特許第6982455号(P6982455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982455
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/11521 20170101AFI20211206BHJP
   H01L 27/11524 20170101ALI20211206BHJP
   H01L 27/11519 20170101ALI20211206BHJP
   H01L 27/11526 20170101ALI20211206BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01L27/11521
   H01L27/11524
   H01L27/11519
   H01L27/11526
   H01L29/78 371
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-198014(P2017-198014)
(22)【出願日】2017年10月11日
(65)【公開番号】特開2019-71396(P2019-71396A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 敏行
(72)【発明者】
【氏名】細野 剛
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−047689(JP,A)
【文献】 特開平11−186418(JP,A)
【文献】 特開2005−302867(JP,A)
【文献】 特開2013−168576(JP,A)
【文献】 特開平11−186416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/11521
H01L 27/11524
H01L 27/11519
H01L 27/11526
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する半導体層と、
トンネルウィンドウを形成する薄膜部、前記薄膜部の周囲に形成され、前記薄膜部よりも厚い厚膜部、ならびに、前記薄膜部および前記厚膜部を接続し、前記薄膜部から前記厚膜部に向かって上り傾斜した傾斜部を有し、前記半導体層の前記主面を被覆するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の前記薄膜部の上に形成されたメモリゲート構造と、
前記ゲート絶縁膜の前記厚膜部の上に形成されたセレクトゲート構造と、
前記ゲート絶縁膜の前記傾斜部に接するように前記メモリゲート構造の側面を被覆するサイドウォールと、を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記メモリゲート構造は、前記ゲート絶縁膜の前記薄膜部および前記傾斜部の上に形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート絶縁膜において前記厚膜部および前記傾斜部を接続する接続部は、前記メモリゲート構造および前記セレクトゲート構造の間の領域に形成されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記メモリゲート構造は、前記傾斜部の一部を露出させるように前記ゲート絶縁膜の前記薄膜部および前記傾斜部の上に形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記メモリゲート構造は、前記ゲート絶縁膜の前記薄膜部の全域を被覆している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜内において前記傾斜部が成す角度θは、45°未満(θ<45°)である、請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層の前記主面の表層部において、前記ゲート絶縁膜の前記薄膜部を挟んで前記メモリゲート構造に対向する領域に形成された第1導電型のトンネル領域をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層の前記主面の表層部において、前記メモリゲート構造に対して前記トンネル領域とは反対側の領域に形成された第1導電型のソース領域と、
前記半導体層の前記主面の表層部において、前記セレクトゲート構造に対して前記トンネル領域とは反対側の領域に形成された第1導電型のドレイン領域と、をさらに含む、請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記メモリゲート構造は、コントロールゲート層を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記セレクトゲート構造は、セレクトゲート層を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置の一例としての不揮発性メモリ素子が開示されている。不揮発性メモリ素子は、半導体基板を含む。半導体基板の上には、ゲート絶縁膜が形成されている。ゲート絶縁膜は、トンネルウィンドウを形成するトンネル絶縁膜を含む。
ゲート絶縁膜のトンネル絶縁膜の上には、メモリゲート構造が形成されている。ゲート絶縁膜においてトンネル絶縁膜外の領域の上には、セレクトゲート構造が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−305260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る従来の半導体装置では、ゲート絶縁膜およびトンネル絶縁膜が、半導体基板の主面に対して垂直に延びる壁部によって接続されている。そのため、ゲート絶縁膜および壁部を接続する角部や、トンネル絶縁膜および壁部を接続する角部において電界が集中する。
その結果、絶縁破壊耐量の低下や、トンネル絶縁膜を通過する電荷量の低下等の種々の電気的特性の劣化が引き起こされる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態では、ゲート絶縁膜に対する電界の集中を抑制できる半導体装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、主面を有する半導体層と、トンネルウィンドウを形成する薄膜部、前記薄膜部の周囲に形成され、前記薄膜部よりも厚い厚膜部、ならびに、前記薄膜部および前記厚膜部を接続し、前記薄膜部から前記厚膜部に向かって上り傾斜した傾斜部を有し、前記半導体層の前記主面を被覆するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の前記薄膜部の上に形成されたメモリゲート構造と、前記ゲート絶縁膜の前記厚膜部の上に形成されたセレクトゲート構造と、を含む、半導体装置を提供する。
【0007】
この半導体装置によれば、ゲート絶縁膜において、薄膜部および厚膜部が傾斜部によって接続されている。これにより、薄膜部および厚膜部の間の領域に角部が形成されるのを抑制できるから、ゲート絶縁膜に対する電界集中を緩和できる。よって、絶縁破壊耐量の低下や、薄膜部を通過する電荷量の低下等の電気的特性の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図2図2は、図1の領域IIの拡大図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、ゲート絶縁膜の構造を具体的に説明するための拡大図である。
図6A図6Aは、図3に対応する部分の断面図であって、図1の半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図6B図6Bは、図6Aの後の工程を説明するための断面図である。
図6C図6Cは、図6Bの後の工程を説明するための断面図である。
図6D図6Dは、図6Cの後の工程を説明するための断面図である。
図6E図6Eは、図6Dの後の工程を説明するための断面図である。
図6F図6Fは、図6Eの後の工程を説明するための断面図である。
図6G図6Gは、図6Fの後の工程を説明するための断面図である。
図6H図6Hは、図6Gの後の工程を説明するための断面図である。
図6I図6Iは、図6Hの後の工程を説明するための断面図である。
図6J図6Jは、図6Iの後の工程を説明するための断面図である。
図6K図6Kは、図6Jの後の工程を説明するための断面図である。
図6L図6Lは、図6Kの後の工程を説明するための断面図である。
図6M図6Mは、図6Lの後の工程を説明するための断面図である。
図6N図6Nは、図6Mの後の工程を説明するための断面図である。
図6O図6Oは、図6Nの後の工程を説明するための断面図である。
図6P図6Pは、図6Oの後の工程を説明するための断面図である。
図6Q図6Qは、図6Pの後の工程を説明するための断面図である。
図6R図6Rは、図6Qの後の工程を説明するための断面図である。
図6S図6Sは、図6Rの後の工程を説明するための断面図である。
図6T図6Tは、図6Sの後の工程を説明するための断面図である。
図7A図7Aは、図4に対応する部分の断面図であって、図1の半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図7B図7Bは、図7Aの後の工程を説明するための断面図である。
図7C図7Cは、図7Bの後の工程を説明するための断面図である。
図7D図7Dは、図7Cの後の工程を説明するための断面図である。
図7E図7Eは、図7Dの後の工程を説明するための断面図である。
図7F図7Fは、図7Eの後の工程を説明するための断面図である。
図7G図7Gは、図7Fの後の工程を説明するための断面図である。
図7H図7Hは、図7Gの後の工程を説明するための断面図である。
図7I図7Iは、図7Hの後の工程を説明するための断面図である。
図7J図7Jは、図7Iの後の工程を説明するための断面図である。
図7K図7Kは、図7Jの後の工程を説明するための断面図である。
図7L図7Lは、図7Kの後の工程を説明するための断面図である。
図7M図7Mは、図7Lの後の工程を説明するための断面図である。
図7N図7Nは、図7Mの後の工程を説明するための断面図である。
図7O図7Oは、図7Nの後の工程を説明するための断面図である。
図7P図7Pは、図7Oの後の工程を説明するための断面図である。
図7Q図7Qは、図7Pの後の工程を説明するための断面図である。
図7R図7Rは、図7Qの後の工程を説明するための断面図である。
図7S図7Sは、図7Rの後の工程を説明するための断面図である。
図7T図7Tは、図7Sの後の工程を説明するための断面図である。
図8図8は、図5に対応する部分の拡大図であって、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構造を説明するための図である。
図9図9は、図3に対応する部分の断面図であって、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構造を説明するための図である。
図10図10は、図3に対応する部分の断面図であって、セレクトゲート構造の変形例を示す図である。
図11図11は、図3に対応する部分の断面図であって、半導体層の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の平面図である。
図1を参照して、半導体装置1は、直方体形状の半導体層2を含む。半導体層2は、一方側の第1主面3、他方側の第2主面4、ならびに、第1主面3および第2主面4を接続する側面5を有している。半導体層2の第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。
【0010】
半導体層2の第1主面3には、メモリ領域6が形成されている。また、半導体層2の第1主面3には、ダイオード領域7が形成されている。
メモリ領域6には、不揮発性メモリの一例としてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)8が形成されている。ダイオード領域7には、ツェナーダイオード9が形成されている。ツェナーダイオード9は、たとえば、EEPROM8に供給される電圧を制限し安定化させる。
【0011】
図2は、図1の領域IIの拡大図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、ゲート絶縁膜21の構造を具体的に説明するための拡大図である。
図2図5を参照して、半導体層2は、この形態では、p型の半導体基板10を含む。半導体基板10のp型不純物濃度は、1.0×1014cm−3以上1.0×1015cm−3以下であってもよい。半導体層2は、半導体基板10からなる単層構造を有していてもよい。半導体基板10は、シリコン製またはSiC製の半導体基板であってもよい。
【0012】
メモリ領域6において、半導体層2には、複数のアクティブ領域11が設定されている。複数のアクティブ領域11には、EEPROM8がそれぞれ形成される。複数のアクティブ領域11は、この形態では、ストライプ状に設定されている。
以下では、アクティブ領域11が延びる方向を第1方向Aという。また、アクティブ領域11に交差する方向を第2方向Bという。第2方向Bは、この形態では、アクティブ領域11に直交する方向に設定されている。
【0013】
複数のアクティブ領域11は、半導体層2の第1主面3に形成された素子分離構造12によって区画されている。素子分離構造12は、平面視において各アクティブ領域11に沿って帯状に延びている。素子分離構造12は、平面視において各アクティブ領域11を取り囲む環状に形成されていてもよい。
素子分離構造12は、この形態では、トレンチ絶縁構造を有している。トレンチ絶縁構造は、半導体層2の第1主面3に形成されたトレンチ13に埋め込まれた絶縁体層14を含む。
【0014】
トレンチ13は、底面積が開口面積よりも小さいテーパ形状に形成されていてもよい。トレンチ13の深さは、0.5μm以上1.0μm以下であってもよい。絶縁体層14は、酸化シリコンを含んでいてもよい。
トレンチ絶縁構造は、トレンチ13の深さやアスペクト比に応じて、DTI(Deep Trench Isolation)構造やSTI(Shallow Trench Isolation)構造とも称される。
【0015】
素子分離構造12は、トレンチ絶縁構造に代えてまたはこれに加えて、熱酸化処理法によって半導体層2の第1主面3を酸化させて形成したLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)層を含んでいてもよい。
素子分離構造12は、p型フィールドストップ領域15を含んでいてもよい。p型フィールドストップ領域15は、半導体層2においてトレンチ13の底壁に沿う領域に形成されている。
【0016】
図2図3および図5を参照して、半導体層2の第1主面3の上には、ゲート絶縁膜21が形成されている。ゲート絶縁膜21は、複数のアクティブ領域11を一括して被覆している。ゲート絶縁膜21は、薄膜部22、厚膜部23および傾斜部24を含む。
ゲート絶縁膜21の薄膜部22は、トンネルウィンドウ25を形成している。薄膜部22は、ファウラーノルドハイムトンネリングによって電荷(電子)を通過させる。薄膜部22は、複数のアクティブ領域11にそれぞれ形成されている。
【0017】
薄膜部22は、この形態では、第2方向Bに沿って延びる帯状に形成されている。薄膜部22は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
薄膜部22において第1方向Aに沿う幅W1は、200nm以上600nmm(たとえば450μm程度)であってもよい。薄膜部22の厚さT1は、5nm以上15nm以下(たとえば8nm程度)であってもよい。
【0018】
ゲート絶縁膜21の厚膜部23は、薄膜部22の周囲に形成されている。厚膜部23は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
厚膜部23は、薄膜部22の厚さT1よりも大きい厚さT2を有している(T2>T1)。厚膜部23の厚さT2は、20nm以上50nm以下(たとえば30nm程度)であってもよい。
【0019】
ゲート絶縁膜21の傾斜部24は、薄膜部22および厚膜部23を接続している。傾斜部24は、薄膜部22から厚膜部23に向かって上り傾斜している。傾斜部24は、第2方向Bに沿って延びる帯状に形成されている。
傾斜部24は、薄膜部22を取り囲む環状に形成されていてもよい。傾斜部24は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
【0020】
傾斜部24の第1方向Aに沿う幅W2は、厚膜部23の厚さT2よりも大きい。厚膜部23の厚さT2および薄膜部22の厚さT1の差(T2−T1)に対する傾斜部24の幅W2の比W2/(T2−T1)は、1を超えて10未満であってもよい(1<W2/(T2−T1)<10)。傾斜部24の幅W2は、100nm以上200nmm(たとえば150μm程度)であってもよい。
【0021】
ゲート絶縁膜21内において傾斜部24が成す角度θは、45°未満である。傾斜部24が成す角度θとは、ゲート絶縁膜21内において、傾斜部24の傾斜面26が半導体層2の第1主面3に対して成す角度である。
傾斜部24が成す角度θは、より具体的には、4°以上12°以下(4°≦θ≦12°)である。傾斜部24が成す角度θは、6°以上10°以下であってもよい(6°≦θ≦10°)。傾斜部24が成す角度θは、典型的には、7°±2°の範囲に収まるように形成される。
【0022】
傾斜部24は、薄膜部22に接続された第1接続端部27を有している。第1接続端部27は、凹湾曲状に形成されている。これにより、第1接続端部27は、角張ることなく滑らかに薄膜部22に接続されている。
傾斜部24は、厚膜部23に接続された第2接続端部28を有している。第2接続端部28は、凸湾曲状に形成されている。これにより、第2接続端部28は、角張ることなく滑らかに厚膜部23に接続されている。
【0023】
図2を参照して、各アクティブ領域11には、ドレイン端子電極31およびソース端子電極32、ならびに、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34が形成されている。
ドレイン端子電極31およびソース端子電極32は、第1方向Aに沿って互いに間隔を空けて形成されている。ドレイン端子電極31およびソース端子電極32は、平面視においてゲート絶縁膜21の薄膜部22を挟み込んでいる。
【0024】
メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34は、ゲート絶縁膜21の上にそれぞれ形成されている。メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34は、ドレイン端子電極31およびソース端子電極32の間の領域において、第1方向Aに沿って互いに間隔を空けて形成されている。
メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34の間の距離Dは、200nm以上400nm以下(たとえば300nm程度)であってもよい。
【0025】
メモリゲート構造33は、セレクトゲート構造34に対して、ソース端子電極32側の領域に形成されている。メモリゲート構造33は、ゲート絶縁膜21の薄膜部22を被覆するように、複数のアクティブ領域11内にそれぞれ形成されている。
メモリゲート構造33は、ゲート絶縁膜21の薄膜部22のほぼ全域を被覆している。メモリゲート構造33は、この形態では、第2方向Bに沿って延びる帯状に形成されている。メモリゲート構造33は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
【0026】
セレクトゲート構造34は、メモリゲート構造33に対して、ドレイン端子電極31側の領域に形成されている。セレクトゲート構造34は、ゲート絶縁膜21の厚膜部23を被覆するように、複数のアクティブ領域11内にそれぞれ形成されている。
セレクトゲート構造34は、この形態では、第2方向Bに沿って延びる帯状に形成されている。セレクトゲート構造34は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
【0027】
メモリゲート構造33は、この形態では、ゲート絶縁膜21の薄膜部22および傾斜部24の上に形成されている。メモリゲート構造33は、ゲート絶縁膜21のうちセレクトゲート構造34(ドレイン端子電極31)側に位置する傾斜部24の一部を露出させている。
セレクトゲート構造34は、この形態では、ゲート絶縁膜21の厚膜部23の上に形成されている。セレクトゲート構造34は、ゲート絶縁膜21のうちセレクトゲート構造34(ドレイン端子電極31)側に位置する傾斜部24を露出させている。
【0028】
第2接続端部28のうちセレクトゲート構造34(ドレイン端子電極31)側に位置する部分は、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34から露出している。
第2接続端部28のうちセレクトゲート構造34(ドレイン端子電極31)側に位置する部分は、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34の間の領域に位置している。
【0029】
メモリゲート構造33の側面は、ゲート絶縁膜21の傾斜部24に接する第1側面接続部35を含む。セレクトゲート構造34の側面は、ゲート絶縁膜21の厚膜部23に接する第2側面接続部36を含む。
半導体層2の第1主面3に対して、第2側面接続部36は、第1側面接続部35よりも上方に位置している。半導体層2の第1主面3および第2側面接続部36の間の距離は、半導体層2の第1主面3および第1側面接続部35の間の距離よりも大きい。
【0030】
メモリゲート構造33の上には、第1外面絶縁膜37が形成されている。第1外面絶縁膜37は、メモリゲート構造33の上面の一部を露出させている。セレクトゲート構造34の上には、第2外面絶縁膜38が形成されている。第2外面絶縁膜38は、セレクトゲート構造34の上面の一部を露出させている。
メモリゲート構造33の側面は、第1サイドウォール39によって被覆されている。第1サイドウォール39は、ゲート絶縁膜21の傾斜部24に接している。
【0031】
セレクトゲート構造34の側面は、第2サイドウォール40によって被覆されている。第2サイドウォール40は、ゲート絶縁膜21の厚膜部23に接している。第2サイドウォール40は、ゲート絶縁膜21の傾斜部24に接していてもよい。
第2サイドウォール40は、セレクトゲート構造34およびメモリゲート構造33の間の領域において、第1サイドウォール39と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
図2図4を参照して、メモリゲート構造33は、ゲート絶縁膜21側からこの順に積層された複数の第1フローティングゲート層51、第1中間絶縁層52およびコントロールゲート層53を含む積層構造を有している。図2では、ハッチングによって第1フローティングゲート層51が示されている。
複数の第1フローティングゲート層51は、それぞれ、第2方向Bに沿って間隔を空けて形成されている。複数の第1フローティングゲート層51は、それぞれ、アクティブ領域11においてゲート絶縁膜21の薄膜部22を被覆している。
【0033】
図2を参照して、各第1フローティングゲート層51は、アクティブ領域11を被覆する本体部51A、および、素子分離構造12を被覆するオーバラップ部51Bを有している。
各第1フローティングゲート層51のオーバラップ部51Bは、隣接する素子分離構造12の周縁部を被覆している。第1フローティングゲート層51の厚さは、100nm以上200nm(たとえば150nm程度)であってもよい。
【0034】
第1中間絶縁層52は、第2方向Bに沿って帯状に延びている。第1中間絶縁層52は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。第1中間絶縁層52は、複数の第1フローティングゲート層51を一括して被覆している。
第1中間絶縁層52は、ONO構造を有していてもよい。ONO構造は、第1フローティングゲート層51側からこの順に積層された酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を含む。第1中間絶縁層52の厚さは、10nm以上30nm以下(たとえば20nm程度)であってもよい。
【0035】
コントロールゲート層53は、第2方向Bに沿って帯状に延びている。コントロールゲート層53は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
コントロールゲート層53は、第1中間絶縁層52を介して複数の第1フローティングゲート層51を一括して被覆している。コントロールゲート層53は、複数のアクティブ領域11に対して、共通のコントロールゲート層を形成している。
【0036】
図2および図3を参照して、コントロールゲート層53において第2方向Bに沿って延びる側面は、第1フローティングゲート層51において第2方向Bに沿って延びる側面に対して面一に形成されている。コントロールゲート層53の厚さは、50nm以上150nm以下(たとえば100nm程度)であってもよい。
図2図4を参照して、セレクトゲート構造34は、ゲート絶縁膜21側からこの順に積層されたセレクトゲート層54、第2中間絶縁層55および第2フローティングゲート層56を含む積層構造を有している。図2では、ハッチングによって第2フローティングゲート層56が示されている。
【0037】
セレクトゲート層54は、第2方向Bに沿って帯状に延びている。セレクトゲート層54は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。セレクトゲート層54は、複数のアクティブ領域11に対して、共通のセレクトゲート層を形成している。
セレクトゲート層54の厚さは、100nm以上200nm(たとえば150nm程度)であってもよい。セレクトゲート層54の厚さは、第1フローティングゲート層51の厚さとぼほ等しくてもよい。
【0038】
第2中間絶縁層55は、セレクトゲート層54のほぼ全域を被覆している。第2中間絶縁層55は、第2方向Bに沿って帯状に延びている。第2中間絶縁層55は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
第2中間絶縁層55は、ONO構造を有していてもよい。ONO構造は、セレクトゲート層54側からこの順に積層された酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を含む。
【0039】
第2中間絶縁層55の厚さは、10nm以上30nm以下(たとえば20nm程度)であってもよい。第2中間絶縁層55の厚さは、第1中間絶縁層52の厚さとぼほ等しくてもよい。
第2フローティングゲート層56は、第2中間絶縁層55のほぼ全域を被覆している。第2フローティングゲート層56は、第2方向Bに沿って帯状に延びている。第2フローティングゲート層56は、素子分離構造12を横切って、複数のアクティブ領域11に跨がっている。
【0040】
図2および図3を参照して、第2フローティングゲート層56において第2方向Bに沿って延びる側面は、セレクトゲート層54において第2方向Bに沿って延びる側面に対して面一に形成されている。
第2フローティングゲート層56の厚さは、50nm以上150nm以下(たとえば100nm程度)であってもよい。第2フローティングゲート層56の厚さは、コントロールゲート層53の厚さとほぼ等しくてもよい。
【0041】
図3および図4を参照して、各アクティブ領域11において、半導体層2の第1主面3の表層部には、n型トンネル領域61、n型トンネル低濃度領域62、n型ソース領域63およびn型ドレイン領域64が形成されている。
n型トンネル領域61は、半導体層2の第1主面3の表層部においてゲート絶縁膜21の薄膜部22を挟んでメモリゲート構造33に対向する領域に形成されている。n型トンネル領域61は、平面視において、アクティブ領域11に位置するゲート絶縁膜21の薄膜部22の全域に重なっている。
【0042】
n型トンネル領域61は、平面視においてゲート絶縁膜21の傾斜部24に重なっていてもよい。n型トンネル領域61は、平面視において、アクティブ領域11に位置するゲート絶縁膜21の傾斜部24の全域に重なっていてもよい。n型トンネル領域61は、ゲート絶縁膜21の厚膜部23に重なっていてもよい。
n型トンネル領域61のn型不純物濃度は、1.0×1017cm−3以上1.0×1020cm−3以下であってもよい。n型トンネル領域61の深さは、0.2μm以上0.5μm以下であってもよい。
【0043】
n型トンネル領域61は、メモリゲート構造33に対してn型ドレイン領域として機能する。n型トンネル領域61は、セレクトゲート構造34に対してn型ソース領域として機能する。メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34は、n型トンネル領域61を介して直列に接続されている。
n型トンネル低濃度領域62は、n型トンネル領域61のn型不純物濃度よりも低いn型不純物濃度を有している。n型トンネル低濃度領域62のn型不純物濃度は、1.0×1016cm−3以上1.0×1019cm−3以下であってもよい。
【0044】
n型トンネル低濃度領域62は、半導体層2の第1主面3の表層部においてメモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34の間の領域に形成されている。
n型トンネル低濃度領域62は、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34に対して自己整合的に形成されている。n型トンネル低濃度領域62は、平面視において第1サイドウォール39および第2サイドウォール40に重なっている。
【0045】
n型トンネル低濃度領域62は、n型トンネル領域61に接続されている。n型トンネル低濃度領域62の底部は、n型トンネル領域61の底部よりも半導体層2の第2主面4側に位置している。
n型トンネル低濃度領域62は、n型トンネル領域61の底部を被覆するオーバラップ部62Aを含む。n型トンネル低濃度領域62の深さは、0.1μm以上0.3μm以下であってもよい。
【0046】
n型ソース領域63は、半導体層2の第1主面3の表層部においてメモリゲート構造33に対してn型トンネル領域61とは反対側の領域に形成されている。n型ソース領域63は、平面視において第1サイドウォール39に重なっている。
n型ソース領域63は、n型ソース低濃度領域65およびn型ソース高濃度領域66を含むLDS(Lightly Doped Source)構造を有している。n型ソース高濃度領域66は、n型ソース低濃度領域65のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有している。
【0047】
n型ソース低濃度領域65のn型不純物濃度は、1.0×1016cm−3以上1.0×1019cm−3以下であってもよい。n型ソース高濃度領域66のn型不純物濃度は、1.0×1017cm−3以上1.0×1020cm−3以下であってもよい。
n型ソース低濃度領域65は、半導体層2の第1主面3の表層部に形成されている。n型ソース低濃度領域65は、メモリゲート構造33に対して自己整合的に形成されている。
【0048】
n型ソース高濃度領域66は、n型ソース低濃度領域65の表層部に形成されている。n型ソース高濃度領域66は、第1サイドウォール39に対して自己整合的に形成されている。
n型ドレイン領域64は、半導体層2の第1主面3の表層部においてセレクトゲート構造34に対してn型トンネル領域61とは反対側の領域に形成されている。n型ドレイン領域64は、平面視において第2サイドウォール40に重なっている。
【0049】
n型ドレイン領域64は、n型ドレイン低濃度領域67およびn型ドレイン高濃度領域68を含むLDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。n型ドレイン高濃度領域68は、n型ドレイン低濃度領域67のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有している。
n型ドレイン低濃度領域67のn型不純物濃度は、1.0×1016cm−3以上1.0×1019cm−3以下であってもよい。n型ドレイン高濃度領域68のn型不純物濃度は、1.0×1017cm−3以上1.0×1020cm−3以下であってもよい。
【0050】
n型ドレイン低濃度領域67は、半導体層2の第1主面3の表層部に形成されている。n型ドレイン低濃度領域67は、セレクトゲート構造34に対して自己整合的に形成されている。
n型ドレイン高濃度領域68は、n型ドレイン低濃度領域67の表層部に形成されている。n型ドレイン高濃度領域68は、第2サイドウォール40に対して自己整合的に形成されている。
【0051】
半導体層2の第1主面3の表面の上には、保護絶縁層71が形成されている。保護絶縁層71は、窒化シリコンを含んでいてもよい。保護絶縁層71は、半導体層2の第1主面3、メモリゲート構造33の外面、セレクトゲート構造34の外面、第1サイドウォール39の外面および第2サイドウォール40の外面に沿って膜状に形成されている。
保護絶縁層71の上には、層間絶縁層72が形成されている。層間絶縁層72は、半導体層2、メモリゲート構造33、セレクトゲート構造34、第1サイドウォール39および第2サイドウォール40を被覆している。
【0052】
層間絶縁層72は、単一の絶縁層を含む単層構造を有していてもよい。層間絶縁層72は、複数の絶縁層が積層された積層構造を有していてもよい。層間絶縁層72は、酸化シリコンまたは窒化シリコンを含んでいてもよい。
前述のドレイン端子電極31は、層間絶縁層72を貫通して、n型ドレイン領域64に接続されている。ドレイン端子電極31は、ドレインシリサイド層73を介してn型ドレイン領域64に接続されている。ドレインシリサイド層73は、n型ドレイン領域64の表層部に形成されている。
【0053】
前述のソース端子電極32は、層間絶縁層72を貫通して、n型ソース領域63に接続されている。ソース端子電極32は、ソースシリサイド層74を介してn型ソース領域63に接続されている。ソースシリサイド層74は、n型ソース領域63の表層部に形成されている。
図示はしないが、層間絶縁層72には、メモリゲート構造33用の第1ゲート端子電極、および、セレクトゲート構造34用の第2ゲート端子電極がさらに形成されている。
【0054】
第1ゲート端子電極は、層間絶縁層72を貫通して、メモリゲート構造33のコントロールゲート層53に接続されている。第1ゲート端子電極は、第1ゲートシリサイド層75を介してコントロールゲート層53に接続されている。第1ゲートシリサイド層75は、コントロールゲート層53の表層部に形成されている。
第2ゲート端子電極は、層間絶縁層72を貫通して、セレクトゲート構造34の第2フローティングゲート層56に接続されている。第2ゲート端子電極は、第2ゲートシリサイド層76を介してコントロールゲート層53に接続されている。第2ゲートシリサイド層76は、第2フローティングゲート層56の表層部に形成されている。
【0055】
ドレイン端子電極31、ソース端子電極32、第1ゲート端子電極および第2ゲート端子電極は、コンタクト電極層77および配線電極層78をそれぞれ含む。
コンタクト電極層77は、層間絶縁層72に形成されたコンタクト孔79に埋め込まれている。コンタクト電極層77は、下地電極層80および埋め込み電極層81を含む。下地電極層80は、チタンを含んでいてもよい。埋め込み電極層81は、タングステンを含んでいてもよい。
【0056】
下地電極層80は、コンタクト孔79の内壁面に沿って膜状に形成されている。これにより、コンタクト孔79内に、凹状の空間が形成されている。埋め込み電極層81は、下地電極層80を挟んでコンタクト孔79に埋め込まれている。より具体的には、埋め込み電極層81は、下地電極層80によって区画された凹状の空間に埋め込まれている。
配線電極層78は、コンタクト電極層77を被覆するように層間絶縁層72の上に形成されている。配線電極層78は、コンタクト電極層77側からこの順に積層された第1電極層82、第2電極層83および第3電極層84を含む積層構造を有している。
【0057】
第1電極層82は、チタンを含んでいてもよい。第2電極層83は、アルミニウムを含んでいてもよい。第3電極層84は、チタンを含んでいてもよい。
以上、半導体装置1によれば、ゲート絶縁膜21において、薄膜部22および厚膜部23が傾斜部24によって接続されている。これにより、薄膜部22および厚膜部23の間の領域に角部が形成されるのを抑制できるから、ゲート絶縁膜21に対する電界集中を緩和できる。よって、絶縁破壊耐量の低下や、薄膜部22を通過する電荷量の低下等の電気的特性の劣化を抑制できる。
【0058】
特に、半導体装置1によれば、ゲート絶縁膜21内において傾斜部24が成す角度θは、45°と比較して極めて小さい4°以上12°以下(4°≦θ≦12°)に設定されている。
しかも、傾斜部24は、薄膜部22に接続された第1接続端部27を有している。第1接続端部27は、角張ることなく滑らかに薄膜部22に接続されている。
【0059】
また、傾斜部24は、厚膜部23に接続された第2接続端部28を有している。第2接続端部28は、角張ることなく滑らかに厚膜部23に接続されている。これらの構造は、ゲート絶縁膜21に対する電界集中を適切に緩和する上で有効である。
図6A図6Tは、図3に対応する部分の断面図であって、半導体装置1の製造工程の一例を説明するための図である。図7A図7Tは、図4に対応する部分の断面図であって、半導体装置1の製造工程の一例を説明するための図である。
【0060】
図6Aおよび図7Aを参照して、まず、第1主面3および第2主面4を有する半導体層2が準備される。
次に、所定パターンを有するマスク91が半導体層2の第1主面3の上に形成される。マスク91は、トレンチ13を形成すべき領域を露出させる開口92を有している。
次に、図6Bおよび図7Bを参照して、マスク91を介するエッチング法によって、半導体層2の不要な部分が除去される。これにより、トレンチ13が、半導体層2に形成される。トレンチ13が形成された後、マスク91は除去される。
【0061】
次に、図6Cおよび図7Cを参照して、半導体層2においてトレンチ13の底壁に沿う領域に、p型フィールドストップ領域15が形成される。p型フィールドストップ領域15の形成工程では、半導体層2においてトレンチ13の底壁に沿う領域に、p型不純物が導入される。
p型不純物は、イオン注入マスクを介するイオン注入法によって導入される。これにより、p型フィールドストップ領域15が形成される。
【0062】
次に、絶縁体層14がトレンチ13に埋め込まれる。この工程では、まず、絶縁体層14が、トレンチ13を埋めて半導体層2の第1主面3を被覆するように形成される。絶縁体層14は、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法によって形成されてもよい。
次に、絶縁体層14の不要な部分が除去される。絶縁体層14は、半導体層2の第1主面3が露出するまで除去されてもよい。絶縁体層14は、エッチバック法および/または化学的機械研磨法(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法によって除去されてもよい。
【0063】
次に、半導体層2の第1主面3の表層部に、n型トンネル領域61が形成される。この形成工程では、半導体層2の第1主面3の表層部に、n型不純物が導入される。n型不純物は、イオン注入マスクを介するイオン注入法によって導入される。これにより、n型トンネル領域61が形成される。
次に、図6Dおよび図7Dを参照して、半導体層2の第1主面3の上に、ゲート絶縁膜21のベースとなる第1ベース絶縁膜93が形成される。第1ベース絶縁膜93は、半導体層2の第1主面3に対する酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。第1ベース絶縁膜93の厚さは、0.03μm程度であってもよい。
【0064】
次に、図6Eおよび図7Eを参照して、所定パターンを有するレジストマスク94が、第1ベース絶縁膜93上に形成される。レジストマスク94は、薄膜部22を形成すべき領域を露出させる開口95を有している。
開口95は、フォトリソグラフィ法によってレジストマスク94を選択的に露光した後、レジストマスク94を現像することによって形成される。レジストマスク94に対する露光は、フォトマスクを利用した短波長レーザ照射法によって行われてもよい。この工程は、第1ベース絶縁膜93に対するレジストマスク94の密着性を調整する工程を含む。
【0065】
短波長レーザは、150nm以上400nm以下の波長を有する紫外線レーザを含んでいてもよい。紫外線レーザは、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、XeClエキシマレーザまたはXeFエキシマレーザのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
ArFエキシマレーザは、188nm以上198nm以下(より具体的には193nm)の波長を有している。KrFエキシマレーザは、243nm以上253nm以下(より具体的には248nm)の波長を有している。
【0066】
XeClエキシマレーザは、303nm以上313nm以下(より具体的には308nm)の波長を有している。XeFエキシマレーザは、346nm以上356nm以下(より具体的には351nm)の波長を有している。
紫外線レーザは、これらレーザ種のうち、KrFエキシマレーザからなることが好ましい。フォトマスクを利用した短波長レーザ照射法により、第1ベース絶縁膜93に対するレジストマスク94の密着性を適切に調整できる。これにより、後述する第1ベース絶縁膜93の除去工程の際に、第1ベース絶縁膜93を所望の形状に適切に加工できる。
【0067】
次に、図6Fおよび図7Fを参照して、第1ベース絶縁膜93の不要な部分が除去される。第1ベース絶縁膜93の除去は、レジストマスク94を介するウエットエッチング法によって行われてもよい。エッチング液としてフッ酸が利用されてもよい。
これにより、レジストマスク94から露出する第1ベース絶縁膜93が除去される。この工程では、レジストマスク94および第1ベース絶縁膜93の間の領域にエッチング液が染み込む。エッチング液は、レジストマスク94および第1ベース絶縁膜93の間の領域において、半導体層2の第1主面3に平行な横方向に浸透する。
【0068】
エッチング液の浸透率は、レジストマスク94の開口95から遠ざかるにつれて徐々に低下する。これにより、第1ベース絶縁膜93においてレジストマスク94および第1ベース絶縁膜93の間の領域に位置する部分に、開口95側に向かって下り傾斜した傾斜部24が形成される。
傾斜部24の構造については、前述の図5等において説明した通りであるので、具体的な説明は省略する。傾斜部24が形成された後、レジストマスク94が除去される。
【0069】
次に、図6Gおよび図7Gを参照して、第1ベース絶縁膜93から露出する半導体層2の第1主面3に、薄膜部22が形成される。薄膜部22は、酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。このようにして、薄膜部22、厚膜部23および傾斜部24を有するゲート絶縁膜21が形成される。
次に、図6Hおよび図7Hを参照して、第1フローティングゲート層51およびセレクトゲート層54のベースとなる第1ベース導電体層96が形成される。
【0070】
この形態では、導電性のポリシリコン層を含む第1ベース導電体層96が形成される。ポリシリコン層に対する導電性は、n型不純物(たとえば燐)によって付与されていてもよい。
次に、図6Iおよび図7Iを参照して、第1ベース導電体層96の上に、所定パターンを有するマスク97が形成される。マスク97は、第1フローティングゲート層51およびセレクトゲート層54を形成すべき領域を被覆している。
【0071】
次に、マスク97を介するエッチング法によって、第1ベース導電体層96の不要な部分が除去される。これにより、第1フローティングゲート層51およびセレクトゲート層54が形成される。その後、マスク97は除去される。
次に、図6Jおよび図7Jを参照して、半導体層2の第1主面3の上に、第1中間絶縁層52および第2中間絶縁層55のベースとなるベース中間絶縁層98が形成される。
【0072】
この工程では、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜がこの順に形成される。酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜は、それぞれ、CVD法によって形成されてもよい。
次に、図6Kおよび図7Kを参照して、コントロールゲート層53および第2フローティングゲート層56となる第2ベース導電体層99が形成される。この形態では、導電性のポリシリコン層を含む第2ベース導電体層99が形成される。ポリシリコン層に対する導電性は、n型不純物(たとえば燐)によって付与されていてもよい。
【0073】
次に、図6Lおよび図7Lを参照して、第2ベース導電体層99の上に、所定パターンを有するマスク100が形成される。マスク100は、コントロールゲート層53および第2フローティングゲート層56を形成すべき領域を被覆している。
次に、図6Mおよび図7Mを参照して、マスク100を介するエッチング法によって、第2ベース導電体層99の不要な部分およびベース中間絶縁層98の不要な部分が除去される。
【0074】
これにより、コントロールゲート層53および第2フローティングゲート層56が形成される。また、第1中間絶縁層52および第2中間絶縁層55が形成される。その後、マスク100は除去される。
次に、図6Nおよび図7Nを参照して、n型トンネル低濃度領域62、n型ソース低濃度領域65およびn型ドレイン低濃度領域67が形成される。この工程では、イオン注入法によって、n型不純物が、ゲート絶縁膜21を介して半導体層2の第1主面3の表層部に導入される。
【0075】
これにより、n型トンネル低濃度領域62、n型ソース低濃度領域65およびn型ドレイン低濃度領域67が、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34に対して自己整合的に形成される。
次に、図6Oおよび図7Oを参照して、第1サイドウォール39および第2サイドウォール40のベースとなる第2ベース絶縁膜101が形成される。第2ベース絶縁膜101は、メモリゲート構造33の側面およびセレクトゲート構造34を被覆するように、半導体層2の第1主面3の上に形成される。第2ベース絶縁膜101は、CVD法によって形成されてもよい。
【0076】
次に、図6Pおよび図7Pを参照して、第2ベース絶縁膜101の不要な部分およびゲート絶縁膜21の不要な部分が除去される。
第2ベース絶縁膜101は、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34が露出するまで除去されてもよい。第2ベース絶縁膜101は、ドライエッチング法によって除去されてもよい。
【0077】
これにより、メモリゲート構造33の側面およびセレクトゲート構造34の側面に絶縁膜が残存する。この残存部によって、第1サイドウォール39および第2サイドウォール40が形成される。
ゲート絶縁膜21は、半導体層2の第1主面3が露出するまで除去されてもよい。この工程では、ゲート絶縁膜21の厚膜部23のうちn型ソース低濃度領域65およびn型ドレイン低濃度領域67を被覆する部分が選択的に除去される。ゲート絶縁膜21は、ドライエッチング法またはウエットエッチング法によって除去されてもよい。
【0078】
次に、図6Qおよび図7Qを参照して、n型ソース高濃度領域66およびn型ドレイン高濃度領域68が形成される。この工程では、イオン注入法によって、n型不純物が、半導体層2の第1主面3の表層部に導入される。
n型ソース高濃度領域66およびn型ドレイン高濃度領域68は、それぞれ、第1サイドウォール39および第2サイドウォール40に対して自己整合的に形成される。これにより、n型ソース領域63およびn型ドレイン領域64が形成される。
【0079】
次に、図6Rおよび図7Rを参照して、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34を被覆するように第1外面絶縁膜37および第2外面絶縁膜38のベースとなる第3ベース絶縁膜102が形成される。第3ベース絶縁膜102は、CVD法によって形成されてもよい。
次に、図6Sおよび図7Sを参照して、第3ベース絶縁膜102の不要な部分が除去される。第3ベース絶縁膜102は、マスク(図示せず)を介するエッチング法によって除去されてもよい。これにより、メモリゲート構造33を被覆する第1外面絶縁膜37、および、セレクトゲート構造34を被覆する第2外面絶縁膜38が形成される。
【0080】
次に、コントロールゲート層53の表層部、第2フローティングゲート層56の表層部、n型ソース領域63の表層部、n型ドレイン領域64の表層部にドレインシリサイド層73、ソースシリサイド層74、第1ゲートシリサイド層75および第2ゲートシリサイド層76がそれぞれ形成される。
次に、保護絶縁層71が、半導体層2の第1主面3の上に形成される。保護絶縁層71は、CVD法によって形成されてもよい。
【0081】
次に、図6Tおよび図7Tを参照して、層間絶縁層72が、保護絶縁層71の上に形成される。層間絶縁層72は、CVD法によって形成されてもよい。
その後、コンタクト電極層77および配線電極層78をそれぞれ含むドレイン端子電極31、ソース端子電極32、第1ゲート端子電極および第2ゲート端子電極が形成される。以上を含む工程を経て、半導体装置1が製造される。
【0082】
図8は、図5に対応する部分の拡大図であって、本発明の第2実施形態に係る半導体装置111の構造を説明するための図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造と同様の構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
半導体装置1では、第2接続端部28のうちセレクトゲート構造34側に位置する部分が、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34の間の領域に位置していた。
【0083】
これに対して、半導体装置111では、第2接続端部28のうちセレクトゲート構造34側に位置する部分が、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34の間の領域において、メモリゲート構造33の側面と接している。
以上、半導体装置111によっても、半導体装置1において述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0084】
図9は、図3に対応する部分の断面図であって、本発明の第3実施形態に係る半導体装置112の構造を説明するための図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造と同様の構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
半導体装置1では、第2接続端部28のうちセレクトゲート構造34側に位置する部分が、メモリゲート構造33およびセレクトゲート構造34の間の領域に位置していた。
【0085】
これに対して、半導体装置112では、ゲート絶縁膜21において薄膜部22の全域および傾斜部24の全域がメモリゲート構造33によって被覆されている。
以上、半導体装置112によっても、半導体装置1において述べた効果と同様の効果を奏することができる。
本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0086】
前述の各実施形態において、各半導体部分の導電型が反転された構造が採用されてもよい。つまり、p型の部分がn型とされ、n型の部分がp型とされてもよい。
前述の第1実施形態では、セレクトゲート構造34が、セレクトゲート層54、第2中間絶縁層55および第2フローティングゲート層56を含む積層構造を有している例について説明した。しかし、図10に示されるようなセレクトゲート構造34が採用されてもよい。
【0087】
図10は、図3に対応する部分の断面図であって、セレクトゲート構造34の変形例を示す図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造と同様の構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図10を参照して、セレクトゲート構造34は、第2中間絶縁層55および第2フローティングゲート層56を含まず、セレクトゲート層54からなる単層構造を有している。
【0088】
この構造では、セレクトゲート構造34用の第2ゲート端子電極(図示せず)は、層間絶縁層72を貫通して、セレクトゲート層54に接続される。第2ゲート端子電極(図示せず)は、第2ゲートシリサイド層76を介してセレクトゲート層54に接続される。
図10に係るセレクトゲート構造34の構造は、前述の第2実施形態および第3実施形態にも適用できる。
【0089】
前述の第1実施形態では、半導体層2がp型の半導体基板10を含む例について説明した。しかし、図11に示されるような半導体層2が採用されてもよい。
図11は、図3に対応する部分の断面図であって、半導体層2の変形例を示す図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造と同様の構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0090】
図11を参照して、半導体層2は、p型の半導体基板10、および、p型の半導体基板10の上に形成されたp型エピタキシャル層113を含む積層構造を有していてもよい。p型エピタキシャル層113は、p型の半導体基板10のp型不純物濃度よりも低いp型不純物濃度を有している。
p型の半導体基板10によって、半導体層2の第2主面4が形成されている。p型エピタキシャル層113によって、半導体層2の第1主面3が形成されている。EEPROM8等は、p型エピタキシャル層113に作り込まれている。
【0091】
図11に係る半導体層2の構造は、前述の第2実施形態および第3実施形態にも適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 半導体装置
2 半導体層
3 第1主面
11 アクティブ領域
21 ゲート絶縁膜
22 薄膜部
23 厚膜部
24 傾斜部
25 トンネルウィンドウ
33 メモリゲート構造
34 セレクトゲート構造
39 第1サイドウォール
53 コントロールゲート層
54 セレクトゲート層
61 n型トンネル領域
63 n型ソース領域
64 n型ドレイン領域
111 半導体装置
112 半導体装置
T1 薄膜部の厚さ
T2 厚膜部の厚さ
W1 薄膜部の幅
W2 傾斜部の幅
θ 傾斜部の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M
図6N
図6O
図6P
図6Q
図6R
図6S
図6T
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図7B
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図7I
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図7N
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図8
図9
図10
図11