(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の医療用ロボットシステムにおいては、可動ベッドを動かすことはできるものの、症例等に応じて、マニピュレータや処置具と患者との位置関係を自在に、かつ、迅速に変更することは難しく、また、前記位置関係の変更のためにベッドの位置等を変化させることは患者に対して負担を強いることとなり好ましくない。
【0005】
さらに、水平方向においては、手術ロボットの本体と可動ベッドの関係は固定されているため、術式や患部の変更があった場合には、重量の大きな手術ロボットの固定を解除して移動し、移動後に再固定するなどの操作が必要となり、患者に対する手術ロボットの位置の調整は非常に煩雑であり、多大な時間と労力を要していた。
【0006】
そこで本発明は、術式や患部の変更があった場合にも、簡便な操作で容易に移動することができる手術ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の手術ロボットは、本体部と、本体部に設けられ、内視鏡を保持し、空気圧駆動されるアーム部と、ベッドの台部に対して本体部を脱着可能に装着するための装着部材と、装着部材が台部の外囲に沿って移動可能となるように、装着部材の移動における摩擦を低減する摩擦低減部材とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の手術ロボットにおいて、ベッドの台部の外囲に沿って延びるように支持部が設けられ、本体部は支持部に対して移動可能に装着されることが好ましい。
【0009】
本発明の手術ロボットにおいて、装着部材は、本体部を支持部に対して脱着可能に掛止する掛止部であることが好ましい。
【0010】
本発明の手術ロボットにおいて、支持部は、外囲に沿って複数に分割されており、掛止部は、支持部が延びる方向において、隣り合う支持部の間隔より大きな長さを有することが好ましい。
【0011】
本発明の手術ロボットにおいて、掛止部が、ベッドの台部の外囲に沿って移動することを規制する規制部材を備え、掛止部は、規制部材による規制を解除したときに、外囲に沿って移動可能となることが好ましい。
【0012】
本発明の手術ロボットにおいて、摩擦低減部材は、掛止部と支持部との間の摩擦を低減するコーティング層であることが好ましい。
【0013】
本発明の手術ロボットにおいて、摩擦低減部材は、掛止部に設けた軸受部材であることが好ましい。
【0014】
本発明の手術ロボットにおいて、掛止部は、支持部の上部を内部に収容する凹部を有し、摩擦低減部材は、凹部における、支持部の上部との接触領域に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の手術ロボットにおいて、本体部を、台部に垂直な方向に沿って移動可能とする垂直駆動機構と、本体部の台部に垂直な方向に沿った移動を規制する固定部材とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、術式や患部の変更があった場合にも、簡便な操作で容易に移動することができる手術ロボットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る手術ロボットについて図面を参照しつつ詳しく説明する。本実施形態では、内視鏡外科手術に用いる内視鏡53を保持するアーム部20を有するものを例として挙げている。各図には、基準座標としてX−Y−Z座標が示されている。以下の説明において、鉛直方向をZ1−Z2方向(上下方向)とし、鉛直方向に直交する水平面内で互いに直交する、左右方向及び前後方向をそれぞれ、X1−X2方向及びY1−Y2方向と称する。前後方向(Y1−Y2方向)において、Y1側を後側又は奥側、Y2側を前側又は手前側と呼び、上側(Z1側)から下側(Z2側)を見た状態を平面視と言うことがある。
【0019】
手術ロボット10(以下、「ロボット10」と略記する。)は、
図1に示すように、アーム部20と、アーム部20を支持する台座部30と、台座部30が設けられた基部40とを備える。内視鏡を保持するアーム部20は、台座部30と基部40により構成される本体部に設けられている。ロボット10は、基部40を、手術対象の患者が横たわるベッド60の台部61、62、63に対して、脱着可能、かつ、台部の外囲に沿った方向に移動可能に装着される。
【0020】
図1に示す例においては、アーム部20には、ホルダ52を介してカメラヘッドアダプタ51が保持され、カメラヘッドアダプタ51は内視鏡53を保持している。なお、アーム部20による内視鏡53の保持形態は、内視鏡53の形態、用途などに応じて任意に変更でき、
図1に示すものに限定されない。
【0021】
図2に示すように、アーム部20は、ホルダ52側から台座部30側へ順に、ホルダ52が装着される先端保持部21と、ジンバル機構部22と、第1関節部23と、第1アーム24と、第2関節部25と、第2アーム26とを備える。
【0022】
先端保持部21は、側方をジンバル機構部22に支持されると共に、先端側においてホルダ52を脱着可能に保持し、これによってホルダ52に装着されたカメラヘッドアダプタ51を保持する。
【0023】
ジンバル機構部22は、カメラヘッドアダプタ51が保持する内視鏡53を、内視鏡53の観察光軸に沿った第1回転軸AX1を中心として回転可能に支持するとともに、第1回転軸AX1に交差する方向、好ましくは直交する方向に延びる第2回転軸AX2を中心として回転可能に支持する。
【0024】
第1関節部23は、第1回転軸AX1及び第2回転軸AX2を含む平面に対して交差して、より好ましくは直交して延びる第3回転軸AX3を中心としてジンバル機構部22が相対回動可能となるように支持する。
【0025】
第1アーム24は、第1関節部23及び第2関節部25とともに平行リンク機構を形成するものであり、第1関節部23及び第2関節部25の相対姿勢を保ちつつ、相対移動可能とするものである。第1アーム24は、一対の第1ロッド24aと、一対の第1空気圧アクチュエータ部24bと、第1自重補償部24cとを備える。
【0026】
第1ロッド24aは、一対の棒状に形成された部材であり、一方の端部が第1関節部23に回動可能に取り付けられ、他方の端部が第2関節部25に回動可能に取り付けられている。
【0027】
第1空気圧アクチュエータ部24bは、第1関節部23及び第2関節部25の相対位置を移動させるものである。例えば、第1空気圧アクチュエータ部24bが、シリンダ及びピストンを備えたアクチュエータであり、圧力が高められた空気の供給を受けてピストンをスライド駆動する。第1空気圧アクチュエータ部24bの一方の端部は、第2関節部25において一方の第1ロッド24aが取り付けられた位置、又はその近傍に回動可能に取り付けられ、他方の端部は、他方の第1ロッド24aの中ほどに回動可能に取り付けられている。
【0028】
第1自重補償部24cは、第1関節部23を上方に移動させる力を付与するものであって、例えば引っ張りバネで構成する。第1自重補償部24cの一方の端部は、第1関節部23において一方の第1ロッド24aが取り付けられた位置、又はその近傍に取り付けられ、他方の端部は、他方の第1ロッド24aの中ほどに取り付けられている。
【0029】
第2アーム26は、第2関節部25及び台座部30とともに平行リンク機構を形成するものであり、第2関節部25及び台座部30の相対姿勢を保ちつつ、相対移動を可能とするものである。第2アーム26は、一対の第2ロッド26aと、一対の第2空気圧アクチュエータ部26bと、第2自重補償部26cとを備える。
【0030】
第2ロッド26aは、一対の棒状に形成された部材であり、一方の端部が第2関節部25に回動可能に取り付けられ、他方の端部が台座部30に回動可能に取り付けられている。
【0031】
第2空気圧アクチュエータ部26bは、第2関節部25及び台座部30の相対位置を移動させるものである。例えば、第2空気圧アクチュエータ部26bが、シリンダ及びピストンを備えたアクチュエータであり、圧力が高められた空気の供給を受けてピストンをスライド駆動する。第2空気圧アクチュエータ部26bの一方の端部は、台座部30における一方の第2ロッド26aが取り付けられた位置、又はその近傍に回動可能に取り付けられており、他方の端部は、他方の第2ロッド26aの中ほどに回動可能に取り付けられている。
【0032】
第2自重補償部26cは、第2アーム26を、第1方向としての鉛直方向へ移動させる力を付与するものであり、例えば引っ張りバネで構成する。第2自重補償部26cの一方の端部は、台座部30における一方の第2ロッド26aが取り付けられた位置、又はその近傍に取り付けられ、他方の端部は、他方の第2ロッド26aの中ほどに取り付けられている。
【0033】
図8に示すように、第1空気圧アクチュエータ部24bは第1空気供給部83から圧力が高められた空気の供給を受け、第2空気圧アクチュエータ部26bは第2空気供給部84から圧力が高められた空気の供給を受ける。第1空気供給部83と第2空気供給部84は、アーム駆動制御部82からの制御信号にしたがって、第1空気圧アクチュエータ部24bと第2空気圧アクチュエータ部26bのそれぞれに、所定の圧力の空気を、所定の時間又はサイクルで供給する。これによって、第1アーム24と第2アーム26がそれぞれ駆動され、アーム部20が所定の駆動を行い、内視鏡53を所定の位置で所定の姿勢とし、又は、その位置から所定の軌道で移動させることができる。
【0034】
以上の構成からなるロボット10は、以下に説明するように空気圧駆動によりアーム部20が動作する。
第1空気圧アクチュエータ部24bと第2空気圧アクチュエータ部26bは、それぞれ、圧力が高められた駆動用の空気が供給されることにより、シリンダからピストンが突出したり引き込まれたりする。シリンダからピストンが突出すると、例えば第1アーム24においては、第1空気圧アクチュエータ部24bの長手方向の寸法が長くなると、第1アーム24の第1ロッド24aは、第1関節部23が上方に移動するように回動する。逆に、第1空気圧アクチュエータ部24bの長手方向の寸法が短くなると、第1ロッド24aは、第1関節部23が下方に移動するように回動する。また、第1自重補償部24cは、長手方向の寸法が長くなるように引き延ばされた状態で第1アーム24に取り付けられているため、自らの長手方向の寸法が短くなる方向に付勢力を発生させている。この付勢力は、内視鏡53等の自重に逆らい、第1関節部23が上方向に回動する力として働く。
【0035】
平行リンクを有する第1アーム24及び第2アーム26で第1関節部23を支持することにより、第1関節部23の配置位置を変更しても、第1関節部23の姿勢を一定に保つことが容易となる。
【0036】
第1自重補償部24c、及び、第2自重補償部26cを設けることにより、これらを設けない場合と比較して、第1空気圧アクチュエータ部24b及び第2空気圧アクチュエータ部26bが内視鏡53を支持した第1関節部23の位置を移動させる際に必要となる駆動力を小さくすることができる。そのため、第1空気圧アクチュエータ部24b及び第2空気圧アクチュエータ部26bの小型化が容易となり、ロボット10の軽量化を実現することができる。
【0037】
第1空気圧アクチュエータ部24b及び第2空気圧アクチュエータ部26bを用いることにより、重量対出力比を大きくすることが容易となり、また、減速機構を用いない簡素な直動動作が実現可能となる。その結果、ロボット10の小型化及び軽量化が更に容易になる。
【0038】
次に、ベッド60の台部61〜63に対する装着、及び、ロボット10をベッド60の台部61〜63に垂直な第1方向に沿って駆動させる垂直駆動機構に関して説明する。以下の説明では、ベッド60の台部61〜63が水平方向に沿った例を説明するため、第1方向は鉛直方向に沿った方向となる。
【0039】
図3に示すように、ロボット10の基部40は、その筐体部41の後側(Y1側)の後面41aに、リニアガイド44とボールねじ45を介して掛止部42が設けられ、さらに、掛止部42に相対移動可能に支持された押さえ板43を備える。掛止部42と押さえ板43は、ベッド60の台部61〜63に対して基部40(本体部)を脱着可能に装着するための装着部材を構成する。掛止部42は、後面41aから後方へ板状に延出した延出部42aと、延出部42aの後方先端から下方に板状に延びる先端掛止部42bとを備える。掛止部42は、左右方向において長さL1を有する。
【0040】
ロボット10は、掛止部42をベッド60の台部61〜63の外囲に沿うように設けた板状の支持部71〜76(
図4参照)のいずれかに係止させることによって、ベッド60に対して、術式、手術部位、患者の体型などに応じた所定の位置に配置される。これにより、掛止部42は、装着部材として、ベッド60の台部61〜63に対して、台座部30と基部40により構成される本体部を脱着可能に装着でき、施術等に応じて、前後方向(Y1−Y2方向)又は左右方向(X1−X2方向)、すなわち、ベッド60の台部61〜63に垂直な第1方向(Z1−Z2方向)とは異なる第2方向に移動可能とされる。
【0041】
図4に示すように、ベッド60は、左側(X1側)の第1台部61と、右側において奥側に位置する第2台部62と、右側において手前側に位置する第3台部63とを備える(
図1参照)。3つの台部61〜63は、Z1側からZ1側を見た平面視において、それぞれ略矩形状をなし、そして、鉛直方向(Z1−Z2方向)に直交する水平面内に延びる基台64上にそれぞれ配置され、左右方向(X1−X2方向)に個別に移動可能とされている。
【0042】
基台64は、平面視において、前後方向及び左右方向に沿った矩形状の外形形状を有し、
図1に示すように、床面に載置される基礎部66から上下に延びる支柱部65によって支持される。
【0043】
図1又は
図4に示すように、基台64の外側面には板状の支持部71〜76が設けられている。支持部71〜76は、同じ厚さの長板状をなし、上下方向に所定の幅を有し、左右方向に長く延びている。
【0044】
第6支持部76を例に挙げると、
図6に示すように基台64から前後方向(Y1−Y2方向)に沿って外側へ延びた接続部76aが第6支持部76の後面に固定され、第6支持部76を支持している。接続部76aは、前後方向においては、掛止部42の先端掛止部42bを第6支持部76に掛止(係止)したときに、先端掛止部42bの後側面42eが第3台部63の外側面に略当接するような長さを有する。
【0045】
図4に示すように、支持部71、72、73は、前後方向の同じ位置において左から右へ順に配置され、平面視において、支持部71、72は第1台部61の後面61aに沿って配置され、第3支持部73は第2台部62の後面62aに沿って配置されている。支持部74、75、76は、前後方向の同じ位置において左から右へ順に配置され、平面視において、支持部74、75は第1台部61の前面61bに沿って配置され、第6支持部76は第3台部63の前面63aに沿って配置されている。
【0046】
後側(Y1側)の支持部71、72、73と、前側(Y2側)の支持部74、75、76とはそれぞれ前後方向に対向する位置に配置され、対向する支持部は互いに同一の幅(左右方向)で設けられている。
【0047】
支持部71〜76の左右方向(X1−X2方向)の間隔については、後側の第1支持部71と第2支持部72は間隔L2、第2支持部72と第3支持部73は間隔L3とされ、前側の第4支持部74と第5支持部75は間隔L2、第5支持部75と第6支持部76は間隔L3とされている。これらの間隔L2、L3は、掛止部42の長さL1よりも短い。別言すると、掛止部42は、支持部71〜76が延びる左右方向において、隣り合う2つの支持部の間隔のいずれよりも大きな長さを有している。よって、支持部71〜76に掛止部42を掛止させた状態で、ベッド60の台部61〜63の外囲に沿って本体部が移動可能となる。
なお、支持部の配置、サイズ、間隔は
図4等に示す形態に限定されず、例えば、第1台部61に設ける支持部は前後の両側面に対して1つずつ、又は、3つ以上設けてもよい。
【0048】
図4に示す例では、左右方向に沿ってそれぞれ延びる支持部71〜76を示しているが、これに加えて、又は、これに代えて、前後方向に延びる支持部を設けても良い。また、支持部は、基台64ではなく、ベッドの外側面に設けても良い。
【0049】
図5と
図6に示すように、基部40の押さえ板43は、掛止部42の延出部42aの前後方向の途中位置から下方に延びるように配置されている。押さえ板43は、前後方向に相対移動可能となるように掛止部42に支持されている。押さえ板43は、基部40を支持部71〜76に掛止する過程においては、先端掛止部42bとの間隔が掛止する支持部の厚さよりも広くなるように配置され、掛止させた後は、後ろ側への移動によって、先端掛止部42bとの間隔が掛止した支持部の厚さに対応する間隔に調整され、これによって、掛止した支持部を前後方向から挟持する。
【0050】
図6に示すように、掛止部42の延出部42aは、掛止する第6支持部76を掛止する位置に、第6支持部76の厚みに対応する長さを有する凹部42cを備えている。この凹部42cは延出部42aの下面から上方向へ凹設されており、掛止部42を第6支持部76に掛止させたときに、第6支持部76の上部76bを内部に収容し、かつ、前後から第6支持部76に当接し、前後方向における位置を確定させる。
【0051】
凹部42cの内部に第6支持部76の上部76bを収容させたとき、凹部42c内の上側の内面42f及び内側面42gと、第6支持部76の上部76bの上面76d及び外側面76eとが、それぞれ接触する。これらの接触領域(内面42f、内側面42g、上面76d、及び、外側面76e)には、装着部材としての掛止部42を第6支持部76に沿って移動させるときの摩擦を低減するための摩擦低減部材が設けられている。
【0052】
上記摩擦低減部材としては、潤滑剤、コーティングによって形成されたコーティング層、表面処理や蒸着などによって形成された皮膜・薄膜、軸受部材、接触面積を減らすように表面に凹凸加工や溝加工を施された部材、凹凸加工材の凸部を曲面とした構造などが挙げられる。摩擦低減部材の適用箇所は、摩擦低減に求められる仕様やコストなどを考慮して、上記接触領域のすべて又は一部となる。
【0053】
図9に示す例では、凹部42c内の上側の内面42fに、摩擦低減部材としてのコーティング層91を設けている。
図10に示す例では、凹部42c内の上側の内面42fに、摩擦低減部材としてのボール軸受92(軸受部材)を設けている。なお、軸受部材としては、ボール軸受以外の軸受、例えば、すべり軸受、流体軸受、磁気軸受も採用可能である。
【0054】
図9や
図10に例示した構成により、内面42fと支持部76の上面76dとの間の摩擦を低減することが可能となり、支持部76上で掛止部42をスムーズに移動させることができる。したがって、ベッド60の台部61〜63の外囲に沿って本体部を動かす力を与えるという簡便な操作で、ロボット10を容易に移動させることが可能となる。
【0055】
なお、凹部42cの入口部分の角部42h、42iにおいて、下側へ向かうほど凹部から外側へ広がるような傾斜部を設けると、凹部42c内に第6支持部76を案内しやすくなるとともに、凹部42cに対する挿抜の際に延出部42aや第6支持部76を損傷させることが少なくなるため好ましい。
【0056】
先端掛止部42bの下端の前部には、後側(Y1側)から前側(Y2側)へ向かって、上側へ傾いた傾斜面42dが形成されている。掛止部42を第6支持部76に係止させるときに、先端掛止部42bが第6支持部76に当たったとしても、傾斜面42dの傾斜にしたがって先端掛止部42bが第6支持部76の後側へ案内されるため、第6支持部76への掛止部42の係止をスムーズかつ確実に行うことができる。
【0057】
押さえ板43の下部の後部には、後側へ突出した突起部43aが設けられている。この突起部43aは、第6支持部76の上部76bが凹部42c内に収容された状態において、第6支持部76の底面76cに接触するような、押さえ板43の上下方向の所定位置に設けられている。よって、第6支持部76に延出部42aを係止させた後に、押さえ板43を後側へ移動させ、第6支持部76の前面に接触させる位置に至ると、突起部43aが第6支持部76の底面76cに接触する。これにより、第6支持部76は、先端掛止部42bと押さえ板43によって前後方向を規制されるとともに、突起部43aによって上下方向も規制されるため、ロボット10は、前後方向と上下方向の変位が規制されて一定の姿勢が保持され、また、第6支持部76に沿って左右方向(X1−X2方向)に移動可能な状態となる。
【0058】
ここで、本体部が第1方向とは異なる第2方向に沿って移動することを規制する規制部材として、例えば、
図7に示すように、軸部P1が延出部42aを上下に貫通し、さらに第6支持部76内に挿入されるような固定ピンPを用いると、ロボット10の左右方向の移動も規制することができる。
図7においては、第6支持部76内へ挿入する前の固定ピンPを実線で示し、第6支持部76内に挿入された状態を破線で示している。
【0059】
図3に示すように、掛止部42は、リニアガイド44と、垂直駆動機構としてのボールねじ45を介して筐体部41の後面41aに設けられている。リニアガイド44は、筐体部41の後面41aから上下方向に沿って台座部30の上部まで設けられ、その内部に、上下方向に沿ってねじ軸が延びるボールねじ45が配置されている。ボールねじ45のねじ軸は、後面41aの下部に配置されたモータ46の駆動によって回転する。上記ねじ軸には、ねじ軸の回転によって上下に変位するナット部(不図示)が設けられ、このナット部に固定された筐体部41が、リニアガイド44に支持されつつ、掛止部42に対して相対的に上下に昇降し、これに従って、基部40に支持されたロボット10が上下に変位する。
【0060】
筐体部41には自重補償バネ47が設けられている。自重補償バネ47は、例えば引っ張りバネで構成され、筐体部41を上方に変位させる力を付与する。自重補償バネ47を設けることにより、モータ46の駆動力を小さく抑えて効率的にロボット10を上下に変位させることができる。
【0061】
図8に示すように、モータ46は本体駆動制御部49からの制御信号に従って駆動される。一方、モータ46にはブレーキ48(固定部材)が接続されており、電源喪失時などにより本体駆動制御部49からモータ46への制御信号の供給が停止すると、ブレーキ48の作動によってボールねじ45の動作が停止し、基部40の上下動が停止され、ロボット10の上下方向位置は固定される。
【0062】
ブレーキ48としては、例えば、ボールねじ45の回動軸に作用して回動を規制するものや、筐体部41が固定されたナット部を挟持してナット部の上下動を規制するものが挙げられる。このほか、例えば前後方向に沿って筐体部41と掛止部42の両方に固定ピンを挿通させることで筐体部41と掛止部42を互いに固定することによって、基部40の上下動を規制してもよい。
【0063】
ブレーキ48の作動については、例えば、
図8に示すように本体駆動制御部49からモータ46への制御信号をブレーキ48に対しても送出し、電源喪失時などにこの制御信号の入力が所定時間以上なかったことをトリガーとしてブレーキ48を作動させるようにするとよい。または、本体駆動制御部49からモータ46への制御信号があるときはブレーキ48の作動を規制し、電源喪失時などで上記制御信号の入力が所定時間以上なかったときには、ブレーキ48の作動規制を解除し、ブレーキ48を作動させるようにしてもよい。
【0064】
本体駆動制御部49の制御信号は、連携駆動制御部81へも出力されている。連携駆動制御部81は、アーム駆動制御部82と接続されており、アーム駆動制御部82が第1空気供給部83と第2空気供給部84のそれぞれに与える制御信号も入力されている。
【0065】
連携駆動制御部81は、基部40の鉛直方向(第1方向)の移動とアーム部20の駆動を連携させる。例えば、基部40の鉛直方向位置に応じて、アーム部20を駆動させ、内視鏡53を施術等に最適な位置や姿勢に調整する。基部40が上下に移動したときに、これに応じて内視鏡53の姿勢を変更することによって、内視鏡53やアーム部20が患者に接触するなどのトラブルが生じることを防止する。
【0066】
連携駆動制御部81は、動作終了時や、緊急時などにおいて、アーム部20の駆動と基部40の上下動の少なくとも一方を停止させ、又は、内視鏡53やアーム部20を所定位置へ待避させるようにアーム部20を駆動する。アーム部20の駆動を停止させる場合には、第1空気圧アクチュエータ部24b及び第2空気圧アクチュエータ部26bの動作が固定されるように、第1空気供給部83と第2空気供給部84のそれぞれからの空気の供給を調整するための制御信号をアーム駆動制御部82に対して出力する。アーム部20の待避は、予め設定してある所定位置へアーム部20が待避するように、現在のアーム部20の姿勢から計算した、第1空気供給部83と第2空気供給部84のそれぞれからの空気の供給を調整するための制御信号をアーム駆動制御部82に対して出力する。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。例えば、上記の説明では、手術ロボットが保持するのは内視鏡であったが、これに限定されず、鉗子、メスなど他の処置具であってもよい。さらに、内視鏡に代えて患者の外観を観察するためのカメラを保持する医療用ロボットとすることもできる。
本体部と、本体部に設けられ、内視鏡を保持し、空気圧駆動されるアーム部と、ベッドの台部に対して本体部を脱着可能に装着するための装着部材と、装着部材が台部の外囲に沿って移動可能となるように、装着部材の移動における摩擦を低減する摩擦低減部材とを備える。ベッドの台部の外囲に沿って延びるように支持部が設けられ、本体部は支持部に対して移動可能に装着される。