(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1スリープ動作では、前記第1下側トランジスタと前記第2下側トランジスタはオフとされるとともに、昇圧動作と降圧動作に応じて前記第1上側トランジスタと前記第2上側トランジスタの一方がオンとされ、他方がオフとされる、ことを特徴とする請求項1に記載の昇降圧DC−DCコンバータ。
前記第2スリープ動作では、前記第1上側トランジスタと前記第2上側トランジスタはオフとされるとともに、前記第1下側トランジスタと前記第2下側トランジスタの少なくともいずれかがオンとされる、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昇降圧DC−DCコンバータ。
前記第2スリープ動作では、前記第1下側トランジスタと前記第2下側トランジスタのうち一方がオフとされる、ことを特徴とする請求項4に記載の昇降圧DC−DCコンバータ。
【背景技術】
【0002】
従来、昇圧・降圧のいずれも行うことが可能であるDC−DCコンバータが知られている。このような従来の昇降圧DC−DCコンバータの一構成例を
図26に示す。
【0003】
図26に示す従来の昇降圧DC−DCコンバータ100は、pチャネルMOSFETで構成される第1上側トランジスタH1と、nチャネルMOSFETで構成される第1下側トランジスタL1と、pチャネルMOSFETで構成される第2上側トランジスタH2と、nチャネルMOSFETで構成される第2下側トランジスタL2と、出力コンデンサC1と、スイッチ制御部105と、コイル110と、を有する。
【0004】
第1上側トランジスタH1のソースは入力電圧VINの印加端に接続され、ドレインは第1下側トランジスタL1のドレインに接続される。第1下側トランジスタL1のソースは、グランドに接続される。すなわち、第1上側トランジスタH1と第1下側トランジスタL1とは、入力電圧VINとグランドとの間で直列接続される。
【0005】
第2上側トランジスタH2のソースは、出力コンデンサC1の一端に接続される。出力コンデンサC1の他端は、グランドに接続される。第2上側トランジスタH2のドレインは、第2下側トランジスタL2のドレインに接続される。第2下側トランジスタL2のソースは、グランドに接続される。
【0006】
コイル110の一端は、第1上側トランジスタH1と第1下側トランジスタL1とが接続される第1接続ノードN1に接続される。コイル110の他端は、第2上側トランジスタH2と第2下側トランジスタL2とが接続される第2接続ノードN2に接続される。第2上側トランジスタH2のソースと出力コンデンサC1の一端には、出力端子T1が接続される。出力端子T1に出力電圧VOUTが生じる。出力端子T1に負荷が接続され、当該負荷に出力電流IOUTが流れる。
【0007】
スイッチ制御部105は、第1上側トランジスタH1、第1下側トランジスタL1、第2上側トランジスタH2、第2下側トランジスタL2の各ゲートに電圧を印加することで、各トランジスタのオンオフ制御を行う。
【0008】
このような構成の昇降圧DC−DCコンバータ100では、入力電圧VIN>出力電圧VOUTとする降圧動作の場合、第2上側トランジスタH2をオン、第2下側トランジスタL2をオフとした状態で、第1上側トランジスタH1と第1下側トランジスタL1とを相補的(排他的)にスイッチングさせる。なお、本明細書中で用いられる「相補的(排他的)」という文言は、2つのスイッチのオン/オフが完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点から、2つのスイッチのオン/オフ遷移タイミングで双方がオフとなる期間(デッドタイム)が設けられている場合も含む。
【0009】
一方、入力電圧VIN<出力電圧VOUTとする昇圧動作の場合、第1上側トランジスタH1をオン、第1下側トランジスタL1をオフとした状態で、第2上側トランジスタH2と第2下側トランジスタL2とを相補的(排他的)にスイッチングさせる。
【0010】
すなわち、第1上側トランジスタH1と第1下側トランジスタL1とで降圧用スイッチセットが構成され、第2上側トランジスタH2と第2下側トランジスタL2とで昇圧用スイッチセットが構成される。
【0011】
なお、上記従来技術に関連する文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、上記のような昇降圧DC−DCコンバータ100の場合、降圧動作・昇圧動作ともに、負荷が軽負荷である場合、各トランジスタの通常のスイッチング動作(以下、通常動作)時に、コイル110に流れるコイル電流ILがマイナス方向(プラス方向は前段から後段側へ流れる方向とする)に逆流することが生じうる。このとき、出力コンデンサC1からの逆流となるので、効率が低下する。
【0014】
そこで、負荷が軽負荷であることを検出し、スイッチング動作を通常動作からスリープ動作に切り替えることで効率を改善できる。軽負荷の検出はコイル電流をモニターすることで行うことができ、コイル電流ILがプラス方向からマイナス方向となる切替わり点を検出して、検出時にスイッチング動作を切替える制御方法が考えられる。
【0015】
ここで、
図27は、負荷が軽負荷の降圧動作時において通常動作からスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
図27において、上段から下段へかけて順に、コイル電流IL、第1接続ノードN1に生じる電圧である第1スイッチング電圧SW1、第2接続ノードN2に生じる電圧である第2スイッチング電圧SW2、第1上側トランジスタH1のオンオフ状態、第1下側トランジスタL1のオンオフ状態、第2上側トランジスタH2のオンオフ状態、および第2下側トランジスタL2のオンオン状態を示す。
【0016】
図27に示すように、通常動作(WAKE UP)では、第2上側トランジスタH2をオン、第2下側トランジスタL2をオフとした状態で、第1上側トランジスタH1をオン、第1下側トランジスタL1をオフとする。すると、プラス方向のコイル電流ILが増加する。そして、第1上側トランジスタH1をオフ、第1下側トランジスタL1をオンとすると、プラス方向のコイル電流ILは減少する。そして、コイル電流ILがプラス方向からマイナス方向へ切替わったこと(すなわちゼロクロス)をスイッチング制御部105が検出する。すると、スイッチング制御部105は、モードを通常動作からスリープ動作(SLEEP)へ切替え、4つの全てのトランジスタをオフとする。
【0017】
これにより、コイル電流ILがマイナス方向に逆流することが回避され、効率低下を抑制することができる。なお、コイル電流ILのゼロクロス検出は、例えば、第1下側トランジスタL1のドレイン・ソース間電圧を監視することで行うことができる。
【0018】
しかしながら、コイル電流ILのゼロクロス検出が早かったり、遅い場合が生じる。ゼロクロス検出が早い場合、スリープ動作へ移行したときにプラス方向のコイル電流ILが残っていることになる。この場合、全てのトランジスタがオフであるので、コイル電流ILは、第1下側トランジスタL1のボディダイオード、コイル110、第2上側トランジスタH2のボディダイオードを介した経路で流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。
【0019】
一方、ゼロクロス検出が遅かった場合、スリープ動作へ移行したときにマイナス方向のコイル電流ILが残っていることになる。この場合、全てのトランジスタがオフであるので、コイル電流ILは、第2下側トランジスタL2のボディダイオード、コイル110、第1上側トランジスタH1のボディダイオードを介した経路で流れ、入力電圧VIN側へ回生される。
【0020】
すなわち、ゼロクロス検出のずれがいずれの場合でも、電流が回生されることとなるので、電力の無駄はほとんど生じないことになる。
【0021】
しかしながら、スリープ動作時にすべてのトランジスタをオフとすると、入力電圧VIN、第1上側トランジスタH1、コイル110、第2上側トランジスタH2、出力電圧VOUTという順の経路でリーク電流が生じる場合に、出力電圧VOUTが持ち上がってしまうという問題点がある。
【0022】
ここで、
図28は、負荷が軽負荷の降圧動作時において通常動作から上記
図27とは異なる方法でのスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
図28の制御では、スリープ動作へ切替えたときに、両方の上側トランジスタをオフとし、両方の下側トランジスタをオンとする。
【0023】
これにより、入力電圧VINから第1上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流が生じた場合でも、リーク電流は第1下側トランジスタL1を介してグランド側へ流れる。従って、出力電圧VOUTが持ち上がることを回避できる。
【0024】
しかしながら、コイル電流ILのゼロクロス検出が早かったり、遅かったりしていずれかの方向のコイル電流ILが残った場合、残った電流は、第1下側トランジスタL1、第2下側トランジスタL2、およびコイル110を介したループ経路で流れ続ける。すると、トランジスタのオン抵抗、およびコイル110の抵抗成分(DCR)により、電力損失が生じてしまう問題がある。
【0025】
上記状況に鑑み、本発明は、軽負荷状態において、電力損失が生じることを抑制し、且つ、リーク電流による出力電圧上昇を抑制できる昇降圧DC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の第1態様に係る昇降圧DC/DCコンバータは、第1上側トランジスタと第1下側トランジスタとの接続構成を有し、入力電圧が印加される降圧用スイッチセットと、
第2上側トランジスタと第2下側トランジスタとの接続構成を有し、出力電圧を出力する昇圧用スイッチセットと、
前記降圧用スイッチセットの第1接続ノードと前記昇圧用スイッチセットの第2接続ノードとを接続するコイルと、
前記降圧用スイッチセットおよび前記昇圧用スイッチセットの各トランジスタをスイッチ制御するスイッチ制御部と、
を有し、
前記スイッチ制御部は、軽負荷を検出したときに通常動作から移行する第1スリープ動作と、前記第1スリープ動作の後に移行する第2スリープ動作を行い、
前記第1スリープ動作では、前記各トランジスタのうちオフとしたトランジスタのボディダイオードを介して前記コイル電流を前記入力電圧側または前記出力電圧側に流し、
前記第2スリープ動作では、前記第1接続ノードと前記第2接続ノードの少なくともいずれかからグランドへの電流経路を形成する構成としている。
【0027】
本発明の第2態様に係る昇降圧DC/DCコンバータは、第1上側トランジスタと第1ダイオードまたは第1下側トランジスタとが接続されて構成され、入力電圧が印加される第1接続構成と、
第2ダイオードまたは第2上側トランジスタと第2下側トランジスタとが接続されて構成され、出力電圧を出力する第2接続構成と、
前記第1接続構成の第1接続ノードと前記第2接続構成の第2接続ノードとを接続するコイルと、
前記第1接続構成と前記第2接続構成の各トランジスタをスイッチ制御するスイッチ制御部と、を備え、
前記第1ダイオードと前記第2ダイオードの少なくともいずれかは備え、
前記スイッチ制御部は、軽負荷を検出したときに通常動作から移行する第1スリープ動作と、前記第1スリープ動作の後に移行する第2スリープ動作を行い、
前記第1スリープ動作では、前記第2下側トランジスタおよび前記第1下側トランジスタを少なくともオフとし、
前記第2スリープ動作では、前記第1接続ノードと前記第2接続ノードの少なくともいずれかからグランドへの電流経路を形成する構成としている。
【0028】
本発明の第3態様に係る昇降圧DC/DCコンバータは、第1上側トランジスタと第1下側トランジスタとの接続構成を有し、入力電圧が印加される降圧用スイッチセットと、
第2上側トランジスタと第2下側トランジスタとの接続構成を有し、出力電圧を出力する昇圧用スイッチセットと、
前記降圧用スイッチセットの第1接続ノードと前記昇圧用スイッチセットの第2接続ノードとを接続するコイルと、
前記第1接続ノードと前記第2接続ノードの少なくともいずれかからグランドへの経路に配置される抵抗およびスイッチと、
前記降圧用スイッチセットおよび前記昇圧用スイッチセットの各トランジスタと、前記スイッチをスイッチ制御するスイッチ制御部と、
を有し、
前記スイッチ制御部は、軽負荷を検出したときに通常動作から移行するスリープ動作を行い、
前記スリープ動作では、前記各トランジスタのうちオフとしたトランジスタのボディダイオードを介して前記コイル電流を前記入力電圧側または前記出力電圧側に流し、
前記スリープ動作では、前記スイッチをオンとする構成としている。
【0029】
本発明の第4態様に係る昇降圧DC/DCコンバータは、第1上側トランジスタと第1ダイオードまたは第1下側トランジスタとが接続されて構成され、入力電圧が印加される第1接続構成と、
第2ダイオードまたは第2上側トランジスタと第2下側トランジスタとが接続されて構成され、出力電圧を出力する第2接続構成と、
前記第1接続構成の第1接続ノードと前記第2接続構成の第2接続ノードとを接続するコイルと、
前記第1接続ノードと前記第2接続ノードの少なくともいずれかからグランドへの経路に配置される抵抗およびスイッチと、
前記第1接続構成と前記第2接続構成の各トランジスタと、前記スイッチをスイッチ制御するスイッチ制御部と、
を備え、
前記第1ダイオードと前記第2ダイオードの少なくともいずれかは備え、
前記スイッチ制御部は、軽負荷を検出したときに通常動作から移行するスリープ動作を行い、
前記スリープ動作では、前記第1ダイオードと前記第2ダイオードの少なくともいずれかを介して前記コイル電流を前記出力電圧側に流し、
前記スリープ動作では、前記スイッチをオンとする構成としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の昇降圧DC−DCコンバータによれば、軽負荷状態において、電力損失が生じることを抑制し、且つ、リーク電流による出力電圧上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】昇降圧DC−DCコンバータの一構成例を示す回路図である。
【
図2】軽負荷時の降圧動作時において通常動作から本発明の一実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【
図3】一実施形態に係る第1スリープ動作時のスイッチパターンとコイル電流(プラス方向)の流れる経路を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る第1スリープ動作時のスイッチパターンとコイル電流(マイナス方向)の流れる経路を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る第2スリープ動作時のスイッチパターンとリーク電流の流れる経路を示す図である。
【
図6】軽負荷時の昇圧動作時において通常動作から本発明の一実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【
図7】変形例に係る第1スリープ動作時のスイッチパターンとコイル電流(プラス方向)の流れる経路を示す図である(降圧動作時)。
【
図8】変形例に係る第1スリープ動作時のスイッチパターンとコイル電流(マイナス方向)の流れる経路を示す図である(降圧動作時)。
【
図9】変形例に係る第1スリープ動作時のスイッチパターンとコイル電流(プラス方向)の流れる経路を示す図である(昇圧動作時)。
【
図10】変形例に係る第1スリープ動作時のスイッチパターンとコイル電流(マイナス方向)の流れる経路を示す図である(昇圧動作時)。
【
図11】変形例に係る第2スリープ動作時のスイッチパターンとリーク電流の流れる経路を示す図である。
【
図12】別の変形例に係る第2スリープ動作時のスイッチパターンとリーク電流の流れる経路を示す図である。
【
図13】降圧動作時にコイル電流のゼロクロス検出が早かった場合の一例を示すタイミングチャートである。
【
図14】降圧動作時にコイル電流のゼロクロス検出が遅かった場合の一例を示すタイミングチャートである。
【
図15】ダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータにおける第1スリープ動作時のスイッチングパターンを示す図である。
【
図16】ダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータにおける第2スリープ動作時のスイッチングパターンを示す図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る昇降圧DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【
図18】軽負荷時の降圧動作時において通常動作から本発明の一実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【
図19】一実施形態に係るスリープ動作時のスイッチパターンを示す図である。
【
図20】軽負荷時の昇圧動作時において通常動作から本発明の一実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【
図21】本発明の第1変形例に係る昇降圧DC−DCコンバータにおけるスリープ動作時のスイッチパターンを示す図である。
【
図22】本発明の第2変形例に係る昇降圧DC−DCコンバータにおけるスリープ動作時のスイッチパターンを示す図である。
【
図23】軽負荷時の降圧動作時において通常動作から本発明の別実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【
図24】軽負荷時の昇圧動作時において通常動作から本発明の別実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【
図25】本発明の一実施形態に係るダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【
図26】従来例に係る昇降圧DC−DCコンバータの構成を示す図である。
【
図27】従来例に係る昇降圧DC−DCコンバータにおけるスリープ動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図28】従来例に係る昇降圧DC−DCコンバータにおけるスリープ動作の別の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0033】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る昇降圧DC−DCコンバータの構成を示す。
図1の昇降圧DC−DCコンバータ10の構成については、先述した
図26に示した構成と同様であるので、ここでは説明を省く。以下では、本発明の主な特徴となるスリープ動作の方法について特に説明する。また、以下で説明する各種のスイッチ制御およびコイル電流ILのゼロクロス検出を行う主体は、スイッチ制御部15であるとする。
【0034】
<1−1.スリープ動作の基本的な実施形態>
ここでは、昇降圧DC−DCコンバータ10において実行されるスリープ動作の基本的な実施形態について説明する。
図2は、負荷が軽負荷の降圧動作時において通常動作から本実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。
【0035】
図2に示すように、本実施形態では、通常動作(WAKE UP)によりコイル電流ILが増加・減少し、コイル電流ILのゼロクロス検出がされると、通常動作からスリープ動作へ切替わる。具体的には、まず第1スリープ動作(SLEEP1)へ移行し、その後、第2スリープ動作(SLEEP2)へ移行する。
【0036】
第1スリープ動作へ移行すると、昇降圧DC−DCコンバータ10における4つの全てのトランジスタがオフとされる。このとき、ゼロクロス検出が早く、プラス方向のコイル電流ILが残った場合、
図3に示すように、コイル電流ILは、第1下側トランジスタL1のボディダイオード、コイル20、第2上側トランジスタH2のボディダイオードの順の経路で流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。一方、ゼロクロス検出が遅く、マイナス方向のコイル電流ILが残った場合、
図4に示すように、コイル電流ILは、第2下側トランジスタL2のボディダイオード、コイル20、第1上側トランジスタH1のボディダイオードの順の経路で流れ、入力電圧VIN側へ回生される。
【0037】
このように、ゼロクロス検出がいずれにずれた場合でも、電流は出力電圧VOUT側または入力電圧VIN側へ回生されるので、電力損失を抑制できる。
【0038】
図2に示すように、第1スリープ動作へ移行したタイミングから一定時間が経過すると、第2スリープ動作へ移行される。第2スリープ動作に移行すると、2つの上側トランジスタはオフとされ、2つの下側トランジスタはオンとされる。
【0039】
このとき、
図5に示すように、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流が生じた場合に、リーク電流はオンとなった第1下側トランジスタL1を介してグランドへ流れる。従って、リーク電流が出力電圧VOUT側へ流れて出力電圧VOUTが持ち上がってしまうことを抑制できる。
【0040】
このように、本実施形態のスリープ動作であれば、コイル電流のゼロクロス検出がずれた場合でも電力損失が生じることを抑制し、且つ、リーク電流による出力電圧上昇を抑制できる。
【0041】
なお、
図6に示すように、負荷が軽負荷の昇圧動作の場合でも、上述した降圧動作の場合と同様のスリープ動作を行うことができる。すなわち、本実施形態であれば、入力電圧VINと出力電圧VOUTの大小関係に依らず、同様のスリープ動作を行うことができ、同様の効果を得ることができる。
【0042】
<1−2.第1スリープ動作の変形例>
第1スリープ動作については、上述したものとは他に、次のようなものとしてもよい。ここでの変形例に係る第1スリープ動作では、降圧動作時と昇圧動作時とで制御を切替える。
【0043】
具体的には、降圧動作で入力電圧VIN>出力電圧VOUTの場合、
図7、
図8に示すように、第2上側トランジスタH2をオンとし、それ以外のトランジスタをオフとする。
【0044】
この場合、コイル電流ILのゼロクロス検出が早く、プラス方向のコイル電流ILが残った場合、
図7に示すように、コイル電流ILは、第1下側トランジスタL1のボディダイオード、コイル20、第2上側トランジスタH2のチャネルの順の経路で流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。一方、ゼロクロス検出が遅く、マイナス方向のコイル電流ILが残った場合、
図8に示すように、コイル電流ILは、出力電圧VOUT側から第2上側トランジスタH2のチャネル、コイル20、第1上側トランジスタH1のボディダイオードの順の経路で流れ、入力電圧VIN側へ回生される。
【0045】
また、昇圧動作で入力電圧VIN<出力電圧VOUTの場合、
図9、
図10に示すように、第1上側トランジスタH1をオンとし、それ以外のトランジスタをオフとする。
【0046】
この場合、コイル電流ILのゼロクロス検出が早く、プラス方向のコイル電流ILが残った場合、
図9に示すように、コイル電流ILは、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1のチャネル、コイル20、第2上側トランジスタH2のボディダイオードの順の経路で流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。一方、ゼロクロス検出が遅く、マイナス方向のコイル電流ILが残った場合、
図10に示すように、コイル電流ILは、第2下側トランジスタL2のボディダイオード、コイル20、第1上側トランジスタH1のチャネルの順の経路で流れ、入力電圧VIN側へ回生される。
【0047】
このように、本変形例に係る第1スリープ動作であっても、コイル電流ILのゼロクロス検出のずれが生じた場合でも、電流は入力電圧VINまたは出力電圧VOUT側へ回生されるので、電力損失を抑制することができる。
【0048】
<1−3.第2スリープ動作の変形例>
第2スリープ動作については、上述したものとは他に、次のようなものとしてもよい。例えば、
図11に示すように、第2スリープ動作では、第1下側トランジスタL1をオンとし、それ以外のトランジスタをオフとしてもよい。この場合、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流が生じた場合に、リーク電流はオンとなった第1下側トランジスタL1を介してグランドへ流れる。従って、リーク電流が出力電圧VOUT側へ流れて出力電圧VOUTが持ち上がってしまうことを抑制できる。
【0049】
また、
図12に示すように、第2スリープ動作では、第2下側トランジスタL2をオンとし、それ以外のトランジスタをオフとしてもよい。この場合、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流が生じた場合に、リーク電流はコイル20、およびオンとなった第2下側トランジスタL2を介してグランドへ流れる。従って、リーク電流が出力電圧VOUT側へ流れて出力電圧VOUTが持ち上がってしまうことを抑制できる。
【0050】
なお、第2スリープ動作の前に行う第1スリープ動作では、いずれの下側トランジスタもオフとするので、第2スリープ動作では、
図11、
図12で示したようにいずれかの下側トランジスタをオフとする方法のほうがオフを維持できるので、スイッチングの切替を行う必要がない。
【0051】
<1−4.第1スリープ動作から第2スリープ動作へ移行するタイミングについて>
先述したように、第1スリープ動作に移行したタイミングから一定時間経過したタイミングで、第2スリープ動作へ移行する。ここでは、この一定時間について説明する。
【0052】
図13は、昇降圧DC−DCコンバータ10(
図1)において、降圧動作のときにコイル電流ILのゼロクロス検出が早かった場合の一例を示すタイミングチャートである。この場合、プラス方向のコイル電流ILが残った状態で通常動作から第1スリープ動作へ移行する。
【0053】
この場合、
図3に示すように第1スリープ動作では全てのトランジスタをオフとし、電流がトランジスタのボディダイオードを流れるので、第1接続ノードN1に生じる電圧である第1スイッチング電圧SW1は、グランドより低くなり、第2接続ノードN2に生じる電圧である第2スイッチング電圧SW2は、出力電圧VOUTよりも高くなる。
【0054】
その後、コイル電流ILがゼロになると、第1接続ノードN1および第2接続ノードN2の各寄生容量とコイル20により共振が発生し、第1スイッチング電圧SW1および第2スイッチング電圧SW2が揺れる。従って、第1スリープ動作へ移行したタイミングから、共振が発生して第1スイッチング電圧SW1および第2スイッチング電圧SW2に揺れが生じたときまでの時間を上記一定時間として予め設定することが望ましい。これにより、コイル電流ILがゼロになるのを待って第2スリープ動作へ移行することができる。
【0055】
同様に、
図14は、昇降圧DC−DCコンバータ10において、降圧動作のときにコイル電流ILのゼロクロス検出が遅かった場合の一例を示すタイミングチャートである。この場合、マイナス方向のコイル電流ILが残った状態で通常動作から第1スリープ動作へ移行する。
【0056】
この場合、
図4に示すように第1スリープ動作では全てのトランジスタをオフとし、電流がトランジスタのボディダイオードを流れるので、第1スイッチング電圧SW1は、入力電圧VINよりも高くなり、第2スイッチング電圧SW2は、グランドよりも低くなる。
【0057】
その後、コイル電流ILがゼロになると、共振の発生により第1スイッチング電圧SW1および第2スイッチング電圧SW2が揺れることは先述と同様である。従って、上記一定時間を先述のように設定することが望ましい。
【0058】
<1−5.ダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータ>
ここでは、ダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータを用いた実施形態について説明する。
図15は、本発明の一実施形態に係るダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータ200の構成を示す図である。昇降圧DC−DCコンバータ200は、上側トランジスタH1と、ダイオードD1と、コイル20と、ダイオードD2と、下側トランジスタL2と、出力コンデンサC1と、スイッチ制御部152と、を備える。
【0059】
上側トランジスタH1のソースには、入力電圧VINの印加端が接続され、上側トランジスタH1のドレインには、ダイオードD1のカソードが接続される。ダイオードD1のアノードには、グランドが接続される。
【0060】
下側トランジスタL2のソースには、グランドが接続され、下側トランジスタL2のドレインには、ダイオードD2のアノードが接続される。ダイオードD2のカソードには、出力コンデンサC1の一端が接続される。ダイオードD2と出力コンデンサC1との接続点に、出力電圧VOUTが発生する。
【0061】
上側トランジスタH1とダイオードD1とが接続される第1接続ノードN1にコイル20の一端が接続され、ダイオードD2と下側トランジスタL2とが接続される第2接続ノードN2にコイル20の他端が接続される。
【0062】
スイッチ制御部152は、上側トランジスタH1と下側トランジスタL2のスイッチ制御を行う。スイッチ制御部152は、下記の通常動作およびスリープ動作の制御を行う主体となる。
【0063】
降圧動作では、下側トランジスタL2をオフに維持した状態で、上側トランジスタH1のオンオフを繰り返す。昇圧動作では、上側トランジスタH1をオンに維持した状態で、下側トランジスタL2のオンオフを繰り返す。
【0064】
本実施形態でスリープ動作は、第1スリープ動作と、その後に行う第2スリープ動作を含む。スイッチ制御部152は、軽負荷状態での降圧動作または昇圧動作のときに、コイル電流ILのゼロクロスを検出すると、第1スリープ動作へ移行し、上側トランジスタH1および下側トランジスタL2をともにオフとする(
図15)。これにより、ゼロクロスの検出が早くてコイル電流ILがプラス方向に残ったとしても、コイル電流ILはダイオードD1、コイル20、およびダイオードD2を介して流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。従って、電力損失を抑えることができる。
【0065】
第1スリープ動作の後、第2スリープ動作へ移行し、
図16に示すように、上側トランジスタH1をオフ、下側トランジスタL2をオンとする。これにより、
図16の実線矢印で示すように、入力電圧VINから上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流が生じた場合でも、リーク電流は下側トランジスタL2を介してグランド側へ流れる。従って、出力電圧VOUTが持ち上がることを回避できる。
【0066】
なお、第1スリープ動作では、下側トランジスタL2はオフとし、VIN>VOUTの場合は、上側トランジスタH1をオフ、VIN<VOUTの場合は、上側トランジスタH1をオンとしてもよい。
【0067】
また、昇降圧DC−DCコンバータ200の構成において、ダイオードD1を下側トランジスタL1に置き換えてもよい。この場合、降圧動作では、下側トランジスタL2をオフとし、上側トランジスタH1と下側トランジスタL1を相補的にスイッチングする。昇圧動作では、上側トランジスタH1をオンとした状態で、下側トランジスタL2をオンオフする。
【0068】
この構成においては、第1スリープ動作では、全てのトランジスタをオフとする。これにより、ゼロクロス検出が早くてコイル電流ILがプラス方向に残ったとしても、コイル電流ILは、オフとなった下側トランジスタL1のボディダイオード、コイル20、およびダイオードD2を介して流れ、出力電圧VOUT側に回生される。そして、第2スリープ動作では、上側トランジスタH1をオフとし、下側トランジスタL1、L2の少なくとも一方をオンとする。これにより、リーク電流はグランドへ流れるので、出力電圧VOUTが持ち上がることを回避できる。
【0069】
また、昇降圧DC−DCコンバータ200の構成において、ダイオードD2を上側トランジスタH2に置き換えてもよい。この場合、降圧動作では、下側トランジスタL2をオフとし、上側トランジスタH2をオンとし、上側トランジスタH1をオンオフする。昇圧動作では、上側トランジスタH1をオンとした状態で、上側トランジスタH2と下側トランジスタL2を相補的にスイッチングする。
【0070】
この構成においては、第1スリープ動作では、全てのトランジスタをオフとする。これにより、ゼロクロス検出が早くてコイル電流ILがプラス方向に残ったとしても、コイル電流ILは、ダイオードD1、コイル20、およびオフとなった上側トランジスタH2のボディダイオードを介して流れ、出力電圧VOUT側に回生される。そして、第2スリープ動作では、上側トランジスタH1をオフとし、下側トランジスタL2をオンとする。これにより、リーク電流はグランドへ流れるので、出力電圧VOUTが持ち上がることを回避できる。
【0071】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について述べる。
【0072】
<2−1.昇降圧DC−DCコンバータの構成>
図17は、本発明の一実施形態に係る昇降圧DC−DCコンバータ10の構成を示す図である。
図17に示す昇降圧DC−DCコンバータ10は、先述した
図26に示す昇降圧DC−DCコンバータ100と同様の構成に対して、抵抗R1およびスイッチ21を追加した構成となる。
【0073】
昇降圧DC−DCコンバータ10において、第1上側トランジスタH1、第1下側トランジスタL1、第2上側トランジスタH2、第2下側トランジスタL2、コイル110、出力コンデンサC1、出力端子T1から構成される部分については、
図26と同様であるので、ここでは詳述を省く。
【0074】
抵抗R1およびスイッチ21に関する構成について具体的に述べると、第1接続ノードN1には、抵抗R1の一端が接続される。抵抗R1の他端は、nチャネルMOSFETで構成されるスイッチ21のドレインに接続される。スイッチ21のソースは、グランドに接続される。すなわち、第1接続ノードN1は、グランドにプルダウンされる。
【0075】
また、昇降圧DC−DCコンバータ10はスイッチ制御部15を有しており、スイッチ制御部15は、上側トランジスタおよび下側トランジスタのオンオフ制御を行うとともに、スイッチ21のオンオフ制御を行う。スイッチ制御部15は、以下で説明するスリープ動作を行う主体となる。また、スイッチ制御部15は、コイル電流ILのゼロクロス検出も行う。
【0076】
<2−2.スリープ動作の第1実施形態>
ここでは、昇降圧DC−DCコンバータ10において実行されるスリープ動作の第1実施形態について説明する。
図18は、負荷が軽負荷の降圧動作時において通常動作から第1実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。なお、
図18において、上段から下段へかけて順に、コイル電流IL、第1接続ノードN1に生じる電圧である第1スイッチング電圧SW1、第2接続ノードN2に生じる電圧である第2スイッチング電圧SW2、第1上側トランジスタH1のオンオフ状態、第1下側トランジスタL1のオンオフ状態、第2上側トランジスタH2のオンオフ状態、および第2下側トランジスタL2のオンオン状態を示し、最下段には、スイッチ21のオンオフ状態を示す。
【0077】
図18に示すように、本実施形態では、通常動作(WAKE UP)においては、第2上側トランジスタH2をオンとし、第2下側トランジスタL2をオフとした状態で、第1上側トランジスタH1と第1下側トランジスタL1を相補的にスイッチングする。このとき、スイッチ21はオフとする。通常動作においてプラス方向のコイル電流ILが増加・減少し、コイル電流ILのゼロクロス検出がされると、通常動作からスリープ動作(SLEEP)へ切替わる。
【0078】
スリープ動作へ移行すると、昇降圧DC−DCコンバータ10における上側トランジスタと下側トランジスタの全てがオフとされるとともに、スイッチ21がオンとされる。このときのスイッチパターンを
図19に示す。
【0079】
このとき、ゼロクロス検出が早く、プラス方向のコイル電流ILが残った場合、
図19の破線矢印に示すように、コイル電流ILは、第1下側トランジスタL1のボディダイオード、コイル110、第2上側トランジスタH2のボディダイオードの順の経路で流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。一方、ゼロクロス検出が遅く、マイナス方向のコイル電流ILが残った場合、
図19の一点鎖線矢印に示すように、コイル電流ILは、第2下側トランジスタL2のボディダイオード、コイル110、第1上側トランジスタH1のボディダイオードの順の経路で流れ、入力電圧VIN側へ回生される。
【0080】
このように、ゼロクロス検出がいずれにずれた場合でも、電流は出力電圧VOUT側または入力電圧VIN側へ回生されるので、電力損失を抑制できる。
【0081】
また、このとき、
図19の実線矢印に示すように、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1を介してリーク電流が流れた場合に、リーク電流は第1接続ノード、抵抗R1、およびスイッチ21を介してグランドへ流れる。従って、リーク電流が出力電圧VOUT側へ流れて、出力電圧VOUTが上昇することを回避できる。
【0082】
なお、抵抗R1の抵抗値が小さいと、コイル電流ILの一部が抵抗R1に流れるため、電力損失が生じる。しかしながら、抵抗R1の抵抗値は、リーク電流を吸収できれば或る程度大きな値でもよく、リーク電流と抵抗R1の抵抗値との積により算出される電圧値が出力電圧VOUTよりも低ければ、出力電圧VOUTが持ち上がることはない。
【0083】
このように本実施形態に係るスリープ動作を行うことにより、コイル電流ILのゼロクロス検出がずれた場合でも電力損失が生じることを抑制し、且つ、リーク電流による出力電圧VOUTの上昇を抑制できる。
【0084】
また、
図20に示すように、負荷が軽負荷の昇圧動作の場合でも、上述した降圧動作の場合と同様のスリープ動作を行うことができる。すなわち、本実施形態であれば、入力電圧VINと出力電圧VOUTの大小関係に依らず、同様のスリープ動作を行うことができ、同様の効果を得ることができる。
【0085】
<2−3.昇降圧DC−DCコンバータの構成に関する変形例>
図21は、昇降圧DC−DCコンバータの第1変形例の構成を示す図である。
図21に示す昇降圧DC−DCコンバータ10Aの構成は、先述した
図17に示す構成との相違点として、抵抗R1の一端が第2接続ノードN2に接続されることである。すなわち、第2接続ノードN2がプルダウンされる構成となる。昇降圧DC−DCコンバータ10Aの有するスイッチ制御部15Aは、上側トランジスタと下側トランジスタのオンオフ制御を行うとともに、スイッチ21のオンオフ制御を行う。
【0086】
このような昇降圧DC−DCコンバータ10Aにおいても、先述した第1実施形態に係るスリープ動作と同様のスリープ動作を行うことができる。すなわち、スリープ動作に移行すると、
図21に示すように、上側トランジスタと下側トランジスタを全てオフとするとともに、スイッチ21をオンとする。
【0087】
これにより、
図21の矢印に示すように、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流は、コイル110、抵抗R1、およびスイッチ21を介してグランドへ流れる。これにより、リーク電流による出力電圧VOUTの上昇を回避できる。
【0088】
また、
図22は、昇降圧DC−DCコンバータの第2変形例の構成を示す図である。
図22に示す昇降圧DC−DCコンバータ10Bの構成では、第1接続ノードN1とグランドの間に抵抗R1およびスイッチ21が設けられるとともに、第2接続ノードN2とグランドの間に抵抗R2およびスイッチ25が設けられる。すなわち、第1接続ノードN1と第2接続ノードN2の両方がプルダウンされる構成となる。
【0089】
このような昇降圧DC−DCコンバータ10Bにおいても、先述した第1実施形態に係るスリープ動作と同様のスリープ動作を行うことができる。すなわち、スリープ動作に移行すると、
図22に示すように、上側トランジスタと下側トランジスタを全てオフとするとともに、スイッチ21およびスイッチ25をともにオンとする。
【0090】
これにより、
図22の矢印に示すように、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流は、抵抗R1、およびスイッチ21を介してグランドへ流れる。これにより、リーク電流による出力電圧VOUTの上昇を回避できる。
【0091】
<2−4.スリープ動作の第2実施形態>
次に、先述した
図17に示す昇降圧DC−DCコンバータ10において行われるスリープ動作の第2実施形態について説明する。
【0092】
図23は、負荷が軽負荷の降圧動作時において通常動作から第2実施形態に係るスリープ動作へ切替える制御を行った例を示すタイミングチャートである。本実施形態では、スリープ動作は、第1スリープ動作と、第1スリープ動作の後に行う第2スリープ動作から構成される。
【0093】
図23に示すように、通常動作(WAKE UP)においてプラス方向のコイル電流ILが増加・減少し、コイル電流ILのゼロクロス検出がされると、まず第1スリープ動作(SLEEP1)へ移行する。第1スリープ動作では、上側トランジスタと下側トランジスタの全てがオフとされるとともに、スイッチ21がオフとされる。
【0094】
このとき、先述した
図19でも示した通り、ゼロクロス検出が早い場合、遅い場合のいずれの場合(コイル電流ILの向きがいずれの方向)でも、コイル電流ILはオフとなったトランジスタのボディダイオードを介して流れ、出力電圧VOUT側または入力電圧VIN側へ回生される。但し、本実施形態の第1スリープ動作では、
図19においてスイッチ21はオフとした状態であるので、コイル電流ILの一部が抵抗R1に流れることは回避され、電力損失の発生を抑制することができる。
【0095】
第1スリープ動作へ移行したタイミングから一定時間が経過したタイミングにて、
図23に示すように、第2スリープ動作へ移行する。この一定時間は、第1スリープ動作時に回生されるコイル電流ILが減少してゼロとなるのに必要な時間に設定されることが望ましい。
【0096】
第2スリープ動作では、上側トランジスタと下側トランジスタの全てがオフとされるとともに、スイッチ21がオンとされる。これにより、スイッチパターンとしては
図19で示したものと同様となり、
図19の実線矢印で示したように、入力電圧VIN側から第1上側トランジスタH1を介してリーク電流が流れた場合に、リーク電流は、抵抗R1およびスイッチ21を介してグランドへ流れる。従って、リーク電流が出力電圧VOUT側へ流れて出力電圧VOUTが上昇することが回避される。
【0097】
なお、
図17に示す昇降圧DC−DCコンバータ10の構成において、抵抗R1およびスイッチ21を設けない構成として、第2スリープ動作時には、両方の上側トランジスタはオフとし、下側トランジスタの少なくともいずれか一方をオンとすることでも、リーク電流を下側トランジスタを介してグランドへ流すことができる。
【0098】
しかしながら、下側トランジスタのオン抵抗は小さいため、第1上側トランジスタH1のドレイン・ソース間がショートした場合、入力電圧VIN側からグランドへの短絡経路が形成され、過電流が生じる虞がある。これに対し、本実施形態であれば、第1上側トランジスタH1のドレイン・ソース間がショートした場合でも、電流は抵抗R1を介してグランドへ流れるので、抵抗R1によって電流は制限され、過電流の発生は抑制される。
【0099】
なお、
図24に示すように、軽負荷時の昇圧動作の場合においても、先述した
図23の降圧動作の場合と同様のスイッチ制御にて、第1スリープ動作、および第2スリープ動作を行う。
【0100】
また、第1スリープ動作と第2スリープ動作の2段階を行う本実施形態に係るスリープ動作については、
図17に示す構成の昇降圧DC−DCコンバータに限らず、
図21または
図22に示す構成の昇降圧DC−DCコンバータにおいても実施することができる。
【0101】
すなわち、
図21に示す構成の昇降圧DC−DCコンバータ10Aの場合は、第2接続ノードN2に接続されたスイッチ21を第1スリープ動作ではオフとし、第2スリープ動作ではオンとする。また、
図22に示す構成の昇降圧DC−DCコンバータ10Bの場合は、第1接続ノードN1に接続されたスイッチ21と第2接続ノードN2に接続されたスイッチ25をともに、第1スリープ動作ではオフとし、第2スリープ動作ではオンとする。
【0102】
これにより、
図21、
図22のいずれの構成であっても、第1スリープ動作によって、コイル電流ILのゼロクロス検出がずれた場合に電流の回生を行い、その際、コイル電流ILの一部が抵抗に流れることを回避できる。そして、第2スリープ動作によって、リーク電流をグランドへ流し、リーク電流によって出力電圧VOUTが上昇することを回避できる。
【0103】
<2−5.ダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータ>
ここでは、ダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータを用いた実施形態について説明する。
図25は、本発明の一実施形態に係るダイオード整流型の昇降圧DC−DCコンバータ15Cの構成を示す図である。昇降圧DC−DCコンバータ15Cは、上側トランジスタH1と、ダイオードD1と、コイル110と、ダイオードD2と、下側トランジスタL2と、出力コンデンサC1と、抵抗R1と、スイッチ21と、スイッチ制御部15Cと、を備える。
【0104】
上側トランジスタH1のソースには、入力電圧VINの印加端が接続され、上側トランジスタH1のドレインには、ダイオードD1のカソードが接続される。ダイオードD1のアノードには、グランドが接続される。
【0105】
下側トランジスタL2のソースには、グランドが接続され、下側トランジスタL2のドレインには、ダイオードD2のアノードが接続される。ダイオードD2のカソードには、出力コンデンサC1の一端が接続される。ダイオードD2と出力コンデンサC1との接続点に、出力電圧VOUTが発生する。
【0106】
上側トランジスタH1とダイオードD1とが接続される第1接続ノードN1にコイル110の一端が接続され、ダイオードD2と下側トランジスタL2とが接続される第2接続ノードN2にコイル110の他端が接続される。
【0107】
抵抗R1とスイッチ21は、第1接続ノードN1とグランドとの間に接続される。
【0108】
スイッチ制御部15Cは、上側トランジスタH1、下側トランジスタL2、およびスイッチ21のスイッチ制御を行う。スイッチ制御部15Cは、下記の通常動作およびスリープ動作の制御を行う主体となる。
【0109】
降圧動作では、下側トランジスタL2をオフに維持した状態で、上側トランジスタH1のおオンオフを繰り返す。昇圧動作では、上側トランジスタH1をオンに維持した状態で、下側トランジスタL2のオンオフを繰り返す。なお、昇降圧動作時には、スイッチ21はオフである。
【0110】
スイッチ制御部15Cは、軽負荷状態での降圧動作または昇圧動作のときに、コイル電流ILのゼロクロスを検出すると、スリープ動作へ移行し、上側トランジスタH1および下側トランジスタL2をともにオフとする(
図25)。これにより、ゼロクロスの検出が早くてコイル電流ILがプラス方向に残ったとしても、コイル電流ILはダイオードD1、コイル110、およびダイオードD2を介して流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。従って、電力損失を抑えることができる。
【0111】
このとき、スイッチ21をオンとする。これにより、
図25の実線矢印で示すように、入力電圧VINから上側トランジスタH1を介して流れるリーク電流が生じた場合でも、リーク電流は抵抗R1およびスイッチ21を介してグランド側へ流れる。従って、出力電圧VOUTが持ち上がることを回避できる。
【0112】
なお、スリープ動作は、第1スリープ動作、および第2スリープ動作の2段階で行ってもよい。この場合、第1スリープ動作では、スイッチ21はオフとして、上側トランジスタH1と下側トランジスタL2をともにオフとする。これにより、コイル電流ILの一部がグランドに流れることを抑制できる。第2スリープ動作では、上側トランジスタH1と下側トランジスタL2をともにオフとした状態で、スイッチ21をオンとする。
【0113】
また、上記の昇降圧DC−DCコンバータ10Cにおいて、抵抗とスイッチの組の構成を、第1接続ノードN1側ではなく第2接続ノードN2側に接続してもよいし、各接続ノードに接続するよう2つの組を設けてもよい。
【0114】
また、昇降圧DC−DCコンバータ10Cの構成において、ダイオードD1を下側トランジスタL1に置き換えてもよい。この場合、スリープ動作では、上側トランジスタH1、下側トランジスタL1、および下側トランジスタL2をともにオフとする。これにより、ゼロクロスの検出が早くてコイル電流ILがプラス方向に残ったとしても、コイル電流ILはオフとなった下側トランジスタL1のボディダイオード、コイル110、およびダイオードD2を介して流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。
【0115】
また、昇降圧DC−DCコンバータ10Cの構成において、ダイオードD2を上側トランジスタH2に置き換えてもよい。この場合、スリープ動作では、上側トランジスタH1、上側トランジスタH2、および下側トランジスタL2をともにオフとする。これにより、ゼロクロスの検出が早くてコイル電流ILがプラス方向に残ったとしても、コイル電流ILはダイオードD1、コイル110、およびオフとなった上側トランジスタH2のボディダイオードを介して流れ、出力電圧VOUT側へ回生される。
【0116】
<3.その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で様々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。