(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982492
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】レンズ付き羽根駆動装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20211206BHJP
G03B 9/02 20210101ALI20211206BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20211206BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20211206BHJP
G03B 9/12 20210101ALI20211206BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20211206BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/02 H
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G03B9/02
G03B11/00
G03B17/02
G03B9/12
G03B30/00
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-251341(P2017-251341)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-117305(P2019-117305A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 謙三
(72)【発明者】
【氏名】渡部 伸昭
【審査官】
三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−040814(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0062419(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0155311(US,A1)
【文献】
特開2006−276763(JP,A)
【文献】
特開2011−197082(JP,A)
【文献】
特開2014−071176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 9/02
G03B 11/00
G03B 17/02
G03B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズを保持したレンズ枠と、前記複数のレンズの光路に進退する羽根を備えた羽根駆動装置とを備え、
前記羽根駆動装置の筐体は、前記レンズ枠の前端より後方に位置して前記レンズの光軸に直交する前面部を有し、
前記前面部上に、前記光軸に沿った厚さを有するクッション材が配置されることを特徴とするレンズ付き羽根駆動装置。
【請求項2】
前記前面部及び前記クッション材は、前記レンズ枠に対して光軸周りの全周に設けられることを特徴とする請求項1記載のレンズ付き羽根駆動装置。
【請求項3】
前記クッション材の厚さは、前記前面部から前記レンズ枠の前端までの突出高さ以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ付き羽根駆動装置。
【請求項4】
前記筐体の内部には、前記クッション材が配置される位置より外側に拡がる羽根室が設けられ、該羽根室内に前記羽根が収容されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のレンズ付き羽根駆動装置。
【請求項5】
前記筐体は、一対の挟み込み部材の間に前記羽根室の空間を確保することを特徴とする請求項4記載のレンズ付き羽根駆動装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記羽根室の空間を確保する柱部を備えることを特徴とする請求項5記載のレンズ付き羽根駆動装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記羽根室の空間を確保するスペーサ部材を前記一対の挟み込み部材の間に配置していることを特徴とする請求項5又は6記載のレンズ付き羽根駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜7に何れか1項に記載されたレンズ付き羽根駆動装置を備えた撮像装置。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載されたレンズ付き羽根駆動装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ付き羽根駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズ枠(レンズ鏡筒)に対して羽根駆動装置を一体に組み付けた撮像用ユニットが知られている。このような撮像用ユニットにおいて、レンズ枠は一般に複数のレンズを保持しており、羽根駆動装置はレンズ枠に保持されるレンズの光路に進退する羽根(絞り羽根など)を備えている(下記特許文献1参照)。
【0003】
従来技術において、レンズ枠に対する羽根駆動装置の組み付けは、レンズ枠にスリットを設け、羽根駆動装置は、スリットに差し込まれる地板と、地板の開口に進退する絞り羽根と、絞り羽根を進退させるアクチュエータとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−151312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によると、レンズ枠と羽根駆動装置を覆うケースを備えることで、ユニット全体を落下衝撃などから防護している。しかしながら、このようなケースによる防護構造は、レンズの光軸方向に沿ったユニットの厚みが大きくならざるを得ず、撮像ユニットを電子機器内部に組み込む際に、大きな占有スペースを要することになる。
【0006】
また、ケースの前面部とアクチュエータを備えた羽根駆動装置の筐体部分との間に空間が形成されているので、ケース内部で羽根駆動装置を安定的に保持することができない問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、本発明は、電子機器内に組み込む際の省スペース化を可能とし、また、レンズ付き羽根駆動装置を安定的に保持することなどを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明によるレンズ付き羽根駆動装置は、以下の構成を具備するものである。
複数のレンズを保持したレンズ枠と、前記複数のレンズの光路に進退する羽根を備えた羽根駆動装置とを備え、前記羽根駆動装置の筐体は、前記レンズ枠の前端より後方に位置して前記レンズの光軸に直交する前面部を有し、前記前面部上に、前記光軸に沿った厚さを有するクッション材が配置されることを特徴とするレンズ付き羽根駆動装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズ付き羽根駆動装置の組み付け前の状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)が本発明の実施形態に係るレンズ付き羽根駆動装置の組み付け後の平面図であり、(b)が同側面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係るレンズ付き羽根駆動装置の組み付け前の状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)が本発明の他の実施形態に係るレンズ付き羽根駆動装置の組み付け後の平面図であり、(b)が同側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るレンズ付き羽根駆動装置を備えた撮像装置を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るレンズ付き羽根駆動装置を備えた電子機器(携帯情報端末)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1〜
図3に示すように、レンズ付き羽根駆動装置1は、レンズ枠2と羽根駆動装置3を備えている。レンズ枠2は、複数のレンズ2Lを保持しており、図示の例では、分離自在な2つの枠体2A,2Bにそれぞれ単数又は複数のレンズ2Lが保持されている。また、レンズ付き羽根駆動装置1は、クッション材4を備えている。クッション材4は、レンズ2Lの光軸方向に沿った厚みを有しており、クッション性のある発泡体などで形成することができる。
【0012】
羽根駆動装置3は、筐体30を備えている。筐体30には、レンズ枠2の枠体2A,2Bを支持する支持孔30A,30Bが開口している。筐体30の内部には、レンズ2Lの光路を形成する開口3Aを有する薄板部材31と、開口3A(レンズの光路)に対して進退する羽根32(32A,32B)と、羽根32の進退動作を駆動する図示省略したアクチュエータが設けられる。なお、薄板部材31は、口径板或いは羽根押さえなどと言われることもある。
【0013】
羽根32は、開口3Aを通過する光の光量や波長を調整する部材であって、絞り、シャッタ、フィルタなどとして機能するものである。
図3においては2枚の羽根32A,32Bを示しているが、羽根32の数は単数であっても、2枚以上の複数枚であってもよい。
【0014】
羽根32を駆動するアクチュエータは、コイルとマグネットを備える電磁駆動式のものを用いることができ、羽根32を連続的に動作させて、光量等を連続的に調整できるものや、羽根32を開閉2段階に動作させるものなどを採用することができる。
【0015】
筐体30は、レンズ枠2の前端より後方に位置してレンズ2Lの光軸に直交する前面部30Fを有している。また、筐体30は、二つの挟み込み部材33,34を組み合わせることで、内部に収容空間を形成しており、その収容空間に羽根32が収容される羽根室30Sが形成されている。なお、 挟み込み部材33,34は地板、カバーなどと言われることもある。また、筐体30は、二つの挟み込み部材33,34以外の部品を含んで構成されていてもよい。
【0016】
レンズ付き羽根駆動装置1は、
図3に示すように、筐体30の支持孔30Aで枠体2Aを支持し、筐体30の支持孔30Bで枠体2Bを支持することで、レンズ枠2と羽根駆動装置3とを組み付けている。このように組み付けられたレンズ付き羽根駆動装置1において、レンズ枠2の前端は、筐体30の前面部30Fに対して前方に突出しており、前面部30Fは、レンズ枠2に対して光軸周りの全周に亘って設けられている。
【0017】
クッション材4は、筐体30の前面部30F上に配置される。
図1〜
図3に示した例では、クッション材4は、平面視リング状であり、レンズ枠2に対して光軸周りの全周に設けられている。このクッション材4は、光軸に沿った厚さtを有しており、その厚さtは、前面部30Fからレンズ枠2の前端までの突出高さH以下に設定されている。
【0018】
クッション材4が前面部30F上に配置されている筐体30の内部には、クッション材4が配置される位置より外側に拡がるように、前述した羽根室30Sが設けられている。前述したように、筐体30は、一対の挟み込み部材33,34の間に、羽根室30Sの空間を確保しているが、筐体30の挟み込み部材33,34の一方は、羽根室30Sの空間を確保するための柱部35を備えており、また、挟み込み部材33,34の他方は、柱部35が嵌まる嵌合部36が設けられている。
【0019】
柱部35は、筐体30に圧力が加わった場合に、羽根室30Sの空間が潰れないように補強する機能を有している。この機能を得るために、柱部35は、突出高さを嵌合部36の嵌合深さより大きくしている。このような柱部35を設ける代わりに、或いは柱部35に加えて、一対の挟み込み部材33,34の間にスペーサ部材37を設けて、羽根室30Sの空間を確保するようにしてもよい。
【0020】
このようなレンズ付き羽根駆動装置1は、レンズ枠2の前端に対して羽根駆動装置3における筐体30の前面部30Fを後方に位置しているので、前面部30F上に配置されるクッション材4の厚さtをレンズ枠2の突出高さH以下に抑えることで、レンズ付き羽根駆動装置1全体の厚さを増やすこと無く、クッション材4の厚さtを確保することができる。これにより、電子機器内にレンズ付き羽根駆動装置1を組み込む際の厚さ方向の省スペース化が可能になる。
【0021】
また、クッション材4は、レンズ枠2の光軸周り全周に配置されるので、筐体30の前面部30F上に効果的にクッション材4を配置することができ、ケースの内部や電子機器の筐体内に、レンズ付き羽根駆動装置1を安定的に保持することが可能になる。
【0022】
前面部30F上に配置されるクッション材4は、衝撃等が加わると、筐体30の一部を圧迫することになる。これに対して、レンズ付き羽根駆動装置1は、クッション材4が配置される平面的な領域から外側に拡がるように羽根室30Sを形成しているので、クッション材4による圧迫が加わる場合にも羽根室30S内の羽根32の動きに影響が出にくい。
【0023】
更に、筐体30は、柱部35やスペーサ部材37を設けることで、羽根室30Sの潰れが抑制されているので、クッション材4で羽根駆動装置3に加わる衝撃等を吸収しながら、羽根32を円滑に動作させることが可能になる。
【0024】
図4〜
図6は、レンズ付き羽根駆動装置の他の構成例を示している。この例のレンズ付き羽根駆動装置1’は、前述した例と同様に、レンズ枠2’と羽根駆動装置3’を備えている。複数のレンズ2Lを備えるレンズ枠2’は、中央のレンズ間に対応する位置にスリット2Sを備えており、羽根駆動装置3’は、スリット2Sに挿入するための挿入部3Bを備えた第1筐体38と第2筐体39を具備する筐体30’を備えている。そして、筐体30’の前面部30F上には、クッション材4’が配置されている。この例では、クッション材4’はレンズ枠2’を囲む矩形状であって、第1筐体38と第2筐体39を合わせた筐体30’の前面部30F上に配置されている。
【0025】
羽根駆動装置3’は、第1筐体38の凹部38Aに前述した挿入部3Bが突出しており、挿入部3B内と第1筐体38内に、羽根32が収容される羽根室30Sが形成されている。また、第1筐体38内には、羽根32を駆動する図示省略したアクチュエータが配置されている。挿入部3Bには、レンズ2Lの光路となる開口3Aが形成される薄板部材31が配置されており、その開口3Aに進退するように羽根32が駆動される。
【0026】
羽根駆動装置3’の第2筐体39には、凹部39Aが設けられている。レンズ付き羽根駆動装置1’は、レンズ枠2’のスリット2Sに挿入部3Bを挿入して、凹部38Aと凹部39Aにレンズ枠2’が収容された状態で第1筐体38と第2筐体39でレンズ枠2’を挟み込むことで、レンズ枠2’と筐体30’とが組み付けられる。
【0027】
第1筐体38は、前述した例と同様に、挟み込み部材33,34を組み合わせることで、その内部に羽根室30Sの空間を形成している。また、羽根室30Sの空間を確保するために、筐体30’は、前述した例と同様に、柱部35と嵌合部36、或いはスペーサ部材37が設けられている。
【0028】
また、レンズ枠2’は、スリット2Sの左右両側にガイド部2Gが設けられており、第1筐体38には、レンズ枠2’のガイド部2Gに対応するガイド段部38Bが設けられている。これにより、レンズ枠2’のスリット2Sに挿入部3Bを挿入する際に、ガイド部2Gをガイド段部38Bに沿ってスライドさせることで、円滑な挿入が可能になる。
【0029】
このようなレンズ付き羽根駆動装置1’においても、前述した例と同様に、レンズ枠2’の前端に対して筐体30’の前面部30Fを後方に位置しているので、前面部30F上に配置されるクッション材4’の厚さtを、レンズ枠2の突出高さH以内に抑えて、厚さを増やすこと無くクッション材4’を配置することができる。また、クッション材4’は、レンズ枠2’の光軸周り全周に配置されるので、筐体30’の前面部30F上に効果的にクッション材4’を配置することができ、ケースの内部や電子機器の筐体内にレンズ付き羽根駆動装置1を安定的に保持することが可能になる。更に、筐体30’は、柱部35やスペーサ部材37を設けることで、羽根室の潰れが抑制されているので、クッション材4’で羽根駆動装置3’に加わる衝撃等を吸収しながら、羽根32を円滑に動作させることが可能になる。
【0030】
前述したレンズ付き羽根駆動装置1(1’)は、
図7に示すように、撮像素子102が実装される枠体(ケース)101を備える撮像装置(カメラユニット)100において、枠体101の内部に配備することができる。枠体101は、前面に開口部101Aを備えており、レンズ付き羽根駆動装置1(1’)は、レンズ枠2(2’)の前端を開口部101A内に配置しており、枠体101の前部内面に対面するように、筐体30の前面部30F上にクッション材4(4’)が配置されている。
【0031】
図8は、レンズ付き羽根駆動装置1(1’)を備えた撮像装置100を搭載した携帯電子機器である携帯情報端末200を示している。レンズ付き羽根駆動装置1(1’)を備えた撮像装置100は、絞り量などの光学調整を行うことができるので、小型であっても高品質の画像を得ることができ、また、光軸方向に沿った厚さを抑えた薄型化が可能になる。
【0032】
このような撮像装置100を搭載したスマートホンなどの携帯情報端末200は、撮像装置100が薄型になることで内部の設置占有スペースが小さくなるので、携帯性の高い薄型の機器を実現することができる。また、撮像装置100の開口が小口径の場合にも、この開口に対して絞り量等を調整することによって、高品質の画像を得ることができ、携帯情報端末200において表示又は情報伝送できる画像の質を高めることができる。ここでは、携帯電子機器の一例を示したが、レンズ付き羽根駆動装置1(1’)は、撮像機能を備える各種の電子機器に搭載させることができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1,1’:レンズ付き羽根駆動装置,
2,2’:レンズ枠,2A,2B:枠体,
2L:レンズ,2S:スリット,2G:ガイド部,
3,3’:羽根駆動装置,3A:開口,3B:挿入部,
30:筐体,30A,30B:支持孔,30F:前面部,30S:羽根室,
31:薄板部材,32(32A,32B):羽根,33,34:挟み込み部材,
35:柱部,36:嵌合部,37:スペーサ部材,
38:第1筐体,39:第2筐体,38A,39A:凹部,
38B:ガイド段部,4,4’:クッション材,
100:撮像装置,101:枠体,101A:開口部,102:撮像素子,
200:携帯情報端末(電子機器),t:厚さ,H:突出高さ