(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フローリングの一般的な工法は、一定間隔で水平に配置した複数の根太の上に下地合板を敷き、その上面にフローリング材を、根太に対し長手方向が互いに直交するように配置する。さらに床暖房を施工する場合は、この下地合板とフローリング材との間に発熱体を配置する(例えば、特許文献1)。
【0003】
床暖房用フローリングの木質材料としては、合板が用いられるのが一般的である。この合板は、薄く切った単板を、奇数層及び偶数層の繊維方向が90°を成すように、互い違いに重ねて熱圧接着したものである。
このような合板は湿気の吸放出に伴う伸縮が等方的であるために、フローリングの下面のみが繰り返し加熱を受けても、フローリングの変形やひび割れが防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、原木を切断加工したのみの無垢材から成る無垢フローリングが、独特の風合いと経年変化による趣とを演出するとして、自然志向・高級志向のユーザに人気を博している。
【0006】
しかし天然無垢材は、上述した合板と比較して、吸湿に伴う伸縮の量や異方性が大きいという性質を有している。このため、無垢材で構成された無垢フローリングは、寒暖や乾湿の変化が激しい環境の下では、変形が生じ易い。
特に、床暖房が施工されている場合は、発熱体の発熱は、床面に伝達されるだけでなく床下空間にも大量に放出される。そして、床暖房をONしている間は、無垢フローリングの湿分もこの床下空間に放出されることになる。
【0007】
その結果、床暖房のON/OFFの繰り返しに伴って、無垢フローリングは吸放湿のサイクルが、乾湿差の激しい状態で繰り返されることになる。
このため、住宅の温度や湿度管理によっては、経年使用の結果、床面に隙間や不陸が生じたり突き上げや音鳴りが生じたり等のトラブルが発生することもある。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、耐久性に優れる無垢フローリングの床暖房構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る床暖房構造は、コンクリート打設され地面から建築物を支える基礎部と、前記基礎部の天端に配置された土台部と、前記基礎部により外周が閉じられた内側領域の地表上に形成された空間に充填される充填層と、前記充填層の上面から前記土台部の上端レベルまで打設されたコンクリート層と、前記コンクリート層の内部に埋設されるとともに温度調節された液体を前記コンクリート層の表面に沿って循環させるパイプ材と、前記コンクリート層よりも上層に設けられた無垢フローリングと、を備え
、前記内側領域における前記充填層の周縁部が前記基礎部に向かって下り傾斜するように形成されており、前記基礎部の内部に埋設され、基礎立ち上がり方向から前記内側領域に向かって折れ曲がる差し筋部材と、前記差し筋部材の先端部分に結束され、水平面を有するように格子状に組まれたスラブ材と、をさらに備え、前記パイプ材は、前記スラブ材の水平面に結束された状態で、前記スラブ材と共に前記コンクリート層の内部に埋設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、耐久性に優れる無垢フローリングの床暖房構造が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)に示すように、本発明に係る床暖房構造は、地面から建築物を支える基礎部10をコンクリート打設する(適宜、
図4(A)参照)。
なおこの基礎部10の内部には、差し筋部材11が予め埋設されている。この差し筋部材11は、コンクリート打設の段階で基礎立ち上がり方向に沿って配置されている。
そしてこの差し筋部材11は、このコンクリートが固化したいずれかの段階で、この基礎部10により外周が閉じられた内側領域12に向かって折れ曲げられる(
図2(A)参照)。
【0013】
次に
図1(B)に示すように、基礎部10により外周が閉じられた内側領域12に、その外側のグランドレベルGよりも高いレベルで支持層15が盛土される。
そして
図1(C)に示すように、支持層15よりも上層に、砂利を敷き詰めた砂利層16を設ける。この砂利層16は、上面が略水平に形成され、内側領域の周縁部17が基礎部10に向かって下り傾斜するように形成されている。
【0014】
さらにこの砂利層16には、後工程(
図2(A)参照)でフラット治具23が配置される予定位置の下方に、溝27が形成される。この溝27は、断面形状が台形のものを例示しているが、特に限定はなくその断面形状として断面正方形、長方形、逆三角形、半円形など適宜選択することができる。
【0015】
砂利層16に敷き詰められる砂利としては、直径2〜5cm程度の石や、小石に砂が混ざったものが用いられる。そのような砂利として、天然岩石を破砕機等で人工的に小さく砕いた砕石や、天然砂利、再生石材等を用いることができる。
再生石材としては、焼却残渣を加工再生してなるものや、建築構造物を解体したときなどに発生するコンクリート塊やアスファルト塊を破砕したものや、樹脂類、硝子類、陶磁器類、ゴム類などの単独又は混合物を採用することができる。
【0016】
次に
図2(A)に示すように、砂利層16の上面を覆うようにシート18を敷き詰める。なおこのシート18は、基礎部10にかからないようする。さらに、差し筋部材11を内側領域12に向かって折れ曲げる。
【0017】
シート18としては、厚さ0.1mm程度のポリエチレンフィルムが好適に用いられる。このシート18の目的は、後の工程(
図3(A)参照)で、固化前のコンクリート層35の水分が砂利層16の内部に進入することを防止して、このコンクリート層35の水分量を適正に保持し良質のコンクリート層35を形成することにある。
そのような目的に叶うシート18であれば、厚さ0.1mm程度のポリエチレンフィルムに限定することなく、厚さや材質を適宜選択することができる。
【0018】
ここで、支持層15と、砂利層16と、シート18とを纏めて、充填層13と称する。この充填層13は、基礎部10により外周が閉じられた内側領域の地表上に形成された空間に充填するものであれば、これら支持層15、砂利層16、シート18で構成されることに限定されない。具体的には、支持層15又は砂利層16の単層で構成される場合もある。また、コンクリート打設により充填層13を形成してもよい。
【0019】
次に、基礎部10の天端に、土台部21を配置する(適宜、
図4(B)参照)。この土台部21は、予め基礎部10に埋設しておいたアンカーボルト(図示略)に、この土台部21に穿設された透孔を貫通させて、ナット緊結して基礎部10に一体的に固定される。
【0020】
フラット治具23は、
図5(A)に示すように、内側領域12を複数の区域25に分けるように、土台部21の側面に一端が当接固定されている。なおこのフラット治具23は、土台部21とともに天端レベルが水平面に一致するように配置されている(
図2参照)。これらフラット治具23は、両端が土台部21の側面に両端が当接しているものもあれば、土台部21の側面とその他のフラット治具23の側面にそれぞれの一端が当接しているものもある。さらにフラット治具23の側面に両端が当接しているものもある。
【0021】
このフラット治具23の下面は、部分的に基礎部10の天端に支持されているものもあれば、無支持状態のものもある。
そのような無支持状態にあるフラット治具23に対向する砂利層16の上面には、このフラット治具23に沿って溝27が形成されている(
図2(A)参照)。
なお、実施形態においてフラット治具23として、上フランジ、下フランジ及びこれらを連結するウエブからなるH型鋼を採用している。
【0022】
しかし、そのようなH型鋼に限定されることなく、土台部21とともに天端レベルが水平面に一致するように配置することができるものであればフラット治具23として適宜採用される。また、基礎部10の天端に配置される土台部21により外周が閉じられた領域が十分に狭い場合は、このフラット治具23を設けない場合もある。
【0023】
基礎部10の天端に支持されるフラット治具23の部分には、予め基礎部10に埋設しておいたアンカーボルト(図示略)を貫通させナット緊結するための透孔が穿設されている。さらに、建築物の柱を立設させるフラット治具23の予定位置には、固定治具を取り付けるための貫通孔が穿設されている。
【0024】
次に
図2(B)に示すように、基礎立ち上がり方向から内側領域12に向かって折れ曲がる差し筋部材11の先端に、スラブ材31を結束する。このスラブ材31は、水平面を有するように格子状に組まれたものである。そのようなスラブ材31として、市販されている金網を採用してもよい。
【0025】
このスラブ材31は、この後の工程で打設されるコンクリート層35の割れ防止の補強材として機能するとともに、パイプ材33の固定部材としても機能する(
図5(B)参照)。
またこのスラブ材31は、フラット治具23が横切る箇所において、その下側の溝27において迂回交差するように設けられている。なお、土台部21により外周が閉じられた領域が十分に狭い場合や、コンクリート層35の割れ防止が他に対策されている場合は、このスラブ材31を設けない場合もある。
【0026】
次に
図2(C)に示すように、パイプ材33が、スラブ材31に結束される。
図5(B)に示すように、このパイプ材33は、スラブ材31の水平面に略等間隔に敷き詰められ、その始端と終端が、外側に配置される液体循環加熱装置(図示略)に接続される。このパイプ材33には温度調節された液体が循環され、床暖房システムを構成する。
【0027】
なおパイプ材33に循環させる液体は、床暖房の不使用時に凍結しないように、エチレングリコールの水溶液等の凝固点が低い不凍液を用いるのが好ましい。また、パイプ材33は、耐久性に優れる樹脂製又金属製のものが用いられる。
【0028】
次に
図3(A)に示すように、シート18を敷き詰めた砂利層16の上面(充填層13の上面)から土台部21及びフラット治具23の上端レベルまでコンクリート層35を打設する。
このコンクリート層35は、土台部21及びフラット治具23の天端が露出するように打設されている。このコンクリート層35には、スラブ材31やこのスラブ材31の水平面に結束されたパイプ材33も埋設される。
【0029】
なお、差し筋部材11やスラブ材31が設けられていない場合、パイプ材33は、適切な部材(図示略)によって充填層13の上面から支持されることにより、コンクリート層35の内部に埋設される。
【0030】
このコンクリート層35の表面の面出しについては、直線を有する棒又は板(図示略)の両端を、土台部21又はフラット治具23の天端にすべらせながら移動し、未固化状態のコンクリート層35の上面を削り、水平均一に均す。このコンクリート層35の表面の面出し作業は、フラット治具23により内側領域12を複数に分けた区域25(
図5参照)を単位として実施される。
コンクリート層35が固化したところで、土台部21又はフラット治具23の天端に建築物の柱(図示略)が立設される。なお、施工される床暖房構造によっては、このようなフラット治具23が含まれない場合もある。
【0031】
次に
図3(B)に示すように、ゴム等の弾性体からなるバッカ―材36をコンクリート層35の上面に敷いた後に、無垢材からなる無垢フローリング37を敷き詰める。
これにより、パイプ材33に温度調節された液体が循環すると、コンクリート層35を介して無垢フローリング37の裏面に熱が伝わる。このため、無垢フローリング37の裏面は、温度分布にムラがなく均一に加熱されるうえに、無垢フローリング37に含まれる湿分の下方への移動が、このコンクリート層35に遮断されて大幅に抑制される。
このため、無垢フローリング37に含まれる湿分は、床暖房のON/OFFが繰り返されても、大きく変動することはない。
【0032】
さらに、フローリング37の床下領域は、充填層13やコンクリート層35が充填されており、空間が存在しない。このため、パイプ材33の発熱は、下方よりも上方の床面及び室内空間に伝達するものが支配的となり、熱効率に優れる床暖房が実現される。さらに寒冷期は、地中の地熱がフローリング37まで熱伝導するために、パイプ材33に循環させる液体や発熱体38を大きく発熱させなくても、床暖房システムを適温に設定できる。
これによりフローリング37に無垢材を採用しても、熱履歴や吸放湿履歴の影響が抑制されるので、その変形や割れを防止することが可能になる。