(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のナノアンテナのそれぞれは、前記複数の金属材の配置間隔が前記二次光の1/4波長よりも大きく且つ前記二次光の3/4波長よりも小さくなるように形成される、請求項1に記載の発光装置。
【背景技術】
【0002】
ナノアンテナにおける局在表面プラズモン共鳴で生じる表面格子共鳴を利用した種々の技術が知られている。例えば、特許文献1には、蛍光体と蛍光体の極近傍に配置されるナノアンテナとを有する照明装置において、ナノアンテナにおける局在表面プラズモン共鳴により生じる表面格子共鳴を支援するナノアンテナ配置技術が記載されている。特許文献1に記載される照明装置は、ナノアンテナにおける局在表面プラズモン共鳴で生じる表面格子共鳴により、蛍光体の変換効率を向上させることができるので、蛍光体の厚さを薄くすることができる。
【0003】
また、特許文献2には、複数のナノアンテナを有する第1の周期的なアンテナアレイが第1波長変換層内に配置され、複数のナノアンテナを有する第2の周期的なアンテナアレイが第2波長変換層内に配置される照明装置が記載される。特許文献2に記載される照明装置は、第1波長変換層及び第2波長変換層の双方にアンテナアレイが配置されるので、第1波長変換層及び第2波長変換層の双方の変換効率を向上させることができる。
【0004】
また、特許文献3には、励起光が入射する入射面に平行な所定の第1方向の長さと、入射面に平行かつ第1方向に垂直な第2方向の長さとが異なる複数のナノアンテナと、励起光とは異なる波長の光を発する波長変換層とを備える光学装置が記載される。特許文献3に記載される光学装置は、入射面に平行な面内の直交する2方向のナノアンテナの長さを相違させることで、出射する光の偏光方向を制御できるので、所望の偏光成分の変換効率を高くすることができる。
【0005】
また、特許文献4には、金属層と、金属層の上方に設けられ、所定の周期で配列された線状体と、金属層の上方に設けられ、複数のナノアンテナ及び誘電体部を含み、金属層の法線方向に離間して配置されたナノ構造体とを有する電場増強素子が記載される。特許文献4に記載される電場増強素子は、線状体による伝搬表面プラズモンによって、ナノ構造体のナノアンテナの並ぶ方向に沿う方向の電場が与えられて、ナノアンテナの周辺に強い局在表面プラズモンを発生させ高い電場増強度の領域が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜4に記載される技術により、ナノアンテナにおける局在表面プラズモン共鳴で生じる表面格子共鳴を利用した技術の種々の課題が解決される。しかしながら、ナノアンテナにおける局在表面プラズモン共鳴で生じる表面格子共鳴を利用した発光装置において、発光装置から垂直に指向特性を持つ光が出射されるが、一方、回折現象を用いているがゆえに大きなサイドローブをもち、光源のムラとなる。
【0008】
そこで、一実施形態では、ナノアンテナにおける局在表面プラズモン共鳴を利用した発光装置から出射される出射光の指向特性を向上可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、実施形態に係る発光装置は、一次光を放射する発光素子と、発光素子の上部に配置された基材と、一次光を波長変換して一次光と波長が異なる二次光を出射する波長変換材料と、二次光の入射による局在表面プラズモン共鳴によって電場を発生させ、且つ、電場によって波長変換材料から出射される二次光の指向特性を変更するように、波長変換材料に近接して基材上に配置された複数のナノアンテナと、を有し、複数のナノアンテナのそれぞれは、基材上において、平面視で重なって配置される複数の金属材、及び、複数の金属材の間に配置される誘電体を含む。
【0010】
さらに、実施形態に係る発光装置では、二次光の指向特性は、高くなるように変更されることが好ましい。
【0011】
さらに、実施形態に係る発光装置では、ナノアンテナは、複数の金属材の配置間隔が二次光の1/4波長よりも大きく且つ二次光の3/4波長よりも小さくなるように形成されることが好ましい。
【0012】
さらに、実施形態に係る発光装置では、複数の金属材の配置間隔は、二次光の1/2波長に等しいことが好ましい。
【0013】
さらに、実施形態に係る発光装置では、誘電体の屈折率は、波長変換材料の屈折率の0.75倍よりも大きく且つ1.25倍よりも小さい値であることが好ましい。
【0014】
さらに、実施形態に係る発光装置では、誘電体は、波長変換層を形成する材料と同一の材料により形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、実施形態に係る発光装置では、波長変換材料の少なくとも一部は、表面プラズモン共鳴が発生する領域に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
一実施形態では、ナノアンテナにおける局在表面プラズモン共鳴を利用した発光装置から出射される出射光の指向特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る発光装置について説明する。ただし、実施形態は図面又は以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0019】
(実施形態に係る発光装置の概要)
実施形態に係る発光装置は、波長変換材料を含有する波長変換層の内部に重なるように交互に積層された金属材と誘電体と有し、波長変換層の内部に格子状に配置されたナノアンテナを有する。実施形態に係る発光装置が有するナノアンテナは、誘電体を介して隣接する金属材の間の配置間隔が金属材に入射した二次光が放射方向に出射される長さになる配置、すなわちエンドファイア配置になるように形成される。実施形態に係る発光装置は、金属材がエンドファイア配置になるように配置されたナノアンテナを有するので、指向特性が高い光を出射できる。
【0020】
(ナノアンテナによる蛍光体の変換効率の向上について)
実施形態に係る発光装置について説明する前に、ナノアンテナを蛍光体に近接配置することにより蛍光体の変換効率が向上する原理について簡単に説明する。
【0021】
入射光がナノアンテに入射すると、ナノアンテナの周囲に配置される蛍光体等の誘電体との界面に分極電荷が生じる。ナノアンテナの伝導電子は、分極電荷を打ち消すために、ナノアンテナ誘電体との界面に生じた分極電荷に向かって移動して、ナノアンテナの表面に分極が生じる。ナノアンテナは、伝導電子の移動により分極が生じることで、表面に局所的な電界が生じて、入射光と共鳴する。ナノアンテナと入射光の共鳴は、ナノアンテナの表面電流波、すなわち表面分極波である表面プラズモンを励起するため、局在表面プラズモン共鳴とも称される。
【0022】
局在表面プラズモン共鳴が発生することにより、ナノアンテナに接する誘電体表面の近傍に強い電場が発生する。ナノアンテナに接する誘電体表面の近傍に強い電場が発生することで、ナノアンテナに接する誘電体表面の近傍に局所的な電場の閉じ込め現象が生じて、共振器が形成される。形成される共振器の内部における蛍光体の発光速度γ
cabは、共振器のQ値がQであり、入射光の波長がλであり、共振器の体積がVであり、共振器中の屈折率がnであり、蛍光体の自然発光速度がγ
freeであるとき、パーセル効果により以下の式(1)で示される。
【0024】
式(1)は、局在表面プラズモン共鳴の発生による電場が強くなり、ナノアンテナに接する誘電体表面の近傍に形成される共振器体積が小さくなると、蛍光体の発光速度γ
cabが速くなり、蛍光体の変換効率が向上する。
【0025】
(実施形態に係る発光装置の構造及び機能)
図1は実施形態に係る発光装置の斜視図であり、
図2は
図1に示す発光装置のA−A´線に沿う断面図である。
【0026】
発光装置1は、実装基板10と、回路基板11と、LED12と、反射部材13と、基材14と、波長変換層15、複数のナノアンテナ16とを有する。
【0027】
実装基板10は、一例として略正方形の形状を有し、その上面の中央にLED12が実装される実装領域を有する金属基板である。実装基板10は、LED12から発生した熱を放熱させる放熱基板としても機能するため、例えば、耐熱性及び放熱性に優れたアルミニウムで構成される。ただし、実装基板10の材質は、耐熱性と放熱性に優れたものであれば、例えば銅等の別の金属でもよい。
【0028】
回路基板11は、一例として、実装基板10と同じ大きさの略正方形の形状を有し、その中心部に略矩形の開口部を有する。回路基板11は、その下面が例えば接着シートにより実装基板10の上に貼り付けられて固定される。回路基板11の上面には、不図示の配線パターンが形成されている。また、回路基板11の上面で対角に位置する2つの角部には、発光装置1を外部電源に接続するための接続電極が形成されている。発光装置1は、接続電極が不図示の外部電源に接続されて電圧が印加されることによって、発光する。また、回路基板11の上面には、開口部の外周部分及び接続電極を除いて配線パターンを覆う白色レジストが形成されている。
【0029】
LED12は、発光素子の一例であり、例えば発光波長帯域が450nm程度の青色光を発光する略正方形の青色LEDである。LED12の下面は、例えば透明な絶縁性の接着剤等により、実装基板10の実装領域の上面に固定される。また、LED12は上面に一対の素子電極を有し、LED12の素子電極は、ワイヤ17により回路基板11に形成される配線パターンに電気的に接続される。LED12から放射される光は、一次光とも称される。
【0030】
反射部材13は、白色の部材であり、例えばシリコーン樹脂に酸化チタンやアルミナ等の反射性微粒子を混練し熱硬化させた部材であり、LED12から出射した光を上方に配置される基材14に向けて反射する。反射部材13の底面は回路基板11と接し、反射部材13の上面は基材14の裏面の外縁と接する。
【0031】
基材14は、石英ガラス等の可視光を透過する部材で形成され、実装基板10と同じ大きさの略正方形の形状を有する。基材14は、下面の外縁が例えば接着シートにより反射部材13の上面に貼り付けられて固定される。
【0032】
波長変換層15は、例えばエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の無色かつ透明な樹脂で形成され、LED12から入射される一次光を吸収してその波長を変換して一次光と波長が異なる二次光を出射する蛍光体150を含有する。例えば、LED12が青色LEDである場合には、波長変換層15は、例えば、(BaSr)
2SiO
4:Eu
2+等の緑色蛍光体を含有してもよく、CaAlSiN
3:Eu
2+等の赤色蛍光体を含有してもよい。波長変換層15が緑色蛍光体を含有することで、発光装置1は、LED12から出射される青色光が緑色蛍光体を励起させることで放射される緑色光を出射する。また、波長変換層15が赤色蛍光体を含有することで、発光装置1は、LED12から出射される青色光が赤色蛍光体を励起させることで放射される赤色光を出射する。蛍光体150は、波長変換材料の一例であり、ナノアンテナ16と近接配置される。
【0033】
ナノアンテナ16は、第1金属材161と、第2金属材162と、誘電体163とを有し、基材14の表面に平行な方向に格子状に配置される。
【0034】
図3は、発光装置1において、ナノアンテナ16が配置された基材14の平面図である。
図3において、一点鎖線は、第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3を示す。
【0035】
ナノアンテナ16は、ナノアンテナ16のそれぞれは、基材14の表面に六方格子状に配置される。六方格子状の配置では、隣接する3つのナノアンテナ16で正三角形が形成される。
図3において、第1軸A1は右下方向から左上方向に延伸する軸であり、第2軸A2は左下方向から右上方向に延伸する軸であり、第3軸A3は真下方向から真上方向に延伸する軸である。第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3は、何れも原点に位置するナノアンテナを通過すると共に、互いの軸がなす角は60°である。また、第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3は、何れも原点に位置するナノアンテナに近接して正六角形を形成するナノアンテナ16の対向する位置に配置される2つのナノアンテナを通過する。
【0036】
ナノアンテナ16は、隣接するナノアンテナ16の間の配置間隔dは、二次光の波長をλと同一の値である。ナノアンテナ16の間の配置間隔dが規定される方向は、
図3において二点鎖線で示され、第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3のなす角を二等分した方向である。
【0037】
第1金属材161及び第2金属材162は、例えば金、銀、銅、プラチナ及びパラジウム等の貴金属で形成され、円柱状の形状を有し、二次光の入射に応じて表面プラズモン共鳴を発生する部材である。第1金属材161及び第2金属材162は、基材14上において、平面視で重なって配置される。複数の金属材第1金属材161及び第2金属材162が表面プラズモン共鳴を発生する領域には、蛍光体150の少なくとも一部が配置される。また、第1金属材161及び第2金属材162は、ニッケル及びアルミニウム等の金属で形成されてもよく、クロム等の接着部材と、貴金属、ニッケル及びアルミニウム等の金属で形成されるアンテナ部材とを重畳して形成してもよい。第1金属材161及び第2金属材162の長さ等の幾何学的構造は、ナノアンテナ16の空間的配置及びナノアンテナ16を形成する材料に依存する。ナノアンテナ16の幾何学的構造は、光学シミュレーションを実行することで決定される。
【0038】
誘電体163は、例えば薄膜形成が容易なエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の無色かつ透明な樹脂で形成される。誘電体163を形成する材料は、波長変換層15の屈折率と誘電体163の屈折率との差Δnが0.25より小さくなるように選択される。波長変換層15の屈折率と誘電体163の屈折率との差Δnが0.25以上になると、波長変換層15を伝搬する光の波面と誘電体163を伝搬する光の波面とのズレΔndが、二次光の波長λの(1/4)波長以上になるため、光学特性が悪化する。なお、波長変換層15の屈折率と誘電体163の屈折率との差Δnは、0.1より小さくすることが好ましい。
【0039】
誘電体163は、誘電体163を介して隣接する第1金属材161と第2金属材162との間の配置間隔が第1金属材161及び第2金属材162に入射した二次光が放射方向に出射する距離になるような厚さを有する。誘電体163の厚さは、誘電体163の放射方向の高さである。誘電体163の厚さを第1金属材161及び第2金属材162に入射した二次光が放射方向に出射する厚さにすることで、第1金属材161と第2金属材162との間の配置はエンドファイア配置になる。
【0040】
図4は、エンドファイア配置される1/2波長ダイポールアンテナを示す図である。
【0041】
エンドファイア配置される1/2波長ダイポールアンテナ200は、Z方向に延伸する棒状の第1アンテナ201と、第1アンテナ201と同一の長さを有し、Z方向に延伸する棒状の第2アンテナ202とを有する。第1アンテナ201は、第1アンテナ201及び第2アンテナ202が並ぶ方向であるX方向、すなわちエンドファイア方向に電波を放射するように配置される。具体的には、1/2波長ダイポールアンテナ200は、第1アンテナ201に+Z方向に電流が流れ、第2アンテナ202に−Z方向に電流が流れるように、第1アンテナ201と第2アンテナ202との間の配置間隔dが決定される。すなわち、1/2波長ダイポールアンテナ200は、第1アンテナ201及び第2アンテナ202に反対方向の電流が流れるように、第1アンテナ201と第2アンテナ202との間の離隔距離dを決定することでエンドファイア配置が実現される。第1アンテナ201と第2アンテナ202との間の配置間隔dは、例えば光学シミュレーションを実行して、第1アンテナ201及び第2アンテナ202に+Z方向に電流が流れるように決定される。
【0042】
誘電体163の厚さは、1/2波長ダイポールアンテナ200において第1アンテナ201と第2アンテナ202との間の配置間隔dを決定する方法と同様の方法で決定される。すなわち、誘電体163の厚さは、蛍光体150から出射される二次光の入射に応じて第1金属材161及び第2金属材162に表面プラズモン共鳴が発生するときに流れる電流が互いに反対方向に流れるエンドファイア配置になるように決定される。誘電体163の厚さにより規定される第1金属材161と第2金属材162との間の配置間隔は、二次光の波長λに対して、(1/4)λよりも長く且つ(3/4)λよりも短い範囲である。第1金属材161と第2金属材162との間の配置間隔は、好ましくは、二次光の波長λの半分の長さ(1/2)λである。誘電体163の厚さは、第1金属材161及び第2金属材162の長さ等の幾何学的構造と同様に、光学シミュレーションを実行することで決定される。
【0043】
(実施形態に係る発光装置の製造工程)
図5は、発光装置1の製造工程を示す図である。
図5(a)は第1工程を示し、
図5(b)は第2工程を示し、
図5(c)は第3工程を示し、
図5(d)は第4工程を示し、
図5(e)は第5工程を示し、
図5(f)は第6工程を示し、
図5(g)は第7工程を示す。
【0044】
まず、第1工程において、レジスト18は、基材14の表面に塗布される。次いで、第2工程において、レジスト18は、ナノアンテナ16が配置される領域が除去されるようにパターニングされる。次いで、第3工程において、パターニングされたレジスト18の上方から第1金属材161の材料である金属材19が積層される。次いで、第4工程において、パターニングされたレジスト18の上方から誘電体163の材料である誘電体20が積層される。次いで、第5工程において、パターニングされたレジスト18の上方から第2金属材162の材料である金属材21が積層される。次いで、第6工程において、レジスト18は、基材14の表面から除去される。次いで、第7工程において、波長変換層15は、基材14の表面に塗布される。そして、表面に波長変換層15が塗布された基材14は、実装基板10〜反射部材13が一体化されたLEDパッケージと裏面が接着されて、発光装置1が形成される。
【0045】
(実施形態に係る発光装置の作用効果)
実施形態に係る発光装置は、金属材がエンドファイア配置になるように配置されたナノアンテナを有するので、金属材が配列される方向であるエンドファイア方向に向けて指向特性が高い光を出射できる。
【0046】
また、実施形態に係る発光装置は、蛍光体の少なくとも一部は、金属材による表面プラズモン共鳴が発生する領域に配置されるので、蛍光材の変換効率を向上させることができる。
【0047】
(実施形態に係る発光装置の変形例)
発光装置1は、ナノアンテナ16が配置される基材14を有するが、ナノアンテナ16が波長変換層15の裏面に配置可能な場合は、基材14は省略されてもよい。
【0048】
また、発光装置1では、誘電体163は、波長変換層15を形成する材料と異なる材料で形成されるが、実施形態に係る発光装置では、第1金属材と第2金属材との間に配置される誘電体は、波長変換層を形成する材料と同一の材料により形成されてもよい。第1金属材と第2金属材との間に配置される誘電体を波長変換層を形成する材料と同一の材料により形成することで、誘電体を伝搬する光の波面と波長変換層を伝搬する光の波面とが一致するので、実施形態に係る発光装置の光学特性は向上する。
【0049】
また、発光装置1では、ナノアンテナ16は、第1金属材161及び第2金属材162の2つの金属材を有するが、実施形態に係る発光装置ではナノアンテナは、エンドファイア方向、すなわち放射方向に配列された3つ以上の金属材を有してもよい。実施形態に係る発光装置は、放射方向に配列される金属材の数を増加させることで、出射面から出射される光の指向特性を更に向上させることができる。
【0050】
また、発光装置1では、ナノアンテナ16は、六方格子状に配置されるが、実施形態に係る発光装置では、ナノアンテナは、正方格子状等の他の格子状の配置形状に配置されてもよい。
【実施例】
【0051】
実施例1、実施例2及び比較例のそれぞれは、青色LEDを発光素子とし、基材を厚さ0.5mmの石英ガラスとし、波長変換層は(BaSr)
2SiO
4:Eu
2+を含有した厚さ0.65μmのシリコーン樹脂として形成された。実施例1、実施例2及び比較例の(BaSr)
2SiO
4:Eu
2+の含有率は何れも3質量%である。また、実施例1、実施例2及び比較例のそれぞれでは、ナノアンテナは、基材の表面に5
2mmに亘る領域に六方格子状に配置された。
【0052】
実施例1では、ナノアンテナは、2つの金属材と2つの金属材の間に配置された誘電体とにより形成された。2つの金属材のそれぞれは、直径が150nmであり且つ高さが40nmである円柱状のアルミニウムである。誘電体は、径が150nmであり且つ高さが175nmである円柱状のシリコーン樹脂である。
【0053】
実施例2では、ナノアンテナは、3つの金属材と3つの金属材の間に配置された2つの誘電体とにより形成された。3つの金属材のそれぞれは、実施例1の金属材と同様の構造を有し、2つの誘電体のそれぞれは、実施例2の誘電体と同様の構造を有する。
【0054】
比較例では、ナノアンテナは、実施例1の金属材と同様の構造を有する金属材として形成された。
【0055】
指向特性の測定は、横河電機株式会社製の光スペクトラムアナライザ型番AQ6373とθステージを使用して行われた。
【0056】
図6は、実施例1、実施例2及び比較例のそれぞれの配光曲線を示す図である。
図2において、実施例1の配光曲線は実線で示され、実施例2の配光曲線は破線で示され、比較例の配光曲線は一点鎖線で示される。
【0057】
単一の金属材で形成されるナノアンテナを有する比較例のメインローブ両端にはサイドローブが生じている。一方、誘電体を介して金属材が2層積層されたナノアンテナを有する実施例1の放射パターンにはサイドローブが生じていない。また、誘電体を介して金属材が3層積層されたナノアンテナを有する実施例2は、電体を介して金属材が2層積層されたナノアンテナを有する実施例1より指向特性が向上している。