特許第6982488号(P6982488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982488
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】口唇化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20211206BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20211206BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/73
   A61K8/891
   A61Q1/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-243440(P2017-243440)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-108306(P2019-108306A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 研人
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−017057(JP,A)
【文献】 特表平11−509177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:(A)油性固化剤及び(B)25℃で液状の不揮発性油を含有する中間組成物(1)を80℃以上、150℃以下で加熱混合する工程、
工程2:工程1で得られた中間組成物(1)を、5℃以上、45℃以下に冷却する工程、
工程3:工程2で得られた中間組成物(1)に、5℃以上、45℃以下で、(C)炭素数8〜16の揮発性炭化水素油を含有する中間組成物(2)を添加、混合する工程
を含む非固形状口唇化粧料の製造方法。
【請求項2】
成分(A)の油性固化剤が、25℃で固形のワックス及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1記載の口唇化粧料の製造方法。
【請求項3】
口唇化粧料中、成分(A)の含有量が0.5〜25質量%、成分(B)の含有量が5〜90質量%である請求項1又は2記載の口唇化粧料の製造方法。
【請求項4】
口唇化粧料中、成分(C)の含有量が0.5〜30質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の口唇化粧料の製造方法。
【請求項5】
工程3において、中間組成物(1)に、中間組成物(2)を添加し、5分以上120分以下混合する請求項1〜のいずれか1項記載の口唇化粧料の製造方法。
【請求項6】
工程3において、中間組成物(1)に、中間組成物(2)を添加、混合した後、5℃以上、45℃以下の温度領域で混合する請求項1〜のいずれか1項記載の口唇化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口唇化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口唇化粧料では、滑らかな使用感で、化粧持ちに優れるものが求められている。
例えば、特許文献1には、特定のアクリル系共重合体、揮発性油剤及び着色剤を含有する口唇化粧料が、経時での色持ちと二次付着防止効果に優れ、ツヤ感、負担感のなさ、なめらかな使用感に優れたものであることが記載されている。また、特許文献2には、特定のパルミチン酸デキストリン、揮発性炭化水素油を含有し、充填物押出容器に充填収納して用いる油性化粧料が、滑らかな使用感で、化粧持ち、温度安定性に優れ、容器からの吐出性が良好であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−202527号公報
【特許文献2】特開2014−080389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の口唇化粧料では、油性固化剤の結晶を形成するため、化粧チップへの付着性に劣り、塗布時にムラ付きしやすいという使用時の課題があった。また、塗布時の伸びが重く、唇上で上滑り感や乾燥感を感じることが多いという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、(A)油性固化剤及び(B)不揮発性油を含有する中間組成物に、(C)揮発性炭化水素油を混合することで、油性固化剤の結晶を微細に分散させることができ、初期使用時の化粧チップへの取れ性に優れ、塗布時になめらかな感触で、塗布後の乾燥感を抑え、密着感のある仕上がりを実現でき、塗布した直後から唇に均一な保護膜を感じられる口唇化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、
工程1:(A)油性固化剤及び(B)25℃で液状の不揮発性油を含有する中間組成物(1)を80℃以上で加熱混合する工程、
工程2:工程1で得られた中間組成物(1)を、45℃以下に冷却する工程、
工程3:工程2で得られた中間組成物(1)に、45℃以下で、(C)揮発性炭化水素油を含有する中間組成物(2)を添加、混合する工程
を含む口唇化粧料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、初期使用時に化粧チップへの取れ性に優れ、塗布時になめらかな感触で、塗布後の乾燥感を抑え、密着感のある仕上がりを実現でき、塗布した直後から唇に均一な保護膜を感じられる口唇化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、工程1は、(A)油性固化剤及び(B)25℃で液状の不揮発性油を含有する中間組成物(1)を80℃以上で加熱混合する工程である。
成分(A)の油性固化剤としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、25℃で固形のワックス、デキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましい。
25℃で固形のワックスにおいて、25℃で固形とは、25℃において固体の性状を示し、融点が60℃以上のものである。
【0009】
かかるワックスとしては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、合成炭化水素ワックス等の炭化水素系ワックス;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、木ロウ、サンフラワーワックス、水添ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;炭素数20〜55のアルキル基で変性されたジメチルシリコーンとして、具体的には、アルキルメチコンワックス、アルキルジメチコンワックス、アルキル変性レジンワックス等のシリコーンワックス、フッ素系ワックス、合成ミツロウ等の合成ワックス;脂肪酸、高級アルコール及びこれらの誘導体が挙げられる。
なかでも、油の染み出しを抑制し、塗布後の唇の潤いを守り、密着感のある仕上がりを与える点から、炭化水素系ワックス、シリコーンワックスを1種又は2種以上含むことが好ましく、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、炭素数20〜55のアルキル基で変性されたジメチルシリコーンを1種又は2種以上含むことがより好ましい。
【0010】
これらのワックスは、油の染み出しを抑制し、塗布時になめらかな感触を与える点から、融点60〜140℃であるのが好ましく、融点60〜120℃がより好ましく、融点60〜110℃がさらに好ましい。
本発明において、融点は、JIS K2235-1991に規定されている融点の試験方法に従い測定される値である。
【0011】
また、25℃で固形のワックスは、油の染み出しを抑制し、塗布後の唇の潤いを守り、密着感のある仕上がりを与える点から、25℃での針入度が1以上、150以下であるのが好ましく、2〜110がより好ましい。
ここで、針入度は、25±0.1℃に保ったワックスの試料に、規定の針(針の質量2.5±0.02g、針保持具の質量47.5±0.02g、おもりの質量50±0.05g)が、5秒間に針入する長さを測定し、その針入距離(mm)を10倍した値を針入度とするものであり、JIS K−2235−5.4(1991年)に準じて測定した値である。
【0012】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、油の染み出しを抑制し、塗布時になめらかな感触を与える点から、脂肪酸が炭素数14〜18であるのが好ましい。具体的には、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン等が挙げられる。なかでも、パルミチン酸デキストリンがより好ましい。
デキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば、パルミチン酸デキストリン(千葉製粉社製、商品名:レオパールKL2)等の市販品を用いることができる。
【0013】
成分(A)は、1種又は2種以上用いることができ、含有量は、適度な硬さを付与し、油の染み出しを抑制、塗布後の唇の潤いを守る点から、口唇化粧料中に0.5質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上がより好ましく、9質量%以上がさらに好ましく、25質量%以下が好ましく、22質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)の含有量は、口唇化粧料中に0.5〜25質量%が好ましく、5〜22がより好ましく、9〜20質量%がさらに好ましい。
【0014】
成分(B)は、25℃で液状の不揮発性油である。25℃で液状とは、25℃において流動性を有するもので、ペースト状のものも含まれる。また、不揮発性とは、油剤1gを直径48mmのガラスシャーレに広げ、25℃、常圧で24時間放置後の質量減少率が1%以下のものをいう。
成分(B)の25℃で液状の不揮発性油としては、通常の化粧料に用いられるもので、炭化水素油、植物油、動物油、エステル油、高級アルコール油、シリコーン油、フッ素系油等の油剤が用いられる。
【0015】
具体的には、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ミネラルオイル、ポリブテン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、スクワレン、ペトロラタム等の直鎖又は分岐の炭化水素油;アボガド油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、パーム油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、ヒマワリ油、ツバキ油、トウモロコシ油等の植物油;液状ラノリン等の動物油;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸オレイル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソステアリル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、メトキシケイ皮酸オクチル、酢酸トコフェロール、炭酸プロピレン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸プロパンジオール、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジ(カプリン酸/カプリル酸)プロパンジオール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、テトライソステアリン酸ポリグリセリル−2、オクタカプリル酸ポリグリセリル−6、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパンオリゴエステル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、イソステアリン酸トレハロースエステルズ、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、フィトステロール脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール等のエステル油;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等の高級アルコール;ジフェニルジメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素系油等が挙げられる。
【0016】
成分(B)としては、炭化水素油、エステル油、高級アルコールを1種又は2種以上含むことが好ましく、ミネラルオイル、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、オクチルドデカノールを1種又は2種以上含むことがより好ましい。
【0017】
成分(B)は、1種又は2種以上用いることができ、含有量は、塗布時になめらかな感触を与える点から、口唇化粧料中に5質量%以上であるのが好ましく、50質量%以上がより好ましく、64質量%以上がさらに好ましく、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。また、成分(B)の含有量は、口唇化粧料中に5〜90質量%が好ましく、50〜85がより好ましく、64〜80質量%がさらに好ましい。
【0018】
工程1においては、成分(A)及び(B)を含有する中間組成物(1)を80℃以上で加熱混合する。
中間組成物(1)は、成分(A)及び(B)以外に通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。
かかる成分として、粉体を含有するのが好ましい。粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、体質顔料、着色顔料、光輝性顔料等を用いることができる。
体質顔料としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機顔料及びこれらの複合粉体が挙げられる。
【0019】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;更にカーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β−カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素などが挙げられる。
【0020】
光輝性顔料としては、雲母、合成金雲母、ガラス、シリカ、タルク、アルミナ等の板状粉体等の表面を酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、金、銀、カルミン、有機顔料等の着色剤で1種又は2種以上被覆したものなど、及びポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミ蒸着末、ポリエチレンテレフタレート・金蒸着積層末などの、フィルム原反を任意形状に断裁したものなどを用いることができる。
これらの粉体は、通常の方法により、撥水処理、撥水・撥油化処理等の各種表面処理を施したものを用いることもできる。
【0021】
粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、唇の上で審美性のあるメイクアップ効果を付与する点から、口唇化粧料中に0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。また、粉体の含有量は、口唇化粧料中に0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15がより好ましく、0.5〜8質量%がさらに好ましい。
【0022】
また、中間組成物(1)は、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、成分(A)及び(B)以外の油性成分、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、保湿剤、増粘剤、水等を含有することができる。
【0023】
成分(A)及び(B)を含む成分を混合して得られる中間組成物(1)は、80℃以上で加熱混合する。加熱温度は、成分(A)と成分(B)を均一に溶解させる点から、80℃以上、150℃以下が好ましく、85℃以上、120℃以下がより好ましい。
また、混合時間は、5〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
混合方法は、特に制限されず、通常の方法に従って行うことができ、ディスパー等を用いて行うことができる。
【0024】
本発明において、工程2は、工程1で得られた中間組成物(1)を45℃以下に冷却する工程である。
冷却温度は、成分(A)の結晶を析出させる点から、5℃以上、43℃以下が好ましく、10℃以上、40℃以下がより好ましい。
【0025】
本発明において、工程3は、工程2で冷却した中間組成物(1)に、45℃以下で、(C)揮発性炭化水素油を含有する中間組成物(2)を添加、混合する工程である。この工程では、成分(A)の結晶を、均一に分散させることができる。
成分(C)の揮発性炭化水素油において、揮発性とは、35〜87℃の引火点を有するものである。
【0026】
成分(C)の揮発性の炭化水素油としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、例えば、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン等のパラフィン系炭化水素油;イソデカン、イソドデカン、水添ポリイソブテン等のイソパラフィン系炭化水素油;シクロデカン、シクロドデカン等の環状パラフィン炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらのうち、炭素数8〜16の炭化水素油が好ましく、炭素数10〜16の炭化水素油がより好ましく、炭素数12の炭化水素油がさらに好ましい。なかでも、イソパラフィン系炭化水素油が好ましく、イソドデカン、炭素数12の水添ポリイソブテンがより好ましく、イソドデカンがさらに好ましい。
市販品としては、マルカゾールR(丸善石油化学社製:引火点47℃)、パールリーム3(日油社製:引火点61℃)等が挙げられる。
【0027】
成分(C)は、1種又は2種以上用いることができ、含有量は、成分(A)の結晶を均一に分散させ、滑らかな性状のある口唇化粧料をつくり、唇への密着性や保護膜感を素早く感じさせる点から、口唇化粧料中に0.5質量%以上であるのが好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、13質量%以下がさらに好ましい。また、成分(C)の含有量は、口唇化粧料中に0.5〜30質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜13質量%がさらに好ましい。
【0028】
中間組成物(2)は、成分(C)以外に、中間組成物(1)と同様、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。
中間組成物(2)中、成分(C)の質量割合((C)/中間組成物(2))は、唇への密着性や保護膜感を素早く感じさせる点から、0.5〜1であるのが好ましく、0.7〜1がより好ましい。
【0029】
工程3においては、中間組成物(1)に、45℃以下で、中間組成物(2)を添加、混合する。
混合する際の温度は、この工程では、成分(A)の結晶を維持しつつ、均一に分散させる点から、5〜43℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
また、混合時間は、成分(A)の結晶を均一に分散させる点から、5分以上12分以下であるのが好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。
混合方法は、特に制限されず、通常の方法に従って行うことができ、ディスパー等を用いて行うことができる。
【0030】
工程3において、中間組成物(1)に、中間組成物(2)を添加、混合した後、さらに、5℃以上、45℃以下の温度領域で混合するのが好ましく、10℃以上、40℃以下の温度領域で混合するのがより好ましい。
【0031】
本発明の口唇化粧料は、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナーなどとすることができる。なかでも、非固形状とするのが好ましく、液状の口紅、液状のリップグロスが好ましい。
【実施例】
【0032】
実施例1〜7及び比較例1〜4
表1に示す組成の口唇化粧料(液状口紅)を製造した。
得られた口唇化粧料について、「初期使用時、化粧チップ塗布面への取れ性」、「塗布時のなめらかな感触」、「塗布後の乾燥感」、「塗布後の密着感」、「唇に保護膜を感じるまでの早さ」を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0033】
(製造方法)
(1)実施例の製造方法:
成分(A)、(B)及びその他の成分を含有する中間組成物(1)を加熱溶解し、ディスパーにて、100℃で30分間加熱混合した。次に、中間組成物(1)を冷却し、各最終到達温度25℃、又は40℃まで冷却した。冷却した中間組成物(1)に、成分(C)を含有する25℃の中間組成物(2)を加え、それぞれ工程(2)の最終到達温度で25分間ディスパーにて均一混合し、脱泡を行い、ディッピング容器に充填して、口唇化粧料(液状口紅)を得た。
【0034】
(2)比較例の製造方法:
成分(A)、(B)及びその他の成分を含有する中間組成物(1)を加熱溶解し、ディスパーにて、100℃で30分間加熱混合した。次に、中間組成物(1)を、各製造条件に記載の冷却温度までコントロールした。その後、中間組成物(1)に、25℃の中間組成物(2)を加え、それぞれ工程(2)の最終到達温度で25分間ディスパーにて均一混合し、脱泡を行い、ディッピング容器に充填して、口唇化粧料(液状口紅)を得た。
【0035】
(評価方法)
(1)初期使用時、化粧チップ塗布面への取れ性:
専門評価者5人が、各容器から塗布用具を引き抜いた際に、化粧チップ塗布面への各液状口紅の取れの良さを、以下の基準で評価した。結果は、専門評価者5人の合計点で示した。
なお、塗布用具は、塗布部(化粧チップ)を連結した支持軸を有しており、化粧料を塗布する為の塗布面を有し、その塗布部が扁平形状で、その表面が植毛されたものを用いている。
4;化粧チップ塗布面に液状口紅が均一に付着している。
3;化粧チップ塗布面に液状口紅がやや均一に付着している。
2;化粧チップ塗布面に液状口紅が部分的に付着している。
1;化粧チップ塗布面に液状口紅が付着していない。
【0036】
(2)塗布時のなめらかな感触:
専門評価者5人が、各液状口紅を化粧チップで唇に塗布した際の、口紅がなめらかに伸びる感触を、以下の基準で評価した。結果は、専門評価者5人の合計点で示した。
4;口紅が非常になめらかに伸びる。
3;口紅がなめらかに伸びる。
2;口紅があまり滑らかに伸びない。
1;口紅が滑らかに伸びない。
【0037】
(3)塗布後の乾燥感:
専門評価者5人が、各液状口紅を化粧チップで唇に塗布し、塗布した直後に唇が乾燥する感触を、以下の基準で評価した。結果は、専門評価者5人の合計点で示した。
4;唇が乾燥する感じがしない。
3;唇が乾燥する感じがあまりしない。
2;唇が乾燥する感じがややする。
1;唇が乾燥する感じがする。
【0038】
(4)塗布後の密着感:
専門評価者5人が、各液状口紅を化粧チップで唇に塗布し、塗布した直後の上唇と下唇をすり合せた時の上滑りした感触を、以下の基準で評価した。結果は、専門評価者5人の合計点で示した。
4;唇上で口紅が上滑りしていない。
3;唇上で口紅があまり上滑りしていない。
2;唇上で口紅がやや上滑りしている。
1;唇上で口紅が上滑りする。
【0039】
(5)唇に保護膜を感じるまでの早さ:
専門評価者5人が、各液状口紅を化粧チップで唇に塗布し、塗布してから唇が保護されている感じを感じるまでの早さを、以下の基準で評価した。結果は、専門評価者5人の合計点で示した。
4;塗布した直後から唇を覆う保護膜を感じる。
3;塗布してから5分以内に唇を覆う保護膜を感じる。
2;塗布してから10分以内に唇を覆う保護膜を感じる。
1;塗布してから10分以内では唇を覆う保護膜を感じない。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例8
実施例1〜7と同様にして、表2に示す組成の口唇化粧料(液状口紅)を製造した。
得られた口唇化粧料は、初期使用時の化粧チップへの取れ性に優れ、塗布時になめらかに伸び、塗布後の乾燥感を抑え、密着感のある仕上がりを実現でき、短時間で唇に保護感を感じることができる。
【0042】
【表2】