特許第6982234号(P6982234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982234バンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置、及び自動トラッキング調整方法、並びに同装置を有した無線通信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982234
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】バンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置、及び自動トラッキング調整方法、並びに同装置を有した無線通信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/15 20150101AFI20211206BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20211206BHJP
   H03H 11/04 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H04B17/15
   H04B17/29
   H03H11/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-163275(P2017-163275)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-41320(P2019-41320A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(72)【発明者】
【氏名】河野 諒太
【審査官】 対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−169947(JP,A)
【文献】 特表2008−537367(JP,A)
【文献】 特開2013−128161(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0192055(US,A1)
【文献】 特開2012−044455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46−3/493
H04B 17/00−17/40
H03H 11/00−11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置において、
無線通信機に備える、送信機能部と、調整対象のバンドパスフィルタと、受信機能部と、制御部と、前記無線通信機による送信及び受信を行う通常時と前記バンドパスフィルタをトラッキング調整する調整時とで前記無線通信機内の信号ルートを切り替えるスイッチと、を備え、
前記制御部は、前記バンドパスフィルタのコンデンサの容量値を調整により求める調整プログラムを格納した記憶部を備え、さらに、
前記制御部は、前記送信機能部と受信機能部の各周波数設定、及び前記コンデンサの容量値を制御し、調整時には前記スイッチの切り替えにより、前記送信機能部で発生させた調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過した信号を前記受信機能部で受信するように信号ルートを切り替え、
前記制御部は、前記調整プログラムに基づき、調整時に、予め決められた複数の周波数バンドの各々において、前記送信機能部に所定の調整周波数の調整用信号を発生させ、前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある複数の設定容量値の各々のもとに、前記調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過して前記受信機能部で受信した信号の信号レベルを取得し記録する処理を行い、これら記録した信号レベルのなかで信号レベルが最大となるときの前記コンデンサの設定容量値を当該調整周波数での調整値とし、
前記信号レベルの記録処理は、
前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある一つの設定容量値で第1の信号レベルを取得、記録し、
次に、前記一つの設定容量値から予め決められた値だけ設定容量値を変更してから所定の第1の待ち時間経過後に第2の信号レベルを取得し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値以下のときは前記第2の信号レベルを記録し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値を超えているときは、前記第1の待ち時間よりも長い所定の第2の待ち時間経過後に改めて第3の信号レベルを取得し、前記第2の信号レベルに替えて前記第3の信号レベルを記録する、ことを特徴とするバンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置。
【請求項2】
バンドパスフィルタの自動トラッキング調整方法において、
無線通信機に備える、送信機能部と、調整対象のバンドパスフィルタと、受信機能部と、制御部と、前記無線通信機による送信及び受信を行う通常時と前記バンドパスフィルタをトラッキング調整する調整時とで前記無線通信機内の信号ルートを切り替えるスイッチと、前記制御部の記憶部に格納した、前記バンドパスフィルタのコンデンサの容量値を調整により求める調整プログラム、とを用い、
前記制御部は、前記送信機能部と受信機能部の各周波数設定、及び前記コンデンサの容量値を制御し、調整時には前記スイッチの切り替えにより、前記送信機能部で発生させた調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過した信号を前記受信機能部で受信するように信号ルートを切り替え、
前記調整プログラムに基づいた前記制御部の動作により、予め決められた複数の周波数バンドの各々において、前記送信機能部に所定の調整周波数の調整用信号を発生させ、前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある複数の設定容量値の各々のもとに、前記調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過して前記受信機能部で受信した信号の信号レベルを取得し記録する処理を行い、これら記録した信号レベルのなかで信号レベルが最大となるときの前記コンデンサの設定容量値を当該調整周波数での調整値とし、
前記信号レベルの記録処理は、
前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある一つの設定容量値で第1の信号レベルを取得、記録し、
次に、前記一つの設定容量値から予め決められた値だけ設定容量値を変更してから所定の第1の待ち時間経過後に第2の信号レベルを取得し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値以下のときは前記第2の信号レベルを記録し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値を超えているときは、前記第1の待ち時間よりも長い所定の第2の待ち時間経過後に改めて第3の信号レベルを取得し、前記第2の信号レベルに替えて前記第3の信号レベルを記録する、ことを特徴とするバンドパスフィルタの自動トラッキング調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載のバンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置を有したことを特徴とする無線通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として無線通信機器の回路に用いられるバンドパスフィルタ(以下、BPFという)の自動トラッキング調整装置、及び自動トラッキング調整方法、並びに同装置を有した無線通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に無線通信機に用いられるデジタルプリセレクタは、定数の切り替えが可能なLC(インダクタ、コンデンサ)素子を備え、LCの素子値をリレーで切り替えることにより、中心周波数を変化させることができるBPFである。このようなデジタルプリセレクタを無線通信機に搭載するにあたっては、部品のバラツキにより、中心周波数が個体毎に変化してしまうため、出荷前に周波数毎にトラッキング調整を行う必要がある。
【0003】
このトラッキング調整には、トラッキングジェネレータ付きのスペクトラルアナライザ等の冶具を使用してデジタルプリセレクタ単体で実施することが知られている。
【0004】
また、スペクトラルアナライザ等の冶具を使用しないで、BPFのトラッキング調整を行う装置として、複数の目標周波数について、テスト信号生成部にて生成した所定のテスト信号をフィルタに通過させ、通過した信号レベルを測定し、それに応じてフィルタ制御信号を生成するものがある(例えば特許文献1参照)。また、フィルタ特性周波数を設定した上で、複数の基準信号をフィルタに通過させ、フィルタの出力を検出した結果に応じてフィルタ設定を変更するものがある(例えば特許文献2参照)。また、測定対象へ印加する試験信号の周波数を順次切り替えていき、測定対象から出力された各周波数の試験信号に対応する測定信号をサンプリングして周波数特性を測定する装置がある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−212360号公報
【特許文献2】特許第5017436号公報
【特許文献3】特許第3096675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のスペクトラルアナライザ等の冶具を使用したトラッキング調整においては、スペクトラルアナライザを外部から制御する際の応答速度が遅いため、LCの素子値を変更後に僅かの待ち時間をおくことには問題ないが、無線通信機における全ての周波数バンドについて調整する所要時間は極めて長時間となり、また、冶具を構成する機器が高価であるため、多数の機器を準備して並列に調整することも難しく、調整時間の短縮化が求められていた。また、上記特許文献に示されるようなトラッキング調整装置においても、レベル測定部等を特別に用意する必要があるなど、無線通信機自体が備えている機能構成だけでトラッキング調整を行うものではない。
【0007】
本発明は、スペクトラルアナライザ等の冶具を使用することなく、無線通信機単体での自動トラッキング調整が可能で、安価に調整時間の短縮を図ることができる、BPFの自動トラッキング調整装置、及び自動トラッキング調整方法、並びに同装置を有した無線通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置において、
無線通信機に備える、送信機能部と、調整対象のバンドパスフィルタと、受信機能部と、制御部と、前記無線通信機による送信及び受信を行う通常時と前記バンドパスフィルタをトラッキング調整する調整時とで前記無線通信機内の信号ルートを切り替えるスイッチと、を備え、
前記制御部は、前記バンドパスフィルタのコンデンサの容量値を調整により求める調整プログラムを格納した記憶部を備え、さらに、
前記制御部は、前記送信機能部と受信機能部の各周波数設定、及び前記コンデンサの容量値を制御し、調整時には前記スイッチの切り替えにより、前記送信機能部で発生させた調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過した信号を前記受信機能部で受信するように信号ルートを切り替え、
前記制御部は、前記調整プログラムに基づき、調整時に、予め決められた複数の周波数バンドの各々において、前記送信機能部に所定の調整周波数の調整用信号を発生させ、前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある複数の設定容量値の各々のもとに、前記調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過して前記受信機能部で受信した信号の信号レベルを取得し記録する処理を行い、これら記録した信号レベルのなかで信号レベルが最大となるときの前記コンデンサの設定容量値を当該調整周波数での調整値とし、
前記信号レベルの記録処理は、
前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある一つの設定容量値で第1の信号レベルを取得、記録し、
次に、前記一つの設定容量値から予め決められた値だけ設定容量値を変更してから所定の第1の待ち時間経過後に第2の信号レベルを取得し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値以下のときは前記第2の信号レベルを記録し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値を超えているときは、前記第1の待ち時間よりも長い所定の第2の待ち時間経過後に改めて第3の信号レベルを取得し、前記第2の信号レベルに替えて前記第3の信号レベルを記録する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、バンドパスフィルタの自動トラッキング調整方法において、
無線通信機に備える、送信機能部と、調整対象のバンドパスフィルタと、受信機能部と、制御部と、前記無線通信機による送信及び受信を行う通常時と前記バンドパスフィルタをトラッキング調整する調整時とで前記無線通信機内の信号ルートを切り替えるスイッチと、前記制御部の記憶部に格納した、前記バンドパスフィルタのコンデンサの容量値を調整により求める調整プログラム、とを用い、
前記制御部は、前記送信機能部と受信機能部の各周波数設定、及び前記コンデンサの容量値を制御し、調整時には前記スイッチの切り替えにより、前記送信機能部で発生させた調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過した信号を前記受信機能部で受信するように信号ルートを切り替え、
前記調整プログラムに基づいた前記制御部の動作により、予め決められた複数の周波数バンドの各々において、前記送信機能部に所定の調整周波数の調整用信号を発生させ、前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある複数の設定容量値の各々のもとに、前記調整用信号を前記バンドパスフィルタに通し、前記バンドパスフィルタを通過して前記受信機能部で受信した信号の信号レベルを取得し記録する処理を行い、これら記録した信号レベルのなかで信号レベルが最大となるときの前記コンデンサの設定容量値を当該調整周波数での調整値とし、
前記信号レベルの記録処理は、
前記コンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある一つの設定容量値で第1の信号レベルを取得、記録し、
次に、前記一つの設定容量値から予め決められた値だけ設定容量値を変更してから所定の第1の待ち時間経過後に第2の信号レベルを取得し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値以下のときは前記第2の信号レベルを記録し、
前記第1の信号レベルと前記第2の信号レベルとの差が所定値を超えているときは、前記第1の待ち時間よりも長い所定の第2の待ち時間経過後に改めて第3の信号レベルを取得し、前記第2の信号レベルに替えて前記第3の信号レベルを記録する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記のバンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置を有した無線通信機である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る自動トラッキング調整装置、調整方法、及び無線通信機によれば、無線通信機に備える送信機能部と受信機能部をバンドパスフィルタのトラッキング調整に流用するので、無線通信機単体で他に何も用意することなく多数個を並列的に調整可能となり、安価に調整時間の短縮を図ることができる。
【0013】
また、信号レベルの記録処理において、コンデンサ容量値変更の前後で取得した信号レベルの差が所定値を超えているときは、コンデンサ容量値変更後の待ち時間を変更して改めて信号レベルを取得し記録するようにすれば、検出を誤ることを防止でき、調整に失敗することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る自動トラッキング調整装置の概念構成図である。
図2】同自動トラッキング調整装置を搭載した無線通信機の具体構成図である。
図3】同自動トラッキング調整装置におけるバンドパスフィルタのコンデンサ容量値設定手順を示すフローチャートである。
図4】同バンドパスフィルタのコンデンサ設定容量値と測定信号レベルの関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るバンドパスフィルタの自動トラッキング調整装置(以下、調整装置という)、及び、自動トラッキング調整方法について図面を参照して説明する。図1は調整装置の概念構成を示す。調整装置1は、無線通信機に備える、送信機能部2と、調整対象のバンドパスフィルタ3(以下、BPFという)と、受信機能部4と、それらを制御する制御部5と、を備える。これらは、いずれも無線通信機に備えている構成要素そのものを用いている。つまり、送信機能部2は調整用信号を発生し、受信機能部4はBPF3を通過した信号を受信し、その信号レベルが検出される。
【0016】
図1では、BPF3をトラッキング調整する調整時の回路状態を示しており、無線通信機による送信及び受信を行う通常時の回路状態とするには、制御部5でもって無線通信機内の信号ルートを切り替える。調整装置1は、そのためのスイッチを備えているが、ここでは図示を略いている。BPF3は、リレーによりLC素子の定数、例えばコンデンサの容量値(以下、これで説明)を切り替えることにより、通過する信号の中心周波数を変化させることができ、周波数特性を調整可変なものである。送信機能部2及び受信機能部4は、無線通信機においては、FPGA(Field Programmable Gate Array)8により具現化され得る。
【0017】
制御部5は、送信機能部2と受信機能部4の各周波数設定、及びBPF3のコンデンサの容量値を制御し、調整時にはスイッチの切り替えにより、送信機能部2で発生させた調整用信号をBPF3に通し、BPF3を通過した信号を受信機能部4で受信するように信号ルートを切り替える。また、制御部5は、予め決められた複数の周波数の各々において、BPF3のコンデンサ容量値を調整により求める調整プログラムを格納した記憶部7を備えている。バンドパスフィルタの自動トラッキング調整方法は、調整装置1の制御部5に格納されている調整プログラムを立ち上げることで自動的に実施される。
【0018】
制御部5は、調整モードが選択されると、不図示のスイッチ切り替えにより、送信機能部2からの調整用信号がBPF3を通過して受信機能部4に送られる回路とする。その回路状態において、制御部5は、調整プログラムに基づき、送信機能部2に対して周波数設定信号S1を与え、それにより調整周波数の調整用信号を発生させる。また、制御部5は、調整プログラムに基づき、受信機能部4に対して周波数設定信号R1を与え、受信周波数を調整周波数に設定する。また、制御部5は、調整プログラムに基づき、BPF3に対してLC切り替えリレー制御信号Xを与える。リレー制御信号Xは、BPF3のコンデンサを予め決められた複数の設定容量の一つを選択指令するものであり、制御部5は、リレー制御信号Xを調整計測動作毎に順次変更する。
【0019】
制御部5は、調整プログラムに基づき、予め決められた複数の周波数バンドの各々において、所定の調整周波数について、BPF3のコンデンサの予め決められた容量値の範囲内にある複数の設定容量値の各々のもとに、調整用信号をBPF3に通し、BPF3を通過した信号の受信機能部4での信号レベルを取得し、記録する処理を行う。この処理により記録した信号レベルのなかで信号レベルが最大となるときのコンデンサの設定容量値を当該調整周波数での調整値として記録する。この調整動作は、予め決められた複数の周波数バンドにおいて行われる。このように、調整装置1においては、無線通信機に備える送信機能部2と受信機能部4をBPF3のトラッキング調整に流用して、調整装置1単体を多数、並列的に調整することができる。このため、無線通信機単体での自動トラッキング調整が可能で、安価に調整時間の短縮を図ることができる。
【0020】
前記の信号レベルの記録処理は、少なくとも次のような処理を含むことが好ましい。すなわち、所定の調整周波数での調整において、コンデンサの容量値の範囲内の一つの設定容量値で第1の信号レベルを取得、記録し、次に、前記一つの設定容量値から予め決められた値だけ設定容量値を変更してから所定の第1の待ち時間経過後に第2の信号レベルを取得する。次いで、第1の信号レベルと第2の信号レベルとの差が所定値以下のときは第2の信号レベルを記録する。第1の信号レベルと第2の信号レベルとの差が所定値を超えているときは、第1の待ち時間よりも長い所定の第2の待ち時間経過後に改めて第3の信号レベルを取得し、第2の信号レベルに替えて第3の信号レベルを記録する。この手順を、コンデンサの予め決められた容量値の範囲内で繰り返し行い、記録されている信号レベルのなかから信号レベルが最大となるものを探し、最大となるときのコンデンサの設定容量値を当該調整周波数での調整値として決定し、記録する。上記の信号レベル記録処理は、後述のBPF3のコンデンサ容量値設定の手順を示すフローチャートにより明確に理解されよう。
【0021】
このような信号レベルの記録処理を行うことにより、ノイズを拾って誤計測すること(詳細後述)を防止でき、調整失敗を回避できる。なお、コンデンサの設定容量値を変更してから所定の待ち時間をおいているのは、コンデンサ設定容量値の変更の時間応答性を考慮したものである。
【0022】
(具体例)
図2は、本実施形態による自動トラッキング調整装置を搭載した無線通信機の具体構成を示す。無線通信機10は、送信及び受信の機能を持たせたFPGA8と、調整対象のデジタルプリセレクタであるBPF3と、制御部5と、を備え、FPGA8には、送信機能部2及び受信機能部4が構築されている。FPGA8、BPF3及び制御部5は、調整装置1を構成している。さらに、無線通信機10は、FPGA8からの信号をD/A変換するD/A変換器11と、電力増幅器12と、送受信用アンテナ13と、BPF3等を通った受信信号をA/D変換するA/D変換器15とを備える。なお、BPF3の後段に、通過帯域特性が固定のBPF14(例えば、1.8MHz、3.5MHz、50MHz)が備えられている。
【0023】
無線通信機10は、電力増幅器12の前後に、無線通信機内の信号ルートを切り替えて、送信及び受信を行う通常時と、BPF3をトラッキング調整する調整時とを選択可能とするスイッチ61,62,63,64を備えている。スイッチ61,63は、通常時にONとなり、スイッチ62,64は、調整時にONとなる。通常時は、FPGA8の送信機能部2からの調整用信号を電力増幅器12に送り、外部からの受信信号をBPF3に送る回路となる。調整時は、FPGA8の送信機能部2からの調整用信号をBPF3に通し、FPGA8の受信機能部4に送る回路となる。
【0024】
制御部5は、スイッチ61,62,63,64を制御するほか、FPGA8に対して、送信用の周波数設定信号S1、及び受信用の周波数設定信号R1を出力し、また、BPF3に対して、LC切り替えリレー制御信号Xを出力し、また、FPGA8の受信機能部4での信号レベルR2を取得する。制御部5は、調整プログラムを記録した記憶部7を備える。また、FPGA8は、各種ユーザインタフェース類である、表示部16及びスピーカ17、及びマイク18との間でデータや制御信号の送受を行う。FPGA8には、制御部5と同等の機能を持つCPUを構築してもよく、制御部5との機能分担は任意に設計すればよい。
【0025】
無線通信機10における調整プログラムによる調整動作は、FPGA8の送信機能部2及び受信機能部4を流用しており前述と同様である。以下に、図3のフローチャートを参照して、或る周波数バンドにおける、BPF3(以下、BPFという)の調整動作、すなわち、BPF3の信号通過レベル(信号レベル)が最大となるコンデンサの設定容量値Cを求める手順を説明する。調整モードが選択され調整プログラムが立ち上がると、制御部5は、スイッチ62,64をONとし、調整時の回路接続とする。制御部5は、FPGA8の送信機能部2に対して調整用信号発生のための周波数設定信号S1を与え、調整周波数を設定する(#1)。これにより、送信機能部2は所定の調整周波数の調整用信号を出力する。また、制御部5は、受信機能部4に対して周波数設定信号R1を与え、受信周波数を調整周波数に設定する(#2)。
【0026】
次に、制御部5は、BPF3に対してLC切り替えリレー制御信号Xを与え、BPF3のインダクタLの値を所定値に設定し(#3)、BPF3のコンデンサの容量値Cを可変範囲の下限値に設定する(#4)。このコンデンサ容量値C設定から所定の最初の待ち時間経過後に(#5でYes)、制御部5は、BPF3を通過して受信機能部4にて受信される信号レベルを取得し記録する(#6)。信号レベルは、相対レベル情報で構わない。次に、制御部5は、コンデンサ容量値Cを所定量増加させ(#7)、所定の第1の待ち時間経過後に(#8でYes)、信号レベルを取得する(#9)。コンデンサ容量値Cの所定量増加は、下限値から上限値までの間を予め決められた複数段に分けた一つの容量値とすればよい。なお、最初の待ち時間は、第1の待ち時間よりも長く設定されることが実験的には好ましい。
【0027】
上記#9で取得した信号レベルと、その一つ前(#6)のコンデンサ容量値Cの設定時に記録されている信号レベルとの差(絶対値)を取り、これが所定の値以下であれば(#10でYes)、#9で取得した信号レベルを記録する(#11)。一方、信号レベルとの差(絶対値)(変化量に相当)が所定の値を超えていた場合は(#10でNo)、さらに追加で所定の第2の待ち時間経過後に(#12でYes)、再度、信号レベルを取得し(#13)、これを記録する(#11)。#9乃至#13の処理は、前後の信号レベルの差が所定の閾値を超えているとき、さらに追加の待ち時間を取って改めて信号レベルを検出し、それを記録することになる。
【0028】
上記手順は、コンデンサ容量値Cの設定が上限値に達するまで繰り返し行う。すなわち、コンデンサ容量値Cが上限値に達していなければ(#14でNo)、#7に戻って処理を繰り返す。コンデンサ容量値Cの設定が上限値に達したなら(#14でYes)、記録されている信号レベルから最大値を探し、信号レベルが最大値のときのコンデンサ設定容量値Cを調整値とし、記録する(#15)。さらに、調整周波数を変えて、同様の処理を繰り返す(#16)。
【0029】
なお、上述した信号レベルの検出における、第1の信号レベルは、図3の#6で記録され、又は#11で記録される信号レベルに相当し、第2の信号レベルは、#9で取得され、又は#11で記録される信号レベルに相当し、第3の信号レベルは、#10から#12を経た#13で取得され、#11で記録される信号レベルに相当する。
【0030】
上記手順では、下限値から上限値に向けてコンデンサ容量値Cを漸次増加させる場合を示したが、逆に上限値から下限値に向けて容量値を漸次減少して調整しても構わない。また、上記において、第1の待ち時間よりも第2の待ち時間は長くとることが、実験的には好ましく、例えば、第2の待ち時間は第1の待ち時間の数倍とする。このようにすることが好ましいのは、コンデンサ容量値Cの設定値を順次変化させていく場合、BPF3を通過する信号レベルは、正常には、図4に示すように、滑らかに変化すると考えられるからである。もし、前後の信号レベルの差が所定量よりも大きいときは、後の信号は、本来の信号ではなく、時間が経てば収束するはずのノイズ等を拾っていると考えられる。なお、図4において、設定容量値CをC1からCNに順次変化させていったときの信号レベルがCSで最大値を記録した場合は、このCSが求める調整値とされる。
【0031】
また、コンデンサ容量値Cの設定後の待ち時間を一定とした場合、待ち時間が短すぎると、時間が経てば収束するはずのノイズ等を拾ってしまうことがあり、調整誤りに繋がるため、余裕を持った時間にする必要がある。ところが、必要以上に長い待ち時間とすると、調整の能率が低下する。従い、待ち時間は可能な限り短くして調整し、正常でないと推測される信号レベルのときのみ改めて信号レベルを取り直すことが、調整に失敗することの回避と、調整時間の短縮とを両立させることになる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、無線通信機10が、異なるバンド/モードでの2波同時受信することができるセットである場合は、FPGA8は2つの独立した受信機能部(メインバンド/サブバンド)が設けられることになる。その場合、従来では調整時間が長くなっていたが、本発明によれば、同じ周波数について2ユニットの同時調整が容易に可能となり、調整時間短縮の効果は大きい。また、BPF3は、リレーにより回路定数を切り替える形態のものに限られず、任意の形態を使用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 自動トラッキング調整装置
2 送信機能部
3 調整対象のバンドパスフィルタ(BPF)
4 受信機能部
5 制御部
61,62,63,64 スイッチ
7 記憶部
8 FPGA
10 無線通信機
S1 周波数設定信号
R1 周波数設定信号
X LC切り替えリレー制御信号
図1
図2
図3
図4