特許第6982395号(P6982395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982395
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】インターロイキン10の産生量増加剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20211206BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20211206BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211206BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20211206BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
   A61K38/16ZNA
   A61K38/08
   A61P29/00
   A61P43/00 111
   !C07K7/06
   !C07K14/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-51749(P2017-51749)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-154578(P2018-154578A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599029420
【氏名又は名称】田畑 泰彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 涼介
(72)【発明者】
【氏名】田畑 泰彦
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/141969(WO,A1)
【文献】 特開2014−104193(JP,A)
【文献】 特表2012−502625(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0288001(US,A1)
【文献】 特開2014−007990(JP,A)
【文献】 日本内科学会雑誌 (2010) vol.99, no.9, p.90-95
【文献】 J. Immunol. (1999) vol.162, issue 3, p.1707-1716
【文献】 Pharmacol. Rep. (2016) vol.68, issue 2, p.329-337
【文献】 J. Biomater. Sci. Polym. Ed. (2014) vol.25, no.12, p.1266-1277
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/16
A61K 38/08
A61P 29/00
C07K 7/06
C07K 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)VPGVG配列(3)、GVGVPGAGAGS配列(5)、配列番号12で表されるアミノ酸配列、及び、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを分解して得られる分解ポリペプチドと同じアミノ酸配列からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列から構成されるポリペプチド(A)及び/又は前記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)が水に溶解した水溶液であり、
前記配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを分解して得られる分解ポリペプチドと同じアミノ酸配列は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸配列を含むインターロイキン10の産生量増加剤。
【請求項2】
前記ポリペプチド(A)は、GAGAGS配列(4)を含み、前記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合が0〜65%である請求項に記載のインターロイキン10の産生量増加剤。
【請求項3】
前記ポリペプチド(A)が、(GAGAGS)配列(6)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を有するポリペプチドである請求項1又は2に記載のインターロイキン10の産生量増加剤。
【請求項4】
前記ポリペプチド(A)のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)法による分子質量が0.4〜200kDaである請求項1〜のいずれかに記載のインターロイキン10の産生量増加剤。
【請求項5】
前記インターロイキン10の産生量増加剤の重量を基準として、前記ポリペプチド(A)及び/又は前記ポリペプチド(A’)の合計含有量が0.0001〜30重量%である請求項1〜のいずれかに記載のインターロイキン10の産生量増加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症とは、異物や組織の障害等により、生体にとって有害な刺激が侵入又は内部で形成された場合に生じる局所的な生体防御反応であり、生体にとって有害な刺激を認識、排除することで、局所の機能や構造を回復して正常に保ちつづけるために重要な役割を果たしている。しかしながら、活性化されたさまざまな生体反応システムは、自己免疫疾患等に見られるように、ときに正常な組織や機能に障害を与える場合もあることから、過剰なものは病的現象として治療の対象となる。これらの疾患に対しては抗炎症剤として従来、ステロイド性又は非ステロイド性薬剤等が使用されている。しかしながら、これらの抗炎症剤には、白血球異常や血小板異常等の副作用があるため、使用が制限されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−69111号公報
【特許文献2】特開2009−263308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、マクロファージを炎症部位に遊走させ、抗炎症作用を誘導するインターロイキン10(IL−10)の産生量を増加させることができる抗炎症剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の抗炎症剤は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1〜200個有するポリペプチド(A)及び/又は前記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有する抗炎症剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の抗炎症剤は、マクロファージを炎症部位に遊走させ、抗炎症作用を誘導するインターロイキン10(IL−10)の産生量を増加させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の抗炎症剤について具体的な実施形態を示しながら説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0008】
本発明の抗炎症剤は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1〜200個有するポリペプチド(A)及び/又は前記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有する。
本発明の抗炎症剤が、上記構成であることにより、マクロファージを炎症部位に遊走させ、抗炎症作用を誘導するIL−10の産生量を増加させることができる。したがって、組織の修復を促すことが期待される。
【0009】
まず、本発明の抗炎症剤に含有されるポリペプチド(A)について説明する。
ポリペプチド(A)は、天然物からの抽出、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって得られる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。天然物からの抽出、有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、ポリペプチド(A)を得られるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
【0010】
ポリペプチド(A)は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1〜200個有するポリペプチドである。また、ポリペプチド(A)は、抗炎症性の向上の観点から、上記アミノ酸配列を合計1〜150個有することが好ましく、1〜100個有することがさらに好ましい。
【0011】
ポリペプチド(A)が、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計2個以上有する場合、各アミノ酸配列は同一でも異なっていてもよい。また、同一のアミノ酸配列を複数含む場合、連続していてもよい。具体的には、(VGVPG)配列、(GVGVP)配列及び(VPGVG)配列からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであってもよい。
なお、上記においてa〜cは、それぞれアミノ酸配列の連続する数であり、2〜200の整数である。
各アミノ酸配列が連続する数は、抗炎症性の向上の観点から、2〜100(上記a〜cが2〜100)が好ましく、さらに好ましくは2〜50(上記a〜cが2〜50)であり、特に好ましくは2〜10(上記a〜cが2〜10)である。
【0012】
また、ポリペプチド(A)において、各アミノ酸配列が連続するものである場合、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列の連続する個数は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
すなわち、(VGVPG)配列、(GVGVP)配列及び(VPGVG)配列の、a、b及びcが同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0013】
ポリペプチド(A)は、抗炎症性の向上の観点から、GAGAGS配列(4)を1〜200個有していることが好ましい。
また、ポリペプチド(A)は、抗炎症性の向上の観点から、GAGAGS配列(4)を、1〜100個有することが好ましく、1〜60個有することがさらに好ましい。
また、ポリペプチド(A)が、GAGAGS配列(4)を2個以上有する場合、GAGAGS配列(4)は連続していてもよい。具体的には、ポリペプチド(A)は(GAGAGS)配列を含むものであってもよい。
なお、上記においてdはGAGAGS配列(4)の連続する数であり、整数である。
GAGAGS配列(4)が連続する数は、抗炎症性の向上の観点から、2〜100(上記dが2〜100)が好ましく、さらに好ましくは2〜50(上記dが2〜50)であり、特に好ましくは2〜10(上記dが2〜10)である。
【0014】
ポリペプチド(A)は、抗炎症性の向上の観点から、GVGVPGAGAGS配列(5)を1〜50個有することが好ましい。
また、ポリペプチド(A)は、抗炎症性の向上の観点から、GVGVPGAGAGS配列(5)を、1〜40個有することが好ましく、さらに好ましくは1〜20個有することである。
また、ポリペプチド(A)が、GVGVPGAGAGS配列(5)を2個以上有する場合、GVGVPGAGAGS配列(5)は連続していてもよい。具体的には、ポリペプチド(A)は(GGVGVPGAGAGS)配列を含むものであってもよい。
なお、上記においてeはGVGVPGAGAGS配列(5)が連続する数であり、整数である。
GVGVPGAGAGS配列(5)が連続する数は、抗炎症性の向上の観点から、2〜30(上記eが2〜30)が好ましく、さらに好ましくは2〜10(上記eが2〜10)である。
【0015】
ポリペプチド(A)は、さらに、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)、GAGAGS配列(4)及びGVGVPGAGAGS配列(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列同士の間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。介在アミノ酸配列(Z)は、アミノ酸1個又はアミノ酸が2個以上結合したアミノ酸配列である。介在アミノ酸配列(Z)を構成するアミノ酸の数は、細胞及び組織への親和性の観点から、1〜30個が好ましく、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個である。
介在アミノ酸配列(Z)の具体例としては、VAAGY配列(8)、GAAGY配列(9)及びLGP配列等が挙げられる。
【0016】
ポリペプチド(A)のN及び/又はC末端には、末端アミノ酸配列(S)があってもよい。末端アミノ酸配列(S)は、アミノ酸1個又はアミノ酸が2個以上結合したペプチド配列である。末端アミノ酸配列(S)を構成するアミノ酸の数は、細胞及び組織への親和性の観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜50個、特に好ましくは1〜40個である。
末端アミノ酸配列(S)の具体例としては、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(10)等が挙げられる。
【0017】
ポリペプチド(A)は、上記末端アミノ酸配列(S)以外に、発現させたポリペプチド(A)の精製又は検出を容易にするために、ポリペプチド(A)のN又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるポリペプチド(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
【0018】
ポリペプチド(A)がVGVPG配列(1)を含む場合、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)のアミノ酸数の割合は、抗炎症性の向上の観点から、35〜100%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜100%であり、次にさらに好ましくは40〜95%であり、特に好ましくは45〜80%である。
【0019】
ポリペプチド(A)がGVGVP配列(2)を含む場合、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGVGVP配列(2)のアミノ酸数の割合は、抗炎症性の向上の観点から、35〜100%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜100%であり、次にさらに好ましくは40〜95%であり、特に好ましくは45〜80%である。
【0020】
ポリペプチド(A)がVPGVG配列(3)を含む場合、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVPGVG配列(3)のアミノ酸数の割合は、抗炎症性の向上の観点から、35〜100%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜100%であり、次にさらに好ましくは40〜95%であり、特に好ましくは45〜80%である。
【0021】
ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列のアミノ酸数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<アミノ酸の数の割合の測定方法1>
特定のアミノ酸残基でポリペプチドを切断するプロテアーゼを2種類以上用いてポリペプチド(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」と記載する)にて切断したポリペプチドを分離し、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、ポリペプチド(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の式により、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合を算出する。
VGVPG配列(1)のアミノ酸の数の割合(%)={VGVPG配列(1)の数×5/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
GVGVP配列(2)のアミノ酸の数の割合(%)={GVGVP配列(2)の数×5/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
VPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合(%)={VPGVG配列(3)の数×5/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
【0022】
ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合は、抗炎症性の向上の観点から、0〜65%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜60%であり、次にさらに好ましくは5〜60%であり、特に好ましくは20〜55%である。
【0023】
ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<アミノ酸の数の割合の測定方法2>
特定のアミノ酸残基でポリペプチドを切断するプロテアーゼを2種類以上用いてポリペプチド(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、HPLCにて切断したポリペプチドを分離し、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、ポリペプチド(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の式により、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸数の割合を算出する。
GAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合(%)={GAGAGS配列(4)の数×6/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
【0024】
ポリペプチド(A)のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)法による分子質量は、抗炎症性の向上の観点から、0.4〜200kDaが好ましく、さらに好ましくは0.4〜120kDaである。
【0025】
なお、GPC法による分子質量の測定条件は以下の通りである。
装置:ACQUITY UPLCシステム
カラム:Shodex OHpak SB−806M HQ
移動相:0.15M リン酸緩衝液 pH7.0
流速:0.5ml/min
検出器:ACQUITY UPLC RID検出器
温度:40℃
【0026】
好ましいポリペプチド(A)の例を以下に示す。
(i)VGVPG配列(1)からなるポリペプチド。
(ii)GVGVP配列(2)からなるポリペプチド。
(iii)VPGVG配列(3)からなるポリペプチド。
(iv)GVGVPGAGAGS配列(5)からなるポリペプチド。
(v)(GAGAGS)配列(6)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を有するポリペプチド。
具体例としては、(GAGAGS)配列(6)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるポリペプチドに、さらに、(GAGAGS)配列(11)が1個化学結合した、分子質量が約80kDaの配列(12)のポリペプチド(SELP8K);(GAGAGS)配列(11)を17個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を17個有し、これらが交互に化学結合してなる、分子質量が約82kDaの配列(13)のポリペプチド(SELP0K)等が挙げられる。
【0027】
本発明の抗炎症剤は、上記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有していてもよい。
ポリペプチド(A’)のアミノ酸配列と、ポリペプチド(A)のアミノ酸配列の相同性は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
なお、本発明の抗炎症剤は、ポリペプチド(A)及びポリペプチド(A’)の内、ポリペプチド(A)のみを含有していてもよく、ポリペプチド(A’)のみを含有していてもよく、ポリペプチド(A)及びポリペプチド(A’)の両方を含有していてもよい。
【0028】
本発明の抗炎症剤は、上記ポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A’)を含有するものである。
ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)の合計含有量は、抗炎症性の向上の観点から、抗炎症剤の重量を基準として、0.0001〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜20重量%である。
【0029】
本発明の抗炎症剤には、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)以外に、水を含んでもよい。
水としては、特に限定するものではなく、滅菌されたものが好ましい。滅菌方法としては、0.20μm以下の孔径を持つ精密ろ過膜を通した水、限外ろ過膜を通した水、逆浸透膜を通した水及びオートクレーブで121℃20分加熱して過熱滅菌したイオン交換水等が挙げられる。
抗炎症剤中の水の含有量(重量%)は、細胞及び組織への親和性の観点から、下限は、好ましくは68.79重量%であり、次にさらに好ましくは68.62重量%であり、次にさらに好ましくは68.40重量%であり、次にさらに好ましくは70.00重量%であり、次にさらに好ましくは78.40重量%であり、特に好ましくは78.62重量%であり、次に特に好ましくは78.79重量%であり、最も好ましくは80.00重量%である。また、上限は、好ましくは99.9999重量%であり、さらに好ましくは99.9900重量%であり、次にさらに好ましくは99.3999重量%であり、次にさらに好ましくは99.3900重量%であり、次にさらに好ましくは99.1799重量%であり、特に好ましくは99.1700重量%であり、次に特に好ましくは99.0099重量%であり、最も好ましくは99.0000重量%である。
【0030】
本発明の抗炎症剤は、さらに無機塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもいい。
【0031】
無機塩として、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩は無機塩に含まない。
抗炎症剤中の無機塩の含有量(重量%)は、人間の体液と同等にするという観点から、抗炎症剤の重量を基準として0.5〜1.3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1重量%、特に好ましくは0.85〜0.95重量%である。
【0032】
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
リン酸(塩)としては、リン酸及びリン酸塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
抗炎症剤中のリン酸(塩)の含有量(重量%)は、皮膚弾性を向上する観点から、抗炎症剤の重量を基準として0.10〜0.30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.12〜0.28重量%、特に好ましくは0.14〜0.26重量%である。
【0033】
本発明の抗炎症剤は、さらに抗炎症作用を奏する化合物、アスコルビン酸、グルタチオン、α−トコフェロール、ポリフェノール、トリプトファン、レズベラトロール等を含有していてもよい。
【0034】
抗炎症剤のpHは、抗炎症剤の安定性の観点から、6.8〜8.8が好ましく、さらに好ましくは7.3〜8.3である。
【0035】
本発明の抗炎症剤は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。
【0036】
本発明の抗炎症剤は、細胞や、組織等の生体材料を培養する際に、該生体材料の炎症を抑える目的で、該生体材料の培地に加えてもよい。
生体材料の培地としては、特に限定されないが、例えば、RPMI1640培地、DMEM培地及びαMEM培地等が挙げられる。
また、本発明の抗炎症剤は、最終濃度が0.00001〜30重量%となるように培地に加えられることが好ましく、0.001〜80重量%となるように加えられることが望ましい。
培養対象の生体材料としては、特に限定されないが、移植用細胞、移植用組織等が挙げられる。また、本発明の抗炎症剤を培地に加え、該培地を生体の創傷部位に適用してもよい。すなわち、生体に直接使用してもよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例として本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り「部」は重量部を意味する。
【0038】
<製造例1>
[SELP8Kの作製]
○SELP8K生産株の作製
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPTS0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。以下、このSELP8K生産株を用いて、ポリペプチド(A)の一種である(GAGAGS)配列(6)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を13個有し、これらが交互に化学結合した構造を有する分子質量が約80kDaの配列(12)のポリペプチドであるSELP8K(ポリペプチド(A1))を生産する方法を示す。
【0039】
○SELP8K生産株の培養
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mlフラスコ中のLB培地50mlに接種した。該LB培地に、カナマイシンを最終濃度50μg/mlとなるように加え培養液とし、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)インキュベートした。培養液の濁度がOD600=0.8(吸光度計UV1700:島津製作所製を使用)となった時に、該培養液40mlを、42℃に温められた別のフラスコに移し、42℃で約2時間培養した。その後、培養した培養液を氷上で冷却し、培養液の濁度OD600を測定し、遠心分離にて大腸菌を集菌した。
【0040】
○SELP8Kの精製
集菌した大腸菌を用い、下記工程1:菌体溶解、工程2:遠心分離による不溶性細片の除去、工程3:硫安沈殿、工程4:限外濾過、工程5:陰イオン交換クロマトグラフィー、工程6:限外濾過、工程7:凍結乾燥により大腸菌バイオマスからタンパク質を精製した。このようにして、分子質量が約85kDaの精製したSELP8K(ポリペプチド(A1))を得た。
【0041】
工程1:菌体溶解
集菌した大腸菌100gに対して、脱イオン水200gを加えて、高圧ホモジナイザー(55MPa)にて菌体溶解し、溶解した菌体を含む菌体溶解液を得た。その後、菌体溶解液を氷酢酸にてpH4.0に調整した。
【0042】
工程2:遠心分離による不溶性細片の除去
さらに菌体溶解液を遠心分離(6300rpm、4℃、30分間)して、上清を回収した。
【0043】
工程3:硫安沈殿
工程2で回収した上清に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8〜12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解した。次に、溶解した液に対して、硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8〜12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解し、溶液を得た。
【0044】
工程4:限外濾過
工程3で得た溶液を分子質量30,000カットの限外濾過装置(ホロファイバー:GEヘルスケア製)に供した。工程3で得た溶液に対して、20倍量の脱イオン水を用いて、限外濾過を実施し、限外濾過後のポリペプチド溶液を得た。
【0045】
工程5:陰イオン交換クロマトグラフィー
ポリペプチドの濃度が20g/Lとなるように限外濾過後のポリペプチド溶液を、10mM酢酸ナトリウム緩衝液に加え、その後、陰イオン交換カラムHiPrepSP XL16/10(GEヘルスケア社製)をセットしたAKTAPrime(アマシャム社製)に供した。溶出液として500mM酢酸ナトリウム緩衝液を用いて、溶出画分を回収した。
【0046】
工程6:限外濾過
工程5で得た溶出画分を上記「4:限外濾過」と同様にして処理し、限外濾過後のポリペプチド溶液を得た。
【0047】
工程7:凍結乾燥
ポリペプチド濃度が3g/Lとなるように、工程6で得たポリペプチド溶液を脱イオン水で希釈し、水位が10mm以下となるようにステンレス製のバットに入れた。その後、凍結乾燥機(日本テクノサービス社製)に入れて、−30℃、24時間かけて凍結させた。凍結後、真空度が5Pa以下、−30℃で、110時間かけて1次乾燥、真空度が5Pa以下、30℃で、48時間かけて2次乾燥させ、SELP8K(ポリペプチド(A1))を得た。また、得られたSELP8Kを用いて、下記「アミノ酸の数の割合の測定方法3」により、SELP8K中のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
<アミノ酸の数の割合の測定方法3>
トリプシン(プロメガ(株)製)又はエラスターゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬(株)製)を用いてSELP8Kを37℃で24時間反応し、30残基以下程度まで分解した。その後、HPLCにて分離し、BiopharmaLynx 1.2(日本ウォーターズ(株)製)にてアミノ酸配列を読み取った。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、SELP8Kの全配列を決定した。その後、以下記載の式により、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を算出した。
VGVPG配列(1)のアミノ酸の数の割合(%)={VGVPG配列(1)の数×5/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
GVGVP配列(2)のアミノ酸の数の割合(%)={GVGVP配列(2)の数×5/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
VPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合(%)={VPGVG配列(3)の数×5/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
GAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合(%)={GAGAGS配列(4)の数×6/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
【0049】
<製造例2>
水溶液a[製造例1のSELP8K(ポリペプチド(A1))を10mg及び5mMの塩化カルシウムを含む10mMトリス緩衝液(pH8.8)]1mLに、2mg/mLのエラスターゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬(株)製)2.5μLを加えて、反応溶液とし、40℃で20分反応を行った。反応後のサンプル溶液を、HPLCにより以下の条件で分離し、分子質量が約40kDaであるポリペプチド(A2)を得た。また、得られたポリペプチド(A2)を用いて、上記「アミノ酸の数の割合の測定方法3」により、ポリペプチド(A2)中のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
<HPLCによる分子質量の測定条件>
装置:ACQUITY UPLCシステム
カラム:Shodex OHpak SB−806M HQ
移動相:0.15M リン酸緩衝液 pH7.0
流速:0.5ml/min
検出器:ACQUITY UPLC RID検出器
温度:40℃
【0051】
<製造例3>
水溶液a[製造例1のSELP8K(ポリペプチド(A1))を10mg及び5mMの塩化カルシウムを含む10mMトリス緩衝液(pH8.8)]1mLに、2mg/mLのエラスターゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬(株)製)2.5μLを加えて、反応溶液とし、40℃で30分反応を行った。反応後のサンプル溶液を、HPLCにより上記条件で分離し、分子質量が約20kDaであるポリペプチド(A3)を得た。また、得られたポリペプチド(A3)を用いて、上記「アミノ酸の数の割合の測定方法3」により、ポリペプチド(A3)中のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
<製造例4>
水溶液a[製造例1のSELP8K(ポリペプチド(A1))を10mg及び5mMの塩化カルシウムを含む10mMトリス緩衝液(pH8.8)]1mLに、2mg/mLのエラスターゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬(株)製)2.5μLを加えて、反応溶液とし、40℃で120分反応を行った。反応後のサンプル溶液を、HPLCにより上記条件で分離し、分子質量が約5kDaであるポリペプチド(A4)を得た。また、得られたポリペプチド(A4)を用いて、上記「アミノ酸の数の割合の測定方法3」により、ポリペプチド(A4)中のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
<製造例5>
水溶液a[製造例1のSELP8K(ポリペプチド(A1))を10mg及び5mMの塩化カルシウムを含む10mMトリス緩衝液(pH8.8)]1mLに、2mg/mLのエラスターゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬(株)製)2.5μLを加えて、反応溶液とし、40℃で24時間反応を行った。反応後のサンプル溶液を、HPLCにより上記条件で分離し、分子質量が約1.5kDaであるポリペプチド(A5)を得た。また、得られたポリペプチド(A5)を用いて、上記「アミノ酸の数の割合の測定方法3」により、ポリペプチド(A5)中のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
<製造例6>
ペプチド合成(ライフテクノロジース社)によりアミノ酸配列がVGVPG配列(1)であるポリペプチド(A6)を得た。
【0055】
<製造例7>
ペプチド合成(ライフテクノロジース社)によりアミノ酸配列がGVGVP配列(2)であるポリペプチド(A7)を得た。
【0056】
<製造例8>
ペプチド合成(ライフテクノロジース社)によりアミノ酸配列がVPGVG配列(3)であるポリペプチド(A8)を得た。
【0057】
<製造例9>
ペプチド合成(ライフテクノロジース社)によりアミノ酸配列がGVGVPGAGAGS配列(5)であるポリペプチド(A9)を得た。
【0058】
<実施例1〜9>
ポリペプチド(A1)〜(A9)をそれぞれRPMI1640培地で0.01重量%になるように調製し、実施例1〜9に係る抗炎症剤(1)〜(9)とした。
【0059】
<比較例1>
SEW2871(ケイマンケミカル(株)製)をRPMI1640培地で0.01重量%になるように調製し、比較例1に係る抗炎症剤(1’)とした。
【0060】
<マクロファージ遊走細胞数及びインターロイキン10(IL−10)の産生量測定>
マクロファージの遊走作用は、マウス腹腔マクロファージに対する作用をボイデンチャンバー法に従って評価した。マクロファージはC57BL/6N(雌、6−9週齢)の腹腔に4%チオグリコレート(日本製薬製)を投与し、4日後に腹腔から採取した。これをRPMI1640培地に懸濁し、細胞浮遊液(5×10個/mL)として試験に使用した。24穴ボイデンチャンバー(Transwell、ポアサイズ8μm、コーニング社製)は上室に細胞浮遊液100μL、下室に実施例1に係る抗炎症剤(1)を600μL加えた。これを、炭酸ガスインキュベータ(5%二酸化炭素、95%空気環境下)を用いて37℃で4時間インキュベートし、膜下面に遊走した細胞をヘマカラー染色キット(メルク社製)を使用して染色し、顕微鏡下(400×)で染色された細胞数の計数を7視野で行った。その結果、遊走された細胞数は7視野平均で205個であった。また、試験後の下室のRPMI1640培地上清中のIL−10の量をIL−10定量ELISAキット(R&Dシステムス社製)を用いて定量したところ、843pg/mLであった。結果を表1に示す。
【0061】
また、実施例1に係る抗炎症剤(1)に替えて、実施例2〜9に係る抗炎症剤(2)〜(9)若しくは比較例1に係る抗炎症剤(1’)、又は、ブランクとして抗炎症剤を添加していないRPMI1640培地を加え、上記<マクロファージ遊走細胞数及びインターロイキン10(IL−10)の産生量測定>に記載の方法と同様にマクロファージ遊走細胞数及びIL−10の産生量を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1〜9に係る抗炎症剤を用いると、マクロファージの遊走細胞数が比較例1に係る抗炎症剤を用いた場合及びブランクと同等又はそれ以上であった。
また、実施例1〜9に係る抗炎症剤を用いることにより、IL−10の産生量を極めて多くすることができ、マクロファージの遊走細胞1個に対するIL−10の産生量を極めて多くすることができる。従って、実施例1〜9の抗炎症剤は、抗炎症剤として優れていることがわかった。
なお、IL−10は、炎症性サイトカインの産生を始めとする免疫機能を抑制性に制御する機能を有する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の抗炎症剤は、炎症部位に使用することで抗炎症作用を誘導し、IL−10の産生量を増加させることができる。従って、医薬品等や創傷被覆材、細胞移植用基材等の医療機器として有用である。
また、本発明の抗炎症剤の対象疾患としては、熱傷、皮膚剥削創、難治性皮膚潰瘍、褥瘡、筋疾患、自己免疫疾患、関節疾患等が挙げられる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]