(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982414
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】非解放型サーモパイル赤外線センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20211206BHJP
H01L 35/32 20060101ALI20211206BHJP
H01L 35/14 20060101ALI20211206BHJP
H01L 35/16 20060101ALI20211206BHJP
H01L 35/18 20060101ALI20211206BHJP
H01L 35/22 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 R
H01L35/32 A
H01L35/14
H01L35/16
H01L35/18
H01L35/22
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-121290(P2017-121290)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2018-13473(P2018-13473A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2020年6月10日
(31)【優先権主張番号】15/194,753
(32)【優先日】2016年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513087297
【氏名又は名称】エクセリタス テクノロジーズ シンガポール プライヴェート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クロペルニッキ,ピオトル
(72)【発明者】
【氏名】マリネスク,ラドュ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヒューミニック,グリゴレ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】カラゴエゾグル,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン,カイ リャン
【審査官】
嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−193804(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0069194(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/145295(WO,A1)
【文献】
特表2003−520447(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/147532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02−G01J 1/60
H01L 35/00−H01L 35/34
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非解放型サーモパイル赤外線センサであって、
底面及び上面を有する基板と、
前記基板の前記上面の少なくとも一部上に配置された熱絶縁材であって、底面及び上面を有する、熱絶縁材と、
前記熱絶縁材の前記上面の少なくとも一部上に配置された極薄材料とを備え、
前記熱絶縁材は、450℃までの温度で安定性を有し、
前記極薄材料は、200nm以下の厚さを有する材料から選択され、かつ450℃より高い堆積温度を必要とする、非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項2】
前記熱絶縁材は、パリレン、ベンゾシクロブテン(BCB)、非晶質フルオロポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、SU−8フォトレジスト及び他のポリマーから選択される、請求項1に記載の非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項3】
前記極薄材料は、2D材料を含む、請求項1に記載の非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項4】
前記極薄材料は、グラフェン、MoS2、SnSe、黒リン(BP)、ポリシリコン、SiGe(シリコンゲルマニウム)、Ge(ゲルマニウム)、窒化ホウ素(BN)、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体及びその組み合わせから成る群から選択される、請求項3に記載の非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項5】
前記熱絶縁材の前記上面の少なくとも別の一部上に配置された第二極薄材料をさらに備える、請求項1に記載の非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項6】
前記基板は、シリコンウェーハ、CMOSウェーハ、プリント基板、又は、450℃を超える温度で不安定である可撓性基板から選択される、請求項1に記載の非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項7】
非解放型サーモパイル赤外線センサであって、
2D材料型センサと基板との間に配置されたパリレン材料を備え、前記パリレン材料は、450℃までの温度で安定性を有し、前記2D材料は、450℃より高い堆積温度を必要とする、非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項8】
前記基板は、シリコンウェーハ、CMOSウェーハ、プリント基板、又は、450℃を超える温度で不安定である可撓性基板から選択される、請求項7に記載の非解放型サーモパイル赤外線センサ。
【請求項9】
非解放型サーモパイル赤外線センサを製造する方法であって、
(a)底面及び上面を有する基板層を提供し、かつ熱絶縁材層を前記基板層の前記上面の少なくとも一部上に堆積させることによって基板アセンブリを形成することと、
(b)底面及び上面を有するキャリア層を提供し、犠牲層を前記キャリア層の前記上面の少なくとも一部上に任意選択として堆積させ、極薄材料層を前記犠牲層の少なくとも一部上又は前記キャリア層の前記上面の少なくとも一部上に堆積させ、かつ結合層を前記極薄材料上に任意選択として堆積させることによってキャリアアセンブリを形成することと、
(c)前記基板アセンブリの前記熱絶縁材層と接触するように前記キャリアアセンブリの前記極薄材料層又は結合層を配置することによって前記基板アセンブリの上に前記キャリアアセンブリを積み重ねることと、
(d)前記キャリアアセンブリを前記基板アセンブリに結合させて結合スタックを提供することと、
(e)前記キャリア層及び任意の犠牲層を前記結合スタックから除去してセンサウェーハを提供することであって、前記センサウェーハは、前記基板層と、前記基板層の前記上面上の前記熱絶縁材層と、前記熱絶縁材層上の任意の前記結合層と、任意の前記結合層上又は前記熱絶縁材層上の前記極薄材料層とを含む、ことと、
(f)前記センサウェーハを構造化して前記非解放型サーモパイル赤外線センサを提供することとを含み、
前記熱絶縁材層は、450℃までの温度で安定性を有し、前記極薄材料層は、200nm以下の厚さを有する1つ以上の材料から製造され、かつ450℃より高い上昇温度を必要とする方法によって堆積される、非解放型サーモパイル赤外線センサを製造する方法。
【請求項10】
前記基板層は、450℃を超える温度で不安定である1つ以上の材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板層は、450℃を超える温度で不安定であるCMOSウェーハ、プリント基板(PCB)又は可撓性基板である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリア層はシリコンから製造される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記キャリア層は、前記極薄材料が堆積されるという条件下で安定性を有する材料から製造される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記熱絶縁材層は、パリレン、ベンゾシクロブテン(BCB)、非晶質フルオロポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、SU−8フォトレジスト及び他のポリマーから成る群から選択された1つ以上の材料から製造される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記極薄材料層は、1つ以上の2D材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記極薄材料層は、グラフェン、MoS2、SnSe、黒リン(BP)、ポリシリコン、SiGe(シリコンゲルマニウム)、Ge(ゲルマニウム)、窒化ホウ素(BN)、III−V族化合物半導体及びII−VI族化合物半導体から成る群から選択された1つ以上の材料から製造される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
任意の前記結合層は、450℃までの温度で安定性を有する1つ以上の高分子材料から製造される、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリアアセンブリを前記基板アセンブリに結合するステップは、ポリマー結合、低温直接結合、融着及び/又は熱圧着を用いて行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記キャリア層及び犠牲層は、前記犠牲層の選択エッチングによって前記結合スタックから除去される、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記選択エッチングの前に、ウェーハ研削プロセスを行って前記キャリア層のバルクを除去する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非解放型サーモパイル赤外線センサを製造する方法であって、
(a)底面及び上面を有する基板層を提供し、かつ熱絶縁パリレン材料層を前記基板層の前記上面の少なくとも一部上に堆積させることによって基板アセンブリを形成することと、
(b)底面及び上面を有するキャリア層を提供し、犠牲層を前記キャリア層の前記上面の少なくとも一部上に堆積させ、2D材料層を前記犠牲層の少なくとも一部上に堆積させ、かつ結合層を前記2D材料層上に任意選択として堆積させることによってキャリアアセンブリを形成することと、
(c)前記基板アセンブリの前記熱絶縁パリレン材料層と接触するように前記キャリアアセンブリの前記2D材料層又は結合層を配置することによって前記基板アセンブリの上に前記キャリアアセンブリを積み重ねることと、
(d)前記キャリアアセンブリを前記基板アセンブリに結合させて結合スタックを提供することと、
(e)前記キャリア層及び犠牲層を前記結合スタックから除去してセンサウェーハを提供することであって、前記センサウェーハは、前記基板層と、前記基板層の前記上面上の前記熱絶縁パリレン材料層と、前記熱絶縁パリレン材料層上の任意の前記結合層と、任意の前記結合層上又は前記熱絶縁パリレン材料層上の前記2D材料層とを含む、ことと、
(f)前記センサウェーハを構造化して前記非解放型サーモパイル赤外線センサを提供することとを含み、
前記熱絶縁パリレン材料層は、450℃までの温度で安定性を有する、非解放型サーモパイル赤外線センサを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、赤外線センサ及び製造の材料移動方法に関し、より詳細には、上昇温度で堆積された極薄材料と新しい熱絶縁材との組み合わせを含む非解放型(unreleased)サーモパイル赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
サーモパイルは、非接触温度測定のために一般的に用いられる赤外線(IR)検出器である。例えば、サーモパイルは、車温度計、近接センサ、熱流束センサ等に用いられる。サーモパイルは、電気的に接続された一連の熱電対から構成され、各対は、異なるゼーベック係数を有する異なる導電性又は半導体材料から構成される。例えば、N型ポリシリコン及びP型ポリシリコンは、従来のサーモパイルに多く使用される。
【0003】
通常、各熱電対の一端は、IRエネルギーを収集するために動作可能である膜と接触して配置される一方、他方端は支持基板上に配置される。収集されたIRエネルギーは、熱電対に渡って温度勾配を作り出し、それによって熱電対がゼーベック効果を介して出力電圧を生成する。既知の特性を有する熱電対に対して、出力電圧を温度値に変更することができる。
【0004】
しかし、熱電対の出力電圧は比較的小さいため、膜内に閉じ込められた熱を最大にすることによって信号を増強させることができる設計及び方法を提供するための試みがなされた。そのような試みとしては、真空包装の使用、膜領域の大幅な増大及び熱分離を与えるために浮遊型(「解放型」)膜の提供を含んでいた。例えば、1つの典型的なプロセスは、低圧化学蒸着(LPCVD)法を用いて、犠牲層(例えば、LPCVD又は熱成長シリコン酸化膜層)を堆積させた後に基板(例えば、シリコン)上に膜材料(例えば、窒化ケイ素、多結晶シリコン)を堆積させることを含む。犠牲層は、後にエッチ穴を介してウェットエッチングすることによって除去され、それによって空洞が作り出される。この空洞の上でセンサが浮遊して膜によって支持される。この浮遊プロセスを、膜を「解放する」と呼ぶこともできる。さらに、露出された膜を囲う空気中に膜からの熱が放散され得るため、空洞内に真空を生成して伝導及び対流を介する熱損失をさらに低減させることができる。
【0005】
そのようなセンサ設計は所望の増強した信号を提供する一方、浮遊型膜を形成するために非常に広範な処理工程が必要であり、これは通常、CMOSプロセス内に8つ以上のマスク層を必要とする。これは、かなりの生産力の低下並びに製造時間及びコストの増大を伴う。さらに、浮遊型膜は脆くて取扱いによって破けやすくダメージを受けやすいことがあり、よって、さらなる生産力の低下並びに製造時間及びコストの増大という結果となる。
【0006】
非浮遊型(非解放型)サーモパイルIRセンサが開発されたが、これはIR検知のために用いることができる熱絶縁材の低い温度収支による低い性能指数(Figure of Merit(FOM))を欠点としている。さらに、高度な感度を提供することができる提案された材料は、通常、CMOSが行われる上昇温度での不安定性によってCMOS互換ではない。したがって、通常、浮遊型センサ及び膜構造が、高度な感度を達成するための標準であった。
【0007】
サーモパイルIRセンサのための製造プロセスの複雑性を克服することによって、製造時間及びコストを減らして生産性を上げることが望ましい。ダメージを受けにくいより構造的に安定した構成を可能にする製造方法及びセンサ設計を提供しながら必要な増強された信号を得ることがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様は、非解放型サーモパイル赤外線センサに関し、このセンサは、底面及び上面を有する基板と、基板の上面の少なくとも一部上に配置された熱絶縁材であって、底面及び上面を有する、熱絶縁材と、熱絶縁材の上面の少なくとも一部上に配置された極薄材料とを備え、熱絶縁材は、450℃までの温度で安定性を有し、極薄材料は、200nm以下の厚さを有する材料から選択され、かつ450℃より高い上昇温度を必要とする方法によって堆積される。
【0009】
いくつかの実施形態では、熱絶縁材は、パリレン(Parylene)、ベンゾシクロブテン(BCB)、非晶質フルオロポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、SU−8フォトレジスト及び他のポリマーから選択される。いくつかの実施形態では、極薄材料は、2D材料から選択される。いくつかの実施形態では、極薄材料は、グラフェン、MoS
2、SnSe、黒リン(BP)、薄いポリシリコン、SiGe(シリコンゲルマニウム)、Ge(ゲルマニウム)、窒化ホウ素(BN)、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体及びその組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、非解放型サーモパイル赤外線センサは、熱絶縁材の上面の少なくとも別の一部上に配置された第二極薄材料をさらに備える。いくつかの実施形態では、基板は、450℃を超える温度で不安定であるシリコンウェーハ、CMOSウェーハ、プリント基板又は可撓性基板から選択される。
【0010】
別の態様によると、本発明は、非解放型サーモパイル赤外線センサであって、2D材料型センサと基板との間に配置されたパリレン材料を備え、パリレン材料は、450℃までの温度で安定性を有し、2D材料は、450℃より高い上昇温度を必要とする方法によって堆積される、非解放型サーモパイル赤外線センサに関する。
【0011】
いくつかの実施形態では、基板は、450℃を超える温度で不安定であるシリコンウェーハ、CMOSウェーハ、プリント基板又は可撓性基板から選択される。
【0012】
別に態様によると、本発明は、非解放型サーモパイル赤外線センサを製造する方法に関する。この方法は、(a)底面及び上面を有する基板層を提供し、かつ熱絶縁材層を基板層の上面の少なくとも一部上に堆積させることによって基板アセンブリを形成することと、(b)底面及び上面を有するキャリア層を提供し、犠牲層をキャリア層の上面の少なくとも一部上に任意選択として堆積させ、極薄材料層を犠牲層の少なくとも一部上又はキャリア層の上面の少なくとも一部上に堆積させ、かつ結合層を極薄材料上に任意選択として堆積させることによってキャリアアセンブリを形成することと、(c)基板アセンブリの熱絶縁材層と接触するようにキャリアアセンブリの極薄材料層又は結合層を配置することによって基板アセンブリの上にキャリアアセンブリを積み重ねることと、(d)キャリアアセンブリを基板アセンブリに結合させて結合スタックを提供することと、(e)キャリア層及び任意の犠牲層を結合スタックから除去してセンサウェーハを提供することであって、センサウェーハは、基板層と、基板層の上面上の熱絶縁材層と、熱絶縁材層上の任意の結合層と、任意の結合層上又は熱絶縁材層上の極薄材料層とを含む、ことと、(f)センサウェーハを構造化して非解放型サーモパイル赤外線センサを提供することとを含み、熱絶縁材層は、450℃までの温度で安定性を有し、極薄材料層は、200nm以下の厚さを有する1つ以上の材料から製造され、かつ450℃より高い上昇温度を必要とする方法によって堆積される。
【0013】
いくつかの実施形態によると、基板層は、450℃を超える温度で不安定である1つ以上の材料を含む。いくつかの実施形態では、基板層は、450℃を超える温度で不安定であるCMOSウェーハ、プリント基板(PCB)又は可撓性基板である。いくつかの実施形態では、キャリア基板はシリコンから製造される。いくつかの実施形態では、キャリア基板は、極薄材料層が堆積されるという条件下で安定性を有する材料から製造される。いくつかの実施形態では、熱絶縁材層は、パリレン、ベンゾシクロブテン(BCB)、非晶質フルオロポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、SU−8フォトレジスト及び他のポリマーから成る群から選択された1つ以上の材料から製造される。いくつかの実施形態では、極薄材料は、1つ以上の2D材料から製造される。いくつかの実施形態では、極薄材料は、グラフェン、MoS
2、SnSe、黒リン(BP)、薄いポリシリコン、SiGe(シリコンゲルマニウム)、Ge(ゲルマニウム)、窒化ホウ素(BN)、III−V族化合物半導体及びII−VI族化合物半導体から成る群から選択された1つ以上の材料から製造される。いくつかの実施形態では、任意の結合層は、450℃までの温度で安定性を有する1つ以上の高分子材料から製造される。いくつかの実施形態では、キャリアアセンブリを基板アセンブリに結合するステップは、ポリマー結合、低温直接結合、融着及び/又は熱圧着を用いて行われる。いくつかの実施形態では、キャリア層及び犠牲層は、犠牲層の選択エッチングによって結合スタックから除去される。いくつかの実施形態では、選択エッチングの前に、ウェーハ研削プロセスを行ってキャリアウェーハのバルクを除去する。
【0014】
別の態様によると、本発明は、非解放型サーモパイル赤外線センサを製造する方法に関する。この方法は、(a)底面及び上面を有する基板層を提供し、かつ熱絶縁パリレン材料層を基板層の上面の少なくとも一部上に堆積させることによって基板アセンブリを形成することと、(b)底面及び上面を有するキャリア層を提供し、犠牲層をキャリア層の上面の少なくとも一部上に堆積させ、2D材料層を犠牲層の少なくとも一部上に堆積させ、かつ結合層を2D材料層上に任意選択として堆積させることによってキャリアアセンブリを形成することと、(c)基板アセンブリの熱絶縁パリレン材料層と接触するようにキャリアアセンブリの2D材料層又は結合層を配置することによって基板アセンブリの上にキャリアアセンブリを積み重ねることと、(d)キャリアアセンブリを基板アセンブリに結合させて結合スタックを提供することと、(e)キャリア層及び犠牲層を結合スタックから除去してセンサウェーハを提供することであって、センサウェーハは、基板層と、基板層の上面上の熱絶縁パリレン材料層と、熱絶縁パリレン材料層上の任意の結合層と、任意の結合層上又は熱絶縁パリレン材料層上の2D材料層とを含む、ことと、(f)センサウェーハを構造化して非解放型サーモパイル赤外線センサを提供することとを含み、熱絶縁パリレン材料層は、450℃までの温度で安定性を有する。
【0015】
本発明の他の態様、実施形態及び利点が、当業者には容易に明らかになるであろう。理解されるように、本発明では、本発明から逸脱することなく他の異なる実施形態が可能である。したがって、以下の記載及び本明細書に添付のあらゆる図面は、事実上説明のためのものであり限定的ではないとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面は、本発明をより深く理解するために含まれ、かつ本明細書に組み込まれてその一部を構成する。本発明の実施形態を示す図面は、本記載とともに、本発明の原理の説明に役立つ。図面における構成部品は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を明確に示す際に強調される。図面においては、同様の構成部品は同様の番号で示す。理解しやすいように、全ての構成部品が全ての図面において表示されない場合がある。
【0017】
【
図1】
図1A〜
図1Gは、本発明の一実施形態による単一の2D材料型センサを有するIRセンサを製造するためのプロセスを示す。
【
図2】
図2A〜
図2Gは、本発明の別の実施形態による二重の2D材料型センサを有するIRセンサを製造するためのプロセスを示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態によるサーモパイルIRセンサの上面図を示す。
【
図4】
図4は、IR吸収の後の
図3のサーモパイルIRセンサのセンサ温度プロファイルを示す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態によるサーモパイルアレイの上面図を示し、ここでは
図3のサーモパイルIRセンサが4つ設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によると、サーモパイルIRセンサ及び製造方法が提供され、それによって、高度な感度を提供し続ける一方、浮遊型膜構造(「解放型」膜)の必要性を排除することを可能にする。そのようなサーモパイルIRセンサは、より高い耐久性を持ち、かつ製造があまり複雑ではなく、安価であまり時間がかからない。本発明のサーモパイルIRセンサは、多結晶シリコン(「ポリSi」)に基づく現在のTPセンサより性能が優れていることが明らかにされている。
【0019】
本発明は、極薄材料と組み合わせた新しい熱絶縁材の使用により上記のような特性を達成する。特に、本発明の実施形態によると、極薄材料型のセンサと基板との間にこれらの新しい熱絶縁材を配置することによってサーモパイルIRセンサが形成される。
【0020】
本発明によると、「新しい熱絶縁材」(本明細書中、単に「熱絶縁材」又は「熱的絶縁材」とも呼ぶ)は、従来の材料と比較して非常に低い熱伝導率、特に、約1W/mKより低い熱伝導率を備える高分子材料であり、上昇温度、特に、約450℃までの温度(すなわち、450℃未満の上昇温度)でさらに安定している。このような熱絶縁材の例としては、パリレン(パリレンHT、パリレンN、パリレンC等あらゆる型のパリレンを含み、総称して「パリレン」とも呼ぶことができる)、ベンゾシクロブテン(BCB)、Cytop(登録商標)(一級(RPH2)、二級(R2PH)及び三級(R3P)アルキルホスフィンを含み得る非晶質フルオロポリマーであって、Rは線形、分岐、環式、又は官能基を含み得る)、ポリ(メチルメタクリレート)及びSU−8フォトレジストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
例えば、パリレンCの熱伝導率は0.084W/mKであり、パリレンHTの熱伝導率は0.096W/mKであり、パリレンNの熱伝導率は0.126W/mKである。これらの値は、それぞれ、SiO
2(1.4W/mK)よりほぼ17倍低く、ほぼ15倍低く、そして11倍以上低い。したがって、パリレン及び本発明の他の同様な熱絶縁材の使用により、センサからの放散よりむしろセンサ内の熱の集中を増大させる。さらに新しく開発された型のパリレン、特にパリレンHTは、450℃までの上昇温度で安定している。これにより、パリレンの使用は、このような上昇温度が一般的に使用される標準プロセスに適合する。これは、上昇温度で不安定になることによりCMOSプロセスなどの標準プロセスで使用できなくなる多数の従来の材料とは異なる。
【0022】
本明細書中で言及するように、「極薄材料」は、200nm以下の厚さ、好ましくは100nm以下の厚さを有するあらゆる材料を含む。本発明の実施形態によると、極薄材料は、450℃を超える温度で製造及び堆積されることがさらに特徴付けられる。いくつかの実施形態によると、極薄材料は、二次元(2D)材料である。本明細書中で言及するように、「2D材料」は、一般的に、全体のサイズに対して非常に薄い材料を含むと理解される。特に、2D材料は、単一の原子又はいくつかの原子の厚さを有する原子的に薄い材料を含む、数ナノメートル又はそれ以下の厚さを有する材料を指すと理解される。2Dのいくつかの例としては、グラフェン、MoS
2、セレン化スズ(SnSe)、黒リン(BP)、薄いポリシリコン(≦200nm)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、Ge(ゲルマニウム)、窒化ホウ素(BN)、III−V族化合物半導体(例えば、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb))及びII−VI族化合物半導体(例えば、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTc)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化亜鉛(ZnSc)、硫化亜鉛(ZnS)及びテルル化亜鉛(ZnTc))が挙げられるが、これらに限定されない。このような材料を有利に使用することにより、IRセンサの検出度を高める。
【0023】
近年、2D材料に対する並外れたゼーベック係数が報告されている。さらに、2D材料は、顕著な熱電性質(例えば、MoS
2に対して10
5uVK
−1ほど高い)を提供する。したがって、約10
2uVK
−1の熱電性質を提供するポリシリコンなどの従来の材料と比べてより多くの熱電能を、2D材料を用いて生成することが可能である。さらに、本発明の実施形態による2D材料型センサを用いることによって、真空包装及び複雑なドーピング工程を排除することができ、よって、製造プロセスをより単純にすることができる。
【0024】
しかし、極薄な2D材料型センサの使用が多数の利点を与える一方、このような材料は、依然として基板内への吸収IR光熱の急速な散逸という結果となり、それによってセンサが十分に加熱されない。したがって、2D材料がサーモパイルIRセンサで使用される構造は、電力損失を最小にしかつセンサの感度を上げるために浮遊型(「解放型」)膜の使用を依然として必要とする。
【0025】
本発明によると、2D材料などの極薄材料の使用に加えて、新しい熱絶縁材が提供される。特に、新しい熱絶縁材は、極薄材料型センサと基板との間に配置され、それによって、基板に対する極薄材料型センサの熱絶縁を作り出す。非常に低い熱伝導率を有する熱絶縁材を、並外れたゼーベック係数及び顕著な熱電性質を提供する極薄材料と組み合わせることにより、基板内への急速な熱放散を防ぐために膜の浮遊(「解放」)が必要ではないサーモパイルIRセンサを提供することができる。したがって、本発明のセンサは、優れた感度を提供するために十分に加熱することができる。
【0026】
2D材料及びパリレンの組み合わせなどのように、極薄材料及び新しい熱絶縁材の両方を組み合わせるサーモパイルIRセンサの形成は、非常に難しく現在までのところ達成されていない。2D材料などの最も極薄の材料は、化学蒸着(CVD)を用いて成長する。CVDは、700℃ほどの高い温度で行われる必要があるプロセスである。この上昇した温度は、パリレンが不安定になる温度により、大きな制約である。さらに、センサを形成するために極薄な2D材料を成長させる必要があるCMOSウェーハ、プリント基板(PCB)及び最も可撓性を有する基板も同様に、許容できる温度暴露で制限される。特に、このような材料は、通常、450℃といった最大温度暴露まで安定している。結果的に、そのような材料上での極薄な2D材料の成長は不可能である。
【0027】
本発明は、上昇温度制限を有する極薄材料及び新しい熱絶縁材の両方を含む構造の形成を可能にするウェーハ搬送技術を提供することによってこれらの障害を克服する。さらに、本技術は、極薄材料及び熱絶縁材を、CMOSウェーハ、PCB、可撓性基板、従来の基板材料及び上昇温度制限を有する材料を含む、あらゆる所望の基板材料に提供することを可能にする。
【0028】
通常、本発明は、新しい熱絶縁材を所望の基板材料(本明細書中、基板ウェーハとも呼ぶ)上に堆積させ、また別に、極薄材料をキャリア基板(本明細書中、キャリアウェーハとも呼ぶ)上に堆積させる。したがって、極薄材料を、必要な上昇温度の下、新しい熱絶縁材又はその新しい熱絶縁材が堆積された基板をそのような上昇温度にさらすことなく堆積させることができる。その後、極薄材料が堆積されたキャリアウェーハは、新しい熱絶縁材が堆積された基板ウェーハに結合される。様々な実施形態によると、この結合はパリレンを用いて形成されるが、低温直接結合、融合、熱圧着及び様々なポリマー結合技術を含むがこれらに限定されないあらゆる従来の結合技術を使用することもできる。結合後、選択エッチング又は他のあらゆる適切な機構を用いてキャリアウェーハを取り除くことができる。その後、センサ材料を、所望の最終用途のために必要に応じて構成することができる。
【0029】
同じ参照符号が同じ部分を指す図面の様々な図を参照すると、
図1A〜
図1Gには、単一の2D材料層を含む熱電対を製造するためのプロセスの一例を示している。この実施形態では、熱絶縁材はパリレンであり、極薄材料は2D材料であり、結合材はパリレンであるが、他の熱絶縁材、極薄材料及び結合材を、パリレン及び2D材料の代わりに適切に用いてもよい。
【0030】
図1Aに示すように、底面2及び上面3を有する基板1が提供される。この基板1は、上昇温度、例えば、2D材料などの極薄材料が堆積される上昇温度で不安定になり得る材料を含む、従来の任意の基板材料から製造されてよい。基板1のいくつかの例としては、CMOSウェーハ、プリント基板(PCB)、ポリマー基板、可撓性基板、及びシリコン/ゲルマニウム/石英ウェーハが挙げられるが、これらに限定されない。特に、
図1Aに図示する実施形態に示すように、パリレン4が、基板1の上面3に堆積される。この堆積は、従来の任意の方法を用いて行うことができる。
【0031】
図1Bに示すように、底面6及び上面7を有する別のキャリア基板5が提供される。示されるように、犠牲層8がまずキャリア基板5の上面7に設けられてよい。この犠牲層8は任意であるが、後に続くキャリア基板5の除去を容易にし得る。さらに、この犠牲層8は、例えば、別のエッチ技術(例えば、DRIE又は別のウェットエッチ技術)を用いてキャリア基板を除去した場合、保護層としてさらに機能することができる。その後2D材料9が犠牲層8上で成長するか、又は犠牲層8が使用されない場合キャリア基板5の上面7に直接成長する。いくつかの実施形態では、中間層(図示せず)を、より高い粘着性のために犠牲層8の下に任意選択として設けてもよい。いくつかの実施形態では、2D材料を犠牲層エッチングステップから保護するために、保護層(図示せず)を犠牲層8の上に任意選択として設けてもよい。例示的な実施形態では犠牲層8は銅であるため、犠牲層8は金属として表示される。この銅は、金属ウェットエッチングを用いてエッチングされてキャリアウェーハのキャリア基板5を除去する。他のエッチング技術(例えば、DRIE)を用いた場合、犠牲層8はSiO2などの保護層として形成されてよく、これは犠牲層というよりむしろエッチストップとして機能する。このような実施形態では、この層は、金属付着を用いて2D材料層を電気的に接続するために後続のステップで除去される必要がある。本発明によると、キャリア基板5は、シリコンから形成されてよく、又は、直接若しくは犠牲層8及び/又は中間層を介して極薄材料9が上に堆積できる他の従来の任意の材料から形成されてもよい。したがって、キャリア基板5を形成する材料は、これらの層の堆積が行われる必要条件で安定していなければならない。
【0032】
次に、
図1Cに示すように、結合層10が2D材料層9の上に従来の任意の堆積方法によって堆積されて
図1A及び
図1Cの2つのウェーハ/基板アセンブリの結合を可能にする。この結合層10は、パリレン若しくは他の熱絶縁材であってもよく、又は非晶質及びポリマーベースの結合材を含む他の従来の結合材であってもよい。結合層10として使用する材料の選択について、パリレン/結合層全体が熱絶縁を保証するのに十分に厚ければ、特段制限はない。いくつかの実施形態では、結合層10は設けられておらず、
図1Aの基板1上に設けられたパリレン層4が結合材として利用される。
【0033】
次に、
図1Dに示すように、
図1Aのパリレン層4及び
図1Cの結合層10は、互いに接触するように配置され、2つのウェーハスタックは一緒に結合される。例えば、
図1Dに示すように、
図1Cのキャリアウェーハアセンブリを反転させて
図1Aの基板ウェーハアセンブリの上に積み重ねてもよい。当然ながら、他の方法を用いて
図1A及び
図1Cの2つのウェーハアセンブリをスタック構成で提供してそれらを一緒に結合させることもできる(例えば、
図1Aの基板ウェーハアセンブリを反転させて
図1Cのキャリアウェーハアセンブリの上に積み重ねてもよく、又は、
図1A及び
図1Cの2つのウェーハアセンブリを隣同士に積み重ねてもよい)。ポリマー結合、低温直接結合及び熱圧着を含むがこれらに限定されないあらゆる種類の結合技術を用いてもよい。図示する実施形態に示すように、
図1Aのパリレン層4及び
図1Cの結合層10は、互いに接触するように配置されて一緒に結合される。このような結合は、温度の上昇、圧力の印加及び/又は場合によってはO
2プラズマ処理の下で行うことができる。あるいは、結合層10が設けられていない場合、
図1Aのパリレン層4及び
図1Cの2D材料層9は、互いに接触するように配置されて圧力を印加することによって一緒に結合される。
【0034】
結合後、選択エッチング又は他の従来のプロセスを用いてキャリアウェーハ5を除去し、それによって、
図1Eに示すようなセンサウェーハ構造を提供する。示されるように、この構造は、基板1、基板1の上面3に設けられたパリレン層4、結合材としてさらなるパリレン層10(結合層10が設けられている場合)、それに続いて2D材料9を含む。例えば、いくつかの実施形態では、キャリアウェーハ5は、例えば、金属、SiO
2又は他の選択エッチングプロセスを用いて、犠牲層8を選択的にエッチングすることによって除去することができる。このプロセスは、犠牲層8及び付随のキャリアウェーハ5の両方を除去する。いくつかの実施形態では、選択エッチングプロセスの前に、ウェーハ研削プロセス等を行ってキャリアウェーハのバルクを除去することができる。当然ながら、当業者には容易に理解されるように、他の従来の技術を代わりに用いてキャリアウェーハ5及び犠牲層8(設けられている場合)を除去することができる。
【0035】
犠牲層8(含まれる場合)及びキャリアウェーハ5の除去後、センサウェーハの構造化を行うことができる。例えば、
図1Fに示すように、パリレン4、結合層10(この実施形態では、パリレンである)及び2D材料9が構築され、2D材料9はセンサを構成して基板1への熱接続を提供する。さらに、電気めっき又は金属スパッタリングを行って熱スタッドを生成する。特に、スパッタリングプロセスを行って熱電対を一緒に接続すると同時に、キャリア基板1への熱接触を生成する。単一の2D材料センサに対しては、熱電対は、2D材料9及びスパッタ金属α2によって形成することができる。電気めっきを用いることができる一方、このプロセスはシード層を必要とし、これによってセンサの短絡が発生し得る。したがって、金属スパッタリングが好ましい。次いで、金属化を介して外側センサ部分を基板1と熱接続することによってセンサの冷接点を達成することができる。例えば、金属スパッタリングを行って金属12を堆積させることができ、これは2D材料9を電気的に接続して熱電対を形成する。同時に、これは、2D材料9と基板1との間に熱接触を確立させてサーモパイルセンサにおいて冷接点領域を形成する。
【0036】
結果の構造では、金属12はゼーベック係数材料として機能する。吸収体13は、上層としてさらに堆積されてIR放射を吸収する。吸収体13は、干渉及び有機材料を含むがこれらに限定されない従来の任意の材料から製造されてよく、さらに、従来の吸収体に従ってサイズ変更して構成することができる。
【0037】
図2A〜
図2Gは、製造プロセスが
図1A〜
図1Gに示すプロセスと類似している本発明の別の実施形態を示している。
図2A〜
図2Gに示す実施形態の主な違いは、この実施形態では、
図1A〜
図1Gによって提供される単一の2D材料層熱電対ではなく、二重の2D材料層熱電対が設けられていることである。したがって、
図2Bでは、
図1Bに示す単一の2D材料9の堆積ではなく、第一2D材料29及び第二2D材料30が、キャリアウェーハ25上に堆積される。第一2D材料29及び第二2D材料30は、例えば、2つの異なる2D又は極薄材料であってよく、「異なる」2D又は極薄材料とは、異なるゼーベック係数を所有することを意味する。
図2A〜
図2Gの残りのプロセスステップは、
図1A〜
図1Gに関連して上記で述べたものと同様であるか又は本質的に同じであり得る。
【0038】
特に、
図2Aでは、パリレン24が基板ウェーハ20の上面23に堆積される。
図2Bでは、犠牲層28が、任意選択として、キャリアウェーハ25の上面27に堆積されてよい。第一2D材料29は、その後、犠牲層28の一部、例えば左側に(又は犠牲層28が設けられていない場合、キャリアウェーハ20上に直接)堆積される。同様に、第二2D材料30は、犠牲層の別の部分、例えば右側に(又は犠牲層28が設けられていない場合、キャリアウェーハ20上に直接)堆積される。当然ながら当業者には明らかなように、あらゆる数の2D材料のあらゆる構成(
図2A〜
図2Gに詳しく示す構造に加えて)を、所望の最終構造に基づいて使用かつ決定することができる。
図2Cに示すように、結合層28(パリレン、熱絶縁材又は従来の任意の結合材であってよい)は、任意選択として2D材料28,29の上に堆積される。その後、
図2Cのキャリアウェーハアセンブリを反転させて
図2Aで形成された基板ウェーハアセンブリの上に積み重ねる(あるいは、2Dに関して上記で述べたように、他のあらゆる方法を用いて
図2Aの基板ウェーハアセンブリと
図2Cのキャリアウェーハアセンブリを一緒に積み重ねてもよい)。その後、キャリアウェーハアセンブリ及び基板ウェーハアセンブリは、あらゆる様々な結合技術を用いて一緒に結合されて
図2Dの構造を提供する。結合後、キャリアウェーハ25は、選択エッチング又は他の従来のプロセスを用いて除去されて
図2Eに示すセンサウェーハ構造を提供する。示されるように、センサウェーハ構造は、基板20、基板20の上面23に設けられたパリレン24層、結合材としてのさらなるパリレン層40、それに続いて2D材料29,30を含む。
【0039】
犠牲層28(含まれる場合)及びキャリアウェーハ25の除去後、
図2Eに示すセンサウェーハの構造化を行うことができる。例えば、
図2Fに示すように、パリレン24、結合層40及び2D材料29,30が構築され、2D材料29,30はセンサを構成して基板1への熱接続を提供する。さらに、電気めっきを行って熱スタッドを生成し、その後、金属化を介して外側センサ部分を基板20と熱接続することによってセンサの冷接点を達成することができる。例えば、金属スパッタリングを行って、2D材料29,0を電気的に接続しかつ熱電対を形成する金属32を堆積させてもよい。同時に、これは、2D材料29,30と基板20との間に熱接触確立させてサーモパイルセンサにおいて冷接点領域を形成する。吸収体33を上層としてさらに堆積させてIR放射を吸収する。
【0040】
図3は、二重2D材料層29,30を熱電対として含みかつパリレン24(結合材として使用する場合、任意選択としてパリレン40も)を2D材料層29,30と基板20との間に配置された熱絶縁材として含む、本発明のある実施形態によるサーモパイルIRセンサの上面図を示している。示されるサーモパイルIRセンサは、例えば、
図2A〜
図2Gに示す実施形態に従って製造することができる。この図では基板20はパリレン層29,30の真下に位置決めされるため、基板20は図示されていないことに留意されたい。
【0041】
図3に示す構造の温度プロファイルを
図4にさらに示している。特に、この図は、IR光の入射の際のセンサ内の熱分布を示している。まず、IR光は、吸収層によって熱に変換される。その後、熱は構造全体に広がる。ここで示されるのは定常状態であり、例証されるように、熱拡散は、一定の時間の後に飽和状態に達している。示されるように、ほとんどの熱はセンサの真ん中に集中し、センサの真ん中と端との間には温度差がある。この温度差は、2D材料のゼーベック係数の差と一緒に電圧出力を生成する。通常、温度差が大きいほど良い。
【0042】
本発明の実施形態によると、サーモパイルIRセンサは、直列に電気的に接続された数個の熱電対を含んでよい。サーモパイルセンサアレイをさらに構築することもできる。例えば、複数の熱電対100を電気的に接続して
図5に示すようなサーモパイルアレイ102を提供することができる。特に、
図5は、
図3に示す実施形態によるセンサであり得る、2列に配置された4つのサーモパイルIRセンサアレイを示している。当然ながら、当業者には理解されるように、サーモパイルアレイ102は2列に配置された4つのサーモパイルIRセンサを含むように示されているが、あらゆる数のサーモパイルIRセンサが含まれてもよく、またあらゆる所望の構成で配置されてもよい。
【0043】
本ウェーハ/基板結合方法を用いることによって、極薄材料は700℃までの必要な温度で成長することができる一方、パリレン及び他の熱絶縁材の熱不安定性問題及び様々なウェーハを製造するための許容温度収支問題を克服する。本ウェーハ結合方法は、サーモパイルセンサを、シリコンウェーハ、CMOSウェーハ、回路基板(PCB)、及び上昇温度制限をも有し得る他の所望の可撓性基板を含むがそれらに限定されない、あらゆる基板上に直接結合するために用いることもできる。可撓性基板のいくつかの例としては、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)及び透明の導電ポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。CVD成長材料を、450℃の最大許容温度を有するCMOSウェーハ、PCB又は可撓性基板上に組み込むには課題を有するため、このような方法は有益である。本発明は、所望の材料を必要な上昇温度で最初のウェーハ上に成長させて、その後成長した材料をCMOSウェーハ、PCB又は可撓性基板に結合することによって、温度制限に関わらず、上記のような構造を製造することができる。さらに、本材料及び方法により、より薄い基板の使用を可能にし、それによって、センサの機械的可撓性が必要である用途に対して、上記のような構造を実現することができる。
【0044】
さらに、本発明は、パリレンなどの新しい材料を用いてセンサの熱的絶縁を可能にし、これは高い感度を達成するための膜の浮遊/解放を不必要にする。結果的に、全体の製造プロセスが簡略化されて結果の構造は次の取扱い及び包装工程に対して非常に頑強である。これは、製品のより高い生産量及びより単純な製造プロセスによる費用削減に繋がる。
【0045】
本発明によって提供される方法及びデバイスは、全ての既知のサーモパイルアレイタイプを含む様々な用途、特に、小型アレイ用途、空調システム、自動車工業、家電製品、存在及び動作検出、人数計測及びウエラブルセンサにおいて大変有用となる。
【0046】
当業者には明らかなように、本発明の範囲又は精神を逸脱することなく本発明の構造に様々な変更及び変化を加えてもよい。
【0047】
以上を鑑みて、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物に該当する限り、本発明の変更及び変化も包含することを意図するものである。