【実施例】
【0027】
本実施例1に係るドアクローザCは、
図1に示すように、ドアクローザ本体1をドアDに取着し、当該ドアクローザ本体1の上端に突出するピニオン軸3にアームRの一端を取着し、当該アームRの他端を、ブラケットBを介して上枠Uに取着して構成するものである。
【0028】
そして前記ドアクローザCは、
図2(a)(b)に示すように、内部空間10を有するドアクローザ本体1と、内部空間10を往復動可能であり且つラック歯23を有するピストン2と、該ピストン2のラック歯23と噛合し、ドアクローザ本体1の上下を貫通するピニオン軸3と、ピストン2の後端部から一方の前記蓋部材14aの間に設けられる弾性部材であるコイルスプリング4(ばね部材)と、当該コイルスプリング4内において長手方向に移動可能に格納される膨張吸収手段5を備える。そしてドアクローザC内には作動油Lが充填されている。
【0029】
ここで、前記
図2(a)はドアの閉状態、
図2(b)はドアの開状態を示すものである。前記
図1に示すドアDの開閉によってアームRが動作により、前記ピニオン軸3が従動回転する。これに伴いドアクローザ本体1内で、ピニオン軸3の回転により、ラック歯23を有するピストン2が従動する。ピストン2の移動により、ピストン2によりドアクローザ本体1内の作動油Lが押圧され、ピストン2の動きを制動する。ピストン2による前記作動油Lの押圧によって、ピストン2の通油孔内20aを介してピストン内部空間22へ少しずつ当該作動油Lが移動し、設定した範囲でピストン2の動きが許容され、当該ドアDの開閉力並びに開閉速度の制御がされるものである。
【0030】
そして、コイルスプリング4内に移動可能な状態で投入された前記膨張吸収手段は、ドアクローザCのおかれた環境下、特に高圧、高温下において、作動油Lの膨張によるドアクローザ本体1からの当該作動油Lの漏洩を防止すべく、膨張吸収手段が体積を減少させるものである。
以下に、本実施例に係るドアクローザCの各部の詳細な構成について説明する。
【0031】
前記ドアクローザ本体1は、直方体形状の外形を有し、その長手方向に連続して筒状に内部空間10を形成してある。内部空間10の前端及び後端の開口部内周面には、雌螺子を設けてある。当該開口部内の雌螺子に対して外側から雄螺子を有する蓋部材14(14a、14b)を夫々螺合し、前後の開口を密閉可能としてある。
【0032】
また、本実施例においては、ピストン2の移動速度を変更可能とするための第一速度調節用通路11、及び第二速度調節用通路12を備えている。前記第一速度調節用通路11は、内部空間10に対して二箇所の開口部を備え、また当該第一速度調節用通路11の一端は前記ドアクローザ本体1の他端面に開口を備える。当該第一速度調節用通路11の開口を閉塞するために、第一速度調節用バルブ60を設けてある。前記第二速度調節用通路12は、内部空間10に対して二箇所の開口部を備え、また当該第二速度調節用通路12の一端は前記ドアクローザ本体1の他端部に開口を有する。当該第二速度調節用通路12の開口を閉塞する第二速度調節用バルブ61を設けてある。
【0033】
前記ピストン2は、ドアクローザ本体1の内部空間10を形成する内周面10aに沿って摺動可能な外径寸法を確保した前端部2a及び後端部2bと、当該前端部2a及び後端部2bの間に一体として形成される二本の連結枠部2c、2dを備える。また一方の連結枠部2cの内面側にはラック歯23が形成される。
二本の連結枠部2c、2dの間には、ピニオン軸3に対してピストン2を往復動可能とするための空間(以下、ピストン内部空間22)を備えている。
連結枠部2c、2dの外周面2eは湾曲しており、その曲率半径は前端部2a及び後端部2bの外周面2eの曲率半径よりも若干小さく設定してある。このため、当該連結枠部2c、2dの間に位置する外周面2eはドアクローザ本体1の内部空間10を形成する内周面10aに当接しない構成である。
【0034】
ピストン2の前端部2aにはピストン前端側通油路21を有する。当該ピストン前端側通油路21は弁機構を構成するボール弁21bを備えている。
また、ピストン2の後端部2bにはピストン後端側通油路(通油路)20を有する。当該ピストン2の後端側通油路20は円形輪郭の開口である通油孔20aを有している。
この通油孔20aの大きさはピストン2による圧力を確保するため必要以上に大きく設定することは困難である。
【0035】
前記ピニオン軸3はその長手方向中央位置の全周に亘りピニオン歯30を備えている。ピニオン軸3は、前記ピストン2の二本の連結枠部2c、2dの間となる前記ピストン内部空間22に挿通され、且つ前記ラック歯23と当該ピニオン歯30とが噛合した状態として配置される。
ピニオン軸3の上端側及び下端側は、夫々ドアクローザ本体1に設けた上側軸受部材と下側軸受部材に保持され、当該ピニオン軸3の上端部はドアクローザ本体1の上端から上方に突出し、下端部はドアクローザ本体1の下端から下方に突出する。上側軸受部材及び下側軸受部材内にはシール部材及びベアリングを設けてある。
【0036】
そして、本実施例に係る膨張吸収手段5は、
図3(a)〜(f)に示すように、非膨張吸収部50と該非膨張吸収部50に接続される膨張吸収部51とを備える。
前記非膨張吸収部50は前方側に配置され、前記膨張吸収部51は後方側に配置される。即ち、膨張吸収手段5の前端のみに非膨張吸収部50を備える構成である。
当該膨張吸収部51が収縮した状態の膨張吸収手段5の長さ寸法が、コイルスプリング4の内径寸法よりも大となる寸法としている。この寸法設定により、膨張球種段が移動に伴って、その前端及び後端の位置が逆転しないようにしてある。
【0037】
前記膨張吸収手段5における膨張吸収部51は、多数の微小な独立気泡を有する弾性変形可能な合成樹脂材からなる。また、当該膨張吸収部51の形状は円柱形状としてある。
以上から本実施例における膨張吸収手段5における膨張吸収部は、ピストン2の通油孔20aを閉塞し得る形状であるといえる。また変形後の形状においても当該膨張吸収部51自体は、ピストン2の通油孔20aを閉塞し得る形状といえる。
【0038】
当該膨張吸収部51の円柱形状は単純な形状であり、円柱形状で連続する部材を切断するのみで得ることができ、製造時における加工コストの低廉化に役立つ。
しかしながら、ピストン2の通油孔20aを閉塞し得る構成は、膨張吸収手段5としては機能上問題がある。このため、本実施例に係る発明は、膨張吸収部51と非膨張吸収部50とを接続して組み合わせ、非膨張部材が膨張部材とピストン2の通油孔20aとの接触を阻止することで、機能上の問題を解消している。
【0039】
一方、本実施例に係る膨張吸収手段5における非膨張吸収部50は、両端部に爪部50bを有する金属製の板状の基板からなり、基板の中央部を幅方向に亘って湾曲してなる前端部50aを備え、両端部の前記爪部50bを対向して配置させたものである。
基板の中央部の湾曲した前端部50aが非膨張吸収部50の前端部として構成され、また前記爪部50bを有する両端部はいずれも非膨張吸収部50の後端部として構成される。
【0040】
本実施例においては、非膨張吸収部50の前端部の幅寸法w1は、前記膨張吸収部51の直径寸法d1(若しくは幅寸法)よりも若干大きく形成してある。尚、非膨張吸収部50の後端部の幅寸法w2は、前記前端部の幅寸法w1よりも小さく形成してある。
【0041】
上記非膨張吸収部50はその後端の前記爪部50bを、膨張吸収部51の前端側に食い込ませた状態として接続される。前記爪部50bは本発明における差込部として機能する。膨張吸収部51は独立気泡を有することから、前記爪部50bの食い込みによっても爪部50bと接触しない気泡は破壊されずその内部に空気を保持できることから、膨張吸収機能を確保した上で、非膨張吸収部50と膨張吸収部51の十分な接続性が実現される。
【0042】
以上の構成によって、
図1に示すドアの閉状態から
図2に示すドアの開状態とすることで、ピストン2が後方へ移動してコイルスプリング4が押圧され、作動油Lがピストン2内の通油孔20aへ向けて移動すると、膨張吸収手段5は前記通油孔20aへ向けて吸引される。膨張吸収手段5の前端の非膨張吸収部50は、先端が湾曲形状を有しており、且つ、通油孔20aの内径寸法D2よりも大きい幅寸法を有しており、そして、非膨張吸収部50自体が変形を全く生じないものであることから、強い吸引力が生じても当該通油孔20aを塞ぐことがなく、通油路が常に確保された形状を保持できる。
【0043】
また上記実施例に係るまた非膨張吸収部50の後端部におけるより減少した幅寸法により、製造時及び使用時における他物との不用意な接触を抑制できる。また原材料の消費を低減できる利点を有する。
【0044】
即ち、本実施例に示した膨張吸収手段5においては、前端部の幅寸法w1よりも内径寸法D2の小さい通油孔20aであれば対応可能である。また、膨張吸収部51の直径寸法d1と非膨張吸収部50の前端部の幅寸法w1との関係においては概ね同程度の寸法であれば作動油の抵抗となり難く良好であるが、若干程度であれば直径寸法d1と前記幅寸法w1のいずれが大きくても可能である。
【0045】
また非膨張吸収部50の前端部50は、
図9(a)に示すように当該前端部50aが湾曲形状を有する形状として通油路を確保できるものであるが、上記実施例に限るものではなく、種々の変形、設計変更が可能である。例えば、前端部50aについて実質的に一定の高さh1を有する形状とすることも可能である。
【0046】
例えば
図9(b)に示すように、前端部に平坦な面を形成した所定の高さh1を有するものとすることが可能である。この高さh1は、通油孔20aの前記内径寸法D2よりも小さければ、通油路を確保できるため、本実施例の変形例としての構成に含むことができる。
【0047】
また、前端部50aの形状は、例えば、
図9(c)に開示するように、前端部50aに幅方向に屈曲線を有する屈曲部を形成することも可能である。
【0048】
また、上記実施例に係る膨張吸収手段5の前端のみに非膨張吸収部50を備える構成においては、当該膨張吸収部51が収縮した状態の膨張吸収手段5の長さ寸法が、コイルスプリング4の内径寸法よりも大となる寸法としたことで、膨張吸収手段5の前端と後端の向きが不用意に逆転することを防止できる。
【0049】
更に、前端のみに非膨張吸収部50を備え、後端には非膨張吸収部50を備えない構成によれば、膨張吸収部51の前端及び後端に非膨張吸収部50を設ける構成と比較して、一の膨張吸収手段5における非膨張吸収部50の数量を低減できることで、より低コストで製造が可能となる。
【0050】
また本発明におけるドアクローザにおける膨張吸収手段5は、非膨張吸収部50の前端部のみならず、種々の変形、設計変更等が可能である。他の形状を示す膨張吸収手段5を更に以下に示す。
【0051】
他の一の膨張吸収手段5は、
図4(a)〜(f)に示すように、上記実施例に開示した膨張吸収手段5と膨張吸収部51は共通するものであり、非膨張吸収部50の構成において相違するものである。
【0052】
当該膨張吸収手段5における非膨張吸収部50は、金属製筒体の一端に閉塞部50cを形成した構成を有する。閉塞部50cには、平行する複数の溝部50dを設けてある。金属製筒体の内径は膨張吸収部51の外径に略等しく設定されている。膨張吸収部51の一端を当該金属製筒体内に嵌入し、当該金属製筒体の側面の一部を加締めて圧着した圧着部50eを有するものである。
【0053】
本構成によれば、
図10(a)に示すように、ピストン2の後端部2bにおける通油孔20a及びその周縁部に対して、非膨張吸収部の前端部が接触した場合に、その閉塞部50cが通油孔20aの周縁部に当接し、且つ通油孔20aと溝部50dとの間に連続する空間が形成され、通油経路が確保される。
【0054】
また、他の一の膨張吸収手段5は、
図5(a)〜(e)に示すように、上記実施例に開示した膨張吸収手段5と膨張吸収部51は共通するものであり、非膨張吸収部50の構成において相違するものである。
【0055】
当該膨張吸収手段5における非膨張吸収部50を、金属製のタッピングネジとしたものである。タッピングネジの頭部の最大直径は、概ね膨張吸収部51の直径と同一若しくは近似するものとしている。当該タッピングネジの頭部にはプラスドライバーに対応した十字溝50fが設けられている。当該十字溝50fは、タッピングネジの頭部が通油孔20aと接触した際に、通油経路を構成する。このため本実施例においては、十字溝50fの幅寸法w3は通油孔20aの直径よりも大きな幅で形成されることが必要である。
【0056】
本構成によれば、
図10(b)に示すように、ピストン2の後端部2bにおける通油孔20a及びその周縁部に対して、非膨張吸収部の前端部が接触した場合に、当該タッピングネジの頭部と通油孔の周縁部とが接触し、且つ通油孔20aと十字溝50fとの間に連続する空間が形成され、通油経路が確保される。
【0057】
また、他の一の膨張吸収手段5は、
図6(a)に示すように、上記実施例に開示した膨張吸収手段5と膨張吸収部51は共通するものであり、非膨張吸収部50の構成において相違するものである。
【0058】
当該膨張吸収手段5における非膨張吸収部50は円柱状の硬質樹脂部材であり、前端面に溝部50gを形成したものである。硬質樹脂部材の直径寸法は、膨張吸収部51の直径寸法と略同一寸法としてある。
図6(b)に示すように、膨張吸収部51の前面と硬質樹脂部材の後面とを接着、若しくは溶着により、固着して構成される。
【0059】
本構成によれば、
図10(c)に示すように、ピストン2の後端部2bにおける通油孔20a及びその周縁部に対して、非膨張吸収部の前端部が接触した場合に、当該溝部の近傍と通油孔20aの周縁部とが接触し、且つ通油孔20aと溝部50gとの間に連続する空間が形成され、通油経路が確保される。
【0060】
また、他の一の膨張吸収手段5は、
図7(a)に示すように、上記実施例に開示した膨張吸収手段5と膨張吸収部51は共通するものであり、非膨張吸収部50の構成において相違するものである。
当該膨張吸収手段5における非膨張吸収部50は円柱状の頭部とその後面中央から後方に向けて延設される差込部を硬質樹脂で一体に形成したものである。頭部の前端面には溝部50gを有する。
頭部の直径寸法は、膨張吸収部51の直径寸法と略同一寸法としてある。前記差込部50hは、先端及び先端から基端の間において返り部50iを備えている。
返り部50iは膨張吸収部51から非膨張吸収部50から不用意に離脱することを防止するためのものである。
図7(b)に示すように、当該非膨張吸収部50の差込部50hを膨張吸収部51の前端面中央に差込んで一体としたものである。
【0061】
本構成によれば、上記実施例と同様に、ピストン2の後端部2bにおける通油孔20a及びその周縁部に対して、非膨張吸収部の前端部が接触した場合に、当該溝部の近傍と通油孔20aの周縁部とが接触し、且つ通油孔20aと溝部50gとの間に連続する空間が形成され、通油経路が確保される。
【0062】
また、他の一の膨張吸収手段5を
図8(a)に示す。当該膨張吸収手段5における膨張吸収部51は前端面中央に第一差込穴51cを備えており、当該膨張吸収部51の一側面から第一の差込穴51cに直交し且つ第一の差込穴51cよりも径の小さい第二差込穴51dを設けたものである。
また非膨張吸収部50は、円柱状の頭部とその後面中央から後方に設けて延設される差込部を硬質樹脂で一体に形成したものである。
差込部50jは第一差込穴51cの寸法に合わせて形成されており、第二差込穴51dに対応する位置に貫通穴50kを備える。
【0063】
図8(b)に示すように、膨張吸収部51の第一差込穴51cに非膨張吸収部50の差込部50jを差し込み、膨張吸収部51の第二差込穴51dと非膨張吸収部50の貫通穴50kを一致させて、当該第二差込穴51dと貫通穴50kに対して差込ピン51eを差し込むことで膨張吸収部51と非膨張吸収部50とを接続した構成である。
【0064】
本構成によれば、上記実施例の構成と同様に、ピストン2の後端部2bにおける通油孔20a及びその周縁部に対して、非膨張吸収部の前端部が接触した場合に、当該溝部の近傍と通油孔20aの周縁部とが接触し、且つ通油孔20aと溝部50gとの間に連続する空間が形成され、通油経路が確保される。
【0065】
以上のように本発明は、いずれの膨張吸収手段5においても膨張吸収部51と、その前端に固着される非膨張吸収部50を備え、当該非膨張吸収部50は、
通油孔形成部25と当接した状態で、変形することなく通油路を構成するものであることから、これまで通油路からの吸込みに伴う変形のリスクを考慮する必要もなくなり、安定した性能を発揮できるドアクローザCを実現することが可能である。