特許第6982471号(P6982471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982471
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20211206BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20211206BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B05C11/10
   C09J201/00
   B05C5/00 101
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-221294(P2017-221294)
(22)【出願日】2017年11月16日
(65)【公開番号】特開2019-89047(P2019-89047A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】永井 豊
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/073566(WO,A1)
【文献】 特表2008−529788(JP,A)
【文献】 特開昭62−140932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
C09J 201/00
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺紐状熱可塑性接着剤を溶融する、溶融タンクと、
上記溶融タンクの供給口を介して上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給する、供給部と、を備えており、
上記溶融タンク内の液体状熱可塑性接着剤の液量が所定の範囲内に保たれるように、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給し、
上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給が停止されているとき、上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給口を塞ぐことのできる閉塞部材をさらに備えている、
長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【請求項2】
長尺紐状熱可塑性接着剤を溶融する、溶融タンクと、
上記溶融タンクの供給口を介して上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給する、供給部と、を備えており、
上記溶融タンク内の液体状熱可塑性接着剤の液量が所定の範囲内に保たれるように、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給し、
上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給が停止されているとき、上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給口を塞ぐことのできる蓋をさらに備えている、
長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【請求項3】
上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給するときの進行方向とは逆方向に、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を進行させることができる、請求項1または2に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【請求項4】
長尺紐状熱可塑性接着剤を溶融する、溶融タンクと、
上記溶融タンクの供給口を介して上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給する、供給部と、を備えており、
上記溶融タンク内の液体状熱可塑性接着剤の液量が所定の範囲内に保たれるように、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給し、
上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給するときの進行方向とは逆方向に、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を進行させることができる、
長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【請求項5】
上記液体状熱可塑性接着剤の液量を検知する、液量検知部
をさらに備えており、
上記液量が所定の下限値以下となったとき、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給を開始する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【請求項6】
上記供給部が上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給している途中であり、かつ、上記液量が所定の上限値以上となったとき、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給を停止する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【請求項7】
上記供給部が上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給を停止するとき、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を切断する、切断具をさらに備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【請求項8】
上記供給部は、複数の長尺紐状熱可塑性接着剤を供給することができる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性接着剤(「ホットメルト接着剤」とも呼ばれる)は、常温では固体状であり、加熱溶融して液体状にしたものを対象物に塗布して使用する接着剤である。工場の生産ラインなど熱可塑性接着剤を大量に使用する場所では、一般的に、溶融タンクに固体状熱可塑性接着剤を投入し、溶融させて液体状にして貯蔵している。そして、パイプなどを介して、液体状熱可塑性接着剤を塗布装置へと供給することにより、大量の液体状熱可塑性接着剤の需要を満たしている。また、溶融タンクに液体状熱可塑性接着剤を貯蔵することによる副次的な利点として、液体状熱可塑性接着剤中への気泡の混入を低減できることが挙げられる。
【0003】
このような溶融タンクを備えている熱可塑性接着剤の溶融装置の例として、非特許文献1のウェブページで紹介されている商品がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「メルター(アプリケーター)」株式会社サンツール(https://www.suntool.co.jp/product/category/melter/)、2017年10月5日閲覧
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に示すような熱可塑性接着剤の溶融装置は、ブロック型の熱可塑性接着剤を人力で供給する必要がある。そのため、溶融装置の運用に手間が掛かる問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、従来技術よりも手間を掛けずに、液体状熱可塑性接着剤の液量を所定の範囲に保つことができる、長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を包含している。
【0008】
<1>長尺紐状熱可塑性接着剤を溶融する、溶融タンクと、
上記溶融タンクの供給口を介して上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給する、供給部と、
を備えており、
上記溶融タンク内の液体状熱可塑性接着剤の液量が所定の範囲内に保たれるように、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給する、長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【0009】
<2>上記液体状熱可塑性接着剤の液量を検知する、液量検知部
をさらに備えており、
上記液量が所定の下限値以下となったとき、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給を開始する、<1>に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【0010】
<3>上記供給部が上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給している途中であり、かつ、上記液量が所定の上限値以上となったとき、上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給を停止する、<1>または<2>に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【0011】
<4>上記供給部が上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給を停止するとき、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を切断する、切断具をさらに備えている、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【0012】
<5>上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給が停止されているとき、上記長尺紐状熱可塑性接着剤の供給口を塞ぐことのできる、蓋をさらに備えている、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【0013】
<6>上記供給部は、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を供給するときの進行方向とは逆方向に、上記長尺紐状熱可塑性接着剤を進行させることができる、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【0014】
<7>上記供給部は、複数の長尺紐状熱可塑性接着剤を供給することができる、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、従来技術よりも手間を掛けずに、液体状熱可塑性接着剤の液量を所定の範囲に保つことができる、長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置の、要部を表す模式図である。
図2】本発明の実施形態1に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置の、機能を表すフロー図である。
図3図2で説明されている処理について、より具体的に説明するための模式図である。
図4】本発明の実施形態1に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置の、さらなる機能を表すフロー図である。
図5】本発明の実施形態2に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置の要部を表す、模式図である。(a)は、上記溶融装置に長尺紐状熱可塑性接着剤が供給されている状態を表している。(b)は、上記溶融装置に供給されている長尺紐状熱可塑性接着剤が、切断された状態を表している。(c)は、長尺紐状熱可塑性接着剤を、供給時とは逆方向に進行させた状態を表している。
図6】本発明の一実施形態に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置に好適に用いることのできる、長尺紐状熱可塑性接着剤の一態様を表す図である。ボビンに捲回された長尺紐状熱可塑性接着剤を表している。
図7】「長尺」なる構造を説明するための模式図である。(a)は、「長尺紐状」なる構造を説明するための模式図である。(b)は、「長尺シート状」なる構造を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0018】
〔本発明の着目点〕
非特許文献1に示すような熱可塑性接着剤の溶融装置は、ブロック型の熱可塑性接着剤を溶融するように設計されたものである。ブロック型の熱可塑性接着剤は、所定の大きさを有する重量物であるため、これを自動的かつ連続的に溶融タンクに供給することは困難である。事実、上述の熱可塑性接着剤の溶融装置では、ブロック状の固体熱可塑性接着剤を人力で供給するものである。
【0019】
しかし、このような設計では、例えば多数の溶融装置を稼働させる場合に、固体状熱可塑性接着剤の供給に多くの人手を取られ、生産性が低下する問題がある。また、人力による供給は時間を要するため、固体状接着剤の供給口が長時間開放されたままになる。その結果、溶融タンク内に溜まっていた油煙(熱可塑性接着剤を高温で保存することによって生じる)が、供給口から外部に漏出し、作業環境を悪化させる問題もある。
【0020】
ここで、本発明者らは、長尺紐状熱可塑性接着剤の研究および開発を、以前より行ってきた(例えば、未公開の先願:PCT/JP2017/009210を参照)。その一環として、供給する固体状熱可塑性接着剤を長尺紐状熱可塑性接着剤とすれば、上述の問題点を解決しうる溶融装置を設計できることを見出すに至った。本発明は、このような着目点に基づくものである。
【0021】
〔長尺〕
本発明は、長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置に関する。そこで、実施形態の説明に先立って、図7に基づき「長尺」なる構造について説明する。本明細書において「長尺」と呼ばれる構造には、図7の(a)に例示される「長尺紐状」の構造、および図7の(b)に例示される「長尺シート状」の構造が含まれる。
【0022】
図7の(a)は、「長尺紐状」なる構造を説明するための模式図である。長尺紐状の構造物200は、一端部201、他端部202および中間部203を有している。ここで、中間部203の長さ(矢印A)は、長尺紐状の構造物200の内径(矢印B)よりも長い。このような構造を、本明細書では「長尺紐状」と称する。
【0023】
ここで、「長尺紐状の構造物200の内径」とは、長尺紐状の構造物200を長手方向に垂直な平面(一点鎖線Zにより表される)で切断した際の断面における、内接円の直径を意味する。上記断面が円形である場合は、当該円の直径が「長尺紐状の構造物200の内径」となる。上記断面が楕円形である場合は、当該楕円形の短径が「長尺紐状の構造物200の内径」となる。
【0024】
図7の(b)は、「長尺シート状」なる構造を説明するための模式図である。図7の(a)と同様に、長尺シート状の構造物200’は、一端部201’、他端部202’および中間部203’を有する。ここで、長尺シート状の構造物200’を長手方向に垂直な平面(一点鎖線Z’により表される)で切断した際の断面は、ほぼ長方形(長方形B’)である。また、中間部203’の長さ(矢印A’)は、長方形B’の長辺および短辺の長さよりも長い。このような構造を、本明細書では「長尺シート状」と称する。
【0025】
本発明の一実施形態に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置は、長尺紐状の熱可塑性接着剤を溶融の対象とし、長尺シート状の熱可塑性接着剤は溶融の対象としない。これは、長尺紐状熱可塑性接着剤は、(1)溶融装置に供給しやすい断面形状をしている点、(2)備蓄する際の占有スペースが小さくて済む点、(3)単位容量あたりの被覆材を少なくできる点(長尺の熱可塑性接着剤は、通常、表面が被覆材で覆われている)、などにおいて優れているためである。
【0026】
〔実施形態1〕
以下、図1〜4を参照しながら、本発明の実施形態1に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置について説明する。実施形態1では、人力によらずに、溶融タンク内の液体状熱可塑性接着剤の液量を所定の範囲に保つことができる、長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置の一例について説明する。上記溶融装置は、液体状熱可塑性接着剤の液量に応じて、長尺紐状熱可塑性接着剤を溶融タンクに供給する。
【0027】
図1は、実施形態1に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置100の要部を表す、模式図である。溶融装置100は、供給部1、溶融部2、液量検知部3、制御部4を備えている。以下、順に説明する。
【0028】
[供給部]
供給部1は、長尺紐状熱可塑性接着剤10を、溶融タンク21に供給するための機構である。供給部1は格納部11を備えており、供給前の長尺紐状熱可塑性接着剤10は格納部11に格納されている。
【0029】
溶融タンク21内の液体状熱可塑性接着剤20の液量が所定の範囲となるように、供給部1は、長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給する。一例において、上記液量が所定の下限値以下となったとき、供給部1は、格納部11から長尺紐状熱可塑性接着剤10を繰り出し、溶融タンク21内への供給を開始する。他の例において、上記液量が所定の上限値以上となったとき、供給部1は、長尺紐状熱可塑性接着剤10の繰り出しをやめ、溶融タンク21内への供給を停止する。
【0030】
このときに使用される長尺紐状熱可塑性接着剤10の繰り出し機構は、特に限定されない。一例として、実施形態1では、ローラ12を用いている。このように、複数のローラ12を用いる構成とすれば、長尺紐状熱可塑性接着剤10の張力を適切に調整できる。その結果、長尺紐状熱可塑性接着剤10が途中で切断されるのを、防止することができる。また、長尺紐状熱可塑性接着剤10は、通常、被覆材で覆われている。このため、張力を適切に調節することにより、繰り出し中の長尺紐状熱可塑性接着剤10において、被覆材が破れてしまう事態を防止できる。
【0031】
ここで、格納部11に格納されている長尺紐状熱可塑性接着剤10は、図6に示すように、ボビン60に捲回された状態であることが好ましい。このような構成とすることで、1巻の長尺紐状熱可塑性接着剤10を使い終わった後、ボビン60を交換することにより、速やかに新しい長尺紐状熱可塑性接着剤10を装填することができる。また、上記構成により、より少ないスペースに長尺紐状熱可塑性接着剤10を格納することもできる。このように、ボビン60を使用することにより、長尺紐状熱可塑性接着剤10の補充および交換作業を容易に行うことができる。
【0032】
ボビン60に捲回されている長尺紐状熱可塑性接着剤10の寸法は、適宜設定できる。一例として、長尺紐状熱可塑性接着剤10の直径は10mm程度、単位あたり重量は70〜100g/m程度とすることができる。このような太さの長尺紐状熱可塑性接着剤10を用いる場合、長尺紐状熱可塑性接着剤10の繰り出し速度は5〜40m/min程度とすることができる(20m/min程度が好ましい)。また、ボビン60の大きさは、50cm、20kg程度とすることができる。長尺紐状熱可塑性接着剤10の好ましい条件に関しては、PCT/JP2017/009210の記載を参照することができる。
【0033】
なお、図1においては、供給部1は1つの長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給しているが、複数の長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給できる構成としてもよい。このような構成は、例えば以下の点において好ましい。
(1)供給量を容易に調整できる:
大型の溶融タンク21を用いる場合などには、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給速度を上げる必要がある。このとき、複数の長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給できる構成とすれば、同じ規格の長尺紐状熱可塑性接着剤10を用いながら、供給速度を上げることができる。つまり、供給速度を上げるために、特別な規格の長尺紐状熱可塑性接着剤10(例えば、通常より太い長尺紐状熱可塑性接着剤10)を用いる必要がない。
(2)連続的に供給できる:
供給部1が1つの長尺紐状熱可塑性接着剤10しか供給できない場合は、長尺紐状熱可塑性接着剤10のボビン60を取り換えている間は、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給が途絶えてしまう。しかし、複数の長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給できる構成とすれば、あるボビン60を取り換えている間も、他のボビン60から長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給を続けることができる。
【0034】
複数の長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給する方法ためには、例えば、格納部を複数の長尺紐状熱可塑性接着剤10を格納できる設計とし、複数の繰り出し経路が確保できるようにローラ12を配置すればよい。必要に応じて、複数の供給口24を設けてもよい。
【0035】
また、詳細は後述するが、供給口24からは、タンク内の油煙が漏出する可能性がある。この油煙が、供給部1(ローラ12など)や長尺紐状熱可塑性接着剤10に付着すると、長尺紐状熱可塑性接着剤の繰り出しに支障を来すおそれがある。そのため、供給部1および長尺紐状熱可塑性接着剤10を、油煙から保護できる構成となっていることが好ましい。上記構成の一例として、図1では、カバー15を設けている。カバー15の存在により、供給部1のうち特に供給口24に近い部分が、油煙の付着から守られている。
【0036】
[溶融部]
溶融部2は、固体状熱可塑性接着剤を溶融させ、液体状とするための機構である。溶融部2は、溶融タンク21およびヒータ22を備えている。溶融タンク21の内部は、ヒータ22により高温に保たれているため、溶融タンク21に供給された固体状熱可塑性接着剤は、溶融して液体状となり、貯蔵される。
【0037】
溶融タンク21には、供給口24および排出口23が設けられている。供給口24は、供給部1から繰り出される、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給口である。排出口23は、液体状熱可塑性接着剤20を取り出すための開口部である。排出口23は、通常、溶融タンク21の下部または底部に設けられている。溶融タンク21内の液体状熱可塑性接着剤20は、例えばポンプ51およびパイプ52によって、接着剤を使用する場所に輸送される。
【0038】
ここで、供給口24の大きさは、長尺紐状熱可塑性接着剤10が通過できる程度であれば充分である。この大きさは、通常、ブロック型の熱可塑性接着剤の供給口(すなわち、従来品における供給口)に要求される大きさよりも小さい。したがって、溶融タンク21内から油煙が漏出する量を、従来品よりも低減することができる。このことにより、油煙による供給部1などの汚染が防止され、安定的に長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給することができる。また、溶融タンク21は、外気と接する開口部が従来品よりも小さくなるため、内部の温度が下がりにくい。このため、溶融装置100は、従来品よりも、固体状熱可塑性接着剤を速やかに溶融させることができる。
【0039】
溶融タンク21の容量は、必要とする液体状熱可塑性接着剤20の量に応じて、適宜設定すればよい。一例として、溶融タンク21の容量は、10〜400L程度である。また、溶融タンク21の内部温度は、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給量および材質に応じて、適宜設定すればよい。一例として、溶融タンク21の内部温度は100〜180℃(通常は150℃程度)である。
【0040】
[液量検知部]
液量検知部3は、溶融タンク21内の液体状熱可塑性接着剤20の液量を検知するための機構である。液量検知部3の具体的な構成は、特に限定されない。液量検知部3の具体例としては、液面計およびロードセルが挙げられる。液面計は、溶融タンク21内の液面の高さを測定することによって、液体状熱可塑性接着剤20の液量を検知する。液面計には、静電容量式、差圧式などの種類がある。ロードセルは、溶融タンク21(または溶融部2)の重量を測定することによって、液体状熱可塑性接着剤20の液量を検知する。
【0041】
これらのうち、既存の熱可塑性接着剤の溶融装置を改造して、本発明の一実施形態に係る熱可塑性接着剤の溶融装置とする場合には、取り付けが容易であるため、液面計の方が好ましい。一方、個々の液面計には測定値のばらつきが生じる傾向があるため、正確な液量を検知する目的からは、ロードセルの方が好ましい。
【0042】
液量検知部3としてロードセルを用いる場合は、供給部1の荷重が、当該ロードセルに検知されないことが好ましい。このような構成とすれば、溶融タンク21に供給前の長尺紐状熱可塑性接着剤10の重量はロードセルに検知されず、溶融タンク21に供給後の長尺紐状熱可塑性接着剤10の重量はロードセルに検知される。したがって、液体状熱可塑性接着剤20の液量を、正確に検知することができる。
【0043】
なお、図1などにおいて、液量検知部3は、その一部を液体状熱可塑性接着剤20に接触させた状態で図示されている。しかし、液量検知部3は、液体状熱可塑性接着剤20の液量を検知することができれば充分であり、設置場所・設置状態は特に限定されない。例えば、液量検知部3としてロードセルを用いる場合は、当該ロードセルは、溶融タンク21の内部に設置する必要はない。
【0044】
[制御部]
制御部4は、上述した供給部1、溶融部2、液量検知部3を制御し、溶融装置100を機能させるための機構である。一例において、制御部4は、CPU(Central Processing Unit)および記憶部を備えているコンピュータである。上記記憶部には、不揮発性の記憶装置(フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)など)、および揮発性の記憶装置(RAM(Random Access Memory)など)が含まれる。より具体的に、制御部4としては、PLC(programmable logic controller)を用いることができる。
【0045】
[液体状熱可塑性接着剤の液量を所定の範囲内に保つ機能]
以下、図2を参照する。図2では、溶融装置100が、溶融タンク21内の液体状熱可塑性接着剤20の液量を、所定の範囲内に保つ機能について、制御部4の処理の流れに注目しながら説明している。
【0046】
S101では、液体状熱可塑性接着剤20の液量が、所定の下限値以下であるか否かを判定する。このとき、上記液体状熱可塑性接着剤20の液量は、制御部4が液量検知部3から取得する。また、上記所定の下限値は、予め制御部4に記憶されている。上記判定の結果がYESである場合、S102に移行する。上記判定の結果がNOである場合は、S101を繰り返す。
【0047】
S102では、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給が開始される。このとき、制御部4は供給部1に命令を送り、溶融タンク21内に長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給させる。具体的には、上述の繰り出し機構により、長尺紐状熱可塑性接着剤10が供給される。
【0048】
S101〜S102の処理によれば、溶融装置100は、液体状熱可塑性接着剤の液量が少なくなったとき、自動的に固体状熱可塑性接着剤を供給することができる。そのため、溶融装置100は、固体状熱可塑性接着剤の供給に人手を要求することがなく、従来品よりも運用が容易である。
【0049】
S103では、液体状熱可塑性接着剤20の液量が、所定の上限値以上であるか否かを判定する。S101と同様に、上記液体状熱可塑性接着剤20の液量は、制御部4が液量検知部3から取得する。また、上記所定の上限値は、予め制御部4に記憶されている。ここで、上記判定は、液体状熱可塑性接着剤20の液量が次第に増加している状態にて行われる。上記判定の結果がYESである場合、S104に移行する。上記判定の結果がNOである場合は、S103を繰り返す。
【0050】
S104では、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給が停止される。このとき、制御部4は供給部1に命令を送り、長尺紐状熱可塑性接着剤10の繰り出しを停止させる。具体的には、上述した繰り出し機構を停止させる。
【0051】
S101〜S104の処理によれば、溶融装置100は、液体状熱可塑性接着剤20の液量を参照しながら、当該液量が適当な値となるまで、長尺紐状熱可塑性接着剤10を供給することができる。つまり、長尺紐状熱可塑性接着剤10の過剰な供給を防ぐことができる。このようにして、溶融タンク21内の液体状熱可塑性接着剤20の液量を、適切な範囲に保つことができる。
【0052】
次に、図3を参照しながら、図2のフローで説明されている処理について、より具体的に説明する。
【0053】
図3は、溶融タンク21に、長尺紐状熱可塑性接着剤10が供給されている途中の様子を図示している。長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給が進むにつれ、長尺紐状熱可塑性接着剤10は、先端から液体状熱可塑性接着剤20の中に入ってゆく。その結果、溶融タンク21内の液面は次第に上昇し、また溶融タンク21の重量も次第に増加する。このような変化を捉えることにより、液量検知部3は、液体状熱可塑性接着剤20の液量(ここでは、便宜的に、溶融タンク21に供給されたが、溶融前の固体状熱可塑性接着剤も含める)の増加を、リアルタイムに追跡できる。したがって、S103のループを経るうちに、適当な液量となった時点で、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給を停止することができる。
【0054】
なお、上記とは逆の変化(液面の低下および/または重量の減少)を捉えることによって、液体状熱可塑性接着剤20の液量の減少も、リアルタイムに追跡できる。したがって、S101のループを経るうちに、適当な液量となった時点で、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給を開始することができる。
【0055】
[異常な液量に対して警告を発する機能]
液体状熱可塑性接着剤20の液量が過剰に多い場合は、液体状熱可塑性接着剤20が溶融タンク21から溢れてしまうおそれがある。逆に、液体状熱可塑性接着剤20の液量が過剰に少ない場合は、排出口23から空気が入ってしまうおそれがある。したがって、このような状態を回避するために、液体状熱可塑性接着剤20の液量が過剰に多いまたは過剰に少ない場合には、ユーザに対して警告を発することが好ましい。このような機能を達成するための、制御部4の処理の流れについて、図4に基づいて説明する。
【0056】
S201では、液体状熱可塑性接着剤20の液量が、所定の警告下限値以下であるか否か(すなわち、過剰に少ないか否か)が判定される。このとき、液体状熱可塑性接着剤20の液量は、液量検知部3によって制御部4に与えられる。また、所定の警告下限値は、予め制御部4に記憶されている。上記判定の結果がYESである場合、S203に移行する。上記判定の結果がNOである場合は、S202に移行する。
【0057】
S202では、液体状熱可塑性接着剤20の液量が、所定の警告上限値以上であるか否か(すなわち、過剰に多いか否か)が判定される。この判定に必要な情報は、S201と同様に与えられる。上記判定の結果がYESである場合、S203に移行する。上記判定の結果がNOである場合は、S201から処理を繰り返す。
【0058】
S203では、ユーザに警告が発せられる。S203は、S201またはS202の判定において、YESと判定された場合に引き続くステップである。したがって、S203は、液体状熱可塑性接着剤20の液量が過剰に多いまたは過剰に少ない場合に行われるステップである。ユーザへの警告は、適当な報知部によって行うことができる。例えば、警告画面を表示したり、警告音を発したりすればよい。
【0059】
なお、図4では、S201でYESと判定された場合、およびS202でYESと判定された場合はいずれも、S203に移行しているが、移行先のステップをそれぞれ異ならせてもよい。つまり、液体状熱可塑性接着剤20の液量が過剰に多い場合と、過剰に少ない場合とでは、発する警告の種類・内容などを異ならせてもよい。
【0060】
[所定の上下限値および警告上下限値の関係]
なお、図2における「所定の下限値(すなわち、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給開始液量)」および「所定の上限値(すなわち、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給停止液量)」、ならびに図4における「警告上限値」および「警告下限値」の大小関係は、以下の通りである。
警告上限値>所定の上限値>所定の下限値>警告下限値
それぞれの上下限値が有する意味を考慮すると、警告上限値および警告下限値は、ユーザが自由に設定できない(溶融装置100の製造時に設定された値である)ことが好ましい。一方、所定の上限値および所定の下限値は、液体状熱可塑性接着剤20の利用状況に応じて、ユーザが適宜設定できることが好ましい。
【0061】
〔実施形態2〕
以下、図5を参照しながら、本発明の実施形態2に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置について説明する。実施形態2では、液体状熱可塑性接着剤20の供給を停止した後の、好ましい機能について説明する。
【0062】
[供給前の長尺紐状熱可塑性接着剤を熱源から離す機能]
図5は、実施形態2に係る長尺紐状熱可塑性接着剤の溶融装置の要部を表す、模式図である。なお、図5は、溶融装置100のうち、説明に必要な部分を抜き出して図示している。一部の部材は図示を省略されているが、構成として含まれない訳ではない(溶融装置100の全体構成については、実施形態1を参照)。
【0063】
図5の(a)は、溶融装置100に長尺紐状熱可塑性接着剤10が供給されている状態を表している。ここで、充分な量の長尺紐状熱可塑性接着剤10が供給されたと判断され、長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給が停止されたならば(例えば、図2のフローにより)、その後、長尺紐状熱可塑性接着剤10を切断することが好ましい(図5の(b)を参照)。このように切断することにより、長尺紐状熱可塑性接着剤10は、10aおよび10b(それぞれ、「供給部1に残る長尺紐状熱可塑性接着剤10」および「溶融タンク21に投入された長尺紐状熱可塑性接着剤10」に相当する)に分かれる。この結果、10bから10aへの熱伝導を防止できる。
【0064】
長尺紐状熱可塑性接着剤10を切断する切断具は、特に限定されない。切断対象が熱可塑性接着剤であることを考慮すると、ナイフなどの刃物などによる切断よりも、熱による切断の方が好ましい。
【0065】
この点に関して、図5では、ヒートブロック13およびブレード14からなる、ヒートカッターを使用している。上記ヒートカッターにおいては、ヒートブロック13内部に組み込まれた熱源によってブレード14を熱する。その後、熱されたブレード14で長尺紐状熱可塑性接着剤10に圧力を加えることによって、長尺紐状熱可塑性接着剤10が切断される。ブレード14の温度は、長尺紐状熱可塑性接着剤10の材質に応じて適宜設定できるが、一例としては100℃程度である。
【0066】
また、長尺紐状熱可塑性接着剤10を切断した後、長尺紐状熱可塑性接着剤10aを繰り出し方向とは逆に巻き戻して(すなわち、供給時の進行方向とは逆方向に進行させて)、その先端を供給口24(およびブレード14)から遠ざけることが好ましい(図5の(c)を参照)。これによって、溶融タンク21から、長尺紐状熱可塑性接着剤10aへの熱伝導を低減することができる。
【0067】
長尺紐状熱可塑性接着剤10aを巻き戻す方法は、特に限定されない。この点に関して、図5では、ローラ12を逆方向に回転させる構成を取っている。
【0068】
以上に説明した方法により、長尺紐状熱可塑性接着剤10aに対する、溶融タンク21などの熱源からの熱伝導が低減される。その結果、長尺紐状熱可塑性接着剤10aが、熱によって変質することを防止できる。加えて、長尺紐状熱可塑性接着剤10aが熱により溶融し、ローラ12や供給口24に付着する事態も防げる。このため、長尺紐状熱可塑性接着剤10の安定した供給が可能となる。
【0069】
[油煙の漏出を防止する機能]
溶融装置100は、供給口24を塞ぐことのできる、蓋を備えていることが好ましい。長尺紐状熱可塑性接着剤10の供給が停止されているときに、このような蓋で供給口24を塞ぐことにより、溶融タンク21内の油煙が外部へと漏出することを防止できる。なお、上記蓋は、供給口24を完全に密閉する必要はなく、油煙の漏出を低減する機能を有していれば充分である。
【0070】
供給口24に蓋を設けることによる他の利点として、溶融タンク21内の温度が下がりにくいことが挙げられる。その結果として、溶融タンク21に投入された長尺紐状熱可塑性接着剤10bを、より迅速に溶融させることができる。
【0071】
この点に関して、図5では、ヒートカッターのブレード14が、供給口24を塞ぐ蓋の機能も果たしている。このような構成とすることにより、長尺紐状熱可塑性接着剤10を切断すると間もなく、供給口24が塞がれることになる。したがって、溶融タンク21内の油煙の漏出を最小限に止めることができ、溶融タンク21内の温度も下がりにくい。もちろん、上述した切断具および蓋は、それぞれ別の部材としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1:供給部
10:長尺紐状熱可塑性接着剤
11:格納部
2:溶融部
20:液体状熱可塑性接着剤
21:溶融タンク
22:ヒータ
23:排出口
24:供給口
3:液量検知部
4:制御部
60:ボビン
100:溶融装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7