特許第6982350号(P6982350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6982350
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】構造物用免震支承装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20211206BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20211206BHJP
   F16F 3/12 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   F16F15/04 B
   E04H9/02 331A
   F16F3/12 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-85352(P2021-85352)
(22)【出願日】2021年5月20日
【審査請求日】2021年7月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518160414
【氏名又は名称】小山 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100199668
【弁理士】
【氏名又は名称】林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】小山 和男
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−238160(JP,A)
【文献】 特開2002−188319(JP,A)
【文献】 特開2001−164584(JP,A)
【文献】 特開昭63−225739(JP,A)
【文献】 特開平02−043431(JP,A)
【文献】 特開平02−101242(JP,A)
【文献】 特開平09−264079(JP,A)
【文献】 特開平11−117572(JP,A)
【文献】 特開2004−251000(JP,A)
【文献】 特開2004−251060(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3030228(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04−15/073
E04H 9/02
E04B 1/36
F16F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の対向位置に配設された上下連結フランジ体と、前記上下連結フランジ体間に配設されたゴムブロック体と、前記上下連結フランジ体間の鉛直方向に沿った向きに配設され且つ前記ゴムブロック体に埋設されたコイルスプリングと、前記上下連結フランジ体を両端部が貫通し鉛直方向に沿った向きに配設され且つ前記ゴムブロック体に埋設されたアンカーボルトと、前記ゴムブロック体の外周を囲繞する囲繞部材とからなり、前記ゴムブロック体が円柱形状に形成され、前記コイルスプリングが前記ゴムブロック体の円中心部に埋設された主コイルスプリングと、前記主コイルスプリングの円中心から前記ゴムブロック体の外周縁方向に向かう方向の前記主コイルスプリングより外側の同心円線上に複数埋設された副コイルスプリングとで構成され、前記アンカーボルトが前記コイルスプリングの円中心に埋設されていることを特徴とする構造物用免震支承装置。
【請求項2】
前記アンカーボルトの両端部近傍所要位置に前記ゴムブロック体を鉛直方向の下向きに圧縮する荷重に対抗する圧縮ストッパー部を有することを特徴とする請求項1に記載の構造物用免震支承装置。
【請求項3】
前記アンカーボルトの両端部近傍所要位置に、前記ゴムブロック体を鉛直方向の上向きに引張る荷重に対抗する引張ストッパーを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構造物用免震支承装置。
【請求項4】
前記副コイルスプリングの本数が、8本以上の4の倍数本である請求項1に記載の構造物用免震支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物など構造物の上部構造と下部構造との間に設置される構造物用免震支承装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルなどの建築物において、地震などの揺れを抑制する免震支承装置として最も多く用いられているのは、積層ゴム支承である。積層ゴム支承は、軟質層としての薄いゴム層と、硬質層としての薄い鋼板とを交互に複数枚重ね、加硫接着で一体に形成されたもので、鉛直方向の下向きに圧縮する力に対しては建築物の大きな荷重を支える剛性と耐力を持ち、水平方向に作用する荷重に対しては積層ゴムの撓み性で地震の水平方向の入力加速度を減少させ構造物の振動を緩和することができる。
【0003】
ところが、積層ゴム支承は、地震入力加速度を低減するが振動エネルギー吸収能力が低い為に、振動が鎮まるまでに長時間を要することから、別途配された弾塑性ダンパーや、粘弾性ダンパー、摩擦ダンパーなどの減衰機器を併用することで振動エネルギーを吸収させ、建物の揺れを速やかに減少させる構成であり、一定の配置スペースが必要となる問題があった。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1には、積層ゴム支承に柱状鉛を密に配し、積層ゴム支承自体に減衰性能を付与し、上述した別途配する減衰機器を省略し、配置スペースを節約する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−105441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の積層ゴム支承では、鉛直方向の下向きに向けた圧縮荷重に対しては高い耐久性を示し高荷重を支持することが可能であるが、鉛直方向の上向きに向けた引張り荷重に対しては、下向きと比較して耐久性が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、構造物用免震支承単体で、地震の振動エネルギーの減衰性能と水平方向の入力加速度を低減する性能とを併せ持ち、さらに、鉛直方向の上下に向けた圧縮荷重及び引張り荷重に対する十分な耐久性をも有する構造物用免震支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。詳述するならば、鉛直方向の上下端部に対向位置し、上部構造体と下部構造体に連結する鋼板から成る上下連結フランジ体と、前記上下連結フランジ体間に配設されたゴムブロック体と、前記上下連結フランジ体間の鉛直方向に沿った向きに配設され且つ前記ゴムブロック体に埋設されたコイルスプリングと、前記上下連結フランジ体を両端部が貫通し鉛直方向に沿った向きに配設され且つ前記ゴムブロック体に埋設されたアンカーボルトと、前記ゴムブロック体の外周を囲繞する囲繞部材とを有する構成が含まれる。
【0009】
本発明の構造物用免震支承装置は、水平方向の入力加速度を低減する弾性材料となるゴムブロック体と、地震の振動エネルギーの減衰性能を有するコイルスプリング及びアンカーボルトとを有する構成であるために構造物用免震支承単体で使用可能であり設置空間の削減が期待できる。
【0010】
また、本発明には、前記ゴムブロック体が円柱形状に形成され、前記コイルスプリングが前記ゴムブロック体の円中心部に埋設された主コイルスプリングと、前記主コイルスプリングの円中心から前記ゴムブロック体の外周縁方向に向かう方向の前記主コイルスプリングより外側の仮想同心円線上に円中心を配設する位置に複数埋設されている副コイルスプリングとで構成され、前記アンカーボルトは前記副コイルスプリングの円中心に埋設されている構成が含まれる。
【0011】
本発明の構造物用免震支承装置は、地震の振動エネルギーの減衰性能を有するコイルスプリング及びアンカーボルトを、地震の入力加速度を低減する弾性材料となるゴムブロック体の所要箇所に分散配置することで、構造物用免震支承装置の中心部や外側縁部など部位毎の性能差が少なくなる効果が期待できる。
【0012】
本発明には、前記アンカーボルトの両端部近傍であって前記上下連結フランジ体よりも前記ゴムブロック体側となる鉛直方向の内側所要位置に、前記ゴムブロック体を鉛直方向の下向きに向けて圧縮する荷重に対抗する圧縮ストッパーナットと圧縮ストッパープレートを有する構成が含まれる。
【0013】
本発明の構造物用免震支承装置は、アンカーボルトの両端部近傍に圧縮ストッパーナットと圧縮ストッパープレートを配設することで、鉛直方向の下向きに向けた圧縮荷重に対抗する機能として、アンカーボルトが作用する。
【0014】
本発明には、前記アンカーボルトの両端部近傍であって前記上下連結フランジ体よりも前記ゴムブロック体と反対側となる鉛直方向の外側所要位置に、前記ゴムブロック体を鉛直方向の上向きに向けて引張る荷重に対抗する引張ストッパーナットを有する構成が含まれる。
【0015】
本発明の構造物用免震支承装置は、アンカーボルトの両端部近傍に引張ストッパーナットを設けることで、鉛直方向の上向きに向けた引張り荷重と水平方向の荷重に対抗する機能としてアンカーボルトが作用する。
【0016】
本発明には、前記主コイルスプリングの円中心から前記ゴムブロック体の外周縁方向に向かう方向の前記主コイルスプリングの外周より外側の仮想同心円線上の周方向等間隔を開けた位置に、円中心を配設し埋設されている前記副コイルスプリングが、8本以上で4の倍数本有する構成が含まれる。
【0017】
本発明の構造物用免震支承装置は、円柱形状に形成されたゴムブロック体の平面視において円中心部に主コイルスプリングを埋設し、主コイルスプリングの外側位置であって主コイルスプリングの仮想同心円線上の周方向等間隔を開けた位置に、円中心を配設する副コイルスプリングを8本以上で4の倍数本埋設することで、地震による振動エネルギーの入力方向による影響が少なく、いずれの方向からの入力に対しても略同様の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構造物用免震支承装置は、単体で地震の振動エネルギーの減衰性能と入力加速度を低減させる性能とを併せ持ち、さらに、鉛直方向の上下方向に向けた圧縮荷重及び引張り荷重に対抗する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る構造物用免震支承装置の実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る構造物用免震支承装置の実施形態を示す平面図である。
図3】本発明の構造物用免震支承装置と、それを備える建造物の構造を模式的に示す一部断面図である。
図4図2に係る構造物用免震支承装置の他の実施形態を示す平面図である。
図5図1に係る構造物用免震支承装置の作用説明図である。
図6図6は、図1のB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。ただし、図面は模式的に図示しており、実際の寸法や比率等とは必ずしも一致しない。また、図面相互間において、お互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることがある。
【0021】
(第1実施形態)
図2に示されるのは、本発明に係る構造物用免震支承装置1を示す平面図、図1図2のA−A線断面図、図3は構造物用免震支承装置1とそれを備える建造物100の構造を模式的に示す一部断面図である。
【0022】
構造物用免震支承装置1は、鉛直方向の上下端部に対向配置され上部構造体101と下部構造体201に連結する上下連結フランジ体2,3と、上連結フランジ体2と下連結フランジ体3との間に配設されたゴムブロック体4と、上下連結フランジ体2,3間の鉛直方向に沿った向きに配設され且つゴムブロック体4に埋設された主コイルスプリング5及び副コイルスプリング7と、上下連結フランジ体2,3を両端部が貫通し鉛直方向に沿った向きに配設され且つゴムブロック体4に埋設されたアンカーボルト6と、ゴムブロック体4の外周にゴムブロック体4の外周を囲繞する囲繞部材8を備えている。
【0023】
ゴムブロック体4は円柱形状に形成され、主コイルスプリング5はゴムブロック体4の円中心部にスプリング径の中心を配した位置に埋設されている。副コイルスプリング7は、平面視において主コイルスプリング5の外径よりも大きな直径の仮想同心円線301の上に、スプリング径中心を配する位置に周方向に等間隔を開けて8本埋設されている。さらに、仮想同心円線301より外側に位置する仮想同心円線302の上に、スプリング径中心を配する位置に周方向に等間隔を開けて副コイルスプリング7が12本埋設されている。
【0024】
図1図2及び図6に示されるようにアンカーボルト6は、20本の副コイルスプリング7の円中心に其々配され、且つゴムブロック体4に埋設されている。また、アンカーボルト6の両端部は雄ねじ部6Aが刻設され、上下連結フランジ体2,3よりもゴムブロック体4側となる鉛直方向の内側所要位置に圧縮ストッパーナット9が螺合され、さらに圧縮ストッパープレート10が挿入されゴムブロック体4に埋設されている。圧縮ストッパープレート10は、アンカーボルト6の外径よりもやや内径が大きな貫通孔13を有し、圧縮ストッパーナット9側と逆の面は、上下連結フランジ体2,3に当接する位置に埋設されている。
【0025】
上下連結フランジ体2,3は、平面視において円形の鋼板で形成され、円中心位置のゴムブロック体4側の所要位置に、主コイルスプリング5の端部を収納可能となる主スプリング用凹部14が凹設され、さらに、ゴムブロック体4の材料となるゴム材を圧入する場合の圧入用貫通孔15が主スプリング用凹部14に連設されている。
【0026】
また、上下連結フランジ体2,3の仮想同心円線301,302上の周方向に等間隔を開けた所要位置に、アンカーボルト6の外径よりもやや内径が大きなアンカーボルト用貫通孔16が形成されている。さらに、上下連結フランジ体2,3の鉛直方向外側所要位置にアンカーボルト用貫通孔16と連設され引張ストッパーナット11が螺着可能となる所用寸法の座グリ部12が刻設されている。
【0027】
引張ストッパーナット11は、座グリ部12から側面視において鉛直方向の上下外側に突出したアンカーボルト6の両端に螺着されている。加えて、上部構造体101と下部構造体201に連結する連結孔17が、上下連結フランジ体2,3の平面視においての外縁部近傍所要位置に貫設されている。
【0028】
ゴムブロック体4の外周を囲繞する囲繞部材8は、鉛直方向の下向きに荷重が掛かってゴムブロック体4が外側に膨張するのを防止する目的の物であり、その構成は化学繊維若しくはスチール繊維などを、耐候性を有するゴム材料に包含させて膜状に形成すればよい。
【0029】
本発明の構造物用免震支承装置1を構成するゴムブロック体4は、例えば、天然ゴム、シリコンゴム、高減衰ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴムなどを用いることができる。また、上下連結フランジ体2,3は、鋼板等金属製板を適宜選択して用いることができる。
【0030】
本発明の構造物用免震支承装置1を製造するには、まず、型内に下連結フランジ体3、主コイルスプリング5、圧縮ストッパーナット9が螺合されたアンカーボルト6、圧縮ストッパープレート10、囲繞部材8、副コイルスプリング7、上連結フランジ体2を配設し、弾性体の素材となる材料をセット後加圧下での加硫接着によって形成すると良い。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明は省略する。図4に示されるのは、本発明に係る構造物用免震支承装置1であり、建造物100の荷重が第1実施形態の場合より大きい、例えば、高層マンションなどの建造物100に使用する場合の実施形態である。
【0032】
本実施形態に係る構造物用免震支承装置1は、ゴムブロック体4の直径を第1実施形態の場合より大きく形成し、副コイルスプリング7とアンカーボルト6とを埋設する仮想同心円線301,302,303を3重として形成されている。また、仮想同心円線301上の周方向に等間隔を開けた所要位置に副コイルスプリング7を8本と、アンカーボルト6を8本とが埋設され、仮想同心円線302上の周方向に等間隔を開けた所要位置に副コイルスプリング7を12本と、アンカーボルト6を12本とが埋設され、仮想同心円線303上の周方向に等間隔を開けた所要位置に副コイルスプリング7を16本と、アンカーボルト6を16本とが埋設されている。
【0033】
次に、上述した構造物用免震支承装置1の作用を図3及び図5を参照して説明する。建造物100の荷重Aは、構造物用免震支承装置1を介して下部構造体201に伝達される。下部構造体201に地震の水平応力Cが入力すると、下部構造体201と上部構造体101が水平方向に変位し、構造物用免震支承装置1は弾性せん断変形し入力周期を変調し免震作用をなす。
【0034】
また、上述した構造物用免震支承装置1の弾性せん断変形時において、主コイルスプリング5、副コイルスプリング7、及びアンカーボルト6も変形追従し減衰作用が得られる。さらに、構造物用免震支承装置1の建造物100に対する配置場所により、鉛直方向の上向きの応力Bが作用すると、アンカーボルト6と引張ストッパーナット11と圧縮ストッパーナット9と圧縮ストッパープレート10とで対抗力を発生する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
【0036】
本発明の構造物用免震支承装置1のアンカーボルト6の変位を、以下の条件で確認した。
使用する構造物用免震支承装置1は、図4に示す第2実施形態に係る構造物用免震支承装置1の構成とし、建造物100は、RC構造の地上11階建てとし、1階層の標準的な単位面積当たりの荷重は12.5kN/m、構造物用免震支承装置1を配設する柱の間隔を8.00m×8.00mとした時の、構造物用免震支承装置1に掛かる軸力Nは以下の計算で算出できる。
N=12.5kN/m×8.00m×8.00m×11.5階
=9200kN
【0037】
次に、構造物用免震支承装置1の効果により、建造物100に対するせん断力が60%に低減されると、構造物用免震支承装置1に掛かるせん断力係数Cは以下の計算で算出できる。
C=標準せん断力係数0.2×0.6(60%)
=0.12
さらに、構造物用免震支承装置1に掛かる地震力Qeは以下の計算で算出できる。
Qe=9200×0.12
=1104kN
【0038】
図4に示す第2実施形態に係る構造物用免震支承装置1は、アンカーボルト6を36本使用しているので、1本のアンカーボルト6に掛かる軸力は、Nb=9200kN/36本で256kN/本となる。また、1本のアンカーボルト6に掛かる地震力は、Qe=1104kN/36本で30.7kN/本となる。
【0039】
使用するアンカーボルト6の材料定数をヤング係数E=205kN/mm、せん断弾性係数G=79kN/mm、ポアゾン比v=0.3として支点間距離(図5に示すL寸法)を321mmとしてアンカーボルト6の変位を算出する。
ここで、M22φのアンカーボルト6を使用した場合、1本の水平変位U=14.395cm、1本の鉛直変位V=0.105cm、1本の回転角θ=0.671rad変位し、M24φのアンカーボルト6を使用した場合は、1本の水平変位U=10.169cm、1本の鉛直変位V=0.089cm、1本の回転角θ=0.474rad変位すると判断できる。
【0040】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態や実施例では、引張ストッパーナット11が全てのアンカーボルト6の両端部に螺着されているとしたが、設置場所により鉛直方向の上向きの応力が少ないところは引張ストッパーナット11を螺着しないこととしても良い。
【0041】
また、上記実施形態や実施例では、コイルスプリングを1本の同じ径の金属製の線材で形成していたが、それに限定するものではなく、例えば、コイルスプリングの巻き始めと巻き終わりの両端部分と、コイルスプリングの中心部分の線径を変化させストロークに応じてスプリングレートが変化する非線形のコイルスプリングで形成しても良く、特にコイルスプリングの形状を限定するものではない。
【0042】
上記実施形態や実施例では特に限定していないが、図1及び図5に示すように、主コイルスプリング5を中心として、直径方向の左右に配置する副コイルスプリング7を、右巻きと左巻きの巻き方向が違う副コイルスプリング7を使用しても良く、そうすることで地震による振動エネルギーの入力方向による影響をより少なくすることができる。
【0043】
また、上記実施形態や実施例では特に限定していないが、図6に示すように圧縮ストッパープレート10の鉛直方向内側面で、貫通孔13と仮想同心円に沿った所要位置に副コイルスプリング7の端部を収納可能となる所用寸法の副スプリング用凹部10Aを凹設しても良く、さらに、副コイルスプリング7を副スプリング用凹部10Aに溶接固定することとしても良い。副スプリング用凹部10Aは、構造物用免震支承装置1を製造する時に、副コイルスプリング7の位置を固定できる効果が得られ、さらに、溶接固定をすることで、鉛直方向の上下に向けた引張り荷重が掛かる時の対抗性能向上が期待できる。
【符号の説明】
【0044】
1 構造物用免震支承装置
2 上連結フランジ体
3 下連結フランジ体
4 ゴムブロック体
5 主コイルスプリング
6 アンカーボルト
6A 雄ねじ部
7 副コイルスプリング
8 囲繞部材
9 圧縮ストッパーナット
10 圧縮ストッパープレート
10A 副スプリング用凹部
11 引張ストッパーナット
12 座グリ部
13 貫通孔
14 主スプリング用凹部
15 圧入用貫通孔
16 アンカーボルト用貫通孔
17 連結孔
100 建造物
101 上部構造体
201 下部構造体
A 建造物の荷重
B 上向きの応力
C 水平応力
L 支点間距離
【要約】
【課題】構造物用免震支承単体で、地震の振動エネルギーの減衰性能と水平方向の入力加速度を低減する性能とを併せ持ち、さらに、鉛直方向の上下に向けた圧縮荷重及び引張り荷重に対する十分な耐久性をも有する構造物用免震支承装置を提供することを目的とする。
【解決手段】鉛直方向の上下端部に対向位置し、上部構造体101と下部構造体201に連結する鋼板から成る上下連結フランジ体2,3と、上下連結フランジ体2,3間に配設されたゴムブロック体4と、上下連結フランジ体2,3間の鉛直方向に沿った向きに配設され且つゴムブロック体4に埋設されたコイルスプリングと、上下連結フランジ体2,3を両端部が貫通し鉛直方向に沿った向きに配設され且つゴムブロック体4に埋設されたアンカーボルト6と、ゴムブロック体4の外周を囲繞する囲繞部材8との構成からなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6