(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982291
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】工作機械のワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/18 20060101AFI20211206BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20211206BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20211206BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20211206BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
B23Q15/18
B23B1/00 N
B23Q17/22 C
B23Q17/00 Z
G05B19/404 K
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-118343(P2017-118343)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2019-945(P2019-945A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 真
【審査官】
臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−055415(JP,A)
【文献】
特開平10−020911(JP,A)
【文献】
特開平08−197309(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/203569(WO,A1)
【文献】
特開昭62−054653(JP,A)
【文献】
実開平04−102760(JP,U)
【文献】
特開平06−155239(JP,A)
【文献】
特開平07−186006(JP,A)
【文献】
特開平07−266194(JP,A)
【文献】
特開平11−165241(JP,A)
【文献】
特開平11−212618(JP,A)
【文献】
特開2012−213840(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/147979(WO,A1)
【文献】
米国特許第04417490(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00−17/22
B23B 1/00
G05B 19/18−19/4155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に伴う熱変形に起因する加工誤差の補正手段を備えた工作機械のワーク加工方法において、
仕上げ工程などの精度の高い加工工程が開始されるとき又は予め制御器に登録した所定のタイミングで、主軸を所定の位相で停止し、当該工作機械の刃物台に装着された工具の刃先を予め定めた主軸軸線方向に所定距離離れた2箇所の計測位置で主軸チャックの周面又は当該主軸チャックに把持されたワークの周面に向けて低速で送り、それぞれの計測位置で送りモータの負荷が設定された負荷に達したときに当該送りモータを停止してそのときの刃物台の座標と当該工具刃先が前記計測位置に位置するときの刃物台のあるべき位置との差に基づく修正値で補正値を修正し、次の計測タイミングまでの間、当該修正された補正値で刃物台の位置を補正して加工を行うことを特徴とする、工作機械のワーク加工方法。
【請求項2】
前記工具刃先が前記計測位置に位置するときの刃物台のあるべき位置が、前回の計測に基づいて修正された補正値で補正した刃物台の位置である、請求項1記載の工作機械のワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の熱変形に起因する加工誤差を補正してワークを加工する方法に関するもので、特に主軸台側の熱変形に基づく加工誤差をより正確に補正することが可能な加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械を運転すると、加工熱、モータや軸受部の発熱、作動油や切削液の温度上昇などにより、機械温度が上昇し、それに伴う工作機械各部の熱変形がワークの加工精度を低下させる。そこで工作機械の各部の温度を計測し、そのとき加工されたワークの加工誤差を計測することにより、機械各部の温度と加工誤差の関係を求めて、加工プログラムの指令値を補正する演算式ないし演算テーブルを作成し、これを制御器に登録して、加工プログラムの指令値を補正することにより、加工誤差が生じないようにしている。
【0003】
工作機械の熱変形量は、温度に比例すると見做してよいので、一般的には
図1に示すように、工作機械のベッド11、主軸台12、刃物台3の要所要所に温度センサs1、s2・・・snを取付け、各センサの検出値t1、t2・・・tnに乗ずる係数α1、α2・・・αnと定数βとを試験加工により決定して、補正値δを次式(以下、「従来式」と言う。)
δ=α1t1+α2t2+・・・αntn+β
で演算するというような方法が採用されている。
【0004】
工作機械は、ワークを3次元形状に加工するので、上記の補正値δも3次元の各軸方向の補正値として演算される。例えば旋盤であれば、主軸方向であるZ軸方向、工具の切り込み送り方向であるX軸方向の補正値が演算され、回転工具をY軸方向にも移動させる旋盤では、Y軸方向の補正値も演算される。また、上記の演算式における係数αや定数βは刃物台の位置により異なる値となるので、例えば旋盤であれば、係数αと定数βを刃物台の位置の関数として設定するか、あるいは複数箇所における値を設定してその中間位置での補正値は両側の補正値から補間演算で求めるというようにして、刃物台の位置に応じた補正値を定めている。
【0005】
上記のような演算による補正値の精度を高める手段として、例えば特許文献1では、所定の時間間隔毎に演算した補正値δの値と前回の補正値δfの値との差が予め登録した隣接設定値を超えているときは、前回補正値δfに隣接設定値を加えた値を補正値とすること、最大値δmaxと最小値δminとを登録しておき、演算した補正値δが当該最大値より大きいか又は最小値より小さいときは、当該最大値又は最小値を補正値とすることが提案されている。
【0006】
また特許文献2には、環境温度の変化に基づく補正量を演算するための係数と環境温度がワークの加工誤差として影響する際の時間差とを予め制御器に登録しておいて、加工時に計測された機械各部の温度と、加工時から時間差だけ隔たった時刻における環境温度とにより補正値を演算することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-014109号公報
【特許文献2】特開2006-055919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
機械を熱変形させる主な熱源は、主軸や回転工具軸のモータ及び軸受、油圧シリンダなどの油圧機器及びワークの加工部である。ワークの加工部で発生した熱は、加工部から流下する切削油によってベッドやテーブルに伝えられる。主要な熱源の位置は、工作機械の種類によって異なり、例えば旋盤であれば、主軸軸受、刃物台に搭載されている工具モータや油圧装置及び加工部である。加工部から流下する切削油は、通常はベッド上面に設けられているカバーの上に流下し、このカバーが加熱されることによってその内側にあるベッド上面が間接的に加熱される。
【0009】
機械の熱変形を計測するために設けられるセンサは、主軸台、ベッド、刃物台などの機械部材の表面に取り付けられている。一方、主軸軸受やタレット刃物台のインデックス装置に設けられている油圧装置の熱は、機械の内部で発生する。そのため、機械内部で発生した熱が機械表面のセンサで検出されるまでに時間遅れが生ずる。機械内部の温度変化が熱伝達の遅れのためにセンサで検出されなくても、機械内部では熱変形が起こっており、その変形は、時間遅れを生ずることなく、機械全体に影響を与えるので、上述したような従来の方法では、機械内部の発熱の変化がセンサで検出されるまでの時間遅れによる熱変形の誤差を補正することはできない。
【0010】
主軸が常時回転している旋削のみを行う旋盤では、主軸軸受の温度上昇に大きな変動はないと考えられる。しかし、主軸を停止した状態で刃物台に取り付けた回転工具でワークを加工することのできる、いわゆる複合旋盤では、1個のワークの加工中に主軸が回転したり、停止したりするので、主軸軸受で発生する熱が急激に変動するということが頻繁に起こる。従って、刃物台に回転工具を装着した複合旋盤では、主軸軸受が熱源となって主軸台を熱変形させる熱変形誤差の補正を従来手段では十分に補正することができない。
【0011】
この発明は、伝熱遅れによって機械内部の温度変化が機械に設けた温度センサで検出されるまでの時間遅れに起因する加工誤差を補正することが可能なワークの加工方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ワークの仕上げ加工用の工具が割り出されたとき又は予め定めたタイミングで、主軸1を予め定めた任意の位相に固定し、当該主軸に装着したチャック2又はワークwの周面に工具Tの刃先を接触させる。接触させる工具Tは、次の加工を行うために割り出された工具であり、仕上げ工具であることが望ましい。
【0013】
接触の検出は、工具Tを装着した刃物台3の送りモータ4xのサーボ電流値の変化により検知するのが好ましく、接触させる工具Tの刃先に損傷を与えない力(数N)で送りモータ4xの負荷変動を検知し、接触が検知されたときの刃物台3の座標(旋盤ではX座標又はX−Y座標)を記憶する。刃先を接触させるZ軸方向の位置は、予め定めた2位置A、Bとする。
【0014】
接触を検出したときの刃物台3の座標を、従来手段のみで補正したときの座標、より実用的には、前回計測したときの座標と比較して修正することで、熱変形を正確に補正することができ、計測するときの動作を予め制御器6に登録しておくことにより、自動的に補正値を更新する。
【0015】
例えばこの発明での熱変形の補正値δは、
δ=α1t1+α2t2+α3t3+・・・+αntn+β+γ+εSのような式で演算される。ここで、γは主軸の変位を計測して設定される補正項、εは主軸の傾斜角を計測して設定される補正係数、Sは計測位置(A又はB)から加工位置PまでのZ軸方向の距離である。γ及びεは、ワーク加工中の所定のタイミングで逐次更新される。
【0016】
この発明のワーク加工方法は、機械各部の温度を温度センサs1、s2・・・snで計測して機械の熱変形を間接的に計測して補正する従来方法に加えて、機械の変位を直接計測して従来方法で補正したときと実際の変位と差(ずれ)を求めて補正値を修正する。
【0017】
工具Tの刃先を接触させる位置は、主軸方向に所定距離離れた2位置A、Bとすることで、位置ずれと傾きのずれを検出することができ、位置を検出した位置A、Bと加工位置Pとが離れている場合の補正値の修正をより正確に行うことができる。工具の刃先をワークwの周面に接触させて修正値を求める方法では、ワークと工具の刃先との硬度の差により、ワークwが傷つくが、ずれの検出は、ワークwの仕上げ加工の前に行われるので、当該傷は、仕上げ加工で除去できる。ワークの一部に高精度加工が指定されているときは、当該指定された位置でずれを検出すればよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明では、機械表面の温度を用いて間接的に熱変形を補正するだけでなく、間接的に補正した熱変形を更に所定間隔毎に逐次更新される実際の変形に基づく修正を加えて補正するので、機械内部の急激な温度変化にも対応した補正が可能である。そして、切削工具を使って刃先の位置をチャックやワークに接触して補正値を逐次修正するので、ツールセッターを使う必要がなく、機械を止める必要がなく、連続加工中でも正確な加工寸法の補正が可能になる。
【0019】
更に、新たに計測装置を用意する必要がなく、測定を短時間でかつ自動で行うことができるので、加工サイクルに及ぼす影響は小さく、無人運転中でも必要な補正を逐次行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】
図3における補正値と修正値との関係を示す説明図
【
図6】
図5における補正値と修正値との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、この発明を更に説明する。
図1及び
図2は、最も簡単な構造のスラント型のタレット旋盤を模式的に示した図である。スラント型の旋盤は、上面が傾斜したベッド11を備えている。主軸台12は、ベッド11から垂直に立ち上がっており、その上部に図に点線で示す主軸軸受13で主軸1が軸支されている。主軸1の先端には、チャック2が取り付けられ、後端にはチャック開閉シリンダ14が取り付けられている。主軸を回転する主軸モータ15は、主軸台12に取り付けられており、主軸モータ15の回転軸と主軸1は、同期ベルト装置16で連結されている。
【0022】
スラント型旋盤の主軸1は、主軸台12のベッド11からの
図2における左右の立ち上がり高さの差や主軸モータ15の発熱により、X軸方向に変位する傾向があり、Z軸方向の温度のアンバランスによる熱変形で、X軸に対して斜めになることがある(
図4及び
図6の一点鎖線d1及び二点鎖線d2参照)。
【0023】
刃物台3は、ベッド11上にZ軸方向(主軸軸線方向)に移動自在な横移動台21にX軸方向(工具の切込み送り方向)に移動自在に設けられている。横移動台21は、Z軸送りモータ4zで正逆回転するZ軸送りねじ26zに螺合している。刃物台3は、横移動台21に搭載されたX軸モータ4xで正逆回転されるX軸送りねじ26xに螺合している。刃物台3には、割出装置22を介してタレット23が搭載されている。割出装置22は、タレット23の割出位置を固定する油圧装置を内蔵しており、タレットの割出回転用のモータ24と、タレットに取り付けた回転工具を駆動する工具モータ25とを備えている。
【0024】
Z軸送りモータ4z及びX軸送りモータ4xは、サーボアンプ5z、5xを介して制御器6で制御されている。制御器6は、加工プログラム31に基づいてサーボアンプ5z、5xにそれぞれのモータに対する位置指令ez、exを出力している。一方、送りモータ4z、4xからは、フィードバック信号fz、fxがサーボアンプ5z、5xに返されている。X軸送りモータ4xの指令信号exとフィードバック信号fxとの差信号である位置偏差cが接触検出器7に与えられている。接触検出器7は、位置偏差cが予め設定された設定値を越えたときに、接触信号hを制御器6に送る。接触信号hを受けたとき、制御器6は、X軸送りモータ4xに停止指令iを送って直ちに停止させる。位置偏差cを検出するサーボアンプ5xは、0.1ミリ秒台の時間間隔で位置偏差を検出できるものを用いるのが望ましい。
【0025】
ベッド11、主軸台12及び刃物台3の適宜箇所には、温度センサs1、s2・・・snが取り付けられており、制御器6は、これらの温度センサの検出値t1、t2・・・tnに基づいて補正値を演算する補正手段32を備えている。
【0026】
機械が運転されると、各部の熱源からの熱によって機械に熱変形が生じる。機械各部の温度は、温度センサs1、s2・・・snで検出され、これらの温度センサの検出温度に基づく熱変形の補正値δの演算式が補正手段32に登録されている。理解を容易にするため、
図1では補正手段32に従来と同様な演算式
δx=αx1t1+αx2t2+αx3t3+・・・+αxntn+βx
が登録されているとして説明する。高い精度を必要としないワークの加工や粗加工は、加工プログラム31で指定された指定値を上式に基づいて計算された補正値δz、δxで補正して各モータ4z、4xの位置指令ez、exとする。
【0027】
図1の補正手段32によって補正された後の、すなわち従来方法によって補正された後の刃物台3から見た主軸台12、チャック2及びワークwの位置は、例えば
図4、6に一点鎖線d1で示すようになる。すなわち、ワークwの加工点pを加工するときの従来方法で補正された後の工具刃先の位置は点p1の位置となり、工具刃先を点p1に設定することにより、ワークの点pの加工が行われるとしている。なお、
図6の点p1の位置は、次工程の加工が行われる前の位置である。製品の外周はこの位置から例えば仕上げ代だけ切除された位置となる。また、計測位置A、Bでのワークの径は同一である必要はない。
【0028】
しかし前述したような理由により、従来の演算式による補正手段32の補正演算のみでは、熱変形を完全に補正することはできない。すなわち、刃物台から見た実際の主軸台、チャック及びワークの位置は、例えば
図4、6に二点鎖線d2で示すように、補正手段32が演算した一点鎖線d1との間にずれがある。このずれΔa及びΔbは、補正手段32で補正された値から更にX軸方向に補正(修正)すべきずれである。なお、
図4、6にはΔa、Δbとδa、δbとを略等しい間隔で示しているが、実際にはΔa、Δbはδa、δbより小さい。
【0029】
制御器6は、予め定めた主軸の位相、例えば原点位相と、チャック2又はワークwの周面の予め定めた2箇所のZ軸位置A、B(
図3、5参照)とを設定する設定器を備えた計測動作設定手段33と、補正手段32で補正された補正値を更に補正(修正)する修正手段34とを備えている。
【0030】
機械の熱変形の補正をより正確に行う必要があるのは、仕上げ加工のときである。計測動作設定手段33は、仕上げ加工用の工具Tが割り出されたとき、又は加工中の予め定めたタイミングで、主軸1を設定された位相に固定し、そのとき割り出されている工具の刃先を設定されたZ軸位置A、Bの一方Aに移動して、工具刃先を当該位置でチャック2又はワークwの外周に向けて低速接近させる。この低速接近中に位置偏差cが設定値を越えたときに接触検出器7が接触信号を出力する。このとき検出された刃物台の位置は、補正手段32で補正された後の工具刃先がチャック2又はワークwに接触するはずの位置からΔa及びΔbだけずれている。接触信号hを受けた計測動作設定手段33は、X送りモータ4xを停止し、そのときの刃物台3のX座標(点a2のX座標)と補正手段32で補正した後の当該計測位置におけるX座標の指令値(点a1のX座標)との差Δxaを演算して記憶する。
【0031】
計測動作設定手段33は、次に工具刃先をX軸方向に後退させた後、他方の計測位置Bに移動し、同様な操作で刃物台3のX座標(点b2のX座標)と補正手段32で補正した後のX座標の指令値(点b1のX座標)との差Δxbを演算して記憶する。
【0032】
修正手段34は、検出したX軸方向のずれγ=Δxaと、主軸の傾斜角(Δxa−Δxb)/Lにγとした計測位置(図の例ではA位置)からワークの加工位置Pまでの距離Sを乗じた値とで、加工位置Pにおけるx軸方向の修正値を
γ+εS=Δxa+(Δxa−Δxb)S/L
で演算する。
【0033】
上記の動作において、工具刃先をチャック周面に接近させる方向は、水平方向が最も良いが、スラント型の場合には、上方から下方へ移動させるようにして接近させる。これはX軸モータ4xに作用する送り負荷と刃物台の重量との関係で工具刃先とチャック周面との接触がより速やかに検出されるからである。
【0034】
その後の加工においては、加工プログラムの指定値を補正手段32に設定された演算式と修正手段34に設定された修正値とで補正して、x軸送りモータ4xに与える位置指令exとする。そして、次に仕上げ用の工具が割り出されたとき、又は設定されたタイミングが来たときに、同様な動作で修正手段34の設定値を変更してワークの自動連続加工を行う。
【0035】
上記の説明では、理解を容易にするために、補正手段32で従来方法による補正値を演算し、修正手段34で本願発明による修正値を演算して、両者を加えて指令値を補正すると説明したが、補正手段32に修正値を付加した演算式を登録しておくのがより実用的である。この場合の補正手段32に登録する演算式は、
δx=αx1t1+αx2t2+αx3t3+・・・+αxntn+βx+Δx+(Δxa−Δxb)×S/L
となる。そしてこの場合には、
図4及び
図6のδa、δbは上式で演算したδの値、Δa、Δbは、
図4、6に括弧書きで示すように、前回計測時のΔaf、Δbfの値と今回計測時のΔag、Δbgの値との差となるので、修正手段34は、この差を演算して補正手段32に登録されているδを求める演算式のγとεを更新するという動作になる(
図7参照)。
【0036】
上式は刃物台3側の熱変形誤差が補正手段32で演算された補正値で正しく補正されていると仮定した場合の幾何学的な演算に基づく補正値であるが、実際には上記のような考え方を基準として実際にワークを加工したときの寸法誤差を計測することにより、γ及びεに必要な係数を乗ずる等して、より正確な補正を行うことができるようにすべきである。
【0037】
なお、刃物台3がY軸方向にも移動する旋盤であれば、上述したX軸方向の検出動作と同様な検査をY軸方向にも行って、Y軸方向の修正値を演算する。また、旋盤が2主軸対向旋盤で、長尺ワークの両端を対向するチャックで把持して加工を行うときは、左右L−Rの主軸の補正手段32で補正した後の位置からのずれγL、γRとεL、εRをそれぞれ検出し、X軸方向のずれは両端のX方向のずれΔxL、ΔxRを加工点の位置で補間した量であるとし、主軸の傾斜によるずれは、例えば機械力学の便覧などで周知の両端支持梁の演算式で両端の位置ずれと傾斜角のずれからワークの加工点における撓み量を演算して補正すればよい。
【符号の説明】
【0038】
1 主軸
2 チャック
3 刃物台
4x 送りモータ
6 制御器
T 工具
w ワーク