【実施例】
【0028】
実施例では、以下に説明するように、種々の被験物質それぞれが添加された試験培地で褐色脂肪細胞を培養した後、UCP1遺伝子の発現量及びオイルレッドO染色の脂肪滴の定量を行った。
【0029】
(1)被験物質を含む試験培地の準備
ノルアドレナリンは、褐色脂肪細胞のβ3受容体に結合し、そのシグナル伝達系を活性化することによってUCP1遺伝子を活性化し、熱産生を増加させることが知られている物質である(例えば、WO2005/042508号公報)。ノルアドレナリンは、以下の被験物質を用いた場合のUCP1遺伝子発現量の参照対象である。被験物質としては、イソビテキシン、及びイソサポナリンを用いた。
【0030】
ノルアドレナリンは、Sigma-Aldorich社製、商品番号 A9512である。イソビテキシンは、EXTRASYNTHESE社製、商品番号1235Sである。イソサポナリンは、金印株式会社製、ロット番号20110412、分子量594.5である。
【0031】
使用した培地は、増殖用培地(コスモ・バイオ株式会社製)、分化誘導用培地(コスモ・バイオ株式会社製)、及び維持用培地(コスモ・バイオ株式会社製)である。
維持用培地には、ノルアドレナリン、イソビテキシン、及びイソサポナリンをそれぞれ添加した。これらの培地中の終濃度は、ノルアドレナリンについては1μmol/L、イソビテキシンについては、1mmol/L、100μmol/L、10μmol/L、イソサポナリンについては、1mmol/L、100μmol/L、10μmol/Lとした。
【0032】
(2)褐色脂肪細胞の培養
試験に供した褐色脂肪細胞は、ラット由来の初代褐色脂肪細胞キット(コスモ・バイオ株式会社製、コード番号BAT02)に付属する細胞である。上記の増殖用培地を用いて、24ウェルプレートの各ウェルに、3×10
4cells/ウェルとなるように、褐色脂肪細胞を播種した。二酸化炭素インキュベータ内(5%CO
2、37℃、パナソニック ヘルスケア株式会社製、マルチガスインキュベーター、商品番号MCO-19MUVH)で、3日間培養した。次に、各ウェル内の培地を、分化誘導用培地に交換し、二酸化炭素インキュベータ内(5%CO
2、37℃)で、2日間培養した。次に、各ウェル内の培地を、上記の維持用培地に交換し、二酸化炭素インキュベータ内(5%CO
2、37℃)で、2日間培養した。次に、各ウェル内の培地を、同じく上記の維持用培地に交換し、二酸化炭素インキュベータ内(5%CO
2、37℃)で、1日間培養した。その後、以下の遺伝子発現解析及びオイルレッドO染色による評価を行った。
【0033】
(3)UCP1遺伝子の発現量の定量
1ウェル当たり0.2mLのTRI Reagent(Molecular Research製造、カタログ番号TR118)を用いて、取扱説明書にしたがって、褐色脂肪細胞からRNAを回収した。各検体RNA500ngを使用して、cDNA合成キット(Super Script<登録商標>VILO<商標>、製品名cDNA Synthesis Kit、Thermo Fisher Scientific製造、カタログ番号11754050)を用いて、cDNA合成を行った。リアルタイムPCRキット(製品名Light Cycler<登録商標> Taqman<登録商標> Master、Roche Applied Science製造、カタログ名4735536)を用いて、取扱説明書にしたがって、リアルタイムPCR(製品名LigthCycler<登録商標> 480 System II、ロシュ・ダイアグノスティックス)を行った。GAPDHを内部標準として、UCP1の遺伝子発現解析を行った。
【0034】
試験に使用したプライマーとプローブを以下に示す。
UCP1のプライマー
フォワードプライマー:gcctgcctagcagacatcat(配列番号1、合成先Sigma-Aldorich)
リバースプライマー:tggccttcaccttggatct(配列番号2、合成先Sigma-Aldorich)
プローブ:Universal Probe Liberty probe #130(ロシュ・ライフサイエンス製)
GAPDHのプライマー
フォワードプライマー:aatgtatccgttgtggatctga(配列番号3、合成先Sigma-Aldorich)
リバースプライマー:gcttcaccaccttcttgatgt(配列番号4、合成先Sigma-Aldorich)
プローブ:Universal Probe Liberty probe #80(ロシュ・ライフサイエンス製)
実験数は3回とした。
【0035】
UCP1遺伝子の相対発現量の結果を表1及び
図1に示す。表1には、各種被験物質の培地中での濃度(終濃度)、各種被験物質を用いた場合のUCP1遺伝子の発現相対値の平均値、標準偏差(S.D.)及び有意差を示した。有意差については、t検定の有意水準5%の場合には「<0.05」と示し、有意水準1%の場合には「<0.01」と示した。
図1には、各種被験物質を用いた場合のUCP1遺伝子の発現相対値の平均値及び標準偏差(S.D.)を示した。
【0036】
【表1】
【0037】
図1に示すように、イソビテキシン又はイソサポナリンを用いた場合には、コントロールの場合よりも有意にUCP1遺伝子発現の上昇を示した。特に、イソビテキシンを用いた群では、10μmol/Lで、イソサポナリンを用いた群では、100μmol/Lで、他の被験物質に比べて、UCP1遺伝子発現の上昇率が有意に高かった。
【0038】
UCP1遺伝子は、脱共役タンパク質の一つであるUCP1(Uncoupling protein1)をコードする。UCP1は褐色脂肪細胞で特異的に発現し、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化を脱共役させ、基質を酸化するときに生産されるエネルギーを熱として放出する機能を有している。この遺伝子に変異が生じると、熱の産生量が抑えられ、太りやすくなることが知られている。
【0039】
本実施例では、イソビテキシン又はイソサポナリンを用いた場合には、コントロールの場合よりも有意にUCP1遺伝子発現の上昇を示した。このことから、イソビテキシン及びイソサポナリンなどのフラボノイド化合物は、代謝を活性化させることがわかった。
【0040】
(4)脂肪滴の定量
(2)において培養後の細胞中の脂肪滴を、リピットアッセイキット(コスモ・バイオ株式会社製、コード番号AK09F)を用いて、説明書に従って以下の手順で定量した。
【0041】
手順2−1.以下の成分を混合して、固定液を調製した。
37%ホルムアルデヒド液(ホルマリン原液) 100 mL
精製水 900 ml
りん酸2 水素ナトリウム・1 水和物(NaH2PO4・H2O) 4g
りん酸水素2ナトリウム・無水(Na2HPO4) 6.5g
手順2−2.ウェルプレートから培養液を除去した後、1 ウェルあたり500μL のPBS で1回洗浄した。
【0042】
手順2−3.1ウェルあたり、手順2−1で調製した固定液を500μL加え、室温で一晩静置した。これにより、ウェル壁面に細胞が固定された。
手順2−4.固定後、1ウェルあたり精製水500μLを用いて各ウェルを洗浄した。
【0043】
手順2−5.キット中のオイルレッドO 原液と精製水とを6:4の比率(体積比)で混合して混合液を得、これを室温で10〜15分間静置した。混合液を、孔径0.5〜1.0μmのメンブレンフィルターでろ過した。ろ液をオイルレッドO 液とした。
【0044】
手順2−6.各ウェルに上記のオイルレッドO 液を500μLずつ分注し、室温で15 分間静置した。
手順2−7.静置後オイルレッドO 液をウェルから除去し、ウェルを、1 ウェルあたり精製水で3 回以上洗浄した。洗浄した精製水が透明になるまでよく洗浄した。
【0045】
手順2−8.乾燥させたウェル内に、キット中の抽出液を500μL加えて色素を溶出させた。色素を溶出させた溶出溶液を、96ウェルプレートに0.1mL取り分けて、マイクロプレートリーダー(TECAN製、Infinite<登録商標> M200 PRO)で波長540nm における吸光度を測定した。コントロールの場合の溶出溶液の吸光度を100とした場合の、各被験物質を用いた場合の溶出溶液の吸光度の相対値を以下の式により求めた。
【0046】
被験物質を用いた場合の溶出溶液の吸光度の相対値=100×被験物質を用いた場合の溶出溶液の吸光度/コントロールの場合の溶出溶液の吸光度
吸光度の相対値は、コントロールの場合の溶出溶液中の脂肪滴の量を100とした場合の、各被験物質を用いた場合の溶出溶液中の脂肪滴の相対量に相当する。
【0047】
実験数は3回とした。結果を
図2および表2に示した。表2には、各被験物質を用いた場合の溶出溶液中の脂肪滴の相対量の平均値、標準偏差、及び有意差を示した。有意差については、t検定の有意水準5%の場合には「<0.05」と示し、有意水準1%の場合には「<0.01」と示した。
図2には、各種被験物質を用いた場合のUCP1遺伝子の発現相対値の平均値及び標準偏差(S.D.)を示した。
【0048】
【表2】
【0049】
図2に示すように、イソビテキシン又はイソサポナリンを添加した培地で脂肪細胞を培養した場合には、これらを添加していない培地で脂肪細胞を培養した場合に比べて、脂肪滴の生成量が少なくなった。特に、イソビテキシン10μmol/L〜1mmol/L、及びイソサポナリン10μmol/Lについては、脂肪滴の生成量が有意に抑えられた。
【0050】
以上、肥満防止剤の実施例について説明したが、上述の実施例において例示した構成については種々変形することができる。例えば、上記実施例では、上記式(I)で表されるフラボノイド化合物の例として、イソビテキシン又はイソサポナリンを用いる例を示したが、これに限定されるものではない。これら以外のフラボノイド化合物を用いることができ、この場合でも、イソビテキシン又はイソサポナリンを用いた場合と同様の脂肪滴の生成量を抑制する効果を期待できる。