(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る電池1は、
図1にその斜視図を、また
図2にその断面を例示するように、正極樹脂集電体11、正極活物質層12、セパレータ13、負極活物質層14、及び負極樹脂集電体15を、この順に積層した状態にある電極積層体20を有する。電極積層体20は、一対の樹脂集電体(正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15)を具備した一対の平板状電極(正極電極と負極電極)の積層体である。本発明の実施の形態の一例において、正極電極は正極樹脂集電体11と正極活物質層12とからなり、負極電極は負極樹脂集電体15と負極活物質層14とからなり、一対の平板状電極の積層体とは、正極電極と負極電極の積層体である。なお、
図1では電池1の一部を破断して記載している。またこの電池1は、電極積層体20の両面にそれぞれ積層配置された、フィルム状熱伝導性材料で形成される伝熱部21を有してなる。また、正極活物質12、セパレータ13及び負極活物質14の外周部は、シール部22で取り囲まれている。
【0012】
電池本体の内部で発生した熱はフィルム状熱伝導性材料で形成される伝熱部21に伝達される。
【0013】
本実施の形態の一例では、この伝熱部21は、電極積層体20の両面に積層される伝熱部本体部21aと、この伝熱部本体部21aから
図2に示す様に電池外装体であるラミネート容器の外部に延長されて露出する延伸部21bとを含んで構成される。またこの伝熱部21の材質は、その面方向(面内方向ともいう)の熱伝導率が200W/(m・K)以上であるフィルム状熱伝導性材料を用いる。そして、樹脂集電体である正極樹脂集電体11や負極樹脂集電体15の熱伝導率に対するフィルム状熱伝導性材料の熱伝導率の比が、4500以上であるフィルム状導電性材料を用いることが好ましい。なお、本発明の実施の形態において伝熱部は電極積層体のいずれか一方の面に積層されていてもよい。
【0014】
本実施の形態では、正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15は、導電性高分子材料、または、非導電性高分子材料に導電性を付与したものを用いる。具体的には、特許文献1に記載の公知の樹脂集電体等を用いることができる。
【0015】
導電性高分子材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル及びポリオキサジアゾール等が挙げられる。なお、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的から、更に後述する導電性フィラーを含んでいることが好ましい。
【0016】
非導電性高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0017】
非導電性高分子材料としては、電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、より好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0018】
非導電性高分子材料に導電性を付与した高分子は、非導電性高分子材料と導電性フィラーとを混合することで得ることができ、導電性フィラーは、導電性を有する材料から得られるフィラーから選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から得られるフィラーからを用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケル及びステンレス(SUS)等の合金材等から得られるフィラーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料又はニッケルから得られるフィラー、より好ましくはカーボン材料から得られるフィラーである。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。なお、導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものを用いることもできる。導電性フィラーの形状は粒子状、繊維状及びこれらの凝集体のいずれの形状であってもよい。
【0019】
非導電性高分子材料に導電性を付与することで得られる樹脂集電体は、特許文献1や国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の方法で得ることができ、具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜20部分散させた後、熱プレス機で圧延したもの等が挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0020】
正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15は、上述の樹脂集電体をそのまま用いても、その表面に後述する導電層を形成したものを用いてもよく、電池特性等の観点から、導電層を形成した樹脂集電体であることが好ましい。
【0021】
また正極活物質12の組成物は、正極活物質粒子と電解液とを混合して得られる組成物である。ここで正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2及びLiMn
2O
4)、遷移金属酸化物(例えばMnO
2及びV
2O
5)、遷移金属硫化物(例えばMoS
2及びTiS
2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等を用いることができる。
【0022】
また、負極活物質14の組成物は、負極活物質粒子と電解液とを混合して得られる、組成物である。ここで負極活物質粒子としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi
4Ti
5O
12等)等がある。
【0023】
本実施の形態においては、正極活物質12及び負極活物質14のそれぞれの組成物に含まれる正極活物質粒子および負極活物質粒子は、それぞれその表面の少なくとも一部が被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆剤で被覆されてなる被覆活物質粒子であることが好ましい。
【0024】
活物質粒子の周囲が被覆剤で被覆されていると、充放電時に生じる電極の体積変化が緩和され、充放電を繰り返すことによる電極の劣化を抑制することができる。被覆用樹脂としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂が好ましい。
【0025】
被覆剤に含まれる導電助剤としては、導電性を有する材料から選択して用いることができる。
【0026】
導電性を有する材料としては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、導電性カーボン[カーボンナノファイバー、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ケッチェンブラック(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック、カーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ等)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン及びフラーレン等]及びこれらの混合物等があるが、これらに限定されない。
【0027】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及び導電性カーボンであり、更に好ましくは導電性カーボンである。
【0028】
また導電助剤としては、粒子系セラミック材料、樹脂材料等の非導電性材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたもの及び非導電性材料と導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)とを混合したものも用いることができる。
【0029】
また、導電助剤として合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、合成繊維等の有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維等を用いることもできる。
【0030】
また、正極活物質粒子または負極活物質粒子を、電解液と混合して正極活物質12または負極活物質14に用いる場合、電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
【0031】
電解質としては、通常のリチウムイオン電池用電解液に用いられているもの等が使用でき、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6及びLiClO
4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2及びLiC(CF
3SO
2)
3等の有機酸のリチウム塩等がある。これらのうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点からはLiPF
6が好ましい。
【0032】
また非水溶媒としては、通常のリチウムイオン電池用電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。この非水溶媒は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上の非水溶媒を併用してもよい。
【0033】
上記の非水溶媒の例のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、さらに好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びこれらの中から選択される2種の混合液である。
【0034】
電解液に含まれる電解質の濃度は、電解液の容量に基づいて0.1〜3mol/Lが好ましく、0.5〜2mol/Lがより好ましい。
【0035】
本発明において正極活物質12及び負極活物質14は、イオン抵抗を低減できる等の観点からそれぞれ前記の被覆活物質粒子とともに繊維状導電性フィラーを含むことが好ましい。繊維状導電性フィラーとしては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維のなかでも炭素繊維が好ましい。
【0036】
正極活物質12及び負極活物質14に繊維状導電性フィラーを含む場合、繊維状導電性フィラーの割合は、被覆活物質粒子の重量に基づいて0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0037】
正極活物質12及び負極活物質14において、活物質粒子及び導電助剤を、その合計重量が電解液の重量に基づいて10〜60重量%の濃度で含有することが好ましい。
【0038】
さらに本実施の形態では、所望の形状に切断されたセパレータ13が用意される。このセパレータ13としては、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂及びポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)製の多孔性フィルム、多孔性フィルムの多層フィルム(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)及びガラス繊維等からなる不織布並びにこれらの表面にシリカ、アルミナ及びチタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用セパレータ等を用いることができる。
【0039】
本実施の形態の電池1は、次の例のように製造される。まず、平板状の負極樹脂集電体15の一方の面に、その周縁部に沿って一定の高さだけ、不導体(樹脂等)の土手を形成して、この土手を側面とし、かつ負極樹脂集電体15を底面とした容器を形成する。当該土手の部分がシール部の下部となる。
【0040】
そしてこの土手で囲まれた領域に負極活物質14を充填する。次に、土手の内側に充填された負極活物質14の表面にセパレータ13を配する。セパレータ13の周縁部は、負極樹脂集電体15上に形成された土手によって支持されるように配する。
【0041】
次に、負極樹脂集電体15上に形成した不導体(樹脂等)の土手の上に、セパレータ13の周縁部を挟みつつ、不導体の土手を一定の高さだけ盛り上げて、当該盛り上げた土手を側面とし、かつセパレータ13を底面とした容器を形成する。ここで盛り上げた土手の部分がシール部の上部となる。そして、このセパレータ13を底面とした容器内に正極活物質12を充填する。
【0042】
次に、負極樹脂集電体15と同じ形状である、平板状の正極樹脂集電体11を、土手上にその周縁部が支持されるように配する。これにより、正極樹脂集電体11、正極活物質12、セパレータ13、負極活物質14、及び負極樹脂集電体15を、この順に積層した状態となる電極積層体20(電池本体)が形成される。
【0043】
本実施の形態では、正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15には電極積層体20の外方に突出した電流引出部11b,15bが形成されており、それぞれ電極積層体20より外方に向けて、互いに短絡しないよう離れた位置で突出するよう配される。
【0044】
そして、所定の熱伝導率を有するフィルム状熱伝導性材料(好ましくは、前記の正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15よりも熱伝導率が高いフィルム状熱伝導性材料)で形成した伝熱部21を、正極樹脂集電体11と負極樹脂集電体15との外側面に接触させる。ここで伝熱部21を形成するフィルム状熱伝導性材料は、面方向の熱伝導率が200W/(m・K)以上であるものを選択する。さらにフィルム状熱伝導性材料、または樹脂集電体の材料として、樹脂集電体の熱伝導率に対するフィルム状熱伝導性材料の熱伝導率の比が4500以上(さらに好ましくは樹脂集電体の熱伝導率に対するフィルム状熱伝導性材料の熱伝導率の比が10000以上)であるものを選択して伝熱部21や正極樹脂集電体11、負極樹脂集電体15等をそれぞれ形成することが好ましい。
【0045】
ここで、面方向の熱伝導率が200W/(m・K)以上であるフィルム状熱伝導性材料としては、アルミニウム箔(熱伝導率:約230W/(m・K))、銅箔(熱伝導率:約400W/(m・K))、銀箔(熱伝導率:約420W/(m・K))、及び金(熱伝導率:約320W/(m・K))箔等の金属箔、並びに炭素繊維製織布(熱伝導率:200〜600W/(m・K))、グラフェンシート(熱伝導率:約5000W/(m・K))及びグラファイトシート(熱伝導率:700〜2000W/(m・K))等の導電性炭素シート材料等の非金属箔からなるフィルム状熱伝導性材料が挙げられ、なかでも導電性炭素シート材料が好ましく、グラファイトシートがさらに好ましい。導電性炭素シート材料は、熱と同時に電流を電池の外部に取り出すことができるので電流の取り出し効率が向上するだけでなく、軽量であり機械的強度に優れるのでリチウムイオン電池の軽量化を図ることとができて好ましい。フィルム状熱伝導性材料は市販のものを用いることができ、導電性炭素シート材料としては、東レ社製炭素繊維織布(トレカシリーズ)、カネカ社製グラファイトシート(グラニティシリーズ)及びパナソニック社製グラファイトシート(PGSシリーズ)等があげられる。
【0046】
またこの伝熱部21は、
図1に例示したように、樹脂集電体上に接する平面部分である伝熱部本体部21aと、この伝熱部本体部21aからと一体に形成され、前記の伝熱部本体部21の周縁部の一部から外方に突出する延伸部21bとを有する。伝熱部21は、前記の電池本体で発生した熱を伝熱部本体部21aが伝達し、伝達された熱は外装の外方に突出する延伸部21bによって電池の外部に放熱される。
【0047】
延伸部21bは、
図2に示されるように、電極積層体20の正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15の電流引出部11b,15bに接した状態となっていることが好ましい。このとき延伸部21bと電流引出部11b,15bとが電気的に接触した状態にあると、フィルム状熱伝導性材料が電池で発生した電気を外部に取り出す機能をも発現するため、電池から電流を取り出す効率が良好になり好ましい。
【0048】
またこの樹脂集電体に接続した電流引出部11b,15b及び、伝熱部21の延伸部21bは、
図3に記載の通り、電極積層体20の周縁部に沿って電極積層体20の積層方向に折り曲げられ、電極積層体20に含まれるセパレータ13の面と実質的に同じ高さの位置でさらにL字に折り曲げられて、電極タブが形成されてもよい。
【0049】
なお、電極タブの位置(電流引出部及び伝熱部21の延伸部を積層した電極タブの位置)は、
図1のように、電極積層体20から互いに異なる方向に突出している必要はなく、
図3に例示するように、同じ方向に突出する場合であっても、短絡しないよう配されていればよい。
図3においても、電池の一部を破断して示しており、
図3では、電極積層体20が複数積層されている例を示している。
【0050】
このように、本実施の形態では、樹脂集電体にフィルム状熱伝導性材料を積層して、電極積層体20の外方に引き出して電極とするとともに、電極積層体20で発生する熱を電池外部に伝導させ、放熱させることを可能としたものである。具体的に本実施の形態では、正極樹脂集電体11に接する伝熱部21と、負極樹脂集電体15に接する伝熱部21とをそれぞれ短絡しない態様で、さらに放熱用の部材(例えば放熱器)等に接続することが好ましい。伝熱部21を放熱用の部材に接続することで、電池本体で発生した熱をさらに効率的に放熱することができる。
【0051】
一例として、正極樹脂集電体11に接する伝熱部21と、負極樹脂集電体15に接する伝熱部21とをそれぞれ個別の放熱器等に接続する。または、正極樹脂集電体11に接する伝熱部21と、負極樹脂集電体15に接する伝熱部21とのそれぞれを、放熱器等に接続することができる。
【0052】
また電池1は、電極積層体20を複数個積層して、直列接続した状態としてもよい。さらに電池1は、その端子となる部分(正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15の電流引出部11b,15b及びそれらに積層される伝熱部21の延伸部21bの先端から所定の長さの部分)を除いて(すなわちこれらの部分を外部に露出させた状態として)、公知のラミネート容器である電池外装体で封止されている。この電池外装体となるラミネート容器の材質については、公知のものでよいので、ここでの詳しい説明を省略する。
【0053】
本発明の実施の態様の好ましい適用形態としては、この電池1を車両や船舶等の移動体に搭載する態様があげられる。この場合、
図4に
図2に対応する断面図を示すように、電池1の伝熱部21の延伸部21bを、正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15の電流引出部11b,15bとともに、絶縁体31を介して車両や船舶のシャシ41等、熱伝導率が高い部材である金属に接触させ、ボルトB等で固定することができる。これにより、車両等のシャシを放熱器として利用できるようになり、効率的な放熱が可能となる。本形態の一例では、電池1は、車両の床下部、車両の前後方向のリア、フロント部を除く中央部付近(クラッシャブル・ゾーン以外の部分、すなわちセーフティ・ゾーン)に配される(
図5)。
【0054】
さらに本発明の実施の形態の好ましい適用形態の別の例として、この電池1は頭部に装着するデバイス(ヘッドランプやディスプレイ等)の電源として用いることができる。電池1をこのような頭部に装着するデバイスの電源に用いる場合、前記のデバイスをヘルメット状の頭部固定用装置に配置し、当該頭部固定用装置を伝熱部21の延伸部21bが接続される放熱用の部材としてもよい。このような頭部固定用装置を放熱用の部材とすることで放熱効率が良好となり、電池の温度上昇を抑えることができ、頭部に固定したデバイスの発熱を防止して、デバイスを頭部に装着した時の、発熱による不快感を抑えることができる。
【0055】
本実施の形態の電池1が正極活物質粒子および負極活物質粒子として被覆活物質粒子を用いる場合、柔軟性のある正極活物質層及び負極活物質層を得ることができるため電池1の外形が変化しても当該外形に追従して変形し得る。従ってこの電池1は、ヘルメット等の頭部装着デバイスの、装着時に装着者の頭部を覆う部分(いわば帽体部51)内周に配され得る(
図6)。
図6は、ヘルメット状の頭部固定用装置(以下、帽体という)の一部を破断した側面断面図である。そしてこの場合、電池1の伝熱部21の延伸部21bを、正極樹脂集電体11及び負極樹脂集電体15の延伸部11b,15bとともに、帽体51の周縁部に露出させ、ヘッドランプ等の負荷52に接続する。
【0056】
また、頭部固定用装置を放熱用の部材とする場合、電池1の底部に装着者の頭部が直接接することがないよう、電池1と装着者の頭部が収納される空間との間に、可撓性を有するメッシュや帯等で形成した内装ハンモック部53を設けることが好ましい。また、この例では、帽体51の外部に、例えばメッシュ状の金属部材等の放熱機構を設ける。そして帽体51の周縁部に露出させた伝熱部21の延伸部21bを、帽体51外部の当該放熱機構に熱的に連結して放熱可能とする。この例でも、延伸部21bは、絶縁体を介して上記放熱機構に接続され得る。