【文献】
岡田寛正(他6名),地上デジタル放送に対するLDM適用時の諸問題改善に関する一考察,映像情報メディア学会技術報告,日本,映像情報メディア学会,2018年08月31日,Vol.42, No.28,pp.13-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムにおける送信装置の構成例を示す図であり、
図2は、同システムにおける受信装置の構成例を示す図である。本例のデータ伝送システムは、ULとLLを異なるFFTポイント数でOFDM変調し、時間領域で多重化して伝送する準同期LDM伝送システムである。
なお、ここでは、本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムについて、送信装置と受信装置の間の伝送路に無線を用いた場合で説明するが、送信装置と受信装置の間の伝送路に有線を用いてもよい。
【0017】
送信装置は、誤り訂正符号化部11と、インターリーブ部12と、シンボル内誤り訂正符号化部13と、マッピング部14と、N
ULポイントIFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)部15と、誤り訂正符号化部16と、インターリーブ部17と、シンボル内誤り訂正符号化部18と、マッピング部19と、N
LLポイントIFFT部20と、加算部21と、D/A(Digital to Analog)変換部22と、送信アンテナ23とを備える。
【0018】
受信装置は、受信アンテナ31と、A/D(Analog to Digital)変換部32と、N
ULポイントFFT部33と、伝送路推定部34と、等化部35と、判定部36と、シンボル内誤り訂正部37と、尤度算出部38と、デインターリーブ部39と、誤り訂正部40と、マッピング41と、除算部42と、フィルタ部43と、N
ULポイントIFFT部44と、UL受信レプリカ生成部45と、LL抽出部46と、N
LLポイントFFT部47と、伝送路推定部48と、等化部49と、判定部50と、シンボル内誤り訂正部51と、尤度算出部52と、デインターリーブ部53と、誤り訂正部54とを備える。
【0019】
まず、
図1に示す送信装置の動作について説明する。
送信装置では、受信装置に送信するULの情報符号が誤り訂正符号化部11に入力され、誤り訂正符号化部11にて誤り訂正符号化処理が施される。現行の地上デジタル方式(ARIB STD−B31)では、誤り訂正符号として畳み込み符号を採用しているが、これに限定されず、LDPC(Low Density Parity Check;低密度パリティ検査)符号やターボ符号などの他の誤り訂正方式を採用することも可能である。
【0020】
誤り訂正符号化部11から出力される符号化信号は、インターリーブ部12にて、周波数、時間、及びサブキャリアを構成するビットの領域において順序をランダムに並べ替えるインターリーブが施される。このインターリーブは、バースト誤りを軽減するために用いられる。インターリーブは、並べ替えを行う範囲が長くなると改善効果は増大するが、その反面、並べ替えられた情報を元の順序に戻すために遅延が発生してしまう。特に、時間インターリーブによる遅延時間が支配的となっている。インターリーブ部12の出力は、シンボル内誤り訂正符号化部13とマッピング部14に入力される。例えば、ARIB STD−B31では、データサブキャリアのキャリア数として4992を用いている。
【0021】
シンボル内誤り訂正符号化部13では、インターリーブ後のOFDMシンボル内のデータサブキャリアに対して誤り訂正符号化処理を施す。ARIB STD−B31との互換性を確保するためには、データサブキャリアの信号はそのままの形式で使用し、誤り訂正用の新たな冗長符号を生成する組織符号が望ましい。組織符号には、RS(Reed-Solomon)符号やBCH(Bose-Chaudhuri-Hocquenghem)符号、LDPC符号などがある。このシンボル内誤り訂正符号の効果については後述する。
【0022】
マッピング部14には、インターリーブ部12からのデータサブキャリアと、シンボル内誤り訂正符号化部13からの誤り訂正用の冗長符号とが入力される。マッピング部14は、インターリーブ部12からのデータサブキャリアについては、QAM(Quadrature Amplitude Modulation;直角位相振幅変調)やPSK(Phase Shift Keying;位相変位変調)などを用いてIQ複素平面にマッピングする。ARIB STD−B31では、16QAMや64QAMが採用されている。
【0023】
また、マッピング部14は、シンボル内誤り訂正符号化部13からの誤り訂正用の冗長符号についても同様にマッピングを行う。更に、受信装置において伝送路特性を推定できるように、振幅及び位相が既知であるパイロット信号についてもBPSK(Binary Phase Shift Keying;二位相偏移変調)などのマッピングを行う。
【0024】
ARIB STD−B31では、パイロットサブキャリアやデータサブキャリアの配置は規格化されており、ARIB STD−B31に準拠するためにはこのサブキャリア配置に則る必要がある。したがって、ARIB STD−B31に準拠しつつ、シンボル内誤り訂正符号化部13の出力(誤り訂正用の冗長符号)に対して行ったマッピング結果を割り当てるためには、例えば、
図4(a)に示すように、予備用のキャリアとして設けられているAC(Auxiliary Channel)キャリアに割り当てればよい。また、非特許文献3では、現行帯域幅を5.57MHzから5.83MHzに拡張する提案がなされている。この新たに拡張した周波数領域を利用して、現行のARIB STD−B31と互換性を保ちつつ、シンボル内誤り訂正符号化部13の出力に対して行ったマッピング結果を割り当てるようにしてもよい(
図4(b)参照)。
【0025】
N
ULポイントIFFT部15は、マッピング部14によってマッピング及びサブキャリア配置がなされた結果に対してN
ULポイントのIFFT処理を施し、生成された時間信号の後半部分をシンボル先頭に巡回コピーすることでガードインターバルを付加する。このようにして、ULの情報符号に対して、いわゆるOFDM変調が施されることになる。ARIB STD−B31では、N
UL=8192、ガードインターバル長=1024となっている。
【0026】
以上の処理は、受信装置に送信するデータのうち、第1データ(例えば、2K放送のデータ)であるULの情報符号に対するOFDM変調処理であるが、第1データとは異なる第2データ(例えば、4K放送のデータ)であるLLの情報符号に対しても、同様のOFDM変調処理が行われる。LLの情報符号に対する誤り訂正符号化部16、インターリーブ部17、シンボル内誤り訂正符号化部18、マッピング部19、N
LLポイントIFFT部20では、ULの情報符号に対する機能部11〜15と同様な処理を行うため、その詳細な説明は割愛する。なお、LLの情報符号に対しては、非特許文献2の提案に従い、誤り訂正方式としてLDPC、N
LL=32768を適用することとする。
【0027】
上述した処理により、ULとLLの変調信号が生成される。
加算部21は、
図3を参照して説明したように、ULとLLのシンボル数の比率を11:3とした上で、それぞれの開始タイミングが上記比率に対応する周期で一致するようにタイミング調整し且つ所定の電力比率で合成することで、準同期LDM信号を生成する。ここで、ULとLLの合成比率は、下記(式1)で算出されるIL(Injection Level)で規定される。
【0029】
加算部21からの準同期LDM信号は、D/A変換部22にてアナログ信号に変換され、伝送周波数に周波数変換されたのち、送信アンテナ23から送出される。
【0030】
次に、
図2に示す受信装置の動作について説明する。
受信装置では、送信装置から送信された信号を受信アンテナ31にて受信し、A/D変換部32にて伝送周波数の受信信号をベースバンドの周波数に変換すると共にアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0031】
N
ULポイントFFT部33は、A/D変換部32からの受信デジタル信号が入力され、受信デジタル信号に対してN
ULの長さのFFT時間窓を設け、時間領域信号からサブキャリア単位の周波数領域信号に変換するFFT処理を施す。FFT時間窓は、反射波によるシンボル間干渉が発生しないタイミングに設ける必要がある。N
ULポイントFFT部33から出力される信号は、伝送路推定部34、等化部35、除算部42に入力される。
【0032】
伝送路推定部34は、
図5に示すようにシンボル(時間)、周波数に分散配置されたパイロット(SP:Scattered Pilot)に対して、時間、周波数の二次元方向に内挿補間処理を行うことで、送信装置と受信装置の間の伝送路特性を推定する。一般的には、この内挿補間処理には二次元フィルタを用いることが多い。二次元フィルタの周波数方向の通過域幅は推定可能となる反射波の遅延時間長に対応し、時間方向の通過域幅は移動伝送などにより生じる時変動の周波数に対応する。
【0033】
伝送路特性の推定精度を向上させるためには、伝送路の時間、周波数変動成分を二次元フィルタの通過域内に収まるような通過域幅とする必要があるが、通過域幅が広すぎると推定結果に混入する雑音成分の増大を招いてしまう。したがって、二次元フィルタの通過域幅は、伝送路特性を推定可能とする通過域幅としつつも、可能な限り狭い帯域幅である方が望ましい。
【0034】
準同期LDMでLL信号を受信する状況では、受信信号に混入している雑音は少ない。一般的には、ULに対してLLのレベルを低くして運用することが多く、例えば、IL=23dBに設定される。この場合、LLの所要CNR(Carrier to Noise Ratio)を20dBとすると、LLを正しく受信するためには、ULのレベルを基準としてみた場合の総合的なCNRは23+20=43dB以上が必要となる。
【0035】
このように、ULに対して雑音電力は非常に低いため、ULの受信に対して支配的な劣化要因は、雑音ではなくLL信号である。LL信号はULに対して雑音のように振る舞うため、IL=23dBの例では、ULのCINR(Carrier to Interference and Noise Ratio)は約23dBである。ここで、CINRのI(Interference)成分はLL信号である。
【0036】
伝送路推定に話を戻すと、受信パイロットキャリアのCINRは約IL[dB]となる。後述するが、準同期LDMの大きな課題の一つとして、伝送路推定精度の向上が挙げられる。したがって、CINR=ILのパイロット信号から伝送路推定を行う際には、伝送路推定部34の二次元フィルタの通過域幅を可能な限り狭帯域とする必要がある。
【0037】
等化部35では、下記(式2)に示すように、受信サブキャリア信号Y(ω)を伝送路推定結果H^
(1) (ω)で複素除算して、LLの送信信号の推定値E
UL(ω,t)を算出する。ここで、 ωはサブキャリア番号、tはシンボル番号を示している。また、 H^
(1) (ω)の(1)は、伝送路推定結果の算出回数を表す序数であり、伝送路推定部34の結果が一回目の伝送路推定結果であることを示している。
【0039】
判定部36では、等化部35による等化結果E
UL(ω,t)がどの領域に位置しているかを判定する。この処理は、一般的には硬判定処理と称されている。前述したように、LLを受信する環境では総合的なCNRは大きいため、ULの硬判定に誤りが生じる可能性は低い。しかしながら、反射波の混入などによってスペクトル内にディップが生じ、スペクトルディップに位置しているサブキャリアのUL硬判定結果に誤りが生じる可能性もある。
【0040】
そこで、シンボル内誤り訂正部37では、このような軽微な誤りに対して誤り訂正処理を行う。シンボル内誤り訂正部37よりも後述の誤り訂正部40の方が誤り訂正能力は高いが、デインターリーブ部39を経由することによる遅延時間が発生してしまう。また、誤り訂正部40の結果を後段のマッピング部41で利用するには、送信側のインターリーブ部12と同等の処理を設ける必要もあり、ハードウェアの増大も招いてしまう。このため、シンボル内誤り訂正部37を設ける利点は、デインターリーブ部39を経由することなく、CNRの良好な受信状況で生じた軽微な誤りに対して、低遅延で尚且つ小規模なハードウェアにより誤りを訂正することにある。
【0041】
シンボル内誤り訂正部37で推定されたLLの送信信号は、マッピング部41にて
図1の送信装置のマッピング部14と同一のマッピング処理が施される。この再マッピング結果をX^
UL(ω,t)とする。
【0042】
除算部42は、N
ULポイントFFT部33からの受信サブキャリア信号Y(ω,t)をマッピング部41からの再マッピング信号X^(ω,t)で複素除算する。受信サブキャリア信号Y(ω,t)は、下記(式3)に示すように、送信信号X(ω,t)=X
UL(ω,t)+X
LL(ω,t)と伝送路特性H(ω,t)の積として表される。ただし、下記(式3)では良好なCNRの環境と仮定し、雑音成分に関しては省略している。
【0044】
除算部42では、上記(式3)で示した受信サブキャリア信号Y(ω,t)に対して、下記(式4)の処理を行う。
【数4】
【0045】
シンボル内誤り訂正部37によってULの誤りが完全に訂正されたとすると、X^
UL(ω,t)=X
UL(ω,t)となる。したがって、上記(式4)は、下記(式5)に展開される。下記(式5)は、二回目の伝送路推定結果を表している。下記(式5)の括弧内第二項は伝送路推定誤差として残留し、その電力は−IL[dB]である。除算部42の結果はフィルタ部43に入力される。
【0047】
フィルタ部43では、伝送路推定部34と同様に二次元フィルタを有し、伝送路特性は推定可能な通過域としつつも、上記の括弧内第二項を低減するように通過域幅を狭帯域とする。下記(式6)は、フィルタ部43による処理後の二回目の伝送路推定結果を表している。下記(式6)において、FIL
ω,t[ ]は、周波数ωと時間tの二次元領域でフィルタを行う関数である。
【0049】
フィルタ部43と伝送路推定部34の大きな差は、伝送路推定部34では伝送路推定に使用できる信号は既知信号であるパイロットキャリアのみであったが、フィルタ部43ではデータキャリアも既知信号となる点である。このため、フィルタ部43では、伝送路推定に使用できる信号が伝送路推定部34に比べて増加している。例えば、既知信号の量が12倍に増大する場合、伝送路推定精度の改善効果は10.8dBに相当する。
以上の説明は、準同期LDMに適した高精度の伝送路推定を提供する仕組みに関するものである。
【0050】
次に、フィルタ部43から出力される伝送路推定結果H^
(3) (ω,t)を用いてUL受信信号のレプリカ(以下「UL受信レプリカ」と称する)を算出し、受信信号からUL受信レプリカを減算してLL信号を抽出する処理について説明する。
【0051】
マッピング部41から出力される再マッピング信号は、N
ULポイントIFFT部44にて、周波数領域の信号から時間領域の信号に変換するIFFT処理が施される。UL硬判定結果に誤りがなければ、N
ULポイントIFFT部44は、
図1に示した送信装置のN
ULポイントIFFT部15と同一の信号を生成する。
【0052】
UL受信レプリカ生成部45は、ULの時間領域の信号とフィルタ部43からの伝送路推定結果H^
(3) (ω,t)とに基づいて、UL受信レプリカを生成する。すなわち、UL受信レプリカ生成部45では、LL信号の無いULの時間領域の受信信号を再生する。UL受信レプリカの生成手法に関しては種々の手法が考えられるが、本発明ではその手法については言及しない。
LL抽出部46は、ULとLLが混入した受信信号からUL受信レプリカを減算することにより、LL信号を抽出する。
【0053】
次に、LL信号の復調に関する説明を行う。
N
LLポイントFFT部47では、LL抽出部46により抽出されたLL信号に対してN
LLポイントのFFT処理を行い、時間領域の信号からサブキャリア単位の周波数領域の信号に変換して、LL受信サブキャリア信号を出力する。
伝送路推定部48では、例えばLL信号にパイロットを挿入している場合には、LL信号の受信パイロット信号に基づいて伝送路推定を行う。この処理は、伝送路推定部34と同様の処理になる。
【0054】
ここで、ULとLLの伝送路特性は同一であるため、ULの伝送路推定結果をLLの伝送路推定結果として用いてもよい。この場合には、LL信号にパイロットを挿入する必要がないため、ビットレートを向上できるという利点がある。なお、ULの伝送路推定結果としては、伝送路推定部34の出力やフィルタ部43の出力を用いることができる。この場合、ULとLLではFFTポイント数が異なるため、N
ULポイントからN
LLポイントにレート変換する必要がある。レート変換の手法としては、レートを上げるインターポレーションやレートを下げるデシメーションなどがある。また、インターポレーションとデシメーションを組合せて用いることもある。レート変換には公知の種々の手法を用いることが可能であり、詳細な説明は省略する。
【0055】
等化部49は、等化部35と同様に、N
LLポイントFFT部47からのLL受信サブキャリア信号と伝送路推定部48からの伝送路推定結果に基づいて、LLの送信信号を推定する。判定部50は、判定部36と同様に、LLの送信信号の推定値について硬判定を行う。
【0056】
シンボル内誤り訂正部51は、LLの硬判定結果に対して誤り訂正を行う。ULに対するシンボル内誤り訂正部37と異なる点は、ULは非常に良好なCNRであったが、LLに関してはIL分のCNRが低下している。したがって、このような低CNR環境では、簡易的な誤り訂正ではほとんどその能力を発揮することができない。
【0057】
このLLに対するシンボル内誤り訂正部51の意義について説明する。非特許文献2では、2K放送から4K放送への移行段階に、準同期LDMを適用することが提案されている。2K放送から4K放送への移行が完了し、2K放送が完全に終了した段階では、UL信号が無くなってLL信号のみとなる。その時点ではLL信号電力も増大しており、LLの受信CNRも良好な状態となっている。2K放送から4K放送への移行が完了した後の次々世代の移行段階では、LL信号の下の階層に8K放送をLDM化することも検討されており、2K放送から4K放送への移行と同様に、4K放送から8K放送への移行時にもLDM化が行われると推定される。LLに対するシンボル内誤り訂正部51は、このような状況において、ULに対するシンボル内誤り訂正部37と同様の効果を発揮することが可能となる。
【0058】
最後に、UL、LLのそれぞれに対する尤度算出部38,52、デインターリーブ部39,53、誤り訂正部40,54について説明する。ULに対する機能部38〜40と、LLに対する機能部52〜54は、互いに同一の処理を行う。
【0059】
尤度算出部38,52は、等化結果に基づいて、等化結果と理想受信点との距離から各ビットに対応する対数尤度比(LLR:Log Likelihood Ratio)を算出する。ここで、LLRはサブキャリア毎のCNRに比例した大きさとすることが望ましく、そのためにサブキャリア毎の伝送路推定結果の電力を用いている。更に、シンボル内誤り訂正にて訂正可能となったビットに関しては、LLRの大きさを最大値としてもよい。LLRの算出には公知の種々の手法を用いることが可能であり、詳細な説明は省略する。
【0060】
尤度算出部38,52の結果はデインターリーブ部39,53に入力され、送信装置のインターリーブ部12,17とは逆の並べ替えが施された後に、誤り訂正部40,54にて誤り訂正復号が行われる。これにより、受信装置においてUL,LLが再生される。
【0061】
以上の処理により、CNRが良好な場合には、ULとLLの情報符号を同時に伝送することが可能となる。また、CNRがそれ程良好でない場合には、ULのみの情報符号を伝送することが可能である。したがって、非特許文献2で提案されたような準同期LDM方式のデータ伝送を実現することができ、例えば、次世代地上放送として2K放送から4K放送にスムーズに移行することが可能となる。
【0062】
以上のように、本例のデータ伝送システムでは、送信装置が、N
ULポイントのIFFT処理を用いてULの変調信号を生成すると共に、N
ULポイントとは異なるN
LLポイントのIFFT処理を用いてLLの変調信号を生成し、これらの変調信号を各々の開始タイミングが所定の周期で一致するようにタイミング調整し且つ所定の電力比率で合成したものを送信する構成となっている。また、受信装置が、送信装置からの受信信号に対してN
ULポイントのFFT処理を行い、その結果に基づいてULを再生すると共にUL受信レプリカを生成し、受信信号からUL受信レプリカを減算した信号に対してN
LLポイントのFFT処理を行い、その結果に基づいてLLを再生する構成となっている。
【0063】
このように、準同期LDM方式で多重化されたUL及びLLのデータを送信装置から受信した受信装置は、まず、電力比率が高い方であるUL用のポイント数のFFT処理を受信信号に施してULを再生すると共に、UL受信レプリカを受信信号から減算した信号にLL用のポイント数でFFT処理を施してLLを再生することで、準同期LDM方式で多重化されたUL及びLLのデータを受信装置にて適切に復調することが可能である。
【0064】
また、本例では、送信装置が、ULに対する誤り訂正符号化処理及びインターリーブ処理と、インターリーブ処理の結果に対するシンボル内誤り訂正符号化処理とを行った後に、N
ULポイントのIFFT処理を行ってULの変調信号を生成し、同様に生成されたLLの変調信号と合成して送信する構成となっている。また、受信装置が、受信信号に対するN
ULポイントのFFT処理の結果に基づいて、誤り訂正処理及びデインターリーブ処理を行ってULを再生しつつ、シンボル内誤り訂正処理及びN
ULポイントのIFFT処理を行ってUL受信レプリカを生成する構成となっている。
【0065】
このような構成により、誤り訂正処理及びデインターリーブ処理を経ずにUL受信レプリカを生成することができるので、受信装置におけるUL受信レプリカの生成を低遅延で行うことが可能となる。また、UL受信レプリカを生成するために送信装置と同様のインターリーブ部を受信装置に設ける必要がないので、小規模なハードウェアで受信装置を実現することが可能となる。
【0066】
また、本例では、送信装置が、シンボル内誤り訂正処理の結果を用いて送信装置と受信装置の間の伝送路特性を推定し、当該推定した伝送路特性を用いてUL受信レプリカの生成を行う構成となっている。このような構成により、伝送路特性の推定に使用できる既知信号の量が増大するので、伝送路特性をより高精度に推定することが可能となる。また、このようにして推定した伝送路特性をUL及びLLの再生にも使用することで、UL及びLLをより正確に再生することも可能となる。
【0067】
また、本例では、受信装置は、N
ULポイントで伝送路特性を推定し、当該推定した伝送路特性をN
LLポイントにレート変換したものを用いてLLの再生を行う構成となっている。このような構成により、LL信号に対してパイロットを挿入する必要がなくなる。
【0068】
また、本例では、受信装置が、シンボル内誤り訂正符号化処理の結果を、UL及びLLの伝送用の周波数領域において予備用のキャリアとして設けられているACキャリア、又は、上記周波数領域の少なくとも一方の周波数端に拡張的に追加された領域に割り当てる構成となっている。このような構成により、所定の規格に準拠しつつ、シンボル内誤り訂正符号化処理の結果の割り当てを行うことが可能となる。
【0069】
ここで、上記の説明では、上位階層(UL)と下位階層(LL)の2階層を用いて2種類のデータを送信しているが、3階層以上に分けて3種類以上のデータを送信する準同期LDM方式のデータ伝送システムとしてもよい。例えば、それぞれに電力差を設けた3階層を用いて3種類のデータを伝送する場合において、第1〜第2層の関係または第2〜第3層の関係の少なくとも一方について本発明を適用することが可能である。
【0070】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、上記以外にも広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記のような処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0071】
この出願は、2019年5月22日に出願された日本出願特願2019−095635を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。