特許第6982477号(P6982477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982477フローインジェクション分析方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982477
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】フローインジェクション分析方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20211206BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G01N33/18 106A
   C02F1/00 V
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-227726(P2017-227726)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-95411(P2019-95411A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517415849
【氏名又は名称】株式会社アクア・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
(72)【発明者】
【氏名】島田 勝久
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−043245(JP,A)
【文献】 特開2000−338099(JP,A)
【文献】 特開平02−249970(JP,A)
【文献】 特開2001−124757(JP,A)
【文献】 特開平11−304711(JP,A)
【文献】 特表2005−524075(JP,A)
【文献】 特開2002−355024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
G01N 1/00−1/44
C02F 1/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した液体の流れを反応コイル内に形成し、前記反応コイルにおける試薬との反応に基づいて試料液中の目的物質を定量するフローインジェクション分析方法において、
試料液と標準液とを選択する導入装置と、前記反応コイルと、前記反応コイルに供給されるキャリア液に、前記導入装置によって選択された液の一定量を注入するサンプリング弁と、前記反応コイルの二次側に接続されて検出値を出力する検出器と、前記導入装置及び前記サンプリング弁を制御し、前記検出値が入力して前記目的物質の定量値を算出する制御手段と、を備えるフローインジェクション装置を使用し、
検量線を用いて前記目的物質の連続的な定量を行っている期間内において、前記試料液を標準液に自動的に切り替えて前記反応コイルに導入するように前記制御手段が前記導入装置と前記サンプリング弁とを制御し、前記標準液に対する検出値に基づいて前記制御手段が前記検量線を再算出し、
前記検量線の再算出後は、前記制御手段が、再算出された前記検量線に対して前記試料液に対する検出値を当てはめ、前記目的物質の定量値を自動的に算出することを特徴とする、フローインジェクション分析方法。
【請求項2】
前記制御手段が定期的に前記検量線の再算出を行う、請求項1に記載のフローインジェクション分析方法。
【請求項3】
前記試料液は水処理システムからのオンライン接続で得られる水である、請求項1または2に記載のフローインジェクション分析方法。
【請求項4】
前記目的物質は尿素である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフローインジェクション分析方法。
【請求項5】
前記試薬を調製後、前記試薬の少なくとも1つを冷蔵する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフローインジェクション分析方法。
【請求項6】
連続した液体の流れを反応コイル内に形成し、前記反応コイルにおける試薬との反応に基づいて試料液中の目的物質を定量するフローインジェクション分析装置であって、
試料液と標準液とを選択する導入装置と、
前記反応コイルに供給されるキャリア液に、前記導入装置によって選択された液の一定量を注入するサンプリング弁と、
前記反応コイルの二次側に接続されて検出値を出力する検出器と、
検量線を用いて前記試料液中の前記目的物質の連続的な定量を実行し、前記連続的な定量を行っている期間内において、前記検量線の再算出のために前記試料液を前記標準液に切り替えて前記反応コイルに導入するように前記導入装置と前記サンプリング弁とを制御し、前記標準液に対する検出値に基づいて前記検量線を再算出し、前記再算出を実行した後は再算出された前記検量線に対して前記試料液に対する検出値を当てはめ、前記目的物質の定量値を算出する制御手段と、
を有するフローインジェクション分析装置。
【請求項7】
前記導入装置は、
異なる濃度の標準液を貯える2以上の容器と、
前記試料液が通液する容器と、
前記標準液及び前記試料液のいずれか1つの液体を分析装置に供給するために前記標準液の2以上の容器と前記試料液の容器との中から1つを選択し選択された容器内の液体を前記サンプリング弁に向けて送出する選択弁と、
を有する請求項6に記載のフローインジェクション分析装置。
【請求項8】
前記制御手段は、定期的に前記検量線の再算出を行う、請求項6または7に記載のフローインジェクション分析装置。
【請求項9】
水処理システムにオンライン接続され、前記水処理システムから得られる水を前記試料液として前記目的物質の定量を行う、請求項6乃至8のいずれか1項に記載のフローインジェクション分析装置。
【請求項10】
前記目的物質は、尿素である、請求項6乃至9のいずれか1項に記載のフローインジェクション分析装置。
【請求項11】
調製された少なくとも1つの前記試薬を貯蔵する貯槽と、
前記貯槽を冷却する冷却手段と、
を備える、請求項6乃至10のいずれか1項に記載のフローインジェクション分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローインジェクション分析(FIA;flow injection analysis)方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の連続した流れを細い管の中に形成し、そこに試料液を注入して試薬との反応を生じさせ、管の二次側に接続された検出器において反応生成物濃度などを測定するフローインジェクション分析は、試料液中の目的物質の定量分析などに広く用いられている。反応が起きる場である細い管は、一般に反応コイルと呼ばれる。フローインジェクション分析による定量では、目的物質の濃度が既知である標準液を試料液とは別に用意し、標準液についての定量結果に基づいて検量線を求め、試料液に対する検出結果を検量線に当てはめて試料液に含まれる目的物質の定量を行うことが一般的である。検量線は、検出器での検出結果と試料液での目的物質の量(あるいは濃度)との関係を示す関数であると言える。この関数さえ明らかになれば、グラフとしての検量線を実際に描画しなくても、検出器での検出値から目的物質の定量を行うことができる。以下の説明においては、検出器での検出結果と試料液での目的物質の量(あるいは濃度)との関係を示す関数を求めることも、検量線を求める、検量線を引く、あるいは検量線を算出すると呼ぶ。
【0003】
フローインジェクション分析の応用例として、例えば特許文献1は、試料水中の微量の尿素濃度の連続的にモニタリングするために、ジアセチルモノオキシムによる比色法による分析をフローインジェクション分析により実施することを開示している。ジアセチルモノオキシムを用いた比色法による定量は、尿素の定量法としてはよく知られたものであり、例えば衛生試験法(非特許文献1)において記載されている。ジアセチルモノオキシムを用いる比色法では、反応を促進するなどの目的で他の試薬(例えば、アンチピリン+硫酸溶液、塩酸セミカルバジド水溶液、塩化マンガン+硝酸カリウムの水溶液、リン酸二水素ナトリウム+硫酸溶液など)を併用することができる。アンチピリンを併用する場合には、ジアセチルモノオキシムを酢酸溶液に溶解させてジアセチルモノオキシム酢酸溶液を調製し、アンチピリン(1,5−ジメチル−2−フェニル−3−ピラゾロン)を例えば硫酸に溶解させてアンチピリン含有試薬液を調製し、試料水に対してジアセチルモノオキシム酢酸溶液とアンリピリン含有試薬液とを順次混合し、波長460nm付近での吸光度を測定し、標準液との対照によって定量を行う。ジアセチルモノオキシムを用いた比色法による尿素の定量方法は、元来は例えばプール水や公衆浴場水における尿素の定量を目指して意図されたものであるが、この方法に特許文献1に記載されるようにフローインジェクション分析を適用して吸光度を測定することにより、ppb以下から数ppmの濃度範囲で連続的にオンラインで尿素を定量することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−338099号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本薬学会編、衛生試験法・注解1990.4.1.2.3(13)1(1990年版第4刷付追補(1995)、p1028)、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フローインジェクション分析を用いて目的物質をオンラインで長期間にわたって連続的に定量する場合、測定期間の全体にわたって自動測定を行うことが好ましい。また、長期間である測定期間内においては試薬の変性や検出器の検出特性の変化などが起こり得る。したがって、ある間隔で標準液の測定を行い、検量線を引き直す操作が必要となる。しかしながら、フローインジェクション分析においては、検量線の引き直しは人が判断し、自動化して連続的な定量を行う場合であっても検量線を引き直す操作自体は人手を介して行う必要があった。
【0007】
本発明の目的は、長期間にわたって連続的かつ自動的に定量を行うことができかつ検量線を引き直す操作も自動的に行うことができるフローインジェクション分析方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフローインジェクション分析方法は、連続した液体の流れを反応コイル内に形成し、反応コイルにおける試薬との反応に基づいて試料液中の目的物質を定量するフローインジェクション分析方法において、目的物質の連続的な定量を行っている期間内において、試料液を標準液に自動的に切り替えて反応コイルに導入し、標準液に対する検出値に基づいて検量線を再算出し、検量線の再算出後は、再算出された検量線に対して試料液に対する検出値を当てはめ、目的物質の定量値を自動的に算出することを特徴とする。
【0009】
本発明のフローインジェクション分析装置は、連続した液体の流れを反応コイル内に形成し、反応コイルにおける試薬との反応に基づいて試料液中の目的物質を定量するフローインジェクション分析装置であって、試料液と標準液とを選択する導入装置と、反応コイルに供給されるキャリア液に、導入装置によって選択された液の一定量を注入するサンプリング弁と、反応コイルの二次側に接続されて検出値を出力する検出器と、試料液中の目的物質の連続的な定量を実行し、連続的な定量を行っている期間内において、検量線の再算出のために試料液を標準液に切り替えて反応コイルに導入するように導入装置とサンプリング弁とを制御し、標準液に対する検出値に基づいて検量線を再算出し、再算出を実行した後は再算出された検量線に対して試料液に対する検出値を当てはめ、目的物質の定量値を算出する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フローインジェクション分析に代表される各種の分析において、長期間にわたって連続的かつ自動的に定量を行うことができかつ検量線を引き直す操作も自動的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の一形態のフローインジェクション分析装置の構成を示す図である。
図2】通水日数に対する、検出器におけるピーク強度及び尿素濃度の変化を示すグラフである。
図3】実施例2における通水日数とピーク強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の一形態のフローインジェクション分析(FIA)装置の構成を示している。ここでは、純水製造に用いる原水、あるいは純水を試料液とし、この試料液(ここでは水であるので試料水ともいえる)に含まれる微量の尿素を目的物質としてオンラインで連続的に定量する場合を例に挙げて、長期間にわたる連続的な定量を自動化して実行し、かつ、この測定期間中における検量線の引き直しの処理も自動化して実行できる本発明を説明する。もちろん、本発明が定量対象とする目的物質は尿素に限られるものではなく、目的物質を含む試料液も水に限られるものではない。例えば本実施形態のFIA装置は、何らかの水処理システム(純水製造装置も水処理システムの一種であるといえる)に接続して水処理システムからの水を測定対象とすることができる。
【0013】
図1に示されるように、純水製造に用いる原水のライン20が設けられており、このライン20では、原水がポンプP0によって送水される。原水のライン20から分岐する配管21が設けられている。配管21は、原水から分岐した試料水を導入装置60に供給するものであり、導入装置60までの区間の途中に開閉弁22及び流量計FIが設けられている。原水から採取される試料水での尿素濃度の分析を行うときは、開閉弁22は常時開とされる。
【0014】
導入装置60は、FIA装置の本体部分に対し、原水から分岐した試料水及び既知量の目的物質(ここで示す例では尿素)を含有する標準液のいずれかを選択して供給するものである。導入装置60には、原水から分岐した試料水を一時的に貯える試料水槽61と、異なる濃度の標準液を貯える2つの容器62,63と、試料水槽61と標準液の容器62,63のいずれか1つを選択する選択弁64と、が設けられている。試料水槽61は、いわゆるフローセル形態のものであって、原水から分岐した試料水の配管22がその底部に接続している。試料水槽61の上面は、選択弁64に対して接続する配管65が貫通するフェルールによって閉じられている。この配管65は、試料水槽61の上面側からほぼ中央領域まで垂直に延びて先端が開口している。さらに、オーバーフローとなる試料水を排水するために、試料水槽61の上部に配管68が接続している。ポンプP0を駆動している限り、配管21を介して試料水槽61に試料水が常時流れることになる。試料水槽61は試料液がオーバーフロー可能に連続通液する容器であるといえる。標準液の容器62,63は、それぞれ配管66,67により選択弁64に接続している。
【0015】
選択弁64は、配管65により供給される試料水、配管66を介して供給される容器62内の標準液、及び配管67を介して供給される容器63内の標準液のいずれか1つを選択して、FIA装置の本体部分に設けられているサンプリング弁10に対し、選択弁64に接続する配管70を介してその選択された液体を供給するものである。後述するようにサンプリング弁10にはポンプP4が接続しているが、ポンプP4を駆動することにより、選択弁64で選択された液体がサンプリング弁10に対して常時供給されることになる。ここで説明する例では、目的物質(ここでは尿素)の濃度が異なる2つの標準液を用意しているが、標準液の数は2に限定されるものではない。2次曲線などの曲線で検量線を表現したい場合などには、3種類以上の異なる濃度の標準液を用意する。単一の標準液のみを使用することも可能であるが、定量精度の観点からすると、濃度が異なる少なくとも2以上の標準液を使用することが好ましい。
【0016】
本実施形態の導入装置60では、試料水槽61がオーバーフロー可能な構成となっているので、選択弁64が標準液を選択しているために試料水槽61から選択弁64に向けて試料水が流れないときであっても、試料水槽61への及び試料水槽61内での試料水の流れは中断しない。また試料水槽61は、配管21,65,68との接続部以外は閉じた構造であり、配管21から試料水槽61に流入した試験水は上方に向かって流れ、配管65を介して選択弁64に流れた分以外の試料水は配管68を介して試料水槽61の外部へと流出する。このような試料水槽61を使用することによって、試料水中の目的物質の濃度が変動する場合においてもその変動に追従する形態で適切に試料水のサンプリングを行えることとなる。なおこの導入装置60は、FIA装置のみならず他の種類の分析装置に対して試料液及び標準液のいずれかを選択して導入する際に、好ましく用いられるものである。
【0017】
次に、サンプリング弁10について説明する。サンプリング弁10を含めてサンプリング弁10から下流の部分は、FIA装置としての構成を有する本体部分であって、実際に尿素の定量に関わる部分となる。サンプリング弁10には、導入装置60から試料水または標準液のうちの導入装置60により選択されたものが供給されている。説明の簡素化のため、以下のサンプリング弁10に関する説明において試料水と呼ぶときは、標準液である場合も含むものとする。
【0018】
サンプリング弁10は、FIA法において一般的に用いられる構成のものであり、六方弁11とサンプルループ12とを備えている。六方弁11は、図示丸付き数字で示される6個のポートを備えている。導入装置60からの配管70はポート2に接続している。また、ポンプP1を介してキャリア水が供給される配管23がポート6に接続し、ポンプP4を介して試料水を排水するための配管25がポート3に接続している。ポート1とポート4との間には、所定容量の試料水を採取するためのサンプルループ12が接続している。ポート5には、サンプリング弁11の出口となる配管24の一端が接続している。キャリア水は、尿素を実質含まない水であり、例えば純水である。
【0019】
六方弁11においてポートXとポートYとが連通することを(X−Y)と表すこととすると、六方弁11は、(1−2)、(3−4)、(5−6)である第1の状態と、(2−3)、(4−5)、(6−1)である第2の状態とを切り替えられるようになっている。図1において、第1の状態でのポート間の接続関係は実線で示され、第2の状態でのポート間の接続は点線で示されている。第1の状態においてキャリア水は、配管23→ポート6→ポート5→配管24と流れてサンプリング弁10から下流側に流出する。試料水は、配管70→ポート2→ポート1→サンプルループ12→ポート4→ポート3と流れて配管25から排出される。この第1の状態から第2の状態に切り替わると、試料水は、配管70→ポート2→ポート3と流れて配管25から排出され、また、キャリア水は、配管23→ポート6→ポート1→サンプルループ12→ポート4→ポート5→配管24と流れ、下流側へ流出する。このとき、第1の状態であったときに既に流入してサンプルループ12内を満たしている試料水は、キャリア水に先立ってポート5から配管24へと流れ込み、サンプリング弁10の下流側へと流れる。配管24に流れる試料水の体積は、サンプルループ12によって規定される。したがって、第1の状態と第2の状態とを繰り返し切り替えることによって(例えば六方弁11を図示矢印方向に回転することによって)、所定容量の試料水を繰り返して配管24に送り込むことができる。第1の状態と第2の状態との切り替えは、後述する反応に必要な滞留時間、検出器32で尿素が検出されるまでの時間を考慮して、所定の時間ごとに行うことができる。また、検出器32に導入した試料水が検出器32から排出されたことを検知して切り替えを行うこともできる。このように、第1の状態と第2の状態との切り替えを自動的に行うようにすることで、尿素を連続的に定量することができる。
【0020】
この装置では、ジアセチルモノオキシムを用いる比色法による尿素の定量に対してFIA法を適用する。そのため、尿素の定量に用いる反応試薬として、ジアセチルモノオキシム酢酸溶液(以下、試薬Aともいう)とアンチピリン含有試薬液(以下、試薬Bともいう)を使用する。ここではジアセチルモノオキシムと併用される試薬としてアンチピリン含有試薬液を用いる場合を説明するが、ジアセチルモノオキシムと併用される試薬はアンチピリン含有試薬液に限定されるものではない。試薬A及び試薬Bは、それぞれ、貯槽41,42に貯えられる。
【0021】
本発明者らは、これらの試薬を調製後、尿素の連続定量のために長期間(例えば数日間以上)にわたって室温に保持した場合に吸光度測定でのピーク強度が低下すること、及び、このピーク強度の低下は試薬(特に試薬B)を冷蔵することにより防ぐことができることを見出している。安定した定量を行うためには吸光度測定でのピーク強度が低下しないことが好ましいので、本実施形態のFIA装置では、貯槽41,42を冷蔵部40内に設けている。試薬Aはジアセチルモノオキシムを酢酸溶液に溶解させて調製されるが、冷蔵部40を設ける場合には、調製自体を貯槽41で行う、あるいは、試薬Aをその調製後、貯槽41に貯えるようにする。同様に、試薬Bは、アンチピリンを例えば硫酸に溶解させて調製されるが、調製自体を貯槽42で行う、あるいは、試薬Bをその調製後、貯槽42に貯えるようにする。冷蔵部40は、貯槽41,42を遮光するとともに、貯槽41,42を冷却し、これによって、貯槽41,42内の試薬A、試薬Bの温度を20℃以下、好ましくは3℃以上20℃以下、より好ましくは5℃以上15℃以下に維持する。なお、試薬Aを貯える貯槽41については、遮光保管できるもであれば、必ずしも冷蔵部40内に配置する必要はない。試薬の冷蔵温度は、5℃未満であっても、試薬において結晶の析出が生じなければ差し支えない。衛生試験法(非特許文献1)には、アンチピリンを硫酸に溶解させたアンチピリン硫酸溶液について、褐色瓶に保管すれば2〜3箇月は使用できることと、結晶が析出し室温に戻しても再溶解しないため冷蔵保管は適さないこととが記載されているが、本発明者らは、衛生試験法にしたがって調整されたアンチピリン硫酸溶液は3℃でも結晶化しないことを実験により確認した。
【0022】
貯槽41には配管26の一端が接続し、配管26の他端は混合部43により配管24に接続している。配管26には、試薬Aを所定の流量で配管24に送り込むためのポンプP2が設けられている。同様に貯槽42には配管27の一端が接続し、配管27の他端は混合部44により配管24に接続している。配管27には、試薬Bを所定の流量で配管24に送り込むためのポンプP3が設けられている。混合部43,44は、それぞれ、試薬A、試薬Bを配管24内の液体の流れに対して均一に混合する機能を有する。配管24の他端は、反応恒温槽30内に設けられた反応コイル31の入口に接続している。反応コイル31は、その内部においてアンチピリンの存在下での尿素とジアセチルモノオキシムとによる発色反応を起こさせるものであり、その長さと反応コイル31の内部での流速とは、反応に必要な滞留時間に応じて適宜に選択される。反応恒温槽30は、反応コイル31を反応に適した温度まで昇温するものであって、例えば、50℃以上150℃以下、好ましくは90℃以上120℃以下の温度に反応コイル31を加熱する。
【0023】
反応コイル31の末端すなわち出口には、反応コイル31から流れ出る液を対象として、発色反応によって液中に生じた発色の吸光度を測定するための検出器32が設けられている。検出器32は、例えば、波長460nm付近での吸光度を測定して検出結果として出力する。検出器32の出口には、ポンプP1からサンプリング弁10、配管24及び反応コイル31を経て検出器32に至る管路に対して背圧を与える背圧コイル33が設けられている。検出器32の出口と背圧コイル33の入口との間の位置に対し、圧力計PIが接続している。背圧コイル33の出口から、このFIA装置の排液が流出する。
【0024】
本実施形態のFIA装置では、上述のように六方弁11を駆動して第1の状態と第2の状態との間で切り替えを行い、また、選択弁64により試料水またはいずれかの標準液を選択するために、制御部50がさらに設けられている。制御部50には、検出器32での検出結果が入力する。制御部50は、制御手段に相当し、導入装置60(特に選択弁64)とサンプリング弁10(特に六方弁11)とを制御するとともに、選択弁64により標準液を選択したときの検出結果に基づいて検量線を算出し、試料水を選択したときには、算出した検量線に対して試料水に対する検出結果を当てはめることにより、試料水中の尿素濃度を決定して定量結果として出力する処理を行う。制御部50は、検量線の算出あるいは尿素濃度の決定に際しては、検出器32から入力する検出結果におけるピーク値(すなわちピーク強度)、あるいは、検出結果を時間について積分することによって得られるピーク面積を算出して使用する。その際、キャリア水が流れているときの吸光度をベースラインとし、このベースラインに対するピーク強度あるいはピーク面積を求めるようにする。
【0025】
次に、連続的に尿素の定量を行うときの検量線の算出について説明する。本実施形態のFIA装置を用い、予め定めた時間間隔tで尿素濃度を測定することにより、長期間にわたって連続的に試料水における尿素濃度の測定を行う場合を考える。このとき、制御部50は、まず、選択弁64を制御して、容器62,63内の標準液が順次、サンプリング弁10に供給されるようにし、さらにサンプリング弁10を制御して、これら標準液についての測定を実行する。そして、各標準液について検出器32によって得られた検出結果に基づき、制御部50は検量線を算出する。続いて制御部50は、選択弁64を制御して試料水がサンプリング弁10に供給されるようにし、サンプリング弁10を制御して時間間隔tごとに試料水が配管24に導入されるようにする。制御部50は、試料水について検出器38から得られた結果を先に生成した検量線に当てはめることにより、試料水中の尿素濃度を決定し、定量結果として出力する。これにより、時間間隔tごとに尿素濃度が求められたことになる。
【0026】
連続的な定量を行う測定期間が長期間であって、その期間中での各試薬の変性や検出器32の検出特性の変動が懸念されるような場合には、制御部50は、検量線算出間隔T(ただしT≧t)ごとに、検量線を引き直す処理、すなわち検量線を再算出する処理を行う。検量線を再算出する処理では、制御部50は、試料水の測定に影響を及ぼさないタイミングで選択弁64を制御して標準液を選択し、その状態でサンプリング弁10を制御して標準液が配管24に導入されるようにする。そして、そのときの検出器32からの検出結果に基づいて、検量線を再算出する。検量線の再算出後は、再算出された検量線に基づいて試料水での尿素濃度を求めるようにする。本実施形態では、2種類の標準液を用いて検量線を算出するが、試料水の測定間隔tの間に両方の標準液についての測定を行うだけの時間を確保できない場合であれば、一方の標準液について測定を行い、続けて試料水の1回の測定を行い、その後、他方の標準液について測定を行って検量線を再算出すればよい。なお、標準液の消費を抑えるため、標準液について測定を行うために必要な期間以外の期間においては、選択弁64が試料液を選択するようにすることが好ましい。検量線算出間隔Tは、使用する試薬やFIA装置の構成に応じ、任意に設定できるようにすることが好ましい。また、長期にわたる測定期間の途中でも検量線算出間隔Tを適宜に変更できるようにすることが好ましい。例えば、測定環境温度が異なる条件下では、吸光度測定におけるピーク強度の低下割合が異なる。検量線算出間隔Tは、測定開始直後は等間隔で設定し、検量線算出間隔T間の前後で算出された標準液のピーク強度の低下割合が一定の範囲を上回る場合は、検量線算出間隔Tを自動で短縮することができる。また検量線算出間隔T間の前後で算出された標準液のピーク強度の低下割合がある一定の範囲内に収まる場合は、検量線算出間隔Tを自動で延ばすことができる。検量線算出間隔Tを延ばすことにより、標準液の使用量を削減することが可能になる。なお検量線算出間隔Tは試料水の組成、性状によって異なる。
【0027】
本実施形態の装置では、FIA法を利用し、ジアセチルモノオキシムを用いる比色法によって試料水中の尿素をオンラインで長期間にわたって連続的に測定することができ、しかもその期間中、試薬や装置における変動が起きたとしても検量線が自動的に再算出されるので、長期にわたって安定かつ高精度に尿素の定量を行うことができる。また、反応に用いる試薬A(ジアセチルモノオキシム酢酸溶液)及び試薬B(アンチピリン含有試薬液)として、特に試薬Bについて、それらの試薬の調製後、20℃以下に維持されたものを使用することにより、長期にわたって、より安定して尿素の連続的な定量を行うことが可能になる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に示すFIA装置を組み立てた。容器62,63にはそれぞれ尿素濃度が3ppb、10ppbである標準液を貯えた。試薬Aとしてジアセチルモノオキシム酢酸溶液を調製し、試薬Bとしてアンチピリン含有試薬液を調製し、調製後直ちにそれらの試薬をそれぞれ貯槽41,42に貯え、貯槽41,42から各試薬を配管24に向けて連続的に供給するようにした。本実施例では冷蔵部40を使用せず、試薬A及び試薬Bを室温に維持するものとした。試料水として、尿素濃度が5ppbであるように純水に尿素を溶解させた溶液を使用した。そして、試料水については30分に1回、測定を行い、検量線については60分に1回、再算出を行うようにして、約10日間にわたり、試料水の尿素濃度の連続的な測定を行った。得られた尿素濃度の変化を図2に示す。またこのとき、試薬A及び試薬Bを調製した直後の試料水を測定したときの吸光度のピーク強度を100%として、試料水の連続的な測定を行っているときの吸光度のピーク強度の変化も調べた。ピーク強度の変化も図2に示す。
【0030】
図2に示すように、試薬を常温に維持したことによって試薬の変性が進行するので、調製時からの日数が経過するにつれてピーク強度が低下したが、検量線を再算出することを繰り返すことにより、安定して高精度に試料水中の尿素濃度(ここでは5ppb)の測定を行えることが分かった。
【0031】
(実施例2)
次に、試薬を冷蔵することの効果を実証するために、図1に示すFIA装置を組み立てた。ただし、配管20から導入装置60に至る部分は設けず、試料水がサンプリング弁に直接供給される構造とした。
【0032】
尿素濃度が60ppbになるように調製した標準液を試料水としてサンプリング弁10に連続供給できるようにした。そしてこの尿素標準液に関して尿素濃度の連続モニタリングを行った。ここでは、尿素標準液について連続的に測定を行ったときに、検出器32における吸光度の検出ピークの測定値として得られる尿素濃度がどのように変化するかを調べた。この実施例2では、ジアセチルモノオキシム2gを10%酢酸100mLに溶解させて試薬A(ジアセチルモノオキシム酢酸溶液)を調製し、アンチピリン0.2gをとり、9mol/Lの硫酸に溶かし、全量を100mLとして試薬B(アンチピリン含有試薬液)を調製し、調製後直ちにそれらの試薬をそれぞれ貯槽41,42に貯え、貯槽41,42から各試薬を配管24に向けて連続的に供給するようにした。連続測定の最初に各試薬を貯槽41,42に注入した後は、連続測定中には試薬を補充しないようにした。また、試薬Aの貯槽41については常温に維持した。試薬Bについては、その調製後の保管温度を10℃とした場合と25℃とした場合の2通りについて実験を行った。尿素濃度の変化は、波長460nmでの吸光度のピーク強度で確認した。結果を図3に示す。図3では、試薬A及び試薬Bを調製してそれぞれ貯槽41,42に貯えた直後に60ppbの尿素標準液を測定した際のピーク強度を100%として、同じ尿素標準液を測定したときの測定値が日時の経過とともにどのように変化したかを示している。
【0033】
図3に示すように、アンチピリン含有試薬液(試薬B)を25℃に維持した場合には、徐々にピーク強度が低下し、連続測定のための10日間の運転の間にピーク強度が72%まで低下した。すなわち、尿素の定量を安定して行えなくなっていた。これに対しアンチピリン含有試薬液を冷蔵保管して10℃に維持した場合には、10日間の連続運転の後にもピーク強度が低下せず、長期にわたって安定して尿素の連続定量を行えることが分かった。
【0034】
(実施例3)
実施例2と同様に試薬B(アンチピリン含有試薬液)を調製後、5℃、10℃、15℃、20℃及び25℃でそれぞれ10日間保管した。そして、この保管の後に試薬Bを実施例2の装置に供給した。試薬Bを装置に供給したのち直ちにこの装置を用いて尿素濃度60ppbの標準液を測定し、そのピーク強度を求めた。その際、試薬Bの調製直後に標準液を測定したときのピーク強度を100%とした。試薬A(ジアセチルモノオキシム酢酸溶液)については実施例2と同様に調製したのち、常温で保管したものを使用した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示されるように、保管温度が5℃の場合と10℃の場合にはピーク強度の低下はほとんど見られず、15℃で保管した場合には、約1割程度のピーク強度の低下が見られた。20℃で保管した場合には約2割のピーク強度の低下であったが、25℃では3割近くピーク強度が低下した。これらから、微量の尿素濃度を連続的に測定するためには、反応に用いる試薬(ジアセチルモノオキシム酢酸溶液及びアンチピリン含有試薬液)のうち少なくともアンチピリン含有試薬液を冷蔵保存すべきであること、その場合、アンチピリン含有試薬液の温度を20℃以下に維持することが好ましく、3℃以上20℃以下に維持することがさらに好ましく、5℃以上15℃以下に維持することがより好ましいことが分かった。
【0037】
(実施例4)
実施例3の試薬A(ジアセチルモノオキシム酢酸溶液)を実施例3の試薬B(アンチピリン含有試薬液)と同様の保管温度にて保管したことを除いて、実施例3と同様の試験を行った。
【0038】
試薬Aと試薬Bの両方を冷蔵して測定を行った場合、試薬Bのみを冷蔵して測定を行った結果(表1)と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0039】
10 サンプリング弁
12 サンプルループ
31 反応コイル
32 検出器
40 冷蔵部
41,42 貯槽
50 制御部
60 導入装置
61 試料水槽
62,63 容器
64 選択弁
図1
図2
図3