特許第6982422号(P6982422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982422
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】車両の走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20211206BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   G08G1/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-134795(P2017-134795)
(22)【出願日】2017年7月10日
(65)【公開番号】特開2019-16278(P2019-16278A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】正根寺 崇史
【審査官】 菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−279363(JP,A)
【文献】 特開2017−059254(JP,A)
【文献】 特開2014−215698(JP,A)
【文献】 特開2015−069341(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0159353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
G08G 1/00−99/00
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する道路種別を識別する道路種別識別手段と、
前記道路種別に対応した複数の自動運転モードを有し、前記道路種別識別手段で推定した前記道路種別に対応する前記自動運転モードを設定する走行支援制御手段と
を有する車両の走行支援装置において、
前記自車両前方の走行環境を撮像する撮像手段を有し、
前記道路種別識別手段は、
前記撮像手段で撮像した前記走行環境の画像情報に基づき歩行者及び自転車を含む動的対象物と、信号機及び道路幅を含む静的対象物とからなる道路種別推定対象物を取得する道路種別推定対象物取得手段と、
前記道路種別推定対象物取得手段で取得した前記静的対象物と前記動的対象物とからなる前記各道路種別推定対象物の単位時間当たり、或いは単位距離当たりの物理量を前記各道路種別の特徴を表す特徴要素として各々設定し、該各特徴要素と該特徴要素毎に設定した閾値とを比較して、前記特徴要素毎に前記道路種別を評価する道路種別評価手段と、
前記道路種別評価手段で評価した前記特徴要素毎の前記道路種別の評価を集計して前記道路種別の総評価を求める道路種別総評価手段と、
前記道路種別総評価手段で前記道路種別毎に集計した前記道路種別の総評価を比較して、前記道路種別を推定する道路種別推定手段と
を備え、
前記走行支援制御手段は、前記道路種別推定手段で推定した前記道路種別に対応する前記自動運転モードを実行させることを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項2】
前記道路種別識別手段は、前記道路種別評価手段での前記特徴要素毎に行った前記道路種別の前記評価に対し、優先度に従って重み付けする重み付け手段を更に有し、
前記道路種別総評価手段は、前記重み付け手段で重み付けした前記評価を集計する
ことを特徴とする請求項1記載の車両の走行支援装置。
【請求項3】
前記優先度は前記道路種別推定対象物の安全性を確保する必要のある前記動的対象物の前記特徴要素を上位に、前記道路種別を推定するに過ぎない前記静的対象物の前記特徴要素を下位に順位づけている
ことを特徴とする請求項2記載の車両の走行支援装置。
【請求項4】
前記走行支援制御手段は、前記道路種別総評価手段で前記道路種別毎に集計した前記道路種別の総評価の比較値が、予め設定されている誤差範囲内の場合、前記道路種別が推定できないと判定して自動運転を解除する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転において撮像手段で撮像した自車両前方の走行環境の画像情報に基づき、自車両進行路の道路種別を推定する車両の走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中における運転者の運転負荷を軽減するため、先行車追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、自動ブレーキ制御、車線逸脱防止(LDP:Lane Departure Prevention)制御、車線維持(Lane Keep Assist)制御、自動車線変更制御、自動発進制御等、車両に搭載されたカメラ等から得られる情報を利用して、車両の運転操作(発進、加速、操舵、制動、停車)の一部、若しくは全部を、電子制御システムが自動で行う自動運転システムが開発されている。
【0003】
そして、この自動運転システムよる自動運転は、自動車専用道路(多くの場合、高速道路が該当するため、以下においては「高速道路」と称する)での使用を想定したモード(高速道路モード)と、高速道路のみならず一般道路での使用をも想定したモード(一般道路モード)とがある。高速道路モードで選択する自動運転としては、運転者が運転操作に全く関与しない完全自動運転、或いは全ての運転は自動で行うが緊急時は運転者が操作する条件付き自動運転等がある。又、一般道路モードとしては、運転者の操作を限られた条件で一部自動化する部分自動運転、及び基本的には運転者が運転するが一部操作を支援する運転支援制御がある。
【0004】
例えば、車線逸脱防止制御、車線維持制御、自動車線変更制御、自動発進制御は、高速道路モードに含まれ、又、先行車追従制御(ACC)、自動ブレーキ制御は、一般道路モードに含まれる。
【0005】
従って、車両が走行する進行路が高速道路から一般道路へ切り替わる際には、自動運転も高速道路モードから一般道路モードに切換える必要がある。同様に、進行路を一般道路から高速道路へ切り替わる際には、自動運転を一般道路モードから高速道路モードに切換える必要がある。
【0006】
しかし、進行路が切り替わる毎に運転者が自動運転のモードをいちいち切換えることは、煩雑であり、切換え操作を忘れることもある。特に、高速道路から一般道路へ進行路が切り替わった際に、自動運転のモードの切換えを忘れると、多くの歩行者が往来している一般道路において高速道路モードが実行されてしまう不都合がある。
【0007】
車両の進行路が高速道路から一般道路かを判定する技術としては、例えば特許文献1(特開2010−49382号公報)に開示されているように、カーナビゲーション装置からの情報に基づいて判定する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−49382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、カーナビゲーション装置からの情報に基づいて、自車両の進行路が一般道路か高速道路かを判定する技術では、カーナビゲーション装置が搭載されていない車両に適用することができず、汎用性に欠ける問題がある。又、カーナビゲーション装置からの情報に基づいて自動運転のモードを正しく切換えるためには、常に最新の道路地図に更新されている必要があり、維持費が嵩む不都合がある。
【0010】
更に、カーナビゲーション装置からの情報に基づいて自動運転のモードを自動的に切換えるシステムでは、地図情報と自動運転システムとを車内通信回線を介して接続させるシステムを構築する必要がある。
【0011】
従って、後づけのナビゲーション装置を用いて構築することは困難であり、当初より搭載されている純正ナビゲーション装置が必須となるため汎用性に欠ける問題がある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、自動運転において、カーナビゲーション装置に依存することなく、自車両が走行する道路の種別を高い精度で推定することが可能で、高い汎用性を得ることのできる車両の走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、自車両が走行する道路種別を識別する道路種別識別手段と、前記道路種別に対応した複数の自動運転モードを有し、前記道路種別識別手段で推定した前記道路種別に対応する前記自動運転モードを設定する走行支援制御手段とを有する車両の走行支援装置において、前記自車両前方の走行環境を撮像する撮像手段を有し、前記道路種別識別手段は、前記撮像手段で撮像した前記走行環境の画像情報に基づき歩行者及び自転車を含む動的対象物と、信号機及び道路幅を含む静的対象物とからなる道路種別推定対象物を取得する道路種別推定対象物取得手段と、前記道路種別推定対象物取得手段で取得した前記静的対象物と前記動的対象物とからなる前記各道路種別推定対象物の単位時間当たり、或いは単位距離当たりの物理量を前記各道路種別の特徴を表す特徴要素として各々設定し、該各特徴要素と該特徴要素毎に設定した閾値とを比較して、前記特徴要素毎に前記道路種別を評価する道路種別評価手段と、前記道路種別評価手段で評価した前記特徴要素毎の前記道路種別の評価を集計して前記道路種別の総評価を求める道路種別総評価手段と、前記道路種別総評価手段で前記道路種別毎に集計した前記道路種別の総評価を比較して、前記道路種別を推定する道路種別推定手段とを備え、前記走行支援制御手段は、前記道路種別推定手段で推定した前記道路種別に対応する前記自動運転モードを実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮像手段で撮像した走行環境の画像情報に基づいて道路種別を推定するようにしたので、自動運転において、カーナビゲーション装置に依存することなく、自車両の走行する道路の種別を高い精度で推定することが可能で、高い汎用性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】運転支援装置の概略構成図
図2】自車両の自動運転による走行状態を示す概略俯瞰図
図3】道路種別推定ルーチンを示すフローチャート
図4】総評価ポイント算出処理サブルーチンを示すフローチャート
図5】自動運転モード設定ルーチンを示すフローチャート
図6】車載カメラユニットで撮像した一般道路の画像の説明図
図7】車載カメラユニットで撮像した高速道路の画像の説明図
図8】一般道路と高速道路との評価ポイントを特徴要素毎に示す評価表の説明図(その1)
図9】一般道路と高速道路との評価ポイントを特徴要素毎に示す評価表の説明図(その2)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示す運転支援装置1は、図2に示す自車両Mvに搭載されている。この運転支援装置1は、走行支援制御手段としての走行支援制御ユニット11、エンジン制御ユニット(以下「E/G_ECU」と称する)12、パーワステアリング制御ユニット(以下「PS_ECU」と称する)13、ブレーキ制御ユニット(以下「BK_ECU」と称する)14等の各制御ユニットと道路種別識別手段としての道路種別識別部16とを備えている。又、各制御ユニット11〜14は、CAN(Controller Area Network)等の車内通信回線15を通じて双方向通信自在に接続されている。尚、各ユニット11〜14はCPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータにより構成されており、ROMにはシステム毎に設定されている動作を実現するための制御プログラムが記憶されている。
【0017】
又、走行支援制御ユニット11の入力側に、上述した道路種別識別部16以外に、撮像手段としての車載カメラユニット21、自動運転スイッチ22,走行状態検出センサ23等が接続されており、出力側には、運転者に自動運転の切り替わり及び解除を報知する報知手段26が接続されている。
【0018】
車載カメラユニット21はメインカメラ21aとサブカメラ21b、及び画像処理ユニット(IPU)21cを有している。両カメラ21a,21bは自車両Mvのキャビン前部に搭載されて前方の走行環境を撮像するステレオカメラである。又、IPU21cは両カメラ21a,22bで撮像した走行環境画像を所定に画像処理し、走行支援制御ユニット11、及び道路種別識別部16へ走行環境情報として送信する。
【0019】
道路種別識別部16は車載カメラユニット21で取得した走行環境情報に基づき、1フレーム毎に道路種別推定対象物(以下、「対象物」と略称する)を取得し、記憶手段(HDD)17に順次格納する。そして、記憶手段17に格納されている対象物データに基づいて、自車両Mvが走行する進行路が一般道路か高速道路かの道路種別を推定する。
【0020】
又、自動運転スイッチ22は通常運転(スイッチOFF)と自動運転(スイッチON)とを任意に選択すると共に、ACC運転時のセット車速の設定等を行う複合スイッチであり、インストルメントパネルやステアリングハンドル等、運転者の操作可能な位置に設けられている。
【0021】
又、走行状態検出センサ23は、自車両Mvの走行状態を検出するセンサ類の総称であり、代表的なものとして、自車速を検出する車速センサ、操舵角を検出する操舵角センサ、自車両Mvに作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ、三次元の加速度を検出する3軸加速度センサがある。
【0022】
又、報知手段26は、運転者に自動運転の開始、中断、自動運転モードの切換え等を、点滅表示、文字表示、音声等で報知するもので、表示ランプ、表示器、スピーカ、ブザー等で構成されている。
【0023】
一方、E/G_ECU12の出力側にスロットルアクチュエータ31が接続されている。このスロットルアクチュエータ31はエンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものであり、E/G_ECU12からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。そして、自動運転のACC制御において、先行車が検出された場合は、先行車に追従する目標車速を設定し、先行車が検出されない場合は、セット車速を目標車速として設定して、車速制御を行う。尚、本実施形態では駆動源としてエンジンを例示して説明するが、駆動源は電動モータ、或いはエンジンと電動モータとの双方を用いたハイブリッド(HEV)であっても良い。
【0024】
又、PS_ECU13の出力側に電動パワステモータ32が接続されている。この電動パワステモータ32はステアリング機構にモータの回転力で操舵トルクを付与するものであり、自動運転では、PS_ECU13からの駆動信号により電動パワステモータ32を制御動作させることで、現在の走行車線の走行を維持させる車線維持制御、車線の逸脱を防止する車線逸脱防止制御、及び自車両Mvを隣の走行車線へ移動させる車線変更制御等が実行される。
【0025】
又、BK_ECU14の出力側にブレーキアクチュエータ33が接続されている。このブレーキアクチュエータ33は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するもので、BK_ECU14からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ33が駆動されると、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対してブレーキ力が発生し、強制的に減速される。そして、BK_ECU14は、自動運転のACC制御における自動停止、緊急停止等の自動ブレーキ制御を行う。
【0026】
走行支援制御ユニット11は、IPU21cで画像処理された、両カメラ21a,21bで撮像した自車前方の走行環境画像情報、及び走行状態検出センサ23で検出した自車両Mvの走行状態に基づき、自車両Mvを自律走行させる自動運転制御を行う。
【0027】
又、その際、道路種別識別部16で推定した道路種別(一般道路か高速道路)に応じて、自動運転モード(一般道路モードか高速道路モード)を切換える。すなわち、高速道路モードでは、車線逸脱防止制御、車線維持制御、自動車線変更制御、自動発進制御、先行車追従制御(ACC)、自動ブレーキ制御等、自動運転として設定されている機能の全てを実行する。一方、一般道路モードでは、ACC制御、自動ブレーキ制御等、制限された自動運転の機能のみを実行させる。
【0028】
道路種別識別部16での道路種別の推定は、具体的には、図3に示す道路種別推定ルーチンに従って実行される。
【0029】
このルーチンは、IPU21cから送信される1フレーム毎の走行環境画像に同期して起動される。そして、先ず、ステップS1で走行環境画像情報を読込み、ステップS2で当該走行環境画像から対象物を取得する。尚、このステップS2での処理が、本発明の道路種別推定対象物取得手段に対応している。
【0030】
すなわち、図6に示す一般道路の画像と、図7に示す高速道路の画像とは、道路の特徴要素が相違する。図6に示す一般道路では、車道に横断歩道(i)、対向車(ii)、道路標識(iii)、複数の歩行者が連続或いは一塊となっている歩行者群(iv)、交差点(v)、単独の歩行者(vi)、車両用信号機(vii)等、特徴要素が複雑に存在する。これに対し、高速道路には、一般道路のような横断歩道(i)、歩行者群(iv)や歩行者(vi)、及び、ほぼ直角に交わる交差点(v)等は存在せず、又、車両用信号機(vii)はトンネルの入口で認識され、対向車(ii)は暫定2車線による対面通行で認識される程度である。
【0031】
一方、図7に示す高速道路路の画像のように、高速道路では、左右区画線(白線)間の距離である車線幅(viii)は3[m]以上の間隔を開けて進行方向に連続し、カーブ路の曲率半径(ix)は一般道路に比し緩やかに設定されている。更に、道路の両側はガードレール(x,xi)で区画され、又、多くの案内標識(xii)には特有の文字「P」や予告距離(「2km」「500m」等)が記載されている。従って、走行環境画像情報から道路種別の特徴を表す特徴要素が含まれている対象物(歩行者、自転車、信号機、横断歩道、文字等)を、パターンマッチング処理等を用いて取得する。
【0032】
又、対象物と自車両Mvとの距離を、両カメラ21a,21b の視差に基づき周知の三角測量の原理を用いて算出する。そして、それらを記憶手段17に対し、1フレーム毎に関連づけして格納する。尚、連続するフレーム中に同一対象物が連続して認識されている場合、これらの対象物のカウント数は1とする。
【0033】
図8図9に対象物データを例示する。尚、同図には対象物として、(a)〜(m)を掲げているが、これに限定されるものではなく、異なる対象物データを更に加えても良い。
【0034】
次いで、ステップS3へ進み、サンプル開始後時間Timが設定時間(本実施形態では、1時間(1H))経過したか否かを調べる。そして、Tim≧1Hの場合、ステップS4へ進み、記憶手段17に格納されている最も古い走行環境画像情報から取得した対象物データをクリアしてステップS5へ進む。又、Tim<1Hの場合はそのままステップS5へ進む。従って、記憶手段17に格納される対象物データは、サンプル開始後時間Timが1時間以内の場合は(Tim<1H)、対象物データが記憶手段17に順次格納され、1時間が経過したときから(Tim≧1H)、最も古い対象物データがクリアされて、最も新しい対象物データが順次格納されるため、サンプル数は一定となる。
【0035】
そして、ステップS3,或いはステップS4からステップS5へ進むと、記憶手段17に格納されている対象物データを読込み、自車両Mvが走行している道路が一般道路か高速道路かの種別を推定する際に用いる総評価ポイントを算出する。
【0036】
このステップS5での総評価ポイント算出処理は、図4に示す総評価ポイント算出処理サブルーチンに従って実行される。尚、以下に示す閾値は例示であり、任意に設定することができる。
【0037】
このサブルーチンでは、先ずステップS11で、取得した各対象物に基づき道路種別を推定する特徴要素を算出する。図8図9に、単位時間当たり、或いは単位距離当たりの物理量を表す特徴要素a〜mを例示する。尚、各特徴要素a〜mについての詳細は、後述するステップS12において併せて説明する。
【0038】
そして、ステップS12へ進むと、取得した特徴要素a〜m毎に、自車両Mvが走行している道路が一般道路か高速道路かの種別を調べ、評価する。尚、このステップS11,S12での処理が、本発明の道路種別評価手段に対応している。
【0039】
そして、一般道路と推定した場合は、一般道路の評価ポイント(以下、「一般道評価ポイント」と称する)を1とし、高速道路の評価ポイント(以下、「高速道評価ポイント」と称する)を0とする。又、高速道路と推定した場合は一般道評価ポイントを0とし、高速道評価ポイントを1とする。
【0040】
図8図9に、特徴要素a〜m、及びこの特徴要素a〜mに基づく道路種別(一般道路か高速道路)の評価ポイントを例示する。以下における閾値は例示に過ぎず、統計、実験、シミュレーシヨン等から任意に設定することができ、又、適宜変更することもできる。尚、以下において、認識した歩行者vi等が対象物、そのカウント数が特徴要素である。
【0041】
(a)歩行者数a
図6に示すような不特定歩行者viの所定時間内における数(カウント数)である。自車両Mvが一般道路を走行している場合、不特定の歩行者viは普通に検出されるが、高速道路を走行中に検出する歩行者viは道路工事の作業員や故障車の乗員等、限られている。
【0042】
本実施形態では、単位時間(1H)当たりの歩行者数aが閾値(0.001人)を超えている場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0に設定する。又、単位時間(1H)当たりの歩行者数aが0.001人以下の場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1に設定する。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合、この閾値は、0.001人・Tim/1Hとなる。
【0043】
(b)歩行者群数b
図6に示す不特定の歩行者群ivの所定時間における数(カウント数)である。歩行者群ivは2人以上の歩行者の位置関係が所定距離(例えば、30[cm])以内にある場合、その一塊を歩行者群ivとしてカウントする。自車両Mvが一般道路を走行している場合、不特定の歩行者群ivは比較的容易に検出することができるが、高速道路を走行中に検出する歩行者群ivは、道路工事の作業員等、極めて限られている。本実施形態では、単位時間(1H)当たりの歩行者群数bを比較する閾値を0.0001人とし、歩行者数aよりも一般道路として推定し易くしている。
【0044】
そして、歩行者群数bが閾値(0.0001人)を超えている場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0に設定する。又、単位時間(1H)当たりの歩行者数aが0.0001人以下の場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1に設定する。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合、この閾値は、0.0001人・Tim/1Hとなる。
【0045】
(c)自転車数c
高速道路での自転車走行は想定できないが、自動二輪車を自転車と誤認識する可能性がある。そのため、本実施形態では、単位時間(1H)当たりの自転車数cが閾値(0.001人)を超えている場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0に設定する。又、単位時間(1H)当たりの自転車数cが0.001人以下の場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1に設定する。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の評価は上述した通りである。
【0046】
(d)自車至近歩行者数d
一番道路において、渋滞、信号待ち等で自車両Mvが停車している場合、その直前を歩行者viが横切ることは容易に想定できるが、高速道路では、たとえ渋滞中であっても自車両Mvの直前を歩行者が横切ることは想定し難い。そのため、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに検出する自車至近歩行者数dの閾値を0.0001人とし、一般道路として推定し易くしている。
【0047】
そして、d>0.0001人/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0に設定する。又、d≦0.0001人/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1に設定する。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の評価は上述した通りである。
【0048】
(e)対向車数e
図6に示すように、一般道路において対向車iiは容易に検出されるが、高速道路では、多くの場合、図7に示すように、自車両Mvの走行車線と対向車線とはガードレールxiで区画されているため、対向車数eを検出することは困難である。従って、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに検出する対向車数eの閾値を1台とし、e>1台/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0に設定する。又、e≦1台/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1に設定する。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の閾値は、1台・Tim/1Hである。
【0049】
(f)車両用信号機数f
図6に示すように、一般道路において車両用信号機viiは普通に認識できる。しかし、高速道路ではトンネルの入口に車両用信号機が設置されている程度で希である。そのため、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに検出される車両用信号機数fの閾値を0.01台とし、f>0.01台/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0に設定する。又、f≦1台/0.01Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1に設定する。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の閾値は、0.01台・Tim/1Hである。
【0050】
(g)赤/黄点灯車両用信号機数g
上述したように、高速道路の車両用信号機は、主にトンネルの入口に設置されて、トンネル内で災害が発生した場合にのみ赤色灯が点灯する。そのため、普段は殆ど青色灯が点灯している。これに対し、一般道路の信号機は、青色灯→黄色灯→赤色灯を1サイクルと
して繰り返し切換えられている。又、三方向(前進、右折、左折)矢印灯が設置されている信号機では、赤色灯→黄色灯を1サイクルとしてり返し切換えられている。従って、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに赤色灯或いは黄色灯の点灯を検出した車両用信号機数gの閾値を1台とし、g>1台/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0に設定する。又、g≦1台/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1に設定する。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の閾値は、1台・Tim/1Hである。
【0051】
(h)横断歩道数h
高速道路に横断歩道は存在しないが、水溜まりや雪溜まり等を横断歩道と誤認識する可能性がある。そのため、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに検出する横断歩道数hの閾値を1とし、h>1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0とし、又、h≦1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1とする。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の閾値は、1・Tim/1Hである。
【0052】
(i)交差点数i
高速道路に交差点(例えば、路肩側の白線がほぼ直角に曲がる分岐路)は存在しない。そのため、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに検出する交差点数iの閾値を1と低くして、一般道路の検出を容易にしている。
【0053】
そして、i>1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0とし、又、i≦1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1とする。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の閾値は、上述した通りである。
【0054】
(j)車線幅が所定区間連続して3[m]以上の割合j[%]
高速道路の車線を区画する左右区間線の間の距離でる車線幅は、その殆どが3[m]以上である。従って、所定単位距離(例えば、250〜300[m])で車線幅が3[m]以上の区間の割合jが99[%]を超えている場合は(j>99[%])、高速道路の評価ポイントを1、一般道路の評価ポイントを0とする。又、j≦99[%]の場合は高速道路の評価ポイントを0、一般道路の評価ポイントを1とする
(k)カーブ曲率半径がR250以上の回数k
高速道路のカーブ曲率半径は、制限速度や地形等の関係で決定されるが、最低でもR250[m]程度は有している。一方、一般道路では、R250[m]以下のカーブ曲率半径を有するカーブ路は多々存在するが、R250[m]以上のカーブ路は希である。そのため、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに通過するカーブ路の中でR250[m]以上のカーブ路の通過回数kの閾値を1とし、k>1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1とし、又、k≦1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0とする。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の閾値は、上述と同様である。
【0055】
(l)高速路道路特有の案内標識数l
高速道路の交通標識には、インターチェンジ、パーキングエリアやサービスエリアまでの案内標識等、一般道路では設置されていない特有の交通標識がある。図7の高速道路画像に示す案内標識xiiは緑色の横長看板に、インターチェンジの案内であれば、「出口」の文字と「2km」「1km」「500m」等の予告距離が表示される。又、パーキングエリアやサービスエリアの案内であれば、「P」の文字と予告距離が表示される。これらを画像認識することで、高速道路の案内標識を認識する。しかし、一般道路においても、高速道路の入口を示す案内標識等のように、緑色の横長看板に、インターチェンジの入口を案内する表示がなされているものは、高速道路の案内標識と誤認識する可能性がある。
【0056】
そのため、本実施形態では、単位時間(1H)当たりに認識する高速道路特有の案内標識数lの閾値を0.1とし、l>0.1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを0,高速道路の評価ポイントを1とし、又、l≦0.1/1Hの場合は、一般道路の評価ポイントを1,高速道路の評価ポイントを0とする。尚、サンプル開始後時間Timが1時間に満たない場合の閾値は、上述と同様である。
【0057】
(m)両側にガードレールが所定距離連続している割合m[%]
図7の高速道路の画像に示すように、高速道路では、暫定2車線による対面通行を除く、殆どの路線で車線の両側がガードレール(x,xi)で区画されている。しかし、一般道路においても、峠道等では谷川のみならず山側にもガードレールが設置されている場合がある。
【0058】
従って、本実施形態では、ガードレールが両側に所定単位距離(例えば250〜300[m]程度)、連続している区間が99[%]を超えている場合は(m>99[%])、高速道路の評価ポイントを1、一般道路の評価ポイントを0とする。又、m≦99[%]の場合は高速道路の評価ポイントを0、一般道路の評価ポイントを1とする。
【0059】
その後、ステップS13へ進み、各評価ポイントに対して、予め設定されている優先度に従い重み付けをする。尚、このステップでの処理が、本発明の重み付け手段に対応している。
【0060】
優先度は対象物の安全性を確保する必要のある特徴要素を上位に、単に道路を推定するに過ぎない特徴要素を下位に順位づけしている。本実施形態では、図8図9に示す特徴要素a〜mが優先度の順位である(a>〜>m)。因みに、上位に順位付けされている特徴要素a〜eが対象物の安全性を確保するための優先順位であり、一般道路の推定に適用される。又、特徴要素f〜iが一般道路を推定するための優先順位であり、下位に単に高速道路を推定するための特徴要素j〜mが順位付けされている。
【0061】
尚、この優先度の順位は任意に組み替えることができる。本実施形態では、最優先の歩行者数aの重み付けの係数を1とし、それよりも下位の特徴要素に対し、例えば、98[%]のゲインを順次乗算して重み付けをする。従って、最も優先度の低い特徴要素である、両側にガードレールが所定距離連続している割合mの重み付け係数は、78[%]となる。
【0062】
その後、ステップS14へ進み、所定に重み付けした各特徴要素a〜mの一般道評価ポイントと高速道評価ポイントとを、個々に加算(集計)して一般総評価ポイントと総高速道評価ポイントとを算出する。尚、このステップでの処理が、本発明の道路種別総評価手段に対応している。
【0063】
そして、図3に示す道路種別推定ルーチンのステップS6へ進む。ステップS6へ進むと、先ず、両総評価ポイントの差分が、予め設定されている誤差範囲内か否かを調べる。そして、誤差範囲内の場合は、推定不能として、ステップS10へジャンプし、道路種別推定フラグFaを0にセットして、ルーチンを抜ける。
【0064】
一方、誤差範囲を超えている場合は、ステップS7へ進み、一般道総評価ポイント<高速道総評価ポイントの場合は、高速道路と推定し、ステップS8へ進み、道路種別推定フラグFaを2にセットしてルーチンを抜ける。
【0065】
又、一般道総評価ポイント>高速道総評価ポイントの場合は、一般道路と推定し、ステップS9へ進み、道路種別推定フラグFaを1にセットしてルーチンを抜ける。尚、上述したステップS7〜S9の処理が、本発明の道路種別推定手段に対応している。
【0066】
上述した道路種別識別部16で設定した道路種別推定フラグFaの値は、走行支援制御ユニット11で読込まれ、道路種別に応じた自動運転モードを設定し、実行させる。この自動運転モードの設定は、図5に示す自動運転モード設定ルーチンに従って行われる。
【0067】
このルーチンでは、先ず、ステップS21,S22で、道路種別推定フラグFaの値を参照する。そして、Fa=2の場合は、高速道路と推定されているため、ステップS23へ進み、高速道路モードを実行させてステップS26へ進む。又、Fa=1の場合は、一般道路と推定されているため、ステップS24へ進み、一般道路モードを実行させてステップS26へ進む。又、Fa=0の場合は、道路種別が推定不能と判定し、ステップS25へ進み、自動運転を解除させた後、ステップS26へ進む。
【0068】
ステップS26へ進むと、実行される自動運転モードの情報を運転者に報知してルーチンを抜ける。自動運転モードの情報は、高速道路モード、或いは一般道路モードを実行する旨の表示であり、報知手段26を介して運転者に報知し、認識させる。又、自動運転が解除される場合は、その旨を、報知手段26を介して運転者に報知し、認識させる。
【0069】
この走行支援制御ユニット11では、高速道路モード時は自動運転に備えられている全ての機能(車線逸脱防止制御、車線維持制御、自動車線変更制御、自動発進制御、ACC制御、自動ブレーキ制御等)を実行させる。一方、一般道路モード時は、制限された自動運転の機能(ACC制御、自動ブレーキ制御等)のみを実行させる。
【0070】
このように、本実施形態では、先ず、車載カメラユニット21からの走行環境情報に基づき、一般道路と高速道路との道路種別を推定する複数の種類の対象物を認識し、この各対象物に基づき特徴要素をそれぞれ求め、この各特徴要素と予め設定されている閾値とを比較して、一般道路か高速道路かの評価ポイントを特徴要素毎に求める。次いで、特徴要素毎に求めた評価ポイントに対し、特徴要素の優先度に応じた重み付けを行うようにしたので、例えば、図8の歩行者数aの一般道評価ポイントが1、車線幅が所定区間連続して3[m]以上の割合jの高速道路評価ポイントが1と判定された場合には、一般道評価ポイントが重み付けにより優先されることになる。
【0071】
更に、重み付けされた各特徴要素の一般道評価ポイントと高速道評価ポイントとをグループ分けして加算し、それを比較して、一般道路か高速道路かを推定するようにしたので、自車両Mvが走行する進行路が一般道路か高速道路かの種別を高い精度で推定することが可能となる。又、本実施形態ではカーナビゲーション装置に依存することなく、道路の種別を推定できるため、高い汎用性を得ることができる。
【0072】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば各特徴要素を比較する閾値を、2つ以上設定し、例えば、一般道路であっても、郊外か市街地かを推定し、郊外での自動運転は市街地走行時の自動運転よりも機能の制限を緩やかにするようにしても良い。
【符号の説明】
【0073】
1…運転支援装置、
11…運転支援制御ユニット、
15…車内通信回線、
16…道路種別識別部、
17…記憶手段、
21…車載カメラユニット、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
22,…自動運転スイッチ、
23…走行状態検出センサ、
26…報知手段、
31…スロットルアクチュエータ、
32…電動パワステモータ、
33…ブレーキアクチュエータ、
a…歩行者数、
b…歩行者群数、
c…自転車数、
d…自車至近歩行者数、
e…対向車数、
f…車両用信号機数、
g…黄点灯車両用信号機数、
h…横断歩道数、
i…交差点数、
j.m…割合、
k…回数、
l…案内標識数、
Fa…道路種別推定フラグ、
Mv…自車両、
Tim…サンプル開始後時間、
i〜xii…道路種別推定対象物、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9