(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982437
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】クレーン安定化装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20211206BHJP
B66C 23/78 20060101ALI20211206BHJP
B66C 23/76 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
B66C23/88 C
B66C23/78 Z
B66C23/78 A
B66C23/76 A
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-167143(P2017-167143)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-43883(P2018-43883A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2020年8月28日
(31)【優先権主張番号】10 2016 011 189.5
(32)【優先日】2016年9月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル−ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr−Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ディエター ヴィルム
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ボーナッカー
(72)【発明者】
【氏名】マーカス ツェイラー
【審査官】
加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−328293(JP,A)
【文献】
特開平10−265176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B66C 23/78
B66C 23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非作動時の移動式クレーン(1)の安定化装置、特に、非作動時のクローラ・クレーン(1)の安定化装置であって、
風によって前記クレーン(1)に導入される第1のトルクを打ち消すように、非作動時の前記クレーン(1)の第1のブーム(2)に連結された、少なくとも1つの荷重(3)と、
風によって前記クレーン(1)に導入される第2のトルクを打ち消すように互いに対向して配置された、少なくとも2つの追加的支持体(4)とを有し、
前記第2のトルクが、前記第1のトルクと異なる角度で、非作動時の前記クレーン(1)に関与する、クレーン(1)の安定化装置。
【請求項2】
前記追加的支持体(4)が、前記クレーン(1)のそれぞれのクローラ・キャリア(5)に配置されることを特徴とする請求項1記載のクレーン(1)の安定化装置。
【請求項3】
前記追加的支持体(4)が、間接的又は直接的に、前記クレーン(1)のセンター・フレーム部分(6)に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載のクレーン(1)の安定化装置。
【請求項4】
前記追加的支持体(4)が、前記クレーン(1)のそれぞれのクローラ・キャリア(5)同士の間の連結キャリア(6’)に配置されることを特徴とする請求項3記載のクレーン(1)の安定化装置。
【請求項5】
前記追加的支持体(4)が、前記クレーン(1)のそれぞれのクローラ・キャリア(5)に配置され、及び/又は、間接的又は直接的に、前記クレーン(1)のセンター・フレーム部分(6)に配置され、及び/又は、前記クレーン(1)のそれぞれのクローラ・キャリア(5)同士の間の連結キャリア(6’)に配置され、
前記クローラ・キャリア(5)及び/又は前記センター・フレーム部分(6)及び/又は前記連結キャリア(6’)のそれぞれが、前記追加的支持体(4)を連結するための、ちょうど1つ又は2つ以上の継手(51)を備えることを特徴とする請求項1記載のクレーン(1)の安定化装置。
【請求項6】
前記荷重(3)が、前記クレーン(1)のフック式のボトム・ブロックであること、又は前記荷重(3)が、前記クレーン(1)のフック式のボトム・ブロックであり、追加的な荷重を少なくとも部分的に引っ張ることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のクレーン(1)の安定化装置。
【請求項7】
第2のブーム(20)を介して前記クレーン(1)に連結された第2の荷重(30)が前記クレーン(1)に提供されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のクレーン(1)の安定化装置。
【請求項8】
前記荷重(3、30)のうちの少なくとも1つが、互いに隣接して配置された2つの分割された荷重を備え、及び/又は、前記追加的支持体(4)が厳密に互いに対向して若しくは互いに対向しオフセットして配置されることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の少なくとも1つのクレーン(1)の安定化装置を有するクレーン(1)。
【請求項10】
請求項1〜8の何れかに記載のクレーン(1)の安定化装置用の追加的支持体(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン安定化装置に関し、特に、風によってクレーンに導入される第1のトルクを打ち消すようにクレーンの第1のブームに連結された少なくとも1つの荷重を有し、風によってクレーンに導入される第2のトルクを打ち消すように互いに対向して配置された少なくとも2つの追加的支持体を有する、固定位置にあるクローラ・クレーンの安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この装置は移動式クレーンに使用するのに適しており、この移動式クレーンは、例えば、任意の所望のラチス・ブーム・システム及び好ましくはデリック・ブームを有するクローラ・クレーンであってもよい。クレーンのラチス・ブーム・システムは、メイン・ブーム及びフライ・ジブを有することができる。種々の支線支持フレームを設けて、様々なブーム・エレメントを支線で支持することが可能である。クレーンにおいて支線で支持するということは、対応する支線支持装置による保持機能、又は動作機能であり得る。通常は、支線支持は、支線支持フレームを経由してガイドすることができる。対応する駆動装置が、ブーム・エレメントの運動を実現する。この駆動装置には、例えば油圧式又は電動式のものがある。例えば油圧シリンダ、油圧ウインチ、又はリニア駆動装置が知られている。
【0003】
上部構造の回転運動、又は回転駆動は、本発明の中心的な要素になり得る。従って、クレーンは、回転駆動装置を用いて、具体的には、予想される主風向と平行に回動して、固定位置へ移ることができるようになっている。
【0004】
単に力を伝達する働きをする、非常に小さな運動も可能である。これは例えば、デリック・バラストが地面上で支持される場合である。このバラストの質量は、100メートルトン(metric tons (tonnes))であってもよい。次いで、支線支持を介してデリック・バラストに連結されたシリンダを、デリック・ブームの先端に取り付けることができる。これらのシリンダは、例えば10トンの力を引き、この力をデリック・ブームの先端に導入する。
【0005】
このようなクレーンを組み立てるのは、複雑で時間がかかる。クレーンの解体もまた複雑で、一定の時間を要する。クレーンを定められた位置に移動するのにも、無視できない程度の時間がかかる。これは、ブーム・システム及びクレーン自体のエレメントの数が多いことによる。駆動装置の性能は限定されているので、クレーンの組立て及び/又は改造に要する労力は、さらなる制限要因である。ブーム・システムが長尺であることは、この点で注意しなければならない。知られているクレーンのウインチのロープの容量は、例えば1000m程度であり、それに応じて、クレーンの変更(modification)に際しては、時間をかけてそれを巻き上げ、又は巻き出さなければならない。
【0006】
このようなクレーンは、ある一定の状況のもとでのみ操作することができる。クレーンの周辺状況に関する基準は、例えば風速である。認証された規格が、この目的のために知られている。この規格はクレーンのモニタに格納されており(例えば、荷重モーメント制限システム又は操作指示)、クレーンの操作者に知らされる。例えば、クレーンが作業(work)を実施できる最大風速が規定されている。この場合、クレーンのすべての運動を作業と呼ぶ。
【0007】
風速がある一定の限界値を超える場合は、クレーンを停止しなければならず、どんな作業も行ってはならない。しかし、動きのないクレーンも風による力を受ける。その結果、動きのない状態、又は停まった状態に関しても、許容される最大風速が規定される。従って、クレーンの操作者は予想される風速を常にモニタリングし、余裕をもってクレーンを安全な状態にする責任を負う。これにより、複雑でコストがかかるブーム・システムの取り外しが必要になり得る。その際、スペースの理由から、クローラ・クレーン全体を走行又は移動させることがしばしば必要になることにも留意しなければならない。
【0008】
更に、長尺のブーム・システムを組み立てるために、クレーンに追加的支持体を取り付けることが知られている。この追加的支持体は、傾斜エッジを変位させる。より長尺のブーム・システムは、このように組み立てることができる。特許文献1は、参照符号140を有する、対応する追加的支持体を示す。2つの追加的支持体が、傾斜エッジが、実質的な、又は十分に効果的なものになるために必要である。どちらの追加的支持体もクローラ・クレーンの下部構造の側部に取り付けられ、そこにブーム・システムが引き寄せられる。上記の追加的支持体を使用して、長尺のブームが連結して組み立てられる。この追加的支持体は、例えば、単一のクローラ・キャリアにボルト留めされた2つの支持体を含む。それぞれの追加的支持体は、その自由端部に、支持プレートを地面に押圧できる駆動装置を有する。この駆動は、スピンドルを介して、手動で実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE102011119655A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この背景の下で、本発明の目的は、ブーム・システムの完全な解体(complete taking down)が必要になる頻度を下げることができる装置及びクレーンを提供することである。このように、停止しているクレーン又は非作動時のクレーンに対して許容される風速を上げるシステムが提供される。このシステムは、新たに設計されたクレーン及び既存のクレーンに対して、同様に使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、本発明の根底にある目的は、請求項1の特徴を有する装置によって実現される。有利な実施形態は、従属クレームの対象である。それに応じて、クレーンの安定化装置、特に、固定位置にあるクローラ・クレーンの安定化装置が提供され、これは、風によってクレーンに導入される第1のトルクを打ち消すようにクレーンの第1のブームに連結された少なくとも1つの荷重を有し、風によってクレーンに導入される第2のトルクを打ち消すように互いに対向して配置された少なくとも2つの追加的支持体(additional support)を有し、第2のトルクは、第1のトルクと異なる角度でクレーンに関与(engage)する。
【0012】
この追加的支持体は、クレーンに対して、又はブームのようなクレーン自体の上部構造に対して様々な角度で配置でき、これによって、水平方向にクレーンに作用する風力及びこれに対応するトルクが2つの成分に分解(split)され、これに対応して、一方の成分は追加的支持体で打ち消し、他方の成分は追加的支持体に対してある角度で配置されたブームで打ち消すことができる。この場合、打ち消すという語は、荷重又は追加的支持体を支える地面領域から、ブーム又は追加的支持体を介して、力がクレーンに導入され、前記力が、風力又は対応するトルクを相殺することを意味する。2つのトルクという語は、風力によってクレーンに導入されて、風力から生じるトルクが分解してできるトルク成分を意味する。
【0013】
ここで言及する荷重は、例えばフック式のボトム・ブロック、特にフック式のボトム・ブロックを介してクレーンの第1のブームに連結された別の荷重、グラウンド・アンカーの一種、又は混合形態の任意の種類のものであってもよい。クレーンのブーム・システムに、前もって負荷を加えるような荷重が理解されるべきである。
【0014】
好ましい実施形態では、追加的支持体は、クレーンのそれぞれのクローラ・キャリアに配置され得る。上部構造が、クレーンのブームと共に、クローラ・キャリアの方向に、又はクローラ・キャリアと並行に位置合わせされる場合、追加的支持体は、例えばクローラ・キャリアに直角に取り付けることができ、それによって、クレーンのブームに対しても直角に位置することができる。これによって、様々に配置され、又は様々に位置合わせされたクレーンの構成要素、すなわちブーム及び追加的支持体を介して、風によって導入されたトルク又は力を特に簡単に打ち消すことが可能である。
【0015】
別の好ましい実施形態では、追加的支持体は、特にクローラ・キャリア同士の間で、間接的又は直接的に、クレーンのセンター・フレーム部分に配置され得る。クレーンの型式によっては、このように、センター・フレーム部分に既に存在する可能性がある継手を使って追加的支持体を連結することができ、これによって本発明の実施が簡単になる特長がある。
【0016】
特に好ましい実施形態では、追加的支持体は、クローラ・キャリア同士の間の連結キャリアに配置できる。対応する連結キャリアは、例えばクレーンの改造の一環として提供されることが可能であり、追加的支持体に対して求められるように、センター・フレーム部分への継手、又はセンター・フレーム部分同士の間の継手として利用できる。
【0017】
更に、別の好ましい実施形態では、荷重は、クレーンのフック式のボトム・ブロックであり得る。クレーンに通常取り付けられているブロックを使うことによって、本発明を簡単に実施することが、更に可能である。追加の重しを準備する必要がないからである。この点で、本発明の実施では、荷重を、クレーンを支持する地面に降ろす、又は別法として、下に降ろさず、代わりに吊り下げたままにすることができる。
【0018】
別の好ましい実施形態では、特に第2のブームを介してクレーンに連結された第2の荷重が、クレーンに提供され得る。例えば、第2のブームは、対応するデリック・バラスト又は別のカウンタ・ウエイト・システムを有するデリック・ブームであってもよい。デリック・ブームを有するクレーンの場合、このように、いずれにせよ存在するブーム構造の一部を使用して本発明を実施することができ、これにより、その実施に際して、後者は更に簡単になる。
【0019】
別の好ましい実施形態では、荷重のうちの少なくとも1つが、互いに隣接して配置された2体型の荷重を含むことができる。荷重のうちの少なくとも1つが、2つに分割された荷重システムのように設計されることによって、クレーンの旋回装置又はクレーンの旋回装置のブレーキのみを介してクレーンのブーム面に垂直に作用する風荷重の力成分をブロックするだけではなく、オフセットして配置された分割荷重によって、例えばクレーンの上部構造の回転方向に作用する力のうちの少なくともいくつかをもブロックすることが可能である。この目的のために、ブームの外端部とそれに連結された分割荷重とを、適当な角度で連結できるようになっている。
【0020】
前方からの風に対して有利なのは鈍角であり、横方向からの風に対して旋回装置を支えるのに有利なのは鋭角である。
【0021】
更に、本発明の別の好ましい実施形態では、追加的支持体は、厳密に互いに対向して、又は互いに対向しオフセットして配置され得る。この点で、追加的支持体は、互いに隣接して配置された2つのそれぞれのクローラ・キャリア及び/又はセンター・フレーム部分の対向する2つの側部に、間接的又は直接的に、厳密に互いに対向して、又は互いに対向しオフセットして配置することができる。
【0022】
更に、別の好ましい実施形態では、クローラ・キャリア及び/又はセンター・フレーム部分及び/又は連結キャリアはそれぞれ、追加的支持体を連結するための、ちょうど1つ又は2つ以上の継手を含むことができるものとする。本発明によれば、必要に応じて、対応する継手を介して、特に簡単かつ迅速に、連結キャリアをそれぞれの点に連結し、従ってクレーンを安定させることができる。この継手は、長尺のブーム・システムを組み立てる際にクレーンを追加的に支える支持体のために、既にクレーンに備えられている継手であってもよい。
【0023】
本発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置を有するクレーン及び請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置用の追加的支持体も更なる対象とする。上述のように、必要に応じて、支持体の継手と本発明に従って提供される追加的支持体とを連結できるように、このクレーンは、例えば既にクレーンに取り付けられている、対応する装置、継手で改造することが可能である。上述のように、この追加的支持体はクレーンと連結可能であり、支持地面に対してクレーンを支えるためのアクチュエータ、特に油圧アクチュエータをも備えることができ、このアクチュエータはクレーンの油圧システムに連結可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(1)は従来技術による追加的支持体を示す図、(2a)〜(2c)は本発明による装置の様々な実施形態を示す図
【
図2】(2d)〜(2g)は本発明による装置の様々な実施形態を示す図
【
図3】(2h)は本発明による装置の実施形態を示す図
【
図4】(2i)は本発明による装置の実施形態を示す図
【
図5】(3)は2つに分割された荷重を有する実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のさらなる利点及び詳細を、一例として図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0026】
図1〜4の(1)、(2a)〜(2i)に示されるように、クローラ・クレーン1は、4つ以上の傾斜エッジ(tilting edge)10を有することができる。これらは、履板(crawler plates)に接する最も外側のローラー又はローラーの外側の接地面(outer footprints)によって形成され、対応する多角形の延在線10によって図中に示されている。従来、これらの4つ以上の傾斜エッジ10は、最大許容風速(maximum permitted wind speed)を監視するために用いられてきた。本発明によれば、少なくとも1つの重荷重3が、ここでブーム・システム又はブーム2に連結される。重量のあるデリック・バラスト30、又は第2の荷重30が用意される場合は、デリック・ブーム又は第2のブーム20に連結できるように準備しておくことができる。荷重3、30はどちらも、地面に置く、又は少なくともある程度は引っ張られることができる。次にブーム2は、
図4(2i)に示すように、ホイスト・ロープを介して荷重3の一部を荷重3の外端部で引っ張る。これによって、全体的な支線支持(guying)により力を引き上げ、クレーン1のブーム・エレメントを所定の位置に保持する。ブーム・システム全体が、その圧縮側で圧縮歪みの作用を受ける。
【0027】
デリック・ブーム20は、カウンタ・ウエイト・システム30、又は第2の荷重30を同様に引っ張る。カウンタ・ウエイト・システムは、例えば上部構造のバラスト及び/又はデリック・バラスト30を含む。デリック・バラスト30及び上部構造のバラストは、ブーム・システム又は第1のブーム2及び第2のブーム20ならびに荷重3と、実質的に同一平面に位置する。荷重3及びデリック・バラスト30はどちらも僅かにアクティブであるだけであり、このことはつまり、これらが力としてクレーン・エレメントに導入するのは、その質量のごく一部であるということである。この位置が、いわゆる「固定位置(anchorage positions)」である。「風アンカー(wind anchors)」は、荷重3及びデリック・バラスト30である。強風の場合は、特に強い風力がクレーン1に作用する。この方向は定まらず、あるいは変化し得るため、360°の円を想定しなければならない。この力は、常に2つの力成分に分けることができる。一方の成分はブーム・システムの面に沿っており、他方の成分はブーム・システムの面に対して垂直である。ブーム・システムの面に沿った成分は常に、デリック・バラスト30又は荷重3の更なるアクティブ化をもたらす。従って、どちらも、クレーン1の傾斜が限界故障基準(limiting failure criterion)に相当するまでに至らないような大きさ(dimension)であり得る。そのため、新たな限界故障基準は、クレーンの構成要素の故障又は破損になる可能性がある。
【0028】
説明した実施例では、ブーム・システムに横から(上では垂直と称した)作用する力成分の影響を打ち消すのに適当な方策が、まだ欠如している。原則として、クローラ・クレーンは、2つの平行な長方形の接地面を有し、これはすなわち、傾斜エッジが(概ね)四角形に延在するということである。本発明によれば、
図3(2h)及び
図4(2i)に示すように、上部構造は、ブーム・システムと走行方向に位置合わせすることができる。
図1(2a)〜(2c)に示すように、追加的支持体4の従来の使い方とは逆に、ここで少なくとも1つの追加的支持体4が、それぞれのクローラ・キャリア5に取り付けられる。追加的支持体4の取付け方の種類に応じて、図に部分的に示した新たな傾斜エッジ10が形成される。
【0029】
図1(1)は、従来技術による支持体の使い方を示す。
図1(2a)〜(2c)は、本発明による、追加的支持体4の、クローラ・キャリア5への第1の可能な取付け方の種類を示す。
図2(2d)〜(2g)は、第2の取付け方の可能性を示し、ここでは、センター・フレーム部分6とクローラ・キャリアとの間で、追加的支持体4がセンター・フレーム部分6又は連結キャリア6’に取り付けられる。組立て用の、当初の追加的支持体4の取付け方も、この点に取り付けるように設計されているときに、この解決策が選択される。
【0030】
図4(2i)は、風アンカーを有するクレーン1の側面図である。
図3(2h)は、クレーン1の、想定される別のポジションを示す。特有のブーム・ポジションはここへ移動してきており、荷重3は、フック式のボトム・ブロックであり、必ずしも地面に置かれる必要はない。
図5(3)は、荷重3が2つに分割された解決手段を示す。この解決手段は、例えば
図3(2h)によるクレーン1に使用することができる。分割された荷重のそれぞれの側部は、ブーム2の外側領域に連結される。ここで、ブーム面に垂直に作用する風荷重の力成分が、クレーン1を転倒させようとする場合、旋回装置、より正確には旋回装置のブレーキだけではなく、実際には、二等分(two halves)された荷重3も、ブーム・システムを有する上部構造の回転運動を防ぐ役割を担う。この利点を利用するためには、ブーム2の外端部と荷重3の連結が急傾斜すぎないことである。両方の安全対策が容易に作動する角度、具体的には約45°が好ましい。本発明は、デリック・ブームなしでも実施可能である。