(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982301
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20211206BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20211206BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20211206BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20211206BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/00
A61Q5/06
A61K8/891
A61K8/37
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-199536(P2017-199536)
(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2019-73464(P2019-73464A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】品川 直基
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−026242(JP,A)
【文献】
特開2000−255653(JP,A)
【文献】
特開2006−205045(JP,A)
【文献】
特開2014−233679(JP,A)
【文献】
特開2017−109994(JP,A)
【文献】
特開2001−139423(JP,A)
【文献】
特開2007−063248(JP,A)
【文献】
特開2017−132723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧状に噴霧して用いられるノンエアゾール型毛髪化粧料であって、以下の(A)〜(C)を含有し、(A)成分が60〜80質量%含有されており、(B)成分が14.8〜29.5質量%含有されており、(C)成分が5.2〜16質量%含有されており、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が(B)/(C)=1〜3であることを特徴とする霧状に噴霧して用いられるノンエアゾール型毛髪化粧料。
(A):炭素数2〜4の1価の飽和アルコール
(B):数平均分子量が500〜1500のメチルポリシロキサン
(C):ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪化粧料に関する。さらに詳しくは、霧状に噴霧して用いられるノンエアゾール型毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の形状の一つに、一般にくせ毛といわれる形状があり、その毛髪はうねりや縮れを有する。また、一般にパーマネントウェーブや脱色などの化学的処理を行なう毛髪処理剤は、キューティクルなど毛髪の構造を変化させる。これらの毛髪は、指通りや櫛通りが良好ではないため、毛髪にまとまりを要するヘアスタイルに整えることが容易ではない。
【0003】
従来、浴室内で使用するヘアリンスやヘアトリートメントで良好な指通りや櫛通りを付与することが検討されていたが、これらの毛髪化粧料だけでは良好な指通りや櫛通りを付与することができているとは言い難く、近年は、浴室外で入浴後や整髪剤を使用する直前に使用して良好な指通りや櫛通りを与えるヘア美容液、ヘア乳液、ヘアオイルといった毛髪化粧料の需要が高まっている。これらの中でも、低粘度の油性成分を多量に含有できるヘアオイルは毛髪にまとまりを与え、良好な指通りや櫛通りを与えることができるため、より需要が高まっている。
【0004】
しかし、一般にヘアオイルは低粘度の油性成分を多く配合するため、降り出し式容器を使用して手に取る場合、指の間からヘアオイルがこぼれやすいといった問題がある。そのため、髪全体に直接塗布しやすい方法として霧状で塗布できる剤型の需要が高まっており、特に適量を塗布し難いエアゾール型ではなく、ミストディスペンサーを用いて一定量の塗布が調整できるノンエアゾール型の毛髪化粧料に注目が集まっている。
【0005】
特許文献1には、手のひらや毛髪に塗布したときの伸び、滑らかな感触、ベタツキのなさ、毛髪のまとまり感をバランスよく発揮することができ、なおかつ、安定性が高いことを目的として、不揮発性シリコーン、揮発性油、不揮発性飽和油が相互溶解される毛髪化粧料を開示している。特許文献2には、毛髪に対し、塗布したときの伸びとなじみのよさに優れ、ベタつかず、良好な指通り性とまとまり性を与えることを目的として、特定の数平均重合度のジメチルポリシロキサン、融点が30℃以上の特定の油剤およびジメチルポリシロキサンを溶解できる揮発性溶剤を組み合わせて用いる毛髪化粧料が開示されている。特許文献3には、乾いた髪に塗布した際の濡れ広がりが良く、かつ塗布後にはすぐに乾き、きしみ感や毛髪が濡れた感触を与えず、乾燥後には毛束を作らずに毛髪を自然にまとめることを目的とし、特定のシリコーン油と低級アルコールと、ポリマーを含有する毛髪化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−143869号公報
【特許文献2】特開2008−174496号公報
【特許文献3】特開2017−109994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の毛髪化粧料を、ノンエアゾール型のミストディスペンサーを用いて霧状に噴霧して用いようとすると、霧状になり難く、吐出される際にミストディスペンサーから液ダレが生じてしまう恐れがあった。特許文献2の毛髪化粧料を、ノンエアゾール型のミストディスペンサーを用いて霧状で使用すると、ミストディスペンサーの吐出口に固体成分が析出し、ミストディスペンサーが詰まり、吐出できない場合や霧が均一に広がらない恐れがあった。特許文献3の毛髪化粧料では、各成分の相互溶解が良好でなく、時間が経過すると、容器中の毛髪化粧料の上部と底部で濃度勾配が発生するため、ノンエアゾール型のミストディスペンサーを用いて霧状で使用すると、毛髪化粧料の使い始めから使い終わりまでに毛髪に与える効果が不均一になり、特に毛髪に与えるまとまりが変化してしまう恐れがあった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、すなわち、本発明は、ノンエアゾール型のミストディスペンサーを用いて霧状に噴霧して用いるとき、毛髪にまとまりを与え、べたつきがなく、霧状に噴霧するときに液ダレがなく、霧が均一に広がり、時間経過による濃度勾配がないノンエアゾール型毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、本発明の毛髪化粧料に特定のアルコールと、特定のシリコーン油と、特定のエステル油を含有させ、前記シリコーン油と、前記エステル油を特定の比率で含有させることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、霧状に噴霧して用いられるノンエアゾール型毛髪化粧料であって、以下の(A)〜(C)を含有し、(A)成分が50〜90質量%含有されており、(B)成分が5〜38質量%含有されており、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が(B)/(C)=0.1〜3であることを特徴とする霧状に噴霧して用いられるノンエアゾール型毛髪化粧料を提供することにある。
(A):炭素数2〜4の1価の飽和アルコール
(B):メチルポリシロキサン
(C):ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、毛髪にまとまりを与え、べたつきがなく、霧状に噴霧するときに液ダレがなく、霧が均一に広がり、時間経過による濃度勾配がないノンエアゾール型毛髪化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による毛髪化粧料には、液ダレがなく霧が均一に広がる観点から(A)炭素数2〜4の1価の飽和アルコールを含有する。
【0014】
本発明に用いる前記(A)成分は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールが挙げられる。これら前記(A)成分のうち、毛髪がより早く仕上がる観点から好ましくはエタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、臭いの観点からより好ましくはエタノールが好ましい。前記(A)成分は1種以上を含有することができる。
【0015】
本発明に用いる前記(A)成分は、液ダレがなく霧が均一に広がる観点から50〜90質量%含有する。前記(A)成分が50質量%未満の場合、液ダレが発生することや、霧が均一に広がらない。一方、前記(A)成分が90質量%を超える場合、他の成分の含有量が少なくなり、本発明の効果が得られない。
【0016】
本発明による毛髪化粧料には、毛髪にまとまりを与え、べたつきがない観点から(B)メチルポリシロキサンを含有する。
【0017】
本発明に用いる前記(B)成分の数平均分子量は、好ましくは300〜3000がよく、より好ましくは500〜1500がよい。前記(B)成分の数平均分子量が300未満の場合、毛髪にまとまりを与えられない恐れがある。一方、前記(B)成分の数平均分子量が3000を超える場合、べたつきが生じる恐れがある。
【0018】
本発明に用いる前記(B)成分は、毛髪にまとまりを与える点から5〜38質量%含有する。前記(B)成分が5質量%未満の場合、毛髪にまとまりを与えられない恐れがあり、前記(B)成分が38質量%を超える場合、べたつきが生じる。
【0019】
本発明に用いる前記(B)成分は、数平均分子量が300以上の場合、例えば25℃における動粘度が2mm
2/s以上のものが挙げられ、数平均分子量500以上である場合、例えば25℃における動粘度が5mm
2/s以上のものが挙げられ、数平均分子量1500以下である場合、例えば25℃における動粘度が10mm
2/s以下のものが挙げられ、数平均分子量3000以下である場合、例えば25℃における動粘度が30mm
2/s以下のものが挙げられる。
【0020】
本発明による毛髪化粧料には、時間経過による濃度勾配がない観点から(C)ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上を含有する。
【0021】
本発明に用いる前記(C)成分は、べたつきの観点から好ましくは16質量%以下がよく、より好ましくは2.5〜16質量%がよい。前記(C)成分が16質量%を超える場合、べたつきが生じる恐れがある。
【0022】
本発明の毛髪化粧料には、前記(B)成分および前記(C)成分を含有するが、時間経過による濃度勾配がない観点から、毛髪化粧料の含有量の質量比(B)/(C)は0.1〜3である。毛髪化粧料の含有量の質量比(B)/(C)が0.1未満の場合、毛髪にまとまりを与えられない。一方、毛髪化粧料の含有量の質量比(B)/(C)が3を超える場合、時間経過による濃度勾配が起き、使い始めから使い終わりまででは毛髪に与える効果を一定にすることができない。
【0023】
濃度勾配とは、直径5cmの透明ガラス容器に毛髪化粧料を充填した後、前記透明ガラス容器に光を透過させた状態において逆さにすることで容易に観察することができる。濃度勾配が起きているとき、透明ガラス容器に充填された毛髪化粧料は光の屈折率が一定でないため、光は歪んで見える。
【0024】
本発明による毛髪化粧料には、水を含有しないことが好ましい。水の含有量は好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下がよい。水の含有量が1質量%を超える場合、毛髪化粧料が均一にならず分離する恐れがある。
【0025】
さらに、本発明の毛髪化粧料には、商品価値を高めるために香料や色素、毛髪化粧料の経日的変質防止のために防腐剤や酸化防止剤含有させることができ、また、さらに必要に応じて、界面活性剤、帯電防止剤、分散剤、増粘剤、紫外線吸収剤のうち1種以上を含有することができる。
【0026】
本発明による毛髪化粧料の粘度は噴霧されれば特に限定されないが、液ダレがない観点から、25℃条件下で、1〜10mPa・sが好ましい。
【0027】
本発明による25℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られた毛髪化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、25℃で24時間静置した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB−10M、東機産業株式会社製)により、粘度が60mPa・s未満の場合はM1号ローターを用いて25℃、100rpmで1分間、粘度が60〜120mPa・sの場合はM1号ローターを用いて25℃、50rpmで1分間回転させ測定したものである。
【0028】
本発明による毛髪化粧料は、ミストディスペンサーなどを用いノンエアゾール型で霧状で吐出される。これにより、毛髪化粧料が髪に直接塗布されるため、毛髪化粧料をたれ落ちてしまう恐れがない。また、毛髪化粧料が霧状に噴霧され用いられるため、髪全体に塗布しやすい。
【0029】
本発明による毛髪化粧料は、噴射剤を用いるエアゾール型は、適量を塗布することが困難であるため適切ではない。
【0030】
本発明による毛髪化粧料は、例えば、霧状で直接毛髪に噴霧され、手ぐし、コーム、ブラシ、ドライヤー等でヘアスタイルを整えることが好ましい。
【0031】
また、本発明の毛髪化粧料は、ディスペンサーのような霧状に噴霧する機構に充填して用いる。霧状に吐出する機構として好ましくは、トリガー式形状のディスペンサー(Z−305−101:三谷バルブ社製)であり、吐出量100〜300mg/1pushにて吐出されるものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施例にのみ限定されるものではない。
【0033】
常法に従い、表1から表3に示す毛髪化粧料を調製し、下記の評価方法で評価を行なった。評価の結果は表に併記する。
【0034】
「まとまりの評価」
化学処理履歴がない中国人人毛(品番:BS−A、ビューラックス社製)で長さ27cm、重さ3gの毛束を作製し、1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、擦らないよう軽くタオルドライし、24時間風乾させた。調整した毛束全体に各毛髪化粧料を0.6g塗布した。その後、ドライヤーの排気口から1cmの距離に毛束の根元がくるようにし、専門パネラー1名が5秒の間隔で手櫛を通しながら、3分間ブローした毛束を評価用毛束とした。評価は以下の基準で行なった。
○:毛髪がまとまっている
△:毛髪がややまとまっている
×:毛髪がまとまっていない
【0035】
「べたつきの評価」
化学処理履歴がない中国人人毛(品番:BS−A、ビューラックス社製)で長さ27cm、重さ3gの毛束を作製し、1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、擦らないよう軽くタオルドライし、24時間風乾させた。調整した毛束全体に各毛髪化粧料を0.6g塗布した。その後、ドライヤーの排気口から1cmの距離に毛束の根元がくるようにし、専門パネラー1名が5秒の間隔で手櫛を通しながら、3分間ブローした毛束を評価用毛束とした。評価は以下の基準で行なった。
○:手がべたついていない
△:手がほとんどべたついていない
×:手がべたついている
【0036】
「液ダレなさの評価」
各毛髪化粧料を200mL用PET容器に150g充填し、25℃条件下でミストディスペンサー(Z−305−101:三谷バルブ社製)を用い正立状態で10回吐出した。評価は以下の基準で行なった。
○:ミストディスペンサーの吐出口から液ダレがない
△:ミストディスペンサーの吐出口から液ダレがほとんどない
×:ミストディスペンサーの吐出口から液ダレがある
【0037】
「霧の広がりの評価」
各毛髪化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に105g充填し、25℃条件下でミストディスペンサー(Z−305−101:三谷バルブ社製)を用い正立状態で15cm前方の紙に吐出した。評価は以下の基準で行なった。
○:紙が正円の形に濡れる
△:紙がほぼ正円の形に濡れる
×:紙が正円の形に濡れない
【0038】
「時間経過による濃度勾配の評価」
各毛髪化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に105g充填し、25℃で7日間静置した。評価は以下の基準で行なった。
○:光を透過させた状態でサンプル瓶を逆さにしても光が歪んで見えない
×:光を透過させた状態でサンプル瓶を逆さにすると光が歪んで見える
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
実施例1〜20より、「まとまり」、「べたつき」、「液ダレのなさ」、「霧の広がり」および「時間経過による濃度勾配」に関して良好な結果が得られた。
【0043】
以下に毛髪化粧料の処方例を列記する。
【0044】
(実施例21)
成 分 含有量(質量%)
(A)一般アルコール 99度合成 69.60
(B)メチルポリシロキサン(5CS) 21.80
(B)メチルポリシロキサン(10CS) 0.20
(C)ミリスチン酸イソプロピル 7.80
γ−ドコサラクトン 0.10
加水分解シルクエチル 0.10
ヒアルロン酸ジメチルシラノール 0.10
イソステアロイル加水分解コラーゲン 0.10
香料 0.20
合 計 100.00
【0045】
(実施例22)
成 分 含有量(質量%)
(A)一般アルコール 99度合成 76.30
(B)メチルポリシロキサン(10CS) 17.00
(C)ミリスチン酸イソプロピル 6.00
(PEG−40/PPG−8メチルアミノプロピル
/ヒドロキシプロピルジメチコン)コポリマー 0.30
加水分解シルクエチル 0.10
ヒアルロン酸ジメチルシラノール 0.10
イソステアロイル加水分解コラーゲン 0.10
香料 0.10
合 計 100.00
【0046】
実施例21および実施例22の毛髪化粧料について、「まとまり」、「べたつき」、「液ダレのなさ」、「霧の広がり」および「時間経過による濃度勾配」は良好な結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により、毛髪にまとまりを与え、べたつきがなく、霧状に噴霧するときに液ダレがなく、霧が均一に広がり、時間経過による濃度勾配がないノンエアゾール型毛髪化粧料が得られる。