特許第6982219号(P6982219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6982219
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】無線通信モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20211206BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20211206BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20211206BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01Q23/00
   H04B1/38
   H01L23/12 J
   H01L25/00 B
   H01L23/36 C
   H01L23/36 D
   H05K7/20 C
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-505445(P2021-505445)
(86)(22)【出願日】2021年1月8日
(86)【国際出願番号】JP2021000429
【審査請求日】2021年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2020-91692(P2020-91692)
(32)【優先日】2020年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨田 道和
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/129923(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0225539(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0355680(US,A1)
【文献】 特開2009−038696(JP,A)
【文献】 特開2009−158744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
H04B 1/38
H01L 23/12
H01L 25/00
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有する実装基板と、
前記第1面に実装されたアンテナ基板と、
前記第2面に実装されたRFICを有するICパッケージと、を備え、
前記実装基板には、前記実装基板を貫通して前記第1面と前記第2面との間に延びる放熱ビアと、前記第1面に形成されて前記放熱ビアに接続された放熱パターンと、電気信号または電流を伝達する非放熱用ビアと、が形成され、
前記実装基板の厚さ方向から見た平面視において、前記放熱ビアは前記RFICと重なる位置において前記RFICに接続され、かつ、前記放熱パターンが前記アンテナ基板の外側まで延びている、無線通信モジュール。
【請求項2】
前記アンテナ基板と前記実装基板との間に隙間が設けられている、
請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項3】
前記アンテナ基板のうち前記実装基板に対向する対向面に第2放熱パターンが形成され、
前記第2放熱パターンと前記放熱パターンとが接続されている、
請求項1又は請求項2に記載の無線通信モジュール。
【請求項4】
前記第2放熱パターンと前記放熱パターンとの接続部の周囲にアンダーフィルが設けられ、
前記アンダーフィルが前記第2放熱パターンおよび前記放熱パターンに接している、
請求項3に記載の無線通信モジュール。
【請求項5】
前記第2放熱パターンと前記放熱パターンとを接続する複数の接続部を備え、
平面視において、前記複数の接続部は、前記アンテナ基板の中心部および外周部の両方に配置されている、
請求項3又は請求項4に記載の無線通信モジュール。
【請求項6】
前記アンテナ基板は、前記アンテナ基板と前記RFICとの間で信号を伝送するアンテナ端子を有し、
平面視において、前記中心部に配置された前記接続部と前記外周部に配置された前記接続部との間に、前記アンテナ端子が配置されている、
請求項5に記載の無線通信モジュール。
【請求項7】
前記ICパッケージのうち、前記実装基板とは反対側の表面に第1放熱部材が設けられている、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の無線通信モジュール。
【請求項8】
前記放熱パターンの表面のうち、前記平面視において前記アンテナ基板と異なる位置に第2放熱部材が設けられている、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の無線通信モジュール。
【請求項9】
前記放熱パターンは、GNDと同電位である、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の無線通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信モジュールに関する。
本願は、2020年5月26日に日本に出願された特願2020−091692号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アンテナ素子を有するアンテナ基板(第1の誘電体基板)と、アンテナ基板上に実装されたRFICと、を備えた無線通信モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2019−97026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信モジュールの性能を確保するためには、RFICの熱を効率よく放出し、RFICを冷却することが求められる。特許文献1の構成では、RFICがアンテナ基板に直接実装されているため、アンテナ基板の配線が密集して配置されてしまうなどの理由で、放熱ルートを確保することが難しい場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、RFICの放熱ルートを確保し、RFICを効率よく冷却できる無線通信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線通信モジュールは、第1面および第2面を有する実装基板と、前記第1面に実装されたアンテナ基板と、前記第2面に実装されたRFICを有するICパッケージと、を備える。前記実装基板には、前記実装基板を貫通して前記第1面と前記第2面との間に延びる放熱ビアと、前記第1面に形成されて前記放熱ビアに接続された放熱パターンと、電気信号または電流を伝達する非放熱用ビアと、が形成されている。前記実装基板の厚さ方向から見た平面視において、前記放熱ビアは前記RFICと重なる位置において前記RFICに接続され、かつ、前記放熱パターンが前記アンテナ基板の外側まで延びている。
【0007】
上記態様によれば、アンテナ基板とは別に実装基板を用意し、実装基板に平面視において放熱ビアがRFICと重なる位置に配置されている。これにより、アンテナ基板の配線が密集して配置されてしまうことなく、RFICで発生した熱が、放熱ビアに効率よく伝えられる。さらに、放熱ビアが放熱パターンに接続されており、平面視において、放熱パターンがアンテナ基板の外側まで延びている。これにより、放熱パターンを実装基板の第1面上の広い領域に形成することが可能となる。このように、放熱ビアおよび放熱パターンを用いて放熱ルートを確保し、放熱パターンを介して熱を空気中に放出することで、RFICを効率よく冷却することができる。
【0008】
ここで、前記アンテナ基板と前記実装基板との間に隙間が設けられていてもよい。
【0009】
また、前記アンテナ基板のうち前記実装基板に対向する対向面に第2放熱パターンが形成され、前記第2放熱パターンと前記放熱パターンとが接続されていてもよい。
【0010】
また、前記第2放熱パターンと前記放熱パターンとの接続部の周囲にアンダーフィルが設けられ、前記アンダーフィルが前記第2放熱パターンおよび前記放熱パターンに接していてもよい。
【0011】
また、前記第2放熱パターンと前記放熱パターンとを接続する複数の接続部を備え、平面視において、前記複数の接続部は、前記アンテナ基板の中心部および外周部の両方に配置されていてもよい。
【0012】
また、前記アンテナ基板は、前記アンテナ基板と前記RFICとの間で信号を伝送するアンテナ端子を有し、平面視において、前記中心部に配置された前記接続部と前記外周部に配置された前記接続部との間に、前記アンテナ端子が配置されていてもよい。
【0013】
また、前記ICパッケージのうち、前記実装基板とは反対側の表面に第1放熱部材が設けられていてもよい。
【0014】
また、前記放熱パターンの表面のうち、前記平面視において前記アンテナ基板と異なる位置に第2放熱部材が設けられていてもよい。
【0015】
また、前記放熱パターンは、GNDと同電位であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、アンテナ基板の配線が密集して配置されてしまうことなく、RFICの放熱ルートを確保し、RFICを効率よく冷却可能な無線通信モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る無線通信モジュールの断面図である。
図2】第2実施形態に係る無線通信モジュールの断面図である。
図3】第3実施形態に係る無線通信モジュールの断面図である。
図4】第4実施形態に係る無線通信モジュールの断面図である。
図5】第5実施形態に係る無線通信モジュールの平面図である。
図6】第5実施形態の変形例に係る無線通信モジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の無線通信モジュールについて図面に基づいて説明する。
図1に示すように、無線通信モジュール1は、実装基板10と、アンテナ基板20と、ICパッケージ30と、を備えている。実装基板10は、第1面11と、第2面12と、を有している。第1面11にアンテナ基板20が実装され、第2面12にICパッケージ30が実装されている。
【0019】
(方向定義)
本実施形態では、実装基板10の厚さ方向を上下方向という。第1面11および第2面12は、上下方向に直交する平面に沿って延びている。また、上下方向から見ることを平面視という。
図1図4は、上下方向に沿った断面図であり、図5図6は上下方向から見た平面図である。
【0020】
(ICパッケージ)
ICパッケージ30は、実装基板10の第2面12に対向するように実装基板10に実装されている。ICパッケージ30は、RFIC31と、パッケージ部32と、第1IC端子33と、第2IC端子34と、を有している。RFIC31は、高周波集積回路(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit)であり、ミリ波帯などの高周波信号を処理する。ICパッケージ30と実装基板10との間には、上下方向における隙間が設けられている。この隙間に、第1IC端子33および第2IC端子34が配置されている。このように、ICパッケージ30の周囲に空気が存在することで、高周波信号の伝送損失を低減することができる。同様の理由で、アンダーフィル等の樹脂をICパッケージ30の周囲などに使用しないことが望ましい。ただし、高周波信号が通らない部分に限定して、アンダーフィルなどを使用することも可能である。
【0021】
パッケージ部32は、RFIC31を実装基板10に電気的に接続するための部位であり、配線やリード線などを含んでいる。上下方向からみて、RFIC31は、ICパッケージ30の中心部に位置する。言い換えると、上下方向から見て、パッケージ部32は、RFIC31を囲うように配置されている。
【0022】
ICパッケージ30は、BGA(Ball Grid Alley)、CSP(Chip Size Package)、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)であってもよい。例えば、ICパッケージ30がBGAの場合、第1IC端子33および第2IC端子34は、溶融して再凝固したはんだボールである。第2IC端子34は、後述の放熱ビア13に接続された端子である。第1IC端子33は、その他の端子である。第1IC端子33および第2IC端子34の数は、限定されないが、それぞれの端子の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。第1IC端子33は、後述の非放熱用ビア14に接続されてもよい。
【0023】
(実装基板)
実装基板10は、本体部10aと、放熱ビア13と、非放熱用ビア14と、放熱パターン15と、を有している。本体部10aは、絶縁体により形成されている。本体部10aの材質としては、例えば、エポキシやポリイミドなどを用いることができるが、その他の樹脂材料などを用いてもよい。本体部10aの厚さは、特に限定されないが、例えば、1.6mm程度である。放熱ビア13および非放熱用ビア14を設ける際に、本体部10aに微細な貫通孔(例えば、直径0.1mm)をドリルで形成する場合、本体部10aは、例えば、0.8mm程度に薄くすることもできる。本体部10aの内部に、配線が形成されていてもよい。
【0024】
放熱ビア13および非放熱用ビア14は、第1面11と第2面12との間で上下方向に延びており、実装基板10を貫通している。放熱ビア13は、第2面12から第1面11へと熱を伝達するために設けられたビアである。非放熱用ビア14は、電気信号あるいは電流(駆動電流など)を伝達するために設けられたビアである。
【0025】
放熱ビア13は、伝熱用ランド13aを介して、第2IC端子34に接続されている。伝熱用ランド13aは、実装基板10の第2面12上における放熱ビア13の直上に形成されている。放熱ビア13は、実装基板10の第1面11上において、放熱パターン15に接続されている。この構成により、RFIC31が発した熱は、第2IC端子34、伝熱用ランド13a、および放熱ビア13を経由して、放熱パターン15に伝えられる。放熱パターン15及び放熱ビア13としては、銅などの熱伝導率が高い材質を用いることが望ましい。
【0026】
放熱ビア13は、GND回路に接続されていてもよい。この場合、放熱ビア13および放熱パターン15がGNDと同電位になる。また、非放熱用ビア14は、同軸構造であってもよい。この構成は、一般的なFR4などの誘電特性の良くない材料を実装基板10の本体部10aとして使用する際に有効である。
【0027】
図1に示す例では、非放熱用ビア14が、アンテナ端子21、第1ランド14a、第2ランド14b、および第1IC端子33を介して、アンテナ基板20とICパッケージ30とを電気的に接続している。ただし、非放熱用ビア14は、アンテナ基板20およびICパッケージ30の一方にのみ電気的に接続されていてもよい。また、アンテナ基板20およびICパッケージ30のいずれにも電気的に接続されていない非放熱用ビア14が設けられていてもよい。
【0028】
放熱ビア13は、信号や電源電流などの伝送を目的としないビアであって、発熱源であるRFIC31と平面視において重なる位置に配置され、放熱パターン15に接続されている。放熱ビア13は、GNDと同電位となっていてもよい。
放熱パターン15は、第1面11上に形成されており、放熱ビア13に接続されている。このため、RFIC31から放熱ビア13に伝わった熱は、放熱パターン15にも伝わる。
【0029】
放熱パターン15は、放熱効果を十分に得るために一定以上の厚さで形成されていることが望ましい。例えば、放熱パターン15の材質が銅であれば、放熱パターン15の厚みは、35μm以上とするとよい。
本実施形態では、放熱パターン15の領域を十分に確保するため、ICパッケージ30を、アンテナ基板20ではなく実装基板10に実装している。ICパッケージ30を実装基板10に実装することで、アンテナ基板20との接続が必要な配線であり、かつ、高周波信号以外の信号(デジタル信号、低周波の信号、電源など)を送受信するための配線を、アンテナ基板20以外の部位(例えば、実装基板10の本体部10a内など)に配置することができる。
【0030】
また、仮にRFIC31をアンテナ基板20に実装した場合には、アンテナ基板20上の信号線が密集して配置されることになり、RFIC31の放熱ルートを確保しにくくなる。これに対して、本実施形態のように、実装基板10におけるアンテナ基板20が実装された第1面11とは反対側の第2面12にRFIC31を実装することで、放熱ルートが確保しやすくなる。
【0031】
(アンテナ基板)
アンテナ基板20は、実装基板10の第1面11に対向するように実装基板10に実装されている。アンテナ基板20には、不図示のアンテナパターンが形成されている。アンテナパターンは、アンテナ基板20の表面または内部に形成される。アンテナ基板20としては、高周波信号の伝送特性がよい(誘電正接が小さい)材質が好ましい。具体的には、フッ素樹脂、LCP(Liquid Crystal Polymer)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、低温焼成セラミックスなどが挙げられる。ただし、これらの材質以外の材質を選択してもよい。アンテナ基板20上には他の部品は実装しないことが、専有面積の低減及び信頼性の観点などから望ましいが、アンテナ基板20上に必要に応じて部品を実装してもよい。
【0032】
アンテナ基板20のアンテナパターンは、アンテナ端子21を介してRFIC31に電気的に接続される。より詳しくは、アンテナパターンは、アンテナ端子21、第1ランド14a、非放熱用ビア14、第2ランド14b、および第1IC端子33を介して、RFIC31に電気的に接続されている。なお、その他のルートを介してアンテナパターンとRFIC31とが電気的に接続されていてもよい。
【0033】
アンテナ端子21と非放熱用ビア14の第1ランド14aとの接合部分、及びその接合部分の周辺に対して、樹脂材料などで補強を行ってもよい。ただし、高周波信号が伝送されるアンテナ端子21の周辺に空気が存在することが、信号の損失低減の観点からは望ましい。
【0034】
アンテナ基板20のうち、上下方向において実装基板10に対向する対向面20aには、第2放熱パターン23が形成されている。第2放熱パターン23は、接続部22を介して、放熱パターン15に接続されている。第2放熱パターン23としては、銅などの熱伝導率が高い材質を用いることが望ましい。第2放熱パターン23は、放熱パターン15と同様に、放熱効果を得るために一定以上の厚み(例えば、銅であれば35μm以上)を有することが好ましい。
【0035】
第1ランド14aおよび第2ランド14bは、非放熱用ビア14の直上に配置されている。さらに、第1ランド14aの直上にアンテナ端子21が配置され、第2ランド14bの直上に第1IC端子33が配置されている。このように、アンテナ基板20とICパッケージ30との接続構造は、いわゆるパッドオンビアであることが望ましい。これにより、高周波信号の伝送距離を小さくして、信号の損失を抑える効果が得られる。
【0036】
ICパッケージ30は、第1IC端子33および第2IC端子34を介して、実装基板10に実装されている。アンテナ基板20は、アンテナ端子21および接続部22を介して、実装基板10に実装されている。アンテナ基板20およびICパッケージ30の実装基板10への実装は、はんだ接合により行われてもよい。この場合、アンテナ端子21、接続部22、第1IC端子33、および第2IC端子34は、溶融して再凝固したはんだである。ただし、はんだ接合以外の方法(例えば、超音波接合、加圧による圧着など)を選択してもよい。アンテナ端子21、接続部22、第1IC端子33、第2IC端子34の材質としては、はんだ(SnAgCuはんだなど)、金、銀、銅などを用いることができる。
【0037】
ここで、無線通信モジュール1の性能を確保するためには、ICパッケージ30が生じる熱を効率よく放出し、ICパッケージ30を冷却することが求められる。また、ICパッケージ30における発熱は、主としてRFIC31において生じる。
【0038】
そこで本実施形態では、平面視において、放熱ビア13がRFIC31と重なる位置に配置されている。これにより、ICパッケージ30のRFIC31で発生した熱が、放熱ビア13に効率よく伝えられる。さらに、放熱ビア13が放熱パターン15に接続されており、平面視において、放熱パターン15がアンテナ基板20の外側まで延びている。これにより、放熱パターン15を実装基板10の第1面11上の広い領域に形成することが可能となる。そして、この放熱パターン15を介して熱を空気中に放出し、RFIC31を効率よく冷却することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の無線通信モジュール1は、第1面11および第2面12を有する実装基板10と、第1面11に実装されたアンテナ基板20と、第2面12に実装されたRFIC31を有するICパッケージ30と、を備える。実装基板10には、実装基板10を貫通して第1面11と第2面12との間に延びる放熱ビア13と、第1面11に形成されて放熱ビア13に接続された放熱パターン15と、電気信号または電流を伝達する非放熱用ビア14と、が形成されている。そして、アンテナ基板20とは別に実装基板10を用意し、実装基板10の厚さ方向から見た平面視において、放熱ビア13は、RFIC31と重なる位置においてRFIC31に接続され、かつ、放熱パターン15がアンテナ基板20の外側まで延びている。これにより、アンテナ基板20の配線が密集して配置されてしまうことなく、放熱ビア13および放熱パターン15を用いて放熱ルートを確保し、放熱パターン15を介して熱を空気中に放出することで、RFIC31を効率よく冷却することが可能となる。
【0040】
また、アンテナ基板20と実装基板10との間に上下方向の隙間が設けられている。これにより、放熱パターン15をより広い面積で空気に触れさせて熱を効率よく放出させ、かつ、アンテナ基板20を空気で囲い、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。
【0041】
また、アンテナ基板20のうち実装基板10に対向する対向面20aに第2放熱パターン23が形成され、第2放熱パターン23と放熱パターン15とが接続部22により接続されている。これにより、放熱パターン15だけでなく、第2放熱パターン23からもRFIC31の熱を放出させて、より効率よくRFIC31を冷却できる。
【0042】
また、放熱パターン15がGNDと同電位であってもよい。この場合、インピーダンス整合のためなどに実装基板10に形成されるGNDパターンを、放熱パターン15として利用できる。これにより、実装基板10の面積を大きくすることなく、放熱パターン15による放熱効果を得ることができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第2実施形態の構成は、第1実施形態と基本的に同様である。このため、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、第1実施形態と第2実施形態とが異なる点についてのみ説明する。
図2に示すように、本実施形態の無線通信モジュール1Aは、アンダーフィル40を備えている。
【0044】
アンダーフィル40は、放熱パターン15と第2放熱パターン23との接続部22の周囲に設けられている。また、アンダーフィル40は、放熱パターン15および第2放熱パターン23の両方に接している。これにより、接続部22だけでなく、アンダーフィル40も経由して、熱を放熱パターン15から第2放熱パターン23へと伝えることができる。したがって、RFIC31の熱をより効率よく放出することが可能となる。アンダーフィル40の材質としては、樹脂などを採用できる。
【0045】
なお、放熱パターン15、接続部22、および第2放熱パターン23には高周波信号が通らないため、アンダーフィル40を設けたとしても、高周波信号の伝送損失の低下を避けることができる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明するが、第3実施形態の構成は、第1実施形態と基本的に同様である。このため、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、第1実施形態と第3実施形態とが異なる点についてのみ説明する。
図3に示すように、本実施形態の無線通信モジュール1Bは、第1放熱部材51および補助放熱部材52を備えている。
【0047】
第1放熱部材51は、ICパッケージ30における、実装基板10とは反対側の表面に接している。補助放熱部材52は、第1放熱部材51における、ICパッケージ30とは反対側の面に接している。言い換えると、ICパッケージ30と補助放熱部材52とにより第1放熱部材51が挟まれている。平面視において、補助放熱部材52は、ICパッケージ30および第1放熱部材51よりも広い面積を有する。第1放熱部材51は、例えば、放熱シートや接着剤などであってもよい。補助放熱部材52は、例えば、金属などであってもよい。
【0048】
このように本実施形態では、ICパッケージ30のうち、実装基板10とは反対側の表面に第1放熱部材51が設けられている。これにより、RFIC31で生じた熱を、第1放熱部材51を介して空気に放出することができる。したがって、RFIC31をより効率よく冷却することが可能となる。また、補助放熱部材52をさらに設けた場合には、補助放熱部材52によっても熱を放出することができる。なお、補助放熱部材52を省略してもよい。また、平面視における第1放熱部材51の面積をICパッケージ30より大きくしてもよい。
【0049】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態について説明するが、第4実施形態の構成は、第3実施形態と基本的に同様である。このため、第3実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、第3実施形態と第4実施形態とが異なる点についてのみ説明する。
図4に示すように、本実施形態の無線通信モジュール1Cは、第2放熱部材53および第2補助放熱部材54を備えている。
【0050】
第2放熱部材53は、放熱パターン15に接するように、実装基板10の第1面11の上側に設けられている。また、第2補助放熱部材54は、第2放熱部材53に接している。平面視において、第2放熱部材53および第2補助放熱部材54は、アンテナ基板20とは異なる位置に配置されている。平面視において、第2補助放熱部材54は、第2放熱部材53よりも広い面積を有する。第2放熱部材53は、例えば、放熱シートや接着剤などであってもよい。第2補助放熱部材54は、例えば、金属などであってもよい。
【0051】
このように本実施形態では、放熱パターン15の表面のうち、平面視においてアンテナ基板20と異なる位置に、第2放熱部材53が設けられている。これにより、RFIC31で生じた熱を、第2放熱部材53を介して空気に放出することができる。したがって、RFIC31をより効率よく冷却することが可能となる。また、第2補助放熱部材54をさらに設けた場合には、第2補助放熱部材54によっても熱を放出することができる。なお、第2補助放熱部材54を省略してもよい。
【0052】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る第5実施形態について説明する。本実施形態では図5図6を用いて、上記第1〜第4実施形態における接続部22やアンテナ端子21の配置の具体例について説明する。なお、図5図6では無線通信モジュール1Dを上方から見ており、アンテナ基板20については輪郭のみを破線で示している。図5図6において、放熱パターン15には複数の開口部15aが形成されており、各開口部15aの内側に、非放熱用ビア14の第1ランド14aおよびアンテナ端子21が配置されている。接続部22は、放熱パターン15上(開口部15a以外の箇所)に設けられている。
【0053】
図5に示すように、放熱パターン15と第2放熱パターン23(図1等参照)とを接続する接続部22は、平面視におけるアンテナ基板20の中心部および外周部の両方に配置するとよい。図5では、2つの接続部22がアンテナ基板20の中心部に配置されている。また、図5では実装基板10に2つの放熱ビア13が形成されており、平面視において、中心部に位置する2つの接続部22が各放熱ビア13の直上に配置されている。さらに、12個の接続部22が、アンテナ基板20の外周部に配置されている。これにより、RFIC31で生じた熱を複数のルート(複数の接続部22)を経由して第2放熱パターン23に伝え、より効率よく放熱することができる。
【0054】
また、図5に示すように、平面視において、中心部に配置された接続部22と外周部に配置された接続部22との間に、RFIC31との間で信号を伝送するアンテナ端子21を配置するとよい。図5に示す例では、4つのアンテナ端子21が、アンテナ基板20の中心部に位置する2つの接続部22を囲うように配置されている。さらに、外周部に位置する12個の接続部22が、4つのアンテナ端子21を囲うように配置されている。
【0055】
上記のような構成によれば、アンテナ端子21への高周波信号等が外乱の影響を受けることを防いだり、アンテナ端子21間で生じる信号の遷移を防いだりする効果が得られる。特に接続部22がGNDと同電位である場合に、上記の効果が顕著に得られる。
なお、アンテナ端子21や接続部22の数は適宜変更可能である。例えば、図6に示すように、接続部22の数を増やすことで、放熱効果をより高めてもよい。
【0056】
なお、本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0057】
例えば、前記の各実施形態では、アンテナ基板20に第2放熱パターン23が形成されていたが、このような第2放熱パターン23は、無くてもよい。さらに、放熱パターン15と第2放熱パターン23とを接続するために用いられる接続部22も無くてもよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
例えば、前記第1〜第5実施形態のうち、2つまたは3つ以上の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、1A〜1D…無線通信モジュール 10…実装基板 11…第1面 12…第2面 13…放熱ビア 15…放熱パターン 20…アンテナ基板 20a…対向面 21…アンテナ端子 22…接続部 23…第2放熱パターン 30…ICパッケージ 40…アンダーフィル 51…第1放熱部材 53…第2放熱部材
【要約】
本発明の無線通信モジュールは、第1面および第2面を有する実装基板と、前記第1面に実装されたアンテナ基板と、前記第2面に実装されたRFICを有するICパッケージとを備える。前記実装基板には、前記実装基板を貫通して前記第1面と前記第2面との間に延びる放熱ビアと、前記第1面に形成されて前記放熱ビアに接続された放熱パターンと、電気信号または電流を伝達する非放熱用ビアとが形成されている。前記実装基板の厚さ方向から見た平面視において、前記放熱ビアは前記RFICと重なる位置において前記RFICに接続され、かつ、前記放熱パターンが前記アンテナ基板の外側まで延びている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6