(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982321
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】多糖類の不飽和誘導体,その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20211206BHJP
A61K 31/737 20060101ALI20211206BHJP
A61K 31/731 20060101ALI20211206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20211206BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20211206BHJP
C08B 37/08 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
C08B37/00 G
C08B37/00 A
A61K31/737
A61K31/731
A61P35/00
A61P39/06
C08B37/08 Z
C08B37/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-566522(P2018-566522)
(86)(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公表番号】特表2019-522705(P2019-522705A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】CZ2017050026
(87)【国際公開番号】WO2018001394
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2020年6月16日
(31)【優先権主張番号】PV2016-375
(32)【優先日】2016年6月27日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブッファ,ラドヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ボブラ,トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】セドヴァ,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】バサラボヴァ,イヴァナ
(72)【発明者】
【氏名】プロハツコヴァ,パヴリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァグネロヴァ,ハナ
(72)【発明者】
【氏名】ドレチェコヴァ,イヴァ
(72)【発明者】
【氏名】モラフチーコヴァ,ソナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【審査官】
奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−525820(JP,A)
【文献】
特表2013−513671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式X:
(式中,Rは−NH−CO−CH
3又は−OHを表す)
による,その構造内の4位と5位に二重結合を有する複素環を少なくとも一つ含む多糖の不飽和誘導体。
【請求項2】
前記誘導体の分子量が5×103〜5×105の範囲にあり,前記多糖が,コンドロイチン硫酸,カラギーナン,デルマタン硫酸,ヒアルロン酸又はケラタン硫酸を含む群から選択されることを特徴とする請求項1記載の多糖の誘導体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の多糖の誘導体の調製法であって,第1工程において断片Y:
(式中,Rは−NH−CO−CH
3又は−OHを表し,R
1は−SO
2−ONa,−SO
2−OH又は−Hを表す)を含む出発多糖を6位でアルデヒドに酸化し,第2工程においてその環の4位及び5位で脱離して二重結合を形成し,そして第3工程において該アルデヒド基を選択的に還元することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記出発多糖がコンドロイチン硫酸,カラギーナン,デルマタン硫酸,ヒアルロン酸又はケラタン硫酸であることを特徴とする請求項3記載の調製法。
【請求項5】
前記第1工程において,C−6位の前記酸化が,0〜10℃の温度で水中におけるR3−TEMPO/NaClO(R3は水素又はN−アセチル基である)システム(多糖の繰り返し単位につきNaClOのモル量が0.3〜0.8当量の範囲内にあり,R3−TEMPOのモル量が0.005〜0.2当量の範囲内にある)により,又は10〜50℃の温度におけるDMSO中の1,1,1-トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール-3(1H)-オン(DMP)(ここでDMPの量は多糖の繰り返し単位につき0.05〜2当量の範囲内である)により行われることを特徴とする請求項3又は4記載の調製法。
【請求項6】
前記出発多糖がヒアルロン酸又はケラタン硫酸であること,及び前記第2工程において,前記酸化された多糖が30〜80℃の温度で,塩基の存在下で,水/極性非プロトン性溶媒の混合物中で脱離反応を受けることを特徴とする請求項3〜5いずれか1項記載の調製法。
【請求項7】
前記塩基の量が前記繰り返し多糖単位につき0.01〜20当量であり,該塩基が有機塩基,又は無機塩基を含む群から選択されることを特徴とする請求項6記載の調製法。
【請求項8】
前記非プロトン性溶媒が水混和性であり,溶媒/水の体積比が3/1〜1/2の範囲にあることを特徴とする請求項6又は7記載の調製法。
【請求項9】
前記第2反応工程が12〜150時間続けられることを特徴とする請求項6〜8いずれか1項記載の調製法。
【請求項10】
前記出発多糖がコンドロイチン硫酸,カラギーナン又はデルマタン硫酸であり,前記酸化された多糖が,第2工程において直接前記反応混合物中で自発的に脱離されてα,β−不飽和アルデヒドを形成し,その自発的な脱離がいかなる塩基,有機溶媒も加える必要なしに,また反応温度を上げることなしに進むことを特徴とする請求項3〜5いずれか1項記載の調製法。
【請求項11】
前記出発多糖の分子量が5×103〜5×105の範囲にあることを特徴とする請求項3〜10いずれか1項記載の調製法。
【請求項12】
前記第3工程において,水素化ホウ素ナトリウムを,水中で,繰り返し多糖単位について計算して0.1〜10当量,5〜40℃の温度で,5〜10の範囲のpHで添加することを特徴とする請求項3〜11いずれか1項記載の調製法。
【請求項13】
増強された抗酸化効果を有する材料の調製のための請求項1又は2記載の誘導体の使用。
【請求項14】
前記多糖がヒアルロン酸である,抗がん作用を有する材料の調製のための請求項2記載の誘導体の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は,構造式X:
(式中,Rは−NH−CO−CH
3又は−OHを表す)
による,その構造内に4位及び5位の二重結合を有する複素環を含む多糖誘導体に関する。
【0002】
さらに,本発明は,構造断片Yを含む出発多糖からの前記式Xの誘導体の調製であって,その修飾が下記式に要約され得るものに関する。
(式中,Rは−NH−CO−CH
3又は−OHを表し,R
1は−SO
2−ONa,−SO
2−OH又は−Hを表し,炭素4の絶対配置がR又はSであり得る)。
【0003】
さらに,本発明は,天然の多糖類とは異なり増強された抗酸化性を示し,そしてそのいくつかはがん細胞の増殖を選択的に抑制する,これらの不飽和誘導体の使用に関する。
【0004】
発明の背景
一般式Yの多糖
多糖類は生物における広範囲にわたる機能,例えば構築, 貯蔵又は調節機能を有する。一般式Yの多糖も生物に天然に生じる高分子化合物に属する。
(式中,RはCH
3−CO−NH−又は−OHを表し,R
1は−SO
2−ONa,−SO
2−OH又は−Hを表す)。これは例えばコンドロイチン硫酸,デルマタン硫酸,カラギーナン,ケラタン硫酸又はヒアルロン酸を含む。
【0005】
コンドロイチン硫酸は,β(1→3)及びβ(1→4)O−グリコシド結合で互いに結合された繰り返しモノマー単位N−アセチル−D−ガラクトサミン及びD−グルクロン酸からなる線状の,硫酸化された,負に帯電したグリコサミノグリカンである(コンドロイチン硫酸の構造式を下記に示す)。
(式中,R
1は−H又は−Naであり,
R
2は−H,−SO
2−ONa又は−SO
2−OHである)。
【0006】
コンドロイチン硫酸は,動物の結合組織由来であり,タンパク質に結合され,従ってプロテオグリカンの一部を形成する。コンドロイチンの硫酸化は,様々な位置における様々なタイプによるスルホトランスフェラーゼにより実現される。ポリマー鎖における特定の位置における硫酸化の独特のパターンは,コンドロイチン硫酸の特定の生物学的活性をコード(encode)する。コンドロイチン硫酸は関節における軟骨の重要な構造ブロック(block)であり,それに対して圧縮強度を与え,関節滑液組成のバランスを回復させる(Baeurle S. A. a kol. Polymer 50, 1805, 2009)。
【0007】
デルマタン硫酸は,β(1→3)及びβ(1→4)O−グリコシド結合で互いに結合された繰り返しモノマー単位N−アセチル−D−ガラクトサミン及びL−イズロン酸からなる線状の,硫酸化され,かつ,負に帯電したグリコサミノグリカンである(デルマタン硫酸の構造式を下記に示す)。
(式中,
R
1は−H又は−Naであり,
R
2は−H,−SO
2−OH又は−SO
2−ONaである)。
【0008】
デルマタン硫酸はD−グルクロン酸のC5エピマーであるL−イズロン酸の存在によりコンドロイチン硫酸とは異なる。イズロン酸における逆の配置はより良好な柔軟性をデルマタン硫酸鎖に付与し,その周辺領域におけるそれらの特有のグリコサミノグリカン−タンパク質相互作用を確保する。これらの相互作用は,いくつかの細胞プロセス,例えば移動,増殖,分化又は血管形成の調節に寄与する。コンドロイチン硫酸のデルマタン硫酸への転化は,3つの酵素(すなわちデルマタン硫酸エピメラーゼ1(DS-epi1),デルマタン硫酸エピメラーゼ2(DS-epi2),及びデルマタン4-O-スルホトランスフェラーゼ(D4ST1))によって確保される(Thelin M., et al. FEBS Journal 280, 2431, 2013)。
【0009】
ケラタン硫酸は,β(1→3)及びβ(1→4)結合で結合されたD−ガラクトース,N−アセチルグルコサミン及びガラクトース−6−硫酸を含み、コンドロイチン硫酸に似た構造及び結合を有する線状の硫酸化された多糖類に属する。それは角膜,軟骨,硬骨及び結合組織に見出され得る(ケラタン硫酸の構造式は下記を参照)。
(式中,R
2は−H,−SO
2−OH又は−SO
2−ONaである)
【0010】
カラギーナンは,海産の紅藻(red sea algae)の抽出によって得られる線状の,硫酸化された多糖類群に属する。β(1→3)及びβ(1→4)O−グリコシド結合で互いに結合されたガラクトース及びその3,6-アンヒドロ誘導体がそれらの基本的な構造単位である。硫酸化度及び水溶性が異なるカラギーナンの3つの主要な群が存在する。κ‐カラギーナンは二量体中に1個の硫酸エステル基を有しており,水性環境で硬いゲルを形成する。ι−カラギーナンは2個の硫酸エステルを含んでおり軟かいゲルを形成し,一方,λ−カラギーナンは3個の硫酸エステルを有しており,ゲル化性を示さない。
【0011】
ヒアルロン酸は,D−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミンの二つの繰り返し単位からなる,硫酸化されていないグリコサミノグリカンである。
(式中,R
1はH又はNaである)。
【0012】
天然のヒアルロン酸の分子量は5×10
4〜5×10
6の範囲にある。この非常に親水性の高い多糖は結合組織,皮膚,関節滑液の一部であり,プロテオグリカンの構成,細胞水和及び分化のような多くの生物学的プロセスに重要な役割を果たす。このポリマーは体内に自然に生じるので,生物分解性であり,組織工学の分野における基材として,又は生物活性物質のキャリヤーとして有用である。
【0013】
多重結合を含む多糖類
糖環(saccharide cycle)の一部を形成し,鎖の端に位置していない−C=C−多重結合を有する多糖類は非常にまれである。一般的な多糖類の例として,セルロセン(cellulosenes)として知られているセルロースの5,6-不飽和誘導体 (Vigo T. L. et al. Polymers for Advanced Technologies, 10, 6, 311-320, 1999)又はそれらの2,3-不飽和類似体が記載されている。5,6-不飽和誘導体の調製方法は,エノールエーテルを生ずる,塩基性条件下における6位の脱離基と5位の水素原子との脱離反応に基づく (−C=C−多重結合はヘテロ環の酸素と結合している)。セルロース,アミロース又はキシランの2,3-不飽和誘導体の調製 (D. Horton et al. Carbohydrate Research, 40, 2, 345-352, 1975)は,普通のアルケン(多重結合と酸素の共役のない)を生産するために,脱離基の存在に加えて,還元剤,通常は亜鉛を必要とする。
【0014】
多重結合を含む多糖類の利用
その利用はほとんど糖環の直接の部分ではない−C=C−多重結合の修飾を目的とする。これらの方法はポリマー骨格への新しい物質の結合に基づき,そこではその構造が重大な方法で変化させられ,つまり,多糖の本来の性質が失われている。そのような場合,多重結合は,通常は重合(Bellini D. WO96/37519),付加(Khetan S. et al. Soft Matter, 5, 1601-1606, 2009)又は付加環化反応(Nimmo Ch. M. et al. Biomacromolecules, 12, 824-830, 2011; Bobula, T. et al. Carbohydrate. Polymers, 125, 153-160, 2015)に使用される。これらの方法は,多糖の有効な架橋(Collins M. N. et al. Carbohydrate Polymers, 92, 1262-1279, 2013; Hacker M. C. et al., Inter. J. of Mol. Sc., 16, 27677-706, 2015)と,該ポリマーへの活性物質の選択的結合(Mero A. et al. Polymers, 6, 346-369, 2014) の両方を導き得る。メタクリレート基の多重結合も,重合反応を行なうために非常によく使用される(Granstrom M. a kol. EP2899214)。
【0015】
−C=C−多重結合をポリマー鎖中の糖環に直接導入する方法は僅かしかない。それらのうちの一つは,リアーゼによるポリマーの酵素開裂であり,これは二重結合がポリマー,この場合にはヒアルロン酸の非還元末端に生じるものである(Kelly S. J. a kol. Glycobiology, 11, 4, 294-304, 2001) (下記式を参照)。
【0016】
これはこの修飾の発生が分子量に強く依存すること;例えば,4×10
4 の分子量については,100の二糖類のうちの1つだけが修飾され,分子量が4×10
5である場合,1000の二糖類のうちの1つが修飾されることを意味する。従って,多糖オリゴマーを除いて,このタイプの修飾はわずかであり,また,出発の及び結果として生じた高分子のポリマーの間の差は実質的にないことが明白である。
【0017】
第二の方法は,全鎖長に沿って多糖構造の4位及び5位に二重結合を組み込むことを可能にする。従って,より高い分子量を有するポリマーを効率的に修飾できる(Buffa R. et al. WO2014/023272, Bobula T. et al. Carbohydrate Polymers, 136, 1002-1009, 2016)。しかしながら,この方法では多重−C=C−結合が形成され,この結合は強い電子受容体であるアルデヒド基に直接結合する。この修飾は広い範囲の求核分子,通常はアミンの共有結合の形成を可能にするので,多糖類の化学的性質を著しく変更する。上記の事実はさらに,このように修飾されたポリマーが著しく高い求電子特性を有しており,従って天然のポリマーとは化学的に異なることを示唆する。さらに,それは非修飾ポリマーに比べて活性がより低い酸化防止剤と考えることもできる。
【0018】
本発明に記載した解決法はこれらの欠点をなくすことができる。即ち,非修飾ポリマーと比較して,修飾されたポリマーに反応性求電子基はない。逆に,ヘテロ環の酸素と結合した二重結合は,求核の(酸化防止剤の)性質を有する基と見なすことができる。
【0019】
発明の要約
本発明は,構造式X:
(式中,Rは−NH−CO−CH
3又は−OHを表す)
による,その構造内の4位と5位に二重結合を有する複素環を含む多糖の不飽和誘導体に関する。
【0020】
前記誘導体の分子量は5×10
3〜5×10
5の範囲にあり,出発多糖が,コンドロイチン硫酸,カラギーナン,デルマタン硫酸,ヒアルロン酸又はケラタン硫酸を含む群から選択されることが好ましい。
【0021】
さらに,本発明は,3つの工程に基づく調製法である(以下のスキームを参照のこと)
(式中,Rは−NH−CO−CH
3又は−OHを表し,R
1は−SO
2−ONa,−SO
2−OH又は−Hを表す)。
【0022】
1.酸化−糖環の6位にアルデヒド基を導入する
6位の第一級水酸基のアルデヒド基への酸化
この反応は,例えば水中における2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシルラジカルTEMPO/NaClO酸化システムによって行なうことができる。この工程は,好ましくは多糖の繰り返し単位につき0.03〜0.8当量のモル量のNaClO及び0.005〜0.2当量の範囲のモル量のTEMPOを用いて,水中で0〜10℃の温度で行なわれる。出発多糖は,5×10
3〜5×10
5の範囲の分子量を有することができ,好ましくは0.1〜8重量%の多糖水溶液が使用される。最後に,エタノール,チオ硫酸ナトリウム等をこの反応混合物に添加して反応を終了させ,そして未反応の試薬(次亜塩素酸塩)の残滓を除去し得る。さもなければ,この酸化はDMSO中,10℃〜50℃の温度で,1,1,1-トリアセトキシ-1,1-ジヒドロ-1,2-ベンズヨードキソール-3(1H)-オン(DMP)システムにより行なうことができ,ここでDMPの量は多糖の繰り返し単位につき0.05〜2当量の範囲である。
【0023】
2.脱離
2a. R
1=−Hの場合,水の脱離が行なわれる(脱水)
これは好ましくは水−有機媒体中で行うことができ,該有機溶媒は水混和性で,溶媒/水の体積比が3/1〜1/2の範囲にあるものである。好ましくは,ピリジン,トリエチルアミン又はN,N-ジイソプロピルエチルアミンのような塩基,又は無機塩基,例えばCa(OH)
2をこの工程で使用し得る。該反応における塩基の量は多糖の繰り返し単位に基づき0.01〜20当量,好ましくは5〜10当量である。有機溶媒として,水混和性の非プロトン性極性溶媒,好ましくはDMSO又はスルホランを使用し得る。酸化は,0.1〜12時間,好ましくは1〜4時間行なわれ;反応の第2工程は30〜80℃,好ましくは50〜60℃の温度で,12〜150時間,好ましくは20〜40時間行われる。
2b.R
1=−SO
2ONa又はSO
2−OHの場合には,各々NaO−SO
2−ONa又はHO−SO
2−ONaの脱離が行なわれる。環の4位の−OR
1基が5位の水素に関してアンチペリプラナー位置にある場合,脱離は,塩基の追加の必要なしに,及び反応温度を増加させる必要なしに自発的に進行する。工程1+2bの反応時間は,0.1〜12時間,好ましくは1〜4時間である。糖環の4位の−OR
1基が5位の水素に関してアンチペリプラナー位置にない場合,パート2aに記載した方法も有効な脱離に使用し得る。
【0024】
3.還元−糖環の4位及び5位の多重結合を維持しつつ,アルデヒド基をホウ化水素,好ましくはNaBH
4を用いて選択的に還元して第一級アルコール−CH
2OHを形成する。当業者は−CHOアルデヒド基(又はジェミナルジオール−CH(OH)
2)の還元に加えて−C=C−結合の還元を予測するであろうが,驚くべきことに,本発明による方法では−C=C−二重結合の還元は生じない。還元剤の量は,多糖の繰り返し単位につき0.1〜10当量,好ましくは0.3〜2当量の範囲であり得る。この反応は,5〜40℃の温度かつpH5〜10,好ましくは15〜25℃の温度かつpH6〜8の水中で1〜24時間行ない得る。出発アルデヒド溶液の濃度は好ましくは0.1〜8重量%である。
【0025】
上記の事実は,本発明による多糖誘導体の調製法は,出発多糖が(1→3)結合した糖環,6位の第一級−CH
2OH基及び4位の−OH,−SO
2−OH又は−SO
2ONa基を含む構造Y:
を含むことを要することを示唆している。2位の基は所定の修飾の成果の成功に重要ではなく;ほとんどの多糖についてRは−OH又は−NHCO−CH
3である。
【0026】
さらに,本発明は,一般式Xの多糖誘導体の使用に関する。上記のように,本発明に記載された解決法は,増強された求核性(抗酸化性)を有し,同時に5位から水素を脱離し4位から−OH,−O−SO
2−OH又は−O−SO
2−ONa基を脱離することにより引き起こされる多糖の一次構造の変化がほんの僅かである新しいタイプの多糖誘導体を提供する。これらの新規な誘導体の抗酸化性が,2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジルラジカルを用いる標準測定によって証明され,そこで本発明により調製された多糖不飽和誘導体と飽和(非修飾)類似化合物との間の顕著な違いが観察された。これが,本発明による誘導体が,例えば抗酸化効果を有する材料の調製に使用され得る理由である。
【0027】
さらに,ヒアルロン酸がその多糖である場合,その不飽和誘導体を抗がん作用を有する材料の調製に使用し得ることがわかった。調製された誘導体の生物学的特性をいくつかのがん細胞株について試験し,すべての場合に低下した生存率が観察され,一方,標準線維芽細胞の増殖は試験濃度の全範囲内において抑制されなかった。
【0028】
用語「多糖」は,構造単位Yを含む多糖,例えばヒアルロン酸,カラギーナン,デルマタン硫酸,ケラタン硫酸もしくはコンドロイチン硫酸,又はその薬学的に許容され得る塩を表す。
【0029】
用語「薬学的に許容され得る塩」は,生体内の使用にとって安全かつ有効であり,かつ所望の生物活性を有する塩を表す。薬学的に許容され得る塩は,好ましくはアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオン,より好ましくは,Na
+,K
+,Mg
+又はLi
+を含む。
【0030】
この発明に記載した解決法の実現は技術的に複雑ではなく,高価な化学薬品,溶剤又は単離処理の使用を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
無し
【0032】
図面の詳細な説明
図1−実施例25により調製されたΔHAの細胞の生存率に対する効果
この図は,NHDF-初代ヒト皮膚線維芽細胞の抑制と比較した,MDA-MB-231−乳腺がん,A-549−肺腺がん,HEP-G2−肝細胞がんのがん細胞の増殖抑制の変化を示す。その方法は実施例27に述べられている。
図2−非修飾多糖HA,CS及び標準の−トロロックス−6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボキシル酸と比較したΔHA及びΔCS材料の抗酸化性
HA−ヒアルロン酸
ΔHA−4位及び5位が脱水されたヒアルロン酸(実施例22)
CS−コンドロイチン硫酸
ΔCS−4位及び5位が脱水されたコンドロイチン硫酸(実施例2)
2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DTTH)を用いて実施例23に記載された方法により試験された。
統計的有意差t検定 −*p<0.05;** p<0.01;*** p<0.001
【0033】
本発明の好ましい実施態様
DS =置換度= 100% *(修飾された糖単位のモル量)/(多糖の繰り返し単位のモル量)
ここに使用される当量(eq.)の用語は,特記しない限り特定の多糖類の繰り返し単位に関するものである。パーセンテージは特記しない限り重量パーセントとして記載している。
出発多糖の分子量は,SECMALLS方法によって決定した重量平均分子量である。
【0034】
実施例1
コンドロイチン硫酸(CS)の酸化及び脱離=α,β-不飽和CSアルデヒドの調製
5℃に冷却された,リン酸水素二ナトリウム・十二水和物(2.2当量),臭化ナトリウム(0.8当量)及び4-AcNH-TEMPO(0.01当量)を含むCS(200mg,Mw=4×10
4)の2%水溶液に,次亜塩素酸ナトリウム溶液(0.8当量,活性塩素11%)を徐々に添加した。その混合物を5℃の温度で2時間撹拌した。その後,エタノール(10当量)を該反応(the reaction)に添加し,該反応を室温でさらに1時間撹拌した。その生成物をIPAを用いた沈殿により単離し,NMRによって分析した。
D=23%(NMRにより決定した)
【0035】
実施例2
α,β-不飽和CSアルデヒドの還元=ΔCSの調製
蒸留水中のα,β−不飽和CSアルデヒド(200mg,0.5mmol) の2w/v%溶液を調製し,その溶液を5℃に冷却し,その後水素化ホウ素ナトリウム2当量を添加した。その反応混合物を5℃で4時間撹拌した。その生成物をイソプロパノールを用いた沈殿によって単離し,NMRによって分析した。
DS=25%(NMRにより決定した)
ΔCSのスペクトル分析: NMR
1H (500 MHz, D
2O, δ ppm): 2.02 及び2.04 (3H; Ac-NH-; bs); 4.03 (2H; H6; bs); 4.22 (1H; H2; bs); 4.26 (1H; H3; bs); 5.06 (1H; H1; bs); 5.18 (1H; H4; bs); NMR
1H-
1H COSY (D
2O);クロスピーク; δ ppm: 4.22-5.06; 4.26-5.18; NMR
1H-
13C HSQC (D
2O); クロスピーク; δ ppm: 4.03-61.0; 4.22-50.5; 4.26-73.4; 5.06-98.3; 5.18-98.9; NMR DOSY (D
2O); log D ((2.02 及び2.04; Ac-NH-); (4.03; H6); (4.22; H2); (4.26; H3); (5.06; H4); (5.18; H1)) 〜 -10.4 m
2s
-1; log D (4.72; H
2O) 〜 -8;6 m
2s
-1; IR (KBr; cm
-1): 1660 (ν-C=C- st);
【0036】
実施例3
デルマタン硫酸(DeS)の酸化及び脱離=α,β−不飽和DeSアルデヒドの調製
5℃に冷却された,リン酸水素二ナトリウム・十二水和物(2.2当量),臭化ナトリウム(0.8当量)及び4-AcNH-TEMPO(0.01当量)を含むDeS(200mg,0.42mmol)の2%水溶液に,次亜塩素酸ナトリウム(0.8当量,活性塩素11%)の水溶液を徐々に添加し,その混合物を5℃で2時間撹拌した。その後,エタノール(10当量)を該反応に添加し,該反応を室温でさらに一時間撹拌した。その生成物をIPAを用いた沈殿によって単離し,NMRによって分析した。
DS=20%(NMRにより決定した)
【0037】
実施例4
α,β−不飽和デルマタン硫酸アルデヒドの還元=ΔDeSの調製
蒸留水中のα,β−不飽和DeSアルデヒド(200mg,0.5mmol)の2w/v%溶液を調製した。該溶液を5℃に冷却し,その後,水素化ホウ素ナトリウム(DeS二糖につき2当量)を添加した。その反応混合物を5℃で4時間撹拌した。その生成物をイソプロパノールを用いた沈殿によって単離し,NMRによって分析した。
DS=23%(NMRにより決定した)
ΔDeSのスペクトル分析:NMR
1H (500 MHz, D
2O, δ ppm):2.01 (3H, Ac-NH-, bs), 5.05 (1H, H1, bs), 5.17 (1H, H1, bs)
【0038】
実施例5
カラギーナン(KA)の酸化及び脱離=α,β- 不飽和KAアルデヒドの調製
10℃に冷却された,リン酸水素二ナトリウム・十二水和物(2.2当量),臭化ナトリウム(0.8当量)及び4-AcNH-TEMPO(0.01当量)を含むKA(200mg,0.31mmol)の1%水溶液に,次亜塩素酸ナトリウム(0.8当量,活性塩素11%)の水溶液を徐々に添加した。その混合物を10℃で2時間撹拌した。その後,エタノール(10当量)を該反応に添加し,該反応を室温でさらに1時間撹拌した。その生成物をIPAを用いた沈殿によって単離し,NMRによって分析した。
DS=10%(NMRにより決定した)
【0039】
実施例6
α,β−不飽和のカラギーナンアルデヒドの還元=ΔKAの調製
蒸留水中のα,β -不飽和のKAアルデヒド(200mg,0.5mmol)の2w/v%の溶液を調製した。該溶液を5℃に冷却し,その後,水素化ホウ素ナトリウム(KA二糖につき2当量)を添加した。この反応混合物を5℃で4時間撹拌した。その生成物をイソプロパノールを用いた沈殿によって単離し,NMRによって分析した。
DS=13%(NMRにより決定した)
NMR
1H (500 MHz, D
2O, δ ppm): 5.07 (1H, H1, bs), 5.18 (1H, H1, bs)
【0040】
実施例7
ケラタン硫酸(KS)の酸化=KSアルデヒドの調製
NaClO(0.3当量)の水溶液を,NaCl1%,KBr1%,TEMPO(0.01当量)及びNaHCO
3(20当量)を含むKS(1g,Mw=2×10
4)の1%水溶液に窒素下で徐々に添加した。その混合物を0℃で24時間撹拌し,その後,0.1gのチオ硫酸ナトリウムを添加し,その混合物をさらに10分間撹拌した。結果として生じた溶液を蒸留水で0.2%まで希釈し,5リットル(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO
3)の混合物に対して3回(1日1回),及び5リットルの蒸留水に対して7回(1日2回)透析した。その後,結果として生じた溶液を蒸発させ分析した。
DS=3%(NMRにより決定した)
【0041】
実施例8
KSアルデヒドの脱離=α,β−不飽和KSアルデヒド=調製
6.7mlのDMSO及びDIPEA塩基(5当量)を,水中の3%KSアルデヒド溶液(0.1g,DSの酸化度(oxidation degree of DS)=3%,実施例7)に添加した。その混合物を60℃の温度で72時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液をイソプロパノール/ヘキサン混合物によって沈殿させ,固体部分を真空乾燥した。
DS=2%(NMRにより決定した)
1H NMR (D
2O) δ 9.22 (s, 1H, -CH=O), 6.32 (m, 1H, -CH=C-CH=O)
【0042】
実施例9
α,β−不飽和KSアルデヒドの還元=ΔKSの調製
水素化ホウ素ナトリウム(2当量)を蒸留水中のα,β−不飽和KSアルデヒド(200mg,実施例8)の2%溶液に添加した。その反応混合物を5℃で3時間撹拌し,その後,イソプロパノールで沈殿させ,NMRによって分析した。
DS=2%(NMRにより決定した)
1H NMR (D
2O) 5.05 (1H, H1, bs), 5.17 (1H, H4, bs)
【0043】
実施例10
ヒアルロン酸(HA)の酸化=HA−アルデヒドの調製
NaClO(0.5当量)の水溶液を,NaCl1%,KBr1%,TEMPO(0.01当量)及びNaHCO
3(20当量)を含むHA(1g,Mw=2×10
5)の1%水溶液に窒素下で徐々に添加した。その混合物を0℃で12時間撹拌し,その後,0.5mlのエタノールを添加し,その混合物をさらに1時間撹拌した。結果として生じた溶液を蒸留水で0.2%まで希釈し,5リットル(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO
3)の混合物に対して3回(1日1回),及び5リットルの蒸留水に対して7回(1日2回)透析した。その後,結果として生じた溶液を蒸発させ分析した。
DS=10%(NMRにより決定した)
【0044】
実施例11
HAの酸化=HA−アルデヒドの調製
NaClO(0.5当量)の水溶液を,NaCl1%,KBr1%,N−アセチルアミノ−TEMPO(0.01当量)及びNaHCO
3(20当量)を含むHA(1g,Mw=2×10
5)の1%水溶液に窒素下で徐々に添加した。その混合物を10℃で12時間撹拌し,その後,0.1mlのエタノールを添加し,その混合物をさらに1時間撹拌した。結果として生じた溶液を蒸留水で0.2%まで希釈し,5リットル(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO
3)の混合物に対して3回(1日1回),及び5リットルの蒸留水に対して7回(1日2回)透析した。その後,結果として生じた溶液を蒸発させ分析した。
DS=9%(NMRにより決定した)
【0045】
実施例12
HAの酸化=HA−アルデヒドの調製
NaClO(0.3当量)の水溶液を,NaCl1%,KBr1%,TEMPO(0.2当量)及びNaHCO
3(20当量)を含むHA(1g,Mw=2×10
5)の1%水溶液に窒素下で徐々に添加した。その混合物を5℃で48時間撹拌し,その後,0.1mlのエタノールを添加し,その混合物をさらに1時間撹拌した。結果として生じた溶液を蒸留水で0.2%まで希釈し,5リットル(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO
3)の混合物に対して3回(1日1回),及び5リットルの蒸留水に対して7回(1日2回)透析した。その後,結果として生じた溶液を蒸発させ分析した。
DS=5%(NMRにより決定した)
【0046】
実施例13
ヒアルロン酸(HA)の酸化=HA−アルデヒドの調製
NaClO(0.7当量)の水溶液を,NaCl1%,KBr1%,TEMPO(0.01当量)及びNaHCO
3(20当量)を含むHA(1g,Mw=2×10
5)の1%水溶液に窒素下で徐々に添加した。その混合物を0℃で0.5時間撹拌し,その後,0.1mlのエタノールを添加し,その混合物をさらに1時間撹拌した。結果として生じた溶液を蒸留水で0.2%まで希釈し,5リットル(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO
3)の混合物に対して3回(1日1回),及び5リットルの蒸留水に対して7回(1日2回)透析した。その後,結果として生じた溶液を蒸発させ分析した。
DS=9%(NMRにより決定した)
【0047】
実施例14
ヒアルロン酸(HA)の酸化=HA−アルデヒドの調製
NaClO(0.5当量)の水溶液を,NaCl1%,KBr1%,TEMPO(0.01当量)及びNaHCO
3(20当量)を含むHA(1g,Mw=2×10
5)の1%水溶液に窒素下で徐々に添加した。その混合物を0℃で12時間撹拌し,その後,0.1mlのエタノールを添加し,その混合物をさらに1時間撹拌した。結果として生じた溶液を蒸留水で0.2%まで希釈し,5リットル(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO
3)の混合物に対して3回(1日1回),及び5リットルの蒸留水に対して7回(1日2回)透析した。その後,結果として生じた溶液を蒸発させ分析した。
DS=10%(NMRにより決定した)
【0048】
実施例15
ヒアルロン酸(HA)の酸化=HAアルデヒドの調製
1,1,1-トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール-3(1H)-オン(デス・マーチンペルヨージナン)1.2当量を1%の酸型ヒアルロナン(1g,Mw=1×10
5)の無水(non-aqueous)DMSO溶液に添加し,この混合物を20℃で5時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液を蒸留水で0.2%まで希釈し,5リットルの(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO
3)の混合物に対して3回(1日1回),及び5リットルの蒸留水に対して7回(1日2回)透析した。その後,結果として生じた溶液を蒸発させ分析した。
DS=40%(NMRにより決定した)
【0049】
実施例16
HA−アルデヒドの脱離=α,β−不飽和HAアルデヒドの調製
6.7mlのDMSO及びDIPEA塩基(5当量)を,3%のHA−アルデヒド(0.1g,酸化度DS(oxidation degree DS)=40%,実施例15)の水溶液に添加した。その混合物を60℃で72時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液をイソプロパノール/ヘキサン混合物によって沈殿させ,固体部分を真空乾燥した。
DS=20%(NMRにより決定した)
1H NMR (D
2O) δ 9.24 (s, 1H, -CH=O), 6.32 (m, 1H, -CH=C-CH=O)
UV-Vis (D
2O) 252 nm, π-π* 遷移 α,β-不飽和アルデヒド
【0050】
実施例17
HA−アルデヒドの脱離=α,β−不飽和HAアルデヒドの調製
6.7mlのDMSO及びトリエチルアミン塩基(20当量)を,3%のHA−アルデヒド(0.1g,酸化度DS=10%,実施例10)の水溶液に添加した。その混合物を30℃で150時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液をイソプロパノール/ヘキサン混合物によって沈殿させ,固体部分を真空乾燥した。
DS=5%(NMRにより決定した)
【0051】
実施例18
HA−アルデヒドの脱離=α,β−不飽和HAアルデヒドの調製
6.7mlのDMSO及びピリジン塩基(0.01当量)を,3%のHA−アルデヒド(0.1g,酸化度DS=10%,実施例10)の水溶液に添加した。その混合物を80℃で12時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液をイソプロパノール/ヘキサン混合物によって沈殿させ,固体部分を真空乾燥した。
DS=3%(NMRにより決定した)
【0052】
実施例19
HA−アルデヒドの脱離=α,β−不飽和HAアルデヒドの調製
1.7mlのDMSO及びピリジン塩基(10当量)を,3%のHA−アルデヒド(0.1g,酸化度DS=10%,実施例10)の水溶液に添加した。その混合物を60℃で48時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液をイソプロパノール/ヘキサン混合物によって沈殿させ,固体部分を真空乾燥した。
DS=4%(NMRにより決定した)
【0053】
実施例20
HA−アルデヒドの脱離=α,β−不飽和HAアルデヒドの調製
10mlのDMSO及びDIPEA塩基(5当量)を,3%のHA−アルデヒド(0.1g,酸化度DS=10%,実施例10)の水溶液に添加した。その混合物を60℃で48時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液をイソプロパノール/ヘキサン混合物によって沈殿させ,固体部分を真空乾燥した。
DS=5%(NMRにより決定した)
【0054】
実施例21
HA−アルデヒドの脱離=α,β−不飽和HAアルデヒドの調製
6.7mlのスルホラン及びDIPEA塩基(5当量)を,3%のHA−アルデヒド(0.1g,酸化度DS=10%,実施例10)の水溶液に添加した。その混合物を50℃で72時間撹拌した。その後,結果として生じた溶液をイソプロパノール/ヘキサン混合物によって沈殿させ,固体部分を真空乾燥した。
DS=5%(NMRにより決定した)
【0055】
実施例22
α,β−不飽和HAアルデヒドの還元=ΔHAの調製
水素化ホウ素ナトリウム(10 当量)を,5℃の,2%のα,β−不飽和HAアルデヒド(200mg,実施例16)の蒸留水溶液に添加した。この反応混合物を5℃で1時間撹拌し,その後,イソプロパノールで沈殿させ,NMRによって分析した。
DS=20%(NMRにより決定した)
1H NMR (D
2O) 5.06 (1H, H1, bs), 5.17 (1H, H1, bs)
【0056】
実施例23
α,β−不飽和HAアルデヒドの還元=ΔHAの調製
水素化ホウ素ナトリウム(0.1 当量)を,5℃の,2%のα,β−不飽和HAアルデヒド(200mg,実施例17)の蒸留水溶液に添加した。この反応混合物を5℃で20時間撹拌し,その後,イソプロパノールで沈殿させ,NMRによって分析した。
DS=4%(NMRにより決定した)
【0057】
実施例24
α,β−不飽和HAアルデヒドの還元=ΔHAの調製
水素化ホウ素ナトリウム(1当量)を,40℃の,2%のα,β−不飽和HAアルデヒド(200mg,実施例17)の蒸留水溶液に添加した。この反応混合物を40℃で1時間撹拌し,その後,イソプロパノールで沈殿させ,NMRによって分析した。
DS=5%(NMRにより決定した)。
【0058】
実施例25
α,β−不飽和HAアルデヒドの還元=ΔHAの調製
水素化ホウ素ナトリウム(2当量)を,20℃の,2%のα,β−不飽和HAアルデヒド(200mg,実施例17)の蒸留水溶液に添加した。この反応混合物を20℃で4時間撹拌し,その後,イソプロパノールで沈殿させ,NMRによって分析した。
DS=5%(NMRにより決定した)。
【0059】
実施例26
酸化活性の測定(
図2)
実施例22によって調製したΔHA多糖類と実施例2によって調製したΔCSの抗酸化力を安定なフリーラジカルである2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)によって測定した。この測定は, Brand-Williams W. et al.の「LWT- Food Science and Technology」(28, 1, 25-30, 1995)の記載に基づき,マイナーな修正を加えて行った。簡潔に述べると,0.01%のDPPHメタノール溶液100μLを,50mMのTris(pH7.1)に溶解した試験物質100μLに添加した。15分後に吸光度の減少を515nmで測定した。トロロックス(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボキシル酸)をポジティブコントロールとして使用した。データは3つの独立した実験で測定した。t検定を統計的有意差の評価に使用した*p<0.05,** p<0.01,*** p<0.001(
図2)。
【0060】
実施例27
実施例25によって調製した誘導体の細胞毒性の試験(
図1)
該HA誘導体の細胞毒性効果を,非がん細胞−初代ヒト皮膚繊維芽細胞について,そして乳がん細胞株(MDA−MB−231),肺がん細胞株(A−549)及び肝細胞がん細胞株(HEP−G2)について比較した。実験の目的で,細胞を適切な培地(10%FBS−ウシ胎児血清)中で標準条件(37℃,5%CO
2)下で培養した。80%コンフルエントに達した後に,細胞を継代し,自動カウンターCASY TT,Rocheにより測定し,培地200μl中96ウェルパネルに各ウェル細胞5000個の密度で入れた。24時間後,培地を濃度1,000;500;100;及び10μg/mLの試験物質の10%培地溶液に替えた。細胞の生存率を処理後24,48及び72時間後にMTT試験により測定した−20μLのMTT溶液(5mg/mL)を各ウェルに添加し,続いて2.5時間のインキュベーション及び30分間の可溶化溶液(IPA:DMSO 1:1 s10%のTriton X-100及び9.9% 37%HCl)による細胞溶解を行った。その後,吸光度を570nm及び690nm(バックグラウンド補正)でマイクロプレートリーダVERSAmaxによって測定した。処理された細胞の生存率を
図1中の0に相当する未処理のコントロールとの相関によって評価した。0より高い値は,細胞活性化(誘導体の細胞毒性がないこと)を表し,0より低い値は,細胞の生存率が減少していること(即ち誘導体の細胞毒性効果)を示す。NHDFの場合に,試験誘導体に細胞毒性がなかったことが
図1において明らかである。がん細胞株(MDA−MB−231,A−549,HEP−G2)の場合に,誘導体の細胞毒性が観察された。示された試験の結果に基づいて,誘導体の潜在的ながん治療効果を推定できる(
図1)。