(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一駆動源及び第二駆動源と、被駆動部と、前記第一駆動源又は前記第二駆動源のうち入力される回転数が大きい方の駆動源の動力を選択して前記被駆動部に伝達する動力選択部とを備えた車両についての制御を行う車両制御装置であって、
前記車両がハイブリッド車両とされ、前記第一駆動源がエンジン、前記第二駆動源が車輪を駆動可能とされたモータとされ、
前記エンジンの回転数変化制御の制御値として求められたエンジン回転数と車速の情報とを基に、前記エンジン回転数が車速に応じて定められた所定の回転数範囲内の値となっているか否かを判定することで、前記エンジンと前記モータからの前記動力選択部への入力回転数の差が所定の差以下の状態となっているか否かを判定する回転数差判定部と、
前記入力回転数の差が前記所定の差以下の状態となっていると判定されたことに応じて、前記エンジンと前記モータの回転数が所定の差以下の状態とならないよう前記エンジン回転数を求め直し、前記求め直したエンジン回転数の値に基づいて前記エンジンの回転数を変化させる制御を行う回転数制御部と、を備える
車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.車両の概要構成>
図1は、本発明に係る実施の形態としての車両制御装置を備えた車両1の構成概要を示した図である。なお、
図1では、車両1の構成のうち主に本発明に係る要部の構成のみを抽出して示している。
本実施の形態では、四輪駆動方式のハイブリッド車両に本発明を適用した場合について説明する。
【0015】
図1において、車両1は、エンジン3、ダンパ4、第一MG(モータジェネレータ)6、及び第二MG10を含む動力機構部2と、エンジンECU(Electronic Control Unit)30、第一MGECU31、第二MGECU32、ハイブリッドECU33、バス34、及びセンサ・操作子類35とを備えている。
【0016】
図2は、動力機構部2の構成概要を示したスケルトン図である。
エンジン3は、ガソリン又は軽油等の炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関である。エンジン3の出力軸としてのクランクシャフト3aは、ダンパ4及び減速ギヤ5を介して遊星歯車機構7におけるキャリア7cの回転軸部(キャリア軸7ac)に連結されている。ダンパ4は、エンジン3(クランクシャフト3a)の回転に対するブレーキ要素として機能する。
【0017】
遊星歯車機構7は、外歯歯車のサンギヤ7sと、サンギヤ7sと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ7rと、サンギヤ7sに噛合すると共にリングギヤ7rに噛合する複数のピニオンギヤ(プラネタリギア)7pと、複数のピニオンギヤ7pを自転且つ公転自在に保持するキャリア7cとを備え、サンギヤ7sとリングギヤ7rとキャリア7cとを回転要素とし差動作用を行う歯車機構として構成されている。
本例の遊星歯車機構7では、上記のようにキャリア軸7acがクランクシャフト3aと連結され、サンギヤ軸7as(サンギヤ7sの回転軸部)が第一MG6のロータ(回転子)に接続されている。また、遊星歯車機構7におけるリングギヤ軸7arは、該リングギヤ軸7arを回転軸として回転するギヤ8を介して、ギヤ9に連結されている。ギヤ9は、リダクション機構11のリングギヤ軸11arを回転軸として回転する。
【0018】
リダクション機構11は、外歯歯車のサンギヤ11sと、サンギヤ11sと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ11rと、サンギヤ11sに噛合すると共にリングギヤ11rに噛合する複数のピニオンギヤ11pと、複数のピニオンギヤ11pを自転且つ公転自在に保持するキャリア11cとを備えている。リダクション機構11においては、キャリア11cがトランスミッションケースに固定され、サンギヤ軸11asが第二MG10のロータに接続されている。
また、リダクション機構11におけるリングギヤ軸11arは、一方の端部(車両1の前方側の端部)側が上記のようにギヤ9及びギヤ8を介して遊星歯車機構7におけるリングギヤ軸7arに連結されると共に、同端部側にはリングギヤ軸11arを回転軸として回転するギヤ12が設けられ、該ギヤ12と、該ギヤ12と連結されたギヤ13、該ギヤ13の回転に伴って回転するシャフト14とを介して前輪側デファレンシャルギヤ15に連結されている。前輪側デファレンシャルギヤ15には、前輪としての車輪19a、19bを回転させる前輪側ドライブシャフト16が連結されている。
また、リダクション機構11におけるリングギヤ軸11arの他方の端部(車両1の後方側の端部)側は後輪側デファレンシャルギヤ17に連結されている。後輪側デファレンシャルギヤ17には、後輪としての車輪19c、19dを回転させる後輪側ドライブシャフト18が連結されている。
【0019】
ここで、遊星歯車機構7において、第一MG6が発電機として機能するときには、キャリア7cから入力されるエンジン3の駆動力が、サンギヤ7s側とリングギヤ7r側とにそのギヤ比に応じて分配される。一方、エンジン3の始動要求時にあっては、第一MG6が電動機(スタータモータ)として機能し、第一MG6の駆動力がサンギヤ7s及びキャリア7cを介してクランクシャフト3aに与えられてエンジン3がクランキングされる。
【0020】
第一MG6、第二MG10は、何れも発電機として駆動できると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機により構成されている。これら第一MG6及び第二MG10は励磁相を複数有するモータジェネレータとされ、具体的に本例では3相交流式のモータジェネレータが採用されている。なお、図示は省略したが、車両1には、第一MG6や第二MG10で発電された電力を蓄電するバッテリが設けられている。
本例の車両1においては、第一MG6、第二MG10の何れかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。従って、バッテリは、第一MG6、第二MG10の何れかで生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、第一MG6、第二MG10により電力収支がバランスしている場合には、バッテリは充放電されない。
【0021】
本例の動力機構部2には、トランスミッションケース内の必要各部にオイル(潤滑・冷却オイル)を供給するためのオイルポンプ(図中「O/P」)20と、該オイルポンプ20を駆動するための第一ポンプギヤ21及び第二ポンプギヤ22と、動力選択機構23とが設けられている。
【0022】
第一ポンプギヤ21は、遊星歯車機構7におけるキャリア7cの回転に伴い回転するように設けられている。すなわち、第一ポンプギヤ21はエンジン3の回転に伴い回転する。第二ポンプギヤ22は、遊星歯車機構7におけるリングギヤ7rの回転に伴い回転するように設けられ、従って車輪19a〜19dの回転(車輪19a〜19dが第二MG10により駆動されている場合は該第二MG10の回転)に伴い回転する。
【0023】
動力選択機構23は、第一ポンプギヤ21側(エンジン3側)からの動力又は第二ポンプギヤ22側(第二MG10側)からの動力のうち、入力される回転数が大きい方の動力を選択してオイルポンプ20に伝達する。
本例の場合、動力選択機構23は、第一ワンウェイクラッチ23aと第二ワンウェイクラッチ23bとによる二つのワンウェイクラッチを組み合わせた構成とされている。
第一ワンウェイクラッチ23a及び第二ワンウェイクラッチ23bの双方の出力軸は、オイルポンプ20を駆動するためのポンプ駆動軸20aとして一体に形成されている。その上で、第一ワンウェイクラッチ23aの入力軸は、第一ポンプギヤ21の回転が伝達され、第二ワンウェイクラッチ23bの入力軸は第二ポンプギヤ22の回転が伝達される。
この場合、第一ワンウェイクラッチ23a、第二ワンウェイクラッチ23bの双方は、「出力軸の回転数≧入力軸の回転数」である場合にフリー回転(スプラグが噛み合わない状態での回転)し、「出力軸の回転<入力軸の回転数」である場合にロック回転(スプラグが噛み合った状態での回転)するように構成されている。
これにより、「エンジン3側の回転数>第二MG10側(車輪19a〜19d側)の回転数」のときは、第二ワンウェイクラッチ23bがフリー回転、第一ワンウェイクラッチ23aがロック回転するため、エンジンの動力に基づきオイルポンプ20が駆動される。一方、「エンジン3側の回転数<第二MG10側(車輪19a〜19d側)の回転数」のときは、第二ワンウェイクラッチ23bがロック回転、第一ワンウェイクラッチ23aがフリー回転するため、第二MG10側の動力に基づきオイルポンプ20が駆動される。
【0024】
説明を
図1に戻す。
エンジンECU30、第一MGECU31、第二MGECU32、及びハイブリッドECU33は、上記した動力機構部2におけるエンジン3、第一MG6、第二MG10をコントロールするための各種のECUであり、これらECUは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータで構成され、CAN(Controller Area Network)等の所定の車載ネットワーク通信規格に対応したバス34を介して相互にデータ通信可能に接続されている。
【0025】
車両1には、センサ・操作子類35が備えられている。
センサ・操作子類35は、車両1に設けられた各種のセンサや操作子を包括的に表したものである。センサ・操作子類35が有するセンサとしては、車両1の走行速度(以下「車速」と表記する)を検出する速度センサ35a、エンジン3の回転数を検出するエンジン回転数センサ35b、アクセルペダルの踏込み量からアクセル開度を検出するアクセル開度センサ35c、及び車両1に作用する加速度を検出するGセンサ35dがある。また、図示は省略したが、センサ・操作子類35は、他のセンサとして、例えばエンジン3への吸入空気量を検出する吸入空気量センサ、吸気通路に介装されてエンジン3の各気筒に供給する吸入空気量を調整するスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ、エンジン温度を示す冷却水温を検出する水温センサ、車外の気温を検出する外気温センサ等も有する。
また、操作子としては、イグニッションスイッチ35eや、EV(Electric Vehicle)モードのON/OFF指示を行うためのEVスイッチ35f等の各種操作子がある。
センサ・操作子類35における各センサの検出信号、操作子の操作に基づく操作入力信号は上記した各ECUのうち必要な各部に対して供給される。
【0026】
エンジンECU31は、エンジン3についての燃料噴射制御、点火制御、吸入空気量調節制御などの各種運転制御を行う。エンジンECU31は、ハイブリッドECU33と通信を行っており、ハイブリッドECU33からの制御信号に基づいてエンジン3を運転制御すると共に必要に応じてエンジン3の運転状態に関するデータをハイブリッドECU33に出力する。
【0027】
第一MGECU31は第一MG6を駆動制御し、第二MGECU32は第二MG10を駆動制御する。第一MGECU31、第二MGECU32は、それぞれハイブリッドECU33からの指示に基づき第一MG6、第二MG0の駆動制御を行う。
【0028】
ハイブリッドECU33は、センサ・操作子類35における所定のセンサ、操作子による検出信号、操作入力信号に基づき、エンジンECU30、第一MGECU31、第二MGECU32に対する指示やダンパ4の動作制御を行って、上記した動力機構部2の動作を運転者の操作入力や車両1の走行状態に応じてコントロールする。
例えば、ハイブリッドECU32は、前述したイグニッションスイッチ35eの操作等に基づき、エンジン3の始動制御を行う。具体的には、燃料噴射及び点火を行うようにエンジンECU30に指示を行うと共に、セルモータとして第一MG6を回すため第一MGECU31にも指示を行う。なお、ハイブリッド車としての車両1においては、エンジン3の始動/停止制御は車両1の走行状態等、イグニッションスイッチ35eの操作以外の条件に基づいても行われる。
【0029】
また、ハイブリッドECU33は、アクセル開度センサ35cによる検出信号に基づき求まるアクセル開度値に基づき、運転者によるアクセル操作量に応じた要求トルクT(車輪19a〜19dに出力すべきトルク)を計算し、要求トルクTに対応する要求駆動力により車両1を走行させるためのエンジン3、第一MG6、第二MG10の運転制御をエンジンECU30、第一MGECU31、第二MGECU32に実行させる。
【0030】
例えば、燃料消費量の削減を図るために、上記の要求駆動力が比較的低い運転領域にあっては、第二MG10を利用して要求駆動力が得られるようにする。一方、要求駆動力が比較的高い運転領域にあっては、第二MG10を利用すると共に、エンジン3を駆動し、これら駆動源(走行駆動力源)からの駆動力により、要求駆動力が得られるようにする。
【0031】
より具体的に、車両1の発進時や低速走行時等であって仮にエンジン3を駆動した際にその運転効率(動作効率)が低い場合には、第二MG10のみによる走行(以下「EV走行」と表記する)を行う。また、前述したEVスイッチ35fにより運転者がEVモードを選択した場合にもEV走行が行われるように制御を行う。
EV走行時においては、ハイブリッドECU33は前述したダンパ4による制動力をONとし、遊星歯車機構7におけるキャリア7cを固定状態とする。
【0032】
一方、通常走行時(ハイブリッド走行時)には、例えば遊星歯車機構7によりエンジン3の駆動力を2経路に分け、一方で車輪19a〜19dの直接駆動(直達トルクによる駆動)を行い、他方で第一MG6を駆動して発電を行う。このとき、発生する電力で第二MG10を駆動して車輪19a〜19dの駆動補助を行う(電気パスによる駆動)。このように、遊星歯車機構7が差動機構として機能し、その差動作用によりエンジン3からの動力の主部を車輪19a〜19dに機械的に伝達し、エンジン3からの動力の残部を第一MG6から第二MG10への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される電気式無段変速機としての機能が発揮される。これにより、車輪19a〜19d(リングギヤ軸7ar)の回転数及びトルクに依存することなく、エンジン回転数及びエンジントルクを自由に操作することが可能となり、車輪19a〜19dに要求される駆動力を得ながらも、燃料消費率が最適化されたエンジン3の運転状態を得ることが可能となる。
【0033】
また、高速走行時には、さらにバッテリからの電力を第二MG10に供給し、第二MG10の出力を増大させて車輪19a〜19dに対して駆動力の追加(駆動力アシスト:力行)を行う。
【0034】
また、減速時には、第二MG10が発電機として機能して回生発電を行い、回収した電力をバッテリに蓄える。なお、バッテリの充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン3の出力を増加して第一MG6による発電量を増やしてバッテリに対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時においても必要に応じてエンジン3の出力を増加する制御を行う場合もある。例えば、前述のようにバッテリの充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン3の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合や、車両1が急加速する場合等である。
【0035】
さらに、車両1においては、車両1の走行状態やバッテリの状態によって、燃費を向上させるために、エンジン3を停止させる。そして、その後も、車両1の走行状態やバッテリの状態を検知して、エンジン3を再始動させる。このように、ハイブリッド車両としての車両1においては、イグニッションスイッチがON状態であってもエンジン3は間欠運転され得る。
【0036】
また、車両1の後進走行時の駆動力は第二MG10により得られる。つまり、シフトレバー(図示は省略)がリバースレンジ(Rレンジ)に操作されると、ハイブリッドECU33は、第二MG10を前進方向とは逆回転方向(後進方向)に回転させ、その駆動力をリダクション機構11や各デファレンシャルギヤ15、17を介して車輪19a〜19dに伝達させて車両1を後進方向に走行させる。
【0037】
<2.実施の形態の回転数制御手法>
図3は、ハイブリッドECU33が実行する処理のうち、実施の形態としての回転数制御手法に係る処理を機能ブロックとしてブロック図化して示した図である。
図3に示すように、ハイブリッドECU33は、機能ブロックとして、回転数差判定処理部F1と回転数制御処理部F2とを備えるものと表すことができる。
【0038】
回転数差判定処理部F1は、エンジン3側と第二MG10側の動力選択機構23への入力回転数の差が所定の差以下の状態となっているか否かを判定する。これは、車輪19a〜19dの駆動にエンジン3と第二MG10とが用いられるハイブリッド走行時において、エンジン側とモータ側(車輪側)の回転数が近接状態となっているか否か、さらに言えば動力選択機構23において選択動力の切り替えが生じる可能性が高まったか否かを判定していることに相当する。
【0039】
ここで、動力選択機構23への入力回転数の差を検出するにあたっては、第一ポンプギヤ21、第二ポンプギヤ22それぞれの回転数を検出するセンサを設けることも考えられるが、本例のようにハイブリッド車両を前提とする場合には、次の
図4に示すように、どのエンジン回転数を使用するとエンジン回転数(第一ポンプギヤ21の回転数)が第二ポンプギヤ22の回転数と近接したものとなるかという関係性が車速ごとに既知の情報となるため、該情報を利用した判定を行う。
先の
図2に示したように遊星歯車機構7を介してエンジン3、第一MG6、第二MG10が連結されたハイブリッド車両においては、
図4の太線で表すように、車速に対する第二ポンプギヤ22の回転数(本例ではリングギヤ軸7rの回転数)は車速に対して略リニアに変化する。
一方、
図4では、斜線部により、車速ごとの使用可能なエンジン回転数を表しているが、該斜線部と上記の太線とを対比して分かるように、或る車速までは使用可能なエンジン回転数と第二ポンプギヤ22の回転数とが一致し得るものとなる。例えば、図中に例示する車速Vnにおいて、黒丸で表すエンジン回転数が使用された場合には、エンジン回転数が第二ポンプギヤ22の回転数と近接し、動力選択機構23において選択動力の切り替えが生じ得る。
なお、斜線部で表す領域ついて、低速側となるに連れて使用可能なエンジン回転数の上限が抑制されるのは、遊星歯車機構7を介して連結された第一MG6と第二MG10の回転数との関係からの制約である。
【0040】
本例では、
図4に示すような特性に着目し、車速ごとに、第二ポンプギヤ22の回転数に近接するエンジン回転数の範囲を予めハンチング回転数範囲Ah(図中の梨地部分)として定めておき、エンジン3の回転数、具体的には上述した要求駆動力に応じて一旦求めたエンジン回転数が該ハンチング回転数範囲Ah内の値となっているか否かにより、動力選択機構23への入力回転数の差が所定の差以下の状態となっているか否かを判定する。
本例の場合、ハンチング回転数範囲Ahは、車速ごとの第二ポンプギヤ22の回転数に対してそれぞれ上限値側、下限値側に所定のオフセットを与えて定めた範囲とされる。
【0041】
図3に示す回転数制御処理部F2は、動力選択機構23への入力回転数の差が所定の差以下の状態となっていると判定されたことに応じて、エンジン3又は第二MG10の少なくとも一方の回転数を当該入力回転数の差が拡大される方向に変化させる制御を行う。具体的に、本例においては、動力選択機構23への入力回転数の差を拡大させるにあたってはエンジン3の回転数を制御する。
この回転数制御により、例えば
図4の車速Vnで例示したように要求駆動力に応じて求めたエンジン回転数がハンチング回転数範囲Ah内であった場合に対応して、エンジン回転数を該ハンチング回転数範囲Ah外の回転数に制御することが可能となる(図中の白丸参照)。従って、動力選択機構23における選択動力の切り替えが頻繁に行われてしまうこと(選択動力切り替えのハンチング)の防止を図ることができる。
【0042】
ここで、本例では、エンジン回転数をハンチング回転数範囲Ah外の回転数に制御するにあたっては、次の条件を満たすようにする。すなわち、1)要求駆動力を満足し、2)エンジン3と第二MG10(本例では第一MG6も含む)とを含む車輪19a〜19dの駆動系における総合的な動作効率を極大とする、との条件を満たすようにする。
具体的に、本例における回転数制御処理部F2は、要求駆動力に応じて求めたエンジン回転数がハンチング回転数範囲Ah内であったことに応じて、上記の1)及び2)の条件と、3)エンジン回転数をハンチング回転数範囲Ah外の回転数とするとの3条件を満たすように、エンジン3、第一MG6、及び第二MG10それぞれの動作点(回転数とトルク)を求め直す。
上記1)の条件を満たすことで、エンジン回転数を変化させる制御に伴って要求駆動力が得られなくなってしまうことの防止が図られ、運転者の意図した加速感が得られなかったり車速が変化してしまう等といったドライバビリティの悪化の防止を図ることができる。
また、上記2)の条件を満たすことで、エンジン回転数を変化させる制御に伴う損失を最小限に抑えることができる。
【0043】
<3.処理手順>
続いて、上記した実施の形態の回転数制御手法を実現するための具体的な処理の手順を
図5のフローチャートを参照して説明する。
なお、
図5に示す処理は、
図1に示したハイブリッドECU33のCPUが例えば該ハイブリッドECU33の備えるROM等の所定の記憶装置に格納されたプログラムに従って実行するものである。
本例の場合、
図5に示す処理は、ハイブリッド走行時において所定周期で繰り返し実行される。また、
図5に示す処理が開始されるにあたっては、既に上述した要求トルクTが求まり、該要求トルクTに応じた要求駆動力が求まった状態にあるとする。
【0044】
図5において、ハイブリッドECU33はステップS101で、要求駆動力に基づきエンジン3、各MG(第一MG6、第二MG10)の最適動作点を求める処理を行う。最適動作点とは、要求駆動力を満たす動作点(回転数とトルク)のうち、エンジン3、第一MG6、及び第二MG10を含む車輪19a〜19dの駆動系における動作効率を最良とする動作点を意味する。
本例では、エンジン3、第一MG6、第二MG10ごとに動作点と効率との関係を表すマップが用意されており、該マップに基づいて最適動作点を求める。
【0045】
続くステップS102でハイブリッドECU33は、現在の車速に応じたハンチング回転数範囲Ahを特定し、さらに次のステップS103でエンジン回転数がハンチング周波数範囲Ah内か否かを判定する。すなわち、ステップS101で最適動作点として求まったエンジン3の回転数が、ステップS102で特定したハンチング回転数範囲Ah内であるか否かを判定する。
【0046】
エンジン回転数がハンチング回転数範囲Ah内であった場合、ハイブリッドECU33はステップS104に進み、エンジン回転数がハンチング回転数範囲Ah外となるように各動作点を求め直す。具体的に、本例においては、先の1)、2)、及び3)の条件を満たすようにエンジン3、第一MG6、及び第二MG10の各動作点を求め直す。
【0047】
そして、続くステップS105でハイブリッドECU33は、各ECUにそれぞれ対応する動作点の情報を指示し、
図5に示す処理を終える。ここで、ステップS105でハイブリッドECU33は、エンジンECU30に対してはエンジン3について求めた動作点(回転数とトルク)を、第二MGECU32には第二MG10について求めた動作点(回転とトルク)をそれぞれ指示する。この場合、第一MG6の回転数はエンジン3と第二MG10の回転数で決まるため、第一MGECU31に対しては動作点情報としてトルク(第一MG6の動作点として求めたトルク)のみを指示し、回転数は指示しない。
【0048】
一方、エンジン回転数がハンチング回転数範囲Ah内でなかった場合、ハイブリッドECU33はステップS104をパスして上記ステップS105の指示処理を実行し、
図5に示す処理を終える。
【0049】
なお、エンジン回転数をハンチング回転数範囲Ah外の回転数に制御するにあたっては、エンジン回転数を上昇又は低下させるかを、アクセル操作の態様に基づき定めるようにすることもできる。例えば、アクセル開度又はアクセル開度の上昇率が所定の閾値以上である等、運転者が加速を望んでいると推定されるアクセル操作の態様に応じてはエンジン回転数を上昇側に変化させるようにすることが考えられる。また、アクセル開度が0になる、又はアクセル開度の低下率が所定の閾値以上になる等、運転者が減速を望んでいると推定されるアクセル操作の態様に応じてはエンジン回転数を低下側に変化させるようにすることが考えられる。
【0050】
<4.実施の形態のまとめ>
上記のように実施の形態の車両制御装置(例えばハイブリッドECU33)は、第一駆動源(例えばエンジン3)及び第二駆動源(例えば第二MG10)と、被駆動部(例えばオイルポンプ20)と、第一駆動源又は第二駆動源のうち入力される回転数が大きい方の駆動源の動力を選択して被駆動部に伝達する動力選択部(例えば動力選択機構23)とを備えた車両(例えば同1)についての制御を行う車両制御装置であって、第一駆動源と第二駆動源からの動力選択部への入力回転数の差が所定の差以下の状態となっているか否かを判定する回転数差判定部(例えば回転数差判定処理部F1)と、入力回転数の差が所定の差以下の状態となっていると判定されたことに応じて、第一駆動源又は第二駆動源の少なくとも一方の回転数を入力回転数の差が拡大される方向に変化させる制御を行う回転数制御部(例えば回転数制御処理部F2)と、を備えている。
【0051】
これにより、動力選択部における選択動力の切り替わり頻度を低くすることが可能とされる。
従って、被駆動部の駆動源の切り替わりに伴う例えば歯打ち音等の異音に起因して招来される乗員の違和感緩和、及び動力選択部の延命化を図ることができる。
【0052】
また、実施の形態の車両制御装置においては、車両は、第一駆動源と第二駆動源とにより車輪を駆動可能に構成されており、回転数制御部は、運転者の操作入力又は車両の走行状態に基づいて車輪の要求駆動力を求め、要求駆動力を満足するとの条件を満たすように回転数を変化させている。
これにより、駆動源の回転数を変化させる制御に伴って要求駆動力が得られなくなってしまうことの防止が図られる。
従って、運転者の意図した加速感が得られなかったり車速が変化してしまう等といったドライバビリティの悪化の防止を図りつつ、異音に起因した乗員の違和感緩和、及び動力選択部の延命化を図ることができる。
【0053】
さらに、実施の形態の車両制御装置においては、車両は、第一駆動源と第二駆動源とにより車輪を駆動可能に構成されており、回転数制御部は、第一駆動源と第二駆動源とを含む車輪の駆動系における総合的な動作効率を極大とするとの条件を満たすように回転数を変化させている。
これにより、駆動源の回転数を変化させる制御に伴う損失を最小限に抑えることが可能とされる。
すなわち、損失を最小限に抑えつつ、異音に起因した乗員の違和感緩和、及び動力選択部の延命化を図ることができる。
【0054】
さらにまた、実施の形態の車両制御装置においては、車両がハイブリッド車両とされ、第一駆動源がエンジン、第二駆動源が車輪を駆動可能とされたモータとされており、回転数差判定部は、エンジンの回転数が車速に応じて定められた所定の回転数範囲内の値となっているか否かを判定することで、エンジンとモータの入力回転数の差が所定の差以下の状態となっているか否かを判定し、回転数制御部は、入力回転数の差が所定の差以下の状態となっていると判定されたことに応じて、エンジンの回転数を変化させる制御を行っている。
上記構成によれば、動力選択部に対して回転数センサを設けることが不要となる。また、ハイブリッド車両における車輪駆動用のモータが被駆動部の動力源として共用されるため、被駆動部を駆動するエンジン以外の駆動源として、別途にモータを設けることが不要となる。
従って、異音に起因した乗員の違和感緩和、及び動力選択部の延命化を図る上での部品点数の削減、及びコスト削減が図られる。
【0055】
また、実施の形態の車両制御装置においては、回転数制御部は、アクセル操作の態様に基づきエンジンの回転数を上昇又は低下の何れの方向に変化させるかを定めている。
これにより、運転者が加速を望んでいるのにエンジン回転数が低下してしまう、又はその逆等のドライバビリティの悪化の防止を図ることが可能となる。
すなわち、ドライバビリティの悪化の防止を図りつつ、異音に起因した乗員の違和感緩和、及び動力選択部の延命化を図ることができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記で説明した具体例に限定されず、多様な変形例が考えられる。
例えば、上記では、本発明が四輪駆動方式の車両に適用される場合を例示したが、本発明は後輪駆動方式や前輪駆動方式等、他の駆動方式による車両にも好適に適用できる。
また、本発明はハイブリッド車両に限定されず、エンジンを備えない電動車両にも好適に適用できる。
【0057】
また、上記では、第一、第二駆動源の一方がエンジン、他方が車輪を駆動可能なモータとされる場合を例示したが、第一、第二駆動源の組合せは該例に限定されない。
例えば、モータを二つ備え、一方が右側車輪、他方が左側車輪を駆動するように構成され、一方のモータと他方のモータがオイルポンプ20等の被駆動部の動力源としても共用される構成において、本発明における回転数差判定、及び回転数差判定結果に応じた回転数制御を行うこともできる。
この場合の回転数制御において、動力選択部への入力回転数の差を拡大させるにあたっては、一方のモータと他方のモータの少なくとも何れかの回転数を制御すればよい。或いは、双方のモータの回転数を制御することも可能である。
【0058】
また、上記では動力選択部を二つのワンウェイクラッチを複列で設けた構成とする場合を例示したが、例えば上記した特許文献1のように一つのワンウェイクラッチにより動力選択を行う構成を採ることもできる。