(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極接続線が接続された平板状のセンサ電極に高周波信号が入力され、前記センサ電極の容量に応じた判定電圧信号に基づいて前記センサ電極への人体の近接を検出する自己容量方式の静電容量センサにおいて、
前記センサ電極は、外周と内周がそれぞれ長辺と短辺を有する長方形状の周囲電極と、前記周囲電極の一方の短辺側の内周部に接続されて他方の短辺側に延びる少なくとも1本の舌片状の内側電極を有し、
前記電極接続線は、前記周囲電極の一方の短辺側に接続されている、
ことを特徴とする静電容量センサ。
【背景技術】
【0002】
一般に、静電容量センサは、携帯電話のような無線機器等からの外来電波ノイズの影響を受け易く、時として誤動作を生じることがある。
【0003】
外来電波ノイズ対策として、例えば特許文献1には、複数のセンサ電極を用い、これらのうち静電容量の変化が最大のものと最小のものとを比較し、それらの差の絶対値を用いてタッチ操作の検知制御を行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、センサ電極の他にダミー電極を用い、このダミー電極で外来電波ノイズを検知し、センサ電極に対する誤判定を防止する技術が開示されている。このダミー電極はセンサ電極に対するタッチ操作に影響されない程度に離れて配置され、ダミー電極の静電容量の変化が検出されると、センサ電極に対する操作有りの判定を破棄するようになっている。
また、特許文献3では、センサ電極の近傍にダミー電極を配置し、センサ電極の他にダミー電極の静電容量の値を検出し、ダミー電極の静電容量の変化量が所定の判定値を超えると、センサ電極に対するタッチの有無の判定を無効にするようにしている。
【0004】
一方、特許文献4や特許文献5には、静電容量センサのセンサ電極の形状を工夫したドアハンドル装置が開示されている。
特許文献4では、ドアハンドル内にアンテナが配設されたドア開閉装置において、アンテナに対向して配置されるセンサ電極をU字状に形成している。
特許文献5では、ドアハンドル内にアンテナコイルが配設されたドアハンドル装置において、アンテナコイルの巻回軸方向に対して平行に延在するスリットを有するセンサ電極を用いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1乃至3に記載された装置によれば、外来電波ノイズの影響による誤動作を防止することができるものの、外来電波ノイズの存在下では正常な動作までが制限されてしまう。具体的には、例えばドアハンドルの場合、外来電波ノイズによっては解錠されないものの、外来電波ノイズが存在する間はセンサが働かず、ユーザがドアを開けようとしてセンサにタッチしても解錠されない問題がある。
また、特許文献1乃至3に記載された装置では、複数のセンサ電極あるいはダミー電極を必要とし、電極構成や回路構成が複雑になるといった問題点がある。
【0007】
また、特許文献4、5に記載された装置によれば、アンテナとセンサ電極を同じドアハンドル内に設置してもアンテナの放射性能を低下させにくい効果はあるものの、外来電波ノイズの影響による誤動作を十分に防止できない問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、外来電波ノイズの影響を十分に抑制し得る静電容量センサを簡易な電極構成で実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記の課題を解決するために成された本発明の態様を記載する。
【0010】
本発明の一実施態様は、
電極接続線が接続された平板状のセンサ電極に高周波信号が入力され、前記センサ電極の容量に応じた判定電圧信号に基づいて前記センサ電極への人体の近接を検出する自己容量方式の静電容量センサにおいて、
前記センサ電極は、外周と内周がそれぞれ長辺と短辺を有する長方形状の周囲電極と、前記周囲電極の一方の短辺側の内周部に接続されて他方の短辺側に延びる少なくとも1本の舌片状の内側電極を有し、
前記電極接続線は、前記周囲電極の一方の短辺側に接続されている、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の実施態様では、
「前記内側電極の長さが、前記周囲電極の長さの1/2以上であること」、
「前記センサ電極は、前記内側電極を1〜3本有すること」、
「前記周囲電極の長辺部分と前記内側電極の間隔が0.7mm以上2.1mm以下であること」、
を特徴とすることを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の静電容量センサによれば、単一のセンサ電極による自己容量方式の静電容量センサにおいて、周囲電極の内側に舌片状の内側電極を一体化したセンサ電極を用いることにより、外来電波ノイズの影響を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者は、
図1に例示する自己容量方式の静電容量センサにおいて、センサ感度の低下を抑えつつ、外来電波ノイズの影響を効果的に低減できるセンサ電極の形状について鋭意実験を重ねた結果、本発明に至ったものである。
【0015】
まず、
図1の静電容量センサについて簡単に説明する。この静電容量センサ1は、主にセンサ回路10とマイコン40からなり、センサ回路10は、LCR共振回路20と平滑回路30を備えており、所謂スマートエントリーシステムにおける車両ドアの解錠・施錠用の接触センサとして用いることができる。この場合、センサ電極は被操作体としてのドアハンドルの内部に設けられ、ドアハンドルの所定の面にユーザが接触すると、その接触を検知することができるように所定の位置に配される。
【0016】
LCR共振回路20は、インダクタ(コイル)21と、人体等の誘電体が近接もしくは接触すると静電容量が大きくなる自己容量方式用のセンサ電極22(
図1では可変容量として表記している)と、固定抵抗23が直列接続されているものである。このセンサ電極22の静電容量は、センサ電極22と車両のドア本体やドアハンドル等との間の静電容量をも包含し、人体等の誘電体の近接によって増加する。なお、LCR共振回路20は、直列共振回路に限らず並列共振回路としてよい。
【0017】
平滑回路30は、半波整流用のダイオード31、ローパスフィルタを構成する固定抵抗32とコンデンサ33、および出力インピーダンス変換用のバッファ回路34を有する。なお、平滑回路30は、センサ電極22の容量に応じた電圧信号S1を出力するものであれば任意の回路構成が可能である。具体的には、例えば信号を反転増幅する反転増幅回路を付加するなどしてもよい。
【0018】
マイコン40は、ADコンバータ41、制御部42、高周波信号生成部43を有する。
ADコンバータ41は、平滑回路30から入力された電圧信号S1をA/D変換し、判定信号S2として制御部42に出力する。
制御部42は、高周波信号生成部43に制御信号S3を出力する他、判定信号S2に基づき人体がドアハンドルに接触した(人体がセンサ電極22に近接した)と判断した場合には人の検知信号S4を出力する。
発振手段としての高周波信号生成部43は、制御部42から入力される制御信号S3に基づき、所定の周波数および所定のデューティ比の高周波信号S0をLCR共振回路20に出力する。高周波信号S0としては、矩形波状の高周波信号(概ね数百kHz)の他、正弦波や三角波等が用いられる。
【0019】
なお、静電容量センサ1の回路構成や検出方法は、本発明の主眼とするところではなく、例えば本出願人よって出願された特願2016−113249や特願2016−223754に記載の方法等を採用することができる。
【0020】
一般に静電容量センサは、携帯電話のような無線機器等からの外来電波ノイズによる影響で誤動作を生じることがあり、従来は外来電波ノイズ対策として複数のセンサ電極を用いたりダミー電極を付加したりしている。しかしながら、これらの外来電波ノイズ対策は装置構成が複雑になるばかりか、効果の面でも不十分である。
そこで、本発明者はセンサ電極自体の形状に着目し、単一のセンサ電極でセンサ感度を犠牲にすることなく外来電波ノイズ対策を行えないか数多くの実験で検証した。その結果、多くの携帯電話キャリアで使用されている周波数帯(概ね700MHz〜1GHz)に対して特定の電極形状が特に有効であることを見出したものである。
以下に、本発明者が行った実験例を示しながら、本発明を説明する。
【0021】
(実験例1)
本実験例は、
図2(a)〜(e)に示す5種類の平板状のセンサ電極22a〜eを用意し、電極接続線EWを介して接続された静電容量センサ1の誤動作レベルを測定したものである。センサ電極22a〜eの外形寸法は、一般的な車両のドアハンドル内に設置できるように、長さ70mm、幅12.5mmとした。
センサ電極22aはスリットのない基本形状であり、センサ電極22b〜eはセンサ電極22aに適宜のスリットSLが設けられている。これらのセンサ電極22a〜eは厚さが0.5mmであり、スリットSLの幅は全て0.7mmである。
なお、スリットSL以外の幅は各センサ電極内で一定であり、センサ電極22bは5.9mm、センサ電極c〜eは3.7mmである。
【0022】
誤動作レベルの測定は、センサ電極から40mm離れたアンテナから周波数の異なる7種類のノイズ(735MHz、785MHz、815MHz、835MHz、880MHz、900MHz、940MHz)を印加して行った。具体的には、アンテナ出力を測定しながらアンテナ出力を徐々に上げ、静電容量センサ1が誤動作(人の検知信号S4を出力)した際のアンテナの出力を記録し、この出力を誤動作レベルとした。したがって、誤動作レベルが高いほど、ノイズ耐性が高いことを意味する。
【0023】
測定結果を表1に纏めて示す。なお、誤動作レベルは、実験例1−1(
図2(a)のセンサ電極22a)の測定結果を基準とするdB表記である。ノイズ周波数毎の判定は、誤動作レベルが実験例1−1の誤動作レベルよりも高い場合(すなわち、0dB超)は「良」とし、誤動作レベルが実験例1−1の誤動作レベル以下の場合(すなわち、0dB以下)は「否」とした。総合判定は、ノイズ周波数毎の7判定中6判定以上が「良」の場合に「良」とした。
【0025】
表1から明らかなように、誤動作レベルについては、実験例1−5のセンサ電極22eが何れの周波数においても他のセンサ電極22a〜dよりも優れていることが分かる。
つまり、長方形状の平板電極に長辺方向のスリットを入れる場合、
図2(b)、(c)のように外周に開放したスリットではなく、また、
図2(d)のように外周に開放しないものの互いに独立した複数のスリットではなく、
図2(e)のように外周に開放せず互いの一端部で連結したスリットを設けるのが良い。言い換えれば、外周と内周が長辺と短辺を有する長方形状の周囲電極22e1と、周囲電極22e1の一方の短辺側の内周部に接続されて他方の短辺側に延びる舌片状の内側電極22e2を有するものが良い。なお、ドアハンドル内への設置を前提として、本実験例で用いたセンサ電極よりも一回り大きいセンサ電極(長さ80mm、幅14mm)と一回り小さいセンサ電極(長さ60mm、幅11mm)を用いた場合にも、本実験例とほぼ同様の結果が得られている。
【0026】
(実験例2)
本実験例は、実験例1−5のセンサ電極22eの長辺方向と短辺方向の全てのスリットSLの幅を変えた2種類のセンサ電極を用意し、実験例1と同様に電極接続線EWを介して接続された静電容量センサ1の誤動作レベルを測定したものである。これらのセンサ電極の外形寸法は全て実験例1のものと同じであり、スリット以外の部分の幅は各センサ電極内で一定である。
なお、実験例2−1のセンサ電極は、全てのスリットの幅が1.4mm、スリット以外の部分の幅が約3.2mmである。また、実験例2−2のセンサ電極は、全てのスリットの幅が2.1mm、スリット以外の部分の幅が約2.8mmである。
【0027】
測定結果を表2に纏めて示す。誤動作レベルは、実験例1−1(
図2(a))の測定結果を基準とするdB表記である。また、ノイズ周波数毎の判定および総合判定の方法は実験例1と同様である。
なお、表2には比較のために関連性の高い実験例1−5の測定結果も併記している。
【0029】
表2から明らかなように、実験例2−1と実験例2−2のセンサ電極の誤動作レベルは、実験例1−5のセンサ電極22eよりは若干劣る傾向があるものの、総合判定が良となっている。
つまり、実験例1−5のセンサ電極22eのように周囲電極と舌片状の内側電極で構成したセンサ電極は、スリットSLの幅をある程度ラフに設定しても効果が得られることがわかる。具体的には、本実験例で用いたサイズのセンサ電極では、少なくともスリットSLの幅が0.7mm以上2.1mm以下の範囲で効果が得られる。なお、本実験例で用いたセンサ電極よりも一回り大きいセンサ電極(長さ80mm、幅14mm)と一回り小さいセンサ電極(長さ60mm、幅11mm)を用いた場合にも、ほぼ同様の結果が得られ、スリットの幅が0.7mm以上2.1mm以下であれば総合判定が良であった。
【0030】
(実験例3)
本実験例は、実験例1−5のセンサ電極22eの内側電極22e2の長さだけを変えた7種類のセンサ電極を用意し、実験例1と同様に電極接続線EWを介して接続された静電容量センサ1の誤動作レベルを測定したものである。これらのセンサ電極の外形寸法は全て実験例1のものと同じである。
なお、実験例3−5は、
図3(f)のセンサ電極22fを用いたものであり、この内側電極22f2はセンサ電極22eの内側電極22e2の約2/3の長さである。
また、実験例3−6は、
図3(g)のセンサ電極22gを用いたものであり、この内側電極22g2はセンサ電極22eの内側電極22e2の約1/2の長さである。
また、実験例3−7は、
図3(h)のセンサ電極22hを用いたものであり、内側電極をなくしている。
【0031】
測定結果を表3と表4に纏めて示す。誤動作レベルは、実験例1−1(
図2(a))の測定結果を基準とするdB表記である。また、ノイズ周波数毎の判定および総合判定の方法は実験例1と同様である。
なお、表3には比較のために関連性の高い実験例1−5の測定結果も併記している。
【0034】
表3と表4から明らかなように、実験例3−1から実験例3−6のセンサ電極の誤動作レベルは、実験例1−5のセンサ電極22eよりは若干劣る傾向があるものの、総合判定が良となっている。
つまり、実験例1−5のセンサ電極22eのように周囲電極と舌片状の内側電極で構成したセンサ電極は、内側電極の長さを大幅に変更しても効果が得られることがわかる。具体的には、本実験例で用いたサイズのセンサ電極では、少なくとも内側電極の長さが31.0mm以上61.9mm以下の範囲で効果が得られる。なお、本実験例で用いたセンサ電極よりも一回り大きいセンサ電極(長さ80mm、幅14mm)と一回り小さいセンサ電極(長さ60mm、幅11mm)を用いた場合にも、ほぼ同様の結果が得られ、内側電極の長さが周囲電極の長さの1/2以上であれば総合判定が良であった。
一方、実験例3−7のセンサ電極22hのように内側電極をなくしてしまうと、スリットのない
図2(a)のセンサ電極22aに対する優位性は認められない。
【0035】
(実験例4)
本実験例は、実験例1−5のセンサ電極22eの舌片状の内側電極の本数を変えた2種類のセンサ電極(
図4(i)のセンサ電極22iと、
図4(j)のセンサ電極22j)を用意し、実験例1と同様に電極接続線EWを介して接続された静電容量センサ1の誤動作レベルを測定したものである。これらのセンサ電極の外形寸法は全て実験例1のものと同じであり、スリット以外の部分の幅は各センサ電極内で一定である。
なお、実験例4−1のセンサ電極22iは、内側電極22i2が2本であり、スリット以外の部分の幅が2.6mmである。また、実験例4−2のセンサ電極22jは、内側電極22j2が3本であり、スリット以外の部分の幅が約1.9mmである。
【0036】
測定結果を表5に纏めて示す。誤動作レベルは、実験例1−1(
図2(a))の測定結果を基準とするdB表記である。また、ノイズ周波数毎の判定および総合判定の方法は実験例1と同様である。
なお、表5には比較のために関連性の高い実験例1−5の測定結果も併記している。
【0038】
表5から明らかなように、実験例4−1と実験例4−2のセンサ電極の誤動作レベルは、実験例1−5のセンサ電極22eよりは若干劣る傾向があるものの、総合判定が良となっている。
つまり、実験例1−5のセンサ電極22eのように周囲電極と舌片状の内側電極で構成したセンサ電極は、内側電極の本数をある程度任意に設定しても効果が得られることがわかる。具体的には、本実験例で用いたサイズのセンサ電極では、少なくとも内側電極の本数が1本から3本の範囲で効果が得られる。なお、本実験例で用いたセンサ電極よりも一回り大きいセンサ電極(長さ80mm、幅14mm)と一回り小さいセンサ電極(長さ60mm、幅11mm)を用いた場合にも、ほぼ同様の結果が得られ、内側電極の本数が1本から3本の範囲であれば総合判定が良であった。
【0039】
(実験例5)
実験例1−5では内側電極22e2の固定端側の周囲電極22e1に電極接続線EWを接続しているが、本実験例では
図5に示すように内側電極22e2の自由端側の周囲電極22e1に電極接続線EWを接続している。
【0040】
測定結果を表6に示す。誤動作レベルは、実験例1−1(
図2(a))の測定結果を基準とするdB表記である。また、ノイズ周波数毎の判定および総合判定の方法は実験例1と同様である。
なお、表6には比較のために関連性の高い実験例1−5の測定結果も併記している。
【0042】
表5から明らかなように、内側電極22e2の自由端側の周囲電極22e1に電極接続線EWを接続した場合には、スリットのない
図2(a)のセンサ電極22aに対する優位性はほとんど認められない。
【0043】
以上の実験例によれば、自己容量方式の静電容量センサに用いるセンサ電極として、外周と内周がそれぞれ長辺と短辺を有する長方形状の周囲電極と、この周囲電極の一方の短辺側の内周部に接続されて他方の短辺側に延びる舌片状の内側電極を有するものを用いることにより、735〜940MHzの外来電波ノイズの影響を効果的に抑制することができる。この場合、信号線となる電極接続線は、内側電極の固定端側の周囲電極に接続される。
また、内側電極の長さが、周囲電極の長さの1/2以上であるのが良い。
また、センサ電極には、内側電極を1〜3本設けるのが良い。
また、周囲電極の長辺部分と内側電極の間隔は0.7mm以上2.1mm以下とするのが良い。