(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1、2の方法では、いずれも、パーティクル保持層を基板上で溶解させるため、溶解しつつあるパーティクル保持層からパーティクルが脱落して、基板に再付着するおそれがある。そのため、パーティクル除去率が、期待するほど高くならない。
そこで、本願の発明者は、剥離したパーティクル保持層を溶解させずに、基板の上面から除去することを検討している。具体的には、パーティクル保持層を基板の上面から剥離したのち、たとえば、当該基板の上面にリンス液が供給されることによって、当該基板の上面が洗浄される。
【0008】
しかし、この場合には、パーティクル保持層に起因する微小な残渣が、基板の上面から剥離されずに当該基板の上面に残ったり、剥離した残渣が、基板の上面に再付着したりする場合があることが分かってきた。
そこで、この発明の目的は、基板の上面からパーティクルを高い除去率で除去することができる上、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる基板洗浄方法および基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、この発明は、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の上面に供給された前記処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより、前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成する成膜工程と、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離するための剥離液を供給して、前記基板の上面から、前記パーティクル保持層を剥離して除去する除去工程と、残渣除去工程とを含む、第1の基板洗浄方法を提供する。
【0010】
この方法では、前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分は、変質温度以上に加熱前は、前記剥離液に対して難溶性ないし不溶性で、かつ前記変質温度以上に加熱することによって変質して、前記剥離液に対して可溶性になる性質を有する。前記成膜工程は、前記基板の上面に供給した前記処理液を、前記変質温度未満の温度に加熱することにより、前記溶質成分を変質させることなく、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する加熱工程を含む。前記残渣除去工程は、前記除去工程後の前記基板の上面に、前記変質温度以上に加熱前の前記溶質成分に対する溶解性を有する残渣除去液を供給して、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する。
【0011】
この方法によれば、加熱工程を含む成膜工程において、処理液が固化または硬化される。これにより、剥離液に対して難溶性ないし不溶性であるものの、当該剥離液によって剥離が可能なパーティクル保持層が基板の上面に形成される。
処理液が固化または硬化される際に、パーティクルが基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、剥離液によって溶解させることなく、パーティクル保持層中に保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0012】
また、その後の残渣除去工程において、パーティクル保持層を除去した後の基板の上面に、当該パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する残渣除去液が供給される。それにより、パーティクル保持層の残渣を溶解して、基板の上面から除去することができる。
したがって、この方法によれば、パーティクル保持層を、保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記加熱工程において、前記基板の下面である裏面に、沸点が前記変質温度未満である熱媒体を供給することにより、前記基板の上面に供給した前記処理液を、前記変質温度未満の温度に加熱する。
この方法によれば、基板の裏面に熱媒体を供給する簡易な加熱手段によって、成膜工程のうち加熱工程を実行することができる。
【0014】
したがって、たとえば、チャンバ内に電熱ヒータ等を設けたり、電熱ヒータ等を設けた別チャンバに基板を搬送して加熱工程を実施したりする必要がない。つまり、基板洗浄方法の工程を簡略化することができる。
この発明の一実施形態では、前記加熱工程において加熱された前記基板上の前記処理液が、前記溶媒の沸点未満である。
【0015】
この方法によれば、成膜工程のうち加熱工程での加熱後のパーティクル保持層中に溶媒を残留させることができる。そのため、その後の除去工程において、パーティクル保持層中に残留した溶媒と、供給された剥離液との相互作用によって、パーティクル保持層を基板の上面から剥離しやすくすることができる。すなわち、パーティクル保持層中に剥離液を浸透させて、基板との界面まで到達させることにより、パーティクル保持層を基板の上面から浮かせて剥離させることができる。
【0016】
この効果をより一層向上するために、前記剥離液は、前記溶媒に対する相溶性を有していることが好ましい。
この発明は、さらに、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の上面に供給された前記処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより、前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成する成膜工程と、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離するための剥離液を供給して、前記基板の上面から、前記パーティクル保持層を剥離して除去する除去工程と、残渣除去工程とを含む、第2の基板洗浄方法を提供する。そして、前記成膜工程は、前記基板の下面である裏面に熱媒体を供給して、前記基板の上面に供給した前記処理液を、前記熱媒体の沸点未満の温度に加熱することにより、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する加熱工程を含む。そして、前記残渣除去工程は、前記除去工程後の前記基板の上面に、前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分に対する溶解性を有する残渣除去液を供給して、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する。
【0017】
この方法によれば、加熱工程を含む成膜工程において、処理液が固化または硬化される。これにより、剥離液によって剥離が可能なパーティクル保持層が基板の上面に形成される。
処理液が固化または硬化される際に、パーティクルは基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、当該パーティクル保持層中に保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0018】
また、その後の残渣除去工程において、パーティクル保持層を除去した後の基板の上面に、当該パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する残渣除去液が供給される。それにより、パーティクル保持層の残渣を溶解して、基板の上面から除去することができる。
したがって、この方法によれば、パーティクル保持層を、保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
【0019】
しかも、この方法によれば、基板の裏面に熱媒体を供給する簡易な加熱手段によって、成膜工程のうち加熱工程を実行することができる。
したがって、たとえば、チャンバ内に電熱ヒータ等を設けたり、電熱ヒータ等を設けた別チャンバに基板を搬送して加熱工程を実施したりする必要がない。つまり、基板洗浄方法の工程を簡略化することもできる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記加熱工程において加熱された前記基板上の前記処理液が、前記溶媒の沸点未満である。
この方法によれば、成膜工程のうち加熱工程での加熱後のパーティクル保持層中に、溶媒を残留させることができる。そのため、その後の除去工程において、パーティクル保持層中に残留した溶媒と、供給された剥離液との相互作用によって、パーティクル保持層を基板の上面から剥離しやすくすることができる。すなわち、パーティクル保持層中に剥離液を浸透させて、パーティクル保持層と基板との界面まで剥離液を到達させることにより、パーティクル保持層が基板の上面から浮いて剥離される。
【0021】
この効果をより一層向上するために、前記剥離液は、前記溶媒に対する相溶性を有していることが好ましい。
この発明は、さらに、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の上面に供給された前記処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより、前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成する成膜工程と、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離するための剥離液を供給して、前記基板の上面から、前記パーティクル保持層を剥離して除去する除去工程と、残渣除去工程とを含む、第3の基板洗浄方法を提供する。そして、前記成膜工程は、前記基板の上面に供給した前記処理液を、前記溶媒の沸点未満の温度に加熱することにより、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する加熱工程を含む。そして、前記残渣除去工程は、前記除去工程後の前記基板の上面に、前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分に対する溶解性を有する残渣除去液を供給して、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する。
【0022】
この方法によれば、加熱工程を含む成膜工程において、処理液が固化または硬化される。これにより、剥離液によって剥離が可能なパーティクル保持層が基板の上面に形成される。
処理液が固化または硬化される際に、パーティクルは基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、当該パーティクル保持層中に保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0023】
また、その後の残渣除去工程において、パーティクル保持層を除去した後の基板の上面に、当該パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する残渣除去液が供給される。それにより、パーティクル保持層の残渣を溶解して、基板の上面から除去することができる。
したがって、この方法によれば、パーティクル保持層を、保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
【0024】
しかも、この方法によれば、成膜工程のうち加熱工程での加熱後のパーティクル保持層中に、溶媒を残留させることができる。そのため、その後の除去工程において、パーティクル保持層中に残留した溶媒と、供給された剥離液との相互作用によって、パーティクル保持層を基板の上面から剥離しやすくすることができる。すなわち、パーティクル保持層中に剥離液を浸透させて、基板との界面まで到達させることにより、パーティクル保持層を基板の上面から浮かせて剥離させることができる。
【0025】
この効果をより一層向上するために、前記剥離液は、前記溶媒に対する相溶性を有していることが好ましい。
この発明は、また、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給するための処理液供給ユニットと、前記基板を加熱して、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより、前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成するための加熱ユニットと、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離する剥離液を供給するための剥離液供給ユニットと、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離して除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去液を供給するための残渣除去液供給ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記加熱ユニット、前記剥離液供給ユニット、および前記残渣除去液供給ユニットを制御する制御装置とを含む、第1の基板洗浄装置を提供する。前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分は、変質温度以上に加熱前は、前記剥離液に対して難溶性ないし不溶性で、かつ前記変質温度以上に加熱することにより変質して、前記剥離液に対して可溶性になる性質を有する。前記残渣除去液は、前記変質温度以上に加熱前の前記溶質成分に対する溶解性を有している。前記制御装置は、前記基板の上面に前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の上面に供給された前記処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させるとともに、前記処理液を、前記変質温度未満の温度に加熱することにより、前記溶質成分を変質させることなく、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する成膜工程と、前記基板の上面に前記剥離液を供給して、前記基板の上面から、前記パーティクル保持層を剥離して除去する除去工程と、前記基板の上面に前記残渣除去液を供給して、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去工程とを実行する。
【0026】
この構成によれば、加熱工程を含む成膜工程において、処理液が固化または硬化される。これにより、基板の上面に、剥離液に対して難溶性ないし不溶性であるものの、当該剥離液によって剥離が可能なパーティクル保持層が形成される。
処理液が固化または硬化される際に、パーティクルは基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、剥離液によって溶解させることなく、パーティクル保持層中に保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0027】
また、その後の残渣除去工程において、パーティクル保持層を除去した後の基板の上面に、当該パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する残渣除去液が供給される。それにより、パーティクル保持層の残渣を溶解して、基板の上面から除去することができる。
したがって、この構成によれば、パーティクル保持層を、保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
【0028】
この発明の一実施形態では、前記加熱ユニットは、前記基板の裏面に、沸点が前記変質温度未満である熱媒体を供給する熱媒体供給ユニットを含む。
この構成によれば、基板の裏面に熱媒体を供給する簡易な加熱手段(熱媒体供給ユニット)によって、成膜工程のうち加熱工程を実行することができる。
したがって、たとえば、チャンバ内に電熱ヒータ等を設けたり、電熱ヒータ等を設けた別チャンバに基板を搬送して加熱工程を実施したりする必要がない。つまり、基板洗浄装置の構成を簡略化することができる。
【0029】
この発明は、さらに、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給するための処理液供給ユニットと、前記基板の裏面に熱媒体を供給する熱媒体供給ユニットを含み、前記熱媒体供給ユニットから供給される熱媒体によって前記基板を加熱して、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより、前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成するための加熱ユニットと、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離する剥離液を供給するための剥離液供給ユニットと、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離して除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去液を供給するための残渣除去液供給ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記加熱ユニット、前記剥離液供給ユニット、および前記残渣除去液供給ユニットを制御する制御装置とを含む、第2の基板洗浄装置を提供する。前記残渣除去液は、前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分に対する溶解性を有している。前記制御装置は、前記基板の上面に前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の上面に供給された前記処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させるとともに、前記処理液を、前記熱媒体の沸点未満の温度に加熱することにより、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する成膜工程と、前記基板の上面に前記剥離液を供給して、前記基板の上面から、前記パーティクル保持層を剥離して除去する除去工程と、前記基板の上面に前記残渣除去液を供給して、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去工程とを実行する。
【0030】
この構成によれば、加熱工程を含む成膜工程において、処理液が固化または硬化されて、剥離液によって剥離が可能なパーティクル保持層が基板の上面に形成される。
処理液が固化または硬化される際に、パーティクルは基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、当該パーティクル保持層中に保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0031】
また、その後の残渣除去工程において、パーティクル保持層を除去した後の基板の上面に、当該パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する残渣除去液が供給される。それにより、パーティクル保持層の残渣を溶解して、基板の上面から除去することができる。
したがって、この構成によれば、パーティクル保持層を、保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
【0032】
しかも、この構成によれば、基板の裏面に熱媒体を供給する簡易な加熱手段(熱媒体供給ユニット)によって、成膜工程のうち加熱工程を実行することができる。
したがって、たとえば、チャンバ内に電熱ヒータ等を設けたり、電熱ヒータ等を設けた別チャンバに基板を搬送して加熱工程を実施したりする必要がない。つまり、基板洗浄装置の構成を簡略化することもできる。
【0033】
この発明は、さらに、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給するための処理液供給ユニットと、前記基板を加熱して、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより、前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成するための加熱ユニットと、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離する剥離液を供給するための剥離液供給ユニットと、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離して除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去液を供給するための残渣除去液供給ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記加熱ユニット、前記剥離液供給ユニット、および前記残渣除去液供給ユニットを制御する制御装置とを含む、第3の基板洗浄装置を提供する。前記残渣除去液は、前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分に対する溶解性を有している。前記制御装置は、前記基板の上面に前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の上面に供給された前記処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させるとともに、前記処理液を、前記溶媒の沸点未満の温度に加熱することにより、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する成膜工程と、前記基板の上面に前記剥離液を供給して、前記基板の上面から、前記パーティクル保持層を剥離して除去する除去工程と、前記基板の上面に前記残渣除去液を供給して、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去工程とを実行する。
【0034】
この構成によれば、加熱工程を含む成膜工程において、処理液が固化または硬化される。これにより、剥離液によって剥離が可能なパーティクル保持層が基板の上面に形成される。
処理液が固化または硬化される際に、パーティクルは基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、当該パーティクル保持層中に保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0035】
また、その後の残渣除去工程において、パーティクル保持層を除去した後の基板の上面に、当該パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する残渣除去液が供給される。それにより、パーティクル保持層の残渣を溶解して、基板の上面から除去することができる。
したがって、この構成によれば、パーティクル保持層を、保持したパーティクルごと、基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
【0036】
しかも、この構成によれば、成膜工程のうち加熱工程での加熱後のパーティクル保持層中に溶媒を残留させることができる。そのため、その後の除去工程において、パーティクル保持層中に残留した溶媒と、供給された剥離液との相互作用によって、パーティクル保持層を基板の上面から剥離しやすくすることができる。すなわち、パーティクル保持層中に剥離液を浸透させて、基板との界面まで到達させることにより、パーティクル保持層を基板の上面から浮かせて剥離させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態にかかる基板洗浄装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。
基板洗浄装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ洗浄する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。
【0039】
基板洗浄装置1は、基板Wを洗浄する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で洗浄される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板洗浄装置1を制御する制御装置3とを含む。
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0040】
図2は、基板洗浄装置1に備えられる処理ユニット2の概略構成を示す模式的な断面図である。
処理ユニット2は、一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック4と、当該スピンチャック4に保持された基板Wの上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給する処理液供給ノズル5と、スピンチャック4に保持された基板Wの上面に、剥離液を供給する剥離液供給ノズル6とを含む。処理液供給ノズル5は、処理液供給ユニットの一例である。
剥離液供給ノズル6は、剥離液供給ユニットの一例である。
【0041】
スピンチャック4は、チャックピン8と、スピンベース9と、回転軸10と、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ11とを含む。
回転軸10は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びており、この実施形態では、中空軸である。回転軸10の上端は、スピンベース9の下面の中央に結合されている。スピンベース9は、水平方向に沿う円盤形状を有している。スピンベース9の上面の周縁部には、基板Wを把持するための複数のチャックピン8が、周方向に間隔を空けて配置されている。スピンモータ11は、たとえば、回転軸10に回転力を与えることによって、基板W、チャックピン8、スピンベース9および回転軸10を回転軸線A1まわりに一体回転させる電動モータを含む。
【0042】
処理液供給ノズル5は、第1のノズル移動機構12によって、たとえば、水平方向(回転軸線A1に垂直な方向)に移動される。処理液供給ノズル5は、水平方向への移動によって、中央位置と、退避位置との間で移動させることができる。処理液供給ノズル5は、中央位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心位置に対向する。処理液供給ノズル5は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面に対向しない。基板Wの上面の回転中心位置とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。基板Wの上面に対向しない退避位置とは、平面視においてスピンベース9の外方の位置である。処理液供給ノズル5には、処理液供給管13が接続されている。処理液供給管13には、その流路を開閉するバルブ14が介装されている。
【0043】
剥離液供給ノズル6は、第2のノズル移動機構15によって、たとえば、水平方向(回転軸線A1に垂直な方向)に移動される。剥離液供給ノズル6は、水平方向への移動によって、中央位置と、退避位置との間で移動させることができる。剥離液供給ノズル6は、中央位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心位置に対向する。剥離液供給ノズル6は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面に対向しない。剥離液供給ノズル6には、第1の剥離液としてのDIWの供給管16が接続されている。供給管16には、その流路を開閉するバルブ17、18が介装されている。
【0044】
また、剥離液供給ノズル6には、さらに、第2の剥離液としてのSC1液、すなわち、アンモニアおよび過酸化水素の水溶液の供給管19が接続されている。供給管19は、供給管16の、バルブ17より下流側で、かつバルブ18より上流側に接続されている。供給管19には、その流路を開閉するバルブ20が介装されている。
処理ユニット2は、スピンチャック4に保持された基板Wの上面および下面から基板W外に排除される液体を受ける処理カップ40と、スピンチャック4に保持された基板Wに上方から対向する対向部材50とを含む。
【0045】
処理カップ40は、スピンチャック4に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード41と、複数のガード41によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ42と、複数のガード41と複数のカップ42とを取り囲む円筒状の外壁部材43とを含む。この実施形態では、2つのガード41(第1ガード41Aおよび第2ガード41B)と、2つのカップ42(第1カップ42Aおよび第2カップ42B)とが設けられている例を示している。
【0046】
第1カップ42Aおよび第2カップ42Bのそれぞれは、上向きに開放された溝状の形態を有している。第1ガード41Aは、スピンベース9を取り囲む。第2ガード41Bは、第1ガード41Aよりも径方向外方でスピンベース9を取り囲む。第1カップ42Aは、第1ガード41Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ42Bは、第1ガード41Aと一体に形成されており、第2ガード41Bによって下方に案内された液体を受け止める。
【0047】
処理ユニット2は、第1ガード
41Aおよび第2ガード
41Bをそれぞれ別々に昇降させるガード昇降機構44を含む。ガード昇降機構44は、第1ガード
41Aを下位置と上位置との間で昇降させる。ガード昇降機構44は、第2ガード
41Bを下位置と上位置との間で昇降させる。第1ガード
41Aは、上位置と下位置との間の可動範囲の全域において、基板Wの側方に位置する。第2ガード
41Bは、上位置と下位置との間の可動範囲の全域において、基板Wの側方に位置する。可動範囲には、上位置および下位置が含まれる。
【0048】
第1ガード
41Aおよび第2ガード
41Bがともに上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第1ガード41Aによって受けられる。第1ガード
41Aが下位置に位置し、第2ガード
41Bが上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第2ガード
41Bによって受けられる。
ガード昇降機構44は、たとえば、第1ガード
41Aに取り付けられた第1ボールねじ機構(図示せず)と、第1ボールねじに駆動力を与える第1モータ(図示せず)と、第2ガード
41Bに取り付けられた第2ボールねじ機構(図示せず)と、第2ボールねじ機構に駆動力を与える第2モータ(図示せず)とを含む。
【0049】
対向部材50は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成され、スピンチャック4の上方でほぼ水平に配置されている。対向部材50は、基板Wの上面に対向する対向面50aを有する。
対向部材50において対向面50aとは反対側の面には、中空軸51が固定されている。対向部材50において平面視で回転軸線A1と重なる位置を含む部分には、対向部材50を上下に貫通し、中空軸51の内部空間と連通する連通孔が形成されている。
【0050】
対向部材50は、対向部材50の対向面50aと基板Wの上面との間の空間内の雰囲気を当該空間の外部の雰囲気から遮断する。そのため、対向部材50は、遮断板とも呼ばれる。
処理ユニット2は、対向部材50の昇降を駆動する対向部材昇降機構52をさらに含む。対向部材昇降機構52は、下位置(後述する
図5Hに示す位置)から上位置(後述する
図5Aに示す位置)までの任意の位置(高さ)に対向部材50を位置させることができる。下位置とは、対向部材50の可動範囲において、対向部材50の対向面50aが基板Wに最も近接する位置である。上位置とは、対向部材50の可動範囲において対向部材50の対向面50aが基板Wから最も離間する位置(退避位置)である。対向部材50が上位置に位置するとき、処理液供給ノズル5および剥離液供給ノズル6は、対向部材50の対向面50aと基板Wの上面との間に進入することができる。
【0051】
対向部材昇降機構52は、たとえば、中空軸51を支持する支持部材(図示せず)に取り付けられたボールねじ機構(図示せず)と、それに駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。
処理ユニット2は、スピンチャック4に保持された基板Wの上面に、残渣除去液を供給する残渣除去液供給ノズル7と、スピンチャック4に保持された基板Wの上面と対向部材50の対向面50aとの間の空間に気体を供給する気体供給ノズル60と、スピンチャック4に保持された基板Wの上面に、リンス液を供給するリンス液供給ノズル65とをさらに含む。残渣除去液供給ノズル7は、残渣除去液供給ユニットの一例である。気体供給ノズル60は、気体供給ユニットの一例である。リンス液供給ノズル65は、リンス液供給ユニットの一例である。
【0052】
残渣除去液供給ノズル7には、残渣除去液供給管22が接続されている。残渣除去液供給管22には、その流路を開閉するバルブ23が介装されている。気体供給ノズル60には、気体供給管61が接続されている。気体供給管61には、その流路を開閉するバルブ62が介装されている。リンス液供給ノズル65には、リンス液供給管66が接続されている。リンス液供給管66には、その流路を開閉するバルブ67が介装されている。
【0053】
残渣除去液供給ノズル7、気体供給ノズル60およびリンス液供給ノズル65は、中空軸51に挿通されたノズル収容部材53に共通に収容されている。残渣除去液供給ノズル7、気体供給ノズル60およびリンス液供給ノズル65の吐出口は、ノズル収容部材53の下端部から露出している。ノズル収容部材53の下端部は、スピンチャック4に保持された基板Wの上面の中央領域に対向している。
【0054】
処理ユニット2は、スピンチャック4に保持された基板Wの裏面(下面)に、当該基板Wを加熱する熱媒体を供給する熱媒体供給ノズル24をさらに含む。熱媒体供給ノズル24は、チャックピン8およびスピンベース9に保持された基板Wを、当該基板Wの裏面側から加熱して、基板Wの上面にパーティクル保持層を形成するための加熱ユニットの一例である。
【0055】
熱媒体供給ノズル24は、基板Wの裏面の略全面に熱媒体を供給することによって、基板Wの上面の処理液を加熱する。熱媒体供給ノズル24は、回転軸10を挿通しており、基板Wの裏面の中心に臨む吐出口24aを上端に有している。熱媒体の一例は、温純水である。
熱媒体供給ノズル24は、この実施形態では、基板Wを回転させながら、吐出口24aから基板Wの裏面の中心位置へ向けて熱媒体を供給する。供給された熱媒体は、遠心力の働きによって基板Wの裏面の略全面に行き渡る。これにより、基板Wおよび基板Wの上面の処理液が、加熱される。基板Wの裏面の回転中心位置とは、基板Wの裏面における回転軸線A1との交差位置である。熱媒体供給ノズル24には、熱媒体供給管25が接続されている。熱媒体供給管25には、その流路を開閉するバルブ26が介装されている。
【0056】
図3は、基板洗浄装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
基板洗浄装置1は、制御装置3を含む。制御装置3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板洗浄装置1に備えられた制御対象を制御する。具体的には、制御装置3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0057】
とくに、制御装置3は、スピンモータ11、第1のノズル移動機構12、第2のノズル移動機構15、対向部材昇降機構52、ガード昇降機構44、バルブ14,17,18,20,23,26,62,67を制御するようにプログラムされている。
図4は、処理ユニット2による基板洗浄の一例を説明するための流れ図である。
図5A〜
図5Hは、基板洗浄の一例の様子を説明するための図解的な断面図である。
図6A、
図6Bは、基板洗浄の一例におけるパーティクル保持層29の様子を説明するための図解的な断面図である。
【0058】
処理ユニット2による基板洗浄では、まず、処理液供給工程が実行される(ステップS1)。処理液供給工程では、まず、制御装置3は、スピンモータ11を駆動し、スピンベース9を回転させて、基板Wの回転を開始する。処理液供給工程では、スピンベース9は、基板回転速度である所定の処理液供給速度で回転される。処理液供給速度は、たとえば、10rpm〜数10rpmである。そして、制御装置3は、対向部材昇降機構52を制御して、対向部材50を上位置に配置する。そして、制御装置3は、ガード昇降機構44を制御して、第1ガード41Aおよび第2ガード41Bを上位置に配置する。
【0059】
次に、制御装置3は、第1のノズル移動機構12を制御して、処理液供給ノズル5を、基板Wの上方の中央位置に配置する。そして、制御装置3は、バルブ14を開く。これにより、
図5Aに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、処理液供給ノズル5から処理液27が供給される。基板Wの上面に供給された処理液27は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行きわたる。
【0060】
一定時間の処理液供給のあと、処理液を固化または硬化させて、基板Wの上面にパーティクル保持層を形成する成膜工程が実行される(ステップS2)。成膜工程では、まず、制御装置3は、バルブ14を閉じて、処理液供給ノズル5からの処理液27の供給を停止させる。そして、制御装置3は、処理液供給ノズル5を退避位置へ移動させる。
次いで、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定のスピンオフ速度で回転させる(スピンオフ工程、ステップS2a)。スピンオフ速度は、たとえば、300rpm〜1500rpmである。これにより、
図5Bに示すように、まず、基板Wの上面に供給された処理液27が、基板Wの上面の周縁から排出され、次いで、揮発性の溶剤の揮発が進行する。
【0061】
次に、制御装置3は、対向部材昇降機構52が対向部材50を上位置から下位置に向けて移動させる。制御装置3は、バルブ62を開く。これにより、気体供給ノズル60から対向部材50の対向面50aと基板Wの上面との間の空間に窒素(N
2)ガスなどの気体が供給される。そして、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定の加熱時速度で回転させる。加熱時速度は、たとえば、100rpm〜1500rpmである。対向部材50が下位置に到達した後に、制御装置3は、バルブ26を開く。これにより、
図5Cに示すように、回転状態の基板Wの裏面に向けて、熱媒体供給ノズル24から熱媒体28が供給される。 供給された熱媒体28は、遠心力の働きによって、基板Wの裏面の略全面に行き渡る。これにより、基板Wおよび基板Wの上面の処理液27が加熱される(加熱工程、ステップS2b)。
【0062】
そして、揮発性の溶剤の揮発がさらに進行するとともに、処理液27が固化または硬化する。これにより、溶質成分からなる固体状の膜、すなわちパーティクル保持層29が形成される。また、
図6Aに示すように、パーティクル保持層29が形成される際に、基板Wの上面に付着していたパーティクル30が、当該基板Wから引き離されて、パーティクル保持層29中に保持される。
【0063】
ここで「固化」とは、たとえば、溶媒の揮発に伴い、分子間や原子間に作用する力等によって溶質が固まることを指す。「硬化」とは、たとえば、重合や架橋等の化学的な変化によって、溶質が固まることを指す。したがって、「固化または硬化」とは、様々な要因によって溶質が「固まる」ことを表している。なお、処理液は、パーティクル30を保持できる程度に固化または硬化すればよく、溶媒は完全に揮発する必要はない。また、パーティクル保持層29を形成する「溶質成分」とは、処理液27に含まれる溶質そのものであってもよいし、溶質から導かれるもの、たとえば、化学的な変化の結果として得られるものであってもよい。
【0064】
溶質としては、任意の溶媒に対して可溶性で、かつ固化または硬化時に、基板Wの上面に付着していたパーティクル30を当該基板Wから引き離して保持した状態で、パーティクル保持層29を形成することができる、種々の樹脂を用いることができる。
たとえば、この実施形態では、溶質として、所定の変質温度以上に加熱する前は水に対して難溶性ないし不溶性で、変質温度以上に加熱することで変質して水溶性になる性質を有する樹脂(以下「感熱水溶性樹脂」と記載する場合がある。)が用いられる。感熱水溶性樹脂を、後述する水系の剥離液と組み合わせることにより、この発明の一実施形態にかかる洗浄方法が実施される。
【0065】
感熱水溶性樹脂の具体例としては、たとえば、所定の変質温度以上(たとえば、200℃以上)に加熱することで分解して、極性を持った官能基を露出させて、水溶性を発現する樹脂等を用いることができる。
この実施形態では、成膜工程において、処理液を、感熱水溶性樹脂の変質温度未満の温度に加熱することにより、当該感熱水溶性樹脂を水溶性に変質させずに、基板Wの上面に、水系の剥離液に対して難溶性ないし不溶性のパーティクル保持層29を形成する。
【0066】
処理液を、感熱水溶性樹脂の変質温度未満の温度に加熱するためには、熱媒体として、沸点が当該変質温度未満である熱媒体を用いればよい。たとえば、変質温度が180℃である感熱水溶性樹脂の場合、熱媒体としては、たとえば、DIW(沸点:100℃)等を用いることができる。
なお、加熱の温度は、溶媒の沸点未満の温度であるのがさらに好ましい。処理液を、溶媒の沸点未満の温度に加熱することにより、先に説明したように、パーティクル保持層29中に溶媒を残留させることができる。そして、パーティクル保持層29中に残留した溶媒と、剥離液との相互作用によって、当該パーティクル保持層29を、基板Wの上面から剥離しやすくすることができる。
【0067】
感熱水溶性樹脂は、上述したように、変質温度以上に加熱すると、水溶性に変質する。そのため、たとえば、特許文献1、2に記載の従来法にも使用することができる。しかし、実施形態では、感熱水溶性樹脂を、あえて変質温度未満の加熱に留めて、水系の剥離液に対する難溶性ないし不溶性を維持した状態でパーティクル保持層29が形成される。そのため、パーティクル保持層29からパーティクル30を脱落させることなく、塊状態を維持したパーティクル保持層29を基板Wから除去することができる。したがって、高い除去率でパーティクル30を除去することができる。
【0068】
しかも、この実施形態では、加熱の温度を、従来法に比べて低温の変質温度未満に設定できる。そのため、洗浄方法を実施する際の消費エネルギーを、より少なくすることもできる。詳しくは、パーティクル保持層29の加熱温度は、100℃未満の加熱でよいため、基板Wを加熱する加熱手段としてDIWを用いることができる。一方、この実施形態とは異なり、パーティクル保持層29を100℃以上に加熱する構成では、加熱手段として、高温でも気化しない液体(たとえば、沸点が100℃よりも高い液体)を用いなければならない。したがって、加熱の温度を変質温度未満に設定できることによって、安全かつ簡易な構成で基板Wを加熱することが実現できる。
【0069】
溶媒としては、変質前の感熱水溶性樹脂に対する溶解性を有し、かつ揮発性を有する溶媒を用いることができる。ここで「揮発性を有する」とは、水と比較して揮発性が高いことを意味する。溶媒としては、たとえば、PGEEを用いることができる。
このような熱媒体28による基板Wの加熱(加熱工程)は、前述したように、対向部材50の対向面50aを基板Wの上面に近接させた状態(たとえば対向部材50を下位置に位置させた状態)で行われる。
【0070】
基板Wの裏面に供給された熱媒体28は、基板Wの裏面の略全面に行きわたった後、遠心力によって基板W外に飛び散る。基板W外に飛び散った熱媒体28は、第1ガード41Aによって受けられる。第1ガード41Aによって受けられた熱媒体28の一部は、第1ガード41Aから跳ね返る。
そこで、この実施形態では、対向部材50の対向面50aを基板Wの上面に近接させた状態で加熱工程を実行する。対向部材50は、基板Wの上面を、第1ガード41Aから跳ね返った熱媒体28から保護する。したがって、パーティクル保持層29の表面への熱媒体28の付着を抑制することができるので、第1ガード41Aからの熱媒体28の跳ね返りに起因するパーティクルを抑制できる。
【0071】
さらに、この実施形態では、前述したように、気体供給ノズル60から対向部材50の対向面50aと基板Wの上面との間の空間に気体が供給される。対向部材50の対向面50aと基板Wの上面との間の空間に供給された気体は、基板Wの上面の中央領域から基板Wの上面の周縁に向けて移動する気流を形成する。基板Wの上面の中央領域から基板Wの上面の周縁に向けて移動する気流を形成することによって、第1ガード41Aから跳ね返った熱媒体28を第1ガード41Aに向けて押し戻すことができる。したがって、パーティクル保持層29の表面への熱媒体28の付着を一層抑制することができる。
【0072】
対向部材50の対向面50aと基板Wの上面との間の空間に供給される気体は、窒素ガスに限られない。対向部材50の対向面50aと基板Wの上面との間の空間に供給される気体は、不活性ガスであることが好ましく、窒素ガス以外の不活性ガスであってもよい。不活性ガスは、基板Wの上面およびパターンに対して不活性なガスのことであり、たとえばアルゴン等の希ガス類であってもよい。
【0073】
一定時間の加熱のあと、制御装置3は、バルブ26を閉じて、熱媒体供給ノズル24からの熱媒体の供給を停止させる。そして、基板Wの上面から、パーティクル保持層29を剥離して除去する除去工程が実行される(ステップS3)。
すなわち、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定の除去速度で回転させる。除去速度は、たとえば、500rpm〜800rpmである。
【0074】
制御装置3は、対向部材昇降機構52を制御して、対向部材50を上位置に配置する。そして、制御装置3は、バルブ60を閉じる。これにより、気体供給ノズル60からの気体の供給が停止される。そして、制御装置3は、第2のノズル移動機構15を制御して、剥離液供給ノズル6を、基板Wの上方の中央位置に配置する。そして、制御装置3は、バルブ20を閉じた状態を維持しながら、バルブ17、18を開く。これにより、
図5Dに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、剥離液供給ノズル6から、第1の剥離液としてのDIW31が供給される(DIW供給工程、ステップS3a)。基板Wの上面に供給されたDIW31は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行き渡り、基板Wの上面の周縁から排出される。
【0075】
次に、制御装置3は、第1の除去速度を維持してスピンベース9を回転させながら、バルブ17を閉じて、DIWの供給を停止したのち、バルブ20を開く。これにより、
図5Eに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、剥離液供給ノズル6から、第2の剥離液の一例としてのSC1液32が供給される(SC1液供給工程、ステップS3b)。基板Wの上面に供給されたSC1液32は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行き渡って、DIW31を置換して、SC1液32が、基板Wの上面の周縁から排出される。
【0076】
DIW31およびSC1液32(以下、両者を「剥離液」と総称する場合がある。)は、ともに、溶媒としてのPGEEとの相溶性を有する。しかも、感熱水溶性樹脂をその変質温度未満に加熱して形成されたパーティクル保持層29は、前述したように、水系の剥離液であるDIW31やSC1液32に対して難溶性ないし不溶性である。そのため、これらの剥離液は、パーティクル保持層29中に残留するPGEEとの相互作用によって、当該パーティクル保持層29を形成する溶質成分を溶解させることなく、パーティクル保持層29中に浸透する。そして、剥離液は、基板Wとの界面に達する。これにより、
図6Bに示すように、パーティクル30を保持したままのパーティクル保持層29が、基板Wの上面から浮いて剥離される。
【0077】
基板Wの上面から剥離したパーティクル保持層29は、基板Wの回転による遠心力の働きによって、剥離液とともに、基板Wの上面の周縁から排出される。すなわち、基板Wの上面から、剥離したパーティクル保持層29が除去される。
DIW31は、SC1液32よりも、剥離液としての効果は低い。しかし、DIW31は、SC1液32に先立って供給されて、パーティクル保持層29中に浸透することで、当該パーティクル保持層29中に残留するPGEEの少なくとも一部と置換する。そして、DIW31は、次工程で供給されるSC1液32の、パーティクル保持層29中への浸透を補助する働きをする。
【0078】
そのため、剥離液としては、SC1液32の供給に先立って、DIW31を供給するのが好ましいが、DIW31の供給工程(ステップS3a)は、省略してもよい。すなわち、剥離液としては、SC1液のみを用いてもよい。
第1の剥離液は、DIW31には限られず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(例えば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれであってもよい。第2の剥離液は、SC1液32には限られず、アンモニア水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級水酸化アンモニウムの水溶液、コリン水溶液等のアルカリ水溶液を用いることもできる。
【0079】
次に、制御装置3は、バルブ18およびバルブ20を閉じて、SC1液の供給を停止したのち、剥離液供給ノズル6を退避位置へ移動させる。スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定のリンス速度で回転させる。リンス速度は、たとえば、100rpm〜1000rpmである。
次に、制御装置3は、対向部材昇降機構52を制御して、対向部材50を、上位置から上位置と下位置との間の供給位置に移動させる。そして、制御装置3は、バルブ67を開く。これにより、
図5Fに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、リンス液供給ノズル65から、DIW31が、リンス液として供給される(リンス工程、ステップS4)。
【0080】
リンス液供給ノズル65からのリンス液の供給は、たとえば、供給位置に移動した後に開始される。リンス液供給ノズル65からのリンス液の供給は、対向部材50が上位置に位置する時点で開始されていてもよいし、対向部材50上位置から供給位置に移動している途中に開始されてもよい。
リンス液は、DIW31には限られず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(例えば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれであってもよい。
【0081】
供給されたDIW31は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行き渡る。その後、基板Wの上面の周縁から排出される。これにより、基板Wの上面に残留したSC1液32が、基板Wの上面から洗い流される。また、たとえば、先の工程において基板Wの上面から剥離したパーティクル保持層29の一部が、除去されずに残っていたとしても、DIW31によって、基板Wの上面から洗い流される。
【0082】
しかし、たとえば、先のDIW31の供給工程(ステップS3a)、およびSC1液32の供給工程(ステップS3b)の条件を調整して、当該両工程において、基板Wの上面から、パーティクル保持層29を十分に除去することもできる。その場合、DIW31の供給工程(ステップS4)は、省略されてもよい。
次に、制御装置3は、バルブ67を閉じて、リンス液供給ノズル65からのDIW31の供給を停止させる。
【0083】
そして、パーティクル保持層29を除去した後の基板Wの上面に残る残渣を除去する残渣除去工程が実行される(ステップS5)。
すなわち、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定の残渣除去速度で回転させる。残渣除去速度は、たとえば、数10rpm〜300rpmである。対向部材50の位置は、供給位置に維持される。そして、ガード昇降機構44が、第1ガード41Aを下位置に移動させ、第2ガード41Bを上位置に維持する。
【0084】
次に、制御装置3は、バルブ23を開く。これにより、
図5Gに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、残渣除去液供給ノズル7から残渣除去液33が供給される。
基板Wの上面に供給された残渣除去液33は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行きわたって、DIW31を置換する。そして、基板Wの上面に供給された残渣除去液33は、基板Wの上面に残るパーティクル保持層29の残渣を溶解したのち、基板Wの上面の周縁から排出される。
【0085】
残渣除去液33としては、変質前の感熱水溶性樹脂に対する溶解性を有する溶媒を用いることができる。溶媒としては、たとえば、イソプロピルアルコール(IPA)を用いることができる。IPAは、水との相溶性を有するため、残渣除去工程の開始時に基板Wの上面に残る、リンス液としてのDIWを、スムースに置換することができる。さらに、IPAは、揮発性を有するため、残渣除去工程後に速やかに、基板の上面から除去される。
【0086】
次に、制御装置3は、バルブ23を閉じて、残渣除去液供給ノズル7からの残渣除去液33の供給を停止させる。そして、制御装置3は、対向部材昇降機構52を制御して、対向部材50を供給位置から下位置に移動させる。そして、制御装置3は、バルブ60を開き、気体供給ノズル60からの気体の供給を開始する。そして、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定のスピンドライ速度で回転させる(ステップS6)。スピンドライ速度は、たとえば、500rpm〜1500rpmである。気体供給ノズル60からの気体の供給の開始と、基板回転速度の変更とは、たとえば同時に実行される。
【0087】
基板Wの回転によって残渣除去液33に遠心力が作用し、
図5Hに示すように、残渣除去液33は、基板Wの上面の周縁から排出されるとともに、基板Wの上面から揮発して除去される。スピンドライが実行されることによって、一連の洗浄工程が終了する。その後、制御装置3は、バルブ62を閉じ、気体供給ノズル60からの気体の供給を停止させる。
【0088】
なお、処理液に含まれる溶質としては、感熱水溶性樹脂以外に、たとえば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等を用いることもできる。
【0089】
溶媒としては、いずれかの樹脂を溶解して処理液を構成しうる任意の溶媒を用いることができる。とくに、剥離液との相溶性を有する溶媒を用いることが好ましい。
いずれの樹脂の場合も、剥離液としては、DIW等の水や、アルカリ水溶液などの、水系の剥離液を用いることができる。
残渣除去液としては、いずれかの樹脂に対する溶解性を有する任意の溶媒を用いることができる。残渣除去液としては、たとえばシンナー、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類等の有機溶媒、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性液を用いることができる。とくに、水系の剥離液との相溶性を有する溶媒を用いることが好ましい。
【0090】
図7は、Si基板上にSiO
2のパーティクルを付着させて基板洗浄を実施した際に、基板の上面に残留した、パーティクル保持層の残渣の個数を測定した結果を示すグラフである。左から順に、
図4に示した基板洗浄の各工程のうち、残渣除去工程を省略した場合、残渣除去工程を、10秒間、20秒間、および30秒間に亘って実施した場合の残渣の個数を示している。
【0091】
図7の結果から、残渣除去工程を実施することで、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを、大幅に抑制できることが判る。
図8は、Si基板上にSiO
2のパーティクルを付着させて基板洗浄を実施した際のパーティクル除去率(PRE)を測定した結果を示すグラフである。
図において左側は、
図4に示した基板洗浄の各工程を実施した場合、すなわち残渣除去を行った場合の、所定の粒径以上のパーティクルに関するPREを示している。また、右側は、基板洗浄の各工程のうち、残渣除去工程を省略した場合の、所定の粒径以上のパーティクルに関するPREを示している。
【0092】
いずれの場合も、高いPREが得られている。この結果から、残渣除去工程を実施した際に再放出されるパーティクルは、ごく微量である上、基板の上面に再付着しにくいため、残渣除去工程を実施しても、PREが低下するおそれのないことが判る。
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係る処理ユニット2Pの概略構成を示す模式的な断面図である。
図9では、今まで説明した部材と同じ部材には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する(後述する
図10〜
図12Bにおいても同様)。
【0093】
図9を参照して、処理ユニット2Pが第1実施形態に係る処理ユニット2(
図2参照)と主に異なる点は、第2実施形態に係る処理ユニット2Pが、対向部材50、残渣除去液供給ノズル7、気体供給ノズル60およびリンス液供給ノズル65の代わりに、移動ノズル70を含む点、およびヒータユニット100を含む点である。
移動ノズル70は、少なくとも水平方向に移動可能なノズルである。移動ノズル70は、基板Wの上面に残渣除去液を供給する残渣除去液供給ユニットとしての機能と、基板Wの上面に窒素ガス等の気体を供給する気体供給ユニットとしての機能とを有する。
【0094】
移動ノズル70は、第3のノズル移動機構80によって、たとえば、水平方向(回転軸線A1に垂直な方向)に移動される。移動ノズル70は、水平方向への移動によって、中央位置と、退避位置との間で移動させることができる。移動ノズル70は、中央位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心位置に対向する。移動ノズル70は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面に対向しない。基板Wの上面に対向しない退避位置とは、平面視においてスピンベース9の外方の位置である。
【0095】
移動ノズル70には、残渣除去液供給管71、第1気体供給管72A、第2気体供給管72Bおよび第3気体供給管72Cが接続されている。残渣除去液供給管71には、その流路を開閉するバルブ73が介装されている。気体供給管72A,72B,72Cには、それぞれ、その流路を開閉するバルブ74A,74B,74Cが介装されている。
移動ノズル70は、残渣除去液供給管71から供給される残渣除去液を、鉛直方向に沿って吐出する中心吐出口90を有している。移動ノズル70は、第1気体供給管72Aから供給される気体を、鉛直方向に沿って直線状に吐出する線状流吐出口91を有している。さらに、移動ノズル70は、第2気体供給管72Bから供給される気体を、水平方向に沿って移動ノズル70の周囲に放射状に吐出する水平流吐出口92を有している。また、移動ノズル70は、第3気体供給管72Cから供給される気体を、斜め下方向に沿って移動ノズル70の周囲に放射状に吐出する傾斜流吐出口93を有している。
【0096】
第1気体供給管72Aには、第1気体供給管72A内を流れる気体の流量を正確に調節するためのマスフローコントローラ75が介装されている。マスフローコントローラ75は、流量制御バルブを有している。また、第2気体供給管72Bには、第2気体供給管72B内を流れる気体の流量を調節するための流量可変バルブ76Bが介装されている。また、第3気体供給管72Cには、第3気体供給管72C内を流れる気体の流量を調節するための流量可変バルブ76Cが介装されている。さらに、気体供給管72A,72B,72Cには、それぞれ、異物を除去するためのフィルタ77A,77B,77Cが介装されている。
【0097】
この実施形態の複数のチャックピン8は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。また、開状態において、複数のチャックピン8は、基板Wの周端から離間して把持を解除する一方で、基板Wの周縁部の下面に接触して、基板Wを下方から支持する。処理ユニット2Pは、複数のチャックピン8を開閉駆動するチャックピン駆動機構108をさらに含む。チャックピン駆動機構108は、たとえば、スピンベース9に内蔵されたリンク機構109と、スピンベース9外に配置された駆動源110とを含む。駆動源110は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。
【0098】
ヒータユニット100は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット100は、基板Wの下面に下方から対向する対向面100aを有する。
ヒータユニット100は、プレート本体101と、複数の支持ピン102と、ヒータ103とを含む。プレート本体101は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。複数の支持ピン102は、プレート本体101の上面から突出している。プレート本体101の上面と、複数の支持ピン102の表面とによって対向面100aが構成されている。ヒータ103は、プレート本体101に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ103に通電することによって、対向面100aが加熱される。そして、ヒータ103には、給電線104を介して、ヒータ通電機構105から電力が供給される。
【0099】
ヒータユニット100は、スピンベース9の上方に配置されている。処理ユニット2は、ヒータユニット100をスピンベース9に対して相対的に昇降させるヒータ昇降機構106を含む。ヒータ昇降機構106は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。
ヒータユニット100の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸107が結合されている。昇降軸107は、スピンベース9の中央部に形成された貫通孔9aと、中空の回転軸10とを挿通している。昇降軸107内には、給電線104が通されている。
【0100】
ヒータ昇降機構106は、昇降軸107を介してヒータユニット100を昇降させることによって、下位置および上位置の間の任意の中間位置にヒータユニット100を配置できる。ヒータユニット100が下位置に位置するとき、対向面100aと基板Wの下面との間の距離は、たとえば、15mmである。ヒータユニット100が下位置から上位置に移動する際、ヒータユニット100が上位置に達する前に対向面100aが基板Wの下面に接触する。
【0101】
ヒータユニット100の対向面100aが基板Wの下面に当接するときのヒータユニット100の位置を当接位置という。複数のチャックピン8が開状態であるとき、ヒータユニット100は、当接位置よりも上方に移動することができる。ヒータユニット100が当接位置よりも上方に位置するとき、基板Wは、ヒータユニット100によって持ち上げられる。ヒータユニット100は、当接位置よりも上方または当接位置に位置するとき、接触状態で基板Wを加熱する。
【0102】
ヒータユニット100は、当接位置よりも下方に位置するとき、対向面100aからの輻射熱によって基板Wを加熱する。基板Wにヒータユニット100が近いほど、基板Wに対する加熱が強められる。処理ユニット2Pの熱媒体供給ノズル24は、中空の昇降軸107を挿通し、さらに、ヒータユニット100を貫通している。
図10は、第2実施形態に係る処理ユニット2Pの電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る処理ユニット2Pの制御装置3は、第1実施形態と同様に、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。制御装置3は、スピンモータ11、チャックピン駆動機構108、ノズル移動機構12,15,80、ヒータ通電機構105、ヒータ昇降機構106、ガード昇降機構44、および、バルブ類14,17,18,20,26,73,74A,74B,74C,75,76B,76Cを制御するようにプログラムされている。
【0103】
第2実施形態に係る処理ユニット2Pは、第1実施形態に係る処理ユニット2と同様の基板洗浄(
図4参照)を実施することが可能である。ただし、第2実施形態に係る処理ユニット2Pによる基板洗浄における各部材の挙動は、第1実施形態に係る処理ユニット2における各部材の挙動と異なるため、
図11A〜
図11Hを用いて、第2実施形態に係る処理ユニット2Pによる基板洗浄の詳細について説明する。
図11A〜
図11Hは、処理ユニット2Pによる基板洗浄の一例の様子を説明するための図解的な断面図である。基板処理の開始時に、制御装置3は、ヒータ昇降機構106を制御して、ヒータユニット100を下位置に配置する。
【0104】
処理ユニット2による基板洗浄では、まず、処理液供給工程が実行される(ステップS1)。処理液供給工程では、まず、制御装置3は、スピンモータ11を駆動し、スピンベース9を回転させて、基板Wの回転を開始する。処理液供給工程では、スピンベース9は、基板回転速度である所定の処理液供給速度で回転される。処理液供給速度は、たとえば、10rpm〜数10rpmである。
【0105】
次に、制御装置3は、第1のノズル移動機構12を制御して、処理液供給ノズル5を、基板Wの上方の中央位置に配置する。そして、制御装置3は、バルブ14を開く。これにより、
図11Aに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、処理液供給ノズル5から処理液27が供給される。基板Wの上面に供給された処理液27は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行きわたる。
【0106】
一定時間の処理液供給の後、処理液を固化または硬化させて、基板Wの上面にパーティクル保持層を形成する成膜工程が実行される(ステップS2)。成膜工程では、まず、制御装置3は、バルブ14を閉じて、処理液供給ノズル5からの処理液27の供給を停止させる。そして、制御装置3は、処理液供給ノズル5を退避位置へ移動させる。
次いで、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定のスピンオフ速度で回転させる(スピンオフ工程、ステップS2a)。スピンオフ速度は、たとえば、300rpm〜1500rpmである。これにより、
図11Bに示すように、まず、基板Wの上面に供給された処理液27が、基板Wの上面の周縁から排出され、次いで、揮発性の溶剤の揮発が進行する。
【0107】
次に、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定の加熱時速度で回転させる。加熱時速度は、たとえば、100rpm〜1500rpmである。そして、
図11Cに示すように、制御装置3は、ヒータ昇降機構106を制御して、ヒータユニット100を下位置から上昇させて、下位置よりも基板Wに近接した近接位置にヒータユニット100を配置する。これにより、ヒータユニット100による基板Wの加熱が強められる(加熱工程、ステップS2b)。ヒータユニット100が近接位置に位置するとき、対向面100aは、基板Wの下面から所定距離(たとえば4mm)だけ下方に離隔している。
【0108】
基板Wの回転速度の加熱時速度への変更と、ヒータユニット100の近接位置への移動とは、たとえば、同時に開始されてもよい。
そして、揮発性の溶剤の揮発がさらに進行するとともに、処理液27が固化または硬化する。これにより、溶質成分からなる固体状の膜、すなわちパーティクル保持層29が形成される。
【0109】
一定時間の加熱のあと、基板Wの上面から、パーティクル保持層29を剥離して除去する除去工程が実行される(ステップS3)。
詳しくは、制御装置3は、ヒータ昇降機構106を制御して、ヒータユニット100を近接位置から下位置に移動させる。そして、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定の除去速度で回転させる。除去速度は、たとえば、500rpm〜800rpmである。そして、制御装置3は、第2のノズル移動機構15を制御して、剥離液供給ノズル6を、基板Wの上方の中央位置に移動させる。
【0110】
剥離液供給ノズル6が基板Wの上方の中央位置に到達した後に、制御装置3は、バルブ20を閉じた状態を維持しながら、バルブ17、18を開く。これにより、
図11Dに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、剥離液供給ノズル6から、第1の剥離液としてのDIW31が供給される(DIW供給工程、ステップS3a)。基板Wの上面に供給されたDIW31は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行き渡り、基板Wの上面の周縁から排出される。
【0111】
基板Wの回転速度の除去速度への変更と、剥離液供給ノズル6の中央位置への移動と、ヒータユニット100の下位置への移動とは、同時に開始されてもよい。
次に、制御装置3は、第1の除去速度を維持してスピンベース9を回転させながら、バルブ17を閉じて、DIWの供給を停止したのち、バルブ20を開く。これにより、
図11Eに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、剥離液供給ノズル6から、第2の剥離液の一例としてのSC1液32が供給される(SC1液供給工程、ステップS3b)。基板Wの上面に供給されたSC1液32は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行き渡って、DIW31を置換して、基板Wの上面の周縁から排出される。
【0112】
基板Wの上面から剥離したパーティクル保持層29は、基板Wの回転による遠心力の働きによって、剥離液とともに、基板Wの上面の周縁から排出される。すなわち、基板Wの上面から、剥離したパーティクル保持層29が除去される。
次に、制御装置3は、バルブ20を閉じて、SC1液の供給を停止した後、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定のリンス速度で回転させる。リンス速度は、たとえば、100rpm〜1000rpmである。そして、制御装置3は、バルブ17を開く。これにより、
図11Fに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、剥離液供給ノズル6から、リンス液としてのDIW31が供給される(リンス工程、ステップS4)。
【0113】
供給されたDIW31は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行き渡り、基板Wの上面の周縁から排出される。これにより、基板Wの上面に残留したSC1液32が、基板Wの上面から洗い流される。また、たとえば、先の工程において基板Wの上面から剥離したパーティクル保持層29の一部が、除去されずに残っていたとしても、DIW31によって、基板Wの上面から洗い流される。
【0114】
しかし、たとえば、先のDIW31の供給工程(ステップS3a)、およびSC1液32の供給工程(ステップS3b)の条件を調整して、当該両工程において、基板Wの上面から、パーティクル保持層29を十分に除去することもできる。その場合、DIW31の供給工程(ステップS4)は、省略されてもよい。
そして、パーティクル保持層29を除去した後の基板Wの上面に残る残渣を除去する残渣除去工程が実行される(ステップS5)。
【0115】
すなわち、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定の残渣除去速度で回転させる。残渣除去速度は、たとえば、数10rpm〜300rpmである。
次に、制御装置3は、ヒータ昇降機構106を制御して、ヒータユニット100を下位置から近接位置に移動させる。制御装置3は、バルブ17,18を閉じて剥離液供給ノズル6からのDIWの供給を停止させる。そして、制御装置3は、第2のノズル移動機構15を制御して、剥離液供給ノズル6を退避位置に移動させる。
【0116】
基板Wの回転速度の除去速度への変更と、剥離液供給ノズル6の退避位置への移動と、ヒータユニット100の近接位置への移動とは、たとえば、同時に開始される。
次に、制御装置3は、第3のノズル移動機構80を制御して、移動ノズル70を、基板Wの上方の中央位置に配置する。移動ノズル70が中央位置に到達した後に、制御装置3は、バルブ73を開く。これにより、
図11Gに示すように、回転状態の基板Wの上面に向けて、移動ノズル70から残渣除去液33が供給される。
【0117】
基板Wの上面に供給された残渣除去液33は、遠心力の働きによって、基板Wの上面の略全面に行き渡って、DIW31を置換する。そして、基板Wの上面に供給された残渣除去液33は、基板Wの上面に残るパーティクル保持層29の残渣を溶解したのち、基板Wの上面の周縁から排出される。
また、制御装置3は、バルブ74Bを開く。これにより、これにより、移動ノズル70の水平流吐出口92から窒素ガス等の気体が放射状に吐出され、基板Wの上面が水平気流95で覆われる。水平流吐出口92からの窒素ガスの吐出流量は、たとえば100リットル/分程度である。基板Wの上面が窒素ガスの水平気流で覆われているので、処理ユニット2P内の各部材から跳ね返った液滴や雰囲気中のミスト等が基板Wの上面に付着することを抑制または防止できる。
【0118】
次に、制御装置3は、バルブ73を閉じて、移動ノズル70からの残渣除去液33の供給を停止させる。その後、制御装置3は、第3のノズル移動機構80を制御して、移動ノズル70を基板Wの上面に近接させる。この状態で、制御装置3は、バルブ74Aを開き、線状流吐出口91から基板Wの中心に向けて垂直に、たとえば15リットル/分で気体の線状気流96を吹き付ける。そして、制御装置3は、ヒータ昇降機構106を制御して、ヒータユニット100を近接位置から下位置に移動させる。そして、制御装置3は、スピンモータ11を制御して、スピンベース9を、基板回転速度である所定のスピンドライ速度で回転させる(ステップS6)。スピンドライ速度は、たとえば、800rpmである。
【0119】
基板Wの回転によって残渣除去液33に遠心力が作用し、
図11Hに示すように、残渣除去液33は、基板Wの上面の周縁から排出されるとともに、基板Wの上面から揮発して除去される。スピンドライが実行されることによって、一連の洗浄工程が終了する。
残渣除去液33を基板W上から排除する際、
図11Hに二点鎖線で示すように、制御装置3は、バルブ74Cを開き、傾斜流吐出口93から気体を吐出させてもよい。傾斜流吐出口93から吐出される気体が形成する傾斜気流97は、基板Wの上面にぶつかって、基板Wの上面に平行な外方へと向きを変える。
【0120】
その後、制御装置3は、バルブ74A,74Bを閉じ、移動ノズル70からの気体の供給を停止させる。
残渣除去工程の後で、かつ、スピンドライ工程の前に、
図12Aおよび
図12Bに示すように、残渣除去液33を基板W上から排除する際、残渣除去液33の液膜の中央領域に穴160を形成し、この穴160を広げるようにして、残渣除去液33を基板W上から排除してもよい。
【0121】
詳しくは、
図12Aを参照して、線状流吐出口91から基板Wの中心に向けて垂直に線状気流96を吹き付けることによって、残渣除去液33の液膜の中央領域に穴160が形成される(穴開け工程)。
図12Bを参照して、線状気流96は、基板Wの上面にぶつかって、基板Wの上面に平行な外方へと向きを変える。そのため、線状気流96による吹き付け力、および、基板Wの回転による遠心力のうちの少なくとも一方によって、穴160が、基板Wの外周に向かって広げられる(穴広げ工程)。残渣除去液33の液膜を移動させることによって、残渣除去液33が基板W外に排除される。穴開け工程および穴広げ工程において、ヒータユニット100は、下位置(
図12Aおよび
図12Bに実線で示す位置)に位置していてもよいし、近接位置(
図12Aおよび
図12Bに二点鎖線で示す位置)に位置してもよい。
【0122】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、処理液を加熱するために、基板Wの裏面へ熱媒体28を供給する代わりに、ランプや電熱ヒータなどの熱源からの熱を利用してもよい。基板Wの加熱は、専用のチャンバ内で実施してもよい。さらには、パーティクル保持層29の成膜、剥離、および残渣除去の各工程は、それぞれ異なるチャンバ内で実施してもよい。
【0123】
処理液、剥離液および残渣除去液は、たとえば、ライン状に配列された複数のノズル穴から、基板Wの上面の略全面にほぼ同時に供給するようにしてもよい。
基板洗浄装置1による洗浄方法の各工程には、実施の形態で示した工程に、他の工程が追加されてもよい。
溶質としては、前述した各種樹脂以外にも、たとえば、樹脂以外の有機化合物や、有機化合物と他の混合物を用いてもよい。あるいは、有機化合物以外の化合物であってもよい。
【0124】
剥離液としては、水系でない他の剥離液を用いることもできる。その場合には、当該剥離液に難溶性ないし不溶性のパーティクル保持層29を形成する溶質、剥離液に対して相溶性を有し、溶質に対して溶解性を有する溶媒、剥離液に対して相溶性を有し、溶質に対して溶解性を有する残渣除去液等を適宜、組み合わせればよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で、種々の設計変更を施すことが可能である。