特許第6982273号(P6982273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982273金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982273
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20211206BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20211206BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20211206BHJP
   B65D 25/36 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/20 A
   B32B15/09 A
   B65D25/36
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-107908(P2017-107908)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-202659(P2018-202659A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊與 直希
(72)【発明者】
【氏名】矢野 真司
【審査官】 深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−291430(JP,A)
【文献】 特開2006−199917(JP,A)
【文献】 特開2017−030231(JP,A)
【文献】 特開2017−030210(JP,A)
【文献】 特開2004−130536(JP,A)
【文献】 特開2014−008739(JP,A)
【文献】 特開2006−326902(JP,A)
【文献】 特開平10−175279(JP,A)
【文献】 特開平08−067808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B65D 23/00− 25/56
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が230〜260℃であるポリエステルから主になり、ポリマー部分の固有粘度が0.46以上であり、着色顔料の含有量が10重量%以下であり、ポリエチレンワックスの含有量が0.01〜0.25重量%であり、十点平均粗さが350〜700nmの範囲内である表層(A層)と、
融点が230〜260℃であるポリエステルと着色顔料とから主になり、ポリマー部分の固有粘度が0.46以上であり、着色顔料の含有量が10重量%を超え50重量%以下である基材層(B層)との少なくとも2層からなる着色二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
層およびB層のポリエステルの融点が下記(1)式を満足する金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム(ただし、A層のポリエステルの融点が245℃以下であり、かつ、B層のポリエステルの融点が245℃以下である場合を除く)
|TmB−TmA|≦4℃ ―――(1)
(ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)
【請求項2】
B層を構成するポリエステルが、融点230〜252℃の共重合ポリエステルである、請求項1に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム(ただし、A層のポリエステルの融点が245℃以下であり、かつ、B層のポリエステルの融点が245℃以下である場合を除く)
【請求項3】
A層を構成するポリエステルが、融点230〜252℃の共重合ポリエステルである、請求項1または2に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム(ただし、A層のポリエステルの融点が245℃以下であり、かつ、B層のポリエステルの融点が245℃以下である場合を除く)
【請求項4】
A層およびB層を構成するポリエステルが、いずれも融点230〜252℃の共重合ポリエステルであり且ついずれもイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートである、請求項1に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム(ただし、A層のポリエステルの融点が245℃以下であり、かつ、B層のポリエステルの融点が245℃以下である場合を除く)
【請求項5】
ワックスが、滴点が120〜140℃のポリエチレンワックスである、請求項4に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
フィルムが、金属板の容器外面となる表面に貼り合わせられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属貼板合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属缶には内外面の腐食防止として、一般に塗装が施されている。近年、工程簡素化、衛生性向上、公害防止等の目的で有機溶剤を使用せずに防錆性を付与する方法としてポリエステルフィルムのような熱可塑性樹脂フィルムによる被覆が行われている。すなわち、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の金属板に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした後、絞り缶や薄肉化絞り缶などのような厳しい成形加工が施される食缶や飲料缶およびエアゾール缶用途へ使用されている。これらの用途に用いられる缶は、コスト低減の観点からさらに加工条件を厳しくした薄肉化絞り加工やしごき加工を施して製造されるようになってきている。
【0003】
このような厳しい成形加工を施す場合、金属板の薄肉化に伴って樹脂フィルムも薄肉化する。食缶や飲料缶の外面は意匠性を高めるために一般に印刷が施されるが、樹脂フィルム被覆金属板から成形された缶においては、その印刷下地として金属板の色を隠蔽するために、白色または様々な色の顔料を含んだ樹脂フィルムを金属板にラミネートしたものが使用されている。このようなラミネート金属板に厳しい加工を施した場合、樹脂の厚さは大幅に薄くなり、添加した顔料の厚さ方向の絶対量が減少するため、十分な隠蔽性を得られないという問題が発生する。この問題を見越して顔料を予め多量に樹脂フィルム中に添加した場合には、樹脂フィルムの強度が低下し、加工時に樹脂フィルムが削れたり傷付きやすくなり、さらには樹脂フィルムが割れて剥げ落ちたりする現象が発生し、隠蔽性を向上させると共に被覆した樹脂フィルムの強度を高く保ち、十分な成形加工性を確保することは困難である。
【0004】
例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを金属板にラミネートし、製缶材料として用いる方法(特許文献1)が提案されているが、より厳しい加工を施して成形する際に樹脂フィルムが削れたり傷付ついたり、極端な場合には破断が発生する。また、未延伸ポリエステルフィルムを金属板にラミネートし、製缶材料として用いる方法(特許文献2)が提案されているが、未延伸フィルムは非常に脆いため、製膜する際や取扱う際に切断し易く、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するために、特許文献3には、高融点かつ高重合度共重合ポリエステルからなり、ワックスを含有させた表層と、高濃度着色料含有の共重合ポリエステルからなる裏層とからなる着色二軸延伸積層フィルムが提案されている。確かにこのフィルムによれば、隠蔽性と樹脂フィルムの成形加工性とを両立させることは可能である。
【0006】
しかしながら、ラミネート金属板は缶へ成形されたのちに、缶外面側には多種多様な印刷が施される。そして缶胴端部は成形工具によって最終的な缶の形状へと成形加工される。この際、印刷されたインキとフィルムとの密着性が不足しているとインキの剥れが発生してしまい、外観を損なうことが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−342577号公報
【特許文献2】特開平11−348218号公報
【特許文献3】特開2017−30231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、コストダウンを目的として板厚を薄くしたり、また、それに伴い製缶工程の改良も行われてきており、より厳しい製缶プロセスとなりフィルムへかかる負荷も大きくなってきている。また、缶表面に多種多様な印刷を施すため、インキとの密着性も求められる。
【0009】
本発明は上記を鑑みなされたもので、その目的は、上記のように厳しい加工や高い温度の熱処理が施された場合でも、貼り合わせた後に缶へ成形加工する際にフィルムが削れたり、疵付いたりすることのない優れた成形加工性を発現し、かつ、優れた隠蔽性、外観、印刷性を有する缶等の成形品が得られる金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らの研究によれば、上記課題は以下の構成によって達成されることが見出された。
1.融点が230〜260℃であるポリエステルから主になり、ポリマー部分の固有粘度が0.46以上であり、着色顔料の含有量が10重量%以下であり、ポリエチレンワックスを0.01〜0.25重量%であり、十点平均粗さが350〜700nmの範囲内である表層(A層)と、
融点が230〜260℃であるポリエステルと着色顔料とから主になり、ポリマー部分の固有粘度が0.46以上であり、着色顔料の含有量が10重量%を超え50重量%以下である基材層(B層)との少なくとも2層からなる着色二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
前記A層およびB層のポリエステルの融点が下記(1)式を満足する金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
|TmB−TmA|≦4℃ ―――(1)
(ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)
2.B層を構成するポリエステルが、融点230〜252℃の共重合ポリエステルである、上記1に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
3.A層を構成するポリエステルが、融点230〜252℃の共重合ポリエステルである、上記1または2に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
4.A層およびB層を構成するポリエステルが、いずれも融点230〜252℃の共重合ポリエステルであり且ついずれもイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートである、上記1に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
5.ワックスが、滴点が120〜140℃のポリエチレンワックスである、上記4に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
6.フィルムが、金属板の容器外面となる表面に貼り合わせられる上記1〜5のいずれかに記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムは、金属板に貼り合わせた後に缶等へ成形加工する際に缶壁部のフィルムに削れ、クラックが生じ難い優れた成形加工性を発現し、さらには成形後の隠蔽性、缶等の成形品の外観、印刷性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムは、表層(A層)と基材層(B層)の少なくとも2層からなる積層フィルムである。
【0013】
表層(A層)は、融点230〜260℃のポリエステルから主になる。ここで「主になる」とは、A層の重量を基準としてポリエステルが例えば80重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であることを示す。
【0014】
基材層(B層)は、融点230〜260℃のポリエステルと着色顔料とから主になる。ここで「主になる」とは、B層の重量を基準としてポリエステルと着色顔料の合計が例えば80重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であることを示す。
【0015】
A層およびB層のポリエステルの融点が上記範囲にあることによって、成形加工性に優れる。上記融点の下限より低いと成形加工時にフィルム削れが生じ、他方融点の上限より高いとクラックが生じる。
【0016】
また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、A層とB層の少なくとも2層からなるものであり、例えばA層/B層の2層構成、A層/B層/A層の3層構成等が挙げられる。さらに、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、A層とB層以外の層を有していても良い。その際、フィルムの少なくとも片方の表面はA層となるようにする。
【0017】
表層(A層)および基材層(B層)を構成するポリエステルは、上記の融点の要件を満たしていれば、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルとしてはホモのポリエチレンテレフタレートが好ましく挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレン−2,6−ナフタレート共重合体、あるいは、これらや上記ホモポリエステルと、ポリブチレンテレフタレートとのブレンド体のいずれでもよいが、中でもポリエチレンテレフタレート共重合体が好ましい。
【0018】
(ホモポリエステル)
本発明においてA層および/またはB層を構成するポリエステルとして、融点が250℃を超え260℃以下のポリエステルを好ましく挙げることができる。このようなポリエステルを採用することで、成形加工性の中でも成形加工時におけるフィルム削れを抑制する効果に特に優れる。融点が上限より高いと、製缶時の延伸に追従できないという観点での成形性に劣り、フィルムにクラックが生じてしまう。他方、融点が下限より低いとフィルム削れ抑制の向上効果が低くなる傾向にある。かかる観点から融点は、より好ましくは251〜260℃、さらに好ましくは253〜258℃、特に好ましくは254〜257℃である。
【0019】
このようなポリエステルとして、ホモポリエステル、好ましくはホモのポリエチレンテレフタレートや、上記融点範囲にある、融点の比較的高い(共重合量が比較的少ない)共重合ポリエステル、好ましくは共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。特にホモのポリエチレンテレフタレートが、フィルム削れ抑制の観点から好ましい。なお、ここでホモのポリエチレンテレフタレートとは、不可避的に含有されるジエチレングリコール成分を含有することを除外するものではない。また、かかる融点の比較的高い共重合ポリエステルの共重合成分としては、後述する共重合ポリエステルにおける共重合成分が挙げられ、上記融点範囲となるように共重合成分の種類や共重合量を調整すればよい。
【0020】
A層とB層の両方を構成するポリエステルが上述した融点が250℃を超え260℃以下のポリエステルであることによって、上述の効果はさらに良好に奏され好ましい。
【0021】
(共重合ポリエステル)
本発明においてA層および/またはB層を構成するポリエステルとして、融点が230〜250℃の共重合ポリエステルを好ましく挙げることができる。このようなポリエステルを採用することで、成形加工性時のフィルムのクラックおよびフィルム削れの両方をバランス良く抑制する効果に優れる。融点が上限より高いとフィルムのクラックが生じ易くなる傾向にある。他方、下限より低すぎると、成形加工時の発熱によってフィルム削れが発生する。
【0022】
かかる共重合ポリエステルの共重合成分は、酸成分でもアルコール成分でも良い。酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の如き主たる酸成分以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができ、アルコール成分としては1,6−ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール、1,4−ヘキサメチレンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を使用することができる。これらの中、イソフタル酸、セバシン酸が好ましく、特にイソフタル酸が好ましい。
【0023】
上記のような共重合ポリエステルの共重合成分の共重合割合は、A層の場合は共重合ポリエステルの融点(TmA)が230〜250℃の範囲となる割合にすればよく、好ましくは235〜250℃、より好ましくは238〜250℃、さらに好ましくは238〜249℃の範囲となる割合である。この融点が低いと耐熱性が劣り、成形加工時の発熱によって削れが発生するため好ましくない。一方、これより高いと共重合ポリエステルの結晶性が高くなる傾向にあり、成形加工性の向上効果が低くなり、クラックが発生し易くなる。
【0024】
B層の場合も同様に、共重合ポリエステルの融点(TmB)が230〜250℃の範囲となる割合にすればよく、好ましくは235〜250℃、より好ましくは238〜250℃、さらに好ましくは242〜250℃の範囲となる割合である。この融点が下限より低いと耐熱性が劣り、成形加工時の発熱によってB層が流動、変形し易くなり、それによる欠点が生じ易くなる。また、B層がフィルム表面にある場合は、削れが発生する。一方、融点が上限より高いと共重合ポリエステルの結晶性が高くなる傾向にあり、成形加工性の向上効果が低くなり、クラックが発生し易くなる。
【0025】
A層とB層の両方を構成するポリエステルが上記の融点が230〜250℃の共重合ポリエステルであることによって、上述の効果はさらに良好に奏され好ましい。
【0026】
A層およびB層を構成する共重合ポリエステルは、フィルム形成後の融点が上述の範囲となっていれば、いずれも樹脂原料として共重合ポリエステルのみを用いても、共重合ポリエステルとホモポリエステルとのブレンドを用いてもよい。これらの中でも、缶へ成形加工する際の成形加工性やフィルム品質の安定性の観点からは前者の方法が好ましく、特にA層、B層共に樹脂原料として共重合ポリエステルのみを用いることが好ましい。
【0027】
樹脂原料として共重合ポリエステルとホモポリエステルとのブレンドからなる樹脂原料を用いる場合、各層を構成するポリエステル全量を基準としてホモポリエステルの含有量は30〜60重量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
さらに本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、厳しい条件で成形加工を施しても缶壁部に削れ、クラックなどが生じることのない良好な加工性を実現するために、ラミネート金属板のフィルムに加えられた歪みに伴う応力を緩和する目的で、一連の製缶工程の途中で熱処理が施される。このため、A層とB層の融点差|TmB−TmA|は4℃以下である必要がある。この融点差が4℃を超えると、熱処理を施した際にB層では缶成形の際の残留応力が緩和(収縮)し、A層では融解して流動してしまい、フィルム表面の外観が不良となるため好ましくない。
【0029】
(固有粘度)
次に、本発明におけるA層とB層のポリマー部分の固有粘度は0.46以上である必要があり、好ましくは0.49以上、より好ましくは0.52以上である。この固有粘度が低い場合、フィルム延伸時のフィルム破断が多くなり、かつ得られたフィルムを金属板に貼り合わせた後、容器に成形する際破断を生じやすい。固有粘度が高いことは、成形加工性の観点からは好ましいことであるが、高すぎるものは生産性を低下させる等の問題が生じる場合があり、かかる観点からは例えば0.80以下が好ましく、より好ましくは0.75以下である。
【0030】
ここで、A層およびB層の共重合ポリエステルの固有粘度(IV)は、製膜に使用される原料共重合ポリエステル組成物をo−クロロフェノールに溶解後、遠心分離機により着色顔料等を取り除き35℃溶液にて測定して得られる値(IVa)を、下記(2)式に代入して樹脂分の重量換算値として求めた。
IV=IVa/(1−C) −−−(2)
ここでいうCは各層の着色顔料濃度を指す。
【0031】
(ポリエチレンワックス)
本発明に於いて、表層(A層)はポリエチレンワックスを0.01〜0.25重量%含有している必要があり、0.02〜0.23重量%の範囲がより好ましく、0.03〜0.15重量%の範囲がさらに好ましい含有量である。の範囲である。含有量が下限未満の場合は、フィルム表面の潤滑性が不足し、フィルムへのより厳しい負荷がかかる成形加工の際に、削れ、傷付きが発生しやすくなる。含有量が上限を超える場合は、フィルム表面に印刷されたインキとの密着性が損なわれ、その後の工程でインキ剥がれが発生するため好ましくない。ポリエチレンワックスは、ポリエチレン主鎖を主とした組成であれば特に限定されることなく用いることができ、酸化ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、分岐状ポリエチレン、それらの混合物等を挙げることができるが、なかでもフィルム製膜工程での耐熱性に優れる直鎖状ポリエチレンが好ましい。また、ポリエチレンワックスの滴点は、好ましくは120〜140℃である。この範囲であることにより、製缶工程に於いてフィルム表面にポリエチレンワックスが露出しやすくなり、フィルム表面の潤滑性が向上し、フィルムへのより厳しい負荷がかかる成形加工に際に、削れ、傷付きが発生しにくくなる。より好ましくは125〜140℃である。
【0032】
(表面粗さ)
本発明に於けるポリエステルフィルムは、A層/B層の2層構成である場合はA層側の十点平均粗さが、A層/B層/A層の3層構成である場合は、任意の一方のA層側の十点平均粗さが350〜700nmの範囲内である必要があり、より好ましくは400〜690nm、さらに好ましくは410〜685nmの範囲である。十点平均粗さが下限未満の場合は、成形加工の際に金属工具との摩擦によって削れが発生し好ましくない。また、インキとの密着性も損なわれるため好ましくない。十点平均粗さが上限を超える場合は、粗さを大きくするために含有させた粒子を起点としたフィルムの削れ、クラックが生じるため好ましくない。上述の表面粗さを達成するため、A層には平均粒径1.0〜3.0μmの不活性粒子であることが好ましく、1.2〜1.8μmの不活性粒子であることがより好ましい。また不活性粒子は、A層の質量を基準として、0.01〜0.5質量%含有することが好ましく、0.05〜0.3質量%含有することがより好ましく、0.08〜0.2質量%含有することがさらに好ましい。
【0033】
A層に含有させる不活性粒子としてはポリマー中で安定的に存在できるものであれば特に制限されず、それ自体公知のものを採用でき、例えばポリスチレン、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、およびジビニルベンゼンから選ばれた、各単量体の重合体、あるいは共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン、シリコーン等の有機質、シリカ、カオリン、タルク、グラファイト等の無機質のいずれかを用いるのが好ましい。
【0034】
上記の範囲となるようにフィルムの表面粗さを設計し、かつワックスを上記の範囲となるよう添加することにより、ワックスに由来する潤滑作用と、表面粗さに由来する成形工具との接触面積の低減によって成形加工性が満足される。さらに表面粗さを上記の範囲とすることで、フィルムとインキ間のアンカー効果によりインキの密着性も確保される。
【0035】
(着色顔料)
本発明においてB層は着色顔料を含有し、該着色顔料の含有量は、B層の重量を基準として10重量%を超え50重量%以下である必要があり、より好ましい含有量は15〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%の範囲である。着色顔料の含有量が10重量%以下の場合には隠蔽性に劣り、上限を超える場合には、隠蔽性の向上効果が飽和するだけでなく、フィルムが脆くなってフィルム延伸時にフィルム破断が生じやすくなり、かつ得られたフィルムを金属板に貼り合わせた後、缶に成形加工する際にクラックや破断が生じやすくなるので好ましくない。B層に含有させる着色顔料としては無機、有機系のいずれであってもよいが、無機系の方が好ましい。無機系顔料としては、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が好ましく例示され、なかでも二酸化チタンが好ましい。
【0036】
A層については、着色顔料は、本発明の目的を阻害しない限り含有していても良いし、含有していなくても良い。含有する場合は、A層の重量を基準として10重量%以下とする。A層において着色顔料の含有量が上限を超えると、フィルムを金属板に貼り合わせた後に缶等へ成形加工する際、厳しい加工条件を伴うものであると缶壁部にクラックが生じ易くなる傾向にある。また、フィルムが脆くなってフィルム延伸時にフィルム破断が生じ易くなる傾向にある。かかる観点から、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。また、本発明において最も好ましい態様として、A層が実質的に着色顔料を含有しない態様が挙げられる。ここでいう「実質的に着色顔料を含有しない」とは、例えば二酸化チタンのような粒子(着色顔料であると同時に滑剤としても作用も有する)を表面平滑性を付与する目的で少量、例えばA層の重量を基準として0.05重量%以下、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以下含有していてもよいことをいい、特に着色顔料を含有しないことが好ましい。こうすることにより、上述したような厳しい加工条件を伴う成形加工であっても缶壁部にクラックが生じることをさらに抑制でき、表面欠陥をさらに少なくできる。また、フィルムが脆くなることをさらに抑制でき、フィルム延伸時のフィルム破断をさらに抑制できる。
【0037】
(他の添加剤)
なお、A層およびB層には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて他の添加物、例えば蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加することができる。特に白度を向上させる場合には、蛍光増白剤が有効である。
【0038】
(厚み)
次に本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、必要に応じて適宜変更できるが全体の厚みで6〜75μmの範囲が好適であり、なかでも10〜75μm、特に15〜50μmの範囲が好ましい。厚みが6μm未満では成形加工時に削れ等が生じやすくなり、一方75μmを超えるものは過剰品質であって不経済である。
【0039】
さらにA層とB層の厚み比(X/X:但し、XはA層の厚みの合計、XはB層の厚みの合計)は、適した表面接触角、成形加工性、隠蔽性のバランスの観点から0.13〜0.43が好ましく、より好ましくは0.15〜0.40、さらに好ましくは0.16〜0.35である。
【0040】
(製造方法)
以上に説明した本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来公知の製膜方法により先ず未延伸積層シートを作成し、次いで二方向に延伸すればよい。
【0041】
例えば、A層用にポリエステルにポリエチレンワックスと不活性粒子を添加したポリエステル組成物を調整し、十分に乾燥させた後、融点〜(融点+50)℃の温度で押出機内で溶融する。なお、ここで融点は用いたポリエステルの融点である。同時にB層用にポリエステルに着色顔料を添加したポリエステル組成物を調整し、十分に乾燥させた後、他の押出機に供給し、融点〜(融点+50)℃の温度で溶融する。続いて、両方の溶融樹脂をダイ内部で積層する方法、例えばマルチマニホールドダイを用いた同時積層押出法により、積層された未延伸積層シートが製造される。かかる同時積層押出法によると、一つの層を形成する樹脂の溶融物と別の層を形成する樹脂の溶融物はダイ内部で積層され、積層形態を維持した状態でダイよりシート状に成形される。
【0042】
次いで該未延伸積層シートを逐次または同時二軸延伸し、熱固定する方法で製造することができる。逐次二軸延伸により製膜する場合、未延伸積層シートをロール加熱、赤外線加熱等で加熱して先ず縦方向に延伸し、次いでステンターにて横延伸する。この時、延伸温度をポリエステル(好ましくは層Aのポリエステル)のガラス転移点(Tg)より20〜50℃高い温度とし、縦延伸倍率を2.0〜5.0倍、好ましくは2.2〜4.0倍、より好ましくは2.5〜3.6倍、横延伸倍率を2.5〜5.0倍、好ましくは2.6〜4.0倍、より好ましくは2.6〜3.7倍の範囲とするとよい。熱固定の温度は、150〜240℃、好ましくは150〜230℃の範囲でポリエステルの融点に応じて、フィルム品質を調整するべく選択するのが好ましい。
【0043】
(用途)
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムは、金属板の容器外面となる表面に貼り合わされる用途に好適に用いられる。容器内面には通常印刷性が要求されないためである。
【0044】
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムが貼り合わされる金属板、特に製缶用金属板としては、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の板が適切である。金属板への貼り合わせは、例えば、金属板をフィルムの融点(フィルムにおいて金属板に接する層を構成するポリエステルの融点)以上に加熱し、フィルムを貼り合わせた後冷却し、金属板に接するフィルムの層を非晶化して融着させる方法で行うことができる。この場合、缶内面被覆用ポリエステルフィルムも、該金属板のもう一方の表面に貼り合わせて、同時に融着させることができる。なお、フィルムがA層/B層の2層構成である場合は、B層が金属板に接し、また、フィルムがA層/B層/A層の3層構成である場合は、任意の一方のA層が金属板に接するようになる。他の積層構成であっても同様に、A層が金属板とは反対のフィルム表層を形成していればよく、フィルムにおいてかかる表層を形成するA層とは反対側の表層を形成している層が金属板との貼り合せ側となる。
【0045】
このようにして、金属板の両面に缶外面被覆用ポリエステルフィルムと缶内面用ポリエステルフィルムとが貼合された後、数段階の絞りしごき加工によって金属缶等に成形される。この際、フィルムラミネート金属板のフィルムに加えられた歪みに伴う応力を緩和することにより、その後の成形加工に於けるフィルム損傷を低減する目的で、一連の製缶工程の途中で熱処理が施される。本発明は、該熱処理が施されたとしても外観に優れるものである。
【0046】
(特性値)
[クラック]
試料フィルムを、2層構成のものはB層(金属板貼り合せ面)のポリエステルの融点以上(おおよそ融点+10℃)に、3層構成のものは金属板貼り合せ面となるA層のポリエステルの融点以上(おおよそ融点+10℃)に加熱した板厚0.230mmのティンフリースチールの片面に貼り合わせ、水冷した後150mm径の円板状に切り取り、ダイスとポンチを用いて5段階の絞りしごき加工を施し、55mm径の側面無継目容器を作成した。この缶について缶壁におけるポリエステルフィルム層のクラックの発生状況を評価する。
【0047】
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムのクラックは、缶体1000缶の缶壁におけるポリエステルフィルム層のクラックの発生状況により、好ましくはフィルムに小さなクラックが認められる程度であり、より好ましくはフィルムにクラックは認められない程度である。
【0048】
[インキ密着性]
2軸延伸フィルムサンプルを貼合せた金属板からなる缶に、公知の熱硬化性インキ(DIC株式会社製、MC QL R−3 赤−3)、熱硬化性仕上げニス(DIC株式会社製、6WB117)を缶胴に塗布した後、オーブンにて200℃、30秒の焼付け硬化を行った。得られた缶700個を切り開き、缶胴部を平らに伸ばして試験片とした。得られた試験片のインキが印刷された面を、鉛筆硬度計(株式会社丸菱科学機械製作所製 PS−310)を用いて500g荷重下、10mm/minの速度で走査し、インキ剥がれが発生しない最大の鉛筆硬度を測定し、下記基準で判定する。
【0049】
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムのインキ密着性は、好ましくは鉛筆硬度がHであり、より好ましくは2Hであり、さらに好ましくは3H以上である。
【0050】
[隠蔽性]
上記で得られた缶体を用い、缶胴部を目視観察し、以下の基準で隠蔽性を評価する。
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムの隠蔽性は、好ましくは金属板地肌の色が殆ど見えず、良好な隠蔽性を示し、より好ましくは金属板地肌の色が全く見えず、優れた隠蔽性を示す。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0052】
(融点)
共重合ポリエステルの融点測定はTA Instruments Q100 DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める方法により行った。なおサンプルはなおサンプルはフィルム各層から削り取ったポリエステル組成物を5mg用いる。
【0053】
(滴点)
滴点の測定は、ウベローデ(Ubbelohde)滴点計器を用いて、DIN 51801/2(℃)に従って行った。
【0054】
(固有粘度)
フィルム各層から削り取ったポリエステル組成物0.3gをo−クロロフェノール25ml中に溶解後、一旦冷却させ、遠心分離機により着色顔料等を取り除き、その溶液をオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
【0055】
(表面粗さ)
表層(A層)側のフィルム表面を真空蒸着装置(日本電子株式会社製 JEE−4X)を用いてアルミ蒸着したのち、当該表面をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK−X100)を用いて対物50倍で十点平均粗さ(RZJIS)を5回測定し、その平均値を十点平均粗さとした。
【0056】
(着色顔料濃度)
A層、B層の着色顔料濃度は、フィルム各層から削り取ったポリエステル組成物約1〜2gを、セラミック製の坩堝に入れ電気乾燥機内で600℃、6時間以上加熱した後、坩堝に残った灰分重量を、もとのポリエステル組成物の重量で除して求めた。フィルム全体の着色顔料濃度は、製膜した2軸延伸ポリエステルフィルム1gを用いて同様の方法で算出した。
【0057】
(フィルム各層の厚み)
サンプルを長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(Reichert−Jung製 Supercut)で幅方向に垂直に切断、50μm厚の薄膜切片にする。走査型電子顕微鏡(日立 4300SE/N)を用いて、加速電圧20kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、5点の平均厚みを求めた。
【0058】
(成形加工性)
試料フィルムを、2層構成のものはB層(金属板貼り合せ面)のポリエステルの融点以上(おおよそ融点+10℃)に、3層構成のものは金属板貼り合せ面となるA層のポリエステルの融点以上(おおよそ融点+10℃)に加熱した板厚0.230mmのティンフリースチールの片面に貼り合わせ、水冷した後150mm径の円板状に切り取り、ダイスとポンチを用いて5段階の絞りしごき加工を施し、55mm径の側面無継目容器を作成した。この缶について缶壁におけるポリエステルフィルム層の削れおよびクラックの発生状況により、以下の基準で成形加工性を評価した。
【0059】
[削れ]
缶体1000缶の缶壁におけるポリエステルフィルム層の削れの発生状況により、以下の基準で成形加工性を評価した。
◎:削れ、剥がれの発生率が0.1%未満。
○:0.1〜0.5%の缶に削れ、剥がれの発生が認められるが実用上の問題なし。
×:0.1〜0.5%の缶に実用上問題となる削れ、剥がれが認められる。
××:0.5%を超える缶に実用上問題となる削れ、剥がれが認められる。
【0060】
[クラック]
○:フィルムにクラックは認められない。
△:フィルムに小さなクラックが認められる。
×:フィルムに大きなクラックが認められる。
【0061】
(インキ密着性)
インキ密着性を鉛筆硬度試験で評価した。
2軸延伸フィルムサンプルを貼合せた金属板からなる缶に、公知の熱硬化性インキ(DIC株式会社製、MC QL R−3 赤−3)、熱硬化性仕上げニス(DIC株式会社製、6WB117)を缶胴に塗布した後、オーブンにて200℃、30秒の焼付け硬化を行った。得られた缶700個を切り開き、缶胴部を平らに伸ばして試験片とした。得られた試験片のインキが印刷された面を、引張式塗膜硬度計(〜〜〜)を用いて500g荷重下、10mm/minの速度で走査し、インキ剥がれが発生しない最大の鉛筆硬度を測定し、下記基準で判定した。
◎:鉛筆硬度が3H以上
○:鉛筆硬度が2H
△:鉛筆硬度がH
×:鉛筆硬度がF以下
【0062】
(隠蔽性)
上記で得られた缶体を用い、缶胴部を目視観察し、以下の基準で隠蔽性を評価した。
◎:金属板地肌の色が全く見えず、優れた隠蔽性を示す。
○:金属板地肌の色が殆ど見えず、良好な隠蔽性を示す。
×:金属板地肌の色が見え、隠蔽性が劣る。
【0063】
(熱処理後の外観)
成型加工性が良好な缶について、オーブン中で235〜255℃で90秒保持した後の缶の外観を、下記の基準で評価した。
○:缶のフィルム表面に外観不良の発生が認められない。
×:缶のフィルム表面が粗れており外観不良の発生が認められる。
【0064】
[実施例1〜12、比較例1〜11]
表1に示すA層用ポリエステル組成物およびB層用ポリエステル組成物をそれぞれ独立に乾燥・A層、B層共に280℃で溶融後、3層フィードブロックによりA/B/Aの3層構成に積層し、隣接したダイより共押出し、急冷固化して未延伸積層フィルムを得た。次いで、この未延伸フィルムを100℃で3.0倍に縦延伸した後、130℃で3.0倍に横延伸し、続いて165℃で熱固定して二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0065】
なお、着色顔料としてルチル型酸化チタン(平均粒径0.5μm)を用いた。また、ワックスとして滴点135℃の直鎖状ポリエチレンワックスを用いた。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0066】
[実施例13]
2層フィードブロックによりA/Bの2層構成に積層した以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1においてPETはホモポリエチレンテレフタレート、PET−IAxは、xモル%イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートである。また、PET−IAx//PBTは、xモル%イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの50/50(重量比)のブレンド体である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムは、隠蔽性に優れ、金属板に貼り合わせた後に厳しい条件で例えば缶へ成形加工しても、缶壁部のフィルムに削れ、クラックが生じることのない優れた成形加工性を発現し、さらには缶成形後の外観にも優れ、印刷性にも優れるので、例えば飲料缶、食品缶、エアゾール缶等の金属缶用として、特にこれらの缶外面用として好適に使用することができる。