【文献】
吸着 工場操作シリーズ No.7,株式会社 化学工業社,1975年07月01日,p.11-15,105-114,121-142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程[1]が、精製目的物としての前記式(1)で表されるフラーレン誘導体及び不純物フラーレン化合物を含有する組成物を固相としての活性白土を含有するカラムに導入する工程であり;及び
更に、[2]前記組成物が導入されたカラム内に液相としての溶媒を流して、前記式(1)で表されるフラーレン誘導体をカラムから溶出させる工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の精製方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1. 用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
【0012】
当業者が、技術常識に基づき理解する通り、本明細書中、用語「含有量」及び用語「純度」は、文脈に応じて、相互互換的に使用され得る。
【0013】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0014】
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
【0015】
本明細書中、室温は、10〜40℃の範囲内の温度を意味することができる。
【0016】
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」は、その構成原子として1個以上の炭素原子を含有する基を意味する。
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」としては、炭化水素基が例示される。
【0017】
本明細書中、特に限定のない限り、「炭化水素基」は、その構成原子として、1個以上の炭素原子、及び1個以上の水素原子を含有する基を意味する。本明細書中、炭化水素基をヒドロカルビル基と称する場合がある。
本明細書中、特に限定のない限り、「炭化水素基」としては、1個以上の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基(例:ベンジル基)、及び1個以上の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(アリール基)が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせであることができる。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」は、飽和、又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(例:プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例:n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、及びヘキシル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数1〜10のアルキル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、及び5−ヘキセニル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数2〜10のアルケニル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、及び5−ヘキシニル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数2〜6のアルキニル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル等の炭素数3〜8のシクロアルキル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「芳香族炭化水素基(アリール基)」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アンスリル基、及びピレニル基が例示される。
【0018】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルコキシ基」は、例えば、RO−(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
本明細書中、特に限定のない限り、「エステル基」は、エステル結合(すなわち、−C(=O)−O−、又は−O-C(=O)−)を有する有機基を意味する。その例は、式:RCO
2−(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基、および式:R
a−CO
2−R
b−(当該式中、R
aはアルキル基であり、及びR
bはアルキレン基である。)で表される基を包含する。
【0019】
本明細書中、特に限定のない限り、「エーテル基」は、エーテル結合(−O−)を有する基を意味する。
「エーテル基」の例は、ポリエーテル基を包含する。ポリエーテル基の例は、式:R
a−(O−R
b)
n−(当該式中、R
aはアルキル基であり、R
bは各出現において同一又は異なって、アルキレン基であり、及びnは1以上の整数である。)で表される基を包含する。アルキレン基は前記アルキル基から水素原子を1個除去して形成される2価の基である。
「エーテル基」の例は、また、ハイドロカルビルエーテル基を包含する。ハイドロカルビルエーテル基は、1個以上のエーテル結合を有する炭化水素基を意味する。「1個以上のエーテル結合を有するハイドロカルビル基」は、1個以上のエーテル結合が挿入されているハイドロカルビル基であることができる。その例は、ベンジルオキシ基を包含する。
「1個以上のエーテル結合を有する炭化水素基」の例は、1個以上のエーテル結合を有するアルキル基を包含する。「1個以上のエーテル結合を有するアルキル基」は、1個以上のエーテル結合が挿入されているアルキル基であることができる。本明細書中、このような基をアルキルエーテル基と称する場合がある。
【0020】
本明細書中、特に限定のない限り、「アシル基」は、アルカノイル基を包含する。本明細書中、特に限定のない限り、「アルカノイル基」は、例えば、RCO−(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0021】
本明細書中、特に限定のない限り、「5員ヘテロアリール基」としては、例えば、ピロリル(例:1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、フリル(例:2−フリル、3−フリル)、チエニル(例:2−チエニル、3−チエニル)、ピラゾリル(例:1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、イソキサゾリル(例:3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル)、オキサゾリル(例:2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル)等の、環構成原子として、酸素、硫黄、及び窒素からなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、又は3個)のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール基が例示される。
【0022】
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
【0023】
本明細書中、「フラーレン環」としては、例えば、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、及びC84フラーレンが挙げられる。
【0024】
2. 精製方法
本発明の精製方法は、前記式(1)で表されるフラーレン誘導体[本明細書中、これをフラーレン誘導体(1)と称する場合がある。]の精製方法であって
[1]精製目的物としての前記フラーレン誘導体(1)及び不純物フラーレン化合物を含有する組成物を、
アルミニウム含有無機多孔質吸着剤と接触させる工程を含む。
【0025】
(1) 精製方法の被処理物
本発明の精製方法の被処理物は、精製目的物としてのフラーレン誘導体(1)及び不純物フラーレン化合物を含有する組成物[本明細書中、これを組成物(1)と称する場合がある。]である。
【0026】
本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)におけるフラーレン誘導体(1)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であることができる。
【0027】
当該含有量は、HPLC分析純度で、例えば、95%以下、90%以下、又は85%以下であることができる。
当該含有量は、HPLC分析純度で、例えば、50%〜95%の範囲内、60%〜95%の範囲内、又は70%〜95%の範囲内であることができる。
【0028】
本明細書中、「含有量」(又は「純度」)は、以下の条件によるHPLC分析純度である。
[HPLC分析の条件]
Column:COSMOSIL Buckyprep(nacalai tesque社)-4.5φx250mm
溶媒:toluene
流速:1mL/min
検出:UV-335nm
【0029】
本発明の精製方法の被処理物は、本発明の精製方法において、後記精製目的物から分離及び除去されたフラーレン(言い換えれば、回収フラーレン)を原料として製造された、後記精製目的物及び/又は1種以上の不純物を含有する組成物であることができる。
当該回収フラーレンは、置換されていてもよいベンゼンスルホン酸(例:ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸)を用いて回収されたフラーレンであってもよく、及び当該置換されていてもよいベンゼンスルホン酸を含有していてもよい。
【0030】
(a) 精製目的物
前述の通り、本発明の精製方法の精製目的物は、フラーレン誘導体(1)である。
フラーレン誘導体(1)の好適な一態様(態様1)では、
環Aは、C
60フラーレンであり;
R
1は、Arであり;
R
2は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり;及び
Arは、1個以上のアルキル基で置換されていてもよいアリール基である。
【0031】
フラーレン誘導体(1)の別の好適な一態様(態様2)では、
R
1は、式:
【化6】
で表される基であり;
R
1a及びR
1bは、同一又は異なって、
水素原子、又は
フッ素原子
であり、
R
1c及びR
1dは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、エステル基、又はシアノ基であり、
R
2は、
(1)フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、エステル基、及びシアノ基からなる群より選択される1個以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基、
(2)1〜3個のメチル基で置換されていてもよい5員ヘテロアリール基、又は
(3)アルキル基、アルコキシ基、エーテル基、アシル基、エステル基、又はシアノ基であり、及び
環Aは、フラーレン環を表す。
【0032】
当該態様において、R
1a、R
1b、R
1c及びR
1dが、水素原子である場合、好ましくは
R
2は、1又は2個のフッ素原子で置換されたフェニル基、又は
1〜3個のメチル基で置換されていてもよい5員ヘテロアリール基
である。
【0033】
フラーレン誘導体(1)の更に別の好適な一態様(態様3)では、
R
1は、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基であり、
R
2は、有機基であり、
R
3は、有機基であり、及び
R
4は、水素原子、又は有機基である。
である。
【0034】
当該態様において、好ましくは、R
2、およびR
3の少なくともいずれか一方は、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキルエーテル基である。
【0035】
R
1は、好ましくは1個のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、及びより好ましくは(無置換の)フェニル基である。
【0036】
R
2は、好適に、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びポリエーテル基からなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であることができる。
当該置換基の数は、好ましくは1個である。
【0037】
R
2は、好適に、1個以上のハロゲン原子(好ましくはフッ素)を有していてもよいアリール基であることができる。
当該置換基の数は、好ましくは0(無置換)〜2個である。
【0038】
R
2は、好適に1又は2個のフッ素原子で置換されていてもよいフェニル基であることができる。
【0039】
本発明の好適な一態様において、精製目的物である式(1)で表されるフラーレン誘導体は、好ましくは、例えば、以下の化合物であることができる。
式(1B):
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0040】
式(1)中、Arは、好ましくは1個のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、より好ましくはフェニル基である。
式(1)中、R
2は、好ましくはフェニル基、又はn−ヘキシル基である。
【0041】
フラーレン誘導体(1)は、公知の化合物であり、例えば、前記特許文献1に記載の方法により、
アルデヒド化合物:R
2−CHO、
N置換グリシン:Ar−NH−CH
2−COOH、及び
フラーレン:C60
[これらの式中の記号は、式(1)中の記号と同意義を表す。]
を原料として使用して、合成できる。
このような方法によって製造されたフラーレン誘導体(1)は、不都合に、以下に例示する不純物フラーレン化合物を含有し得る。
【0042】
(b) 不純物フラーレン化合物
本発明に関し、「不純物フラーレン化合物」は、前記精製目的物以外のフラーレン又はその誘導体である。
当該不純物は、例えば、フラーレン誘導体(1)以外のフラーレン誘導体であることができる。
前記式(1)中のnが1である本発明の一態様[これを、本明細書中、フラーレン誘導体(1s)と称する場合がある。]においては、このような不純物としてのフラーレン誘導体の代表例は、以下のフラーレン誘導体を包含できる。
【0043】
不純物( i)
[フラーレン誘導体(i)]
式(i):
【化18】
[式中、
R
1は、有機基を表し、
R
3は、水素原子を表し、
R
4は、水素原子を表し、及び
環Aは、フラーレン環を表す。]
で表されるフラーレン誘導体。
【0044】
不純物( iim)
[フラーレン誘導体(1m)(多付加体、言い換えれば多置換体)]
【化19】
[当該式中、
R
1は、有機基を表し、
R
2は、有機基を表し、
R
3は、水素原子、又は有機基を表し、
R
4は、水素原子、又は有機基を表し、
環Aは、フラーレン環を表し、
nは、2以上の数である。]
で表されるフラーレン誘導体[これを、本明細書中、フラーレン誘導体(1m)と称する場合がある。]。
【0045】
これらの不純物は、フラーレン誘導体(1s)の製造時に生成する副生成物であり得る。
これから理解される通り、これらの式(i)中の記号R
1、及びR
2は、式(1)中の記号R
1、及びR
2にそれぞれ対応していることができる。
【0047】
不純物(iv)
前記式(1)で表されるフラーレン誘導体の酸化物、フラーレン誘導体(i)の酸化物、フラーレン誘導体(1m)(多付加体)の酸化物、又はフラーレンC60の酸化物
【0048】
これは、フラーレン誘導体(1)の製造時の残存原料であり得る。
【0049】
本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)におけるフラーレン誘導体(1s)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であることができる。
【0050】
当該態様において、本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)における不純物( i)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、20%以下(例:0.1〜20%の範囲内)、5%以下(例:0.1〜5%の範囲内)、又は0.1%以下であることができる。
【0051】
当該態様において、本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)における不純物( iim)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、50%以下(例:0.1〜50%の範囲内)、10%以下(例:0.1%〜10%の範囲内)、1%以下(例:0.1%〜1%の範囲内)であることができる。
【0052】
当該態様において、本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)における不純物(iii)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、90%以下(例:0.1〜90%の範囲内)、50%以下(例:0.1〜50%の範囲内)、又は10%以下(例:0.1〜10%の範囲内)であることができる。
【0053】
当業者によって容易に理解される通り、フラーレン誘導体(1m)が精製目的物である本発明の別の一態様においては、フラーレン誘導体(1s)は不純物[これを不純物(iis)と称する。]である。
【0054】
当該態様において、本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)におけるフラーレン誘導体(1m)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であることができる。
【0055】
当該態様において、本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)における不純物( i)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、20%以下(例:0.1〜20%の範囲内)、5%以下(例:0.1〜5%の範囲内)、又は0.1%以下であることができる。
【0056】
当該態様において、本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)における不純物( iis)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、50%以下(例:0.1〜50%の範囲内)、10%以下(例:0.1%〜10%の範囲内)、1%以下(例:0.1%〜1%の範囲内)であることができる。
【0057】
当該態様において、本発明の精製方法を適用される当該組成物(1)における不純物(iii)の含有量は、以下に説明するHPLC分析純度で、例えば、90%以下(例:0.1〜90%の範囲内)、50%以下(例:0.1〜50%の範囲内)、又は10%以下(例:0.1〜10%の範囲内)であることができる。
【0058】
(2) 精製方法及びその条件
(a) アルミニウム含有無機多孔質吸着剤
本発明の精製方法では、アルミニウム含有無機多孔質吸着剤への、フラーレン誘導体(1)及び不純物フラーレン化合物の吸着性の差(又はこれからの溶離性の差)に基づき、精製目的物であるフラーレン誘導体(1)を精製できる。
【0059】
本発明の好適な一態様の精製方法は、カラムを使用する精製方法である。
当該態様の精製方法においては、
前記工程[1]が、精製目的物としての前記式(1)で表されるフラーレン誘導体及び不純物フラーレン化合物を含有する組成物を固相としてのアルミニウム含有無機多孔質吸着剤を含有するカラムに導入する工程である。
【0060】
当該精製方法は、更に、
[2]前記組成物が導入されたカラム内に液相としての溶媒を流して、前記式(1)で表されるフラーレン誘導体をカラムから溶出させる工程を含む。
本発明の当該態様における精製方法の処理は、技術常識に基づき、通常のカラム精製に採用され得る方法及び条件を適宜採用して、実施すればよい。
本発明で用いられるアルミニウム含有無機多孔質吸着剤の例は、活性白土、ベントナイト、酸性白土、及びアルミナを包含する。
本発明で用いられるアルミニウム含有無機多孔質吸着剤は、好適にシリカアルミナ複合酸化物であることができる。
当該吸着剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
当該吸着剤の好適な例は、活性白土を包含する。
【0061】
(i) 活性白土、ベントナイト及び酸性白土
本発明で用いられる「活性白土」は、当業者が通常理解する通り、酸性白土の熱酸処理物であることができる。
酸性白土は、同様にモンモリロナイトを主成分として含有する粘度である。このうち、酸性を示すものが酸性白土と称され、一方、中性を示すものがモンモリロナイトと称される。
【0062】
本発明で用いられる「アルミニウム含有無機多孔質吸着剤」(好適な例:活性白土)は、好適に粒子状であることができる。
その粒子径は、好適に、0.1〜100μmの範囲内、又は約10〜50μmの範囲内であることができる。
本明細書中、活性白土の粒径は、レーザ回折・散乱法で測定される体積基準で測定したメジアン径である。
【0063】
本発明で用いられる「アルミニウム含有無機多孔質吸着剤」(好適な例:活性白土)の比表面積は、約1〜約500m
2/gの範囲内、又は約50〜約350m
2/gの範囲内である。
本明細書中、当該比表面積は、BET方法で測定される値である。
【0064】
このようなアルミニウム含有無機多孔質吸着剤は、商業的に入手可能である。
その例は、「活性白土」(キシダ化学)を包含する。
【0065】
(b) 流量
本発明の精製方法において、
カラムの断面積0.002m
2当たりのフラーレン誘導体(1)の流量は、
好ましくは0.001〜50g/minの範囲内
好ましくは0.1〜50g/minの範囲内、
より好ましくは1〜10g/minの範囲内、及び
更に好ましくは1〜5g/minの範囲内
である。
【0066】
本発明の精製方法において、
前記式(1)で表されるフラーレン誘導体の導入量(質量)に対する前記溶媒の使用量(体積)の比は、
好ましくは0.1〜10L/gの範囲内、
より好ましくは0.5〜5L/gの範囲内、及び
更に好ましくは0.5〜2L/gの範囲内
である。
【0067】
(c) 溶媒
本発明の精製方法において溶離に用いられる溶媒としては、
(1)ジクロロメタン、トリクロロメタン(すなわち、クロロホルム)、テトラクロロメタン(すなわち、四塩化炭素)、ジクロロエタン、及びテトラクロロエタン等の塩素系溶媒;
(2)ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の炭化水素系溶媒;
(3)クロロベンゼン、及びジクロロベンゼン等の塩化芳香族系溶媒
(4)エタノール、及びメタノール等のアルコール系溶媒
(5)ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、DME、及びジオキサン等のエーテル系溶媒
(6)アセトン等のケトン系溶媒;並びに
(7)トルエン、ベンゼン、ヘキサン、二硫化炭素、及び四塩化炭素等の、無極性溶媒(すなわち、非極性溶媒)又は低極性溶媒
が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
当該組み合わせには、低極性溶媒に、中極性溶媒を添加することが包含される。
【0068】
なかでも、二硫化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼン、並びにこれらの2種以上の組合せが好ましい。
これらは、エタノール、メタノール、THF、及びアセトンからなる群より選択される1種以上と組み合わせて使用してもよい。
【0069】
2種以上の溶媒を溶離に使用する場合、その濃度に勾配をつけて用いてもよい。この際、極性溶媒の濃度を徐々に高くすることが好ましい。
具体的には、以下の溶媒、及び勾配条件が好適に採用される。
溶媒(第2の溶媒)の好適な例:エタノール、メタノール、THF、及びアセトン
第2の溶媒の濃度:0%(開始時)から10〜50%(終了時)まで
【0070】
カラムを用いる場合、前記式(1)におけるnがより小さい化合物からnがより大きいフラーレン化合物の順に溶離するので、これにより、精製された(すなわち、純度がより高くなった)目的のフラーレン誘導体を得ることができる。
【0071】
バッチ式の場合、前記(1)のフラーレン誘導体を吸着させたアルミニウム含有無機多孔質吸着剤を、より極性が低い溶媒から、より極性が高い溶媒へと溶媒を変更して順に洗浄することで、精製された(すなわち、純度がより高くなった)目的のフラーレン誘導体を得ることができる。
【0072】
当該極性の程度は、極性の異なる溶媒を適宜選択すること、又は極性の異なる2種以上の溶媒を混合することで調整できる。
<溶媒、及び勾配条件>
【0073】
本発明の精製方法において、
カラムの断面積0.002m
2当たりの前記溶媒の流速は、
好ましくは0.5〜50L/hrの範囲内、
より好ましくは1〜40L/hrの範囲内、及び
更に好ましくは2〜30L/hrの範囲内
である。
【0074】
本発明の精製方法において、
カラムの断面積0.002m
2当たりの前記溶媒の使用量は、
好ましくは0.5〜100Lの範囲内、
より好ましくは1〜90Lの範囲内、及び
更に好ましくは2〜80Lの範囲内
である。
【0075】
(d) カラムの長さ
本発明の精製方法において、
カラムの長さは、
好ましくは0.1〜5mの範囲内、
より好ましくは0.1〜2mの範囲内、及び
更に好ましくは0.2〜1mの範囲内
である。
【0076】
(e) 処理温度
本発明の精製方法において、
処理温度は、
好ましくは0〜100℃の範囲内、
より好ましくは10〜50℃の範囲内、及び
更に好ましくは10〜30℃の範囲内
である。
【0077】
(f) 処理時間
本発明の精製方法において、
処理時間は、
好ましくは0.1〜72hrの範囲内、
より好ましくは0.1〜48hrの範囲内、
更に好ましくは0.1〜24hrの範囲内、
より更に好ましくは0.1〜10hrの範囲内、
特に好ましくは0.2〜10hrの範囲内、
より特に好ましくは0.5〜5hrの範囲内、及び
最も好ましくは1〜2hrの範囲内
である。
【0078】
本発明の精製方法は、前記の精製処理を2回以上繰り返してもよい。この際、各精製処理の方法及び条件は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0079】
3. 本発明の精製方法の効果
(純度)
本発明の精製方法によれば、HPLC分析純度で、好適に純度95%以上、より好適に純度96%以上、更に好適に純度97%以上、より更に好適に純度98%以上、及び特に好適に純度99%のフラーレン誘導体(1)を得ることができる。
【0080】
(純度の向上)
本発明の精製方法によれば、フラーレン誘導体(1)の純度は、HPLC分析純度で、精製前後の差として、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、より更に好ましくは40%以上、向上できる。
当該向上の度合いは高いことが好ましく、特に制限されないが、例えば、50%以下、60%以下、70%以下、80%以下、90%以下、又は95%以下であることができる。
【0081】
(不純物含有量の低下)
本発明の精製方法によれば、前記不純物の含有量を、HPLC分析純度で、精製前後の差として、好ましくは15%%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、及びより更に好ましくは40%以上、低下させられる。
当該低下の度合いは高いことが好ましく、特に制限されないが、例えば、50%以下、60%以下、70%以下、80%以下、90%以下、又は95%以下であることができる。
【0082】
(分離効率又は回収率)
本発明の精製方法によれば、フラーレン誘導体(1)の分離効率又は回収率は、HPLC分析純度で、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、及びより更に好ましくは85%以上であることができる。
当該分離効率又は回収率は高いことが好ましく、特に制限されないが、例えば、95%以下であることができる。
【0083】
4. 他の精製方法との組み合わせ
本発明の精製方法は、他の1種以上の精製方法との組み合わせにおいて実施され得る。
本発明の精製方法は、他の1種以上の精製方法の前及び/又は後に実施され得る。
本発明の精製方法は、好ましくは、他の精製方法の前処理として実施され得る。
【0084】
当該他の精製方法は、例えば、次のように実施され得る。
例えば、得られたフラーレン誘導体(1)を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としては、例えば、ヘキサン−クロロホルム、ヘキサン−トルエン、又はヘキサン−二硫化炭素が好ましい。)で精製し、その後、更にHPLC(分取GPC)(展開溶媒としては、例えば、クロロホルム、又はトルエン等が好ましく、クロロホルムが特に好ましい。)で精製する。
【0085】
精製したフラーレン誘導体(1)を、溶媒洗浄、及び再結晶により、更に精製することができる。
当該溶媒洗浄では、好ましくは、前記で精製したフラーレン誘導体(1)の固体を異なる溶媒で2回以上洗浄する。当該洗浄は、例えば、前記で精製したフラーレン誘導体(1)の固体をナスフラスコ等の容器に採り、慣用の方法で実施すればよい。当該2回以上の洗浄は、好ましくは比較的極性の高い溶媒(例:メタノール、及びアセトン)による洗浄及び比較的極性の低い溶媒(例:テトラヒドロフラン(THF)、及びヘキサン)を含む。当該溶媒洗浄は、好ましくは、残存溶媒を減少させる目的で、極性の高い溶媒による溶媒洗浄から先に実施される。当該溶媒洗浄は、具体的に特に好ましくは、順に、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、及びヘキサンで洗浄することによって実施される。
【0086】
再結晶は、好ましくは、例えば、ヘキサン−クロロベンゼン、又はヘキサン−二硫化炭素から行われる。
【0087】
当該溶媒洗浄、及び再結晶の精製法と組み合わせて、又は別法として、フラーレン分離用HPLCカラムにより精製することも有効である。フラーレン分離用のHPLCカラムは、商業的に入手可能であり、その例としては、コスモシールBuckyprepシリーズ(ナカライテスク社)が挙げられる。当該カラム精製は、必要に応じて2回以上行ってもよい。
【0088】
フラーレン分離専用のHPLCカラムによる精製に用いられる溶媒としては、トルエン、及びクロロホルム等からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0089】
このようにして更に精製されたフラーレン誘導体(1)から、溶媒を除去する。溶媒の除去は、好ましくは、上澄みの溶媒の除去後、前記フラーレン誘導体(1)の固体に残った溶媒をエバポレーションで除去し、更に減圧下(例:10mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下)で、加熱乾燥(例:60〜100℃、8〜24時間乾燥)する。
【0090】
当該他の精製方法の一例は、置換されていてもよいベンゼンスルホン酸(例:ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸)を用いた、フラーレンの除去であることができる。
当該フラーレンの除去の一側面は、前記フラーレンの回収であることができる。
回収したフラーレンは、前記式(1)のフラーレン誘導体の製造に使用でき、及び製造された前記式(1)のフラーレン誘導体は、本発明の精製方法に付すことができる。
当該フラーレンの除去又は回収は、例えば、前記式(1)のフラーレン誘導体、及びフラーレンを含有する液体に、エチルベンゼンスルホン酸を添加する方法により、実施できる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
【0093】
実施例中、HPLC分析は、以下の条件で行った。
[HPLC分析の条件]
Column:COSMOSIL Buckyprep(nacalai tesque社)-4.5φx250mm
溶媒:toluene
流速:1mL/min
検出:UV-335nm
【0094】
実施例中、以下の材料を使用した。
活性白土:活性白土(商品名)(和光純薬)
ガレオンアースNFX(商品名)(水澤化学)
セライト:セライト545(商品名)(キシダ化学)
シリカゲル:Silica gel 60 0.063-0.200 mm(商品名)(Merck社)
カチオン交換樹脂:ダイヤイオンSA 10A(商品名)(三菱ケミカル社)
【0095】
実施例中、フラーレン誘導体について、以下の略号を用いた。
【化20】
各実施例中の用語、「多付加体」とは、これらの構造式中に示された置換ピロリジン環をフラーレン環上に複数個有している副生成化合物を意味する。
【0096】
実施例1 PNPの分離精製
反応混合物(原料C60 12%,目的物PNP 75%,多付加体 11%。これらの割合はHPLCピーク面積比である。)0.1gを、トルエン5mLに溶解し、活性白土10gを詰めたカラム管の上部から滴下し、活性白土(「活性白土」(商品名)(和光純薬))に吸着させた。
カラムにトルエン300mLを通液して、前記吸着成分を当該カラムから溶離させた(処理時間:1時間)。
目的物を含有する分画のHPLC分析結果を次表に示した。
【0097】
【表1】
【0098】
目的物分画が99.3%のHPLC純度であることを確認した。
得られた目的物の回収率を、分離前のHPLCピーク面積比から算出した結果、89%であった。
【0099】
実施例2 HNPの分離精製
反応混合物(原料C60 35%,目的物HNP 44%,多付加体 21%。これらの割合はHPLCピーク面積比である。)0.1gをトルエン5mLに溶解し、活性白土(「活性白土」(商品名)(和光純薬))10gを詰めたカラム管の上部から滴下し、活性白土に吸着させた。
カラムにトルエン:メタノール(95:5)の混合溶媒300mLを通液して、前記吸着成分を当該カラムから溶離させた(処理時間:1時間)。
各分画をHPLCで分析し、目的物分画が99.1%の純度であることを確認した。
得られた目的物の回収率は、分離前のHPLCピーク面積比から算出し、86%であることが判った。
【0100】
実施例1と同様にして、但し、表3に記載の固相及び液相を使用して、同様に比較例1、比較例2、実施例3、及び比較例4の試験を実施した。
目的物を含有する分画のHPLC分析結果を次表に示した。
【表2】
実施例1及び2の結果と共に、表3に結果をまとめた。
活性白土として、「活性白土」(商品名)(和光純薬)に替えて、「ガレオンアースNFX」(商品名)(水澤化学)を用いた場合も、同様に、良好な結果が得られた。
【0101】
【表3】
【0102】
実施例3(未反応C60フラーレンの回収1)
実施例2と同様の方法で得た反応生成混合物の液体(トルエン中)の10Lを、2Lまで濃縮し、エチルベンゼンスルホン酸40gを加えて撹拌し、さらにヘキサン 2L添加し、及び撹拌した後、沈殿(HNPのスルフォン酸塩)を150メッシュ網で濾過し、トルエン/ヘキサン 1:1で洗浄した後、固形物を2Lのビーカーに移し、これにメタノール 300mLを加えて、撹拌、及び濾過を各3回繰り返した後、乾燥して、C60の粗製物を回収した。
粗製物収量4.46g 純度65.6% (C60 2.8%含有)
【0103】
実施例4(未反応C60フラーレンの回収2)
実施例2と同様の方法で得た反応生成混合物の液体(トルエン中)の10Lを、2Lまで減圧濃縮しエチルベンゼンスルホン酸を50g添加し、及び撹拌し、さらにヘキサン2Lを添加し、及び撹拌した。この液体を、150メッシュ網で炉過した。
得られた固形物を溶媒(ヘキサン/トルエン=1/1)で洗浄した後、別の容器に移し、メタノール 300mLを加えて撹拌を、及び濾過を各3回繰り返した後、乾燥して、C60の粗製物を回収した。
収量 5.54 g (C60 2.7%含有粗体)
他方、ろ液を減圧乾固して純度71%回収フラーレンを得た。収量4.12g
【0104】
実施例5(フラーレン誘導体HNPの精製)
<カラムクロマトグラフィーによる精製>
10cmφ×60cmのカラムに、活性白土1300gを、トルエン(2%THF含有)でスラリー状にして30cmの高さまで充填した。
一方、前記粗製物4gをトルエン1Lに加熱溶解し、これに活性白土80gを加えて一緒に減圧乾固し粉末を作成した。これを、前記カラム中の活性白土の上に充てんした。
当該カラムに、トルエン(2%THF含有)を加圧しながら流速7〜9mLで流した。
最初にフラーレンの溶液が出たのち、HNPとその多置換体が順次溶出した。溶出液の約100mLずつのフラクションに取り、HPLCでHNPの純度を確認した。当該純度99%以上のフラクションを合わせて、減圧乾固した。
前後の90〜99%までのフラクションは、まとめて再度カラム精製した。
この試験を、2回実施した。
結果を次表に示した。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例6(フラーレン誘導体PNP及びHNPの各精製における展開溶媒の検討)
フラーレン誘導体PNP及びHNPの各精製における、適当な展開溶媒の検討を行った。その結果を次表に示した。
PNPとHNPでは活性白土に対する吸着性が異なった。移動相がトルエン単独の場合、PNPと違って目的のHNPが溶出せずに吸着したままであった・
各種極性溶媒を混合して最適比率を求めた結果THF 2%含有トルエンが最適であることがわかった
移動相の選択(Tol.:トルエン; R:CH
3−,CH
3−CH
2−)
【0107】
【表5】