(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、自動可動機構を備え、この自動可動機構は、上記水洗大便器本体を床面上でスライドさせることにより上記第1排水ソケット部材と上記第2排水ソケット部材を整合させる際、自動的に上記可動式シール部材を移動させ上記第1排水ソケット部材と上記第2排水ソケット部材の間をシールする請求項1記載の水洗大便器装置。
さらに、上記可動式シール部材を移動させるためのシール操作部材を有し、上記シール操作部材を操作することにより、上記可動式シール部材が移動され、上記第1排水ソケット部材と上記第2排水ソケット部材の間がシールされる請求項1記載の水洗大便器装置。
上記シール操作部材は、上記水洗大便器本体の上記切欠を通して上記可動式シール部材を移動させるように構成され、上記第1排水ソケット部材と上記第2排水ソケット部材の間がシールされる位置に上記シール操作部材を移動させると、上記水洗大便器本体の上記切欠が上記シール操作部材によって塞がれる請求項3記載の水洗大便器装置。
さらに、ガイド機構を有し、このガイド機構は、上記第1排水ソケット部材を取り付けた上記水洗大便器本体が床面上でスライドされるとき、上記第1排水ソケット部材と上記第2排水ソケット部材が整合するように上記水洗大便器本体のスライドを案内する請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器装置。
上記ガイド機構は、上記第1排水ソケット部材及び上記第2排水ソケット部材の何れか一方に設けられたガイド凹部と、上記第1排水ソケット部材及び上記第2排水ソケット部材の他方に設けられ、上記ガイド凹部と係合するガイド凸部から構成されている請求項5記載の水洗大便器装置。
さらに、接続解除機構を有し、この接続解除機構は、上記可動式シール部材を、上記第1排水ソケット部材と上記第2排水ソケット部材の間がシールされる位置から、上記第1排水ソケット部材と上記第2排水ソケット部材の間がシールされない位置へ移動させる請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に水洗大便器本体は重量物であり、これを持ち上げて、水洗大便器本体の出口開口と床面上の排水配管を整合させ、これらを接続することは難しい作業である。特に、排水トラップ管路の出口開口が床面に向けて開口している床置き式の水洗大便器本体では、出口開口が水洗大便器本体周囲のスカート部によって覆われているものが多く、出口開口と排水配管の位置を視認しながら整合させることが困難であり作業性が悪い。
【0006】
特許文献2記載の便器の施工方法では、水洗大便器本体底面の凹部と合致した形状のフランジを、予め排水配管に取り付けておくことにより、出口開口と排水配管の位置合わせを容易にしている。しかしながら、この施工方法においても、水洗大便器本体を適所に位置合わせするためには、重量物である水洗大便器本体を持ち上げる必要があり、施工性は良好ではない。また、特許文献2記載の便器の施工方法では、水洗大便器本体に、フランジの形状と合致した底面凹部が設けられている必要があり、施工方法を適用可能な便器が制約されるという問題がある。
従って、本発明は、水洗大便器本体を持ち上げることなく、排水トラップ管路の出口開口と、床面に設けられた排水配管を容易に接続することができる水洗大便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、床面に設置して使用する水洗大便器装置であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の底部から延び、下流端の出口開口が床面に向けて開口した排水トラップ管路と、を備えた水洗大便器本体と、排水トラップ管路の出口開口に水密的に取り付けられる第1排水ソケット部材と、水洗大便器本体を設置すべき床面に設けられた排水配管に水密的に取り付けられ、第1排水ソケット部材に接続可能な第2排水ソケット部材と、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間の水密性を確保するための可動式シール部材と、を有し、水洗大便器本体の底部には切欠が設けられており、排水トラップ管路に取り付けた第1排水ソケット部材が、排水配管に取り付けられた第2排水ソケット部材と整合するように、水洗大便器本体を床面上でスライドさせる際、切欠の中を第2排水ソケット部材が通過し、可動式シール部材は上下方向に移動して、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が整合した状態において、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間をシールするように構成されていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、水洗大便器本体のボウル部から延びる排水トラップ管路の出口開口に、第1排水ソケット部材が水密的に取り付けられる。一方、第2排水ソケット部材は、水洗大便器本体を設置すべき床面に設けられた排水配管に水密的に取り付けられる。水洗大便器本体の底部の切欠は、第2排水ソケット部材を通過させることができるように形成されているので、水洗大便器本体を床面上でスライドさせるだけで、水洗大便器本体に取り付けられた第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材を整合させることができる。可動式シール部材は、上下方向に移動して、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が整合した状態において、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間をシールする。
【0009】
このように構成された本発明によれば、可動式シール部材が上下方向に移動され、水洗大便器本体に取り付けられた第1排水ソケット部材と、排水配管に取り付けられた第2排水ソケット部材が整合した状態において第1、第2排水ソケット部材の間がシールされる。排水配管に取り付けられた第2排水ソケット部材は、水洗大便器本体の底部の切欠を通過することができるので、水洗大便器本体を持ち上げることなく、水洗大便器本体を床面上でスライドさせるだけで第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材を整合させることができる。このため、水洗大便器本体を持ち上げることなく、排水トラップ管路の出口開口と排水配管を容易に水密的に接続することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、自動可動機構を備え、この自動可動機構は、水洗大便器本体を床面上でスライドさせることにより、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材を整合させる際、自動的に可動式シール部材を移動させ第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間をシールする。
【0011】
このように構成された本発明によれば、水洗大便器本体を床面上でスライドさせることにより、自動可動機構が自動的に可動式シール部材を移動させ、第1、第2排水ソケット部材間がシールされるので、特別な操作を行うことなく極めて容易に第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材を水密的に接続することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、さらに、可動式シール部材を移動させるためのシール操作部材を有し、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が整合した状態で、シール操作部材を操作することにより、可動式シール部材が移動され、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間がシールされる。
【0013】
このように構成された本発明によれば、シール操作部材を操作することにより、可動式シール部材が移動され、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間がシールされるので、確実に第1、第2排水ソケット部材の間の水密性を確保することができる。また、シール操作部材を、水洗大便器本体の外側から操作できるように構成しておくことにより、容易に第1、第2排水ソケット部材の間をシールすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、シール操作部材は、水洗大便器本体の切欠を通して可動式シール部材を移動させるように構成され、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間がシールされる位置にシール操作部材を移動させると、水洗大便器本体の切欠がシール操作部材によって塞がれる。
【0015】
このように構成された本発明によれば、シール操作部材が水洗大便器本体の切欠を通して操作されるので、水洗大便器本体の外側から可動式シール部材を移動させることができる。また、第1、第2排水ソケット部材の間がシールされた状態では、切欠がシール操作部材によって塞がれるので、切欠を隠蔽することができ、水洗大便器本体の意匠性を向上させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、さらに、ガイド機構を有し、このガイド機構は、第1排水ソケット部材を取り付けた水洗大便器本体が床面上でスライドされるとき、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が整合するように水洗大便器本体のスライドを案内する。
【0017】
このように構成された本発明によれば、ガイド機構によって、第1、第2排水ソケット部材が整合するように水洗大便器本体のスライドが案内されるので、第1排水ソケット部材が水洗大便器本体の外側から視認できない状態であっても容易に第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材を整合させることができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、ガイド機構は、第1排水ソケット部材及び第2排水ソケット部材の何れか一方に設けられたガイド凹部と、第1排水ソケット部材及び第2排水ソケット部材の他方に設けられ、ガイド凹部と係合するガイド凸部から構成されている。
【0019】
このように構成された本発明によれば、ガイド機構が第1排水ソケット部材及び第2排水ソケット部材に設けられているので、特別な部材を追加することなくスライドを案内することができる。また、ガイド機構がガイド凹部とガイド凸部から構成されているので、簡単な構造でガイド機構を実現することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、さらに、接続解除機構を有し、この接続解除機構は、可動式シール部材を、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間がシールされる位置から、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間がシールされない位置へ移動させる。
【0021】
このように構成された本発明によれば、接続解除機構を備えているので、水洗大便器本体を設置した後でも、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の接続を容易に解除することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水洗大便器装置によれば、水洗大便器本体を持ち上げることなく、排水トラップ管路の出口開口と、床面に設けられた排水配管を容易に接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、
図1乃至
図5を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置を説明する。
図1は本実施形態による水洗大便器装置の側面図であり、
図2は本実施形態における水洗大便器本体を後方から見た斜視図である。
図3は、本実施形態による水洗大便器装置に備えられた第1排水ソケット部材及び第2排水ソケット部材を拡大して示す断面図である。
図4は、本実施形態による水洗大便器装置に備えられた第2排水ソケット部材の上面図である。
図5は、本実施形態による水洗大便器装置における第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の接続を説明する図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の水洗大便器装置1は、水洗大便器本体2と、この水洗大便器本体2の上面後部に取り付けられた貯水タンク4と、水洗大便器本体2の排水トラップ管路に取り付けられる第1ソケット部材6と、床面Fに設けられた排水配管に取り付けられた第2ソケット部材8と、を有する。
本実施形態の水洗大便器装置1は、トイレ室の床面Fに設けられた排水配管10に第2ソケット部材8を取り付け、水洗大便器本体2の排水トラップ管路に第1ソケット部材6を取り付けておき、水洗大便器本体2を床面F上でスライドさせることにより第1ソケット部材6と第2ソケット部材8を接続することができるように構成されている。
【0026】
図1に示すように、水洗大便器本体2は、汚物を受けるボウル部2aと、このボウル部2a内の汚物及び洗浄水を排出するための排水トラップ管路2bと、ボウル部2aの周囲を囲むように床面Fまで延びるスカート部2cと、を備えている。排水トラップ管路2bはボウル部2aから延びる概ね円形断面の管路であり、ボウル部2aの底部から斜め上方に延びた後、概ね鉛直下方に向けて延びるように湾曲されている。従って、排水トラップ管路2bの下流端の出口開口2dは、床面Fに向かって開口している。便器洗浄時においては、貯水タンク4内の洗浄水がボウル部2aに吐出され、ボウル部2a壁面が洗浄されると共に、ボウル部2a内の汚物が洗浄水と共に排水トラップ管路2bを通って排出される。
【0027】
なお、本実施形態においては、水洗大便器本体2は、陶器製であるが、樹脂等、他の材料製の水洗大便器本体を本発明に適用することもできる。また、
図1に示すように、本明細書において、水洗大便器装置1や水洗大便器本体2の「後方」とは貯水タンク4が配置された側を意味し、「前方」とはその反対の側を意味している。
【0028】
また、
図2に示すように、水洗大便器本体2のスカート部2cは、ボウル部2aの周囲を取り囲むように床面Fまで延びている。従って、ボウル部2aから延びる排水トラップ管路2bの下流端は、スカート部2cの内側に隠蔽されており、水洗大便器本体2の外側から視認することはできない。また、スカート部2cの後面の底部には切欠2eが形成されている。この切欠2eが設けられることにより、水洗大便器本体2の後面においては、スカート部2cの下端と床面Fの間に隙間が形成される。また、後述するように、切欠2eは、床面Fに取り付けた第2ソケット部材8が、切欠2eの内側(スカート部2cの下端と床面Fの間の隙間)を通過することができる寸法形状に構成されている。
【0029】
次に、
図3及び
図4を参照して、第1ソケット部材6及び第2ソケット部材8の構成を説明する。
図3に示すように、第1ソケット部材6は、概ね円筒状の部材であり、排水トラップ管路2bの下流端に水密的に接続されるように構成されている。第1ソケット部材6は、排水トラップ管路2bの下流端を受け入れる大径部6aと、この大径部6aの下端から延びるソケット本体部6bと、このソケット本体部6bの下端部に設けられたフランジ部6cと、を有する。
【0030】
大径部6aは、排水トラップ管路2bの下流端を受け入れるように形成された円筒形の部分であり、接着することにより排水トラップ管路2bの下流端に水密的に固定される。或いは、パッキン(図示せず)により、第1ソケット部材6の大径部6aを排水トラップ管路2bに固定することもできる。
ソケット本体部6bは、大径部6aと連通するように形成された円筒形の部分であり、大径部6aよりも内径が小さく形成されている。この構成により、排水トラップ管路2bの下流端の出口開口2dから流出した汚物及び洗浄水は、全てソケット本体部6bに流入する。
フランジ部6cは、ソケット本体部6bの下端部外周に形成されたドーナツ板状の部分である。フランジ部6cは、ソケット本体部6bに対して直角に延びているので、ソケット本体部6bが鉛直方向に向けられた状態においては、フランジ部6cは概ね水平方向に向けられる。
【0031】
図3及び
図4に示すように、第2ソケット部材8は、床面Fに固定されるベース部12と、このベース部12に対して回動可能に取り付けられた可動部14と、この可動部14に取り付けられたガスケット16と、を有する。
ベース部12は、床面Fに埋設された排水配管10の近傍に、2本のビス12aによって床面Fに固定される直方体状の部材であり、このベース部12によってシャフト12bが水平方向に向けて支持されている。
【0032】
可動部14は、ベース部12に取り付けられた可動式シール部材である板状部14aと、この板状部14aの下側に結合された伸縮部14bと、この伸縮部14bの下側に結合された排水配管接続部14cと、を有する。
板状部14aは、概ね長方形板状の部分であり、その1つの辺が、ベース部12のシャフト12bによって回動可能に支持されている。このため、板状部14aは、水平方向に向けられたシャフト12bを中心に所定角度回動することができ、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8が水密的に接続された状態では、板状部14aは、フランジ部6cと概ね平行に、ほぼ水平方向に向けられる。
【0033】
また、板状部14aには円形の開口が設けられており、この開口は、第1ソケット部材6のソケット本体部6bと整合する位置に形成されている。さらに、板状部14aの下面には円筒形の伸縮部14bが設けられており、この伸縮部14bは板状部14aの開口と連通するように、一体に形成されている。伸縮部14bは弾性変形可能な材料で構成されており、伸縮部14bが伸縮、変形することにより板状部14aの回動が許容される。或いは、伸縮可能な蛇腹管により伸縮部14bを構成することもできる。
【0034】
さらに、伸縮部14bの下流側には、円筒形の排水配管接続部14cが一体に形成されており、伸縮部14bと排水配管接続部14cは一続きの円管を構成している。排水配管接続部14cの外周は、床面に設けられた排水配管10の内側に嵌め込み可能な外径に形成されており、排水配管接続部14cは、接着により排水配管10に水密的に取り付けられる。例えば、塩化ビニル用の接着剤を排水配管接続部14cと排水配管10の接着に使用することができる。このように、排水配管接続部14cが排水配管10に接着された状態であっても、伸縮部14bが変形することにより、依然として板状部14aの回動は許容される。
【0035】
一方、
図4に示すように、板状部14aの上面の両端にはガイド縁部14dが夫々形成されており、これらのガイド縁部14dは板状部14aの両側の短辺に沿って設けられた細長い隆起部である。両側のガイド縁部14dの間の間隔は、円形に形成された第1ソケット部材6のフランジ部6cの直径とほぼ同一に形成されている。
【0036】
さらに、
図3に示すように、板状部14aの、シャフト12bによって支持されている側の長辺には、板状部14aからほぼ直角に立ち上がった突出部14eが設けられている。この突出部14eは、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8が整合した状態においては、第1ソケット部材6のフランジ部6cに当接し、板状部14aはほぼ水平方向に向けられた状態に回動される。
【0037】
ガスケット16は、板状部14aの上面に、その円形の開口を取り囲むように取り付けられた円環状のゴム製の部材である。このガスケット16が、第1ソケット部材6のフランジ部6cと第2ソケット部材8の板状部14aの間に挟まれることにより、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8が水密的にシールされる。即ち、板状部14aがほぼ水平方向に向けられた状態においては、ガスケット16は、フランジ部6cと板状部14aの間で所定量押しつぶされ、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8の間がシールされる。
【0038】
次に、
図5を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1の設置手順を説明する。
水洗大便器装置1を設置する場合には、まず、水洗大便器本体2に設けられた排水トラップ管路2b下流端の出口開口2dに、第1ソケット部材6を取り付ける。即ち、第1ソケット部材6の大径部6aに排水トラップ管路2bの下流端を差し込んで接着し、第1ソケット部材6を排水トラップ管路2bに水密的に取り付ける。
図5の左欄に示すように、この状態において、水洗大便器本体2を床面F上に配置すると、第1ソケット部材6下流端のフランジ部6cは、床面Fから所定距離上方に、ほぼ水平に配置される。
【0039】
一方、第2ソケット部材8の排水配管接続部14cを床面Fに設けられた排水配管10に挿入した状態で、ベース部12を排水配管10の近傍に配置し、2本のビス12aによりベース部12を床面Fに固定する。さらに、排水配管接続部14cを排水配管10に接着して、第2ソケット部材8を排水配管10に水密的に接続する。この状態においては、可動部14の板状部14aと排水配管接続部14cの間の伸縮部14bは縮小されており、板状部14aは水平面に対してベース部12の反対側(
図5における右側)が低くなるように傾斜している。
【0040】
図5の右欄に示すように、第2ソケット部材8を床面Fの排水配管10に取り付けた後、第1ソケット部材6を取り付けた水洗大便器本体2を床面F上でスライドさせ、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8を整合させる。ここで、第1ソケット部材6は水洗大便器本体2のスカート部2cによって取り囲まれているが、スカート部2cの後面底部には切欠2e(
図2)が設けられているため、水洗大便器本体2を持ち上げることなく第1ソケット部材6と第2ソケット部材8を整合させることができる。即ち、第2ソケット部材8が切欠2eの中を通過するように水洗大便器本体2をスライドさせることにより、第2ソケット部材8とスカート部2cが干渉することなく、第2ソケット部材8をスカート部2cの内側に位置させることができる。
【0041】
水洗大便器本体2をスライドさせることにより、第1ソケット部材6が第2ソケット部材8に接近すると、第1ソケット部材6下端のフランジ部6cが、第2ソケット部材8の可動部14のガイド縁部14d(
図4)に接触する。水洗大便器本体2をスライドさせる際、第1ソケット部材6は施工者から視認できない状態にあるが、第1ソケット部材6のフランジ部6cがガイド縁部14dによって案内されるので、施工者は水洗大便器本体2を手探りで適所にスライドさせることができる。即ち、第1ソケット部材6のフランジ部6cは、可動部14の両端に設けられたガイド縁部14dの間に入るように案内されるので、第1ソケット部材6を第2ソケット部材8に対して適所に移動させることができる。
【0042】
図5の右欄に示す状態から、さらに水洗大便器本体2をスライドさせると、フランジ部6cの一端部(
図5における左端)が、可動部14の突出部14eに接触する。突出部14eの先端部がフランジ部6cによって押されると、可動部14はベース部12のシャフト12bを中心に回動される。この際、縮小されていた伸縮部14bが伸ばされ、板状部14aの回動が許容される。水洗大便器本体2をスライドさせることにより、第1ソケット部材6が第2ソケット部材8と整合する位置まで移動されると(
図3に示す状態)、可動部14は板状部14aがほぼ水平になる位置まで回動される。可動部14が回動されることにより、可動部14の板状部14aに取り付けられたガスケット16が上昇し、ガスケット16がフランジ部6cの下面に押しつけられる。これにより、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8が水密的に接続される。
【0043】
本実施形態においては、可動部14の板状部14aは、回動されることにより、上下方向に移動して、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が整合した状態において、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間をシールする。従って、可動部14の板状部14aは可動式シール部材として機能する。また、本実施形態において、可動部14の突出部14eは、水洗大便器本体2を床面F上でスライドさせることにより第1排水ソケット部材6と第2排水ソケット部材8を整合させる際、自動的に板状部14aを移動させ第1排水ソケット部材6と第2排水ソケット部材8の間をシールするので、自動可動機構として機能する。さらに、可動部14のガイド縁部14dは、第1排水ソケット部材6を取り付けた水洗大便器本体2が床面F上でスライドされるとき、第1排水ソケット部材6と第2排水ソケット部材8が整合するように水洗大便器本体2のスライドを案内するので、ガイド機構として機能する。なお、特に重量が大きな水洗大便器本体2を設置する場合には、水洗大便器本体2と床面Fとの間に生じる摩擦を低減させるために、水洗大便器本体2を床面F上でスライドさせる際、床面F上に摩擦低減シートなどを設置して、施工性を向上させることもできる。
【0044】
本発明の第1実施形態の水洗大便器装置1によれば、第2ソケット部材8の板状部14aが回動により上下方向に移動され、水洗大便器本体2に取り付けられた第1排水ソケット部材6と、排水配管10に取り付けられた第2排水ソケット部材8が整合した状態において第1、第2排水ソケット部材の間がシールされる。排水配管10に取り付けられた第2排水ソケット部材8は、水洗大便器本体2の底部の切欠2eを通過することができるので、水洗大便器本体2を床面F上でスライドさせるだけで第1排水ソケット部材6と第2排水ソケット部材8を整合させることができる。このため、水洗大便器本体2を持ち上げることなく、排水トラップ管路2bの出口開口2dと排水配管10を容易に水密的に接続することができる。本実施形態の水洗大便器装置1によれば、特に、水洗大便器本体2の重量が大きい場合に、設置の作業性を大幅に改善することができる。
【0045】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、水洗大便器本体2を床面F上でスライドさせることにより、突出部14eが自動的に可動式シール部材である板状部14aを回動、移動させ、第1、第2排水ソケット部材間がシールされるので、特別な操作を行うことなく極めて容易に第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材を水密的に接続することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、ガイド機構であるガイド縁部14dによって、第1、第2排水ソケット部材が整合するように水洗大便器本体2のスライドが案内されるので、第1排水ソケット部材6が水洗大便器本体2の外側から視認できない状態であっても容易に第1排水ソケット部材6と第2排水ソケット部材8を整合させることができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0047】
次に、
図6乃至
図9を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置は、排水ソケットの構成が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0048】
図6は、本実施形態の水洗大便器装置における第1、第2排水ソケットの部分を拡大して示す断面図である。
図7は、
図6のVII−VII線に沿う断面図である。
図8は、第1、第2排水ソケットの間がシールされた状態を示す断面図である。
図9は、
図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【0049】
図6に示すように、第1ソケット部材106は、概ね円筒状の部材であり、排水トラップ管路2bの下流端に水密的に接続されるように構成されている。第1ソケット部材106は、排水トラップ管路2bの下流端を受け入れる大径部106aと、この大径部106aの下端から延びるソケット本体部106bと、このソケット本体部106bの下端部に設けられたフランジ部106cと、を有する。
【0050】
大径部106aは、排水トラップ管路2bの下流端を受け入れるように形成された円筒形の部分であり、接着することにより排水トラップ管路2bの下流端に水密的に固定される。
ソケット本体部106bは、大径部106aと連通するように形成された円筒形の部分であり、大径部106aよりも内径が小さく形成されている。この構成により、排水トラップ管路2bの下流端の出口開口2dから流出した汚物及び洗浄水は、全てソケット本体部106bに流入する。
フランジ部106cは、ソケット本体部106bの下端部外周に形成された長方形板状の部分である。フランジ部106cは、ソケット本体部106bに対して直角に延びているので、ソケット本体部106bが鉛直方向に向けられた状態においては、フランジ部106cは概ね水平方向に向けられる。
【0051】
また、
図7に示すように、フランジ部106cの下面には、ソケット本体部106bの両側に、下方に向けて突出したガイド凸部106dが夫々設けられている。これらのガイド凸部106dは、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108が整合した状態では、第2ソケット部材108に設けられたガイド凹部114dの中に夫々受け入れられる。従って、これらのガイド凸部106d及びガイド凹部114dは、ガイド機構として機能する。
【0052】
図6に示すように、第2ソケット部材108は、床面Fに固定されるベース部112と、このベース部112に対して回動可能に取り付けられた可動部114と、この可動部114に取り付けられたガスケット116と、を有する。
ベース部112は、床面Fに埋設された排水配管10の近傍に、2本のビス112aによって床面Fに固定される直方体状の部材であり、このベース部112によってシャフト112bが水平方向に向けて支持されている。
【0053】
可動部114は、ベース部112に取り付けられた可動式シール部材である板状部114aと、この板状部114aの下側に結合された伸縮部114bと、この伸縮部114bの下側に結合された排水配管接続部114cと、を有する。
板状部114aは、概ね長方形板状の部分であり、その1つの辺が、ベース部112のシャフト112bによって回動可能に支持されている。このため、板状部114aは、水平方向に向けられたシャフト112bを中心に所定角度回動することができ、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108が水密的に接続された状態では、板状部114aは、フランジ部106cと概ね平行に、ほぼ水平方向に向けられる。
【0054】
また、板状部114aには円形の開口が設けられており、この開口は、第1ソケット部材106のソケット本体部106bと整合する位置に形成されている。さらに、板状部114aの下面には円筒形の伸縮部114bが設けられており、この伸縮部114bは板状部114aの開口と連通するように、一体に形成されている。伸縮部114bは弾性変形可能な材料で構成されており、伸縮部114bが伸縮、変形することにより板状部114aの回動が許容される。
【0055】
さらに、伸縮部114bの下流側には、円筒形の排水配管接続部114cが一体に形成されており、伸縮部114bと排水配管接続部14cは一続きの円管を構成している。排水配管接続部114cの外周は、床面に設けられた排水配管10の内側に嵌め込み可能な外径に形成されており、排水配管接続部114cは、接着により排水配管10に水密的に取り付けられる。このように、排水配管接続部114cが排水配管10に接着された状態であっても、伸縮部114bが変形することにより、依然として板状部114aの回動は許容される。
【0056】
一方、
図7に示すように、板状部114aの上面の両端にはガイド凹部114dが夫々形成されており、これらのガイド凹部14dは板状部114aの両側の短辺と平行に設けられた細長い溝である。
【0057】
ガスケット116は、板状部114aの上面に、その円形の開口を取り囲むように取り付けられた円環状のゴム製の部材である。このガスケット116が、第1ソケット部材106のフランジ部106cと第2ソケット部材108の板状部114aの間に挟まれることにより、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108が水密的にシールされる。即ち、板状部114aがほぼ水平方向に向けられた状態においては、ガスケット116は、フランジ部106cと板状部114aの間で所定量押しつぶされ、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108の間がシールされる。
【0058】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置はシール操作部材118(
図6)を備えており、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108が整合した状態でシール操作部材118を操作することにより、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108の間をシールすることができる。シール操作部材118は、概ね鉛直に向けられた平板状の垂直部118aと、この垂直部118aの下端から水平方向に延びる2本の脚部118bと、これらの脚部118bから上方に突出した突起部118cと、を有する。後述するように、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108が整合した状態で、シール操作部材118の各脚部118bを、第2ソケット部材108の板状部114aの下側に挿入することにより、第1、第2ソケット部材の間がシールされる。
【0059】
次に、
図8及び
図9を新たに参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置の設置手順を説明する。
水洗大便器装置を設置する場合には、まず、水洗大便器本体2に設けられた排水トラップ管路2b下流端の出口開口2dに、第1ソケット部材106を取り付ける。
【0060】
一方、第2ソケット部材108の排水配管接続部114cを床面Fに設けられた排水配管10に挿入した状態で、ベース部112を排水配管10の近傍に配置し、2本のビス112aによりベース部112を床面Fに固定する。さらに、排水配管接続部114cを排水配管10に接着して、第2ソケット部材108を排水配管10に水密的に接続する。この状態においては、可動部114の板状部114aと排水配管接続部114cの間の伸縮部114bは縮小されており、板状部114aは水平面に対してベース部112の反対側(
図6における右側)が低くなるように傾斜している。
【0061】
第2ソケット部材108を床面Fの排水配管10に取り付けた後、第1ソケット部材106を取り付けた水洗大便器本体2を床面F上でスライドさせ、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108を整合させる(
図6の状態)。ここで、第1ソケット部材106は水洗大便器本体2のスカート部2cによって取り囲まれているが、スカート部2cの後面底部には切欠2e(
図2)が設けられているため、水洗大便器本体2を持ち上げることなく第1ソケット部材106と第2ソケット部材108を整合させることができる。
【0062】
水洗大便器本体2をスライドさせることにより、第1ソケット部材106が第2ソケット部材108に接近すると、第1ソケット部材106のフランジ部106cの設けられたガイド凸部106dが、第2ソケット部材108の可動部114のガイド凹部114d(
図7)に受け入れられる。
図9に示すように、ガイド凹部114dは、端部において幅が広く形成されているので、水洗大便器本体2をスライドさせる位置が多少ずれていたとしても、適正位置に水洗大便器本体2を案内することができる。
【0063】
このように、第1ソケット部材106のガイド凸部106dと第2ソケット部材108のガイド凹部114dは、第1排水ソケット部材106を取り付けた水洗大便器本体2が床面F上でスライドされるとき、第1排水ソケット部材106と第2排水ソケット部材108が整合するように水洗大便器本体2のスライドを案内するので、ガイド機構として機能する。また、変形例として、第1ソケット部材にガイド凹部を設け、第2ソケット部材にガイド凸部を設けることもできる。
【0064】
水洗大便器本体2をスライドさせ、第1ソケット部材106と第2ソケット部材108が整合すると(
図6の状態)、各ガイド凸部106dの先端が、各ガイド凹部114dの終端に当接する。これにより、施工者は第1ソケット部材106と第2ソケット部材108が整合したことを認識することができる。
【0065】
この状態において、シール操作部材118の各脚部118bを水洗大便器本体2の切欠2eを通して挿入し、第2ソケット部材108の板状部114aを回動させる。即ち、シール操作部材118の各脚部118bを挿入すると、各脚部118bは第2ソケット部材108の板状部114aの下側に入り込み、各脚部118bに設けられた突起部118cが板状部114aの下面を上方に押す。これにより、可動部114はベース部112のシャフト112bを中心に回動される。この際、可動部114の伸縮部114bが伸ばされ、可動部114の回動が許容される。
【0066】
シール操作部材118の垂直部118aが水洗大便器本体2のスカート部2cに接触するまで挿入されると、可動部114は板状部114aがほぼ水平になる位置まで回動される。可動部114が回動されることにより、可動部114の板状部114aに取り付けられたガスケット116が上昇し、ガスケット116がフランジ部106cの下面に押しつけられる。これにより、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8が水密的に接続される。また、この状態においては、水洗大便器本体2のスカート部2cに設けられた切欠2eは、シール操作部材118の垂直部118aによって塞がれる。
【0067】
本実施形態においては、可動部114の板状部114aは、回動されることにより、上下方向に移動して、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が整合した状態において、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間をシールするので、可動式シール部材として機能する。また、本実施形態において、
図8に示す状態からシール操作部材118を引き抜くと、可動部114の伸縮部114bが縮小して、
図6に示す第1、第2排水ソケット部材の間がシールされていない状態に戻る。従って、シール操作部材118は、可動部114の板状部114aを、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間がシールされる位置から、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間がシールされない位置へ移動させる接続解除機構として機能する。
【0068】
本発明の第2実施形態の水洗大便器装置によれば、シール操作部材118を操作することにより、可動式シール部材である板状部114aが移動され、第1排水ソケット部材106と第2排水ソケット部材108の間がシールされるので、確実に第1、第2排水ソケット部材の間の水密性を確保することができる。また、シール操作部材118は、水洗大便器本体2の外側から操作できるように構成されているので、容易に第1、第2排水ソケット部材の間をシールすることができる。
【0069】
なお、上述した第1実施形態のように、可動部14の突出部14eに第1ソケット部材6のフランジ部6cが当接することにより、自動的に板状部14aが移動される水洗大便器装置1に、シール操作部材118を設けることもできる。これにより、第1ソケット部材6と第2ソケット部材8の間がシールされた状態を、より確実に維持することができる。
【0070】
また、本実施形態の水洗大便器装置によれば、シール操作部材118が水洗大便器本体2の切欠2eを通して操作されるので、水洗大便器本体2の外側から板状部114aを移動させることができる。また、第1、第2排水ソケット部材の間がシールされた状態では、切欠2eがシール操作部材118の垂直部118aによって塞がれるので、切欠2eを隠蔽することができ、水洗大便器本体2の意匠性を向上させることができる。
【0071】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置によれば、第1排水ソケット部材106に設けられたガイド凸部106dと、第2排水ソケット部材108に設けられたガイド凹部114dによってガイド機構が構成されている。このため、特別な部材を追加することなく水洗大便器本体2のスライドを案内することができる。また、ガイド機構がガイド凹部114dとガイド凸部106dから構成されているので、簡単な構造でガイド機構を実現することができる。
なお、変形例として、第1排水ソケット部材にガイド凹部を設け、第2排水ソケット部材にガイド凸部を設けるように、本発明を構成することもできる。
【0072】
また、本実施形態の水洗大便器装置によれば、シール操作部材118を引き抜くことによって、第1排水ソケット部材106と第2排水ソケット部材108の接続を解除することができるので、水洗大便器本体2を設置した後でも、第1排水ソケット部材106と第2排水ソケット部材108の接続を容易に解除することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0073】
次に、
図10乃至
図12を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置は、排水ソケット及び水洗大便器の一部の構成が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0074】
図10は、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置に使用される水洗大便器本体を後方から見た斜視図である。
図11は、本実施形態による水洗大便器装置における第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の接続を説明する図である。
図12は、本実施形態による水洗大便器装置において第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が接続された状態を示す半断面図である。
【0075】
図10に示すように、本実施形態の水洗大便器装置に使用される水洗大便器本体202は、汚物を受けるボウル部202aと、排水トラップ管路202b(
図11)と、ボウル部202aの周囲を囲むように床面Fまで延びるスカート部202cと、を備えている。また、スカート部202cの後面の底部には切欠202eが形成されていると共に、スカート部202cの後部両側面には、底部フランジ202fが設けられている。この底部フランジ202fには、水洗大便器本体202の後端から前方に向けて延びる細長い切り込み部202gが夫々設けられている。
【0076】
次に、
図11及び
図12を参照して、第1ソケット部材206及び第2ソケット部材208の構成を説明する。
図11に示すように、第1ソケット部材206は、概ね円筒状の部材であり、排水トラップ管路202bの下流端に水密的に接続されるように構成されている。第1ソケット部材206は、排水トラップ管路202bの下流端を受け入れる大径部206aと、この大径部206aの下端から延びるソケット本体部206bと、このソケット本体部206bの下端部に設けられたフランジ部206cと、を有する。
【0077】
図11及び
図12に示すように、第2ソケット部材208は、床面Fに固定されるベース部212と、このベース部212に対して鉛直方向に移動可能に支持された可動部214と、この可動部214に取り付けられたガスケット216と、を有する。
ベース部212は、床面Fに埋設された排水配管10の近傍で、床面Fに固定される板状の部材である。このベース部212には、鉛直上方に向けて突出するように4本の摺動ピン212aが取り付けられている。これらの摺動ピン212aは、第2ソケット部材208の板状部214aに設けられた4つのピン受け孔214dに夫々挿入されている。
【0078】
可動部214は、ベース部212に支持された可動式シール部材である板状部214aと、この板状部214aの下側に結合された伸縮部214bと、この伸縮部214bの下側に結合された排水配管接続部214cと、を有する。
板状部14aは、概ね長方形板状の部分であり、ベース部212の各摺動ピン212aと夫々整合する位置にピン受け孔214dが形成されている。これらのピン受け孔214dが各摺動ピン212aを受け入れることにより、板状部214aは各摺動ピン212aに沿って鉛直方向(上下方向)に摺動可能に支持される。
【0079】
また、板状部214aには円形の開口が設けられており、この開口は、第1ソケット部材206のソケット本体部206bと整合する位置に形成されている。さらに、板状部214aの下面には円筒形の伸縮部214bが設けられており、この伸縮部214bは板状部214aの開口と連通するように、一体に形成されている。伸縮部214bは弾性変形可能な材料で構成されており、伸縮部214bが伸縮、変形することにより板状部214aの上下方向の移動が許容される。
【0080】
さらに、排水配管接続部214cは、接着により排水配管10に水密的に取り付けられる。このように、排水配管接続部214cが排水配管10に接着された状態であっても、伸縮部214bが変形することにより、依然として板状部214aの上下動は許容される。
【0081】
一方、
図11に示すように、板状部214aの上面の後端(水洗大便器本体の後方側の端部)にはガイド突起214eが形成されており、このガイド突起214eは板状部214aから上方に向けて突出した突起である。第1ソケット部材206と第2ソケット部材208が整合した状態においては、第1ソケット部材206のフランジ部206cの後端が、ガイド突起214eと当接する。
【0082】
さらに、板状部214aの上面には、ガスケット216が、板状部214aのの円形の開口を取り囲むように取り付けられている。このガスケット216が、第1ソケット部材206のフランジ部206cと第2ソケット部材208の板状部214aの間に挟まれることにより、第1ソケット部材206と第2ソケット部材208が水密的にシールされる。
【0083】
また、板状部214a上面のガスケット216の両側には、固定ボルト218が夫々取り付けられている。これらの固定ボルト218は、板状部214aの上面から鉛直上方に向けて突出するように取り付けられ、それらの先端は、水洗大便器本体202の底部フランジ202fの上面よりも上方まで延びている。
【0084】
次に、
図11及び
図12を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置の設置手順を説明する。
水洗大便器装置を設置する場合には、まず、水洗大便器本体202に設けられた排水トラップ管路202b下流端の出口開口202dに、第1ソケット部材206を取り付ける。
図11の左欄に示すように、この状態において、水洗大便器本体202を床面F上に配置すると、第1ソケット部材206下流端のフランジ部206cは、床面Fから所定距離上方に、ほぼ水平に配置される。
【0085】
一方、第2ソケット部材208の排水配管接続部214cを床面Fに設けられた排水配管10に挿入した状態で、ベース部212を排水配管10の近傍に配置し、床面Fに固定する。さらに、排水配管接続部214cを排水配管10に接着して、第2ソケット部材208を排水配管10に水密的に接続する。この状態においては、可動部214の板状部214aと排水配管接続部214cの間の伸縮部214bは縮小されている。
【0086】
図11の右欄に示すように、第2ソケット部材208を床面Fの排水配管10に取り付けた後、第1ソケット部材206を取り付けた水洗大便器本体202を床面F上でスライドさせ、第1ソケット部材206と第2ソケット部材208を整合させる。ここで、第2ソケット部材208が切欠202eの中を通過するように水洗大便器本体202をスライドさせることにより、第2ソケット部材208とスカート部202cが干渉することなく、第2ソケット部材208をスカート部202cの内側に位置させることができる。
【0087】
また、
図12に示すように、第2ソケット部材208の板状部214aに取り付けられた各固定ボルト218は、水洗大便器本体202の底部フランジ202fの上面よりも上方に突出している。しかしながら、これらの固定ボルト218は、底部フランジ202fに設けられた各切り込み部202gの位置と整合しているため、各固定ボルト218が水洗大便器本体202と干渉することはない。また、各固定ボルト218と各切り込み部202gが整合するように、水洗大便器本体202を床面F上でスライドさせることにより、第1ソケット部材206と第2ソケット部材208の左右方向位置を容易に整合させることができる。
【0088】
また、水洗大便器本体202を後方へスライドさせると、第1ソケット部材206下端のフランジ部206cが、第2ソケット部材208の可動部214のガイド突起214eに当接する(
図11の右欄)。水洗大便器本体202をスライドさせる際、第1ソケット部材206は施工者から視認できない状態にあるが、第1ソケット部材206のフランジ部206cがガイド突起214eと当接することで、施工者は水洗大便器本体202を手探りで適所までスライドさせることができる。
【0089】
図11の右欄に示す状態まで水洗大便器本体202をスライドさせると、上方に向けて第2ソケット部材208に取り付けられている各固定ボルト218の先端部は、水洗大便器本体202の各切り込み部202gを通って底部フランジ202fの上面から突出する。この状態で、突出している各固定ボルト218に固定ナット218aを夫々螺合させ、固定ナット218aを締め込むと、各固定ボルト218と共に第2ソケット部材208の可動部214(板状部214a)が上方に引き上げられる。この際、概ね鉛直上方に向けて移動されるように、板状部214aの移動をベース部212の摺動ピン212aが案内する。これにより、板状部214aに取り付けられたガスケット216が上昇し、ガスケット216はフランジ部206cの下面に押しつけられる。この結果、第1ソケット部材206と第2ソケット部材208が水密的に接続される。
【0090】
本実施形態においては、各固定ボルト218に各固定ナット218aを締め込むことにより、可動部214の板状部214aが上下方向に移動して、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材が整合した状態において、第1排水ソケット部材と第2排水ソケット部材の間をシールする。従って、可動部214の板状部214aは可動式シール部材として機能する。さらに、水洗大便器本体202の切り込み部202g、及び板状部214aのガイド突起214eは、第1排水ソケット部材206を取り付けた水洗大便器本体202が床面F上でスライドされるとき、第1排水ソケット部材206と第2排水ソケット部材208が整合するように水洗大便器本体202のスライドを案内するので、ガイド機構として機能する。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。例えば、上述した実施形態においては、タンク式の水洗大便器に本発明が適用されていたが、水道直圧式の水洗大便器等、任意の形式の水洗大便器に本発明を適用することができる。また、上述した実施形態においては、可動式シール部材である板状部は、第2排水ソケット部材側に設けられていたが、これを第1排水ソケット部材に設けることもできる。さらに、上述した実施形態においては、第1、第2排水ソケット部材の間をシールするガスケットは、可動側(可動式シール部材の側)に取り付けられていたが、固定側(上述した実施形態では第1排水ソケット部材側)にガスケットを取り付けることもできる。