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特許6982267クローズドインペラ及びクローズドインペラの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982267
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】クローズドインペラ及びクローズドインペラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   F04D29/28 R
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-82754(P2020-82754)
(22)【出願日】2020年5月8日
(65)【公開番号】特開2021-177075(P2021-177075A)
(43)【公開日】2021年11月11日
【審査請求日】2021年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 忠司
【審査官】 嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−121612(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0011237(KR,A)
【文献】 特開2015−048708(JP,A)
【文献】 特表2020−508732(JP,A)
【文献】 特開2015−158165(JP,A)
【文献】 特表2012−526230(JP,A)
【文献】 特開平06−272696(JP,A)
【文献】 特開昭51−073607(JP,A)
【文献】 特開昭54−145005(JP,A)
【文献】 特開昭48−090008(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102817869(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根部(22)を有するインペラ本体(20)と、該インペラ本体(20)に重ね合わされたシュラウド(30)とを備えたクローズドインペラであって、
前記シュラウド(30)は、前記羽根部(22)の先端部に沿って湾曲した形状にプレス成形されており、
前記シュラウド(30)には、前記インペラ本体(20)側の面から突出し且つ前記複数の羽根部(22)の先端部に沿って湾曲して延びる複数の突出部(33)が設けられ、
前記突出部(33)の突出量は、前記シュラウド(30)の板厚よりも小さく、
少なくとも前記突出部(33)の先端部には、ロウ材(32)が設けられている
ことを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項2】
請求項1において、
前記インペラ本体(20)側の面から見て、前記シュラウド(30)における前記突出部(33)の先端部を除く部分には、前記ロウ材(32)が設けられていない
ことを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記羽根部(22)の先端部は、前記突出部(33)の先端部に対応した形状に形成されている
ことを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記シュラウド(30)は、前記インペラ本体(20)に接合された第1部材(37)と、該第1部材(37)における該インペラ本体(20)とは反対側の面に接合された第2部材(38)とを有する
ことを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1部材(37)における前記インペラ本体(20)側の接合面及び前記第2部材(38)側の接合面には、前記ロウ材(32)がそれぞれ設けられている
ことを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項6】
複数の羽根部(22)を有するインペラ本体(20)と、該インペラ本体(20)に重ね合わされたシュラウド(30)とを備えたクローズドインペラの製造方法であって、
前記インペラ本体(20)を機械加工する工程と、
前記シュラウド(30)を、前記羽根部(22)の先端部に沿って湾曲した形状にプレス成形する工程と、
前記シュラウド(30)における前記インペラ本体(20)側の面の一部を切削することで、前記シュラウド(30)の板厚よりも小さい突出量で相対的に突出させ、前記複数の羽根部(22)の先端部に沿って湾曲して延びる複数の突出部(33)を形成する工程と、
前記羽根部(22)と前記突出部(33)とを重ね合わせてロウ付けする工程とを備えた
ことを特徴とするクローズドインペラの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記シュラウド(30)は、前記突出部(33)が設けられた第1部材(37)を有し、
前記第1部材(37)における前記インペラ本体(20)とは反対側の面に第2部材(38)をロウ付けする工程と、
前記第2部材(38)の一部を切削する工程とを備えた
ことを特徴とするクローズドインペラの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記シュラウド(30)における前記インペラ本体(20)側の面には、ロウ材(32)が設けられ、
前記シュラウド(30)の外周部における前記ロウ材(32)の厚みは、該シュラウド(30)の中心部における該ロウ材(32)の厚みよりも大きく、
前記羽根部(22)と前記突出部(33)とを重ね合わせてロウ付けする工程では、前記シュラウド(30)の中心部を下向きにした姿勢でロウ付けを行う
ことを特徴とするクローズドインペラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クローズドインペラ及びクローズドインペラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスクをブレードとともに素材より削り出して一体的に形成し、シュラウド(カバー)とブレードとをロウ材を介して接合するようにしたインペラの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願発明者は、シート状の部材をプレス成形してシュラウドを形成し、シュラウドをブレードに重ね合わせてロウ付けすることを検討した。
【0005】
しかしながら、プレス成形されたシュラウドは、機械加工されたブレードと比べて寸法精度が悪く、シュラウドとブレードとの隙間が大きくなってロウ付け不良が生じるおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、プレス成形されたシュラウドをロウ付けする際の不具合を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、複数の羽根部(22)を有するインペラ本体(20)と、該インペラ本体(20)に重ね合わされたシュラウド(30)とを備えたクローズドインペラであって、前記シュラウド(30)は、前記羽根部(22)の先端部に沿った形状にプレス成形されており、前記シュラウド(30)には、前記インペラ本体(20)側の面から突出し且つ前記複数の羽根部(22)に沿って延びる複数の突出部(33)が設けられ、少なくとも前記突出部(33)の先端部には、ロウ材(32)が設けられている。
【0008】
第1の態様では、プレス成形されたシュラウド(30)のインペラ本体(20)側の面に、複数の突出部(33)が設けられる。突出部(33)は、羽根部(22)に沿って延び、ロウ材(32)によって羽根部(22)に接合される。
【0009】
これにより、プレス成形されたシュラウド(30)をインペラ本体(20)に重ね合わせた際に、組み付け隙間が小さい状態でロウ付けを行うことができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記インペラ本体(20)側の面から見て、前記シュラウド(30)における前記突出部(33)の先端部を除く部分には、前記ロウ材(32)が設けられていない。
【0011】
第2の態様では、シュラウド(30)のインペラ本体(20)側の面には、突出部(33)の先端部を除いてロウ材(32)が設けられていない。
【0012】
これにより、インペラ本体(20)とシュラウド(30)との接合に使用されない部分のロウ材(32)を予め除去しておくことで、ロウ垂れが生じるのを抑えることができる。
【0013】
本開示の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記羽根部(22)の先端部は、前記突出部(33)の先端部に対応した形状に形成されている。
【0014】
第3の態様では、羽根部(22)の先端部の形状を、突出部(33)の先端部の形状に対応させている。
【0015】
これにより、羽根部(22)と突出部(33)との隙間を小さくして、ロウ付けを行うことができる。
【0016】
本開示の第4の態様は、第1乃至3の態様のうち何れか1つにおいて、前記シュラウド(30)は、前記インペラ本体(20)に接合された第1部材(37)と、該第1部材(37)における該インペラ本体(20)とは反対側の面に接合された第2部材(38)とを有する。
【0017】
第4の態様では、シュラウド(30)は、第1部材(37)と、第2部材(38)とを有する。第1部材(37)は、インペラ本体(20)に接合される。第2部材(38)は、インペラ本体(20)とは反対側で第1部材(37)に接合される。
【0018】
これにより、第2部材(38)の厚みに応じて、クローズドインペラの外径を任意の寸法に調整することができる。
【0019】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、前記第1部材(37)における前記インペラ本体(20)側の接合面及び前記第2部材(38)側の接合面には、前記ロウ材(32)がそれぞれ設けられている。
【0020】
第5の態様では、第1部材(37)には、インペラ本体(20)側の接合面と、第2部材(38)側の接合面とに、ロウ材(32)がそれぞれ設けられる。
【0021】
これにより、第1部材(37)の両面にロウ材(32)を設けることで、第1部材(37)に対するインペラ本体(20)及び第2部材(38)のロウ付けを行うことができる。
【0022】
本開示の第6の態様は、複数の羽根部(22)を有するインペラ本体(20)と、該インペラ本体(20)に重ね合わされたシュラウド(30)とを備えたクローズドインペラの製造方法であって、前記インペラ本体(20)を機械加工する工程と、前記シュラウド(30)をプレス成形する工程と、前記シュラウド(30)における前記インペラ本体(20)側の面の一部を切削することで相対的に突出させ、前記複数の羽根部(22)に沿って延びる複数の突出部(33)を形成する工程と、前記羽根部(22)と前記突出部(33)とを重ね合わせてロウ付けする工程とを備えている。
【0023】
第6の態様では、インペラ本体(20)を機械加工し、シュラウド(30)をプレス成形する。シュラウド(30)におけるインペラ本体(20)側の面の一部を切削して、複数の突出部(33)を形成する。突出部(33)と羽根部(22)とを重ね合わせてロウ付けする。
【0024】
これにより、プレス成形されたシュラウド(30)をインペラ本体(20)に重ね合わせた際に、組み付け隙間が小さい状態でロウ付けを行うことができる。
【0025】
本開示の第7の態様は、第6の態様において、前記シュラウド(30)は、前記突出部(33)が設けられた第1部材(37)を有し、前記第1部材(37)における前記インペラ本体(20)とは反対側の面に第2部材(38)をロウ付けする工程と、前記第2部材(38)の一部を切削する工程とを備えている。
【0026】
第7の態様では、第1部材(37)におけるインペラ本体(20)とは反対側の面に、第2部材(38)がロウ付けされる。ロウ付け工程の後、第2部材(38)の一部が切削される。
【0027】
これにより、第1部材(37)と第2部材(38)とをロウ付けする際に、切削予定である第2部材(38)の余剰部分に介在するロウ材(32)を、接合が必要となる部分に流してロウ付けすることで、接合強度を高めることができる。
【0028】
本開示の第8の態様は、第6又は7の態様において、前記シュラウド(30)における前記インペラ本体(20)側の面には、ロウ材(32)が設けられ、前記シュラウド(30)の外周部における前記ロウ材(32)の厚みは、該シュラウド(30)の中心部における該ロウ材(32)の厚みよりも大きく、前記羽根部(22)と前記突出部(33)とを重ね合わせてロウ付けする工程では、前記シュラウド(30)の中心部を下向きにした姿勢でロウ付けを行う。
【0029】
第8の態様では、シュラウド(30)の外周部におけるロウ材(32)の厚みを、シュラウド(30)の中心部におけるロウ材(32)の厚みよりも大きくしている。ロウ付け工程では、シュラウド(30)の中心部を下向きにした姿勢としている。
【0030】
これにより、ロウ付け工程において、シュラウド(30)の外周部のロウ材(32)が液相化してその一部が中心部に向かって流れた場合でも、外周部における突出部(33)と羽根部(22)との間に介在するロウ材(32)の量を確保して、接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本実施形態1に係るクローズドインペラの構成を示す斜視図である。
図2図2は、クローズドインペラの分解斜視図である。
図3図3は、シュラウドをインペラ本体側の面から見たときの斜視図である。
図4図4は、機械加工前のシュラウドの構成を示す側面断面図である。
図5図5は、機械加工後のシュラウドの構成を示す側面断面図である。
図6図6は、シュラウド及びインペラ本体の構成を示す側面断面図である。
図7図7は、ロウ付け後のクローズドインペラの構成を示す側面断面図である。
図8図8は、本実施形態2に係るクローズドインペラの第1部材、第2部材、及びインペラ本体の構成を示す側面断面図である。
図9図9は、第1部材、第2部材、及びインペラ本体を重ね合わせた状態を示す側面断面図である。
図10図10は、機械加工後のクローズドインペラの構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。
【0033】
図1に示すように、クローズドインペラ(1)は、略円錐台状に形成される。クローズドインペラ(1)は、最も外径が小さい中心部(11)と、最も外径が大きい外周部(12)とを有する。クローズドインペラ(1)の回転中心には、貫通孔(13)が形成される。
【0034】
クローズドインペラ(1)の貫通孔(13)には、図示しない遠心圧縮機の回転軸が挿入される。遠心圧縮機の回転軸は、モータ等の駆動装置に接続されており、駆動装置の駆動力が回転軸を介してクローズドインペラ(1)に伝達される。これにより、クローズドインペラ(1)が回転する。
【0035】
中心部(11)は、吸入口(15)を有する。吸入口(15)は、クローズドインペラ(1)の軸方向に開口する。外周部(12)は、吐出口(16)を有する。吐出口(16)は、クローズドインペラ(1)の径方向外方に開口する。クローズドインペラ(1)の内部には、吸入口(15)と吐出口(16)とを繋ぐ内部流路(17)が設けられる。
【0036】
クローズドインペラ(1)の吸入口(15)は、後述するハブ部(21)の上流端部(25)と、羽根部(22)と、シュラウド(30)とによって囲まれた開口である。
【0037】
クローズドインペラ(1)の吐出口(16)は、後述するハブ部(21)の下流端部(27)と、羽根部(22)と、シュラウド(30)とによって囲まれた開口である。
【0038】
クローズドインペラ(1)の内部流路(17)は、後述するハブ部(21)の湾曲部(26)(図2参照)と、羽根部(22)と、シュラウド(30)とによって囲まれた空間である。
【0039】
クローズドインペラ(1)は、遠心圧縮機内で回転させることにより、吸入口(15)から流体を吸入する。吸入口(15)から吸入された流体は、内部流路(17)を流れ、クローズドインペラ(1)の回転に伴って加速されながら吐出口(16)に導かれる。吐出口(16)から吐出された流体は、遠心圧縮機のディフューザ内で圧縮される。
【0040】
図2にも示すように、クローズドインペラ(1)は、インペラ本体(20)と、シュラウド(30)とを有する。シュラウド(30)は、インペラ本体(20)の羽根部(22)を覆っている。
【0041】
インペラ本体(20)は、アルミニウム合金で構成される。インペラ本体(20)は、ハブ部(21)と、複数の羽根部(22)とを有する。ハブ部(21)と羽根部(22)とは、アルミニウム合金製のブロックを機械加工することで一体に形成される。
【0042】
ハブ部(21)は、略円錐台状に形成される。ハブ部(21)は、上流端部(25)と、下流端部(27)と、湾曲部(26)とを有する。上流端部(25)は、吸入口(15)側の端部である。下流端部(27)は、吐出口(16)側の端部である。
【0043】
湾曲部(26)は、上流端部(25)と下流端部(27)とを接続する。湾曲部(26)は、クローズドインペラ(1)の回転中心を含む断面における輪郭が内側に窪むように湾曲している。湾曲部(26)は、上流端部(25)から下流端部(27)へ向かうにつれて周方向の距離が徐々に拡径している。
【0044】
ハブ部(21)には、軸方向に貫通する貫通孔(13)が形成される。貫通孔(13)は、上流端部(25)の中央部及び下流端部(27)の中央部にそれぞれ開口する。
【0045】
インペラ本体(20)は、複数の羽根部(22)を有する。羽根部(22)は、湾曲部(26)からシュラウド(30)側に立設される。羽根部(22)は、吸入口(15)側から視た平面視において螺旋状に形成される。羽根部(22)は、ハブ部(21)の上流端部(25)から下流端部(27)までの範囲に亘って延びている。羽根部(22)の先端部は、後述するシュラウド(30)の突出部(33)の先端部に沿って湾曲した形状に形成される。
【0046】
シュラウド(30)は、ブレージングシートで構成される。シュラウド(30)は、心材(31)と、心材(31)の片面に層状に設けられたロウ材(32)とを有する(図5参照)。
【0047】
シュラウド(30)は、ブレージングシートをプレス成形することで漏斗状に形成される。シュラウド(30)は、羽根部(22)の先端部を覆うように配置される。シュラウド(30)の中央には、中央開口(35)が設けられる。中央開口(35)内には、ハブ部(21)の上流端部(25)が配置される(図1参照)。
【0048】
図3に示すように、シュラウド(30)は、複数の突出部(33)を有する。突出部(33)は、インペラ本体(20)の羽根部(22)に沿って螺旋状に延びる。突出部(33)の先端部には、ロウ材(32)が設けられる。シュラウド(30)におけるインペラ本体(20)側の面には、突出部(33)を除く部分にロウ材(32)が設けられていない。
【0049】
具体的に、図4に示すように、シュラウド(30)は、片面にロウ材(32)が設けられたブレージングシートをプレス成形することで、漏斗状に形成される。このとき、シュラウド(30)の内側の表面全体には、ロウ材(32)が設けられている。
【0050】
図5に示すように、シュラウド(30)の内側の表面の一部を、ボールエンドミル(80)によって切削することで、複数の突出部(33)を相対的に突出させる。その結果、突出部(33)の先端部にロウ材(32)が残る一方、その他の面のロウ材(32)が除去される。
【0051】
シュラウド(30)の突出部(33)と、インペラ本体(20)の羽根部(22)とを重ね合わせた状態で、ロウ材(32)を加熱して溶融させることで、シュラウド(30)とインペラ本体(20)とが接合される。
【0052】
なお、シュラウド(30)を構成するブレージングシートには、100〜150μm程度の厚みのロウ材(32)が設けられる。インペラ本体(20)とシュラウド(30)との接合に使用されない部分については、ロウ材(32)を全て除去してもよいし、接合部分である突出部(33)の近傍については、ボールエンドミル(80)で20〜80μm程度切削することで、ロウ材(32)を残すようにしてもよい。
【0053】
〈クローズドインペラの製造方法〉
クローズドインペラ(1)は、例えば、以下の方法により製造される。まず、インペラ本体(20)と、シュラウド(30)とを別々に準備する。
【0054】
シュラウド(30)は、心材(31)と、ロウ材(32)とを有するブレージングシートをプレス成形することで形成される。例えば、ブレージングシートは、0.20質量%以上1.80質量%未満のMgを含むアルミニウム合金からなる心材(31)と、Al−Si系合金からなり、100〜150μmの厚みを有するロウ材(32)とを有する。
【0055】
ブレージングシートからシュラウド(30)を製造するにあたっては、ブレージングシートのロウ材(32)が、クローズドインペラ(1)の内側、つまり、羽根部(22)に対向する側に配置されるように、プレス成形を行えばよい。
【0056】
次に、シュラウド(30)のインペラ本体(20)側の面に、複数の突出部(33)を形成する。具体的には、図5に示すように、シュラウド(30)の内側の表面の一部を、ボールエンドミル(80)によって切削することで、複数の突出部(33)を相対的に突出させる。突出部(33)の先端部にロウ材(32)が残る一方、その他の面のロウ材(32)が除去される。
【0057】
インペラ本体(20)は、例えば、アルミニウム合金製のブロックに対して機械加工を施し、ハブ部(21)と羽根部(22)とを一体的に形成することによって得ることができる。
【0058】
このとき、シュラウド(30)における突出部(33)の先端部の形状に対応させるように、インペラ本体(20)の羽根部(22)の先端部の形状を機械加工する。具体的には、プレス成形されたシュラウド(30)を三次元測定機などで事前に形状測定したデータを用いて、インペラ本体(20)の羽根部(22)の先端部の形状を加工する。なお、インペラ本体(20)を機械加工する際に、シュラウド(30)を加工機にセットしておき、加工機で形状測定したデータを用いるようにしてもよい。
【0059】
また、必要に応じて、シュラウド(30)のロウ材(32)が無くならない程度に、ロウ材(32)の厚みが薄くなるように機械加工することで、インペラ本体(20)の羽根部(22)の先端部との隙間を小さくするようにしてもよい。例えば、ロウ材(32)の厚みは、100〜150μm程度あるので、20〜80μm程度削るようにしても良い。
【0060】
また、シュラウド(30)の外周部におけるロウ材(32)の厚みを、シュラウド(30)の中心部におけるロウ材(32)の厚みよりも大きくしている。例えば、シュラウド(30)の外周部におけるロウ材(32)の厚みを100μm、シュラウド(30)の中心部におけるロウ材(32)の厚みを50μmとしている。
【0061】
図6に示すように、このようにして準備したシュラウド(30)を、シュラウド(30)の中心部が下向きとなる姿勢とする。そして、シュラウド(30)の突出部(33)に対して、インペラ本体(20)の羽根部(22)に重ね合わせる。このとき、インペラ本体(20)の羽根部(22)の先端部を、シュラウド(30)の突出部(33)の先端部に配置されたロウ材(32)に当接させる。
【0062】
その後、不活性ガス中においてインペラ本体(20)及びシュラウド(30)を加熱し、ロウ材(32)を溶融させ、インペラ本体(20)とシュラウド(30)とをロウ付する。
【0063】
図7に示すように、インペラ本体(20)の羽根部(22)とシュラウド(30)とは、ロウ材(32)を介して接合される。これにより、クロージングインペラ(1)が製造される。
【0064】
このように、ブレージングシートからなるシュラウド(30)を用いることにより、従来のディップロウ付において用いられていたバインダやフラックスを用いることなく、ロウ付を行うことができる。
【0065】
−実施形態1の効果−
本実施形態では、プレス成形されたシュラウド(30)のインペラ本体(20)側の面に、複数の突出部(33)が設けられる。突出部(33)は、羽根部(22)に沿って延び、ロウ材(32)によって羽根部(22)に接合される。
【0066】
これにより、プレス成形されたシュラウド(30)をインペラ本体(20)に重ね合わせた際に、組み付け隙間が小さい状態でロウ付けを行うことができる。また、ロウ付け後のロウ材(32)の厚さが薄くなり、接合強度を高めることができる。
【0067】
本実施形態では、シュラウド(30)のインペラ本体(20)側の面には、突出部(33)の先端部を除いてロウ材(32)が設けられていない。
【0068】
これにより、インペラ本体(20)とシュラウド(30)との接合に使用されない部分のロウ材(32)を予め除去しておくことで、ロウ垂れが生じるのを抑えることができる。
【0069】
本実施形態では、羽根部(22)の先端部の形状を、突出部(33)の先端部の形状に対応させている。これにより、羽根部(22)と突出部(33)との隙間を小さくして、ロウ付けを行うことができる。
【0070】
本実施形態では、インペラ本体(20)を機械加工し、シュラウド(30)をプレス成形する。シュラウド(30)におけるインペラ本体(20)側の面の一部を切削して、複数の突出部(33)を形成する。突出部(33)と羽根部(22)とを重ね合わせてロウ付けする。
【0071】
これにより、プレス成形されたシュラウド(30)をインペラ本体(20)に重ね合わせた際に、組み付け隙間が小さい状態でロウ付けを行うことができる。
【0072】
本実施形態では、シュラウド(30)の外周部におけるロウ材(32)の厚みを、シュラウド(30)の中心部におけるロウ材(32)の厚みよりも大きくしている。ロウ付け工程では、シュラウド(30)の中心部を下向きにした姿勢としている。
【0073】
これにより、ロウ付け工程において、シュラウド(30)の外周部のロウ材(32)が液相化してその一部が中心部に向かって流れた場合でも、外周部における突出部(33)と羽根部(22)との間に介在するロウ材(32)の量を確保して、接合強度を高めることができる。
【0074】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0075】
図8に示すように、クローズドインペラ(1)は、インペラ本体(20)と、シュラウド(30)とを備える。インペラ本体(20)は、ハブ部(21)と、複数の羽根部(22)とを有する。
【0076】
シュラウド(30)は、第1部材(37)と、第2部材(38)とを有する。第1部材(37)は、心材(31)と、心材(31)の両面にそれぞれ設けられたロウ材(32)とを有する。第1部材(37)は、プレス成形によって形成される。第1部材(37)は、羽根部(22)の先端部を覆うように配置される。
【0077】
第1部材(37)のインペラ本体(20)側の面には、複数の突出部(33)が設けられる。突出部(33)は、インペラ本体(20)の羽根部(22)に沿って螺旋状に延びる。突出部(33)の先端部には、ロウ材(32)が設けられる。
【0078】
第2部材(38)は、プレス成形によって漏斗状に形成される。第2部材(38)の中心部の孔径は、第1部材(37)の中心部の外径と略同じ大きさに形成される。第2部材(38)は、第1部材(37)におけるインペラ本体(20)とは反対側の面に配置される。
【0079】
シュラウド(30)は、第1部材(37)及び第2部材(38)の中心部が下向きとなる姿勢で配置される。そして、シュラウド(30)の突出部(33)に対して、インペラ本体(20)の羽根部(22)を重ね合わせる。このとき、インペラ本体(20)の羽根部(22)の先端部を、シュラウド(30)の突出部(33)の先端部に配置されたロウ材(32)に当接させる。
【0080】
その後、不活性ガス中においてインペラ本体(20)、第1部材(37)、及び第2部材(38)を加熱し、ロウ材(32)を溶融させ、インペラ本体(20)とシュラウド(30)とをロウ付する。
【0081】
図9に示すように、インペラ本体(20)の羽根部(22)とシュラウド(30)の第1部材(37)とは、突出部(33)に設けられたロウ材(32)を介して接合される。また、第1部材(37)と第2部材(38)とは、第1部材(37)の外側面に設けられたロウ材(32)を介して接合される。
【0082】
図10に示すように、インペラ本体(20)とシュラウド(30)とをロウ付けした後、ボールエンドミル(80)によって、第2部材(38)の一部を切削する。
【0083】
具体的に、シュラウド(30)は、プレス成形によって形成するため、プレス成形可能な板厚に制限がある。しかしながら、既存の遠心圧縮機に対して、本実施形態のクローズドインペラ(1)を置き換えようとすると、例えば、シュラウド(30)の中心部の外径と、シュラウド(30)に取り付ける部品(例えば、シールリング)の寸法とが適合しないことがある。
【0084】
そこで、本実施形態では、シュラウド(30)を製造するのにあたって、第1部材(37)に第2部材(38)をロウ付けして肉厚を増やした後、第2部材(38)の一部を切削加工することで、クローズドインペラ(1)の外径を任意の寸法に調整するようにしている。
【0085】
これにより、クロージングインペラ(1)が製造される。
【0086】
−実施形態2の効果−
本実施形態では、シュラウド(30)は、第1部材(37)と、第2部材(38)とを有する。第1部材(37)は、インペラ本体(20)に接合される。第2部材(38)は、インペラ本体(20)とは反対側で第1部材(37)に接合される。
【0087】
これにより、第2部材(38)の厚みに応じて、クローズドインペラの外径を任意の寸法に調整することができる。
【0088】
本実施形態では、第1部材(37)には、インペラ本体(20)側の接合面と、第2部材(38)側の接合面とに、ロウ材(32)がそれぞれ設けられる。
【0089】
これにより、第1部材(37)の両面にロウ材(32)を設けることで、第1部材(37)に対するインペラ本体(20)及び第2部材(38)のロウ付けを行うことができる。
【0090】
本実施形態では、第1部材(37)におけるインペラ本体(20)とは反対側の面に、第2部材(38)がロウ付けされる。ロウ付け工程の後、第2部材(38)の一部が切削される。
【0091】
これにより、第1部材(37)と第2部材(38)とをロウ付けする際に、切削予定である第2部材(38)の余剰部分に介在するロウ材(32)を、接合が必要となる部分に流してロウ付けすることで、接合強度を高めることができる。
【0092】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0093】
本実施形態では、ブレージングシートをプレス成形することで、片面にロウ材(32)が設けられたシュラウド(30)を形成し、インペラ本体(20)とロウ付けするようにしたが、この形態に限定するものではない。
【0094】
例えば、アルミニウム合金製に心材(31)をプレス成形してシュラウド(30)を形成し、シュラウド(30)とインペラ本体(20)との間にペーストしたロウ材によってロウ付けするようにしてもよい。
【0095】
また、本実施形態において、シュラウド(30)の突出部(33)を機械加工する際に、設計形状よりも軸方向に多く加工するようにしてもよい。具体的に、インペラ本体(20)とシュラウド(30)とをロウ付けする際には、シュラウド(30)の突出部(33)のロウ材(32)が溶融して、シュラウド(30)がインペラ本体(20)に対して軸方向に相対的に動いて間隔が狭くなり、内部流路(17)の流路面積が小さくなるおそれがある。
【0096】
そこで、シュラウド(30)を機械加工する際に、ロウ材(32)の溶融によってインペラ本体(20)とシュラウド(30)との間隔が狭くなることを考慮して、内部流路(17)の流路面積を確保できるように、切削寸法を多めにするのが好ましい。
【0097】
また、本実施形態において、シュラウド(30)を機械加工したときの除去状態が容易に判別できるように、ロウ材(32)を複数の層状に形成し、各層毎に異なる色を着色した構成としてもよい。また、シュラウド(30)の心材(31)を複数の層状に形成し、各層毎に異なる色を着色した構成としてもよい。
【0098】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書及び特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本開示は、クローズドインペラ及びクローズドインペラの製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 クローズドインペラ
20 インペラ本体
22 羽根部
30 シュラウド
32 ロウ材
33 突出部
37 第1部材
38 第2部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10