(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のスイッチング電源装置及び同期整流回路の一例を示す図である。
【0014】
絶縁型同期整流方式のスイッチング電源装置10は、AC/DCコンバータまたは、DC/DCコンバータである。
スイッチング電源装置10は、1次側回路部に含まれる1次側制御回路(以下1次側制御ICという)11と、トランジスタ12とを有する。なお、
図1では、スイッチング電源装置10の1次側回路部については、1次側制御IC11とトランジスタ12以外、図示が省略されている。スイッチング電源装置10がAC/DCコンバータである場合には、交流電圧を整流する整流部などが1次側回路部に含まれる。
【0015】
さらに、スイッチング電源装置10は、1次側回路部と2次側回路部とを電気的に絶縁するとともに磁気的に結合するトランス13を有する。2次側回路部には、同期整流回路14、キャパシタ15が含まれる。
【0016】
なお、以下では、トランジスタ12は、nチャネル型のFETであるものとする。FETには、たとえば、Si−MOSFETや、GaN−HEMT、SiCまたはGaAs(ガリウムヒ素)を用いたFETなどがある。
【0017】
1次側制御IC11は、電源電圧(図示が省略されている)を受け、所定の周波数(以下スイッチング周波数という)及びデューティ比でトランジスタ12をオンまたはオフするための制御電圧(以下ゲート電圧Vg1という)を出力する。デューティ比は1周期におけるトランジスタ12のオン時間の割合であり、ゲート電圧Vg1のパルス幅を変えることで変更できる。
【0018】
なお、1次側制御IC11は、スイッチング電源装置10の出力電圧(直流電圧)とその期待値との誤差を示す誤差信号を受け、その誤差信号に基づいて、デューティ比を適切な値へ調整するようにしてもよい。
【0019】
また、1次側制御IC11は、基準電位(以下では0Vとするが、特に0Vに限定されない)となる端子(以下GNDという)に接続される。
トランジスタ12は、トランス13の1次巻き線13aに接続されたドレイン端子と、GNDに接続されたソース端子と、1次側制御IC11に接続されたゲート端子とを有する。トランジスタ12は、1次側制御IC11から供給されるゲート電圧Vg1に基づいてスイッチング動作を行う。
【0020】
トランス13は、1次巻き線13a、2次巻き線13b、コア13cを有する。
図1では模式的に図示されているが、1次巻き線13a、2次巻き線13bは、コア13cに巻き付けられている。なお、各巻き線の一端の近傍に示されている黒丸は各巻き線の巻き始めの位置を示している。
【0021】
1次巻き線13aの一端は、図示を省略しているが、スイッチング電源装置10がAC/DCコンバータの場合、交流電圧を整流する整流部に接続され、スイッチング電源装置10がDC/DCコンバータの場合には、DC電源に接続される。1次巻き線13aの他端はトランジスタ12のドレイン端子に接続される。2次巻き線13bの一端は、キャパシタ15の一端及び、スイッチング電源装置10の出力端子OUTに接続される。2次巻き線13bの他端は、同期整流回路14に接続される。
【0022】
同期整流回路14は、トランジスタ14a、2次側制御回路(以下2次側制御ICという)14b、ダイオード14c,14d、抵抗素子14e、キャパシタ14f、抵抗素子14gを有する。なお、トランジスタ12と同様、以下では、トランジスタ14aは、nチャネル型のFETであるものとするが、トランジスタ14aは、GaN−HEMT、SiCまたはGaAsを用いたFETなどの低ゲート耐圧トランジスタである。トランジスタ14aにおいて、ゲート部の耐圧(ゲート−ソース間電圧の最大許容値)は、たとえば、6V程度である。
【0023】
トランジスタ14aは、2次巻き線13bに接続されたドレイン端子と、GNDに接続されたソース端子と、2次側制御IC14bから供給される制御電圧(以下ゲート電圧Vg2という)が印加されるゲート端子を有する。トランジスタ14aは、ゲート電圧Vg2に基づいて、スイッチング動作を行う。
【0024】
2次側制御IC14bは、トランジスタ14aのゲート端子に供給する電荷を蓄えるキャパシタ15が接続されるとともに、同期整流によって得られる電圧(直流電圧)Vintが印加される端子14b1を有する。そして、2次側制御IC14bは、電圧Vintを最大値としたゲート電圧Vg2を、トランジスタ14aのゲート端子に印加する。
【0025】
図1の例では、端子14b1には、スイッチング電源装置10の出力端子OUTが直接接続されている(短絡されている)。そのため、端子14b1に印加される電圧Vintは、スイッチング電源装置10の出力電圧Voutである。
【0026】
2次側制御IC14bは、さらに、内部電圧生成回路14b2、比較器14b3、論理回路14b4、増幅器14b5を有する。
内部電圧生成回路14b2は、トランジスタ14aのドレイン電圧Vd2をダイオード14dと抵抗素子14eとキャパシタ14fにより整流した電圧に基づいて内部電圧を生成する。内部電圧生成回路14b2の回路パラメータ(内部電圧生成回路14b2が有する複数の抵抗素子の抵抗値など)は、たとえば、低ゲート耐圧トランジスタであるトランジスタ14aのゲート部の耐圧を超える内部電圧を生成するように設定されている。しかし、内部電圧生成回路14b2の出力端子の電圧は、その内部電圧にかかわらず、スイッチング電源装置10の出力電圧Voutに固定される。内部電圧生成回路14b2の出力端子は、端子14b1を介してスイッチング電源装置10の出力端子OUTに短絡されるためである。
【0027】
比較器14b3は、ドレイン電圧Vd2と参照電圧Vrefとの比較結果を出力する。比較器14b3の一方の入力端子は、抵抗素子14gを介してトランジスタ14aのドレイン端子に接続され、比較器14b3の他方の入力端子には参照電圧Vrefが印加される。
【0028】
論理回路14b4は、比較器14b3が出力する比較結果に基づいてトランジスタ14aをオンまたはオフするかを決定する。たとえば、論理回路14b4は、ドレイン電圧Vd2が所定の参照電圧よりも小さい場合に、トランジスタ14aをオンすることを指示する信号を出力する。
【0029】
増幅器14b5は、論理回路14b4の出力信号に基づいて、ゲート電圧Vg2を生成する。また、増幅器14b5は、内部電圧生成回路14b2の出力端子と、端子14b1に接続される。ゲート電圧Vg2の最大値は、端子14b1に印加される電圧Vint、すなわちスイッチング電源装置10の出力電圧Voutとなる。
【0030】
なお、2次側制御IC14bは、GNDにも接続される。
ダイオード14cは、トランジスタ14aのスイッチング動作による同期整流が開始するまでの期間、整流を行う機能を有する。ダイオード14cのアノードは、トランジスタ14aのソース端子に接続され、カソードはトランジスタ14aのドレイン端子に接続される。
【0031】
ダイオード14d、抵抗素子14e、キャパシタ14fは、2次側制御IC14bを動作させるための直流電圧である電源電圧を生成する。
ダイオード14dのアノードは2次巻き線13bに接続され、カソードは抵抗素子14eの一端に接続される。抵抗素子14eの他端は、キャパシタ14fの一端及び2次側制御IC14bの内部電圧生成回路14b2に接続される。キャパシタ14fの他端はGNDに接続される。
【0032】
スイッチング電源装置10のキャパシタ15は、リップル電圧を低減するために設けられている。さらに、キャパシタ15は、トランジスタ14aのゲート端子に供給する電荷を蓄える機能も有する。キャパシタ15の一端は、2次巻き線13b、出力端子OUT及び2次側制御IC14bの端子14b1に接続され、他端はGNDに接続される。
【0033】
以下、スイッチング電源装置10の動作を説明する。
1次側制御IC11が出力するゲート電圧Vg1がL(Low)レベルからH(High)レベルに立ち上がると、トランジスタ12がオンし、ドレイン端子からソース端子の方向にドレイン電流Id1が流れ、トランス13に磁気エネルギーが蓄えられる。ゲート電圧Vg1がHレベルからLレベルに立ち下がると、トランジスタ12がオフし、ドレイン電流Id1は0Aになる。トランジスタ12がオフすると、トランス13に蓄えられた磁気エネルギーにより、まず、ダイオード14
cを介して、トランジスタ14aの
ドレイン端子からダイオード14cのカソードの方向にドレイン電流Id2が流れる。このときドレイン電圧Vd2は、負の値に変化する。その変化を2次側制御IC14bが検出したとき、2次側制御IC14bは、ゲート電圧Vg2をLレベルからHレベルに立ち上げる。これによりトランジスタ14aがオンする。このときのHレベルの値は、出力電圧Voutとなる。
【0034】
トランス13に蓄えられた磁気エネルギーが減少することによるドレイン電流Id2の減少に伴い、ドレイン電圧Vd2が上昇し、参照電圧Vrefを超えたとき、2次側制御IC14bは、ゲート電圧Vg2をHレベルからLレベルに立ち下げる。これによりトランジスタ14aはオフする。このような動作が繰り返され、直流電圧である出力電圧Voutが出力端子OUTから出力される。
【0035】
以下、内部電圧生成回路14b2の例を示す。また、端子14b1に出力端子OUTが短絡されている場合の内部電圧生成回路14b2の動作と比較するために、端子14b1に出力端子OUTが短絡されていない場合の内部電圧生成回路14b2の動作を説明する。
【0036】
(比較例)
図2は、内部電圧生成回路の一例とその出力端子の接続先を示す図である。
なお、
図2では
図1に示したダイオード14d、抵抗素子14e、キャパシタ14fによって生成された電圧が、Vccと表記されている。
【0037】
内部電圧生成回路14b2は、差動増幅器20、トランジスタ21、抵抗素子22,23を有する。
差動増幅器20の非反転入力端子には参照電圧Vrefaが印加されており、反転入力端子は、直列に接続された抵抗素子22,23に接続される。差動増幅器20の出力端子は、トランジスタ21のゲート端子に接続される。
【0038】
トランジスタ21は、nチャネル型のMOSFETであり、ドレイン端子に電圧Vccが印加される。トランジスタ21のソース端子(内部電圧生成回路14b2の出力端子に相当する)は、端子14b1、抵抗素子22の一端及び増幅器14b5に接続される。
【0039】
抵抗素子22の他端は、差動増幅器20の反転入力端子及び抵抗素子23の一端に接続され、抵抗素子23の他端はGNDに接続される。
なお、
図2の例では、端子14b1には、キャパシタ24が接続されている。
【0040】
このような内部電圧生成回路14b2において、抵抗素子22に印加される電圧をVa、抵抗素子23に印加される電圧をVbとすると、電圧Vintは、以下の式(1)のように表せる。
【0041】
Vint=Va+Vb (1)
抵抗素子22の抵抗値をR1、抵抗素子23の抵抗値をR2として、β=R2/(R1+R2)とおくと、電圧Vbは以下の式(2)のように表せる。
【0042】
Vb=βVint (2)
差動増幅器20の反転入力端子と非反転入力端子との間の電圧(入力電圧)をeとすると、入力電圧eは、式(2)より、以下の式(3)のように表せる。
【0043】
e=Vrefa−Vb=Vrefa―βVint (3)
トランジスタ21のゲート電圧をVg、差動増幅器20のゲインをAとすると、ゲート電圧Vgは、式(3)より、以下の式(4)のように表せる。
【0044】
Vg=A・e=A(Vrefa−βVint) (4)
トランジスタ21の相互コンダクタンスgmが十分大きく(たとえば、10)、R1+R2も十分大きく(たとえば、100kΩ以上)なるように設定した場合、トランジスタ21のゲート電圧Vgは、そのまま電圧Vintとなる。トランジスタ21と抵抗素子22,23を含む回路がソースフォロア回路となるためである。したがって、ゲート電圧Vgは、以下の式(5)のように表せる。
【0045】
Vg=A(Vrefa−βVint)=Vint (5)
式(5)より、電圧Vintは以下の式(6)のように表せる。
Vint=A・Vrefa/(1+Aβ) (6)
式(6)において、Aβが1よりも十分大きくなるようなゲインAをもつ差動増幅器20が用いられた場合、式(6)は以下の式(7)のように近似できる。
【0046】
Vint≒Vrefa/β (7)
2次側制御IC14bは、電力用のSi−MOSFETを駆動するために電圧Vintが7Vになるように、内部電圧生成回路14b2の抵抗素子22,23の抵抗値R1,R2や、参照電圧Vrefaが決定されていることが多い。電力用のSi−MOSFETの閾値電圧(ドレイン−ソース間に電流が流れ始めるゲート−ソース間電圧)が、スイッチング電源装置では3V以上に設定されることが多く、ゲート部の耐圧が10V程度であるためである。
【0047】
参照電圧Vrefaが1.25Vである場合、電圧Vintを7Vにするには、式(7)よりβ=1.25/7≒0.18となるように抵抗値R1,R2を決定すればよい。
以上のように、
図2に示すような回路構成の場合、トランジスタ21にドレイン電流が流れる程度に電圧Vccが設定されていれば、ゲインAとβを上記のように設定することで、電圧Vintを常に7Vとすることができる。
【0048】
電圧Vintは、増幅器14b5に印加される。これにより、電圧Vintが、
図1に示したトランジスタ14aのゲート端子に印加されるゲート電圧Vg2の最大値となる。
しかし、GaN−HEMTなどのワイドバンドギャップ半導体を用いたFETのゲート部の耐圧は、5〜6V程度であり、電力用のSi−MOSFETと比べて低く、7VをそのようなFETのゲート端子にそのまま印加することができない。
【0049】
(第1の実施の形態の同期整流回路における内部電圧生成回路の出力端子の接続先)
図3は、第1の実施の形態の同期整流回路における内部電圧生成回路の出力端子の接続先を示す図である。
【0050】
内部電圧生成回路14b2の出力端子は、2次側制御IC14bの端子14b1を介して、出力端子OUTに接続される。このとき、端子14b1の電圧Vintは、同期整流によって得られる直流電圧である出力電圧Voutとなり、内部電圧生成回路14b2の抵抗素子22,23による直列回路にも出力電圧Voutが印加される。抵抗素子22,23の抵抗値R1,R2が上記のように電圧Vintが7Vになるように設定されており、スイッチング電源装置10の出力電圧Voutが5Vである場合、差動増幅器20は、電圧Vintを7Vにするようにゲート電圧Vgを上げる。しかし、端子14b1がスイッチング電源装置10の出力端子OUTと短絡されているため、電圧Vintは常に5Vとなる。
【0051】
したがって、
図1に示したトランジスタ14aのゲート端子に印加されるゲート電圧Vg2の最大値も5Vとなる。
出力電圧Voutがトランジスタ14aの閾値電圧以上、且つ、トランジスタ14aの耐圧以下である場合には、
図2の回路構成に対して、出力端子OUTと端子14b1とを直接接続する配線を追加するだけで、トランジスタ14aを(安全に)駆動できる。
【0052】
つまり、低ゲート耐圧トランジスタであるトランジスタ14aのゲート部の耐圧を超える内部電圧を生成するように回路パラメータが調整された内部電圧生成回路14b2を有する2次側制御IC14bを用いても、部品数の増加が抑えられる。
【0053】
一方、出力電圧Voutがトランジスタ14aのゲート部の耐圧を超える場合、出力電圧Voutを分圧する分圧回路を設け、端子14b1に、トランジスタ14aの閾値電圧以上、且つ、トランジスタ14aのゲート部の耐圧以下の直流電圧が印加されるようにすればよい。その場合も、ワイドバンドギャップ半導体デバイス専用のドライバとその電源、ドライバの動作を安定化させるための部品などを追加するよりも、部品数の増加が抑えられる。なお、分圧回路を設ける例については後述する。
【0054】
部品数の増加が抑えられることにより、コストの上昇が抑えられるとともに、スイッチング電源装置10の小型化も図れる。
また、2次側制御IC14bとして、電力用のSi−MOSFETを駆動するために利用されているものを用いることができるため、ゲート部の耐圧が電力用のSi―MOSFETと比べて小さいFETを駆動するために新たに制御ICを開発しなくてもよくなる。
【0055】
なお、スマートフォンやタブレット端末装置などの充電に用いられる、USB(Universal Serial Bus)規格に則った充電器の出力電圧は、5V程度である。5V程度であれば、GaN−HEMTなどの低ゲート耐圧トランジスタの閾値電圧以上、且つ耐圧以下となる。スイッチング電源装置10は、このような充電器に好適である。
【0056】
(シミュレーション例)
以下、2次側制御IC14bの端子14b1に出力端子OUTを接続(短絡)する場合(
図1、
図3に示したような場合)と、短絡しない場合(
図2に示したような場合)のそれぞれについての、各部の電圧の時間変化のシミュレーション結果の例を示す。
【0057】
なお、シミュレーション条件として、たとえば、以下の条件が用いられる。
スイッチング電源装置10は、DC−DCコンバータであるものとして、入力電圧(直流電圧)Vinとして、40Vが用いられる。1次側制御IC11は、デューティ比=50%でトランジスタ12をオンまたはオフする。トランス13の1次巻き線13aのインダクタンス値として100μH、2次巻き線13bのインダクタンス値として2μHが用いられる。ま
た、出力電圧Voutが5Vになるように、1次巻き線13aと2次巻き線13bの巻き線比が調整される。抵抗素子14eの抵抗値として10Ω、キャパシタ14fのキャパシタンス値として10μF、キャパシタ15のキャパシタンス値として100μFが用いられる。ダイオード14c,14dのオン電圧として1Vが用いられる。また、内部電圧生成回路14b2の参照電圧Vrefaとして1.25V、抵抗素子22の抵抗値として575Ω、抵抗素子23の抵抗値として125Ω、キャパシタ24のキャパシタンス値として4.7μFが用いられる。また、出力端子OUTに接続される図示しない負荷の負荷抵抗として1Ωが用いられる。その他の条件については説明を省略する。
【0058】
図4は、2次側制御ICの端子にスイッチング電源装置の出力端子を短絡しない場合のシミュレーション結果の一例を示す図である。
上から、入力電圧Vin、出力電圧Vout、トランジスタ21のドレイン電圧Vd、端子14b1の電圧Vintの波形が示されている。横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。
【0059】
入力電圧Vinが0Vから40Vに立ち上がると、出力電圧Voutは5Vに収束していく。ドレイン電圧Vdは10Vに収束していき、電圧Vintは前述の内部電圧生成回路14b2の機能により7Vに収束する。
【0060】
なお、ドレイン電圧Vd(
図2の電圧Vccに相当する)が、10Vに収束する理由は、以下の通りである。
出力電圧Voutが5Vである場合、2次巻き線13bの両端のうち、ダイオード14cに接続される側の一端の電圧の平均値が5Vになっている。以下この電圧を電圧VL2という。電圧VL2は、1次側制御IC11がデューティ比50%でトランジスタ12をオンまたはオフすることにより、Hレベルの期間とLレベルの期間が等しくなる。電圧VL2のHレベルの電圧をVH、Lレベルの電圧をVL、ダイオード14cのオン電圧をVFとすると、(VH+VL)×0.5=(VH−VF)
×0.5=5Vとなる。オン電圧VF=1Vとした場合、(VH−1)×0.5=5Vとなり、VH=11Vとなる。
【0061】
このような電圧VL2が、オン電圧が1Vのダイオード14dと、抵抗素子14e及びキャパシタ14fにより整流される場合、整流された電圧は、VH−1=10Vに収束していく。したがって、ドレイン電圧Vdが10Vに収束していくのである。
【0062】
図5は、2次側制御ICの端子にスイッチング電源装置の出力端子を短絡した場合のシミュレーション結果の一例を示す図である。
上から、入力電圧Vin、出力電圧Vout、トランジスタ21のドレイン電圧Vd、端子14b1の電圧Vintの波形が示されている。横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。
【0063】
入力電圧Vinが0Vから40Vに立ち上がると、出力電圧Voutは5Vに収束していく。ドレイン電圧Vdは5Vに収束していき、電圧Vintは、端子14b1に出力端子OUTを短絡していることにより、出力電圧Voutと同様に5Vに収束する。
【0064】
なお、端子14b1に出力端子OUTを短絡することでドレイン電圧Vdが、10Vではなく5Vに収束する理由は、以下の通りである。
端子14b1に出力端子OUTを短絡した場合、電圧Vintは、短絡しない場合と比べて小さくなる。その分、トランジスタ21のゲート−ソース間電圧が、短絡しない場合よりも上昇し、トランジスタ21のドレイン電流が大きくなる。出力端子OUTに接続される負荷の負荷抵抗が1Ωである場合、この値は、
図3に示した内部電圧生成回路14b2の抵抗素子22,23の抵抗値よりも十分小さいため、トランジスタ21のドレイン電流のほとんどが、負荷側に流れることになる。また、出力電圧Voutは5Vで一定であるとすると、出力端子OUTには5Vを出力する直流電源(電池)が接続されているとみなせる。このとき、トランジスタ21のドレイン端子に対して出力端子OUT側のパスの抵抗は、ほぼ0Ωとみなすことができるため、ドレイン電圧Vdは、出力電圧Voutと同様に5Vになる。
【0065】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態のスイッチング電源装置及び同期整流回路の一例を示す図である。
図6において、
図1に示した要素と同じ要素については、同一符号が付されている。
【0066】
スイッチング電源装置30の同期整流回路31は、抵抗素子32a,32bを有する分圧回路32とキャパシタ33を有する。
分圧回路32は、出力端子OUTとGNDとの間に接続されており、出力電圧Voutを分圧した電圧を、2次側制御IC14bの端子14b1に印加する。
【0067】
キャパシタ33は、トランジスタ14aのゲート端子に供給する電荷を蓄える。キャパシタ33の一端は、分圧回路32の抵抗素子32aと抵抗素子32bの間のノードに接続され、他端はGNDに接続される。
【0068】
このようなスイッチング電源装置30は、出力電圧Voutがトランジスタ14aのゲート部の耐圧を超える場合に用いられる。分圧回路32の抵抗素子32a,32bの抵抗値は、分圧により得られる電圧が、トランジスタ14aの閾値電圧以上、且つゲート部の耐圧以下になるように決定される。
【0069】
同期整流回路31がこのような分圧回路32を有することで、出力電圧Voutがトランジスタ14aのゲート部の耐圧を超える場合であっても、スイッチング電源装置30は、低ゲート耐圧トランジスタであるトランジスタ14aを駆動することができる。また、追加部品も少なくてもすみ、第1の実施の形態のスイッチング電源装置10と同様の効果が得られる。
【0070】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態のスイッチング電源装置及び同期整流回路の一例を示す図である。
【0071】
第3の実施の形態のスイッチング電源装置40は、DC/DCコンバータである。
スイッチング電源装置40の1次側回路部には、1次側制御IC41、トランジスタ42、抵抗素子43a,43b,44、キャパシタ45,46,47、抵抗素子48,49,50、キャパシタ51が含まれる。また、スイッチング電源装置40は、1次側回路部と2次側回路部とを電気的に絶縁するとともに磁気的に結合するトランス52を有する。2次側回路部には、同期整流回路53、キャパシタ54が含まれる。
【0072】
なお、以下では、トランジスタ42は、nチャネル型のFETであるものとする。FETには、たとえば、Si−MOSFETや、GaN−HEMT、SiCまたはGaAsを用いたFETなどがある。
【0073】
1次側制御IC41は、トランジスタ42を所定のスイッチング周波数及びデューティ比でオンまたはオフするためのゲート電圧VG1を出力する。
1次側制御IC41として、たとえば、リニアテクノロジー社のLT(登録商標)3748が用いられるが、同様の機能を有するものであればこれに限定されない。1次側制御IC41は、“EN/UVLO”、“Vc”、“SS”、“Vin”、“Rfb”、“Rref”、“Gate”、“Sense”、“INTVcc”、“GND”と表記された複数の端子を有する。
【0074】
“EN/UVLO”には、1次側制御IC41の動作の可否を決定するための判定電圧を1次側制御IC41に供給するための抵抗素子43a,43bの一端が接続される。抵抗素子43aの他端はスイッチング電源装置40の入力端子INに接続され、抵抗素子43bの他端はGNDに接続される。
【0075】
“Vc”には、帰還電圧として1次側制御IC41に供給されるトランジスタ42のドレイン電圧VD1と内部参照電圧との差電圧の時間的応答速度を調整するための、抵抗素子44とキャパシタ45による直列回路が接続される。抵抗素子44の一端はGNDに接続され、抵抗素子44の他端はキャパシタ45の一端に接続され、キャパシタ45の他端は“Vc”に接続される。
【0076】
“SS”には、入力端子INに入力電圧の印加が開始されたときに、出力端子OUTの出力電圧の上昇を制御するためのキャパシタ46の一端が接続される。キャパシタ46の他端はGNDに接続される。
【0077】
“Vin”は、入力端子INに接続される。
“INTVcc”には、トランジスタ42に電荷を供給するためのキャパシタ47の一端が接続される。キャパシタ47の他端はGNDに接続される。
【0078】
“Rfb”には、ドレイン電圧VD1を検出するための抵抗素子48の一端が接続される。抵抗素子48の他端はトランジスタ42のドレイン端子に接続される。1次側制御IC41は、このドレイン電圧VD1を帰還電圧として検出し、ドレイン電圧
VD1に基づいて、スイッチング電源装置40の出力電圧が一定に保たれるように、デューティ比を適切な値へ調整する。
【0079】
“Rref”には、スイッチング周波数を決定するための内部参照電圧を生成する抵抗素子49の一端が接続される。抵抗素子49の他端はGNDに接続される。
“Gate”には、トランジスタ42のゲート端子が接続される。
【0080】
“Sense”は、トランジスタ42のソース端子に流れる電流をモニタするための端子であり、トランジスタ42のソース端子と抵抗素子50の一端に接続される。抵抗素子50の他端はGNDに接続される。1次側制御IC41は検出した電流が異常値であるときには、たとえば、トランジスタ42のスイッチング動作を停止する。
【0081】
“GND”は、GNDに接続される。
トランジスタ42は、トランス52の1次巻き線52aに接続されたドレイン端子と、抵抗素子50を介してGNDに接続されたソース端子と、1次側制御IC41に接続されたゲート端子を有する。トランジスタ42は、1次側制御IC41から供給されるゲート電圧VG1に応じてオンまたはオフする。
【0082】
キャパシタ51は、トランス52の1次巻き線52aの両端に接続される。キャパシタ51は、スイッチング動作時に、1次巻き線52aの両端に生じるサージ電圧のエネルギーを吸収する。なお、キャパシタ51はなくてもよい。
【0083】
トランス52は、1次巻き線52a、2次巻き線52b、コア52cを有する。
図7では模式的に図示されているが、1次巻き線52a、2次巻き線52bは、コア52cに巻き付けられている。なお、各巻き線の一端の近傍に示されている黒丸は各巻き線の巻き始めの位置を示している。
【0084】
1次巻き線52aの一端は、入力端子INに接続される。2次巻き線52bの一端は、キャパシタ54の一端及び、スイッチング電源装置40の出力端子OUTに接続される。2次巻き線52bの他端は、同期整流回路53に接続される。
【0085】
同期整流回路53は、トランジスタ53a、2次側制御IC53b、ダイオード53c,53d、抵抗素子53e、キャパシタ53f、抵抗素子53gを有する。なお、トランジスタ42と同様、以下では、トランジスタ53aは、nチャネル型のFETであるものとするが、トランジスタ53aは、GaN−HEMT、SiCまたはGaAsを用いたFETなどの低ゲート耐圧トランジスタである。
【0086】
トランジスタ53aは、2次巻き線52bの一端に接続されたドレイン端子と、GNDに接続されたソース端子と、2次側制御IC53bから供給されるゲート電圧VG2が印加されるゲート端子を有する。トランジスタ53aは、ゲート電圧VG2に基づいて、スイッチング動作を行う。
【0087】
2次側制御IC53bは、
図1に示したような2次側制御IC14bと同様の要素を有するが、
図7では図示が省略されている。2次側制御IC53bの図示しない内部電圧生成回路は、トランジスタ53aのゲート部の耐圧を超える内部電圧を生成するように回路パラメータが調整されている。
【0088】
2次側制御IC53bは、トランジスタ53aのドレイン電圧VD2に基づいて、トランジスタ53aのスイッチング動作を制御するためのゲート電圧VG2を出力する。
2次側制御IC53bとして、たとえば、リニアテクノロジー社のLT8309が用いられるが、同様の機能を有するものであればこれに限定されない。2次側制御IC53bは、“Vcc”、“Drain”、“Gate”、“INTVcc”、“GND”と表記された複数の端子を有する。
【0089】
“Vcc”には、ダイオード53d、抵抗素子53e、キャパシタ53fによって生成される電源電圧が供給され、2次側制御IC53bは、その電源電圧によって動作する。
“Drain”には、トランジスタ53aのドレイン電圧VD2を検出するために設けられた抵抗素子53gを介して、2次巻き線52bの一端及びトランジスタ53aのドレイン端子が接続される。
【0090】
“Gate”には、トランジスタ53aのゲート端子が接続される。“Gate”からゲート電圧VG2が出力される。
“INTVcc”は、トランジスタ53aに供給する電荷を蓄えるキャパシタ(
図7の例ではキャパシタ54)が接続される外部端子である。“INTVcc”は、第1の実施の形態の2次側制御IC14bの端子14b1に相当し、端子14b1と同様に、スイッチング電源装置40の出力端子OUTと直接接続される。
【0091】
“GND”には、GNDが接続される。
ダイオード53cは、トランジスタ53aのスイッチング動作による同期整流が開始するまでの期間、整流を行う機能を有する。ダイオード53cのアノードは、トランジスタ53aのソース端子に接続され、カソードはトランジスタ53aのドレイン端子に接続される。
【0092】
ダイオード53d、抵抗素子53e、キャパシタ53fは、2次側制御IC53bを動作させるための直流電圧である電源電圧を生成する。
ダイオード53dのアノードは、2次巻き線52bの一端に接続され、カソードは、抵抗素子53eの一端に接続される。抵抗素子53eの他端は、キャパシタ53fの一端及び2次側制御IC53bの端子の1つである“Vcc”に接続される。キャパシタ53fの他端はGNDに接続される。
【0093】
スイッチング電源装置40のキャパシタ54は、リップル電圧を低減するために設けられている。さらに、キャパシタ54は、トランジスタ53aのゲート端子に供給する電荷を蓄える機能も有する。キャパシタ54の一端は、2次巻き線52b、出力端子OUT及び2次側制御IC53bの“INTVcc”に接続され、他端はGNDに接続される。
【0094】
なお、スイッチング電源装置40は、DC/DCコンバータであるため、入力端子INには直流電源55が接続される。
以下、DC/DCコンバータであるスイッチング電源装置40の動作を説明する。
【0095】
1次側制御IC41が出力するゲート電圧VG1がLレベルからHレベルに立ち上がると、トランジスタ42がオンし、ドレイン端子からソース端子の方向にドレイン電流ID1が流れ、トランス52に磁気エネルギーが蓄えられる。ゲート電圧VG1がHレベルからLレベルに立ち下がると、トランジスタ42がオフし、ドレイン電流ID1は0Aになる。トランジスタ42がオフすると、トランス52に蓄えられた磁気エネルギーにより、まず、ダイオード53cを介して、トランジスタ53aの
ドレイン端子から、ダイオード53cのカソードの方向にドレイン電流ID2が流れる。このときドレイン電圧VD2は、負の値に変化する。その変化を2次側制御IC53bが検出したとき、2次側制御IC53bは、ゲート電圧VG2をLレベルからHレベルに立ち上げる。これによりトランジスタ53aがオンする。このときのHレベルの値は、スイッチング電源装置40の出力電圧Voutとなる。
【0096】
トランス52に蓄えられた磁気エネルギーが減少することによるドレイン電流ID2の減少に伴い、ドレイン電圧VD2が上昇し、所定の参照電圧を超えたとき、2次側制御IC53bは、ゲート電圧VG2をHレベルからLレベルに立ち下げる。これによりトランジスタ53aはオフする。このような動作が繰り返され、直流電圧である出力電圧Voutが出力端子OUTから出力される。
【0097】
(シミュレーション例)
以下、第3の実施の形態のスイッチング電源装置40の動作シミュレーション結果の例を示す。
【0098】
なお、シミュレーション条件として、たとえば、以下の条件が用いられる。
直流電源55は、48Vの直流電圧を出力する。トランス52の1次巻き線52aのインダクタンス値として28.5μH、2次巻き線52bのインダクタンス値として0.8μHが用いられる。抵抗素子43aの抵抗値として412kΩ、抵抗素子43bの抵抗値として15.4kΩ、抵抗素子44の抵抗値として12.1kΩ、キャパシタ45のキャパシタンス値として1500pFが用いられる。また、キャパシタ46のキャパシタンス値として0.005μF、キャパシタ47のキャパシタンス値として4.7μF、抵抗素子48の抵抗値として147kΩが用いられる。また、抵抗素子49の抵抗値として6.04kΩ、抵抗素子50の抵抗値として6mΩ、キャパシタ51のキャパシタンス値として1fFが用いられる。さらに、抵抗素子53eの抵抗値として10Ω、キャパシタ53fのキャパシタンス値として1μF、抵抗素子53gの抵抗値として2.3kΩ、キャパシタ54のキャパシタンス値として330μFが用いられる。その他の条件については説明を省略する。
【0099】
図8は、動作シミュレーション結果の一例を示す図である。
図8には、出力端子OUTに負荷抵抗が1Ωの負荷を接続した状態におけるスイッチング電源装置40の動作シミュレーションにより得られる、出力電圧Vout、トランジスタ53aのゲート電圧VG2の波形が示されている。横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。
【0100】
図8に示すように出力電圧Voutは、ほぼ5Vを維持した状態となっている。さらに、ゲート電圧VG2も最大値が5Vを超えていない。
図9は、変換効率の計算結果の一例を示す図である。横軸は電力[W]を表し、縦軸は効率[%]を表す。
【0101】
図9には、負荷抵抗を変えて負荷における電力を変化させたときの変換効率の計算結果が示されている。
図9に示すように、変換効率のピーク値は90%を超えている。
以上のように、第3の実施の形態のスイッチング電源装置40では、2次側制御IC53bの端子である“INTVcc”に、スイッチング電源装置40の出力端子OUTを接続するだけで、ゲート部の耐圧を超えずにトランジスタ53aを駆動できる。
【0102】
したがって、トランジスタ53aのゲート部の耐圧を超える内部電圧を生成するように回路パラメータが調整された内部電圧生成回路を有する2次側制御IC53bを用いても、部品数の増加が抑えられる。また、
図9に示すように変換効率も比較的よい値が得られる。
【0103】
なお、第3の実施の形態のスイッチング電源装置40においても、出力電圧Voutがトランジスタ53aのゲート部の耐圧を超える場合には、第2の実施の形態のスイッチング電源装置30のように、分圧回路32を設けるようにしてもよい。
【0104】
以上、実施の形態に基づき、本発明の同期整流回路及びスイッチング電源装置の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。たとえば、
図1のトランジスタ12,14aなどはnチャネル型のFETであるものとして説明したが、pチャネル型のFETであってもよい。また、上記の説明では、スイッチング電源装置10,30,40は、トランス13,52を用いた絶縁型であるものとしたが、トランス13,52を用いない非絶縁型であってもよい。