(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の概要]
本開示の第1の局面に従ったYG合金は、74.5質量%以上76質量%以下のAuと、2質量%以上9質量%以下のAgと、15質量%以上17.5質量%以下のCuと、1.5質量%以上4.5質量%以下のInと、を含有し、残部が不可避的不純物からなる。
【0012】
本開示の第2の局面に従ったYG合金は、74.5質量%以上76質量%以下のAuと、1.5質量%以上9質量%未満のAgと、15質量%以上17.5質量%以下のCuと、1.5質量%以上4.5質量%以下のInと、0質量%を超え0.5質量%以下のZn(亜鉛)と、を含有し、残部が不可避的不純物からなる。
【0013】
以下、本開示のYG合金の成分組成を上記範囲に限定した理由について説明する。
【0014】
Au:74.5質量%以上76質量%以下
Auは、YG合金の主成分である。Auの含有量を74.5質量%以上とすることにより、高品位なイエローゴールドを得ることができる(Auの含有量を75質量%以上とすることにより、K18イエローゴールドを得ることができる)。Auの含有量を76質量%以下とすることで、目標とする特性を得るために必要な元素を添加することができる。
【0015】
Cu:15質量%以上17.5質量%以下
Cuを添加することにより、YG合金の強度が上昇する。より具体的には、永久変形の生じやすさの指標である0.2%耐力が上昇する。その結果、YG合金からなる宝飾品を変形しにくく、傷つきにくいものとすることができる。15質量%以上のCuを添加することにより、このような機能を十分に達成し、PG合金に近い強度を得ることができる。一方、Cuの含有量が増加すると、Au合金の赤味が強くなる。Cu含有量が17.5質量%を超えると、他の元素の添加によって赤味を抑制し、YG合金にふさわしい色合いを達成することが困難となる。そのため、Cuの含有量は、17.5質量%以下とすることが必要である。
【0016】
In:1.5質量%以上4.5質量%以下
Inを添加することにより、Au合金の赤味を抑制することができる。また、Inの添加は、強度の向上にも寄与する。上記Cuの含有量であれば、1.5質量%以上のInを添加することにより、YG合金にふさわしい色合いを確保することができる。よりYG合金にふさわしい色合いを達成する観点から、Inの含有量は2質量%以上とすることが好ましく、2.5質量%以上とすることがより好ましい。一方、Inを添加することにより、Au合金の融点が低下する。Inの含有量が4.5質量%を超えると、YG合金のロウ付けに使用される一般的なロウ材との融点の差が小さくなる。その結果、ロウ付けが困難になるという問題が生じうる。このような問題の発生を抑制する観点から、Inの含有量は4.5質量%以下とする必要がある。ロウ付けを容易にする観点から、Inの含有量は4質量%以下とすることが好ましく、3.5質量%以下とすることがより好ましい。
【0017】
Zn:0質量%を超え0.5質量%以下
Znは、本開示のYG合金において必須の添加元素ではない。しかし、脱酸効果を有するZnを添加することにより、本開示のYG合金の鋳造が容易となる。具体的には、Znを添加することにより、YG合金を鋳造して成形体を作製する際に、成形体内に酸化物系の不純物が残存することを抑制することができる。Znの含有量が0.5質量%以下であれば、YG合金の色合い、強度および融点に特段の悪影響が見られない。したがって、0.5質量%以下のZnが添加されてもよい。
【0018】
Ag:1.5質量%以上または2質量%以上9質量%未満または9質量%以下
Agは、本開示のYG合金において上記元素以外の組成の部分を構成する。そのため、Znが添加されない場合、Agの含有量は2質量%以上9質量%以下である。0質量%を超え0.5質量%以下のZnが添加される場合、Agの含有量は1.5質量%以上9質量%未満である。
【0019】
不可避的不純物
本開示のYG合金には、製造時に不可避的に(意図的でなく)不純物(不可避的不純物)が混入する場合がある。不可避的不純物の含有量は少ないことが好ましく、具体的には0.1質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以下とすることがより好ましい。
【0020】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のYG合金の具体的な実施形態を、本開示のYG合金の特性を確認する実験結果とともに説明する。以下の表1に示す成分組成を有するYG合金を準備した。
【0021】
【表1】
表1において、各成分の割合が質量%で示されている。また、表1において「−」は、当該元素が添加されていないことを意味する。表1に示される成分組成は、鋳造によって作製したYG合金をEDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)によって分析することにより得た値である。表1のNo.4〜7および9〜11が本願のYG合金の要件を満たす実施例のサンプルである。表1のNo.1〜3および8は、本願のYG合金の範囲外である比較例のサンプルである。No.12は、YG合金のロウ付けに使用される市販品のロウ材(YG合金用ロウ材)である。上記のサンプルから鋳造により試験片を作製し、以下の特性を確認する実験を行った。
【0022】
(1)色
各サンプルの表面を鏡面になるまで研磨し、当該表面について、測色色差計を用いて明度L
*、ならびに色度a
*(赤味)およびb
*(黄味)を測定した。
【0023】
(2)強度
各サンプルから引張試験片を作製し、引張試験を実施した。そして、試験結果から、耐力(0.2%耐力)を導出した。
【0024】
(3)融点
各サンプルに対してDTA(Differential Thermal Analysis)を実施し、融点を導出した。融点は、液相線温度と固相線温度との平均値とした。
【0026】
【表2】
以下、評価項目ごとに表2および
図1〜
図12を参照しつつ、実験結果について説明する。
【0027】
(1)色
図1は、Au合金の赤味に及ぼすCuの含有量の影響を示す図である。YG合金としてふさわしい色合いを達成するためには、a
*が3.0以下(
図1〜
図4中の破線の下側に対応)である必要があると考えられる。
図1は、Inが添加されないサンプルNo.1〜3に関するものである。
図1を参照して、Inが添加されないYG合金においては、YG合金としてふさわしい色合いを達成可能なCu含有量の上限は14質量%程度であるといえる。
【0028】
図2は、Au合金の赤味に及ぼすInの含有量の影響を示す図である。
図2は、Cuの含有量が約16質量%であって、Inの添加量が異なるサンプルNo.3〜8に関するものである。
図2を参照して、Inの含有量が増加するにしたがって、a
*の値が小さくなることがわかる。そして、Cuが約16質量%の場合、Inの含有量を1.5質量%以上とすることにより、a
*の値を3.0以下とすることができる。
【0029】
図3は、Au合金の赤味に及ぼすCuおよびInの含有量の影響を示す図である。
図3において、三角印はInが添加されていないサンプルNo.1〜3に関するものである。丸印はInの含有量が約3質量%であるサンプルNo.6、9および10に関するものである。
図3を参照して、Inを約3質量%添加することにより、a
*の値が2程度低下していることがわかる。また、Cuの含有量が17質量%程度であっても、約3質量%のInを添加することにより、a
*の値を3.0以下とすることができる。
【0030】
図4は、Au合金の赤味に及ぼすZnの含有量の影響を示す図である。
図4は、Cuの含有量が約16質量%、Inの含有量が約3質量%であって、Znが添加されていないサンプルNo.6および0.5質量%のZnが添加されたサンプルNo.11に関するものである。
図4を参照して、0.5質量%以下のZnの添加は、a
*の値に影響しない、またはa
*の値をやや低下させる傾向にあることがわかる。したがって、0.5質量%以下のZnを添加してYG合金に脱酸効果を付与することが可能であるといえる。
【0031】
(2)強度
図5は、Au合金の強度(0.2%耐力)に及ぼすCuの含有量の影響を示す図である。PG合金に近い強度を確保する観点からは、0.2%耐力が300MPa以上(
図5〜
図8中の破線の上側に対応)である必要がある。
図5は、Inが添加されないサンプルNo.1〜3に関するものである。
図5を参照して、Cuの含有量が増加するにしたがって、0.2%耐力が上昇することが分かる。300MPa以上の0.2%耐力を確保するためには、Cuの含有量を15質量%以上とする必要がある。しかし、
図1を参照して説明したように、Inが添加されない場合、YG合金としてふさわしい色合いを達成可能なCu含有量の上限は14質量%程度である。そのため、Cuの含有量を増加させてPG合金に近い強度を確保する場合、YG合金としてふさわしい色合いを達成するためには、Inの添加が検討され得る(
図2および
図3参照)。
【0032】
図6は、Au合金の強度(0.2%耐力)に及ぼすInの含有量の影響を示す図である。
図6は、Cuの含有量が約16質量%であって、Inの添加量が異なるサンプルNo.3〜8に関するものである。
図6を参照して、Inを添加することにより、添加量が2質量%程度までは0.2%耐力が徐々に上昇し、それ以上では徐々に低下する。Inの含有量が4.5質量%以下の範囲では、Inの添加は0.2%耐力の上昇に寄与する。このことから、Cuの含有量を増加させてPG合金に近い強度を確保する場合、YG合金としてふさわしい色合いを達成するためには、Inの添加が有効であることが分かる。
【0033】
図7は、Au合金の強度(0.2%耐力)に及ぼすCuおよびInの含有量の影響を示す図である。
図7において、三角印はInが添加されていないサンプルNo.1〜3に関するものである。丸印はInの含有量が約3質量%であるサンプルNo.6、9および10に関するものである。四角印は、PG合金に関するものである。
図7を参照して、Inを約3質量%添加することにより、0.2%耐力が30MPa程度上昇していることがわかる。また、Cuの含有量を16〜17質量%程度、Inの含有量を3質量%程度とすることにより、PG合金と同等の0.2%耐力を有するYG合金が得られる。
【0034】
図8は、Au合金の強度(0.2%耐力)に及ぼすZnの含有量の影響を示す図である。
図8は、Cuの含有量が約16質量%、Inの含有量が約3質量%であって、Znが添加されていないサンプルNo.6および0.5質量%のZnが添加されたサンプルNo.11に関するものである。
図8を参照して、0.5質量%以下のZnの添加が0.2%耐力に与える影響は小さいことがわかる。したがって、0.5質量%以下のZnを添加してYG合金に脱酸効果を付与することが可能であるといえる。
【0035】
(3)融点
図9は、Au合金の融点に及ぼすCuの含有量の影響を示す図である。YG合金製の宝飾品の製造プロセスでは、ロウ付けが実施される場合が多い。このとき、ロウ材の融点とYG合金の融点との差が十分でないと、ロウ付けが困難となる。ロウ付けの実施を可能とする観点からは、融点がNo.12の融点である790℃以上(
図9〜
図12中の破線の上側に対応)である必要がある。
図9は、Inが添加されないサンプルNo.1〜3に関するものである。
図9を参照して、Cuの含有量が増加するにしたがって、融点が低下することが分かる。
【0036】
図10は、Au合金の融点に及ぼすInの含有量の影響を示す図である。
図10は、Cuの含有量が約16質量%であって、Inの添加量が異なるサンプルNo.3〜8に関するものである。
図10を参照して、Inの含有量が増加するにしたがって、融点が低下することが分かる。Inの含有量が4.5質量%以下の範囲で、ロウ材の融点である790℃以上(表1のNo.12参照)を確保することができる。
【0037】
図11は、Au合金の融点に及ぼすCuおよびInの含有量の影響を示す図である。
図11において、三角印はInが添加されていないサンプルNo.1〜3に関するものである。丸印はInの含有量が約3質量%であるサンプルNo.6、9および10に関するものである。
図11を参照して、3質量%のInが添加された場合、Cuが15質量%以上17質量%以下の範囲において、融点はほぼ一定であり、ロウ付けが可能な融点を確保できることが分かる。
【0038】
図12は、Au合金の融点に及ぼすZnの含有量の影響を示す図である。
図12は、Cuの含有量が約16質量%、Inの含有量が約3質量%であって、Znが添加されていないサンプルNo.6および0.5質量%のZnが添加されたサンプルNo.11に関するものである。
図12を参照して、0.5質量%以下のZnの添加が融点に与える影響は小さいことがわかる。したがって、0.5質量%以下のZnを添加してYG合金に脱酸効果を付与することが可能であるといえる。
【0039】
以上の特性評価の結果から、本願のYG合金は、PG合金に近い強度を維持しつつ、YG合金としてふさわしい色合いを有するイエローゴールド(YG)であることが確認される。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。