特許第6982436号(P6982436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982436
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】デッキプレート用固定金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20211206BHJP
   E04B 5/12 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   E04B5/40 E
   E04B5/12
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-165735(P2017-165735)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-44371(P2019-44371A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】安岡 裕織
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−151841(JP,A)
【文献】 特開2012−087483(JP,A)
【文献】 特開2009−144430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 − 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の軸組にデッキプレートを留付け具を介して固定するためのデッキプレート用固定金具において、
前記留付け具の挿入孔が複数個形成された板状の留付け部と、前記留付け部間に、前記留付け部と一体に形成された面内せん断力吸収部とからなり、
取付状態において前記デッキプレートと前記面内せん断力吸収部との間に、前記軸組の長手方向と交差する方向に開口する空間を形成することを特徴とするデッキプレート用固定金具。
【請求項2】
前記面内せん断力吸収部は、前記留付け部に対して上方に突出して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデッキプレート用固定金具。
【請求項3】
前記面内せん断力吸収部は、コ字状に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のデッキプレート用固定金具。
【請求項4】
前記面内せん断力吸収部には、貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項2または3に記載のデッキプレート用固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デッキプレート用固定金具、特に、木造建築物の軸組にデッキプレートを固定する際に使用するデッキプレート用固定金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築物は、いわゆる「公共建築物木材利用促進法」や木造建築物の中大規模化等に伴って、施工性向上や長スパン化等による施工の合理化が進められており、木質材料の弱点を補うために、性能や機能面において優れる木質材料以外の高強度・高耐力材、例えば、鋼材やコンクリートの採用が増加している。
【0003】
高強度・高耐力材としてのデッキプレートは、建築物に作用する面外力に抵抗する構造材として、S造(鉄骨構造)を中心に、床や屋根の材料として広く用いられている。この他、デッキプレートは、面内せん断特性における高い剛性および強度を活かし、地震時に作用する面内せん断力に抵抗する構造材としても用いられている。
【0004】
デッキプレートを木造建築物に用いた場合、デッキプレートは、面外剛性が高いので、木造建築物の在来の床・屋根工法や合板を用いた床・屋根工法に比べて、床・屋根の軸組としての横架材の間隔を大きくすることができるといった利点があり、中大規模木造建築物に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−169565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
木造建築物において、デッキプレートを床・屋根に用いる場合、デッキプレートは、軸組にビスやボルト等の留付け具により固定される。
【0007】
しかしながら、木製の軸組材に対して、鋼製のデッキプレートや留付け具の剛性は大きく、しかも、ビスやボルト等の留付け具による固定位置は、デッキプレートの谷部に限定されるので、軸組の長手方向全体に力が分散しない。この結果、図11図12に示すように、デッキプレート11の谷部の留付け具12に力が集中するので、地震時等において荷重Pを受けると、軸組13(横架材)に割裂破壊やせん断破壊が生じる。
【0008】
このような軸組の破壊により、デッキプレートの持つ面内せん断力の負担能力が十分に発揮されないばかりか、軸組が荷重支持能力を喪失する等の問題が生じる。
【0009】
デッキプレートを木造建築物に用いた場合のデッキプレートと軸組との取付構造の一例が特許文献1に開示されている。以下、このデッキプレートと軸組との取付構造を従来取付構造という。
【0010】
従来取付構造は、図13に示すように、デッキプレート11の断面形状に合わせて木製軸組13の上面を凹凸状に形成することによって、デッキプレート11と軸組13とを一体化し、かくして、面内せん断耐力を向上させて、デッキプレート11の持つ面内せん断力の負担能力を十分に発揮することができるようにしたものである。
【0011】
上記従来取付構造によれば、上記問題は、解決することはできるが、軸組13の上面をデッキプレート11の断面形状に合わせて凹凸状に形成する必要があるので、その加工に手間と時間を要する。
【0012】
従って、この発明の目的は、木製軸組に加工を施すことなく、面内せん断耐力を向上させることができる結果、デッキプレートの持つ面内せん断力の負担能力を十分に発揮させることがきるデッキプレート用固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の発明は、木造建築物の軸組にデッキプレートを留付け具を介して固定するためのデッキプレート用固定金具において、前記留付け具の挿入孔が複数個形成された板状の留付け部と、前記留付け部間に、前記留付け部と一体に形成された面内せん断力吸収部とからなり、取付状態において前記デッキプレートと前記面内せん断力吸収部との間に、前記軸組の長手方向と交差する方向に開口する空間を形成することに特徴を有するものである。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記面内せん断力吸収部は、前記留付け部に対して上方に突出して形成されていることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記面内せん断力吸収部は、コ字状に形成されていることに特徴を有するものである。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記面内せん断力吸収部には、貫通孔が形成されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、留付け部間に面内せん断力吸収部を設けることにより、留付け部の有する剛性との相乗効果によって、木造建築物の軸組にデッキプレートを留付け具を介して固定する際に、軸組に加工を施すことなく、面内せん断耐力を向上させることができる。
【0019】
また、この発明によれば、面内せん断力吸収部に貫通孔を形成することによって、デッキプレートにコンクリートを打設した合成床構造を構築する場合において、面内せん断力吸収部内にコンクリートが入り込む結果、コンクリートがデッキプレート用固定金具を介して軸組と強固に結合されるので、軸組の割裂破壊やせん断破壊をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明のデッキプレート用固定金具を示す正面図である。
図2】この発明のデッキプレート用固定金具を示す平面図である。
図3】この発明のデッキプレート用固定金具を示す側面図である。
図4】この発明のデッキプレート用固定金具により軸組にデッキプレートを固定した状態を示す断面図である。
図5】この発明のデッキプレート用固定金具により軸組にデッキプレートの端部を固定した状態を示す平面図である。
図6】デッキプレート用固定金具と軸組との間に隙間材を入れた状態を示す側面図である。
図7】この発明のデッキプレート用固定金具により軸組にデッキプレートを突き合わせて固定した状態を示す平面図である。
図8】この発明の別のデッキプレート用固定金具を示す平面図である。
図9】この発明のさらに別のデッキプレート用固定金具を示す平面図である。
図10】この発明のさらに別のデッキプレート用固定金具を示す平面図である。
図11】デッキプレートの谷部の留付け具によって、軸組に割裂破壊やせん断破壊が生じるメカニズムを示す平面図である。
図12】荷重Pを受ける前の図11のA−A断面図である。
図13】従来取付構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明のデッキプレート用固定金具の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、この発明のデッキプレート用固定金具を示す正面図、図2は、この発明のデッキプレート用固定金具を示す平面図、図3は、この発明のデッキプレート用固定金具を示す側面図である。
【0023】
図1から図3に示すように、デッキプレート用固定金具Aは、板状の留付け部1と、留付け部1間に、留付け部1と一体に形成された面内せん断力吸収部2とから構成され、例えば、鋼板からなっている。
【0024】
面内せん断力吸収部2は、この例では、留付け部1に対して上方にコ字状に突出させ、面内せん断力をコ字状の突出部の弾性変形によって吸収させるものである。なお、面内せん断力吸収部2は、面内せん断力を吸収できる形状であれば、この形状に限定されず、逆V字状等に形成してもよい。
【0025】
留付け部1には、ビスやボルト等の留付け具3の挿入孔4が複数個形成されている。この例では、挿入孔4は、千鳥状に配されているが、図9に示すように、一列に配してもよいし、図10に示すように、ピッチをずらして複数列に配してもよい。
【0026】
この発明のデッキプレート用固定金具Aにより軸組5の端部にデッキプレート6を固定するには、図4および図5の中央に示すように、デッキプレート6の谷部にデッキプレート用固定金具Aを乗せ、留付け部1の挿入孔4に留付け具3を挿入して固定する。
【0027】
デッキプレート6の嵌合部7を固定するには、図4および図5の左側に示すように、嵌合部7に面内せん断力吸収部2を被せて固定する。
【0028】
このようにして、この発明のデッキプレート用固定金具Aにより軸組5にデッキプレート6を固定すると、デッキプレート用固定金具Aの留付け部1の有する剛性と、面内せん断力吸収部2との相乗効果によって、面内せん断力を受けた際、隣接するデッキプレート6が互いにずれることを抑えることができる結果、軸組5の割裂破壊やせん断破壊を抑制することができる。
【0029】
これによって、面内せん断耐力が向上して、大きな地震力等に抵抗することができるので、木造建築物の安全性が向上する。
【0030】
なお、デッキプレート用固定金具Aの剛性と、面内せん断力吸収部2の効果をさらに高める場合には、図4および図5の右側に示すように、デッキプレート用固定金具Aの長さを長くする。この場合には、図6に示すように、デッキプレート用固定金具Aと軸組5との間に隙間材8を入れて段差をなくす。
【0031】
この発明のデッキプレート用固定金具Aにより軸組5にデッキプレート6を突き合わせて固定するには、図7に示すように、デッキプレート6の突合部にデッキプレート用固定金具Aを跨がせて固定する。
【0032】
この発明のデッキプレート用固定金具Aは、乾式床や屋根構造に適用する以外に、デッキプレートにコンクリートを打設した合成床構造にも適用することができる。この場合には、図8に示すように、面内せん断力吸収部2に貫通孔9を形成する。これによって、面内せん断力吸収部2内にコンクリートが入り込む結果、コンクリートがデッキプレート用固定金具を介して軸組と強固に結合されるので、軸組の割裂破壊やせん断破壊をさらに抑制することができる。
【0033】
以上、説明したように、この発明によれば、留付け部間に面内せん断力吸収部を設けることにより、留付け部の有する剛性との相乗効果によって、木造建築物の軸組にデッキプレートを留付け具を介して固定する際に、軸組に加工を施すことなく、面内せん断耐力を向上させることができる。
【0034】
また、この発明によれば、面内せん断力吸収部に貫通孔を形成することによって、デッキプレートにコンクリートを打設した合成床構造を構築する場合において、面内せん断力吸収部内にコンクリートが入り込む結果、コンクリートがデッキプレート用固定金具を介して軸組と強固に結合されるので、軸組の割裂破壊やせん断破壊をさらに抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
A:デッキプレート用固定金具
1:留付け部
2:面内せん断力吸収部
3:留付け具
4:挿入孔
5:軸組
6:デッキプレート
7:嵌合部
8:隙間材
9:貫通孔
11:デッキプレート
12:留付け具
13:軸組
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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