(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。全図を通じて同一又は対応する要素には同一の符号を付して重複する詳細な説明を省略する。
【0015】
図1に示される船舶1は、LPG燃料推進船である。船舶1は、LPGを貯留する燃料タンク2、および、LPGを燃料とする推進用エンジン11を含む。LPGは、主成分がプロパンであってもよいし(プロパンガス)、ブタンであってもよい(ブタンガス)。
【0016】
本実施形態では、燃料タンク2が、比較的に大きな容積のストレージタンク21と、比較的に小さな容積のサービスタンク22とで構成されている。ストレージタンク21およびサービスタンク22は、共に耐圧力が大気圧よりも高い圧力容器である。ストレージタンク21とサービスタンク22とは、中継ライン26によって互いに接続されている。
【0017】
ストレージタンク21内には、LPG供給源から燃料導入ライン23を通じてLPGが導入される。LPG供給源は、船舶1に搭載されるカーゴタンクであってもよいし、陸上のLPG供給設備またはLPG燃料供給船であってもよい。
【0018】
本実施形態では、ストレージタンク21にLPGを低温に維持する手段(例えば、断熱材)が設けられておらず、ストレージタンク21内のLPGの温度は大気温度に追従して変化する。LPG供給源から導入されるLPGは、主成分がプロパンガスである場合には約−42℃であることが多い。従って、燃料導入ライン23には、LPGを例えば−5℃から大気温度までの範囲内の温度に加熱する加熱器24が設けられている。ただし、LPG供給源である陸上のLPG供給設備やLPG燃料供給船に加熱器が装備されており、船舶1に受け渡されるLPGの温度が−5℃以上であれば、加熱器24は不要である。
【0019】
ストレージタンク21内の気層の成分が気化したPGのみの場合は、ストレージタンク21内の気層の圧力はLPGの飽和蒸気圧力である。例えば、ストレージタンク21内の温度が25℃である場合は、ストレージタンク21内の気層の圧力(飽和蒸気圧力)はゲージ圧で約0.9MPaである。以下、圧力の表示は全てゲージ圧である。なお、LPGの飽和蒸気圧力は、50℃で約1.7MPaであるので、ストレージタンク21は例えば1.8MPaまで耐えられるように構成される。参考までに、LPGの飽和蒸気圧力は、0℃で約0.4MPaである。
【0020】
ストレージタンク21の内部には、ポンプ25が設置されている。ポンプ25の数は1つであっても複数であってもよい。中継ライン26の上流端は、ポンプ25へ繋がっている。中継ライン26の下流端は、サービスタンク22内で開口している。ポンプ25により、中継ライン26を通じてストレージタンク21からサービスタンク22へLPGが供給される。ただし、ポンプ25はストレージタンク21の外で中継ライン26の途中に設けられてもよい。
【0021】
ストレージタンク21と同様に、サービスタンク22にはLPGを低温に維持する手段が設けられておらず、サービスタンク22内のLPGの温度は大気温度に追従して変化する。サービスタンク22内の気層の成分が気化したPGのみの場合は、サービスタンク22内の気層の圧力はLPGの飽和蒸気圧力である。
【0022】
後述するようなエンジン11とサービスタンク22との間でのLPGの循環時は、サービスタンク22内のLPGの温度は大気温度よりも高くてもよい。例えば、サービスタンク22内のLPGの温度が60℃である場合は、サービスタンク22内の気層の圧力(飽和蒸気圧力)は約2.1MPaである。なお、サービスタンク22は例えば2.2MPaまで耐えられるように構成される。
【0023】
サービスタンク22は、燃料供給ライン31および燃料回収ライン41により推進用エンジン11と接続されている。燃料供給ライン31を通じてサービスタンク22からエンジン11へLPGが供給され、燃料回収ライン41を通じてエンジン11からサービスタンク22へ未使用のLPGが回収される。換言すれば、サービスタンク22とエンジン11との間で、燃料供給ライン31および燃料回収ライン41を通じてLPGが循環する。
【0024】
燃料供給ライン31の上流端は、サービスタンク22の下部へ繋がっている。燃料回収ライン41の下流端は、サービスタンク22内で開口している。
【0025】
エンジン11は、例えば、ディーゼルサイクルまたはオットーサイクルのレシプロエンジンである。図示は省略するが、エンジン11は、燃料供給ライン31の下流端と燃料回収ライン41の上流端とを接続する主流路と、主流路に互いに並列に接続された複数の燃料噴射弁を含む。
【0026】
燃料供給ライン31には、上流側から順に、ポンプ32、加熱器33および遮断弁34が設けられている。
【0027】
中継ライン26には、ストレージタンク21からサービスタンク22へ供給されるLPGを加熱する加熱器27が設けられている。加熱器33は、LPGをエンジン11の要求温度(例えば、45℃)まで加熱する。LPGがエンジン11に供給されているとき、エンジン11の燃料消費量Qeに相当する量のLPGがストレージタンク21からサービスタンク22へ供給される。加熱器27は、加熱器33だけではエンジン11の要求温度まで加熱することが困難な場合に使用される。なお、加熱器27は、省略されてもよい。
【0028】
燃料回収ライン41には、上流側から順に、第1圧力調整弁42、遮断弁43、冷却器44および第2圧力調整弁45が設けられている。冷却器44は、LPGを所定の温度(例えば、40℃)まで冷却する。なお、冷却器44は省略されてもよい。
【0029】
燃料供給ライン31と燃料回収ライン41とが、第1バイパスライン51により接続されている。第1バイパスライン51は、ポンプ32と遮断弁34の間、より詳しくは、加熱器33と遮断弁34の間で燃料供給ライン31から分岐し、遮断弁43および冷却器44の間で燃料回収ライン41へ繋がっている。第1バイパスライン51には、流量制御弁52が設けられている。
【0030】
さらに、本実施形態では、第2バイパスライン53も採用されている。第2バイパスライン53は、ポンプ32と加熱器33の間で燃料供給ライン31から分岐し、サービスタンク22へ繋がっている。第2バイパスライン53には、流量制御弁54が設けられている。ただし、第1バイパスライン51と第2バイパスライン53のどちらか一方は省略されてもよい。
【0031】
ポンプ32、遮断弁34,43、圧力調整弁42,45および流量制御弁52,54は、制御装置6により制御される。ただし、
図1では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。制御装置6は、例えば、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。制御装置6は、単一の機器であってもよいし、複数の機器(例えば、エンジン制御装置と燃料供給制御装置)に分割されてもよい。
【0032】
制御装置6は、第1供給圧力計72、第2供給圧力計73、回収圧力計74および流量計81と電気的に接続されている。流量計81は、ポンプ32および流量制御弁52の制御、特に、LPGをエンジン11に供給しているときのLPG流量制御に使用される。第1供給圧力計72は、ポンプ32および流量制御弁52の制御、特に、LPGのエンジン11への供給を停止しているときのLPG圧力制御に使用される。第2供給圧力計73は第1圧力調整弁42の制御に使用され、回収圧力計74は第2圧力調整弁45の制御に使用される。
【0033】
流量計81は、第1バイパスライン51との分岐点の下流側で燃料供給ライン31に設けられており、燃料供給ライン31を通じてエンジン11へ流入するLPGの供給流量Qiを検出する。
【0034】
第1供給圧力計72は、ポンプ32の下流側(より詳しくは、加熱器33の下流側)で燃料供給ライン31に設けられている。第1供給圧力計72は、ポンプ32から供給されるLPGの圧力を検出する。第2供給圧力計73は、遮断弁34の下流側で燃料供給ライン31に設けられており、遮断弁34を通過してエンジン11へ供給されるLPGの圧力を検出する。
【0035】
回収圧力計74は、遮断弁43と第2圧力調整弁45の間で燃料回収ライン41に設けられている。回収圧力計74は、第1圧力調整弁42で減圧された後のLPGの圧力を検出する。本実施形態では、回収圧力計74が冷却器44の上流側に位置しているが、冷却器44の下流側に位置してもよい。
【0036】
ここで、エンジン11は、LPGのみを燃料とするエンジンであってもよく、LPGと重油や軽油といった燃料油とを燃料とする二元燃料エンジンであってもよい。LPGのみを燃料とするエンジンの場合、LPGをエンジン11に供給開始するタイミングは、エンジン11の運転を開始するタイミングに相当する。LPGのエンジン11への供給を停止している期間は、エンジン11を停止している期間に相当する。二元燃料エンジンの場合、LPGをエンジン11に供給開始するタイミングには、エンジン11の運転を開始するタイミングと、エンジン11は稼働中であるがエンジン11に供給される燃料を燃料油からLPGに切り換えるタイミングとが含まれる。LPGのエンジン11への供給を停止している期間には、エンジン11を停止している期間と、エンジン11が燃料油を燃料に用いて稼働している期間とが含まれる。
【0037】
遮断弁34,43に関し、LPGのエンジン11への供給を停止している期間には、制御装置6は、遮断弁34,43を閉じる。LPGをエンジン11に供給している期間には、制御装置6は、遮断弁34,43を開く。エンジン11の停止中は、遮断弁34,43間の流路(燃料供給ライン31の下流側部分、エンジン11の主流路および燃料回収ライン41の上流側部分)が不活性ガスでパージされる。
【0038】
LPGがエンジン11に供給されているときには、LPGの圧力制御、流量制御および温度管理が実行される。
【0039】
LPGのエンジン供給時におけるLPGの流量制御に関し、制御装置6は、流量計81によって検出される供給流量Qiがエンジン11の燃料消費量Qeに応じた所定値Vとなるように、ポンプ32の回転数を制御する。本実施形態では、所定値Vは、エンジン11の燃料消費量Qeに係数Cを乗算した値である(V=Qe×C)。例えば、係数Cは、通常は1.1〜1.50である。係数Cは、この数値範囲内で設定される固定値でもよいし、この数値範囲内で可変的に設定されてもよい。
【0040】
例えば、制御装置6は、エンジン11の燃料消費量Qeを、操船者により操作されるテレグラフレバーの操作量に基づいて決定してもよい。あるいは、制御装置6がエンジン11を制御するエンジン制御装置と、ポンプ32および各種の弁を制御する燃料供給制御装置とに分割される場合は、燃料供給制御装置がエンジン制御装置で算出された燃料消費量に関する値に基づいてエンジン11の燃料消費量Qeを決定してもよい。
【0041】
流量計81で検出された供給流量Qiに基づくポンプ32の回転数制御の結果、ポンプ32の回転数が最低回転数となったときには、制御装置6は、流量計81で検出される供給流量Qiが上述した所定値Vとなるように流量制御弁52,54のどちらか一方を制御する。具体的には、制御装置6は、エンジン11の燃料消費量Qeが小さくなるほど流量制御弁52,54のどちらか一方の開度を大きくし、エンジン11に供給されるLPGの流量を減らす。
【0042】
LPGの流量が燃料消費量に応じて調整されるようにポンプ32の回転数および流量制御弁52を制御するので、LPGのエンジン11への過剰供給を抑制できる。LPGの温度は、LPGがエンジン11を通過するときにエンジン11から入熱して上昇する。バイパスライン51,53を設けたことで、燃料回収ライン41を備えた船舶1において燃料タンク2(サービスタンク22)内のLPGの温度の過上昇を抑制できる。
【0043】
LPGの温度は、LPGがエンジン11を通過することによって少し高くなる(例えば、55℃)。従って、第1圧力調整弁42で減圧されたLPGが気化することを防ぐために、制御装置6は、回収圧力計74で検出される圧力が、想定される最大温度における飽和蒸気圧力よりも高い設定値(例えば、2.0MPa)となるように第2圧力調整弁45を制御する。
【0044】
LPGのエンジン供給時におけるLPGの圧力制御に関し、制御装置6は、第2供給圧力計73で検出される圧力がエンジン11の要求圧力(例えば、5.0〜6.0MPa)となるように第1圧力調整弁42を制御する。この要求圧力は、燃料を適正に噴射するため、ひいては、エンジン11を円滑に運転させるために必要とされる圧力である。
【0045】
LPGのエンジン11への供給を停止しているときにも、LPGの圧力制御が実行される。ただし、LPG供給停止中に常にこの圧力制御が実行されるわけではない。二元燃料エンジンでは、例えば、軽油の使用中に実行される。このとき、エンジン11へのLPGの供給開始に備えて、LPG用のエンジン主流路にLPGが充填されていてもよい。LPGのみを燃料とするエンジンでは、例えば、スタンバイ期間中に実行される。なお、LPGのみを燃料とするエンジンでは、このスタンバイ期間中に不活性ガスによるパージが行われてもよい。
【0046】
遮断弁34,43を閉弁してLPGの供給を停止している期間におけるLPGの圧力制御に関し、制御装置6は、ポンプ32を作動させると共に流量制御弁52および/または流量制御弁54を開弁させる。それにより、ストレージタンク22内のLPGが、燃料供給ライン31、第1バイパスライン51および燃料回収ライン41を介し、エンジン11を経由せず、ストレージタンク22に戻される。かつ/または、ストレージタンク22内のLPGが、燃料供給ライン31および第2バイパスライン53を介し、エンジン11を経由せず、ストレージタンク22に戻される。制御装置6は、第1供給圧力計72によって検出されるLPGの供給圧力を要求圧力(例えば、5.0〜6.0MPa)に保つように、ポンプ32の回転数および流量制御弁52,54を制御する。なお、第1供給圧力計72は、ポンプ32の下流側かつ遮断弁34の上流側で燃料供給ライン31に設けられており、第1バイパスライン51の分岐点も同様にして遮断弁34の上流側に配置されているので、還流するLPGの圧力を検出可能である。
【0047】
一例として、ポンプ32の回転数は最低回転数に維持され、流量制御弁52は、検出される圧力が要求圧力を上回ると開度を大きくし、検出される圧力が要求圧力を下回ると開度を小さくする。
【0048】
このような圧力制御が実行されている状況下で、遮断弁34,43を閉弁状態から開弁状態に切り換えると、切換え当初から遮断弁34の上流側においてLPGの供給圧力が要求圧力に達している。このため、その後は、遮断弁34の下流側(特に、遮断弁34,43間)の昇圧のみが必要であり、遮断弁34,43を開いてから速やかにエンジン11への供給圧力を安定させることができる。圧力が安定すれば、LPGを使用した運転に切り換えることができることから、LPGを使用した運転を円滑迅速に開始できる。
【0049】
ポンプ32の回転数および流量制御弁52,54の開度は、LPGを供給していないときには圧力制御に用いられ、LPGを供給しているときには流量制御に用いられる。制御装置6は、第1圧力調整弁42を操作してエンジン11に供給される圧力を制御するので、流量制御弁52,54およびポンプ32の回転数を流量制御に用いながら、供給圧力の制御も同時に実現できる。
【0050】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、
図2に示すように、流量計81が遮断弁43の上流側で燃料回収ライン41に設けられ、燃料回収ライン41を通じてエンジン11から流出するLPGの回収流量Qoを検出してもよい。すなわち、制御装置6は、流量計81で検出される回収流量Qoがエンジン11の燃料消費量Qeに応じた所定値V’となるように、ポンプ32および流量制御弁52を制御してもよい。この場合、所定値V’は、例えば、エンジン11の燃料消費量Qeに通常は0.1〜0.50の係数Cを乗算した値である。
【0052】
また、所定値V,V´は必ずしも一定である必要はなく、制御装置6は、ポンプ32の回転数が最低回転数となったときに、所定値V,V´を増加させてもよい。例えば、
図1に示す構成では、所定値Vを1.1×Qeから11.0×Qeまでの範囲内の流量まで増加させてもよい。あるいは、
図2に示す構成では、所定値V´を0.1×Qeから10.0×Qeまでの範囲内の流量まで増加させてもよい。
【0053】
ポンプ32の回転数が最低回転数となったときに所定値V,V’が一定であり、かつ、第2バイパスライン53に設けられた流量制御弁54が開かれる場合には、ポンプ32の吐出流量Qから所定値V,V’を差し引いた余剰分が、第2バイパスライン53を通じてサービスタンク22へ返送される。その余剰分は、ポンプ32で熱を受けているために、サービスタンク22内のLPGの温度が上昇する。これに対し、ポンプ32の回転数が最低回転数となったときに所定値V,V’を増加させれば、第2バイパスライン53を通じてサービスタンク22へ返送されるLPGを減少させることができる。一方、所定値V,V’の増加によってエンジン11を通過するLPGも増加するが、この増加した分は燃料回収ライン41に設けられた冷却器44によって冷却される。従って、サービスタンク22内のLPGの温度の上昇を抑制することができる。
【0054】
また、
図2に示すように、第2供給圧力計73を省略してもよい。この場合、第1供給圧力計72の検出圧力を用いて第1圧力調整弁42が制御される。
【0055】
また、前記実施形態では、LPGの供給停止時の圧力制御において、ポンプ32の回転数を最低回転数の一定値に制御したが、ポンプ32の回転数は、その他の一定値に制御されてもよいし、温度や燃料タンク2内の気層の圧力に応じて可変的に設定されてもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、燃料タンク2がストレージタンク21とサービスタンク22で構成されていたが、ストレージタンク21が省略され、燃料タンク2がサービスタンク22のみで構成されてもよい。すなわち、サービスタンク22内にLPG供給源から直接的にLPGが導入されてもよい。しかし、前記実施形態のような構成であれば、燃料タンク2をLPG導入用のストレージタンク21とLPG循環用のサービスタンク22とに分けることができる。