前記モーターが回転可能な回転子を備え、この方法を実行している間に、モーターの低速化、停止又は回転方向の変化などの誤動作の後にモーターの角位置を判断することができるものを提案することによって、前述の現状の技術の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーター、特に、計時器用モーター、の角位置の測定におけるエラーを判断する方法に関する。
【0011】
この方法は、逆起電力の1つの値がゼロである事象をそれぞれ検出するステップと、検出された各事象に対応する時間を記憶するステップと、前記モーターの同じ回転の間に検出された2つの事象の間の複数の時間間隔を測定するステップと、測定された時間間隔を基準時間間隔と比較してそれらの測定された時間間隔が対応する基準時間間隔を推定するステップと、及び測定された時間間隔が期待基準時間間隔に対応しないときに角位置測定のエラーを判断するステップとを備える。
【0012】
このように、検出された事象どうしの間の複数の時間間隔を測定し、それら時間間隔をモーター特有の基準時間間隔と比較することによって、測定のエラーがあるかどうかを判断し、したがって、モーターの角位置を知ることができる。実際に、モーターの製造は非常に精密であるが、モーターを絶対的に完璧に設計することはできない。磁石とコイルの形状、それら磁石とコイルの回転子と固定子上における構成は、モーターごとにわずかに異なる。モーターにおけるこれらのわずかな不完全性によって、モーターの異なる相の逆起電力の測定が大きく影響を受ける。したがって、逆起電力はそれぞれ、他の相に対して位相がずれている正弦波形状を有し、このような逆起電力にも、上記の不完全性に起因する相差があることがある。
【0013】
これらの相差によって、逆起電力の順次的なゼロ交差の間の時間間隔に規則性がなくなる。したがって、様々な時間間隔を特徴づけ、検出された事象が対応する角位置を判断することが可能である。
【0014】
携行型時計のモーターの誤動作が発生すると、角度値の測定にエラーが発生する。本方法は、このようなモーターの誤動作が発生したときに、このエラーを判断し、モーターの実際の角位置を得ることができる。
【0015】
この方法の結果、1つの逆起電力の値がゼロであるときの事象をそれぞれ検出することだけで、モーターの角位置のエラーを判断することができる。この結果、本方法においては、信頼性があり、実装が技術的に単純であり、大きなエネルギーを必要としない。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、測定された時間間隔と期待基準時間間隔の間の進み又は遅れの事象の数をカウントすることによって、角位置測定のエラーを判断する。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、2つの連続して検出された事象の間の時間間隔を測定する。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、モーターの複数の回転にわたって同じ時間間隔を測定して、平均値を得る。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、モーターの1回転において検出されるすべての事象の間の時間間隔を測定して、時間間隔の系列を得る。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記時間間隔の系列は、モーターの1回の基準回転の基準時間間隔の系列と比較して、測定のエラーを判断する。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、基準時間間隔の系列と比べた時間間隔の系列における進み又は遅れの事象の数をカウントすることによって測定のエラーを判断する。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記モーターは一定速度で回転し、本方法は、
モーターの基準回転に対して逆起電力の値がゼロである事象をそれぞれ検出するステップと、
検出された各事象に対応する時間を記憶するステップと、
前記モーターの1回転の間の連続する検出された事象の間の時間間隔を測定するステップと、及び
測定された時間間隔を、前記モーターの基準回転に対する基準時間間隔として記憶するステップと
を備える前記基準時間間隔を定める一連の予備ステップを備える。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、モーターの複数の回転にわたって事象を検出して、基準回転の各基準時間間隔の平均値を計算する。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、基準時間間隔を更新するように前記一連の予備ステップを規則的に繰り返す。
【0025】
本発明は、さらに、回転子を備え一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターの角位置の測定を補正する方法における前記の判断方法の使用に関する。この補正する方法は、
逆起電力の値がゼロであるときの事象をそれぞれ検出するステップと、
検出された事象の数をカウントして前記モーターの角位置を推定するステップと、
前記基準時間間隔を定める前記一連の予備的ステップを実行するステップと、
異常を検出するステップと、
前記エラーを判断する方法を実行することによって、前記モーターの角位置の測定におけるエラーを判断するステップと、及び
前記モーターの角位置の測定を補正するステップと
を備える。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、異常を検出するとすぐにモーターを停止し、そして、角位置測定のエラーを判断する前にモーターを再始動させる。この異常は、モーターの故障や意図しない停止であることがある。また、この異常は、特定の動作によって制御されるモーターの停止と、その後の意図的な再起動であることもできる。この停止は、カウントのエラーを発生させることができる。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、事象がさらに検出されないとき又は検出された事象が期待された順序に対応する相に由来しないときに、異常を検出する。
【0028】
本発明は、さらに、前記の方法を実装するための、回転可能な回転子を備え一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターのエラーを判断し角位置測定を補正するシステムに関する。
【0029】
このために、本システムは、前記モーターの相の逆起電力を監視し、逆起電力の値がゼロであるときに各相を検出するように構成している監視ユニットと、及び検出された各事象に対応する時間を記憶し、前記モーターの同じ回転の間に検出された2つの事象の間の時間間隔を複数測定し、基準時間間隔を定める一連の予備ステップを実行し、測定された時間間隔を前記モーターの基準回転における基準時間間隔と比較して、それらの測定された時間間隔がどの基準時間間隔に対応するかを推定し、そして、測定された時間間隔が期待基準時間間隔に対応しない場合に角位置測定のエラーを判断するように構成している処理ユニットとを備える。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、本システムは、前記角位置の測定を補正する補正ユニットを備え、この補正ユニットは、検出された事象の数をカウントし、前記モーターの角位置を推定して、これによって、異常を検出し、前記モーターの前記角位置の測定を補正するように構成している。
【0031】
本発明は、さらに、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターを備える計時器に関する。このモーターは、計時器用ムーブメント、特に、針を用いる表示デバイスを駆動する機械式ムーブメント、に機械的エネルギーを供給するように回転可能な回転子を備える。この計時器は、モーターのエラーを判断し角位置の測定を補正するための前記のようなシステムを備える。
【0032】
図示された少なくとも1つの実施形態(これに限定されない)についての以下の説明を読むことによって、本発明に係る判断し補正する方法及びシステムの目的、利点及び特徴をより明確に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一又は複数の相を利用するモーターの角位置の測定におけるエラーを判断する方法の概略図である。
図2】三相モーターの相曲線を示しているグラフである。
図3】基準時間間隔を定める一連の予備的ステップの概略図である。
図4】モーターの1回転の間に連続して検出された事象の間に測定された時間間隔の値を示している表である。
図5】一又は複数の相を利用するモーターの角位置の測定を補正する方法の概略図である。
図6】3相の連続回転式のモーターの基準時間間隔と比較した誤動作の後に測定された時間間隔を示しているグラフである。
図7】本発明に係るエラー判断及び角位置の測定補正システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本判断方法は、一又は複数の相を利用する連続モーターの角位置の測定におけるエラーを判断するように構成している。このモーターは、例えば、腕時計のような計時器のためのモーターである。しかし、本発明を任意の連続回転式のモーターに拡張することができる。「連続回転」とは、モーターが、通常の動作モードで停止することなく、一般的には一定の回転速度で、回転することを意味している。これは、連続した回転を少ししかせず回転しているときに停止することがあるような「ステッピングモーター」とは対照的である。
【0035】
このようなモーターは、一般的には、複数のコイル、例えば、3つのコイル、を備える固定子と、複数の磁石、例えば、6つの磁石、を備える回転子とを備える。前記コイルは、固定子全体にわたって規則的に分布しており、前記磁石は、回転子全体にわたって均等に角度的に分布している。回転子は、例えば、モーターの相のそれぞれに必要な電流を供給する発電機のような電源によって固定子上又は固定子内で回転するように構成している。モーターの角位置は、本出願において固定子に対する回転子の位置として定められる。
【0036】
本発明に係るモーターは、一又は複数の相を利用して動作し、この相の数は、回転子の磁石及び固定子のコイルの数と、それらの幾何学的構成によって定められる。
【0037】
図1に示している判断方法1は、各相において逆起電力の値がゼロであるときの事象をすべて検出する第1の検出ステップ3を備える。逆起電力の値がゼロと交差するとすぐに、この事象を検出する。このようにして、モーターの相の逆起電力を、例えば、測定部品を各固定子コイルに接続することによって、監視する。各相には1つの逆起電力があり、その値は、規則的にゼロ交差する周期的正弦曲線を描く。このステップ3は、相にかかわらず行われ、検出された事象どうしは、同じ相であることも異なる相であることもある。このために、好ましくは、逆起電力の符号の変化を検出して、相がゼロを交差する事象を判断する。したがって、値の符号の変化を測定するとすぐに、逆起電力の値がゼロを交差したと推定する。
【0038】
第2の記憶ステップ4では、検出された各事象に対応する時間を記憶する。これを達成するために、モーターが動作しているときに現在時刻を測定する。1つの相がゼロを交差するとすぐに、検出された事象に対応する現在時刻の値を記憶する。このようにして、一連の検出に対して一連の時間を記憶する。
【0039】
次のステップである第3のステップは、モーターの同じ回転において検出された2つの事象の間の時間間隔を複数測定するステップ5である。好ましくは、同じ相に属するか異なる相に属するかにかかわらず、連続して検出された事象を選択する。したがって、2つ以上の相を利用するモーターの通常動作において、2つの連続する事象は2つの異なる相に由来するものである。なぜなら、モーターの相は、同じ周期を有し、互いに対して相がずれており、各相の1つの事象が順次的に検出されるからである。「複数」とは、少なくとも2つの数、好ましくは、2又は3よりも大きい数を意味する。
【0040】
好ましい実施形態において、時間間隔は、モーターの1回転において検出されるすべての事象の間で測定される。したがって、間隔の数が大きいと、エラー判断の信頼性が増す。さらに好ましくは、モーターの複数の回転にわたって各時間間隔を測定して、平均値を得る。
【0041】
次に、第4の比較ステップ6において、測定された時間間隔を基準時間間隔と比較して、それらが対応する基準時間間隔を推定する。基準時間間隔は、モーターの1基準回転における事象に対応する各モーターの特性である。言い換えれば、各モーターには、一連の特定の時間間隔があり、これは、モーターの一種の署名的特徴である。以下の説明において、基準時間間隔が所定の方法を説明する。測定された時間間隔は、必然的に基準時間間隔に非常に近いか又は同一であるため、その時間間隔が対応する基準時間間隔を推定することができる。
【0042】
すべての間隔を測定する好ましい実施形態において、一連の連続する時間間隔を一連の連続する基準時間間隔と比較することによって、本方法の信頼性が増す。実際に、基準時間間隔どうしが近い値を有する場合、モーターの角位置の連続性を観察するように時間間隔の系列を比較する方が安全である。
【0043】
最後に、第5のステップ7において、測定された時間間隔が期待基準時間間隔に対応しないときに角位置測定のエラーであると判断する。モーターの角位置を知るために、検出された事象の数がモーターの1回転に対して一定であるという知識に基づいて、一般的には、検出された事象をカウントする。角度の値は、モーターの360°の1回転の間に検出された事象の数と測定された基準時間間隔の関数として推定することができる。したがって、検出された事象iに対する角度Aiの値は、Ai=360・i/Nである。ここで、Nは、1回転で検出された事象の数である。モーターの角位置は、検出された事象の数の関数として推定される。
【0044】
通常の動作では、検出された事象がどの基準時間間隔に対応するのかを把握している。検出された事象は、基準時間間隔の順序に従い、これによって、検出された各事象が対応する基準時間間隔を検出することが可能である。しかし、異常の後には、モーターが一方の方向又は他の方向に回転し続けているのに事象が検出されなくなっている場合には、カウントが正しくなくなっている可能性がある。この結果、その後に検出される事象は、期待基準時間間隔に対して相がずれている間隔を定める。したがって、測定された時間間隔は、期待基準時間間隔には対応しなくなり、期待基準時間間隔の前又は後の基準時間間隔にしか対応しないこととなる。言い換えれば、期待基準時間間隔は、モーターの実際の角位置に対応しなくなる。この結果、この角位置測定のエラーを発生させる事象のカウントにエラーが発生する。このエラーを判断するために、測定された時間間隔と期待基準時間間隔の間の進み又は遅れの事象の数をカウントする。このようにして、この測定の結果、後で角位置の測定を補正することができる。
【0045】
好ましい実施形態において、時間間隔の系列を、モーターの1回の基準回転における基準時間間隔の系列と比較して、測定のエラーを判断する。期待された順序での基準時間間隔の系列と比べた測定された時間間隔の系列における進み又は遅れの事象の数をカウントすることによって測定のエラーを判断する。このようにするために、測定された時間間隔の系列と、期待基準時間間隔の系列の間で相互相関を行う。2つの時間間隔の系列の間の相の差を測定するために、これらの2つの系列を表す2つの関数の間の相互相関の最大値に対応するインデックスを計算する。図6に、エラー判断の一例を示している。
【0046】
図2は、三相モーターの逆起電力の正弦曲線の例を示している。周期が同じ曲線11、12、13が3つあり、これらは対で同じ相シフトによってオフセットされており、これらの3つの曲線11、12、13が同じグラフ上に重ね合わされ、各曲線は1つの相に対応する。なお、これらの曲線は、所定の順序で値ゼロ15を順次的に交差することに留意すべきである。これらの曲線は、モーターの1回転、すなわち、回転子の360°の1回転、の間にわたって表されている。したがって、モーターの1回転の間に18個の事象14を検出することは明らかである。
【0047】
正弦曲線の下には、3つの矩形波を重ねて示している。各矩形波は、1つの逆起電力の符号変化を示している。第1の矩形波16は、3つの相のうちの1つの相の第1の正弦波曲線11に対応しており、第2の矩形波17は、第2の正弦波曲線12に対応しており、第3の矩形波18は、第3の正弦波曲線13に対応している。
【0048】
検出された事象19は、矩形波の値が変化する事象、すなわち、矩形の低値と高値の間又は高値と低値の間の段の事象に対応している。例えば、第1の事象35は第1の矩形波16上に、第2の事象36は第2の矩形波17上に、第3の事象37は第3の矩形波18上に、第4の事象38は第1の矩形波16上に、第5の事象39は第2の矩形波17上に、検出され、これ以降も同様である。ここでは2つの異なる矩形波に属する2つの連続する事象35、36、37、38、39の間で時間間隔を測定する。例えば、第1の事象35と第2の事象36の間の第1の時間間隔を測定し、第2の事象36と第3の事象37の間の第2の時間間隔を測定し、第3の事象37と第4の事象38の間の第3の時間間隔を測定し、これ以降も同様である。そして、これらの時間間隔を基準時間間隔と比べて、測定のエラーを判断することができる。
【0049】
基準時間間隔を定めるために、判断方法は、図3に示している一連の予備ステップ20を実行する。その後のステップは、前記の判断方法のステップと同じであるが、好ましくは、異常が発生する前などにモーターが一定速度で回転するときにモーターが異常を経験するリスクがないような好都合な条件の下で行われる。例えば、計時器の所有者が間隔の判断を開始することによって、又は間隔の再定義を自動的に開始するプログラムによって、計時器の寿命の間に間隔を更新することもできる。したがって、一連の予備ステップを、好ましくは、モーターの回転に対応する基準時間間隔を定めるように、規則的に繰り返す。実際に、モーターは、使用しているときの動作時にわずかに変化することがある。したがって、基準時間間隔を再計算して、これらの基準時間間隔を前記の変化に適応させ、角位置判断方法の信頼性を向上させることが必要である。
【0050】
好ましい実施形態において、モーターが動作している間であって、モーターが安静状態で回転しているとき、すなわち、固定子が静止しているときに、基準時間間隔が定められる。実際に、この定めるプロセスの間にモーターが振動していれば、基準時間間隔の値が正しくなくなる。安静状態では、モーターは、望ましくない加速をせずに、一定速度で回転することが確実である。このために、モーターに加速度計を設けて、固定子が静止していることを確認することができる。代替実施形態の1つでは、例えば、図4の表の各列に対して、各列の統計的分散が長期間にわたって最小であることを検査するように記憶値を比較することができる。したがって、安静状態であるときにモーターは動作していることが推定される。異常を検出したときには、基準時間間隔は最後に記憶した基準時間間隔である。
【0051】
図3に示しているように、第1のステップにおいて、逆起電力の値がゼロであるときの各事象を検出し(22)、そして、検出された各事象に対応する時間を記憶し(23)、モーターの1回転の連続して検出された事象どうしの間の時間間隔を測定し(24)、基準回転のための基準時間間隔として記憶する(25)。
【0052】
基準時間間隔の測定の信頼性を改善させるために、同じ間隔に対する複数の値を得るようにモーターの複数の回転にわたって事象を検出する。そして、モーターの基準回転の各基準時間間隔に対して平均値を計算する。図4の表は、モーターの複数の回転、ここでは4回転、の間に測定された時間間隔の値をリストしている。この例では、モーターには、1回転当たり18個の検出可能な事象があり、したがって、測定されるべき18個の時間間隔がある。言い換えれば、これらの逆起電力は、モーターの1回転の間に合計で18回ゼロを交差する。この表の各列は、モーターの1回転における2つの連続する事象の時間間隔に対応する。ミリ秒で表される測定された同じ列の値は、これらの値がモーターの異なる回転における同じ間隔に対応するために、互いに近い値になる。
【0053】
複数の回転後、各列の平均値を計算する。これは基準時間間隔の値を定める。例えば、第1の時間間隔は80.75ミリ秒、第2の時間間隔は64.5ミリ秒、第3の時間間隔は67.25ミリ秒、第4の時間間隔は87.5ミリ秒、第5の時間間隔は78ミリ秒、第6の時間間隔は60.5ミリ秒の平均値を有し、これ以降も続く。なお、異なる間隔の間の差が非常に大きいことがあることに留意すべきである。例えば、第4の平均値と第6の平均値の間が17ミリ秒であることがある。これらの差によって、測定された時間間隔がどの基準時間間隔に対応するのかを判断することが可能になる。本判断方法において、基準回転の基準時間間隔と測定された時間間隔との間の対応関係を定めるために、それらを比較して時間的に最も近いものを探す。言い換えると、測定された時間間隔の数値を基準時間間隔と比較して、それらがどれに対応するのかを判断する。
【0054】
図6は、異常の後のモーターの1回転の間における、測定された時間間隔の系列と基準時間間隔の系列の間の相差の一例を示している。図6は、モーターの1回転の間に測定された時間間隔を表す関数45と、期待基準時間間隔を表す関数46を示しているグラフである。この三相モーターの例では、相がゼロを交差したときにモーターが1回転する間に18個の事象を検出している。したがって、モーターの1回転の間に、回転角度の関数として、連続した18個の基準時間間隔がある。これらの2つの関数45、46は類似しており、基準角位置に対するモーターの遅れ又は進みを推定することができることが観察される。なお、基準時間間隔の値47を見てみると、測定された時間間隔を表す関数45上において6つの事象の分の遅れがあるように同じ値48が得られることに留意すべきである。この方法によれば、6つの事象の角位置測定のエラーを判断し、したがって、この差に対応する角度の値によって補正して、モーターの正確な実際の角位置を確認する必要がある。この相差を計算するために、例えば、測定された時間間隔の系列と期待基準時間間隔の系列の間で相互相関を行う。2つの時間間隔の系列の間の相差を測定するために、2つの系列を表す2つの関数45、46の間の相互相関の最大に対応するインデックスを計算する。
【0055】
本発明は、さらに、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーター、特に、計時器用モーター、の角位置測定を補正する方法30に関する。モーターが回転しているときに、本方法は、以下のいくつかのステップを実行する。
【0056】
第1のステップにおいては、測定用部品を各固定子コイルに接続することなどによって、モーターの相の1つの逆起電力の値がゼロであるときの事象14をそれぞれ検出する(31)。
【0057】
同時的な第2のステップにおいて、検出された事象の数をカウントしてモーターの角位置を推定する(32)。モーターの角位置は、所定の初期位置から始まるモーターの回転の数によって与えられる角度である。この初期位置は、例えば、始動時のモーターの位置である。このように、事象をカウントすることによって、モーターの1回転が所定の事象の数に対応するという知識に基づいて、モーターが回転した数を推定する。例えば、1回転当たり逆起電力が18回ゼロ交差をする場合、180の事象を検出したときに、モーターが10回転、すなわち、3600°の回転、をしたと推定することができる。このステップは、例えば、計時器におけるアプリケーションにおいて、重要である。なぜなら、モーターの角位置をその初期位置から知ることによって、モーターが駆動する針の正確な位置を推定することができるからである。
【0058】
第3のステップにおいては、前記の判断方法にしたがって、基準時間間隔を定める一連の予備ステップを実行する(33)。
【0059】
第4のステップにおいて、カウント動作の間に異常が発生したか否かを検出する(34)。所定の時間の後にさらに事象を検出しない場合、検出された事象が期待された順序に対応する相ではない相に由来する場合などに、異常を検出する。一般的には、図2の例に示しているように、特定の順序で、相を変えて続々と事象を検出する。したがって、2以上の相のモーターにおいて、連続した2つの事象がこの順序に従わない場合、異常が発生したと推定する。例えば、衝撃を受けた後にモーターが回転方向を変えたときに、期待された相とは異なる相で事象を検出する。
【0060】
異常を検出する(34)とすぐにモーターを停止し、その後に再起動する。モーターをできるだけ早く停止させることで、異常が悪化することや、角度測定全体のエラーが大きくなって進み又は遅れの角度差が半回転を超えるようになることを防ぐことができる。実際に、角度差がモーターの半回転を超えると、実際の角度に対して測定された角度が進んでいるのか又は遅れているのかを知ることができなくなる。そして、モーターを再始動して、その角位置を判断する。
【0061】
また、モーターの意図的な停止や再始動に対応するものとして異常を定義することもできる。例えば、携行型時計において時刻表示からクロノメーター表示に変わるときである。一般的には、この停止によって、再起動後に角位置測定のエラーが発生する。実際に、モーターが停止のプロセスの最中にあってその後に再起動しているときには、事象を検出できない。
【0062】
次に、第5のステップにおいて、上記の判断方法を用いて、モーターの角位置の測定のエラーを判断する(35)。
【0063】
次に、第6のステップにおいては、第4のステップのエラー測定を用いて、モーターの角位置測定を補正する(37)。実際に、第2のステップで導き出された角位置に対して遅れ又は進みが発生している事象の数に対応する角度の分を加算又は減算することで十分である。このようにして、モーターの正確な実際の位置を知ることができる。
【0064】
したがって、計時器のアプリケーションにおいて、モーターに異常が発生した場合でも、始動時からのモーターの正確な角位置を正確に知ることができ、そのために、針の位置及び表示されている時間も正確に知ることができる。また、表示されている時間が所定の値に対応しないときには、モーターに作用することで整合させることができる。この整合は、次に、モーターを加速又は減速させて、表示される時間が所定の時間に対応するようにすることを伴う。この所定の値は、前記モーターによって駆動される機械式ムーブメント、特に、携行型時計用の機械式ムーブメント、の期待される位置の関数として計算される。前記所定の値は、例えば、表示すべき時間を決める水晶発振器を備えるモジュールによって計算される。このモジュールによって、各事象における機械式ムーブメントの期待される位置を定め、したがって、各事象における機械式ムーブメントを駆動するモーターの角位置を定めることが可能になる。
【0065】
本発明は、さらに、一又は複数の相を利用する連続回転式のモーター、特に、計時器用モーター、の角位置のエラーを判断し補正(40)する方法に関する。システム40は、特に、上述の判断し補正する方法を実装するように構成している。図7に示しているように、システム40は、モーターの相の逆起電力を監視するユニット41を備える。監視ユニット41は、モーターの固定子42のコイルに接続され、各コイルの逆起電力を監視する。監視ユニット41は、特に、逆起電力の値がゼロであるときの各事象を検出するように構成している。本判断方法によれば、逆起電力の1つがゼロを交差するとすぐに、監視ユニット41が検出信号を送信する。好ましくは、監視ユニット41は、逆起電力の符号の変化を検出して、逆起電力がゼロを交差したかどうかを判断する。
【0066】
また、システム40は、監視ユニット41が検出する各事象に対応する時間を記憶するように構成している処理ユニット43を備え、この処理ユニット43は検出信号を受ける。そして、処理ユニット43は、モーターの同じ回転の間に検出される2つの事象の間、好ましくは、その回転の間に検出されるすべての事象の間、の複数の時間間隔を測定する。処理ユニット43は、測定された時間間隔を、本判断方法にしたがって判断される基準時間間隔と比較する。最後に、ユニット43は、測定された時間間隔が期待基準時間間隔に対応しない場合に、角位置測定のエラーを判断するために、前記の測定された時間間隔が対応する基準時間間隔を推定する。また、処理ユニット43は、上述の方法にしたがって基準時間間隔を定める一連の予備ステップを実行するように構成している。
【0067】
また、このシステムは、モーターの角位置の測定を補正するための補正ユニット44を備え、この補正ユニット44は、モーター及び処理ユニット43に接続されている。補正ユニット44は、検出された事象の数をカウントしてモーターの角位置を推定するように構成している。この方法において説明したように、検出された事象の数をカウントすることによって、初期位置から角位置を推定する。
【0068】
また、本方法によれば、補正ユニット44は、異常を検出し、異常を検出した場合にモーターを停止し再起動するように構成している。最後に、補正ユニット44は、本補正方法にしたがってモーターの角位置の測定を補正する。このため、処理ユニット43は、判断された角位置測定のエラーを補正ユニット44に送信する。このようにして、エラーがあれば補正ユニット44はモーターの角位置の測定を補正する。
【0069】
本発明は、さらに、ケースを備えそのケース内に一又は複数の相を利用する連続回転式のモーターが配置された計時器(図示せず)に関する。モーターは、計時器のムーブメント、特に、針を用いる表示デバイスを駆動する機械式ムーブメント、に機械的エネルギーを供給するように構成している。この計時器は、さらに、上述したようにモーターの角位置の測定におけるエラーを判断し補正するシステムを備える。
【符号の説明】
【0070】
40 システム
41 監視ユニット
42 回転子
43 処理ユニット
44 補正ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7