特許第6982486号(P6982486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産コパル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6982486-リニア振動モータ 図000002
  • 特許6982486-リニア振動モータ 図000003
  • 特許6982486-リニア振動モータ 図000004
  • 特許6982486-リニア振動モータ 図000005
  • 特許6982486-リニア振動モータ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982486
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】リニア振動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/02 20060101AFI20211206BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H02K33/02 A
   B06B1/04 S
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-239724(P2017-239724)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2019-106837(P2019-106837A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−169544(JP,A)
【文献】 特開2016−208607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/00−33/18
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、前記固定子に所定のクリアランスを置いて対向する可動子とを備え、前記固定子と前記可動子のうちの一方に設けられたコイルとその他方に設けられたマグネットとの間の磁気力により前記可動子を前記固定子に沿って振動させるようにしたリニア振動モータであって、前記可動子を支持する弾性体を備え、この弾性体は、前記可動子が初期位置から移動する際に前記固定子から離れる方向へ傾斜して弾性変形するように設けられていることを特徴とするリニア振動モータ。
【請求項2】
前記弾性体は、前記傾斜の方向に沿った姿勢で、その一端側が前記可動子に止着されるとともに、他端側が前記固定子側の不動部位に止着されていることを特徴とする請求項1記載のリニア振動モータ。
【請求項3】
前記弾性体は、前記可動子の振動方向の一端面に沿って設けられた本体片部と、この本体片部の一端側から延設された可動側止着片部と、同本体片部の他端側から延設された固定側止着片部とを有する板バネであり、前記傾斜の方向に沿った姿勢で、前記可動側止着片部を前記可動子に止着するとともに、前記固定側止着片部を前記固定子側の不動部位に止着していることを特徴とする請求項1記載のリニア振動モータ。
【請求項4】
前記マグネットは、コイル対向面における振動方向の一方側に一方の磁極を有するとともにその他方側に反対向きの磁極を有し、
前記コイルは、前記一方の磁極に対向する片半部と、前記反対向きの磁極に対向する他半部とを有し、前記片半部と前記他半部は、振動方向に交差する電流方向が逆になることを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載のリニア振動モータ。
【請求項5】
前記固定子に前記コイルを設けるとともに、前記可動子には前記コイルの一端面に対向するように前記マグネットを設けたことを特徴とする請求項1〜4何れか1項記載のリニア振動モータ。
【請求項6】
請求項1〜5何れか1項記載のリニア振動モータを備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア振動モータ、及びこのリニア振動モータを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動モータ(或いは振動アクチュエータ)は、携帯電子機器に内蔵され、着信やアラームなどの信号発生等を振動によって携帯者に伝える装置として広く普及しており、携帯者が身につけて持ち運ぶウエアラブル電子機器においては、不可欠な装置になっている。また、振動モータは、タッチパネルなどのヒューマン・インターフェイスにおけるハプティクス(皮膚感覚フィードバック)を実現する装置である。
【0003】
このような振動モータについて各種の形態が開発されている中で、可動子の直線的な往復振動によって比較的大きな振動を発生させることができるリニア振動モータが注目されている。
従来のリニア振動モータには、例えば特許文献1に記載されるように、錘体及び二つのマグネットを一体的に備えた可動子と、この可動子を振動可能に支持する板バネと、可動子の振動方向に対する交差方向の一方側でマグネットに対向するコイルとを具備し、コイルに通電した際のローレンツ力により、可動子を往復振動させるようにしたものがある。前記二つのマグネットは、扁平な直方体状に構成され、その一方のマグネットの平面側がN極であるのに対し、他方のマグネットの同平面側がS極になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−18958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のリニア振動モータでは、振動に伴う可動子の移動によりマグネットがコイルに対し偏った位置になると、コイルの電流方向に対し、この電流方向に直交するマグネットの磁力線方向が変わるため、振動方向に対する交差方向のローレンツ力が発生し、このローレンツ力により可動子が前記交差方向へ振れて、静音性や耐久性を損ねてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は以下の構成を具備するものである。
固定子と、前記固定子に所定のクリアランスを置いて対向する可動子とを備え、前記固定子と前記可動子のうちの一方に設けられたコイルとその他方に設けられたマグネットとの間の磁気力により前記可動子を前記固定子に沿って振動させるようにしたリニア振動モータであって、前記可動子を支持する弾性体を備え、この弾性体は、前記可動子が初期位置から移動する際に前記固定子から離れる方向へ傾斜して弾性変形するように設けられていることを特徴とするリニア振動モータ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るリニア振動モータの一例を示す分解斜視図である。
図2】同リニア振動モータについてカバー部材及びヨークを外した状態を示す平面図である。
図3】同リニア振動モータを短手方向の中央部で切断した断面図である。
図4】同リニア振動モータの作用を説明する模式図であり、(a)は初期位置を示し、(b)は可動子が振動に伴い一方へ偏った状態を示す。
図5】電子機器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
リニア振動モータ1は、図1図4に示すように、固定子10と、固定子10に所定のクリアランスcを置いて対向する可動子20と、可動子20を支持する弾性体30とを備え、固定子側のコイル12と可動子側のマグネット22との間の磁気力により可動子を一軸方向へ直線的に往復振動させる。
【0010】
固定子10は、平板状の基部11と、この基部11上に固定されたコイル12と、コイル12及び可動子20等を覆うようにして基部11上に固定されたカバー部13とを一体的に具備している。
【0011】
基部11は、後述するマグネット22の吸引力が作用しないように非磁性の硬質材料から形成され、図示例によれば矩形平板状を呈する。
【0012】
コイル12は、被覆された電線を、マグネット22のコイル対向面に沿って扁平空芯状に巻回したものであり、その厚み方向の一方の端面を、基部11面に固定している。言い換えると、コイル12は、前記電線を、振動方向に沿って扁平空芯状に巻回したものである。
このコイル12は、マグネット22のコイル対向面における一方の磁極(N極)に対向する片半部12aと、同コイル対向面における他方の磁極(S極)に対向する他半部12bとを、間隔を置いて略線対称に配置している。
【0013】
片半部12aと他半部12bでは、振動方向に交差する電流方向が逆になる。すなわち、図3中において、片半部12aの電流方向が手前から奥へ向かう場合、他半部12bの電流方向は奥から手前へ向かう。
【0014】
カバー部13は、被磁性の硬質材料により下方を開口した箱状に形成され、矩形状の天壁部13aと、この天壁部13aの両側端から下方へ突出する側壁部13b,13cと、天壁部13aの前後端部から下方へ突出する前壁部13d及び後壁部13eとを有する。このカバー部13は、基部11の周端側に止着されている。
【0015】
また、可動子20は、錘体21と、錘体21の中央側に固定されたマグネット22と、マグネット22における反コイル側(言い換えれば、コイル側に対する反対側)に固定されたヨーク23とを一体的に具備している。
【0016】
錘体21は、比重の高い金属材料(例えば、タングステン)からなり、図示例によれば振動方向へ長尺な略直方体状に形成される。この錘体11の平面視中央側には、厚み方向の一方側と他方側を開口した中空部21aが、振動方向に間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)設けられる。
【0017】
マグネット22は、コイル対向面における振動方向の一方側に一方の磁極を有するとともにその他方側に反対向きの磁極を有するものであればよく、具体例としては、図4に示すように、同形状かつ同材質で磁極が逆向きの二つのマグネット片22a,22bから構成される。
一方のマグネット片22aは、N極をコイル12の片半部12aに対向させて錘体21の一方の中空部21aに嵌め合わせられ、他方のマグネット片22bは、S極のコイル12の他半部12bに対向させて同錘体21の他方の中空部21aに嵌め合わせられている。
【0018】
ヨーク23は、平板状の磁性材であり、二つのマグネット片22a,22bにおける反コイル側の面に接着固定され、各マグネット22a,22bの磁力を増大する。
【0019】
弾性体30は、可動子20における振動方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。
各弾性体30は、可動子20が振動に伴って初期位置から離れる際の初期のローレンツ力L1の方向(図示のX方向)に対し、固定子10(コイル12)から離れる方向へ傾斜して弾性変形するように、前記傾斜の方向に沿った姿勢(図3及び図4の一例によれば、角度α傾いた姿勢)で、その一端側が可動子20に止着されるとともに、他端側が固定子10側の不動部位に止着されている(図3参照)。
【0020】
詳細に説明すれば、各弾性体30は、可動子20の振動方向の一端側をコ字状に覆う板バネであり、可動子20の振動方向の一端面に沿って延設された本体片部31と、この本体片部31の一端側から延設された可動側止着片部32と、同本体片部31の他端側から延設された固定側止着片部33とを有し、角度α傾いた姿勢で、可動側止着片部32を可動子20の一側面に止着するとともに、固定側止着片部33をカバー部13の側壁部13b(又は13c)に止着している。
【0021】
次に上記構成のリニア振動モータ1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図4(a)(b)は、リニア振動モータ1が、振動方向に沿う一方向へ移動する際の作用を模式的に示している。
先ず、コイル12が通電されていない初期状態では、可動子20は、両側の弾性体30により略均等に付勢され、コイル12の略中央に位置する。
【0022】
前記初期状態において、コイル12に交流電力が供給されると、コイル12とマグネット22との間の磁気作用により、可動子20が往復振動する。
詳細に説明すれば、図4(a)に示すように、コイル12に一方向の電流が流れた際、コイル12の片半部12aと他半部12bにおける電流の向きに対し、それぞれ、マグネット片22a,22bのコイル厚み方向の磁力線M1が略直交するため、可動子20には、コイル12端面に略平行する方向(図示例によればX方向)のローレンツ力L1が発生する。したがって、可動子20は、ローレンツ力L1の方向へ移動を開始する。
なお、同様にコイル12の片半部12aと他半部12bにおける電流の向きに対し、二つのマグネット片22a,22bの間のコイル端面に沿う方向の磁力線M2が略直交するため、可動子20には、コイル12端面に交差してコイル12へ近づく方向(図示例によればZ方向に対する反対方向)のローレンツ力L2とコイル12の端面に交差してコイル12から離れる方向のローレンツ力L3も発生する。
【0023】
図4(b)に示すように、可動子20が初期位置から前方(X方向)へ離れた状態では、二つのマグネット片22a,22bの間の部分が、コイル12の他半部12bに対向する。このため、コイル12の他半部12bにおける電流の向きに対し、二つのマグネット片22a,22bの間のコイル端面に沿う方向の磁力線M2が略直交し、可動子20には、コイル12端面に交差してコイル12へ近づく方向(図示例によればZ方向に対する反対方向)のローレンツ力L2が発生する。
【0024】
また、可動子20が前方(X方向)へ移動すると、前方側の弾性体30が、前方斜め上方へ収縮しようとするため、前方へ移動する可動子20には、固定子10から離れるように傾斜する方向の力E(図4参照)も作用する。
詳細に説明すれば、可動子20が前方へ移動する際、図2に示すように、本体片部31と可動側止着片部32の間の角度が広がりながら同本体片部31と固定側止着片部33の間の角度が狭まり、これに伴い、本体片部31は、接続部分30b側を支軸にして回動する。この際、前記支軸を含む弾性体30全体が角度α傾いているため、接続部分30a側は、回動しながら固定子10から離れようとする。このため、可動子20には、Z方向寄りに傾斜した力E(図4参照)が作用し、この力Eとローレンツ力L2が相殺される。
【0025】
なお、可動子20が前方(図4によれば右方向)へ移動する際、前側の弾性体30は、Z軸方向の弾性変形により傾斜角度αが若干大きくなる。また、後側(図4によれば左側)の弾性体30は、Z軸方向の弾性変形により傾斜角度αが若干小さくなる。このため、可動子20は、コイル12の端面に対し略平行に移動する。
【0026】
よって、上記構成のリニア振動モータ1によれば、上記したローレンツ力L2と力Eの相殺により、可動子10が振動方向に対し交差方向へ振れるのを抑制して、可動子10をスムーズに直線状に往復振動させることができ、ひいては、可動子10の動作を安定させて、静音化することができる。
【0027】
次に、リニア振動モータ1を備えた電子機器について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係るリニア振動モータ1を備えた電子機器として、携帯情報端末100を例示している。
この携帯情報端末100は、外部信号の受信や、タッチ操作パネル(タッチディスプレイを含む)のタッチ操作等に応じてリニア振動モータ1を振動させるように構成され、リニア振動モータ1の振動時のノイズや騒音等を効果的に低減することができる。
【0028】
なお、リニア振動モータ1が搭載される電子機器の他例としては、ウェアラブルコンピュータや、タブレットパソコン、ゲーム機等、図示例以外のものとすることも可能である。
【0029】
また、上記実施の形態によれば、特に好ましい一例として弾性体30をコ字状の板バネとしたが、この弾性体30の他例としては、一端側を弾性体30の振動方向の端面に止着するとともに他端側を固定子10側の不動部位に止着して弾性的に撓む板バネ等、図示例以外の構成の板バネとすることも可能である。
さらに、弾性体30の他例としては、コイルスプリングや、ゴム等の弾性材料を用いた態様とすることも可能である。
【0030】
また、上記実施の形態によれば、マグネット22を二つのマグネット片22a,22bから構成したが、他例としては、マグネット22を単数又は3以上のマグネット片から構成した態様とすることも可能である。
【0031】
また、上記実施の形態によれば、固定子10側にコイル12を設けるとともに可動子20側にマグネット22を設けたが、他例としては、固定子側にマグネットを設けるとともに可動子側にコイルを設けた態様とすることも可能である。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1:リニア振動モータ
10:固定子
11:基部
12:コイル
13:カバー部
20:可動子
21:錘体
22:マグネット
22a,22b:マグネット片
23:ヨーク
30:弾性体
31:本体片部
32:可動側止着片部
33:固定側止着片部
c:クリアランス
100:携帯情報端末(電子機器)
図1
図2
図3
図4
図5