(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982402
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ヒータ、加熱装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20211206BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20211206BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
G03G15/20 510
H05B3/03
H05B3/00 335
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-97321(P2017-97321)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-227874(P2017-227874A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2020年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-121402(P2016-121402)
(32)【優先日】2016年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮内 智絵
【審査官】
稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−060711(JP,A)
【文献】
特開2001−158120(JP,A)
【文献】
特開2014−211571(JP,A)
【文献】
特開平02−098451(JP,A)
【文献】
特開平06−175517(JP,A)
【文献】
特開平08−055674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/03
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧部材と共にシートを挟んで搬送するとともに、該シートを加熱し、該シートに形成された画像を該シートに定着させるベルトを加熱するヒータであって、
ベース部と、
前記ベース部の上面から突出する突出部と、
前記突出部の上平面にある発熱層と、
前記発熱層の上面に接して前記発熱層の上面を覆い、前記ベルトと上面で摺接する第1保護層と、
前記ベース部の上面と前記発熱層の前記上面と前記突出部の前記上平面とに接し前記発熱層を駆動する電極層と、
を備えるヒータ。
【請求項2】
前記電極層上にあり、頂面が前記第1保護層の頂面より低い第2保護層を備える、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記突出部は、前記ベース部と別体である、請求項1または請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記突出部は、前記ベース部の長手方向に延び、
前記電極層は、前記ベース部の短手方向において、前記突出部の両側にあり、
前記電極層は、
前記ベース部上にある第1電極層と、
前記突出部上にあり、前記第1電極層に接続するとともに、前記短手方向における前記発熱層の端部に接続する第2電極層とを備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載のヒータ。
【請求項5】
加圧部材と、
前記加圧部材と共にシートを挟んで搬送するとともに、シートを加熱し、シートに形成された画像をシートに定着させるベルトと、
前記ベルトを挟んで前記加圧部材と対向し、前記ベルトを加熱するヒータであって、
ベース部と、
前記ベース部の上面から突出する突出部と、
前記突出部の上平面にある発熱層と、
前記発熱層の上面に接して前記発熱層の上面を覆い、前記ベルトと上面で摺接する第1保護層と、
前記ベース部の上面と前記発熱層の前記上面と前記突出部の前記上平面とに接し前記発熱層を駆動する電極層と、
を備えるヒータと、
を備える加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、ヒータの電極層を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧ローラとベルトによりシートを挟む定着装置がある(例えば特許文献1)。この定着装置では、板状のヒータが、ベルトの内面に接し、ベルトを加熱する。ヒータの基板上には、ヒータの長手方向に沿って発熱層がある。ヒータの短手方向において発熱層の両側には、発熱層を駆動する電極層がある。発熱層上には保護層がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−219417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヒータでは、ベルトが保護層に摺動することにより保護層が摩耗すると、電極層がベルトに接触し、ショートするおそれがある。
【0005】
実施形態は、ヒータの電極層を保護する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、ヒータは、ベース部と、突出部と、発熱層と、第1保護層と、電極層と、を備える。突出部は、ベース部から突出する。発熱層は、突出部上にある。第1保護層は、発熱層上にある。電極層は、ベース部上にあり、発熱層を駆動する。
【0007】
実施形態によれば、加熱装置は、加圧部材と、ベルトと、ヒータと、を備える。ベルトは、加圧部材と共にシートを挟んで搬送するとともに、シートを加熱し、シート上の画像をシートに定着させる。ヒータは、ベース部と、ベース部から突出する突出部と、突出部上にある発熱層と、発熱層上にある保護層と、ベース部上にあり、発熱層を駆動する電極層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】面状ヒータの抵抗発熱層および電極層の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、画像形成装置1の模式図である。
画像形成装置1は、読取り部R、画像形成部P、給紙カセット部Cを有する。読取り部Rは、原稿台に設置される原稿シートをCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサなどで読み取り、光信号をデジタルデータに変換する。画像形成部Pは、読取り部Rで読み取られた原稿画像、もしくは外部のパーソナルコンピュータからの印刷データを取得し、トナー像をシート上に形成、定着させるユニットである。
【0010】
画像形成部Pは、レーザ走査部200、および感光ドラム201Y、201M、201C、201Kを有する。レーザ走査部200は、ポリゴンミラー208、および光学系241を有し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像信号に基づき、シート上に形成する像を感光ドラム201Y〜201Kに照射する。
【0011】
感光ドラム201Y〜201Kは、不図示の現像装置から供給される各色トナーを、上記の照射位置に従い保持する。感光ドラム201Y〜201Kは、保持したトナー像を順次転写ベルト207に転写する。転写ベルト207は、無端ベルトであり、ローラ213が回転駆動することで、転写位置Tまでトナー像を搬送する。
【0012】
搬送路101は、給紙カセット部Cにストックされたシートを、転写位置T、定着装置30(加熱装置)、排出トレイ211の順に搬送する。給紙カセット部Cにストックされたシートは、搬送路101の案内により転写位置Tまで搬送され、転写ベルト15が転写位置Tにてトナー像をシートに転写する。
【0013】
トナー像が表面に形成されたシートは、搬送路101の案内に従い定着装置30まで搬送される。定着装置30は、トナー像を加熱、溶融することで、トナー像をシートへ浸透させて定着させる。これにより、シート上のトナー像が外力によって乱されることを防ぐ。搬送路101は、トナー像が定着したシートを排出トレイ211まで搬送し、シートを画像形成装置1の外部に排出する。
【0014】
制御部102は、画像形成装置1内の装置や機構を統括的に制御するユニットであり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの中央演算装置や、揮発性/不揮発性の記憶装置を含む。一つの実施形態として、中央演算装置が記憶装置に記憶されたプログラムを演算実行することで、画像形成装置1内の装置、機構を制御する。また、機能の一部を回路として実装しても構わない。
【0015】
尚、形成対象の画像(トナー画像)を転写位置Tまで搬送し、シート上に転写するまでの各ユニットを含めた構成を転写部9とする。
【0016】
図2は、定着装置30の構成例を示す図である。
定着装置30は、板状の面状ヒータ100、複数のローラに懸架された無端ベルト34を有する。また、定着装置30は、無端ベルト34を懸架し、一定方向に回転駆動させる駆動ローラ33を有する。定着装置30は、無端ベルト34を懸架するとともに張力を与えるテンションローラ35を有する。また、定着装置30は、弾性層が表面に形成された加圧ローラ31(加圧部材)を有する。
【0017】
面状ヒータ100は、無端ベルト34を挟んで加圧ローラ31と対向する位置にあり、加圧ローラ31側に押圧される。面状ヒータ100は、無端ベルト34の内面に接し、無端ベルト34を加熱する。無端ベルト34は、加圧ローラ31との接触部分(ニップ部)にシートを挟んでシートを加熱する。無端ベルト34は、加圧ローラ31と共にシートをシート搬送方向下流側に搬送する。無端ベルト34は、シート上のトナー像をシートに定着させる。すなわち、無端ベルト34は、加圧ローラ31と共にシートを挟んで搬送するとともに、シートを加熱し、シート上の画像をシートに定着させる。
【0018】
尚、無端ベルト34は、面状ヒータ100と接する側から順に、基層(Ni/SUS/PI:厚さ60〜100μm)、弾性層(Siゴム:厚さ100〜300μm)、離型層(PFA:厚さ15〜50μm)の各層から成っている。各厚さの数値や材質などは一例である。
【0019】
無端ベルト34は、加圧ローラ31の回転をベルト動力源としてもよい。
【0020】
図3は、面状ヒータ100の抵抗発熱層5および電極層6の配置を示す平面図である。以下、シート搬送方向であり、面状ヒータ100(ベース部42(
図4))の短手方向でもある方向をZ方向(第2方向)とする。シートの幅方向であり、面状ヒータ100(ベース部42)の長手方向でもある方向をY方向(第1方向)とする。Y方向は、Z方向と直交する。加圧ローラ31に向かう方向であり、ベース部42の鉛直方向でもある方向をX方向とする。X方向は、Z方向およびY方向と直交する。
【0021】
面状ヒータ100は、Y方向に延びるセラミックスの基板4(層型体)を備える。基板4は、搬送されるシート105の面と無端ベルト34を介して対面するよう配置される。基板4において、無端ベルト34と接する面41には、抵抗発熱層5および電極層6が形成される。
【0022】
抵抗発熱層5は、Y方向に間隔をあけて複数形成される。抵抗発熱層5は、通電されることで発熱する。抵抗発熱層5は、平面視でZ方向に長い。
【0023】
電極層6は、抵抗発熱層5のZ方向の両端側に形成される。電極層6は、抵抗発熱層5に直流または交流電圧を印加し、抵抗発熱層5を駆動する。電極層6は、例えばアルミにより形成される。各電極層6には、配線が接続される。各電極層6は、該電極層6を制御する制御回路に配線を介して接続される。
【0024】
電極層6の一部は、抵抗発熱層5上に積層される(
図4参照)。電極層6は、各抵抗発熱層5毎、またはいくつかの抵抗発熱層5毎に、それらを個別に駆動できるようにY方向に分割されてもよい。
【0025】
図4は、面状ヒータ100の構成を示す断面図である。
基板4は、Y方向に延びるベース部42と、Y方向に延びる段差形成部43(突出部)と、を備える。段差形成部43は、ベース部42からX方向に突出し、Y方向に延びる。ベース部42および段差形成部43は、別体であり、それぞれX方向の厚みが異なるグリーンシートである。グリーンシートは、耐熱性のセラミックスである。
【0026】
ベース部42を構成するグリーンシート、および段差形成部43を構成するグリーンシートを重ねた後、X方向両側から加圧した状態で焼成することにより、両グリーンシートを結合できる。ベース部42の厚みは、段差形成部43の厚みより大きい。
【0027】
なお、ベース部42は、単層であってもよく、
図4のベース部42および段差形成部43は一体であってもよい。基板4のZ方向の両端側をY方向に沿って切削することにより、ベース部42および段差形成部43を形成してもよい。
【0028】
基板4の段差形成部43がある面41は、段差形成部43の上面である第1面44と、第1面44のZ方向の両側にあり第1面44より低い第2面45とを備える。第1面44上に抵抗発熱層5が形成され、各第2面45上に電極層6が形成される。電極層6は、一部が抵抗発熱層5上に積層される。
【0029】
電極層6は、Z方向において、段差形成部43の両側にあり、Y方向に延びる。なお、電極層6は、前述したように、抵抗発熱層5を個別またはいくつかのグループに分けて個別にまたはグループ毎に制御するために、Y方向において分割されていてもよい。また、電極層6は、Z方向において、段差形成部43の両側にあるが、抵抗発熱層5に接続する部位は段差形成部43上にある。
【0030】
電極層6は、第1電極層61と、第2電極層62と、接続部63とを備える。
【0031】
第1電極層61は、ベース部42上にある。
第2電極層62は、段差形成部43上にある。第2電極層62の一部は、Z方向における抵抗発熱層5の端部上に積層され、該端部に接続する。
接続部63は、X方向に延び、ベース部42のZ方向における中央側に位置する第1電極層61の端部と、ベース部42のZ方向における端側に位置する第2電極層62の端部と、を接続する。
【0032】
抵抗発熱層5及び電極層6上には保護層7が形成される。保護層7は、例えばSiO2により形成される。保護層7には、無端ベルト34が摺動する。保護層7は、無端ベルト34が抵抗発熱層5及び電極層6に接触することを防ぐ。
【0033】
保護層7は、第1保護層71と第2保護層72とを備える。第1保護層71は、抵抗発熱層5上に形成される。第2保護層72は、電極層6の封止層であり、第2面45上の電極層6上に形成される。具体的には、第1保護層71は、抵抗発熱層5上、および電極層6における第2電極層62上と接続部63上とに形成される。第2保護層72は、第1電極層61上に形成される。
【0034】
第2保護層72の頂面721のベース部42からの高さは、第1保護層71の頂面711のベース部42からの高さより低い。なお、第2保護層72の頂面721は、第1保護層71の頂面711と面一であってもよい。
【0035】
以上の実施形態では、段差形成部43によって抵抗発熱層5の位置を嵩上げでき、抵抗発熱層5を電極層6より高く位置づけることができる。そのため、実施形態では、電極層6(第1電極層61)を抵抗発熱層5よりも低い位置に形成できる。従って、抵抗発熱層5と電極層6とが同じ高さの面上にある場合に比べ、実施形態では、摩耗により保護層7が薄くなった際に、電極層6(第1電極層61)の露出を抑制でき、電極層6をより保護できる。
【0036】
実施形態では、段差形成部43によって抵抗発熱層5の位置を嵩上げでき、抵抗発熱層5を電極層6より高く位置づけることができる。そのため、実施形態では、抵抗発熱層5上の第1保護層71の頂面711の高さを、電極層6上の第2保護層72の頂面721の高さ以上に容易にできる。これにより、実施形態では、無端ベルト34を第1保護層71に接しさせることができ、無端ベルト34が第1保護層71から浮き上がることを抑制できる。そのため、実施形態では、抵抗発熱層5から無端ベルト34への伝熱効率を良好にできる。
【0037】
実施形態では、無端ベルト34が第1保護層71に接するので、無端ベルト34が第1保護層71から浮き上がる従来に比べ、第2保護層72の摩耗を低減できる。そのため、実施形態は、第2保護層72が摩耗して電極層6が無端ベルト34に接触してしまうことを抑制でき、電極層6と無端ベルト34との接触によるショートの発生を抑制できる。
【0038】
(第2実施形態)
図5は、定着装置30Aの構成例を示す図である。
フィルムガイド36は、半円筒形であり、外周面にある凹部361内に面状ヒータ100を収容する。
【0039】
定着フィルム34A(ベルト)は、エンドレス形状の回転体である。定着フィルム34Aは、フィルムガイド36の外周面に嵌められる。定着フィルム34Aは、フィルムガイド36および加圧ローラ31に挟持され、加圧ローラ31の回動に従動する。
【0040】
面状ヒータ100は、定着フィルム34Aに接し、定着フィルム34Aを加熱する。
【0041】
トナー像が形成されたシートが、定着フィルム34Aと加圧ローラ31との間に搬送される。定着フィルム34Aは、シートを加熱し、シート上のトナー像をシートに定着させる。
【0042】
前記各実施形態では、突出部の例として、段差形成部44を説明した。しかし、突出部は、ベース部42からX方向に突出し、上面に発熱層が形成されていれば、断面視矩形でなくてもよく、断面視でどのような形状であってもよい。例えば、突出部は、段差形成部44と同様の断面形状を有しつつも、上面におけるZ方向の両端部が丸くなっていてもよい。また、突出部とベース部42とによる角部も丸くなっていてもよい。
【0043】
上記各実施形態では、加熱装置の一例として定着装置30,30Aを説明した。しかし、加熱装置は、シートを加熱してシート上の画像を消色する消色処理を行ってもよい。この場合、画像は、加熱すると消色する消色色材により形成されているものとする。また、加熱装置は、シートの加熱処理以外に用いられてもよい。加熱装置は、パネル等を均一に加熱乾燥する処理等に用いられてもよい。
【0044】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0045】
1…画像形成装置、5…発熱層、6…電極層、7…保護層、9…転写部、30,30A…定着装置(加熱部材)、31…加圧ローラ(加圧部材)、34…無端ベルト(ベルト)、34A…定着フィルム(ベルト)、41…基板、42…ベース部、43…段差形成部(突出部)、71…第1保護層、72…第2保護層、100…面状ヒータ、Y…Y方向(長手方向)、Z…Z方向(短手方向)。