特許第6982401号(P6982401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コバレントマテリアル株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982401
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】炭素短繊維強化複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/83 20060101AFI20211206BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20211206BHJP
   C04B 35/565 20060101ALI20211206BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C04B35/83
   F16D65/12 E
   C04B35/565
   C04B35/80 600
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-90224(P2017-90224)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-188322(P2018-188322A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩二
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−526662(JP,A)
【文献】 特開2002−372080(JP,A)
【文献】 特開2009−067989(JP,A)
【文献】 特開平07−223876(JP,A)
【文献】 特開平05−039478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
F16D 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとつの繊維束あたり1500本以上4000本以下の炭素短繊維束をピッチでコーティング後に解砕して得た基材部用炭素短繊維束にフェノール樹脂を混合して、粒子状の基材部用混合体を得る工程と、
前記炭素繊維束と同一の炭素繊維からなり、ひとつの繊維束あたり500本以上2500本以下の炭素繊維束をピッチでコーティング後に解砕して得た摺動部用炭素短繊維束にフェノール樹脂を混合して、粒子状の摺動部用混合体を得る工程と、
成形型に前記摺動部用混合体と前記基材部用混合体とを投入し、加温下に加圧成形して硬化体を得る工程と、
前記硬化体を2000℃以上で焼成することで焼成体を得る工程と、
前記焼成体を真空中、シリコン溶融含浸法によりケイ素を含浸する工程と、
を含み、
前記基材部用炭素短繊維束の本数は前記摺動部用炭素短繊維束の本数より1.6倍以上多い、
ことを特徴とする炭素短繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項2】
基材部よりも摺動部の炭素短繊維のSiC化率が大きいことを特徴とする請求項1記載の炭素短繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量でかつ、高温下でも耐磨耗性に優れ、例えば、ブレーキ部材などの構造部材に好適な複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキは、制動装置の一種であり、主に、鉄道車両、自動車、又は自転車等に使用されている。車輪とともに回転するブレーキディスクを両面からブレーキパッドで挟み込むことによって摩擦力を発生させ、運動エネルギーを熱エネルギーに変換して制動する仕組みになっている。鉄道車両や自動車等のブレーキディスクには、通常、ステンレス鋼やクロム鋼等の鋼材が用いられている。
【0003】
しかしながら、近年、走行性能の向上や燃費改善のため、車体重量やバネ下重量の軽減が要求されており、ブレーキディスクについても、鋼材よりも軽量な材質への変更が検討されている。このような材質の一つとして、軽量かつ高強度である炭素繊維強化炭化ケイ素セラミックスが注目されている。炭素繊維強化炭化ケイ素セラミックスは、C/C(炭素繊維強化炭素)複合材料に金属シリコンを溶融含浸させ、C/C複合材料中のマトリックスの炭素をケイ素と反応させて炭化ケイ素化したものである。炭化ケイ素は、耐摩耗性や耐熱性に強く、化学的安定性にも非常に優れることから、材料に強度を付与するのに好適である。
【0004】
最近、炭素繊維強化炭化ケイ素セラミックスをブレーキディスクに用いることが検討されている。炭素繊維強化炭化ケイ素セラミックスの損傷許容性を向上させるために、コア体と摩擦層とを有するブレーキディスクが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、摩擦面を有する炭素繊維強化多孔性炭素物体と、コア体とを備え、該炭素物体とコア体とが相互に接続しているブレーキまたはクラッチであって、該炭素物体における気孔の少なくとも一部がケイ素及び炭化ケイ素で満たされ、摩擦面とは離れた側に炭化ケイ素を含有する炭化ケイ素耐高温性接合層を介してコア体と接続されている摩擦要素が開示されている。特許文献1の摩擦要素は、コア体の上に前記炭素物体を載せ、ここに液体ケイ素を浸透させてセラミック化して得られる。
【0006】
特許文献2には、ケイ素が溶浸されかつ炭素繊維強化された多孔性カーボンからなり、摩擦層とコア体とを有する摩擦体が開示されている。特許文献2の摩擦体は、摩擦層を成型し、それをコア体の成形型に入れ、コア体と共に成形し、熱分解及びケイ素溶浸して得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平10−507733号公報
【特許文献2】特開2002−255665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、炭素物体又は摩擦層と、コア体との境界にケイ素溶浸によって形成された境界層ができ、この境界層に起因して強度低下や剥離などの問題が生ずるおそれがある。
そこで、本発明では、境界層ができることなく、物理特性の異なる基材部と摺動部とを有する炭素短繊維強化複合材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の炭素短繊維強化複合材料は、基材部と、前記基材部に接する少なくとも1つの摺動部とを有し、前記基材部及び摺動部はそれぞれ複数の少なくとも一部がSiC化した炭素短繊維束と、前記複数の炭素短繊維束間に存在するSiCマトリックスとを含み、かつ、前記基材部に含まれる複数の炭素短繊維束の平均径が、前記摺動部に含まれる複数の炭素短繊維束の平均径よりも大きいことを特徴とする。
また、前記基材部に含まれる複数の炭素短繊維束の80%以上が、前記摺動部に含まれる複数の炭素短繊維束よりもその繊維径が大きいことが好ましい。
【0010】
前記基材部に含まれる1つの炭素短繊維束は1500本以上4000本以下の炭素繊維からなり、かつ、前記摺動部に含まれる1つの炭素短繊維束は500本以上2500本以下からなることが好ましい。
【0011】
また、本発明の炭素短繊維強化複合材料の製造方法は、ひとつの繊維束あたり1500本以上4000本以下の炭素短繊維束をピッチでコーティング後に解砕して得た基材部用炭素短繊維束にフェノール樹脂を混合して、粒子状の基材部用混合体を得る工程と、前記炭素短繊維束と同一の炭素繊維からなり、ひとつの繊維束あたり500本以上2500本以下の炭素短繊維束をピッチでコーティング後に解砕して得た摺動部用炭素短繊維束にフェノール樹脂を混合して、粒子状の摺動部用混合体を得る工程と、成形型に前記摺動部用混合体と前記基材部用混合体とを投入し、加温下に加圧成形して硬化体を得る工程と、前記硬化体を2000℃以上で焼成することで焼成体を得る工程と、前記焼成体を真空中、シリコン溶融含浸法によりケイ素を含浸する工程と、を含み、前記基材部用炭素短繊維束の本数は前記摺動部用炭素短繊維束の本数より1.6倍以上多い、ことを特徴とする。
さらに、本発明において、基材部よりも摺動部の炭素短繊維のSiC化率が大きいことが好ましい。
本発明では、上記の構成を有することにより、基材部と摺動部との間に境界層ができることなく、高強度でかつ、高靭性を備えた炭素短繊維強化複合材料を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材部と摺動部との間に境界層ができることなく、耐摩耗性が高い摺動層を有し、高強度でかつ、高靭性の炭素短繊維強化複合材料を提供することができる。そして、このような炭素短繊維強化複合材料を、例えば、ディスクブレーキとして用いた場合、従来よりも格段に耐磨耗性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の炭素短繊維強化複合材料は、シリコン溶融含浸(Melt Infiltration:MI)法により作製され、前記炭素短繊維強化複合材料は、基材部と、前記基材部に接する少なくとも1つの摺動部とを有し、前記基材部及び前記摺動部はそれぞれ複数の少なくとも一部がSiC化した炭素繊維束と、該複数の炭素短繊維束間に存在するSiCマトリックスとを含み、かつ、前記基材部に含まれる複数の炭素短繊維束の平均径は、前記摺動部に含まれる複数の炭素短繊維束の平均径よりも大きいことを特徴としている。以下、上記各要件について説明する。
【0014】
上記炭素短繊維強化複合材料は、基材部と、前記基材部と一体化した少なくとも1つの摺動部とを有する。具体的には、基材部と摺動部とを1つずつ有する構造でもよいし、基材部を2つの摺動部で挟んだ構造などであってもよい。
【0015】
上記炭素短繊維強化複合材料中の基材部と摺動部との比率(重量比)は、概ね3:1〜5:1である。
上記炭素短繊維強化複合材料を構成する基材部及び摺動部は、それぞれ複数の少なくとも一部がSiC化した炭素繊維束を含む。少なくとも一部がSiC化した炭素繊維束とは、繊維束に含まれる炭素繊維の一部又は全部が炭化ケイ素化された炭素繊維束をいう。これらの炭素短繊維束は、基材部及び摺動部中で、平行状に配向していてもよいし、二次元又は三次元にランダム配向していてもよい。なお、「平行状」とは、炭素短繊維束がその長さ方向に平行に配列していることを意味するが、必ずしも全ての炭素短繊維束が一方向に正確に配列していることを要さず、一部が平行から外れて配向していてもよい。
【0016】
炭素短繊維束の原料には、市販の炭素繊維を用いることができる。炭素繊維には、高強度・高弾性率の性質を有する種々のものがあるが、本発明の好適な実施形態であるブレーキディスクには、高強度なピッチ系の炭素繊維を用いることが好ましい。
【0017】
基材部に含まれる複数の炭素短繊維束の平均径は、摺動部に含まれる複数の炭素短繊維束の平均径よりも大きい。すなわち、基材部に含まれる複数の炭素短繊維束は、摺動部に含まれる複数の炭素短繊維束よりも平均して太い。
好適には、基材部に含まれる複数の炭素短繊維束の80%以上が、摺動部に含まれる複数の炭素短繊維束よりも太い。そして、太さの差異は、具体的に45〜65%程度であることが好ましい。
【0018】
このように、基材部における炭素短繊維束の平均径を、摺動部における炭素短繊維束の平均径よりも大きくすることで、ケイ素を溶融含浸させたときに、摺動部の炭素短繊維束は多くがSiC化されるのに対し、基材部では、炭素短繊維束が太いために、ケイ素が炭素短繊維束の深部まで浸透せず、炭素短繊維束の中心部分の繊維がSiC化せずに炭素短繊維のまま残存する。そのため、基材部における炭素短繊維束はSiC化された繊維が少ないために、摺動部に比べて柔軟性が高く、摺動部は基材部に比べて、耐摩耗性や耐熱性が高いが、炭素短繊維束の多くがSiC化されているために靭性に乏しく、脆性が大きくなる。このように、柔軟性の高い基材部と、高強度の摺動部とを併せ持つことで、本発明では、耐磨耗性及び強度を確保しつつ、脆性破壊の発生を抑えた炭素短繊維強化複合材料を提供することができる。
【0019】
基材部に含まれる炭素短繊維束1つ当たり、1500〜4000本の炭素繊維からなることが好ましい。一方、摺動部に含まれる炭素短繊維束1つ当たり、500〜2500本の炭素繊維からなることがより好ましい。基材部に含まれる炭素短繊維束1つ当たりの炭素繊維の本数が4000本を超える場合、繊維束間に空隙ができ、これが破壊起点となって強度が低下する場合がある。また、基材部と摺動部との熱伝導差が大きくなり、加熱時に摺動部に亀裂が発生することがある。一方、1500本未満の場合、炭素短繊維束の深部までSiC化が浸透するため、靭性が低下することとなる。
【0020】
また、摺動部に含まれる炭素短繊維束1つ当たりの炭素繊維の本数が2500本を超える場合、摺動部に炭素繊維束の深部まで十分にSiC化されずに炭素繊維が残存し、摩擦係数の低下や磨耗の増加が起こる。一方、500本未満の場合、基材部と摺動部との熱膨張差が大きくなり、亀裂が発生することがある。
【0021】
基材部及び摺動部それぞれの炭素短繊維束1つ当たりの炭素繊維数が上記範囲にあると、基材部に含まれる炭素短繊維束と、摺動部に含まれる炭素短繊維束の太さの違いによるSiC化の差が適当であり、炭素短繊維強化複合材料を高強度及び高靭性、かつ耐摩耗性に優れたものにすることができる。
【0022】
なお、SiCの含有量は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、炭素短繊維強化複合材料の断面の元素濃度を測定して求めることができる。
【0023】
基材部及び摺動部は、それぞれ、前記炭素短繊維束と、該炭素短繊維束間に存在する炭化ケイ素マトリックスとを有している。
炭化ケイ素マトリックスは、それぞれの炭素短繊維束を固め、炭素短繊維強化複合材料を緻密化して、材料としての強度を付与する成分である。
【0024】
炭化ケイ素マトリックスとしては、例えば、フェノール樹脂やピッチなど、およびフェノール樹脂やピッチなどに炭素粉末および/または炭化ケイ素粉末を加えたものを通常2000℃以上で焼成することで、炭化させ、ケイ素(Si)を溶融含浸させることで反応し、SiC化したものである。
炭化ケイ素マトリックスは、炭素短繊維束に対して、概ね50重量%以上70重量%以下程度の量で存在することが好ましい。
【0025】
基材部及び摺動部ともに、本発明の効果を損ねない範囲内で、炭素短繊維束及び炭化ケイ素マトリックス以外に、カーボンブラック、Siなどの添加剤を1〜5wt%程度含んでいてもよい。
【0026】
本発明の炭素短繊維強化複合材料の製造方法は、ピッチでコーティングした基材部用炭素短繊維束にフェノール樹脂を混合して基材部用混合体を得る工程と、前記基材部用炭素短繊維束よりも平均径が細いピッチでコーティングした摺動部用炭素短繊維束にフェノール樹脂を混合して、摺動部用混合体を得る工程と、成形型に前記摺動部用混合体と前記基材部用混合体とを投入し、加温下に加圧成形して硬化体を得る工程と、前記硬化体を2000℃以上で焼成することで焼成体を得る工程と、前記焼成体を真空中シリコン溶融含浸法によるケイ素含浸する工程とを有することを特徴とする。
なお、シリコン溶融含浸法でケイ素の含浸は、その実施が可能な1500℃前後の温度で行えばよい。
また、本発明の炭素短繊維強化複合材料の製造方法は、基材部よりも摺動部の炭素短繊維のSiC化率が大きいことを特徴とする。
【0028】
本発明では、基材部用混合体と摺動部用混合体とを、それぞれ粒子の状態で成形型に投入し、基材部と摺動部とを備える炭素短繊維強化複合材料を一体成形するため、基材部と摺動部との間に境界層ができることがなく、この境界層に起因する強度低下や剥離の発生がない。したがって、本発明の炭素短繊維強化複合材料は高強度及び高靭性を備え、例えば、ディスクブレーキとして使用した場合、従来よりも格段に耐磨耗性を向上させることができる。
【0029】
上記炭素短繊維強化複合材料のJIS R 1601による曲げ強さは、通常100〜150MPa、好ましくは120〜150MPaである。曲げ強さが前記範囲内にあるとき、例えば、ディスクブレーキとして用いた場合に十分な強度を有することができる。
【0030】
また、上記炭素短繊維強化複合材料の破壊エネルギーは通常800〜2000J/m2、好ましくは1200〜2000J/m2である。破壊エネルギーが前記範囲内にあるとき、ディスクブレーキとして用いるのに十分な靭性を有することができる。なお、本明細書において、破壊エネルギーとは、破壊するまでに物体に加えることができるエネルギーのことで、日本セラミックス協会規格JCRS-201「シェブロンノッチ試験片の準静的3点曲げ破壊によるセラミック系複合材料の破壊エネルギー試験方法」により測定する。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0032】
[実施例1]
基材部用の炭素短繊維束(直径7μm以上15μm以下;長さ4mm以上14mm以下;4000本束)を、ピッチをエタノールで35wt%に希釈した溶液に、該炭素繊維束が十分に浸るように浸漬した後、該溶液から取り出し、100℃以下で100分以上乾燥させ、樹脂コーティングした繊維束集合体を得た。前記繊維束集合体を解砕し、基材部用炭素短繊維束を得た。
摺動部用の炭素短繊維束(直径7μm以上15μm以下;長さ4mm以上14mm以下;2500本束、即ち基材部用と同じ径と長さの炭素繊維でひとつの繊維束の炭素繊維本数を2500本に変更したもの)も同様に、ピッチをエタノールで35wt%に希釈した溶液に、該炭素繊維束が十分に浸るように浸漬した後、100℃以下で100分以上乾燥させ、樹脂コーティングした繊維束集合体を得た。前記繊維束集合体を解砕し、摺動部用炭素短繊維束を得た。
次に、前記基材部用炭素短繊維束40〜50wt%とフェノール樹脂50〜60wt%と(基材部用炭素短繊維束及びフェノール樹脂の合計は100wt%)、エタノールとを混合して基材部用混合体を得た。
同様に、前記摺動部用炭素短繊維束55〜65wt%と、フェノール樹脂35〜45wt%と(摺動部用炭素短繊維束及びフェノール樹脂の合計は100wt%)、エタノールとを混合して摺動部用混合体を得た。
成形型に、摺動部用混合体、基材部用混合体、及び摺動部用混合体の順に投入し、100℃以上でかつ100kgf/cm2以上の圧力で加熱、成型してφ150mm×t15mmの硬化体を得た。
この硬化体を還元雰囲気下2000℃以上で40分以上焼成することで焼成体を得た。
さらに得られた焼成体を真空中、約1500℃で溶融ケイ素を含浸して、炭素短繊維強化複合材料を得た。
【0033】
得られた炭素短繊維強化複合材料のSiC化率、曲げ強さ、破壊エネルギーは以下の方法で測定した。
[SiC化率]
炭素短繊維強化複合材料を切断、研磨し、炭素短繊維束の断面を露出させた。炭素短繊維束の中心にX線が当たるように調整し、EDX分析した。得られたSi及びCのピーク強度比から炭素短繊維束のSiC割合を算出した。任意の異なる10箇所の炭素短繊維束の断面をEDX分析し、算出したSiC割合の平均値をSiC化率とした。
[曲げ強さ]
3mm×4mm×40mmの試験片を作製し、JIS R 1601による方法で、クロスヘッドスピードを0.5mm/minとして3点曲げ強さ(MPa)を測定した。
[破壊エネルギー]
3mm×4mm×40mmの試験片を作製し、中央部に、厚さ0.1mmのダイヤモンドブレードを用いて深さ約2mmのストレートノッチを形成し、JCRS−201に準拠して、破壊エネルギーを測定した。支点間距離は30mm、クロスヘッドスピードは0.01mm/minとし、最大荷重値の5%までの単位面積当たりの破壊エネルギー(J/m2)を求めた。
【0034】
[実施例2]
基材部用の炭素短繊維束(直径7μm以上15μm以下;長さ4mm以上14mm以下;1500本束、即ち実施例1と同じ径と長さの炭素繊維でひとつの繊維束の炭素繊維本数を1500本に変更したもの)を、摺動部用の炭素短繊維束(直径7μm以上15μm以下;長さ4mm以上14mm以下;500本束、即ち実施例1と同じ径と長さの炭素繊維でひとつの繊維束の炭素繊維本数を500本に変更したもの)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、炭素短繊維強化複合材料を得た。
実施例1と同様に、炭素短繊維強化複合材料のSiC化率、曲げ強さ、破壊エネルギーを測定した。
【0035】
[比較例1]
基材部及び摺動部ともに、実施例1の基材部用の炭素短繊維束(直径7μm以上15μm以下;長さ4mm以上14mm以下;4000本束、即ち実施例1と同じ径と長さの炭素繊維でひとつの繊維束の炭素繊維本数を4000本に変更したもの)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、炭素短繊維強化複合材料を得た。
実施例1と同様に、炭素短繊維強化複合材料のSiC化率、曲げ強さ、破壊エネルギーを測定した。
実施例1及び比較例1の結果を示す。
比較例1では、実施例1に比べてSiC化率が小さいことから、曲げ強さおよび破壊エネルギーのいずれも劣ることがわかる。
【0036】
【表1】