特許第6982544号(P6982544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982544
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/16 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   F16H61/16
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-100025(P2018-100025)
(22)【出願日】2018年5月24日
(65)【公開番号】特開2019-203574(P2019-203574A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 詔生
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−004004(JP,A)
【文献】 特開2008−019907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00
F16H 61/00
F16H 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速機を有する車両を制御する車両の制御装置であって、
前記無段変速機を段階的にアップシフトさせて前記車両を加速させる段階変速中に、段階的なアップシフトに伴う前記車両の失速が予測されると、前記段階変速を禁止する制御部を有し、
前記制御部は、前記段階変速を禁止した後に前記無段変速機の変速比を固定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項に記載された車両の制御装置において、
前記車両は、駆動源を有し、
前記制御部は、前記段階変速を禁止した後に前記駆動源の回転速度を漸増させることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された車両の制御装置において、
前記制御部は、前記無段変速機の出力軸側の負荷と、前記段階変速中の次に行う段階的アップシフト後の前記無段変速機の出力軸側の駆動力と、に基づき前記失速の予測を行うことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
無段変速機を有する車両を制御する車両の制御方法であって、
前記無段変速機を段階的にアップシフトさせて前記車両を加速させる段階変速中に、段階的なアップシフトに伴う前記車両の失速が予測されると、前記段階変速を禁止し、
前記段階変速を禁止した後に前記無段変速機の変速比を固定することを特徴とする車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無段変速機の制御方法として、駆動源の出力回転を無段階に変速可能な無段変速機を予め設定された複数の変速段同士の間でステップ的(段階的)にアップシフトする制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/046353号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該制御はドライバがアクセルペダルを踏んで加速する際に実行されるものであり、段階的にアップシフトをしていくもの(以下では、段階的なアップシフトを「段階変速」ともいう。)である。このため、駆動輪に伝達される駆動力(トルク)は車速が増加するにつれて段階的に減少していくことになる。
【0005】
当該制御では、駆動輪に大きな負荷(例えば、道路勾配の大きい登坂路等)がかかるなど、車両の走行抵抗が高まる要因がある場合に、段階変速のシーケンス途中で駆動力(トルク)が段階的に下がった瞬間に急激に失速してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、段階変速中に急激に失速することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、車両の制御装置は、無段変速機を段階的にアップシフトさせて車両を加速させる段階変速中に、段階的なアップシフトに伴う車両の失速が予測されると段階変速を禁止する制御部を有し、制御部は、段階変速を禁止した後に無段変速機の変速比を固定することを特徴とする。
【0008】
本発明の別の態様によれば、車両の制御方法は、無段変速機を段階的にアップシフトさせて車両を加速させる段階変速中に、段階的なアップシフトに伴う車両の失速が予測されると段階変速を禁止し、段階変速を禁止した後に無段変速機の変速比を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
これらの態様によれば、段階変速中に急激に失速することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る変速マップ及び変速線の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両における駆動力と走行抵抗の変化を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る変速制御のフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る変速マップ及び変速線の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、車両100の概略構成図である。車両100は、エンジン1と、無段変速機としての自動変速機3と、オイルポンプ5と、駆動輪6と、制御装置としてのコントローラ10と、を備える。
【0013】
エンジン1は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、走行用駆動源として機能する。エンジン1は、コントローラ10からの指令に基づいて、回転速度、トルク等が制御される。
【0014】
自動変速機3は、トルクコンバータ2と、締結要素31と、ベルト式無段変速機構(以下、「CVT」ともいう。)30と、油圧コントロールバルブユニット40(以下では、単に「バルブユニット40」ともいう。)と、オイル(作動油)を貯留するオイルパン32と、を備える。
【0015】
トルクコンバータ2は、エンジン1と駆動輪6の間の動力伝達経路上に設けられる。トルクコンバータ2は、流体を介して動力を伝達する。また、トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ2aを締結することで、エンジン1からの駆動力の動力伝達効率を高めることができる。
【0016】
締結要素31は、トルクコンバータ2とCVT30の間の動力伝達経路上に配置される。締結要素31は、コントローラ10からの指令に基づき、オイルポンプ5の吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧されたオイルによって制御される。締結要素31としては、例えば、ノーマルオープンの湿式多板クラッチが用いられる。締結要素31は、図示しない前進クラッチ及び後進ブレーキによって構成される。
【0017】
CVT30は、締結要素31と駆動輪6との間の動力伝達経路上に配置され、車速やアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更することができる。CVT30は、プライマリプーリ30aと、セカンダリプーリ30bと、両プーリ30a,30bに巻き掛けられたベルト30cと、を備える。プーリ圧によりプライマリプーリ30aの可動プーリとセカンダリプーリ30bの可動プーリとを軸方向に動かし、ベルト30cのプーリ接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更することができる。なお、プライマリプーリ30aに作用するプーリ圧及びセカンダリプーリ30bに作用するプーリ圧は、オイルポンプ5からの吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧される。
【0018】
CVT30のセカンダリプーリ30bの出力軸には、図示しない終減速ギア機構を介してディファレンシャル12が接続される。ディファレンシャル12には、ドライブシャフト13を介して駆動輪6が接続される。
【0019】
オイルポンプ5は、エンジン1の回転がベルトを介して伝達されることによって駆動される。オイルポンプ5は、例えばベーンポンプによって構成される。オイルポンプ5は、オイルパン32に貯留されるオイルを吸い上げ、バルブユニット40にオイルを供給する。バルブユニット40に供給されたオイルは、各プーリ30a,30bの駆動や、締結要素31の駆動、自動変速機3の各要素の潤滑などに用いられる。
【0020】
コントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ10は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。具体的には、コントローラ10は、自動変速機3を制御するATCU、シフトレンジを制御するSCU、エンジン1の制御を行うECU等によって構成することもできる。なお、本実施形態における制御部とは、コントローラ10の後述する段階変速制御を実行する機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0021】
コントローラ10には、エンジン1の回転速度Neを検出する第1回転速度センサ51、締結要素31の出力回転速度Nout(=プライマリプーリ30aの回転速度Npri)を検出する第2回転速度センサ52、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ53、CVT30のセレクトレンジ(前進、後進、ニュートラル及びパーキングを切り替えるセレクトレバー又はセレクトスイッチの状態)を検出するインヒビタスイッチ54、セカンダリプーリ30bの回転速度を検出する第3回転速度センサ55、ブレーキの踏力を検出する踏力センサ56、車速Vを検出する車速センサ57、気圧を検出する気圧センサ58、及び道路勾配を検出する勾配センサ59等からの信号が入力される。コントローラ10は、入力されるこれらの信号に基づき、エンジン1、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ2a、自動変速機3の各種動作を制御する。
【0022】
次に、自動変速機3による変速制御について説明する。本実施形態では、加速時において、自動変速機3を予め設定された複数の変速段同士の間でステップ的(段階的)にアップシフトする変速制御を行う(以下では、段階変速に係る制御を「段階変速制御」という。)。以下に、本実施形態の段階変速制御について説明する。
【0023】
コントローラ10内には、予め図2に示す変速マップが記憶されており、コントローラ10は、図2に示す変速マップに基づき、車両100の運転状態(本実施形態では車速V、プライマリ回転速度Npri、アクセル開度APO)に応じて、CVT30を制御する。なお、図2に示す変速マップは、一例である。
【0024】
変速マップは、自動変速機3の動作点が車速Vとプライマリ回転速度Npriとにより定義される。自動変速機3はCTV30の変速比を最Low変速比にして得られる最Low線とCTV30の変速比を最High変速比にして得られる最High線の間の領域で変速することができる。
【0025】
コントローラ10は、アクセル開度APOが車速Vに応じた段階変速開始開度よりも小さい場合に通常変速を行い、アクセル開度APOが車速Vに応じた段階変速開始開度以上となった場合に段階変速を行う。段階変速開始開度は、車速Vに応じて予め設定されたアクセル開度であって、運転者が加速を意図していると判断される大きさに設定される。
【0026】
通常変速では、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に設定された変速線に基づいて変速が行われる。なお、図2では、本実施形態の段階変速制御の一例として、あるアクセル開度APOでの変速線Lのみを示しているが、実際にはアクセル開度APO毎に設定された複数の変速線が存在する。
【0027】
段階変速では、変速抑制フェーズと、アップシフトフェーズとが繰り返し行われる。
【0028】
変速抑制フェーズでは、変速比の変化率(単位時間あたりの変速比の変化量)はゼロであり、エンジン回転速度(プライマリ回転速度Npri)の上昇に伴って車速Vが上昇する。なお、変速抑制フェーズにおいて、変速比の変化率をゼロよりも大きくしてもよい。この場合、変速比の変化率は、変速抑制フェーズ中に車速Vの増加に伴い、プライマリ回転速度Npriが低下することがない範囲に設定される。
【0029】
アップシフトフェーズでは、変速比が段階的にHigh側に変更される。アップシフトフェーズにおける変速比の変化率は、車速Vの増加に伴い、プライマリ回転速度Npriが低下する範囲に設定される。
【0030】
変速抑制フェーズとアップシフトフェーズにおける変速比の変化率を上述のように設定することで、段階変速制御における変速は、図2に示すようにプライマリ回転速度Npriの増減を繰り返す変速形態となる。
【0031】
段階変速制御では、プライマリ回転速度Npriがアクセル開度APO毎に設定された第1所定回転速度となるとアップシフトフェーズが実行され、車速Vに応じてアクセル開度APO毎に設定された第2所定回転速度となるまでアップシフトされた後は、変速抑制フェーズが実行される。
【0032】
変速抑制フェーズでは、車速Vの上昇とともにプライマリ回転速度Npri(エンジン回転速度)が徐々に高くなる。なお、図2においては、第1所定回転速度及び第2所定回転速度は、車速Vに応じて設定した例を示したが、これに限られることはなく、第1所定回転速度及び第2所定回転速度を一定の値としてもよい。
【0033】
この段階変速制御は、上述のように、ドライバがアクセルペダルを踏んで車両100の加速を行う際に実行されるものであり、段階的にアップシフトをしていくものである。この段階変速においては、駆動輪6に伝達される駆動力(トルク)は、図3に示すように、車速Vが増加するにつれて、別の言い方をすると、アップシフトするにつれて、段階的に減少していく。
【0034】
駆動輪6に大きな負荷(例えば、道路勾配の大きい登坂路等)がかかるなど、車両100の走行抵抗が高まる要因がある場合に、段階的にアップシフトしてしまうと、駆動力(トルク)が急激に下がり、車両100が急激に失速してしまう(意図せず減速してしまう)おそれがある。
【0035】
そこで、本実施形形態の段階変速制御では、アップシフトによって車両100の失速が予測される場合には、段階変速を禁止する。以下に、図4に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態の段階変速制御について具体的に説明する。
【0036】
まず、ステップS1において、加速度αが所定値A以上であるか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、車速センサ57によって検出された車速Vから加速度αを求め、加速度αが所定値A以上であるか否かを判定する。加速度αが所定値A以上であると判定されれば、ステップS2に進み、段階変速を指示する。これに対し、加速度αが所定値A未満であると判定されれば、ステップS6に進み、通常の変速制御を実行する。
【0037】
ステップS3において、コントローラ10は、予測されるアップシフト後の駆動力が走行抵抗未満であるか否かを判定する。
【0038】
ここで、駆動力及び走行抵抗について具体的に説明する。
【0039】
駆動力とは、自動変速機3の出力軸側の出力である。より詳細には、駆動力とは、車両100を走行させるためにエンジン1のトルクが駆動輪6に伝えられたときに、駆動輪6が路面を蹴る力である。駆動力は、以下の式により求めることができる。
駆動力 = エンジン1の出力軸のトルク×カウンタギア比×プーリ比×終減速ギア比 ×タイヤ動半径 ・・・(1)
【0040】
なお、車両100がエンジン1の出力軸のトルクを検出するセンサを備えていない場合には、例えば、トルクコンバータ2の回転速度と特性係数からエンジン1の出力軸のトルクを算出することもできる。
【0041】
走行抵抗とは、車両100が走行しているときに、車両100が受ける抵抗である。別の言い方をすると、走行抵抗は、自動変速機3の出力軸側にかかる負荷である。走行抵抗は、車両100の走行時に発生する各抵抗の合計により求められる。具体的には、走行抵抗は、以下の式により求めることができる。
走行抵抗 = 空気抵抗+勾配抵抗+転がり抵抗+加速抵抗 ・・・(2)
【0042】
なお、空気抵抗は、以下の式により求めることができる。
空気抵抗 = 空気密度(気圧)×車両100の前面投影面積×車速Vの2乗×空気抵抗係数 ・・・(3)
【0043】
空気密度(気圧)は、気圧センサ58によって検出された信号に基づいて算出される。また、車速Vは、車速センサ57によって検出された信号に基づいて算出される。
【0044】
勾配抵抗は、以下の式により求めることができる。
勾配抵抗 = 車重×重力加速度×sinθ(※θは勾配の角度) ・・・(4)
【0045】
ここで、車重の算出方法について説明する。
【0046】
車重は、搭乗人数により変動しうるが、本実施形態では、車両重量に平均搭乗者重を加算した定数値を用いる。なお、精度よく車重を検知したい場合には、例えば、座席部分に搭乗者の重量を測定する荷重センサを設け、この荷重センサによって検出された重量を車両重量に加算して車重を算出してもよい。若しくは、車重推定(又は搭乗者重推定)を行い、測定した若しくは推定した車重を用いてもよい。なお、車重推定は周知・慣用技術であり、当業者が適宜実施可能である。車重推定は、例えば、サスペンションの沈み込み量から演算する、車両100の上下方向の固有振動数(サスペンションにより上下振動する)から演算するなど様々な方法を用いることができる。
【0047】
勾配の角度θは、勾配センサ59によって検出された信号に基づいて算出される。
【0048】
転がり抵抗は、以下の式により求めることができる。
転がり抵抗= 転がり抵抗係数×車重 ・・・(5)
【0049】
加速抵抗は、以下の式により求めることができる。
加速抵抗 = 車重× 加速度 ・・・(6)
なお、加速度は、車速Vに基づいて求めることができる。
【0050】
上述のようにして求められたアップシフト後の駆動力が、上述のようにして求められた走行抵抗未満である場合、つまり、予測されるアップシフト後の駆動力が走行抵抗未満である場合に段階的にアップシフトしてしまうと、走行抵抗が駆動力を上回わり、車両100が急激に失速してしまうおそれがある。このため、本実施形態では、ステップS3において、予測されるアップシフト後の駆動力が走行抵抗未満であると判定された場合には、コントローラ10は、段階的なアップシフトを禁止する(ステップS4)。これにより、車両100が急激に失速することを抑制できるので、運転性を損なうことを防止できる。
【0051】
これに対し、ステップS3において、予測されるアップシフト後の駆動力が走行抵抗以上であると判定された場合には、コントローラ10は段階的なアップシフトを実行する(ステップS4)。
【0052】
なお、ステップS4において、段階的なアップシフトが禁止された後、CTV30の変速比を固定するようにしてもよい。これにより、引き続き失速を抑制することができる。
【0053】
また、ステップS4において、段階的なアップシフトが禁止された後に、連続的なアップシフトを実行するようにすると、エンジン1の吹け上がりを押さえながら引き続き失速を抑制することができる(図5の変速線L1参照)。
【0054】
さらに、ステップS4において、段階的なアップシフトが禁止された後に、エンジン1の回転速度を漸増させるようにしてもよい。これにより、車両100の失速をより確実に抑制できる。
【0055】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0056】
コントローラ10(制御装置)は、無段変速機(自動変速機3)を段階的にアップシフトさせて車両100を加速させる段階変速中に、段階的なアップシフトに伴う車両100の失速が予測されると、段階変速を禁止する制御部を有する。
【0057】
コントローラ10によって段階変速に伴う急激な駆動力低下による失速を予測し、失速が予測される場合に段階変速を禁止することで、段階変速中に急激に失速することを抑制することができる。これにより、失速感を抑制することができる(請求項1、6に対応する効果)。
【0058】
コントローラ10(制御部)は、段階変速を禁止した後に連続的なアップシフトを実行する。
【0059】
段階変速を禁止した後に連続的なアップシフトを実行することにより、エンジン1(駆動源)の吹け上がりを押さえながら引き続き失速を抑制することができる(請求項2に対応する効果)。
【0060】
コントローラ10(制御部)は、段階変速を禁止した後に無段変速機(自動変速機3)の変速比を固定する。
【0061】
段階変速を禁止した後に無段変速機(自動変速機3)の変速比を固定することにより、引き続き失速を抑制することができる(請求項3に対応する効果)。
【0062】
コントローラ10(制御部)は、段階変速を禁止した後に駆動源(エンジン1)の回転速度を漸増させる。
【0063】
連続的なアップシフトを実行した場合、あるいは、CTV30の変速比を固定した場合であっても、駆動源(エンジン1)の回転速度を漸増させることで、失速をより確実に抑制できる(請求項4に対応する効果)。なお、車両100を加速させることが可能な回転速度にまで駆動源(エンジン1)の回転速度を引き上げるようにしてもよい。
【0064】
コントローラ10(制御部)は、無段変速機(自動変速機3)の出力軸側の負荷と、段階変速中の次に行う段階的アップシフト後の無段変速機(自動変速機3)の出力軸側の駆動力と、に基づき失速の予測を行う。
【0065】
失速が生じるかどうかは出力軸側の負荷の度合いに依存するため、現段階の負荷と次に行う段階的アップシフトとを考慮した演算を行うので精度の良い失速予測が可能となる(請求項5に対応する効果)。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0067】
なお、上記実施形態では、失速の予測の例として走行抵抗(負荷)を用いることを例に説明した。また、上記実施形態では、走行抵抗(負荷)として、空気抵抗、勾配抵抗、転がり抵抗、及び加速抵抗の合計を例に説明したが、走行抵抗(負荷)として、これらの1つまたは複数を適宜選択するようにしてもよい。また、空気密度(気圧)、道路勾配、車速、車重、及び車両加速度から選ばれた1又は複数のパラメータを用いて失速を予測しても良い。例えば、道路勾配が突然大きくなったことを検知すると失速が予測される。また、地図情報を取得して道路勾配が大きくなることを予測することで失速を予測することができる。また、気候情報を取得して風速、風向きを用いて失速を予測することも可能である。もちろん、他の方法で失速を予測しても良い。また、複数のパラメータを併用すると失速の予測精度が向上する。
【符号の説明】
【0068】
100 車両
1 エンジン(駆動源)
3 自動変速機(無段変速機)
10 コントローラ(制御装置、制御部)
30 CVT
図1
図2
図3
図4
図5