(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制動制御における前記所定のスイッチング素子の前記駆動パターンの調整は、所定の周期に占める前記所定のスイッチング素子におけるオン状態の時間の割合を示すデューティ比を、前記所定の周期毎に変更することにより実行される、請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
前記制御部は、前記制動制御の開始時に、前記デューティ比について予め定めた初期デューティ比に基づく時間分だけ前記所定のスイッチング素子をオン状態にした後、前記検出電流値が前記第2閾値以下である場合には、前記デューティ比を所定割合分だけ増加させ、前記検出電流値が前記第2閾値より高い場合には、前記デューティ比を維持し、又は、前記デューティ比を前記所定割合分だけ減少させる、請求項3に記載の電動圧縮機。
前記複数のスイッチング素子は、前記直流電源の高圧ラインと接地ラインとの間において、直列的に接続される同位相の一対のハイサイド素子及びローサイド素子を、複数の相分だけ並列的に有して構成され、
前記駆動パターンの調整の対象となる前記所定のスイッチング素子は、全ての前記ハイサイド素子又は全ての前記ローサイド素子であり、
前記制御部は、前記制動制御として、全ての前記ハイサイド素子又は全ての前記ローサイド素子に対して、同時に且つ断続的にオン状態にするゼロベクトル通電を実行する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電動圧縮機の外観の概略を示している。
【0012】
本実施形態における電動圧縮機1は、例えば車両用空調装置の冷媒回路に組み込まれ、この車両用空調装置の冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。電動圧縮機1は、いわゆるインバータ一体型の電動圧縮機であり、ハウジング2と、回転により冷媒を圧縮して吐出する圧縮機構3と、圧縮機構3を駆動するモータ4と、モータ4に給電するためのインバータ5とを備える。
【0013】
ハウジング2は、圧縮機構3、モータ4及びインバータ5を内部に収容する。本実施形態において、ハウジング2は、メインハウジング2A、インバータハウジング2B、及び、蓋部材2C、2Dを含んで構成される。これら(2A〜2D)は、ボルトなどによって一体的に締結される。
【0014】
メインハウジング2A内には、圧縮機構3とモータ4とが収容される。圧縮機構3とモータ4は、モータ4の駆動軸4aの中心軸線Xに沿って直列的に配置される。インバータハウジング2B内には、インバータ5が収容される。このように、ハウジング2内において、モータ4は圧縮機構3とインバータ5との間に位置するように配置される。インバータハウジング2Bは、インバータハウジング2Bは、円筒部とその一端側の底壁部とから構成される。インバータハウジング2Bの円筒部の他端側の開口部は蓋部材2Dによって閉止される。したがって、ハウジング2内の領域は、インバータハウジング2Bの前記底壁部により、圧縮機構3とモータ4とを収納する第1空間S1とインバータ5を収容する第2空間S2とに仕切られている。
【0015】
圧縮機構3は、例えば、互いに噛み合わされる固定スクロールと旋回スクロールとを有するスクロール型の圧縮機構であり、駆動軸4aに連結される。前記旋回スクロールは、前記固定スクロールの軸心周りに公転旋回運動可能に駆動軸4aに連結されており、前記旋回スクロールと前記固定スクロールとの間に圧縮室が形成されている。前記旋回スクロールが前記公転旋回運動することにより、前記圧縮室の容積が変化する。そして、前記冷媒回路の低圧部から図示省略した吸入口を介してメインハウジング2A内に吸入された低圧の冷媒は、前記圧縮室で圧縮されつつ圧縮機構3の中心部へと導かれる。圧縮機構3の中心部へと導かれた冷媒は、図示省略した吐出口を介して前記冷媒回路の高圧部に吐出される。
【0016】
モータ4は、例えば、3相のブラシレスモータからなり、スター結線されたU相コイル、V相コイル及びW相コイルを有する。
【0017】
図2は、本実施形態における後述するモータ駆動回路52を含むインバータ5の回路の概略図である。
【0018】
インバータ5は、図示を省略したバッテリー等の外部の直流電源Bからの直流電力を三相交流電力に変換してモータ4に給電するものである。インバータ5は、その回路構成として、平滑用のコンデンサ51と、モータ駆動回路52と、モータ駆動回路52の駆動を制御する制御部53と、電流検出ユニット54と、を有する。
【0019】
コンデンサ51は、外部の直流電源Bからの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をモータ駆動回路52へ供給する。
【0020】
モータ駆動回路52は、モータ4と直流電源Bとの間に接続され、複数のスイッチング素子としての同一の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下「IGBT」という;IGBT=Insulated Gate Bipolar Transistor )Q1〜Q6を有する。
【0021】
複数のスイッチング素子としてのIGBTQ1〜Q6は、それぞれの駆動(オン・オフ)が制御部53により制御されることにより、コンデンサ51からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ4に供給する。IGBTQ1〜Q6は、直流電源Bの高圧ラインH(換言すると高電圧側ライン)と接地ラインL(換言すると接地側ライン)との間において、互いに並列的に接続されるU相アーム、V相アーム及びW相アームに区分される。コンデンサ51は、高圧ラインH及び接地ラインLにおけるU相アームの接続点よりも直流電源B側の部位に接続されている。
【0022】
前記U相アームは、高圧ラインHと接地ラインLとの間において、直列的に接続される2つのIGBT(Q1,Q2)を備える。2つのIGBT(Q1,Q2)には、ダイオードD1,D2がそれぞれIGBTに対して逆並列に接続される。
【0023】
前記V相アームも、高圧ラインHと接地ラインLとの間において、直列的に接続される2つのIGBT(Q3,Q4)を備える。2つのIGBT(Q3,Q4)には、ダイオードD3,D4がそれぞれIGBTに対して逆並列に接続される。
【0024】
前記W相アームも、高圧ラインHと接地ラインLとの間において、直列的に接続される2つのIGBT(Q5,Q6)を備える。2つのIGBT(Q5,Q6)には、ダイオードD5,D6がそれぞれIGBTに対して逆並列に接続される。
【0025】
本実施形態において、IGBT(Q1,Q3,Q5)が本発明に係る「ハイサイド素子」(換言すると電源側素子)に相当し、IGBT(Q2,Q4,Q6)が本発明に係る「ローサイド素子」(換言すると接地側素子)に相当し、IGBT(Q1,Q2)、IGBT(Q3,Q4)、IGBT(Q5,Q6)がそれぞれ本発明に係る「同位相の一対のハイサイド素子及びローサイド素子」に相当する。このようにして、直流電源Bの高圧ラインHと接地ラインLとの間において、直列的に接続される同位相の一対のハイサイド素子及びローサイド素子(IGBT(Q1,Q2)、IGBT(Q3,Q4)、IGBT(Q5,Q6))を、3相分だけ並列的に有するモータ駆動回路52が構成される。
【0026】
前記U相アーム、V相アーム、W相アームのそれぞれの中間点は、モータ4の対応する相のコイルの一端に接続される。すなわち、IGBT(Q1,Q2)の中間点がU相コイルに接続され、IGBT(Q3,Q4)の中間点がV相コイルに接続され、IGBT(Q5,Q6)の中間点がW相コイルに接続される。
【0027】
制御部53は、モータ駆動回路52の駆動を制御するものであり、モータ4に電力を供給してモータ4を駆動するためのモータ駆動制御や、圧縮機構3の回転(詳しくは前記旋回スクロールの前記公転旋回運動)を停止させるための停止制御を実行する。
【0028】
前記モータ駆動制御では、制御部53は、車両空調制御装置等の外部からの圧縮機運転指令に応答して複数のスイッチング素子としてのIGBTQ1〜Q6の駆動を制御することによりモータ4を駆動させる。制御部53は、例えば、前記モータ駆動制御では、IGBTQ1〜Q6に対するPWM制御(擬似的に正弦波を得るために一定周期でパルス幅を変調した電圧を発生させる制御)により、コンデンサ51からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ4に供給し、モータ4を駆動させる。詳しくは、制御部53は、前記モータ駆動制御では、U、V、W各相への正弦波電圧に合わせて、各相アームにおけるハイサイド素子としてのIGBT(Q1,Q3,Q5)のオン期間(通電期間)とローサイド素子としてのIGBT(Q2,Q4,Q6)のオン期間(通電期間)との比率を制御することにより擬似的な交流電圧を発生させる。
【0029】
前記停止制御では、制御部53は、車両空調制御装置等の外部からの圧縮機停止指令に応答して全てのIGBTQ1〜Q6をオフ状態(通電遮断状態)とした後に、モータ4に負荷を与えるようにIGBTQ1〜Q6のうちの所定のスイッチング素子(以下、適宜に制動制御用素子という)の駆動を制御する制動制御を行うことにより、圧縮機構3の回転(前記旋回スクロールの前記公転旋回運動)を停止させる。つまり、制御部53は、前記モータ駆動制御中に、外部から圧縮機停止指令の信号が入力されると、前記停止制御のモードに切り替わり、まず、全てのIGBTQ1〜Q6がオフ状態となるようにIGBTQ1〜Q6の駆動を制御する。これにより、圧縮機構3は惰性回転状態となる。制御部53は、圧縮機構3が惰性回転している状態で、前記制動制御用素子についての駆動を制御する前記制動制御を行うことにより、モータ4に負荷を与える。その結果、モータ4に連結された圧縮機構3の惰性回転に対する制動力が発生し、圧縮機構3の回転が停止する。前記制動制御により発生させる圧縮機構3の回転に対する制動力の大きさは、圧縮機構3やモータ4の特性や前記制動制御用素子のオン期間等に基づいて定まる。なお、制御部53における前記制動制御を含む前記停止制御の内容や、前記制動制御用素子については、後に更に詳述する。
【0030】
電流検出ユニット54は、モータ駆動回路52に流れる電流を検出するためのものであり、モータ駆動回路52に設けられるシャント抵抗を利用して検出する方式や電流センサを利用して検出する方式等の適宜の方式を採用することができる。本実施形態では、電流検出ユニット54は、シャント抵抗を利用したいわゆる1シャント方式からなるものである。詳しくは、電流検出ユニット54は、モータ駆動回路52と直流電源Bの接地側とを接続する接地ラインLに設けられる一つのシャント抵抗54aと、シャント抵抗54aに流れる電流(相電流)を検出する電流検出部54bとからなる。電流検出部54bにより検出された検出電流値Iに対応する信号は制御部53に入力される。なお、シャント抵抗を利用する場合は、1シャント方式に限らず、3シャント方式であってもよい。この場合、図示省略するが、シャント抵抗54aは、モータ駆動回路52における各ローサイド素子としてのIGBT(Q2,Q4,Q6)と接地ラインLとの間にそれぞれ設けられる。
【0031】
ところで、前述したように、制御部53が外部からの圧縮機停止指令に応じて全てのIGBTQ1〜Q6をオフ状態に駆動させた後は、圧縮機構3は惰性により回転する。したがって、この状態で、
図3に示すように、前記制動制御として、例えば、全てのローサイド素子又は全てのハイサイド素子(
図3では、ローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)を同時にオン状態(Hi状態ともいう)にする制御を実行するものとする。この場合、圧縮機構3の回転エネルギーがモータ駆動回路52に流れる電流(いわゆる回生電流ともいえる)として出現する。ここで、前記制動制御により発生する圧縮機構3の回転に対する制動力が過剰であると、圧縮機構3の回転は、前記制動制御の開始直後等に急停止する。つまり、
図3に示すように、仮に、制御部53が、前記制動制御として、ローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)を同時にオン状態に維持する(換言するとデューティ比100%でローサイド素子を駆動させる)制御を実行すると、モータ駆動回路52に過電流が流れる。この過電流は、
図3の最下段に示されるように、電流検出部54bにより検出される検出電流値Iの急激な跳ね上がりとして出現する。この結果、この過電流によりローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)等が破損する可能性がある。
【0032】
この問題点に対する対策として、本実施形態における制御部53は、以下に詳述する制御動作を実行するように構成されている。
【0033】
次に、制御部53による前記制動制御を含む前記停止制御について、
図4を参照して詳述する。
図4は、前記停止制御の際にモータ駆動回路52に流れ得る電流を説明するためのイメージ図である。
【0034】
制御部53は、前記停止制御における前記制動制御において、電流検出ユニット54により検出された検出電流値Iが所定の第1閾値I
1より高い場合には、全てのIGBTQ1〜Q6をオフ状態とする。
【0035】
また、制御部53は、前記制動制御において、検出電流値Iが第1閾値I
1より低い場合には、検出電流値Iが第1閾値I
1より低い所定の第2閾値I
2を超えないように、前記制動制御用素子の駆動パターンを調整する。その結果、
図4の最下段に示すように、前記制動制御によりモータ駆動回路52に流れる電流のピーク値は、点線で示したデューティ比100%で前記制動制御用素子を駆動させた場合(
図3の場合)のピーク値よりもΔI分だけ大幅に低下している。
【0036】
本実施形態では、前記駆動パターンの調整の対象となる前記所定のスイッチング素子としての前記制動制御用素子は、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)であるものとする。
【0037】
本実施形態では、第1閾値I
1はIGBTの破損するおそれのある電流値よりも低い値に設定され、例えば、モータ4の過負荷発生時に生じ得る異常電流値相当の値に設定されている。第2閾値I
2は、前記モータ駆動制御における起動時に生じる起動電流のピーク値に設定されている。第2閾値I
2の電流は、起動時にモータ駆動回路52に流れるため、第2閾値I
2の電流に対して耐性を有するIGBTがIGBTQ1〜Q6として選定されている。また、第2閾値I
2は、起動後の前記モータ駆動制御中にモータ駆動回路52に流れる定格電流値I
0よりも高い。つまり、第1閾値I
1>第2閾値I
2>定格電流値I
0の関係が成立している。
【0038】
具体的には、前記制動制御における全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)の前記駆動パターンの調整は、所定の周期Tに占める全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)におけるオン状態の時間の割合を示すデューティ比Dを、所定の周期T毎に変更することにより実行される。
【0039】
より具体的には、制御部53は、前記制動制御の開始時に、デューティ比Dについて予め定めた初期デューティ比D
0に基づく時間分だけ全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)をオン状態にした後、検出電流値Iが第2閾値I
2より低い場合には、デューティ比Dを所定割合分ΔDだけ増加させ、検出電流値Iが第2閾値I
2より高い場合には、デューティ比Dを維持し、又は、デューティ比Dを所定割合分ΔDだけ減少させる。なお、本実施形態では、制御部53は、検出電流値Iが第2閾値I
2より高い場合には、デューティ比Dを所定割合分ΔDだけ減少させる場合を一例に挙げて、以下説明する。
【0040】
より詳しくは、制御部53は、前記制動制御として、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)に対して、同時に且つ断続的にオン状態にするゼロベクトル通電を実行する。つまり、このゼロベクトル通電は、前記制動制御の間中、
図3に示すように維持されるのではなく、
図4に示すように周期T毎にデューティ比Dに応じた期間(時間)分だけ解除(オフ)される。
【0041】
次に、制御部53の制御動作について、
図4〜
図6を参照して更に詳述する。
図5は制御部53の制御動作の全体を説明するためのフロー図であり、
図6は制御部53による前記停止制御の動作を説明するためのフロー図である。以下に説明するSTEP1及びSTEP2が前記モータ駆動制御に相当し、STEP3〜STEP7が前記停止制御に相当する。
【0042】
車両空調制御装置等の外部からの圧縮機運転指令の信号が制御部53に入力されると(STEP1)、制御部53は前記モータ駆動制御を実行し、これにより、モータ4に交流電力が給電され、モータ4が駆動(回転)する(STEP2)。
【0043】
前記モータ駆動制御の実行中に、車両空調制御装置等の外部からの圧縮機停止指令の信号が制御部53に入力されると、制御部53は、前記停止制御のモードに切り替わる。そして、制御部53は、圧縮機停止指令の信号に応答して、即時に、全てのIGBTQ1〜Q6をオフ状態(通電遮断状態)に駆動させる(STEP3)。このとき、制御部53は、圧縮機停止指令の入力時刻からの時間t1の計時を開始し、STEP4に進む。
【0044】
STEP4では、制御部53は、前記圧縮機停止指令がモータ等の故障・保護機能による停止指令か否かを判定する。前記圧縮機停止指令がモータ等の故障・保護機能による停止指令である場合、つまり、異常停止であった場合(STEP4:YES)は、STEP5に進み、前記圧縮機停止指令がモータ等の故障・保護機能による停止指令でない場合(STEP4:NO)は、STEP6に進む。
【0045】
STEP5では、制御部53は、前記制動制御を実行せず(制動制御非作動)、そのまま、全てのIGBTQ1〜Q6はオフ状態となり、圧縮機構3の回転数は徐々に低下して、前記制動制御非作動の状態で圧縮機構3の回転は停止する。この場合、電動圧縮機1に異常が発生している状態であるため、この状態での前記制動制御による2次的な故障等の発生を防止するため、前記制動制御は実行されない。
【0046】
STEP6では、制御部53は、前記停止制御における前記制動制御の状態に移行する(制動制御作動)。制御部53は、前記制動制御の作動状態になると、
図6に示すように、まず、圧縮機停止指令の入力時刻からの時間t1が所定の時間t01を経過したか(t1>t01)否かを判定する(STEP61)。制御部53は、時間t1が所定の時間t01を経過している場合(STEP61:YES)は、STEP62に進み前記制動制御の実行を開始する。一方、制御部53は、時間t1が所定の時間t01を経過していない場合(STEP61:NO)は、経過するまでSTEP61を繰り返す。圧縮機停止指令の入力時刻から所定の時間t01経過すると、圧縮機構3の惰性回転の回転数は、圧縮機停止指令の入力直後の回転数よりも適度に低下している。所定の時間t01は圧縮機構3やモータ4の特性等に応じて適宜に定めることができる。
【0047】
STEP62では、初期デューティ比D
0に基づく時間分だけ全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)をオン状態に駆動させる。このとき、全てのハイサイド素子IGBT(Q1,Q3,Q5)はオフ状態に維持されている。初期デューティ比D
0は、制御部53に変更可能に予め設定されており、例えば、50%程度に設定されている。そして、制御部53は、前記制動制御の開始時刻(つまり、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)をオンした時刻)からの時間t2の計時を開始し、STEP63に進む。
【0048】
STEP63では、制御部53は、電流検出ユニット54により検出された検出電流値Iが第1閾値I
1より高いか否かを判定する。検出電流値Iが第1閾値I
1より高い場合は(STEP63:YES)は、STEP64に進み。検出電流値Iが第1閾値I
1より低い場合(STEP63:NO)は、STEP65に進む。
【0049】
STEP64では、制御部53は、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)はオフ状態に駆動(換言するとデューティ比D=0%)される。これにより、全てのIGBTQ1〜Q6がオフ状態となり、制御部53による前記制動制御が終了し、制御部53は、STEP7に進み、前記停止制御を終了する。
【0050】
STEP65では、制御部53は、検出電流値Iが第2閾値I
2以下であるか否かを判定する。検出電流値Iが第2閾値I
2以下である場合(STEP65:YES)は、STEP66Aに進み、検出電流値Iが第2閾値I
2以下でない場合、換言すると、第2閾値I
2を超えている場合(STEP65:NO)は、STEP66Bに進む。
【0051】
STEP66Aでは、検出電流値Iが第2閾値I
2以下であるため、前記制動制御による制動力を増加させることが十分に許容される。したがって、制御部53は、デューティ比Dを所定割合分ΔD(=β%)だけ増加させる。この増加調整用のΔDは、後述する減少調整用のΔDと共に、圧縮機構3やモータ4の特性等に基づいて変更可能に制御部53に予め設定されている。増加調整用のΔDは、減少調整用のΔDと一致させてもよいし、異なる値に設定してもよい。制御部53は、前回値よりΔDだけ増加させたデューティ比Dで、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)を同時にオン状態に駆動させる。これにより、制動力が前回よりも増加する。このデューティ比Dの調整は、所定の周期T毎に実行され、制御部53はSTEP67に進む。
【0052】
STEP66Bでは、第2閾値I
2を超えているものの、STEP63でNO、つまり、検出電流値Iが第1閾値I
1より低い場合(I
2<I<I
1)である。したがって、前記制動制御による制動力を増加させることが若干許容されるが、本実施形態では、IGBTの破損防止の確実性を高めるため、制動力を減少させる方向の制御を行う。つまり、制御部53は、デューティ比Dを所定割合分ΔD(=γ%)だけ減少させる。制御部53は、前回値よりΔDだけ減少させたデューティ比Dで、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)を同時にオン状態に駆動させる。これにより、制動力が前回よりも減少する。このデューティ比Dの調整は、所定の周期T毎に実行され、制御部53はSTEP67に進む。
【0053】
STEP67では、制御部53は、現在のデューティ比Dが100%であるか否かを判定する。制御部53は、現在のデューティ比Dが100%である場合(STEP67:YSE)は、最大制動力で圧縮機構3をクランプする状態となる(STEP68)。一方、制御部53は、現在のデューティ比Dが100%より小さい場合(STEP67:NO)は、例えば、STEP63に戻り、STEP63でYESと判定しない限り、現在のデューティ比Dが100%に達する(STEP67:YES)まで、STEP65における判定結果に応じて、デューティ比Dの増減調整(STEP66A、STEP66B)を実行する。
【0054】
STEP68では、制御部53は、最大制動力で圧縮機構3をクランプした状態となり、STEP69に進む。この最大制動力で圧縮機構3をクランプした状態において、圧縮機構3の回転は必ず停止しているとは限らず、正回転の状態で惰性回転している場合もある。正回転とは、通常の圧縮機運転状態における回転方向である。
【0055】
STEP69では、制御部53は、前記制動制御の開始時刻(つまり、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)をオンした時刻)からの時間t2(制動時間)が所定の時間t02を経過したか(t2>t02)否かを判定する。制御部53は、時間t2が時間t02を経過している場合(STEP69:YES)は、STEP64に進んで、全てのIGBTQ1〜Q6がオフ状態となり、制御部53による前記制動制御が終了する。そして、制御部53は、STEP7に進み、前記停止制御を終了する。
【0056】
一方、制御部53は、時間t2が所定の時間t02を経過していない場合(STEP69:NO)は、STEP69Aに進む。
【0057】
STEP69Aでは、制御部53は、検出電流値Iが上昇傾向であるか否かを判定する。制御部53は、検出電流値Iが下降傾向又は略変動がない場合(STEP69A:NO)は、STEP68に戻り、最大制動力での圧縮機構3のクランプを維持する。
【0058】
一方、制御部53は、検出電流値Iが上昇傾向である場合(STEP69A:YES)は、例えば、デューティ比Dをリセットして初期デューティ比D
0に戻すと共に、STEP63に戻る。そして、制御部53は、STEP63でYESと判定しない限り、時間t2が時間t02に達する(STEP69:YES)まで、上記各STEPの制御を実行する。なお、前記所定の時間t02についても、圧縮機構3やモータ4の特性等に応じて適宜に定めることができる。
【0059】
ここで、前述したように、STEP68において、最大制動力で圧縮機構3をクランプした状態において、圧縮機構3が正回転で惰性回転している場合もある。そのため、圧縮機構3の惰性回転を確実に停止させるために、最大制動力に達した後、この状態を所定時間維持する必要がある。このため、制御部53は、STEP69により、前記制動制御の開始時刻からの時間t2が十分な制動時間(時間t02)分だけ経過したか否かを判定している。
【0060】
また、正回転で惰性回転していた圧縮機構3の回転が停止したとしても、スクロール型の圧縮機構3では、前記固定スクロールに対する前記旋回スクロールの旋回角度位置が所定の角度範囲にある状態で、前記旋回スクロールの回転が停止すると、高圧の吐出圧力領域と低圧の吸入圧力領域との連通が維持される。その結果、前記吐出圧力領域と前記吸入圧力領域との圧力差によって、一旦停止した前記旋回スクロールが逆回転し始める場合がある。この点、本実施形態では、この逆回転を、以下に説明するようにSTEP69Aにより検知可能である。つまり、前記制動制御の開始時刻からの時間t2が所定の時間t02に達する前に、圧縮機構3の正回転は停止する。この状態で、検出電流値Iはゼロ又は略ゼロである。そして、圧縮機構3の前記旋回スクロールが、例えば、前記圧力差により逆回転し得る前記所定の角度範囲で停止してしまった場合、前記旋回スクロールが逆回転し始める。このとき、この逆回転により回生電流が発生し、その結果、検出電流値Iは上昇し始める。STEP69Aは、この検出電流値Iの上昇の検知により、圧縮機構3の逆回転を検知する(STEP69A:YES)。そして、制御部53は、デューティ比Dを初期デューティ比D
0に戻して、この逆回転に対して、前記制動制御を実行し、この逆回転を速やかに停止させて、異音の発生を抑制又は防止する。
【0061】
換言すると、本実施形態では、制御部53は、前記制動制御による圧縮機構3に対する制動力が最大に達した後(STEP67:YES)に、前記検出電流値の上昇を検知しない状態(STEP69A:NO)が前記制動制御の開始時刻から所定時間t02経過するまで(STEP69:YES)継続した場合は、前記制動制御を終了し、前記制動制御による前記圧縮機構に対する制動力が最大に達し(STEP67:YES)、且つ、前記制動制御の開始時刻から所定時間t02経過する前(STEP69:NO)に、検出電流値Iの上昇を検知した場合(STEP69A:YES)は、前記制動制御を継続する。
【0062】
なお、前記逆回転を防止するためには、例えば、前記旋回スクロールを公転旋回させるためのクランクピン等の回転位置を検知するセンサ等を設ける。そして、制御部53は、前記旋回スクロールの前記旋回角度位置を前記センサ等により常時モニタリングし、前記旋回スクロールが前記所定の角度範囲以外の角度範囲で停止するタイミングで、最大制動力を発生させるようにIGBTの駆動を制御すればよい。
【0063】
本実施形態による電動圧縮機1によれば、制御部53による前記制動制御において、検出電流値Iが第1閾値I
1より高い場合には、制御部53により、全てのIGBTQ1〜Q6は、強制的にオフ状態となる。したがって、例えば、第1閾値I
1を、IGBTが破損等する値よりも十分に低い値等に設定するだけで、IGBTの破損を確実に防止することができる。また、前記制動制御において、検出電流値Iが第1閾値I
1より低い場合には、制御部53により、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)の駆動パターンは、検出電流値Iが第1閾値I
1より低い所定の第2閾値I
2を超えないように調整される。したがって、IGBTの破損を確実に防止しつつ、前記制動制御を継続することができるため、圧縮機構3の回転を迅速に停止させることができ、圧縮機構3の逆回転及びこの逆回転による異音の発生を、迅速に防止又抑制することができる。このようにして、スイッチング素子としてのIGBTの破損を確実に防止しつつ、圧縮機構3の回転を迅速に停止させることができる電動圧縮機1を提供することができる。
【0064】
また、本実施形態では、第2閾値I
2は、前記モータ駆動制御における起動時に生じる起動電流のピーク値である構成とした。これにより、前記制動制御によりモータ駆動回路52に流れる電流の値を、概ね、通常の運転時に生じる起動電流の近傍に抑えることができるため、IGBTの破損をより確実に防止することができる。
【0065】
本実施形態では、前記動制御における全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)の駆動パターンの調整は、デューティ比Dを、所定の周期T毎に変更することにより実行される構成とした。これにより、前記駆動バターンの調整を容易に実行することができる。
【0066】
本実施形態では、制御部53は、前記制動制御の開始時に、予め定めた初期デューティ比D
0に基づく時間分だけ全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)をオン状態にする構成とした。これにより、初期デューティ比D
0を100%よりも十分に低い値(本実施形態では、50%とした)に設定するだけで、前記制動制御の開始時にモータ駆動回路52に流れる電流の値を、確実に第1閾値I
1よりも十分に低く抑えることができ、IGBTの破損をより確実に防止することができる。
【0067】
本実施形態では、制御部53は、初期デューティ比D
0から前記制動制御を開始して、初期デューティ比D
0に基づく時間分だけ全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)をオン状態した後、検出電流値Iが第2閾値I
2以下である場合には、デューティ比Dを所定割合分ΔDだけ増加させ、検出電流値Iが第2閾値I
2より高い場合には、デューティ比Dを所定割合分ΔDだけ減少させる構成とした。つまり、前記制動制御による制動力を増加させることが十分に許容される場合(I≦I
2)は、制動力を高め、それ以外の場合は、安全のため制動力を低くしている。これにより、圧縮機構3の回転をより迅速に停止させると共に、IGBTの破損のリスクをより確実に低下させることができる。
【0068】
なお、本実施形態では、前記駆動パターンの調整の対象となる前記所定のスイッチング素子としての前記制動制御用素子は、全てのローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)であるものとしたが、これに限らず、全てのハイサイド素子IGBT(Q1,Q3,Q5)でもよい。
【0069】
また、本実施形態では、制御部53は、STEP66Bにおいて、検出電流値Iが第2閾値I
2より高い場合には、デューティ比Dを所定割合分ΔDだけ減少させる構成としたが、これに限らない。制御部53は、STEP66Bにおいて、検出電流値Iが第2閾値I
2より高い場合には、デューティ比Dを前回値に維持するように構成してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、制御部53は、前記制動制御として、全ての前記ローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)又は全てのハイサイド素子IGBT(Q1,Q3,Q5)に対して、同時に且つ断続的にオン状態にするゼロベクトル通電を実行するものとしたが、これに限らない。制御部53は、例えば、(1)ハイサイド素子IGBT(Q1,Q3,Q5)のうちの1つのIGBTとローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)のうちの1つのIGBTとを断続的にオン状態に駆動したり、(2)ハイサイド素子IGBT(Q1,Q3,Q5)のうちの2つのIGBTとローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)のうちの1つのIGBTとを断続的にオン状態に駆動したり、(3)ハイサイド素子IGBT(Q1,Q3,Q5)のうちの1つのIGBTとローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)のうちの2つのIGBTとを断続的にオン状態に駆動したりしてもよい。なお、これらの場合、同位相のハイサイド素子及びローサイド素子が同時にオン状態とならないように、駆動対象のIGBTを定める。つまり、例えば、ハイサイド素子IGBT(Q1,Q3,Q5)のうちの1つのIGBTとローサイド素子IGBT(Q2,Q4,Q6)のうちの1つのIGBTとを断続的にオン状態に駆動する場合において、ハイサイド素子としてQ1を選択する場合は、ローサイド素子としてQ4又はQ6を選択する。
【0071】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。